説明

エアバッグ用シリコーン弾性接着剤組成物及びエアバッグ

【解決手段】シリコーンゴムが含浸又はコートされた基布の該シリコーンゴム塗工面どうしを重ね合わせ、周縁部相互を接着又は縫製して袋状に形成したエアバッグにおいて、上記基布どうしを重ね合わせて接着又は縫製する箇所に目止め材として使用されるシリコーン弾性接着剤組成物であって、
(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(B)SiH基を3個有し、アルケニル基を有しないオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(B)成分中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)成分中に含まれるケイ素原子に結合したアルケニル基1個当たり、0.3〜5.0個となる量、
(C)白金族金属系触媒:触媒量
を含有するエアバッグ用シリコーン弾性接着剤組成物。
【効果】本発明のエアバッグ用シリコーン弾性接着剤組成物は、優れた接着性と十分な切断時伸びを与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目止め材としてのエアバッグ用シリコーン弾性接着剤組成物及びエアバッグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステルやポリアミド等の合成樹脂繊維の織物にシリコーンゴムをコートした基布からなる、耐候性や耐熱性に優れたエアバッグが知られている(特開平2−270654号公報:特許文献1)。
【0003】
特に自動車用エアバッグのうち、側面を保護するためのカーテンエアバッグには高気密性が求められるため、エアバッグを構成する2枚のシリコーンゴムコート基布の外周接合部どうしが目止め材としてのシリコーン弾性接着剤で接着されると共に、縫い糸で縫合されているものが知られている。ここで使われている弾性接着剤は、切断時伸びが200%以上、好ましくは200〜1,000%程度のものであった(特開2001−001854号公報:特許文献2)。
【0004】
このシリコーン弾性接着剤の硬化方式は種々提案されているが、特に付加反応(ヒドロシリル化反応)硬化型のものがシリコーンゴムコート基布への接着性や硬化物の切断時伸びが比較的大きい点で好ましく用いられている(特開2004−161155号公報:特許文献3)。
【0005】
しかし、自動車へのカーテンエアバッグの普及・安全性向上対策に伴い、高機能化かつ軽量化・低コスト化の要求が高まっており、シリコーン弾性接着剤においても、硬化物における切断時伸びの改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−270654号公報
【特許文献2】特開2001−001854号公報
【特許文献3】特開2004−161155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、シリコーンゴムが含浸又はコートされた基布の該シリコーンゴム塗工面どうしを重ね合わせ、周縁部相互を接着又は縫製して袋状に形成したエアバッグにおいて、上記基布どうしを重ね合わせて接着又は縫製する箇所に目止め材として使用されるシリコーン弾性接着剤組成物に関し、硬化物における切断時伸びの数値が改良されたエアバッグ用シリコーン弾性接着剤組成物、及び基布どうしが接着された又は縫製された箇所が目止めされたエアバッグの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、シリコーンゴムが含浸又はコートされた基布の該シリコーンゴム塗工面どうしを重ね合わせ、周縁部相互を接着又は縫製して袋状に形成したエアバッグにおいて、上記基布どうしを重ね合わせて接着又は縫製する箇所に目止め材として使用される付加硬化型シリコーン弾性接着剤組成物の架橋剤として、下記一般式(1)〜(3)で示される少なくとも1つの分子中にケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を3個有し、アルケニル基を有しないオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【化1】


(式中、R1は炭素数1〜6の非置換又は置換の一価炭化水素基、Yは水素原子又はR1で、両末端のYが2個ともR1のときはm=3、片末端のYがR1で他方が水素原子のときはm=2、両末端のYが2個とも水素原子のときはm=1、nは0〜4の整数をそれぞれ示す。)
【化2】


(式中、R1は炭素数1〜6の非置換又は置換の一価炭化水素基、uは0〜6の整数をそれぞれ示す。)
【化3】


(式中、R1は炭素数1〜6の非置換又は置換の一価炭化水素基、R2は炭素数1〜12の非置換又は置換の一価炭化水素基をそれぞれ示す。)
で示される3官能性オルガノハイドロジェンポリシロキサンのみを配合することで、硬化物における切断時伸びが著しく改良されることを知見し、本発明をなすに至った。
【0009】
従って、本発明は、シリコーンゴムが含浸又はコートされた基布の該シリコーンゴム塗工面どうしを重ね合わせ、周縁部相互を接着又は縫製して袋状に形成したエアバッグにおいて、上記基布どうしを重ね合わせて接着又は縫製する箇所に目止め材として使用されるシリコーン弾性接着剤組成物であって、
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を一分子中に平均2個以上含有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)下記一般式(1)〜(3)で示される少なくとも1つの分子中にケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を3個有し、アルケニル基を有しないオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【化4】


