説明

エッグフロー設備の制御機構

【課題】搬送コンベアで処理装置に搬送する鶏卵の時間当たり搬送量を一定させるように、かつ同一鶏卵グループをまとめて搬送するエッグフロー設備の制御機構を提供する。
【課題の解決手段】制御機構は、例えば同じ鶏卵グループを排出する排出ベルト2a,3a,5aは、同じ長さを有するとともに同速度で移動させ、搬送コンベア12の上流側に配置されたものが下流側のものより上位の排出順位となるように制御し、排出順位最上位の排出ベルト2aが排出開始後、一定時間でカウンタ2dによりカウントした鶏卵数から算出した時間当たり設定排出量を、設定搬送量から算出した設定排出量と比較し、前記設定排出量となるべく排出ベルト2aの排出速度を修正するように制御し、また排出順位が上位の排出ベルト2aの排出した搬送コンベア12上の鶏卵の先頭が下位の排出ベルト3a端部に到達した時に排出開始するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産卵鶏を飼育する複数の鶏舎を備え、これら鶏舎から排出した鶏卵をグループにまとめて、洗卵部やパッキング部などを備える処理装置に搬送コンベアで搬送するエッグフロー設備の制御装置に係り、特に、複数の鶏舎から排出された複数の鶏卵グループを各別に所定の距離を置いて搬送するようになしたエッグフロー設備の制御機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、鶏卵は産卵鶏の日齢あるいは与える餌の種類などの条件によって、大きさや色、販売価格が異なるものとなるが、販売業者の要望に応じた条件、例えば大きさの鶏卵を指定された時間までに出荷する必要がある。そして、処理装置の処理能力を無駄なく発揮させるためには、搬送コンベアから送り込まれる鶏卵の時間当たり搬送量を、前記処理能力を有効に発揮させ得る一定量に維持することが求められる。加えて、処理装置に向けて搬送される鶏卵は、パッキング処理の前に指定の鶏卵グループ毎にまとめる一方、処理装置にて各別に処理する鶏卵グループは、搬送コンベア上において所定距離分離した状態にする必要がある。従来のエッグフロー設備は、作業員が自身の経験などで判断して、各鶏舎から搬送コンベアに鶏卵を排出する各排出ベルトを順次始動させていた。
【0003】
また、鶏卵グループ毎に処理装置に搬送するための従来のエッグフロー設備としては、集卵コンベアに、移動方向に伸びる互いに区画された複数の搬送路を設け、前記各搬送路を各別に複数の鶏舎に接続するという技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−262487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の、作業員が判断して排出ベルトを各別に始動するエッグフロー設備は、鶏舎数が多くなると搬送路が長くなり、移動する搬送ベルト上の鶏卵を確認しにくくなり、的確に各排出ベルトの排出速度の決定及び排出開始の決定を行うことが困難になる。そして、搬送コンベアの時間当たり搬送量が一定しなかったり、鶏卵グループ間の距離が開き過ぎたりして、処理装置の処理能力を有効に利用できないだけでなく長い搬送時間及び処理時間を要し、出荷時間に間に合わなくなるなどの問題が発生し易かった。
【0006】
また、上記複数の搬送路を設けた従来技術は、例えば3棟の鶏舎のうち2棟の鶏舎において産卵された鶏卵グループと、残る1棟の鶏舎で産卵された鶏卵グループを区分けして処理装置に搬送する場合、2つの鶏卵グループを搬送路端に設けた処理装置に送り込む前には、洗卵やパッキングなどの、各鶏卵グループに応じた処理を円滑に行うべく、鶏卵グループ別にまとめるための合流経路などの手段を必要とする。加えて、各鶏舎は予め決まった搬送路に接続され、各鶏卵グループに応じた処理を施す処理装置の処理部に連繋しているので、ある鶏舎で産卵された鶏卵を前とは異なる鶏卵グループに組み入れて採卵する場合、前とは異なる処理を行う前記前記処理部に連繋することができないという問題がある。
【0007】
