説明

エプロン固定構造およびエプロン固定部材

【課題】エプロンと、防水パン,壁もしくは浴槽フランジとの間の隙間に合わせて調整が可能なエプロン固定部材を提供する。
【解決手段】例えば、エプロン5の下端と防水パン1との間に固定部材9Aを挟んでエプロン5を固定する際に、固定部材9Aは、硬質部材10に対して弾性部材11の取り付け高さを変更させることができる。即ち、硬質部材の差込部10aに対し弾性部材11の突起11c,11dの取り付け高さを調整可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エプロンと、防水パン,壁もしくは浴槽フランジとの間の隙間に固定部材を挟み込んでエプロンを固定するエプロン固定構造、およびエプロン固定構造に用いられるエプロン固定部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、エプロンの下端と防水パンとの間に挟み込まれてエプロンを持ち上げ支持することのできるエプロン支持具が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−6844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されているエプロン支持具は、高さ調整ができないものであるため、エプロンの下端と防水パンとの間の隙間に良好に対応できず、エプロンを持ち上げ支持することができない場合が生じるという問題点があった。
また、エプロン支持具は弾性素材で一体形成されているため、構造が複雑で、掃除がしにくいという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、エプロンと、防水パン,壁もしくは浴槽フランジとの間の隙間に合わせて調整が可能なエプロン固定部材および、このエプロン固定部材を用いたエプロンの固定構造の提供を目的とし、この目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
本発明のエプロン固定構造は、エプロンと、防水パン,壁もしくは浴槽フランジとの間に固定部材を挟み込んで該エプロンを固定するエプロン固定構造であって、前記固定部材は、前記エプロンの周囲端に差し込まれる差込部を備えた硬質部材と、該硬質部材の差込部に取り付けられて前記エプロンをエプロン側へ付勢する弾性部材で構成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のエプロン固定構造では、固定部材は、エプロンと、防水パン,壁もしくは浴槽フランジとの間の隙間に合わせて硬質部材に対し弾性部材を調整することができ、エプロンをがたつくことなく強固に固定することができるものとなる。
また、固定部材は、硬質部材と弾性部材で構成されているため、硬質部材から弾性部材を取り外して掃除がしやすいものとなり、カビの付着や汚れが溜まりにくいものとなる。
【0007】
また、本発明のエプロン固定部材は、エプロンと、防水パン,壁もしくは浴槽フランジとの間に挟み込まれてエプロンを弾性支持することのできるエプロン固定部材であって、該エプロン固定部材は、前記エプロンの周囲端に差し込まれる差込部を有する硬質部材と、該硬質部材の差込部に取り付けられて前記エプロンをエプロン側へ付勢する弾性部材で構成され、該弾性部材には、複数段の溝条を有する突起が設けられているとともに、前記硬質部材の差込部には前記突起の何れかの段の溝条が嵌合する嵌合部が設けられていることを要旨とする。
【0008】
本発明のエプロン固定部材では、硬質部材の差込部に、高さ調整して弾性部材を取り付けることができ、現場においてエプロンと、防水パン,壁もしくは浴槽フランジとの間の隙間に合わせて良好にエプロン固定部材の高さを調整して、エプロンをがたつくことなく強固に固定することができるものとなる。
また、硬質部材から弾性部材を取り外して掃除することができ、掃除がしやすく、カビや汚れが付着しにくいものとなる。
【0009】
また、本発明のエプロン固定部材において、前記各段の溝条には、外側へ向かって下傾した傾斜面が形成されているとともに、前記嵌合部には、前記溝条の傾斜面が係合する内側へ向かって上傾した傾斜面が形成されているものとすることもできる。
こうすれば、硬質部材の差込部に形成されている嵌合部に、弾性部材の突起に形成されている溝条を嵌合する際に、溝条の傾斜面と嵌合部の傾斜面が係合することで、細かい高さ調整が可能となる。
【0010】
また、本発明のエプロン固定部材において、前記弾性部材には、幅の異なる複数の前記突起が設けられているとともに、前記硬質部材の差込部には、幅の異なる複数の前記嵌合部が設けられているものとすることもできる。