(式中、R1は炭素数1〜6の非置換又は置換の一価炭化水素基、Yは水素原子又はR1で、両末端のYが2個ともR1のときはm=3、片末端のYがR1で他方が水素原子のときはm=2、両末端のYが2個とも水素原子のときはm=1、nは0〜4の整数をそれぞれ示す。)
【化5】


(式中、R1は炭素数1〜6の非置換又は置換の一価炭化水素基、uは0〜6の整数をそれぞれ示す。)
【化6】


(式中、R1は炭素数1〜6の非置換又は置換の一価炭化水素基、R2は炭素数1〜12の非置換又は置換の一価炭化水素基をそれぞれ示す。):
(B)成分中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)成分中に含まれるケイ素原子に結合したアルケニル基1個当たり、0.3〜5.0個となる量、
(C)白金族金属系触媒:触媒量
を含有し、これにより23℃で24時間硬化させた後の硬化物における、日本工業規格JIS−K6251に規定されている切断時伸びの数値が1,000%以上となり得るエアバッグ用シリコーン弾性接着剤組成物、及びシリコーンゴムが含浸又はコートされた基布の該シリコーンゴム塗工面どうしを重ね合わせ、周縁部相互を接着又は縫製して袋状に形成したエアバッグであって、上記シリコーン弾性接着剤組成物により、基布どうしが接着された又は縫製された箇所が目止めされたエアバッグを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のエアバッグ用シリコーン弾性接着剤組成物は、シリコーンゴムが含浸又はコートされた基布の該シリコーンゴム塗工面どうしを重ね合わせ、周縁部相互を接着又は縫製して袋状に形成したエアバッグにおいて、上記基布どうしを重ね合わせて接着又は縫製する箇所に目止め材として使用されて、優れた接着性と十分な切断時伸びを与える。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のエアバッグ用シリコーン弾性接着剤組成物は、従来から用いられている付加反応硬化型で、硬化物における切断時伸びを改良するために、特定の架橋剤を用いていることが特徴である。
【0012】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
本発明の組成物に用いるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、一分子中に平均2個以上のアルケニル基を含有するもので、通常は主鎖部分が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状のものであるのが一般的であるが、これは分子構造の一部に分枝状の構造を含んだものであってもよく、また環状体であってもよいが、硬化物の機械的強度等の物性の点から直鎖状のジオルガノポリシロキサンが好ましい。該アルケニル基は、分子鎖の両末端のみに存在していても、あるいは分子鎖の両末端及び分子鎖の途中に存在していてもよい。このようなアルケニル基含有オルガノポリシロキサンの代表例としては、例えば、下記一般式(4)で表されるようなオルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0013】
【化7】


(式中、Xはアルケニル基、R3は炭素数1〜6の非置換又は置換の一価炭化水素基、R4はX又はR3であり、p、qはそれぞれ0又は1以上の整数である。)
【0014】
式中、R3の炭素数1〜6の非置換又は置換の一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基;これらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部がフッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換された基、例えば、クロロメチル基、2−ブロモエチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基、シアノエチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、クロロメチル基、ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等の炭素数1〜3の非置換又は置換のアルキル基及びフェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基等の非置換又は置換のフェニル基である。
【0015】
式中、Xのアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等の通常炭素数2〜8程度のものが挙げられ、中でもビニル基、アリル基等の低級アルケニル基が好ましい。
【0016】
式中、pは0又は1以上の整数であり、qは0又は1以上の整数である。また、p及びqは、10≦p+q≦10,000を満たす整数であるのが好ましく、より好ましくは50≦p+q≦2,000であり、かつ0≦q/(p+q)≦0.2を満足する整数である。
【0017】
また、このようなアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、回転粘度計による25℃における粘度が10〜1,000,000mPa・s、特に100〜500,000mPa・s程度のものが好ましい。
【0018】
(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン
本発明の組成物に用いるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中に3個のケイ素原子に結合する水素原子(SiH基)を含有し、アルケニル基を含有しないものであり、直鎖状、環状、又は分枝状構造を有するものであり、下記一般式(1)〜(3)で示される。
【0019】
【化8】


(式中、R1は炭素数1〜6の非置換又は置換の一価炭化水素基、Yは水素原子又はR1で、両末端のYが2個ともR1のときはm=3、片末端のYがR1で他方が水素原子のときはm=2、両末端のYが2個とも水素原子のときはm=1、nは0〜4の整数をそれぞれ示す。)
【化9】


