説明

エンジン制御装置

【課題】エンジン始動用のブラシレスモータとして大形のものを用いることなく、エンジンを始動させることができる電子式エンジン制御装置を提供する。
【解決手段】ブラシレスモータBLMに設けられた位置センサが出力する位置検出信号がレベル変化を示す位置に対応するエンジンのクランク角位置をピックアップコイルPUから得られるパルス信号Vpを基準にして検出するクランク角位置検出手段SIを設けた。ピックアップコイルPUは、エンジンからモータBLMにかかる負荷が軽いときにパルス信号Vpを出力するように設けられ、モータBLMは、モータにかかる負荷が軽いときにしきい値以上のパルス信号を得るのに必要な回転速度でエンジンを回転させるように構成される。クランク角位置検出手段SIにより対応するクランク角位置が検出されている位置検出信号のレベル変化からエンジンのクランク角情報を得て点火時期の制御等を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレスモータをスタータモータとして備えたエンジンをマイクロコンピュータを用いて制御する電子式エンジン制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1にも示されているように、エンジン制御装置は、エンジンの回転角度位置が設定された一定のクランク角位置に一致したときにパルス信号を出力するピックアップコイルを備えていて、このピックアップコイルが出力するパルス信号から得たエンジンのクランク位置角情報を用いて、エンジンの点火時期の制御や、燃料噴射時期及び燃料噴射時間の制御等を行っている。
【0003】
ところが、ピックアップコイルは、エンジンの回転に伴って生じさせた磁束の変化を検出してパルス信号を出力する磁束変化検出形のものであるため、エンジンの回転速度がある程度上昇しないと識別し得る大きさのパルス信号を出力することができない。エンジンの始動時にその回転速度が例えば100r/min未満になると、ピックアップコイルは、しきい値レベル(マイクロコンピュータが認識し得るレベルの最小値)以上の大きさを有するパルス信号を発生することができない。本明細書では、ピックアップコイルからしきい値レベル以上の大きさのパルス信号を出力させるために必要なエンジンの回転速度の下限を「信号検出限界速度」と呼ぶ。
【0004】
エンジンの回転速度が信号検出限界速度を下回っていると、制御装置は、エンジンのクランク角位置情報を取得することができないため、エンジンを点火する点火装置に点火動作を行わせることができなくなる。またエンジンに燃料を供給する装置として燃料噴射装置が用いられる場合には、ピックアップコイルが識別し得る大きさのパルス信号を発生しないと、燃料噴射を行わせることができない。
【0005】
エンジンを始動させるためには、エンジンの始動時に吸気行程が開始される前か、または少なくとも吸気行程の初期の段階で燃料噴射を行わせ、ピストンが圧縮行程の上死点に達するクランク角位置付近で点火動作を行わせる必要がある。そのためには、エンジンのピストンが圧縮行程の上死点に向けて変位していく過程で、ピックアップコイルからしきい値レベル以上の大きさのパルス信号を出力させる必要がある。
【0006】
従って、ブラシレスモータを用いて始動を行うエンジンにおいては、エンジンの始動時にそのピストンが圧縮行程の上死点に向けて変位していく過程(エンジン始動時にブラシレスモータの負荷が最も重くなる過程)でも、信号検出限界速度(上記の例では100r/min)以上の回転速度でエンジンを回転させるために必要とされる出力トルクをブラシレスモータから発生させるように、その仕様を定めていた。
【特許文献1】特開平6−307262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、従来のエンジン制御装置においては、エンジンの始動時に、エンジンからブラシレスモータにかかる負荷が最も重くなる過程においても、信号検出限界速度以上の回転速度でエンジンを回転させるために必要とされる出力トルクを発生させるようにブラシレスモータの仕様を定めていたため、ブラシレスモータが大形になって、エンジンが大形になるという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、エンジンの始動に用いるブラシレスモータとして大形のものを用いることなく、エンジンの極低回転速度領域における点火時期の制御や燃料噴射制御等の各種の制御を的確に行わせることができるようにした電子式エンジン制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、多相の電機子コイルを有するステータと、2n極(nは1以上の整数)の磁石界磁を有するロータと、ステータの各相の電機子コイルに対してそれぞれ設定された検出位置でロータの磁極を検出して検出している磁極の極性が切り替わる毎にレベル変化を示す位置検出信号を出力する位置センサを備えた位置検出装置と、ロータを回転させるべく位置検出装置が出力する位置検出信号に応じて決定した通電パターンで多相の電機子コイルに駆動電流を流すモータ駆動部とを備えたブラシレスモータをスタータモータとして備え、スタータモータのロータの回転角度位置とクランク角位置との関係が一義的に決まるようにしてロータがクランク軸に取り付けられたエンジンの点火時期の制御を含む各種の制御を行う電子式エンジン制御装置を対象とする。