こうすれば、硬質部材の差込部に形成されている嵌合部に、弾性部材の突起を嵌合させて弾性部材を取り付ける際に、幅の広い突起を幅の広い嵌合部に嵌合させ、幅の狭い突起を幅の狭い嵌合部に嵌合させて、弾性部材の差込部への取り付け方向を間違うことなく、容易に硬質部材に弾性部材を取り付けることができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】浴室におけるエプロンの固定を行う施工説明図である。
【図2】エプロンの下端と防水パン間に固定部材を差し込む作業説明図である。
【図3】最も高さの低い状態の固定部材をエプロンの下端と防水パン間に挟み込んだ要部断面拡大構成図である。
【図4】固定部材の高さを一段階高くした状態の断面拡大構成図である。
【図5】固定部材の高さを二段階高くした状態の断面拡大構成図である。
【図6】硬質部材に弾性部材を取り付ける前の要部分解斜視構成図である。
【図7】右側の固定部材を構成する硬質部材の平面構成図である。
【図8】硬質部材の図9におけるA−A線断面拡大図である。
【図9】右側の固定部材を構成する硬質部材の正面構成図である。
【図10】固定部材を構成する弾性部材の側面構成図である。
【図11】弾性部材の正面図である。
【図12】弾性部材の突起部分の拡大図である。
【図13】右側の固定部材の平面構成図である。
【図14】右側の固定部材の正面構成図である。
【図15】左側の固定部材の平面構成図である。
【図16】左側の固定部材の正面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
図1は、浴室におけるエプロンの固定作業を示す斜視構成図である。
浴室の底面を構成する防水パン1には洗い場1aと堤防部1bが設けられ、洗い場1aと反対側に浴槽2が設置されており、洗い場1aの壁面3側にはカウンター4が設けられている。また、堤防部1b側の洗い場1aには排水口1cが形成されている。
【0013】
浴槽2と洗い場1aを仕切るエプロン5を堤防部1b上に取り付ける作業は、先ずエプロン5のカウンター4側を壁面3に当接させ、エプロン5のカウンター4と反対側を浴槽2側へ回転させて、エプロン5を堤防部1b上に配置させ、更にエプロン5を上方へ持ち上げ、エプロン5の上端を浴槽2のフランジ部2a内の図示しない金具に差し込み、この状態で、仕切板6を排水口1cに奥まで押し込んで、エプロン5の下端と堤防部1b間に仕切板6を嵌め込み、その後に排水口1c内にヘアキャッチャーを取り付けて、排水口の上面に目皿7を載せ、最後に、堤防部1bの左右の切れ目部分に洗い場1a側から右固定部材9Aおよび左固定部材9Bを押し込み、この右固定部材9Aと左固定部材9Bをエプロン5の下端と防水パン1との間に挟み込んでエプロン5を固定する。
【0014】
なお、図2は、左固定部材9Bを、壁面3に先端を当接させて洗い場1a側からエプロン5の下端に押し込む状態を示している。
本例における右固定部材9Aおよび左固定部材9Bは、それぞれ硬質部材10と弾性部材11で構成されている。右固定部材9Aの断面構成図を図3に示す。
【0015】
右固定部材9Aは、右側の壁面3に当接させてエプロン5の下端縁5aの下端と防水パン1間に押し込まれた状態では、図3に示すように、硬質部材10に取り付けられた弾性部材11上にエプロン5の下端が当接して、エプロン5は弾性部材11により付勢され上方へ持ち上げられる。また、エプロン5の下端縁5aの洗い場1a側に硬質部材10のカバー部10bが当接状態となる。
【0016】
弾性部材11は、硬質部材10の差込部10aに着脱可能に取り付けられ、弾性部材11に設けられている突起11c,11dを介して、硬質部材10に対し弾性部材11の取り付け高さを図4或いは図5の断面図で示すように、現場で適宜変更できるように構成されている。
なお、図6は、硬質部材10に形成されている嵌合部14a,14bに、弾性部材11の突起11c,11dを嵌め込む前の要部分解斜視図である。
【0017】
先ず、右固定部材9Aを構成する硬質部材10を、図7の平面図,図8のA−A線断面図,図9の正面図で説明する。
硬質部材10は、ABS樹脂製で一体形成されており、エプロン5の下端に差し込まれる略水平な差込部10aの一端側から、略垂直に上方へ延びてガイド部10bが一体形成されており、図9の正面図で示すように、差込部10aの図示左側部位には、差込部10aから下方に向かって勾配突部10cが突出形成されている。また、図中10eは、差込部10aから垂下されたリブである。また、ガイド部10bの右端側下部には、洗い場1a側へ突出してツマミ10dが一体形成されている。
