エジェクトピン及び該エジェクトピンを具えた成形装置
【課題】外観上の見映えを損なわず、離型後の成形品を保持できるエジェクトピン及び成形装置を提供する。
【解決手段】発泡樹脂ビーズを成形する成形装置用のエジェクトピン1は、先端面20が成形品を押し出すピン本体10を有する。該先端面20に発泡樹脂ビーズの粒径よりも小さな幅又は径を有する通気部を形成して、該通気部は、ピン本体10内を通る貫通孔31に連通している。通気部は先端面20に形成された溝22、23、24、又は先端面20に嵌まる嵌合子6に開設されたスリット60又は孔65である。
【解決手段】発泡樹脂ビーズを成形する成形装置用のエジェクトピン1は、先端面20が成形品を押し出すピン本体10を有する。該先端面20に発泡樹脂ビーズの粒径よりも小さな幅又は径を有する通気部を形成して、該通気部は、ピン本体10内を通る貫通孔31に連通している。通気部は先端面20に形成された溝22、23、24、又は先端面20に嵌まる嵌合子6に開設されたスリット60又は孔65である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形品を押し出すエジェクトピン及び該エジェクトピンを具えた成形装置に関し、特に発泡樹脂成形品を押し出すエジェクトピン及び成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡成形品を成形する成形装置には、固定型と移動型を対向させて設け、移動型を横に移動させて成形品を取り出すものがある。この離型時に成形品を不用意に落下させない工夫がなされた成形装置が従来から提案されている。
図11(a)、(b)は、従来の成形装置(7)を示す断面図である(特許文献1参照)。これは、固定型(4)と移動型(5)の間の空間であるキャビティ(50)に発泡樹脂ビーズが充填される。固定型(4)にはキャビティ(50)に発泡樹脂ビーズを送るフィーダ(40)、及び離型後にキャビティ(50)内の発泡樹脂の成形品(8)を押し出すエジェクトピン(1)が設けられている。エジェクトピン(1)はガイド(41)に嵌まって、キャビティ(50)に対して出没可能に設けられる。
【0003】
固定型(4)と移動型(5)の外側には、夫々加熱冷却室(42)(51)が配備され、該加熱冷却室(42)(51)に加熱蒸気を送ってキャビティ(50)内の発泡樹脂ビーズを発泡・融着させ、冷却水を送って成形後の成形品を冷却する。
成形時には、図11(a)に示すように、固定型(4)と移動型(5)を型締めした状態で、フィーダ(40)から発泡樹脂ビーズをキャビティ(50)内に送る。加熱冷却室(42)(51)に送られた加熱蒸気によって発泡樹脂ビーズを発泡・融着させた後に、加熱冷却室(42)(51)に冷却水を送って成形品(8)を凝固させる。図11(b)に示すように、移動型(5)を固定型(4)から離して、エジェクトピン(1)にて成形品(8)を固定型(4)から押し出す。
このとき、成形品(8)がエジェクトピン(1)から落下しないように、図12に示すように、エジェクトピン(1)の先端部に成形品(8)に刺さる針(15)を設けて、成形品(8)を保持するものがある。
また、図13に示すように、エジェクトピン(1)の先端面に凹面(16)を設けるとともに、エジェクトピン(1)内部に凹面(16)に連通する貫通孔(31)を開設し、貫通孔(31)に接続される吸引装置(図示せず)にて成形品(8)を吸引して保持することも提案されている。
針(15)に保持され、又は吸引装置にて吸引された成形品(8)は、離型後に固定型(4)と移動型(5)の間に進入する取出し装置(図示せず)によって取り出される。
【0004】
【特許文献1】特開平5−42610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図12に示す針(15)を設けたエジェクトピン(1)では成形品(8)の表面に穴が開き、成形品の見映えを損う。特に該穴に水分が浸入すると、成形品(8)によっては異物が染み込み、汚れとなる。