(式中、R1は炭素数1〜6の非置換又は置換の一価炭化水素基、uは0〜6の整数をそれぞれ示す。)
【化10】


(式中、R1は炭素数1〜6の非置換又は置換の一価炭化水素基、R2は炭素数1〜12の非置換又は置換の一価炭化水素基をそれぞれ示す。)
【0020】
式中、R1の炭素数1〜6の非置換又は置換の一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基;これらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部がフッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換された基、例えば、クロロメチル基、2−ブロモエチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基、シアノエチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、クロロメチル基、ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等の炭素数1〜3の非置換又は置換のアルキル基及びフェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基等の非置換又は置換のフェニル基である。
【0021】
また、R2の炭素数1〜12の非置換又は置換の一価炭化水素基としては、R1の炭素数1〜6の非置換又は置換の一価炭化水素基が含まれるほか、例えば、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基;トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基;更には3−メタクリロキシプロピル基、3−アクリロキシプロピル基、3−グリシドキシプロピル基等のアクリロキシ基、メタクリロキシ基、グリシドキシ基等の有機官能基や、ハロゲン原子、シアノ基等で置換された基が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、クロロメチル基、ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等の炭素数1〜3の非置換又は置換のアルキル基及びフェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基等の非置換又は置換のフェニル基及び3−メタクリロキシプロピル基、3−アクリロキシプロピル基である。
【0022】
直鎖状3官能性オルガノハイドロジェンポリシロキサンの例としては、下記式(5)〜(10)等が挙げられる。
【化11】