本発明は、前述の問題を解決することを課題とし、時間当たり搬送量を設定どおりに実現するとともに、所望の鶏卵グループどうしはまとめて搬送する一方、他の鶏卵グループとはグループ間に適度の距離をおいて搬送することが可能なエッグフロー設備の制御機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、
鶏卵の各種処理を行う処理装置から遠い上流から下流に向って鶏卵を搬送する搬送コンベアと、前記搬送コンベアに沿って配置された複数の鶏舎内にそれぞれ設けられ、産卵後の鶏卵を前記搬送コンベア上に排出するようになした、それぞれが各別に排出速度調節可能な排出ベルトとからなり、それぞれの鶏舎は収容された産卵鶏を同一条件で飼育して得た鶏卵を前記排出ベルトで排出するようになしたエッグフロー設備の制御機構であって、
制御機構は、入力部と出力部とを備えた制御部を有し、前記制御部には、搬送コンベアの搬送速度を検知する搬送速度検知器と、各排出ベルトの排出速度を検知する排出速度検知器と、排出ベルトから搬送コンベアに排出される鶏卵数をカウントするカウンタと、を接続するとともに、出力部を、排出ベルトの排出速度を調整する駆動部に接続し、
前記制御部は、同じ鶏卵グループにまとめられる各鶏舎の排出ベルトにおいて、
排出開始の順位(以下、排出順位という)が最上位の排出ベルトは、予め設定した初期排出速度で駆動するよう制御するとともに、
排出順位下位の排出ベルトを、前記排出順位最上位の排出ベルトとの距離と、搬送コンべアの搬送速度と、前記排出順位最上位の排出ベルトの排出開始時間と、に基づいて演算を行い、前記最上位の排出ベルトの排出した搬送コンベア上の鶏卵の先頭が、前記下位の排出ベルトに到達した時に、該下位の排出ベルトが排出開始するように制御し、
また、前記排出順位下位の排出ベルトを、前記最上位の排出ベルトの排出開始から完了までにかかる時間と同等となるように排出速度補正を行い、前記各排出ベルトから排出された搬送コンベア上の各最後尾の鶏卵位置を揃えるように制御することを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項2に係る発明は、前記請求項1に係る発明の構成に加えて、
制御部は、同じ鶏卵グループにまとめられる各鶏舎の排出ベルトにおいて、
最上位の排出ベルトを、予め設定した初期排出速度で排出開始後、一定時間内にカウンタによりカウントした鶏卵数から算出した時間当たり排出量と、入力部から予め入力した時間当たり設定搬送量に対応する時間当たり設定排出量とを比較し、前記時間当たり設定排出量になるように、排出開始から完了までにかかる時間に対応した排出速度に修正するように制御し、
また、排出順位下位の排出ベルトを、前記排出順位最上位の排出ベルトの前記修正速度による排出開始から完了までにかかる時間に対応するように排出速度の修正をするように制御することを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項3に係る発明は、前記請求項1又は請求項2に係る発明の構成に加えて、
制御部は、同じ鶏卵グループにまとめられる各鶏舎の排出ベルトにおいて、
排出順位下位の排出ベルトを、それぞれの排出速度検知器から得た速度情報に基づいて、排出順位最上位の排出ベルトの排出開始から完了までにかかる時間に対応させるように排出速度の補正を複数回行い、搬送コンベア上において同じ鶏卵グループの最後尾の鶏卵位置を揃えるように制御することを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項4に係る発明は、前記請求項1〜請求項3に係る発明の構成に加えて、
エッグフロー設備には、互いに異なる鶏卵グループをにまとめられる各鶏舎の排出ベルトを混在させ、
制御部は、互いに異なる鶏卵グループにまとめられる各鶏舎の排出ベルトにおいて