また、図13に示すように、エジェクトピン(1)の先端面に凹面(16)を設けて成形品(8)を吸引すると、該凹面(16)に完全に凝固する前の発泡樹脂ビーズが入り込み、成形品(8)の表面に不要な凸面を形成することがある。即ち、従来のエジェクトピン(1)では、成形品(8)の外観の見映えを損なうことがあった。
本発明の目的は、外観上の見映えを損なわず、離型後の成形品を保持できるエジェクトピン及び成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発泡樹脂ビーズを成形する成形装置用のエジェクトピン(1)は、先端面(20)が成形品を押し出すピン本体(10)を有する。該先端面(20)に発泡樹脂ビーズの粒径よりも小さな幅又は径を有する通気部を形成して、該通気部は、ピン本体(10)内を軸方向に延びた貫通孔(31)に繋がっている。
【発明の効果】
【0007】
1.成形時には、ピン本体(10)の先端面(20)に形成した通気部、具体的にはスリット(60)、孔(65)又は溝(22)(23)(24)を介して、成形品(8)を吸引する。通気部の幅又は径は、成形品(8)の材料である発泡樹脂ビーズの粒径よりも狭い。これにより、成形品(8)の吸引時に発泡樹脂ビーズは、通気部に入り込まず、成形品(8)の表面に不要な凸面を形成せず、成形品(8)の外観の見映えを損なわない。また、成形品(8)は吸引されているから、離型後に不用意に落下しない。
2.離型後に成形品(8)を取り出すときは、通気部を介して空気を送り込めば、成形品(8)は簡単にエジェクトピン(1)から外れる。これにより、離型時に成形品(8)がエジェクトピン(1)から離れにくい不良は低減できる。
更に、成形品(8)の保持、取出しのタイミングを、作業者の任意に設定することができ、成形作業が楽になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1実施例
以下、本発明の一実施例を図を用いて、詳述する。
図1は、本例の成形装置(7)を示す断面平面図である。該成形装置(7)は、図11(a)、(b)に示す従来の成形装置に近似しているが、エジェクトピン(1)の基端部に給排気用のチューブ(70)が接続している。該チューブ(70)は給排気装置(図示せず)に繋がる。
図2は、エジェクトピン(1)の断面平面図であり、図3(a)は、図2のピン本体(10)の左側面図、図3(b)は、ピン本体(10)の先端の右側面図である。エジェクトピン(1)のピン本体(10)は、成形品の押出し方向に沿って、軸部(30)と、小径部(3)と、大径部(2)を順に具え、大径部(2)の先端面(20)が成形品を押し出す。該大径部(2)の先端面(20)に、断面円形の凹部(21)が開設されている。凹部(21)はピン本体(10)内を軸方向(ピン本体(10)の長手方向)に延びた貫通孔(31)に繋がり、該貫通孔(31)の基端部に前記のチューブ(70)が接続される。凹部(21)には後記するように嵌合子(6)が嵌まる。
【0009】
小径部(3)と大径部(2)は断面円形であるが、軸部(30)は回り止めの為に断面六角形に形成されている。これは例えば図4に示すように、ピン本体(10)の中には、成形品の形状に合わせて、先端面(20)が押出し方向に対して、斜めに傾いたものがある。このようなピン本体(10)が中心軸Lを中心として回転すると、一点鎖線で示すように、先端面(20)の向きが変わり、成形品(8)を正確に突き出すことができない。
従って、ピン本体(10)の軸部(30)及びガイド(41)内面を断面六角形に形成して、ピン本体(10)が不用意に回転することを防止している。固定型(4)は成形品(8)の形状に合わせて交換するが、ガイド(41)は成形品(8)の形状に拘わらず同じものを使用するから、先端面(20)が押し出し方向に対し、略直交した垂直面であっても、ガイド(41)に合わせて、軸部(30)を断面六角形に形成している。
【0010】
大径部(2)の先端面(20)上にて、凹部(21)の周縁には、環状の第1溝(22)が形成され、該第1溝(22)の内端は凹部(21)に繋がる。該第1溝(22)から多数の第2溝(23)(23)が放射状に外向きに延びる。更に、第2溝(23)(23)の外端を繋いだ環状の第3溝(24)が、第1溝(22)の外側に同心円に形成される。先端面(20)上にて、第1溝(22)の外側には環状の第3溝(24)が形成され、第2溝(23)の外端は第3溝(24)に繋がる。