【0023】
環状3官能性オルガノハイドロジェンポリシロキサンの例としては、下記式(11)〜(13)等が挙げられる。
【化12】

【0024】
分枝状3官能性オルガノハイドロジェンポリシロキサンの例としては、下記式(14)〜(17)等が挙げられる。
【化13】

【0025】
本発明の組成物に用いるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは公知の方法で得ることができ、例えば、式(5)〜(12)はジメチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシランを適宜選択し、所定のモル比で混合して共加水分解、蒸留精製により得ることができる。式(13)は1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンにプロピレンをヒドロシリル化反応、蒸留精製により得ることができる。式(14)〜(17)はそれぞれメチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランと過剰量のジメチルクロロシランを混合して共加水分解、蒸留精製により得ることができる。
【0026】
本発明の組成物に用いるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、第1に全て3官能性であり、第2に(B)成分中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)成分中に含まれるケイ素原子に結合したアルケニル基1個当たり、0.3〜5.0個、好ましくは0.5〜2.0個となる量で使用されるが、この理由は、ポリエステルやポリアミド等の合成樹脂繊維の織物にシリコーンゴムをコートした基布からなるエアバッグへのシリコーン弾性接着剤としての強固な接着性と、1,000%以上の切断時伸びを両立させるためである。本発明の組成物中で、オルガノハイドロジェンポリシロキサンは接着剤の架橋成分であると共に接着成分であり、このとき、オルガノハイドロジェンポリシロキサン一分子中の3個の反応点(SiH基)が、主骨格を3次元化させる架橋反応(硬化)、2次元化させる鎖長延長(伸びの向上)、シリコーンゴムコート層との反応(接着発現)それぞれに、バランスよく適度に作用しているものと考えられる。
【0027】
(C)白金族金属系触媒
本発明に用いる白金族金属系触媒は、前記(A)成分のアルケニル基と(B)成分のケイ素原子に結合する水素原子とのヒドロシリル化反応を進行させるための触媒であり、一般に知られている触媒が使用できる。その具体例としては、例えば、白金(白金黒を含む)、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体;H2PtCl4・nH2O、H2PtCl6・nH2O、NaHPtCl6・nH2O、KHPtCl6・nH2O、Na2PtCl6・nH2O、K2PtCl4・nH2O、PtCl4・nH2O、PtCl2、NaHPtCl4・nH2O(但し、式中、nは0〜6の整数であり、好ましくは0又は6である。)等の塩化白金、塩化白金酸及び塩化白金酸塩;アルコール変性塩化白金酸(米国特許第3,220,972号明細書参照);塩化白金酸とオレフィンとのコンプレックス(米国特許第3,159,601号明細書、同第3,159,662号明細書、同第3,775,452号明細書参照);白金黒、パラジウム等の白金族金属をアルミナ、シリカ、カーボン等の担体に担持させたもの;ロジウム−オレフィンコンプレックス;クロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム(ウィルキンソン触媒);塩化白金、塩化白金酸又は塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサン、特にビニル基含有環状シロキサンとのコンプレックスなどが挙げられる。
【0028】
(C)成分の使用量はいわゆる触媒量でよく、通常、(A)成分及び(B)成分の合計量に対する白金族金属の質量換算で、0.1〜1,000ppm、特に好ましくは0.5〜500ppm程度でよい。
【0029】
(D)その他の成分
本発明の組成物には、前記(A)成分、(B)成分、(C)成分以外に、作業時間を確保するため、ヒドロシリル化反応を抑制させる目的で反応遅延剤を適量添加してもよく、アセチレンアルコール系化合物や多官能不飽和基含有化合物が挙げられる。アセチレンアルコール系化合物としては、エチニルシクロヘキサノール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−トリデシン−3−オール等が例示され、多官能不飽和基含有化合物としては、1,3,5−トリアリルイソシアヌレート、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,1,3,3,3−ヘキサビニルジシロキサン、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン等が例示される。反応遅延剤は、その構造や成型条件により添加量を調整すればよいが、配合する場合は通常(A)成分100質量部に対して0.0001〜5質量部であり、特に好ましくは0.001〜2質量部である。
【0030】
また必要に応じて、例えば、ヒュームドシリカ、ヒュームド二酸化チタン等の補強性無機充填剤;補強性シリコーンレジン;炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、酸化第二鉄、カーボンブラック等の非補強性無機充填剤を添加することができ、これらの無機充填剤の使用量は、(A)成分100質量部当たり、通常、0〜300質量部、特に好ましくは5〜200質量部である。
【0031】
更に、着色剤として無機顔料や有機顔料を添加してもよく、無機顔料ならば例えばカーボンブラック、酸化チタン、赤ベンガラ、黒ベンガラ、チタンイエロー、コバルトブルー、群青等が挙げられ、有機顔料ならば例えば縮合アゾ系(黄色、茶色、赤色)、イソインドリノン系(黄色、橙色)、キナクリドン系(赤色、紫色)、ジケトピロロピロール系(橙色、赤色、紫色)、アンスラキノン系(黄色、赤色、青色)、ジオキサジン系(紫色)、ベンズイミダゾロン系(橙色)、銅フタロシアニン系(青色)、アリルアマイド系(黄色)等が挙げられる。
【0032】
更に、ポリエステルやポリアミド等の合成樹脂繊維の織物にシリコーンゴムをコートした基布へのシリコーン弾性接着剤組成物の塗布作業性を改善するため、ワックス類、ポリエーテル類、脂肪酸エステル類、脂肪酸アマイド類等のチクソ性付与剤を添加して、接着剤組成物の流れ防止を図ってもよい。
【0033】
本発明の組成物は、通常の硬化性液状シリコーンゴム組成物と同様に、1液タイプ、2液タイプのいずれでもよい。しかし、使用時に2液を混合して硬化させる2液型組成物の方が保存安定性の点で優れている。硬化条件としては、公知のヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物と同様でよく、例えば常温でも十分硬化するが、必要に応じて加熱してもよい。この場合、通常常温〜180℃、好ましくは30〜150℃、特に好ましくは80〜120℃で、好ましくは1分〜24時間、より好ましくは5分〜12時間、特に好ましくは10分〜3時間の硬化条件を採用することができる。
【0034】
本発明のシリコーン弾性接着剤組成物は、上述したように、シリコーンゴムが含浸又はコートされた基布の該シリコーンゴム塗工面どうしを重ね合わせ、周縁部相互を接着又は縫製して袋状に形成したエアバッグにおいて、上記基布どうしを重ね合わせて接着又は縫製する箇所に目止め材として塗布、硬化されるものである。
この場合、基布は、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維による公知の織物が用いられ、またこれに含浸又はコートされるシリコーンゴムとしては、付加硬化型等の公知のシリコーンゴム組成物の硬化皮膜から形成することができる。
【0035】
本発明のシリコーン弾性接着剤組成物の硬化物(即ち、シリコーンゴム)は、この組成物を23℃で24時間硬化させた後の硬化物において、日本工業規格JIS−K6251に規定されている切断時伸びの数値が1,000%以上、特に1,100%以上であり、後述する実施例に示したように1,200〜1,500%の切断時伸びを達成することができる。従って、エアバッグにおける上記目止め材として非常に好適なものである。
【実施例】
【0036】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、粘度の測定は、TVB−10型回転粘度計(東機産業(株)製)によって行った。
【0037】
まず、各成分として下記について用意した。
(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
(A−1)下記一般式(18)で示される両末端ビニル基封鎖ポリジメチルシロキサンで、25℃における粘度が100,000mPa・sとなるpの値を有するもの。
(A−2)下記一般式(18)で示される両末端ビニル基封鎖ポリジメチルシロキサンで、25℃における粘度が10,000mPa・sとなるpの値を有するもの。
【化14】