搬送順位下位の鶏卵グループに属する排出ベルトを、搬送順位上位の鶏卵グループに属する所定の排出ベルトの長さ及び排出速度と、この所定の排出ベルトとの間の分離距離と、鶏卵グループ間の分離距離と、搬送コンベアの搬送速度と、前記所定の排出ベルトの排出開始時間と、に基づいて演算を行い、搬送コンベア上において、搬送順位上位の鶏卵グループの最後尾に、搬送順位下位の鶏卵グループの先頭が分離距離をおいて連続するように制御することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、請求項1に係る発明は、搬送コンベア上の同じ鶏卵グループをまとめて搬送できるので、処理装置の能力を有効に利用し得るとともに、処理時間も最短に近付けることができる、という効果を奏する。
【0013】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の効果に加えて、処理作業に好適な時間当たり設定搬送量で処理装置に搬送できる、という効果を奏する。
【0014】
また、請求項3に係る発明は、前記請求項1又は請求項2に係る発明が奏する効果に加えて、搬送コンベア上の同じ鶏卵グループは、その最後尾が揃うのでまとまりがよく、前記時間当たり搬送量が一定し、処理装置でより一層迅速な処理作業ができる、という効果を奏する。
【0015】
また、請求項4に係る発明は、前記請求項1〜請求項3のうちいずれか1項に係る発明が奏する効果に加えて、互いに異なる鶏卵グループ間において搬送順位上位の鶏卵グループの最後尾に、搬送順位下位の鶏卵グループの先頭が所定距離おいて連続し、処理装置に異なる鶏卵グループを確実に分離して送り込むので、処理装置での作業を確実に行うことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1はエッグフロー設備の概略的は平面図。
【図2】図2は制御装置の概略的なブロック図。
【図3】同じ鶏卵グループにまとめられる鶏卵を排出する2つの排出コンベアの排出開始動作を説明するためのエッグフロー設備の部分拡大図。
【図4】異なる鶏卵グループにまとめられる鶏卵を排出する2つの排出コンベアの排出開始動作を説明するためのエッグフロー設備の部分拡大図。
【図5】まとめられた鶏卵グループ別に鶏卵を搬送する状態を示す搬送コンベアの部分平面図。
【図6】排出ベルトの動作に関する演算処理を説明するフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の好適な実施形態を図1〜図6に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1に示すように、エッグフロー設備10は、鶏卵のパッキング処理などを行う処理装置11に向けて、該処理装置11から遠い上流側から下流側に移動して鶏卵を搬送する搬送コンベア12と、前記搬送コンベア12に沿って配置された6棟の鶏舎1〜6内にそれぞれ設けられ、産卵後の鶏卵を前記搬送コンベア12上に排出するようになした、それぞれが同一長で各別に速度設定可能な排出ベルト1a〜6aとからなる。前記鶏舎2,3,5は、産卵後の鶏卵が互いにまとめられて、鶏卵グループ(A)を形成する。また、前記鶏舎1,4は、産卵後の鶏卵が前記鶏舎2,3,5とは異なるグループとしてまとめられて、鶏卵グループ(B)を形成する。さらに、鶏舎6は、産卵後の鶏卵が前記鶏舎2,3,5及び鶏舎1,4とは異なるグループとしてまとめられて、鶏卵グループ(C)を形成する。
【0019】
図1に示すように、前記搬送コンベア12には、搬送モータ13と搬送速度検出器14が設けられ、また、排出ベルト1a〜6aには、それぞれ速度変更可能な駆動部たるインバータモータ1b〜6bと、排出ベルト1a〜6aの速度を検出するための排出速度検出器1c〜6cとが設けられている。さらに、前記排出ベルト1a〜6a端部と搬出コンベア12間には、排出された鶏卵数をカウントするカウンタ1d〜6dがそれぞれ設けられている。
【0020】