第1乃至第3溝(22)(23)(24)は断面V字形、又は断面U字形に形成され、各両溝(22)(23)(24)の断面形状及び深さは、同じでなくてもよいが、第1乃至第3溝(22)(23)(24)の幅(図3(b)のt1)は、成形品の原料である樹脂ビーズの径よりも狭くする必要がある。これは仮に、第1乃至第3溝(22)(23)(24)の幅が樹脂ビーズの径よりも広ければ、発泡時の樹脂ビーズが第1乃至第3溝(22)(23)(24)に入り込み、成形品表面に凸部が形成されるため、それらを防ぐためである。第1乃至第3溝(22)(23)(24)の幅は、0.1−0.8mm、好ましくは0.3mm−0.8mmであるが、この幅に限定されない。
【0011】
図5は、凹部(21)に嵌まる嵌合子(6)の斜視図である。嵌合子(6)は金属製で円筒状の汎用品であって、先端部に複数のスリット(60)(60)が開設され、内側に穴底が開口しスリット(60)(60)に繋がった凹み(61)が開設されている(図2参照)。スリット(60)の幅Sは、第1乃至第3溝(22)(23)(24)と同様に、樹脂ビーズの径よりも狭く、スリット(60)に樹脂ビーズは嵌まらない。
図6は、嵌合子(6)を嵌めた大径部(2)の右側面図である。嵌合子(6)のスリット(60)は、凹部(21)の周縁の第1溝(22)に連通する。従って、第3溝(24)から貫通孔(31)までは嵌合子(6)を介して空気の流通が可能であり、第1乃至第3溝(22)(23)(24)及びスリット(60)は、通気部を形成する。
従って、貫通孔(31)から空気を吸引して大径部(2)の凹部(21)を負圧にすると、嵌合子(6)を介して、第1乃至第3溝(22)(23)(24)も負圧になり、吸引力が作用する。即ち、大径部(2)の先端面(20)には、第1乃至第3溝(22)(23)(24)が形成された広範囲に亘って吸引力が作用する。
本例では、嵌合子(6)にスリット(60)を開設しているが、図7に示すように、該スリット(60)に代えて多数の孔(65)(65)を開設してもよい。この場合、孔(65)の径t2は、樹脂ビーズの径よりも小さい。但し、図7の孔(65)は第1乃至第3溝(22)(23)(24)に繋がらないので、吸引力を大きくするには、嵌合子(6)の径を大きくする必要がある。
【0012】
図8は、図6の大径部(2)を拡大した断面平面図であって、エジェクトピン(1)が成形品(8)を吸引しながら固定型(4)から押し出された状態を示す。図8は、大径部(2)を図6のB−B線を含む面にて破断し矢視し、図示の便宜上、90度違えている。前記の如く、大径部(2)の先端面(20)の内側には、広範囲に亘って吸引力が作用するから、成形品(8)を吸引する力を強くすることができ、ピン本体(10)を押し出しても、成形品(8)は落下しない。貫通孔(31)から空気を給気すれば、負圧状態が解除されて、成形品(8)を取出し装置にて取り出すことができる。
【0013】
第2実施例
図9は、他のピン本体(10)の先端面(20)を示す側面図である。本例では、先端面(20)上にて第3溝(24)の内側に、中心軸Lを通って互いに直交する2つの第4溝(25)(25)を開設し、該第4溝(25)(25)によって先端面(20)は4つの面に仕切られる。仕切られた各面内に前記の嵌合子(6)が嵌まる凹部(21)を開設している。各凹部(21)は第3溝(24)に連通する。
図10は、図9の大径部(2)をC−C線を含む面にて破断し矢視した拡大断面図であり、図示の便宜上、90度違えている。貫通孔(31)は大径部(2)内にて分かれて、各凹部(21)に繋がる。この構成によっても、嵌合子(6)を介して、成形品(8)を吸引又は取り出すことができる。
ピン本体(10)の長手方向に亘って、ピン本体(10)を貫通するスリット(60)を直接開設することも考えられる。しかし、スリット(60)は幅が細いため、ピン本体(10)を軸方向に貫通するスリット(60)を開設することが実際には難しい。従って、エジェクトピン(1)を上記にて開示したように構成している。