【0018】
この硬質部材10の差込部10aには、長手方向中央部から左右対称形状に4個の嵌合部14a,14b,14a,14bと、通し溝15a,15b,15a,15bが形成されている。嵌合部14aと嵌合部14bは、リブ10eを中心としてガイド部10b側とその反対側にそれぞれ形成されており、図7に示すように、ガイド部10b側の嵌合部14bの前後幅は、嵌合部14aの前後幅よりも大きい幅長に設定されている。また、嵌合部14aには横方向に通し溝15aが連通され、嵌合部14bにも通し溝15bが連通されている。この通し溝15aの前後幅は、通し溝15bの前後幅よりも小さい幅長に設定されている。
【0019】
なお、図8のA−A線断面図で示すように、嵌合部14aおよび14bは、それぞれ下側へ向かって拡径するような断面形状に形成されている。即ち、嵌合部14a,14bには、内側に向かって上傾した傾斜面16が形成されており、各嵌合部14a,14bの上面側の前後幅は狭く、下面側の前後幅は広くなるように設定されている。
【0020】
次に、図10の側面図で、また図11の正面図で、弾性部材11を説明する。
この弾性部材11は、軟質の例えばTPEE樹脂で形成されており、略水平な基部11aから、中空部Sを形成しつつ上方へ湾曲して山形形状をなす山状部11bが一体形成されており、基部11aの底面から垂下状に前後一対の突起11c,11dが一体形成されている。この各突起11c,11dには、上下方向に等間隔で3条の溝条13,13,13が前後側面に一体形成されている。
【0021】
図12に、突起11dを拡大して示すように、突起11dの前後の側面には、それぞれ外側へ突出して上下方向に等間隔で3条の突条12,12,12がそれぞれ横方向へ延びて形成されており、この上下の突条12,12,12間に凹み状に上下三段の溝条13,13,13が形成され、各溝条13の底側は外側へ向かって下傾した傾斜面13a,13a,13aに形成されている。
なお、図10において、図示左側の突起11cの前後幅は、図示右側の突起11bの前後幅よりも大に設定されている。
【0022】
この弾性部材11を硬質部材10の差込部10aに取り付ける際には、弾性部材11の幅広の突起11cを硬質部材10の幅広の嵌合部14bに嵌め込み、幅の狭い突起11dは幅の狭い嵌合部14aに嵌め込んで取り付けられる。
なお、差込部10aに形成されている通し溝15aは、上方から突起11dを挿入できる幅長に形成されており、また、通し溝15bは、上方側から突起11cを挿入できる幅長に形成されている。
【0023】
従って、先ず、突起11dを通し溝15aに上方側から差し込み、同時に突起11cを通し溝15bに差し込んで、この状態で弾性部材11を左右方向へ移動させることで、突起11c,11dの何れかの段の溝条13を嵌合部14a,14bに嵌合させることができる。この場合、溝条13の下面の傾斜面13aが嵌合部14a,14bに形成されている各傾斜面16と係合することとなる。
【0024】
嵌合部14a,14bに最上段の溝条13を嵌合させて弾性部材11を硬質部材10に取り付けると、前記図3のような状態となり、また、上から二段目の溝条13を嵌合部14a,14bに嵌合させた時は、図4のような状態となり、最下段の溝条13を嵌合部14a,14bに嵌合させると、図5のような状態となる。
このように上下三段の溝条13,13,13の何れかを選択して嵌合部14a,14bに嵌合させることで、弾性部材11の山状部11bの高さ位置を現場に対応させて調整することができる。
【0025】
なお、弾性部材11の取り付け時に、弾性部材11には幅の異なる突起11c,11dが設けられ、硬質部材10側には幅の異なる嵌合部14a,14bが設けられているため、硬質部材10に対する弾性部材11の取り付け方向を間違うことなく、確実に弾性部材11の方向が固定されて硬質部材10に取り付けられるものである。
【0026】
現場において、エプロン5の下端と防水パン1間の隙間が狭い状態では、図3のように、弾性部材11を最も低い取り付け状態としてエプロン5の下端に押し込んで取り付けることができ、良好に弾性部材11の山状部11bがその弾性によりエプロン5を上方へ付勢して、エプロン5を強固に固定することができるものである。
また、現場において、エプロン5の下端と防水パン1間の隙間が広い場合には、図4或いは図5の状態に現場で調整して、がたつくことなくエプロン5を上方へ付勢して強固に固定させることができるものである。
【0027】
また、硬質部材10嵌合部14a,14bには傾斜面16が形成されており、この傾斜面16に係合する傾斜面が各溝条13の底側に傾斜面13aとして形成されているため、傾斜面16と傾斜面13aが広い範囲で係合することで上下方向の細かい高さ調整が可能なものとなる。