図1及び図2に示すように、前述のエッグフロー設備10の排出ベルト1a〜6aの鶏卵排出開始時間及び排出速度を制御する制御機構は、入力部16と出力部17とを備えた制御部15とを有する。前記制御部15には、前記入力部16から、排出ベルト1a〜6aの長さ(全て同長)と、各排出ベルト1a〜6a間の各距離と、各排出ベルト1a〜6aとその属する各鶏卵グループ(A),(B),(C)との紐付けと、前記鶏卵グループ(A),(B),(C)の搬送コンベア12上の搬送順位と、排出ベルト1a〜6aの排出順位と、搬送コンベア12による時間当たり設定搬送量と、各鶏卵グループ(A),(B),(C)における搬送ベルト12の最上流に位置する排出ベルト2a,1a,6aの後述する排出初期速度と、各鶏卵グループ(A),(B),(C)間の後述する分離距離と、の各データを入力する。また、制御部15には、前記搬送速度検知器14と、前記各排出速度検知器1c〜6cと、前記各カウンタ1d〜6dと、を接続し、可変データを随時入力するように構成する。また、前記制御部15は、前記入力部16から入力した各入力データと各種演算式とを記憶させるとともに、出力部17を介して前記各インバータモータ1b〜6bに接続し、前記可変データと前記入力データと前記演算式とに基づいて演算を行い、算出した結果を指令として駆動する駆動部たるインバータモータ1b〜6bに出力し、各排出ベルト1a〜6aを駆動するのである。なお、各排出ベルト1a〜6aとその属する各鶏卵グループ(A),(B),(C)との紐付けは、鶏卵グループ(A)には排出ベルト2a,3a,5aが属し、鶏卵グループ(B)には排出ベルト1a,4aが属し、鶏卵グループ(C)には排出ベルト6aが属する、と記憶させる。また、前記排出ベルト1a〜6aの排出順位を、2a→3a→5a→1a→4a→6aと記憶させる。
【0021】
前記制御部15は、鶏卵グループ(A)の排出ベルト2a,3a,5aと、鶏卵グループ(B)の排出ベルト1a,4aとを、それぞれ同速度で移動させるとともに、常に搬送コンベア12における上流側のものが下流側のものより前に排出開始するように制御する。また、前記制御部15は、例えば同じ鶏卵グループ(A)に属する排出ベルト2a,3a,5aのうち、排出順位下位の排出ベルト3a,5aを、搬送コンベア12の搬送速度と、排出ベルト2a,3a間の距離あるいは排出ベルト2a,5a間の距離と、排出ベルト2aの排出開始時間(エッグフロー設備10のスタート時)とに基づいて演算を行い、排出順位最上位の排出ベルト2aの排出した搬送コンベア12上の鶏卵の先頭が下位の排出ベルト3aあるいは5aに到達した時にそれぞれ排出開始するように制御するものである。さらに、鶏卵グループ(B)に属する排出ベルト4aにおいても、前記鶏卵グループ(A)の場合と同様にして、排出順位最上位の排出ベルト1aの排出した搬送コンベア12上の鶏卵の先頭が到達した時に排出開始するように制御するものである。
【0022】

【0023】
このようにして排出ベルト3aの排出開始時間を制御すると、各排出ベルト2a,3aから排出され、搬送コンベア12に乗る先頭の鶏卵は同じ位置に揃い、また、各搬出ベルト2a,3aは同じ長さで、かつ同じ排出速度となるように制御されているので、搬送コンベア12上の鶏卵の最後尾はやはり同じ位置に揃うことになる。また、排出ベルト5aの排出開始時間は、前記数式1における(t)に前記算出後の「T」の時間値を代入して排出ベルト5aの排出開始時間を算出し、前記と同様にして制御し、各排出ベルト2a,3a,5aから搬送コンベア12上に排出された鶏卵により、グループ(A)が形成される。また、排出ベルト1a,4aも、前記排出ベルト2a,3aの場合と同様に制御され、搬送コンベア12上にグループ(B)が形成される。さらに、排出ベルト6aは単数なので、排出ベルト6aから排出される鶏卵のみで、搬送コンベア12上にグループ(C)が形成される(図5参照)。具体的な前記演算は、図3及び数式1に示すように、搬送コンベア12の搬送速度(Y)と、排出を前後する両排出ベルト2a,3a間の距離(L)とに基づいて上記数式1における式(2)により演算を行い、排出ベルト3aの排出開始時間(T)を算出するものである。なお、前記排出ベルト2aの場合、自身が最初に排出開始するので、前記式(2)における(t)は「0」値となる。
【0024】