【0014】
本例の効果
本例のエジェクトピン(1)及び該エジェクトピン(1)を用いた成形装置には、以下の利点がある。
1.成形時に、ピン本体(10)の先端面(20)に形成したスリット(60)、孔(65)又は溝(22)(23)(24)である通気部を介して、成形品(8)を吸引し、通気部の径又は幅は、成形品(8)の材料である発泡樹脂ビーズの粒径よりも狭い。これにより、成形品(8)の吸引時に発泡樹脂ビーズは、スリット(60)、孔(65)又は溝(22)(23)(24)に入り込まず、成形品(8)の表面に不要な突面を形成しない。即ち、成形品(8)の外観の見映えを損なわない。また、成形品(8)は吸引されているから、離型後に不用意に落下しない。
2.通気部は、先端面(20)の全面に亘って多数形成されて、先端面(20)の広い面積に吸引力を及ぼす。これにより、成形品(8)の吸引力が大きくなり、成形品(8)が重くても、成形品(8)を不用意に落下させずに保持できる。
また、離型後に成形品(8)を取り出すときは、貫通孔(31)を介して通気部に空気を送り込めば、成形品(8)は簡単にエジェクトピン(1)から外れる。これにより、離型時に成形品(8)がエジェクトピン(1)から離れにくいとの不良を低減することができる。成形品(8)がエジェクトピン(1)から離れないと、最悪の場合、成形装置(7)の運転停止や、成形品(8)の形状不良に繋がるが、本例ではこの虞れはない。
更に、成形品(8)の保持、取出しのタイミングを、作業者の任意に設定することができ、成形作業が容易になる。
3.本例にあっては、エジェクトピン(1)の改造と給排気装置の設定だけで、成形品(8)を良好に保持又は取り出すことができ、大がかりな成形装置の改造を必要としない。従って、低コストと短時間で、成形品(8)を良好に保持又は取り出す効果を達成することができる。
【0015】
上記実施例の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】成形装置を示す断面平面図である。
【図2】エジェクトピンの断面平面図である。
【図3】(a)は、図2のピン本体の左側面図、(b)は、ピン本体の先端の右側面図である。
【図4】先端面が傾いたピン本体を示す図である。
【図5】嵌合子の斜視図である。
【図6】嵌合子を嵌めた大径部の右側面図である。
【図7】別の大径部を示す側面図である。
【図8】大径部を拡大した断面平面図であって、成形品を吸引しながら固定型から押し出された状態を示す。
【図9】他のピン本体の先端面を示す側面図である。
【図10】図9の大径部をC−C線を含む面にて破断し矢視した拡大断面図である。
【図11】(a)、(b)は、従来の成形装置を示す断面図である。
【図12】従来のエジェクトピンの正面図である。
【図13】別の従来のエジェクトピンの正面図である。
【符号の説明】
【0017】
(1) エジェクトピン
(6) 嵌合子
(10) ピン本体
(20) 先端面
(31) 貫通孔
(60) スリット
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形品を押し出すエジェクトピン及び該エジェクトピンを具えた成形装置に関し、特に発泡樹脂成形品を押し出すエジェクトピン及び成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡成形品を成形する成形装置には、固定型と移動型を対向させて設け、移動型を横に移動させて成形品を取り出すものがある。この離型時に成形品を不用意に落下させない工夫がなされた成形装置が従来から提案されている。
図11(a)、(b)は、従来の成形装置(7)を示す断面図である(特許文献1参照)。これは、固定型(4)と移動型(5)の間の空間であるキャビティ(50)に発泡樹脂ビーズが充填される。固定型(4)にはキャビティ(50)に発泡樹脂ビーズを送るフィーダ(40)、及び離型後にキャビティ(50)内の発泡樹脂の成形品(8)を押し出すエジェクトピン(1)が設けられている。エジェクトピン(1)はガイド(41)に嵌まって、キャビティ(50)に対して出没可能に設けられる。