【0028】
なお、図13は、硬質部材10に左右2個の弾性部材11,11を取り付けた状態の平面図であり、図14は、その正面図である。
この図13,図14のように組み付けられた右固定部材9Aは、図1における右側の壁面3に右端側を当接させて取り付けられるものであり、図15の平面図で、また図16に正面図で示す左固定部材9Bは、図1における左側の壁面3に左端を当接させて取り付けられるものである。
左固定部材9Bにおいても同様に、現場のエプロン5の下端と防水パン1間の隙間に対応させて、弾性部材11の硬質部材10に対する高さ位置を調整することができるものである。
【0029】
固定部材9A,9Bは、硬質部材10と弾性部材11に分解することができるため、掃除が容易なものとなり、汚れが溜まりにくく、またカビの付着を良好に防ぐことができるものとなる。また、硬質部材10は安価な樹脂材で形成させることができるため、固定部材9A,9B全体のコストを低減させることができる。
【0030】
なお、固定部材9A,9Bの取り付け時に、ツマミ10dを指で摘んで良好にエプロン5の下端に差し込んだり、エプロン5から取り外すことができるものであり、また、取り付け状態で防水パン上に勾配突起10cが当接して、この勾配突起10cにより浴槽2の底側と洗い場1a側を連通する排水空間が形成されて、浴槽2の底側に水が溜まることが防がれるものである。
【0031】
なお、本実施例では、エプロン5の下端に固定部材9A,9Bを設置する場合を例示したが、この固定部材9A,9Bをエプロン5の上端と浴槽フランジ2aとの間、または、エプロン5の左右端と壁3との間に設置しても良い。
この際、弾性部材11をエプロン5に押し当て、エプロン5を内側へ押圧することで、浴槽2の寸法誤差や壁3の反りによる隙間を埋めることができるとともに、エプロン5と固定部材9A,9Bとの干渉によるヒビ等が生じることがない。
【符号の説明】
【0032】
1 防水パン
1a 洗い場
1b 堤防部
1c 排水口
2 浴槽
2a フランジ部
3 壁面
4 カウンター
5 エプロン
5a 下端縁
6 仕切板
7 目皿
9A 右固定部材
9B 左固定部材
10 硬質部材
10a 差込部
10b ガイド部
10c 勾配突部
10d ツマミ
11 弾性部材
11a 基部
11b 山状部
11c,11d 突起
12 突条
13 溝条
13a 傾斜面
14a,14b 嵌合部
15a,15b 通し溝
16 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エプロンと、防水パン,壁もしくは浴槽フランジとの間に固定部材を挟み込んで該エプロンを固定するエプロン固定構造であって、
前記固定部材は、
前記エプロンの周囲端に差し込まれる差込部を備えた硬質部材と、
該硬質部材の差込部に取り付けられて前記エプロンをエプロン側へ付勢する弾性部材で構成されている
ことを特徴とするエプロン固定構造。
【請求項2】
エプロンと、防水パン,壁もしくは浴槽フランジとの間に挟み込まれてエプロンを弾性支持することのできるエプロン固定部材であって、
該エプロン固定部材は、
前記エプロンの周囲端に差し込まれる差込部を有する硬質部材と、
該硬質部材の差込部に取り付けられて前記エプロンをエプロン側へ付勢する弾性部材で構成され、
該弾性部材には、複数段の溝条を有する突起が設けられているとともに、前記硬質部材の差込部には前記突起の何れかの段の溝条が嵌合する嵌合部が設けられている
ことを特徴とするエプロン固定部材。
【請求項3】
前記各段の溝条には、外側へ向かって下傾した傾斜面が形成されているとともに、前記嵌合部には、前記溝条の傾斜面が係合する内側へ向かって上傾した傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のエプロン固定部材。
【請求項4】
前記弾性部材には幅の異なる複数の前記突起が設けられているとともに、前記硬質部材の差込部には、幅の異なる複数の前記嵌合部が設けられていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のエプロン固定部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−5196(P2011−5196A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154419(P2009−154419)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】