次に、前記排出ベルト2a,1a,6aは、いずれも各鶏卵グループにおいて最初に排出開始するが、前述の入力部16で入力した時間当たり設定搬送量となるように排出速度修正を行うように制御される。
【0025】

【0026】
具体的には、例えば同じ鶏卵グループ(A)において、搬送コンベア12上流側の排出順位最上位の排出ベルト2aを初期排出速度(入力部17から作業員などが予め入力する)で排出開始後に一定時間を経過したところでカウンタ2dによりカウントした鶏卵数から算出した時間当たり排出量と、予め入力した搬送コンベア12の時間当たり設定搬送量に対応する時間当たり設定排出量とを比較し、前記設定排出量になるように、各排出ベルト2aの排出速度を変更するのである。前記数式2で示すように、設定排出量を排出するための排出速度(V)は、設定搬送量から算出した設定排出量(N)と、カウント鶏卵数から算出した算出排出量(n)と、排出速度検知器で検出した排出速度(v)を数式2の式(2)に代入して求める。
【0027】
なお、鶏卵グループ(A),(B),(C)それぞれの時間当たり搬送量を同じにするには、搬送コンベア12上を移動する面積当たりの鶏卵数を同等にする必要があるから、鶏卵グループ(A)を形成するための3つの排出ベルト2a,3a,5aの鶏卵排出速度に較べて、鶏卵グループ(B)を形成するための2つの搬出ベルト1a,4aは1.5倍の排出速度、鶏卵グループ(C)を形成するための1つの排出ベルト6aは3倍の排出速度で鶏卵を排出するように制御される。そして、搬送コンベア12上を搬送される鶏卵グループ(A)の長さに較べて、鶏卵グループ(B)の長さは2/3、鶏卵グループ(C)の長さは1/3となる(図5参照)。なお、同じ鶏卵グループ(A)の各排出ベルト2a,3a,5aは、ほぼ同数の鶏卵を排出するが、ある程度の差異が生じるか否かは前日の各排出ベルトの排出鶏卵数で確認し、差異が生じると認識した場合はこれを考慮した補正を行うように構成する。
【0028】
加えて、前記制御部15は、排出ベルト2a,3a,5a、あるいは排出ベルト1a,4aから各排出され、搬送コンベア12上を搬送される鶏卵グループ(A),(B)の各最後尾の鶏卵位置を揃えるべく、排出開始が最初の排出ベルト2aと排出ベルト1aの排出速度に後続の排出ベルト3a,5aと排出ベルト4aの排出速度を合わせるように速度補正を行うように制御する。
【0029】
次に、搬送順位が上位の鶏卵グループが存在する鶏卵グループに属する排出ベルト、例えば、搬送順位が鶏卵グループ(A)の次位である鶏卵グループ(B)の排出ベルト1aの排出開始時間の制御を説明する。
【0030】

【0031】
例えば、鶏卵グループ(B)に属する排出ベルト1a,4aは、図4及び数式2に示すように、搬送順位上位の鶏卵グループ(A)に属する排出ベルト2aの排出開始時間(t)と、排出ベルト2aの長さ(L)及び排出速度(X)と、両排出ベルト2a,1a間、あるいは排出ベルト2a,4a間の各距離(L)と、鶏卵グループ(A),(B)間の分離距離(L)と、搬送コンベア12の搬送速度(Y)とに基づいて、数式3の式(3)で演算を行い、その排出開始時間を算出し、搬送コンベア12上において、鶏卵グループ(A)の最後尾に、排出ベルト1a,4aが排出する鶏卵グループ(B)の先頭が分離距離(L)をおいて連続するように制御する。なお、前記排出ベルト2aの場合は、全ての排出ベルトのうちで最初に排出開始するので、前記式(3)における(t)は「0」値となる。また、排出ベルト1aが排出ベルト2aより搬送コンベア12の上流側に位置するので、両排出ベルト2a,1a間の距離(L)はマイナス値となる。さらに、上記排出ベルト1aの排出開始時間を得るため排出ベルト2aの前記排出開始時間(t)と、排出ベルト2aの長さ(L)及び排出速度(X)と、両排出ベルト2a,1a間、あるいは排出ベルト2a,4a間の各距離(L)と、グループどうしの分離距離(L)と、搬送コンベア12の搬送速度(Y)を変数として前記数式(1)に代入したが、同じ鶏卵グループ(A)に対応する排出ベルト3aあるいは5aの変数を前記式(3)に代入して演算を行ってもよい。