【0003】
固定型(4)と移動型(5)の外側には、夫々加熱冷却室(42)(51)が配備され、該加熱冷却室(42)(51)に加熱蒸気を送ってキャビティ(50)内の発泡樹脂ビーズを発泡・融着させ、冷却水を送って成形後の成形品を冷却する。
成形時には、図11(a)に示すように、固定型(4)と移動型(5)を型締めした状態で、フィーダ(40)から発泡樹脂ビーズをキャビティ(50)内に送る。加熱冷却室(42)(51)に送られた加熱蒸気によって発泡樹脂ビーズを発泡・融着させた後に、加熱冷却室(42)(51)に冷却水を送って成形品(8)を凝固させる。図11(b)に示すように、移動型(5)を固定型(4)から離して、エジェクトピン(1)にて成形品(8)を固定型(4)から押し出す。
このとき、成形品(8)がエジェクトピン(1)から落下しないように、図12に示すように、エジェクトピン(1)の先端部に成形品(8)に刺さる針(15)を設けて、成形品(8)を保持するものがある。
また、図13に示すように、エジェクトピン(1)の先端面に凹面(16)を設けるとともに、エジェクトピン(1)内部に凹面(16)に連通する貫通孔(31)を開設し、貫通孔(31)に接続される吸引装置(図示せず)にて成形品(8)を吸引して保持することも提案されている。
針(15)に保持され、又は吸引装置にて吸引された成形品(8)は、離型後に固定型(4)と移動型(5)の間に進入する取出し装置(図示せず)によって取り出される。
【0004】
【特許文献1】特開平5−42610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図12に示す針(15)を設けたエジェクトピン(1)では成形品(8)の表面に穴が開き、成形品の見映えを損う。特に該穴に水分が浸入すると、成形品(8)によっては異物が染み込み、汚れとなる。
また、図13に示すように、エジェクトピン(1)の先端面に凹面(16)を設けて成形品(8)を吸引すると、該凹面(16)に完全に凝固する前の発泡樹脂ビーズが入り込み、成形品(8)の表面に不要な凸面を形成することがある。即ち、従来のエジェクトピン(1)では、成形品(8)の外観の見映えを損なうことがあった。
本発明の目的は、外観上の見映えを損なわず、離型後の成形品を保持できるエジェクトピン及び成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発泡樹脂ビーズを成形する成形装置用のエジェクトピン(1)は、先端面(20)が成形品を押し出すピン本体(10)を有する。該先端面(20)に発泡樹脂ビーズの粒径よりも小さな幅又は径を有する通気部を形成して、該通気部は、ピン本体(10)内を軸方向に延びた貫通孔(31)に繋がっている。
【発明の効果】
【0007】
1.成形時には、ピン本体(10)の先端面(20)に形成した通気部、具体的にはスリット(60)、孔(65)又は溝(22)(23)(24)を介して、成形品(8)を吸引する。通気部の幅又は径は、成形品(8)の材料である発泡樹脂ビーズの粒径よりも狭い。これにより、成形品(8)の吸引時に発泡樹脂ビーズは、通気部に入り込まず、成形品(8)の表面に不要な凸面を形成せず、成形品(8)の外観の見映えを損なわない。また、成形品(8)は吸引されているから、離型後に不用意に落下しない。
2.離型後に成形品(8)を取り出すときは、通気部を介して空気を送り込めば、成形品(8)は簡単にエジェクトピン(1)から外れる。これにより、離型時に成形品(8)がエジェクトピン(1)から離れにくい不良は低減できる。
更に、成形品(8)の保持、取出しのタイミングを、作業者の任意に設定することができ、成形作業が楽になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1実施例
以下、本発明の一実施例を図を用いて、詳述する。
図1は、本例の成形装置(7)を示す断面平面図である。該成形装置(7)は、図11(a)、(b)に示す従来の成形装置に近似しているが、エジェクトピン(1)の基端部に給排気用のチューブ(70)が接続している。該チューブ(70)は給排気装置(図示せず)に繋がる。