【0038】
(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン
(B−1)下記式(5)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【化15】


(B−2)下記式(13)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【化16】


(B−3)下記式(16)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【化17】


(B−4)下記一般式(19)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、但し、r=1〜8の混合物
【化18】

【0039】
(C)白金族金属系触媒
白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体/トルエン溶液(金属白金含有量0.5質量%)
【0040】
(D)その他の成分
(D−1)反応遅延剤:1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン
(D−2)補強性シリカ:ヘキサメチルジシラザンで表面処理された比表面積200m2/gのヒュームドシリカ((株)トクヤマ製、レオロシールHM−20S)
(D−3)無機充填剤:高級脂肪酸で表面処理された平均粒径0.04μmの炭酸カルシウム(丸尾カルシウム(株)製、カーレックス300)
(D−4)着色剤:赤ベンガラ(戸田ピグメント(株)製、130ED)
(D−5)チクソ性付与剤:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノブチルエーテル(日油(株)製、ユニルーブC)
【0041】
[実施例1〜4、比較例1〜3]
以上の原料を用い、まず(A−1)と(D−2)を混合し、減圧しながら150℃で2時間の熱処理を行った。次いで室温まで冷却し、(A−2)、(B−1)、(B−2)、(B−3)、(B−4)、(D−1)、(D−3)、(D−4)、(D−5)を追加して十分に混練、分散させた。最後に(C)を添加して更に混練、減圧脱泡して表1に示す組成のシリコーン弾性接着剤を得た。
【0042】
試験方法
切断時伸び: 厚さ2mmの金属製シート型に得られたシリコーン弾性接着剤を流し込み、常温プレスにより成型後23℃で24時間硬化させ、厚さ2mmの硬化物(シリコーンゴムシート)を得た。これについて、日本工業規格JIS−K6251に従って切断時伸びの数値を測定した。
【0043】
ピール試験: ポリアミド樹脂繊維の織物に付加反応(ヒドロシリル化反応)硬化型シリコーンゴム組成物(信越化学工業(株)製、X−32−2949A/B)をコートした基布の塗工面どうしを、得られたシリコーン弾性接着剤の厚みが1.0mmとなるように張り合わせ、23℃で24時間硬化させた。その後、幅25mmの短冊状に切断してテストピースとし、これを引張り試験機を用いて基布を引き剥がし、その時のピール強度(N/cm)と接着界面の凝集破壊率(面積%)を測定した。
上記の結果を表1に示す。
【0044】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンゴムが含浸又はコートされた基布の該シリコーンゴム塗工面どうしを重ね合わせ、周縁部相互を接着又は縫製して袋状に形成したエアバッグにおいて、上記基布どうしを重ね合わせて接着又は縫製する箇所に目止め材として使用されるシリコーン弾性接着剤組成物であって、
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を一分子中に平均2個以上含有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)下記一般式(1)〜(3)で示される少なくとも1つの分子中にケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を3個有し、アルケニル基を有しないオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【化1】


(式中、R1は炭素数1〜6の非置換又は置換の一価炭化水素基、Yは水素原子又はR1で、両末端のYが2個ともR1のときはm=3、片末端のYがR1で他方が水素原子のときはm=2、両末端のYが2個とも水素原子のときはm=1、nは0〜4の整数をそれぞれ示す。)
【化2】


(式中、R1は炭素数1〜6の非置換又は置換の一価炭化水素基、uは0〜6の整数をそれぞれ示す。)
【化3】


(式中、R1は炭素数1〜6の非置換又は置換の一価炭化水素基、R2は炭素数1〜12の非置換又は置換の一価炭化水素基をそれぞれ示す。):
(B)成分中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)成分中に含まれるケイ素原子に結合したアルケニル基1個当たり、0.3〜5.0個となる量、
(C)白金族金属系触媒:触媒量
を含有することを特徴とするエアバッグ用シリコーン弾性接着剤組成物。
【請求項2】
23℃で24時間硬化させた後の硬化物において、日本工業規格JIS−K6251に規定されている切断時伸びが1,000%以上であることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ用シリコーン弾性接着剤組成物。
【請求項3】
シリコーンゴムが含浸又はコートされた基布の該シリコーンゴム塗工面どうしを重ね合わせ、周縁部相互を接着又は縫製して袋状に形成したエアバッグであって、請求項1又は2に記載のシリコーン弾性接着剤組成物により、基布どうしが接着された又は縫製された箇所が目止めされたエアバッグ。

【公開番号】特開2013−112722(P2013−112722A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258799(P2011−258799)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】