なお、数式3における排出ベルト間の距離(L)は、搬送順位下位の鶏卵グループに属する排出ベルトが同じく上位の鶏卵グループに属する排出ベルトより上流に位置する場合はマイナス値となる。そして、この場合、式(3)「T=(L/X)+{(L−L)/Y}+t」に基づく演算では、前述の距離(L)、排出開始時間(t)、長さ(L)及び排出速度(X)距離(L)、分離距離(L)、搬送速度(Y)の各数値によっては、前記下位の排出ベルトの排出時間「T」がマイナス値となり、排出順位が搬送順位に対応しないことがあるが、搬送速度(Y)は排出速度(X)の10倍あるいはそれ以上速いため、実際のエッグフロー設備では、{(L/X)>(L−L)/Y}(この場合は「L」がマイナス値)となり、排出時間「T」がマイナス値になることはなく、排出順位と搬送順位とは対応するものであって、各排出ベルトの排出順位は予め設定することが可能である。
【0032】
また、図示しないが、搬送順位が鶏卵グループ(B)の次位である鶏卵グループ(C)に属する排出ベルト6aの排出開始時間(t)は、前記排出ベルト1a,4aの場合と同様に、搬送順位上位の各排出ベルト4aの排出開始時間(t)と、排出ベルト1aの長さ(L)及び排出速度(X)と、両排出ベルト1a,6a間の距離(L)と、鶏卵グループどうしの分離距離(L)と、搬送コンベア12の搬送速度(Y)とに基づいて、搬出ベルト6aの排出開始時間に係る前記数式2の式(3)で演算を行い、排出ベルト4aが排出する搬送順位上位の鶏卵グループ(B)の最後尾に、排出ベルト6aが排出する搬送順位下位の鶏卵グループ(C)の先頭が分離距離(L)をおいて連続するように、排出ベルト6aの排出開始時間を制御する。なお、前記排出ベルト6aの場合は、排出ベルト1aより搬送コンベア12の下流側に位置するので、両排出ベルト1a,6a間の距離(L)はプラス値となる。また、上記排出ベルト6aの排出開始時間を得るために排出ベルト1aの排出開始時間に係る数値を前記式(3)に代入したが、同じ鶏卵グループ(B)の排出ベルト4aの排出開始時間に係る数値を前記式(3)に代入して演算を行ってもよい。
【0033】
前記エッグフロー装置10の制御部15による制御は以下のように行われる。先ず、各鶏卵グループ(A)→(B)→(C)の搬送順序と、各鶏卵グループ(A),(B),(C)の排出順位最上位の排出ベルト2a,1a,6aの初期排出速度と、各排出ベルト1a〜6aの長さ(全て同長)及び2a→3a→5a→1a→4a→6aの排出順位と、各排出ベルト間の距離と、各鶏卵グループ(A),(B),(C)間の搬送時の分離距離と、搬送コンベア12の時間当たり設定搬送量と、を入力部16から制御部15に入力する。そして、スタート(ステップ100)後は、排出順位最上位の排出ベルト2aには排出順位上位の排出ベルトは存在しないので、ステップ104に進み、数式2による排出速度の演算を行う。なお、この排出ベルト2aは全排出ベルトの排出順位最上位なので、排出開始時間の演算は行わず、スタート後すぐに排出開始するものである。続いて、ステップ105でインバータモータ2bに出力するとともに、ステップ106に進む。ステップ106において、排出ベルト2aには排出順位下位の排出ベルト3aが存在するので、ステップ107において演算対象を排出ベルト3aに移行し、ステップ101に戻る。
【0034】
ステップ101において、前記排出ベルト3aには排出順位上位の排出ベルト2aが存在するのでステップ102に進む。ステップ102において、排出ベルト3aと前記上位の排出ベルト2aとは同じ鶏卵グループ(A)に属するので、ステップ103に進み、数式1による排出開始時間の演算を行うとともに、鶏卵グループ(A)の排出順位最上位の前記排出ベルト2aの排出速度を導入する。続いて、ステップ105でインバータモータ3bに出力するとともに、ステップ106に進む。ステップ106において、排出ベルト3aには排出順位下位の排出ベルト5aが存在するのでステップ107に進む。ステップ107において、演算対象を排出ベルト5aに移行し、ステップ101に戻る。