図2は、エジェクトピン(1)の断面平面図であり、図3(a)は、図2のピン本体(10)の左側面図、図3(b)は、ピン本体(10)の先端の右側面図である。エジェクトピン(1)のピン本体(10)は、成形品の押出し方向に沿って、軸部(30)と、小径部(3)と、大径部(2)を順に具え、大径部(2)の先端面(20)が成形品を押し出す。該大径部(2)の先端面(20)に、断面円形の凹部(21)が開設されている。凹部(21)はピン本体(10)内を軸方向(ピン本体(10)の長手方向)に延びた貫通孔(31)に繋がり、該貫通孔(31)の基端部に前記のチューブ(70)が接続される。凹部(21)には後記するように嵌合子(6)が嵌まる。
【0009】
小径部(3)と大径部(2)は断面円形であるが、軸部(30)は回り止めの為に断面六角形に形成されている。これは例えば図4に示すように、ピン本体(10)の中には、成形品の形状に合わせて、先端面(20)が押出し方向に対して、斜めに傾いたものがある。このようなピン本体(10)が中心軸Lを中心として回転すると、一点鎖線で示すように、先端面(20)の向きが変わり、成形品(8)を正確に突き出すことができない。
従って、ピン本体(10)の軸部(30)及びガイド(41)内面を断面六角形に形成して、ピン本体(10)が不用意に回転することを防止している。固定型(4)は成形品(8)の形状に合わせて交換するが、ガイド(41)は成形品(8)の形状に拘わらず同じものを使用するから、先端面(20)が押し出し方向に対し、略直交した垂直面であっても、ガイド(41)に合わせて、軸部(30)を断面六角形に形成している。
【0010】
大径部(2)の先端面(20)上にて、凹部(21)の周縁には、環状の第1溝(22)が形成され、該第1溝(22)の内端は凹部(21)に繋がる。該第1溝(22)から多数の第2溝(23)(23)が放射状に外向きに延びる。更に、第2溝(23)(23)の外端を繋いだ環状の第3溝(24)が、第1溝(22)の外側に同心円に形成される。先端面(20)上にて、第1溝(22)の外側には環状の第3溝(24)が形成され、第2溝(23)の外端は第3溝(24)に繋がる。
第1乃至第3溝(22)(23)(24)は断面V字形、又は断面U字形に形成され、各両溝(22)(23)(24)の断面形状及び深さは、同じでなくてもよいが、第1乃至第3溝(22)(23)(24)の幅(図3(b)のt1)は、成形品の原料である樹脂ビーズの径よりも狭くする必要がある。これは仮に、第1乃至第3溝(22)(23)(24)の幅が樹脂ビーズの径よりも広ければ、発泡時の樹脂ビーズが第1乃至第3溝(22)(23)(24)に入り込み、成形品表面に凸部が形成されるため、それらを防ぐためである。第1乃至第3溝(22)(23)(24)の幅は、0.1−0.8mm、好ましくは0.3mm−0.8mmであるが、この幅に限定されない。
【0011】
図5は、凹部(21)に嵌まる嵌合子(6)の斜視図である。嵌合子(6)は金属製で円筒状の汎用品であって、先端部に複数のスリット(60)(60)が開設され、内側に穴底が開口しスリット(60)(60)に繋がった凹み(61)が開設されている(図2参照)。スリット(60)の幅Sは、第1乃至第3溝(22)(23)(24)と同様に、樹脂ビーズの径よりも狭く、スリット(60)に樹脂ビーズは嵌まらない。
図6は、嵌合子(6)を嵌めた大径部(2)の右側面図である。嵌合子(6)のスリット(60)は、凹部(21)の周縁の第1溝(22)に連通する。従って、第3溝(24)から貫通孔(31)までは嵌合子(6)を介して空気の流通が可能であり、第1乃至第3溝(22)(23)(24)及びスリット(60)は、通気部を形成する。
従って、貫通孔(31)から空気を吸引して大径部(2)の凹部(21)を負圧にすると、嵌合子(6)を介して、第1乃至第3溝(22)(23)(24)も負圧になり、吸引力が作用する。即ち、大径部(2)の先端面(20)には、第1乃至第3溝(22)(23)(24)が形成された広範囲に亘って吸引力が作用する。
本例では、嵌合子(6)にスリット(60)を開設しているが、図7に示すように、該スリット(60)に代えて多数の孔(65)(65)を開設してもよい。この場合、孔(65)の径t2は、樹脂ビーズの径よりも小さい。但し、図7の孔(65)は第1乃至第3溝(22)(23)(24)に繋がらないので、吸引力を大きくするには、嵌合子(6)の径を大きくする必要がある。
【0012】
図8は、図6の大径部(2)を拡大した断面平面図であって、エジェクトピン(1)が成形品(8)を吸引しながら固定型(4)から押し出された状態を示す。図8は、大径部(2)を図6のB−B線を含む面にて破断し矢視し、図示の便宜上、90度違えている。前記の如く、大径部(2)の先端面(20)の内側には、広範囲に亘って吸引力が作用するから、成形品(8)を吸引する力を強くすることができ、ピン本体(10)を押し出しても、成形品(8)は落下しない。貫通孔(31)から空気を給気すれば、負圧状態が解除されて、成形品(8)を取出し装置にて取り出すことができる。
【0013】
第2実施例
図9は、他のピン本体(10)の先端面(20)を示す側面図である。本例では、先端面(20)上にて第3溝(24)の内側に、中心軸Lを通って互いに直交する2つの第4溝(25)(25)を開設し、該第4溝(25)(25)によって先端面(20)は4つの面に仕切られる。仕切られた各面内に前記の嵌合子(6)が嵌まる凹部(21)を開設している。各凹部(21)は第3溝(24)に連通する。
図10は、図9の大径部(2)をC−C線を含む面にて破断し矢視した拡大断面図であり、図示の便宜上、90度違えている。貫通孔(31)は大径部(2)内にて分かれて、各凹部(21)に繋がる。この構成によっても、嵌合子(6)を介して、成形品(8)を吸引又は取り出すことができる。
ピン本体(10)の長手方向に亘って、ピン本体(10)を貫通するスリット(60)を直接開設することも考えられる。しかし、スリット(60)は幅が細いため、ピン本体(10)を軸方向に貫通するスリット(60)を開設することが実際には難しい。従って、エジェクトピン(1)を上記にて開示したように構成している。
【0014】
本例の効果
本例のエジェクトピン(1)及び該エジェクトピン(1)を用いた成形装置には、以下の利点がある。
1.成形時に、ピン本体(10)の先端面(20)に形成したスリット(60)、孔(65)又は溝(22)(23)(24)である通気部を介して、成形品(8)を吸引し、通気部の径又は幅は、成形品(8)の材料である発泡樹脂ビーズの粒径よりも狭い。これにより、成形品(8)の吸引時に発泡樹脂ビーズは、スリット(60)、孔(65)又は溝(22)(23)(24)に入り込まず、成形品(8)の表面に不要な突面を形成しない。即ち、成形品(8)の外観の見映えを損なわない。また、成形品(8)は吸引されているから、離型後に不用意に落下しない。
2.通気部は、先端面(20)の全面に亘って多数形成されて、先端面(20)の広い面積に吸引力を及ぼす。これにより、成形品(8)の吸引力が大きくなり、成形品(8)が重くても、成形品(8)を不用意に落下させずに保持できる。
また、離型後に成形品(8)を取り出すときは、貫通孔(31)を介して通気部に空気を送り込めば、成形品(8)は簡単にエジェクトピン(1)から外れる。これにより、離型時に成形品(8)がエジェクトピン(1)から離れにくいとの不良を低減することができる。成形品(8)がエジェクトピン(1)から離れないと、最悪の場合、成形装置(7)の運転停止や、成形品(8)の形状不良に繋がるが、本例ではこの虞れはない。
更に、成形品(8)の保持、取出しのタイミングを、作業者の任意に設定することができ、成形作業が容易になる。
3.本例にあっては、エジェクトピン(1)の改造と給排気装置の設定だけで、成形品(8)を良好に保持又は取り出すことができ、大がかりな成形装置の改造を必要としない。従って、低コストと短時間で、成形品(8)を良好に保持又は取り出す効果を達成することができる。
【0015】
上記実施例の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】成形装置を示す断面平面図である。
【図2】エジェクトピンの断面平面図である。