【0035】
ステップ101において、前記排出ベルト5aには排出順位上位の排出ベルト3aが存在するのでステップ102に進む。ステップ102において、排出ベルト5aと前記上位の排出ベルト3aとは同じ鶏卵グループ(A)に属するので、ステップ103に進み、数式1による排出開始時間の演算を行うとともに、鶏卵グループ(A)の排出順位最上位の前記排出ベルト2aの排出速度を導入する。続いて、ステップ105でインバータモータ5bに出力するとともに、ステップ106に進む。ステップ106において、排出ベルト5aには排出順位下位の排出ベルト1aが存在するのでステップ107に進む。ステップ107において、演算対象を排出ベルト1aに移行し、ステップ101に戻る。
【0036】
ステップ101において、前記排出ベルト1aには排出順位上位の排出ベルト5aが存在するのでステップ102に進む。ステップ102において、排出ベルト1aと前記上位の排出ベルト5aとは異なる鶏卵グループ(A)に属するので、ステップ104に進み、数式3による排出開始時間と排出速度の演算を行う。続いて、ステップ105でインバータモータ1bに出力するとともに、ステップ106に進む。ステップ106において、排出ベルト1aには排出順位下位の排出ベルト4aが存在するのでステップ107に進む。ステップ107において、演算対象を排出ベルト4aに移行し、ステップ101に戻る。
【0037】
ステップ101において、前記排出ベルト4aには排出順位上位の排出ベルト1aが存在するのでステップ102に進む。ステップ102において、排出ベルト4aと前記上位の排出ベルト1aとは同じ鶏卵グループ(A)に属するので、ステップ103に進み、数式1による排出開始時間を演算するとともに、鶏卵グループ(B)の排出順位最上位の排出ベルト1aの排出速度を導入する。続いて、ステップ105でインバータモータ4bに出力するとともに、ステップ106に進む。ステップ106において、排出ベルト4aには排出順位下位の排出ベルト6aが存在するのでステップ107に進む。ステップ107において、演算対象を排出ベルト6aに移行し、ステップ101に戻る。
【0038】
ステップ101において、前記排出ベルト6aには排出順位上位の排出ベルト4aが存在するのでステップ102に進む。ステップ102において、排出ベルト6aと前記上位の排出ベルト4aとは異なる鶏卵グループ(A)に属するので、ステップ104に進み、数式3による排出開始時間と排出速度の演算を行う。続いて、ステップ105でインバータモータ6bに出力するとともに、ステップ106に進む。ステップ106において、排出ベルト6aには排出順位下位の排出ベルトが存在しないので、終了する(ステップ108)。
【0039】
なお、本発明は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、例えば、鶏舎数は前記のように6棟ではなく、2〜5棟あるいは7棟以上であってもよいほか、各鶏舎1〜6をいずれの鶏卵グループ(A),(B),(C)に所属させるかは変更可能である。また、鶏卵グループは3つのグループではなく1つ、2つ、あるいは4つ以上のグループとしてもよい。さらに、各排出ベルト1a〜6aの長さは同一でなくてもよい。この場合、例えば、同一の鶏卵グループ(A)に属する排出ベルト2a,3a,5aの排出速度を、それぞれの排出開始から完了までの時間となるように前記駆動部を制御する。
【符号の説明】
【0040】
1〜6 鶏舎
1a〜6a 排出ベルト
1b〜6b インバータモータ
1c〜6c 排出速度検知器
1d〜6d カウンタ
10 エッグフロー設備
11 処理装置
12 搬送コンベア
13 モータ
14 搬送速度検出器
15 制御部
16 入力部
17記憶部
18 演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鶏卵の各種処理を行う処理装置から遠い上流から下流に向って鶏卵を搬送する搬送コンベアと、前記搬送コンベアに沿って配置された複数の鶏舎内にそれぞれ設けられ、産卵後の鶏卵を前記搬送コンベア上に排出するようになした、それぞれが各別に排出速度調節可能な排出ベルトとからなり、それぞれの鶏舎は収容した産卵鶏が産卵して得た鶏卵を前記排出ベルトで排出するようになしたエッグフロー設備の制御機構であって、