【図3】(a)は、図2のピン本体の左側面図、(b)は、ピン本体の先端の右側面図である。
【図4】先端面が傾いたピン本体を示す図である。
【図5】嵌合子の斜視図である。
【図6】嵌合子を嵌めた大径部の右側面図である。
【図7】別の大径部を示す側面図である。
【図8】大径部を拡大した断面平面図であって、成形品を吸引しながら固定型から押し出された状態を示す。
【図9】他のピン本体の先端面を示す側面図である。
【図10】図9の大径部をC−C線を含む面にて破断し矢視した拡大断面図である。
【図11】(a)、(b)は、従来の成形装置を示す断面図である。
【図12】従来のエジェクトピンの正面図である。
【図13】別の従来のエジェクトピンの正面図である。
【符号の説明】
【0017】
(1) エジェクトピン
(6) 嵌合子
(10) ピン本体
(20) 先端面
(31) 貫通孔
(60) スリット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡樹脂ビーズを成形する成形装置に用いられ、先端面が成形品を押し出すピン本体を有して、ピン本体内に軸方向に延びた貫通孔を開設したエジェクトピンに於いて、
該ピン本体の先端面に、発泡樹脂ビーズの粒径よりも小さな幅又は径を有する通気部を形成して、該通気部は貫通孔に連通していることを特徴とするエジェクトピン。
【請求項2】
通気部は、スリット又は溝を含み、該スリット又は溝は、先端面の中心部から外向きに延びている、請求項1に記載のエジェクトピン。
【請求項3】
通気部は、スリット及び溝を含み、スリットは、先端面に嵌まる嵌合子に形成され、溝は先端面に形成されて、スリットと溝は連通する、請求項1に記載のエジェクトピン。
【請求項4】
嵌合子は、先端面に複数嵌められている、請求項3に記載のエジェクトピン。
【請求項5】
固定型と可動型を接近離間可能に対向配備し、固定型に、先端面が成形品を押し出すピン本体を有するエジェクトピンを出没可能に設け、ピン本体には軸方向に延びた貫通孔が開設され、貫通孔は給排気装置に接続される発泡樹脂ビーズ成形用の成形装置に於いて、
該ピン本体の先端面に、発泡樹脂ビーズの粒径よりも小さな幅又は径を有する通気部を形成して、該通気部は貫通孔に連通していることを特徴とする成形装置。
【請求項1】
発泡樹脂ビーズを成形する成形装置に用いられ、先端面が成形品を押し出すピン本体を有して、ピン本体内に軸方向に延びた貫通孔を開設したエジェクトピンに於いて、
該ピン本体の先端面に、発泡樹脂ビーズの粒径よりも小さな幅又は径を有する通気部を形成して、該通気部は貫通孔に連通していることを特徴とするエジェクトピン。
【請求項2】
通気部は、スリット又は溝を含み、該スリット又は溝は、先端面の中心部から外向きに延びている、請求項1に記載のエジェクトピン。
【請求項3】
通気部は、スリット及び溝を含み、スリットは、先端面に嵌まる嵌合子に形成され、溝は先端面に形成されて、スリットと溝は連通する、請求項1に記載のエジェクトピン。
【請求項4】
嵌合子は、先端面に複数嵌められている、請求項3に記載のエジェクトピン。
【請求項5】
固定型と可動型を接近離間可能に対向配備し、固定型に、先端面が成形品を押し出すピン本体を有するエジェクトピンを出没可能に設け、ピン本体には軸方向に延びた貫通孔が開設され、貫通孔は給排気装置に接続される発泡樹脂ビーズ成形用の成形装置に於いて、
該ピン本体の先端面に、発泡樹脂ビーズの粒径よりも小さな幅又は径を有する通気部を形成して、該通気部は貫通孔に連通していることを特徴とする成形装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−230087(P2008−230087A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−74048(P2007−74048)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】
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