制御機構は、入力部と出力部とを備えた制御部を有し、前記制御部には、搬送コンベアの搬送速度を検知する搬送速度検知器と、各排出ベルトの排出速度を検知する排出速度検知器と、排出ベルトから搬送コンベアに排出される鶏卵数をカウントするカウンタと、を接続するとともに、出力部を、排出ベルトの排出速度を調整する駆動部に接続し、
前記制御部は、同じ鶏卵グループにまとめられる各鶏舎の排出ベルトにおいて、
排出順位最上位の排出ベルトは、予め設定した初期排出速度で駆動するよう制御するとともに、
排出順位下位の排出ベルトを、前記排出順位最上位の排出ベルトとの距離と、搬送コンべアの搬送速度と、前記排出順位最上位の排出ベルトの排出開始時間と、に基づいて演算を行い、前記最上位の排出ベルトの排出した搬送コンベア上の鶏卵の先頭が、前記下位の排出ベルトに到達した時に、該下位の排出ベルトが排出開始するように制御し、
また、前記排出順位下位の排出ベルトを、前記最上位の排出ベルトの排出開始から完了までにかかる時間と同等となるように排出速度補正を行い、前記各排出ベルトから排出された搬送コンベア上の各最後尾の鶏卵位置を揃えるように制御することを特徴とするエッグフロー設備の制御機構。
【請求項2】
制御部は、同じ鶏卵グループにまとめられる鶏舎の排出ベルトにおいて、
最上位の排出ベルトを、予め設定した初期排出速度で排出開始後、一定時間内にカウンタによりカウントした鶏卵数から算出した時間当たり排出量と、入力部から予め入力した時間当たり設定搬送量に対応する時間当たり設定排出量とを比較し、前記時間当たり設定排出量になるように、排出開始から完了までにかかる時間に対応した排出速度に修正するように制御し、
また、排出順位下位の排出ベルトを、前記排出順位最上位の排出ベルトの前記修正速度による排出開始から完了までにかかる時間に対応するように排出速度の修正をするように制御することを特徴とする請求項1記載のエッグフロー設備の制御機構。
【請求項3】
制御部は、同じ鶏卵グループにまとめられる各鶏舎の排出ベルトにおいて、
排出順位下位の排出ベルトを、それぞれの排出速度検知器から得た速度情報に基づいて、排出順位最上位の排出ベルトの排出開始から完了までにかかる時間に対応させるように排出速度の補正を行い、搬送コンベア上において同じ鶏卵グループの最後尾の鶏卵位置を揃えるように制御することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のエッグフロー設備の制御機構。
【請求項4】
エッグフロー設備には、互いに異なる鶏卵グループにまとめられる各鶏舎の排出ベルトを混在させ、
制御部は、互いに異なる鶏卵グループにまとめられる各鶏舎の排出ベルトにおいて
搬送順位下位の鶏卵グループに属する排出ベルトを、搬送順位上位の鶏卵グループに属する所定の排出ベルトの長さ及び排出速度と、この所定の排出ベルトとの間の分離距離と、鶏卵グループ間の分離距離と、搬送コンベアの搬送速度と、前記所定の排出ベルトの排出開始時間と、に基づいて演算を行い、搬送コンベア上において、搬送順位上位の鶏卵グループの最後尾に、搬送順位下位の鶏卵グループの先頭が分離距離をおいて連続するように制御することを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載のエッグフロー設備の制御機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−279256(P2010−279256A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132776(P2009−132776)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(593066830)東西産業貿易株式会社 (3)