【0010】
本発明においては、エンジンの一定のクランク角位置で磁束の変化を検出してパルス信号を出力するピックアップコイルと、ピックアップコイルが出力するパルス信号を基準にして位置検出信号が示す各レベル変化に対応するエンジンのクランク角位置を検出するクランク角位置検出手段とが設けられ、ピックアップコイルは、エンジンのクランキング負荷が軽いクランク角区間でパルス信号を出力するように設けられる。そして、ブラシレスモータは、ピックアップコイルが発生するパルス信号の大きさをしきい値レベル以上とするために必要な回転速度でエンジンを回転させるために必要とされる出力トルクを発生するように構成され、クランク角位置検出手段により対応するクランク角位置が検出されている位置検出信号のレベル変化からエンジンのクランク角情報を得てエンジンの点火時期の制御を含む各種の制御を行うように構成される。
【0011】
本発明による場合には、エンジンの始動時に、そのピストンが圧縮行程の上死点を越えて膨張行程に入り、ブラシレスモータの負荷が軽くなると、ブラシレスモータの回転速度が信号検出限界速度を超えて上昇し、ピックアップコイルがしきい値以上の大きさ有するパルス信号を出力する。ピックアップコイルがパルス信号を出力すると、クランク角位置検出手段が、位置検出信号のレベル変化とエンジンのクランク角位置との関係を識別する。
【0012】
本発明は、制御の対象とするエンジンが、単気筒の2ストロークエンジンか、または2つの気筒で行われる行程が360°ずれている関係にある2気筒4ストロークエンジンである場合に特に好適である。
【0013】
上記のように、本発明においては、ピックアップコイルが出力するパルス信号を、ブラシレスモータに設けられている位置検出装置から得られる位置検出信号が示す各レベル変化に対応するエンジンのクランク角位置を検出するためにのみ用い、対応するクランク角位置が検出されている位置検出信号のレベル変化からエンジンのクランク角位置情報を求める。
【0014】
エンジンが1燃焼サイクルを行う間に位置検出信号がレベル変化を示すクランク角位置及びレベル変化を示す回数は一定であり、位置検出信号がレベル変化を示す位置とエンジンのクランク角位置との対応関係は一通りであるため、位置検出信号が示す各レベル変化に対応するエンジンのクランク角位置は、一度検出されれば、以後は、位置検出信号が示す一連のレベル変化に順に番号を付す等の手段により、自動的に検出することができる。
【0015】
またエンジンからブラシレスモータにかかる負荷が軽くなっている状態で、ピックアップコイルが出力するパルス信号を基準にして、位置検出信号が示す各レベル変化に対応するクランク角位置を検出するようにすると、ブラシレスモータは、その負荷が軽くなっている状態で、信号検出限界速度以上の回転速度でエンジンを回転させるために必要とされる出力トルクを発生すれば済むため、ブラシレスモータとして、従来用いられていたものより小形のものを用いることができるようになる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、エンジンの始動時にエンジンのクランキング負荷が軽いクランク角区間で(エンジンからブラシレスモータにかかる負荷が軽くなっている状態で)、ピックアップコイルからしきい値以上の大きさのパルス信号を出力させるために必要な回転速度で(信号検出限界速度以上の速度で)エンジンを回転させるようにブラシレスモータの仕様が定められるため、エンジンの始動時にその圧縮行程の終期においても(負荷が最も重くなる過程でも)エンジンを信号検出限界速度以上の速度で回転させるようにブラシレスモータの仕様を定めていた従来の制御装置による場合に比べて、ブラシレスモータとして小形のものを用いることができ、エンジンの小形軽量化を図ることができる。
【0017】
また本発明によれば、エンジンが始動した後、負荷の増大によりエンジンの回転速度が信号検出限界速度を下回ったときでも、エンジンのクランク角位置情報を得て、エンジンの点火時期の制御や燃料噴射の制御を行うことができるため、過負荷時にストールし難いエンジンを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1は本発明に係わる電子式エンジン制御装置のハードウェアの構成例を、エンジンに取り付けられたブラシレスモータの構成とともに示したものである。同図においてBLMは、エンジンを始動するスタータモータとして用いられるブラシレスモータ、ECUは、本発明に係わる電子式エンジン制御装置、Batは電源としてのバッテリである。本実施形態で制御の対象とするエンジンは、2つの気筒の燃焼行程がちょうど360°ずれている2気筒4ストロークエンジンであるとする。
【0019】
ブラシレスモータBLMは、ステータST及びロータRTを備えている。図1に示したロータRT及びステータSTはそれぞれの基本的な構成を示したもので、ステータSTは、三相の電機子コイルLu,Lv及びLwをステータ鉄心に設けられた3つのポールにそれぞれ巻回したものからなっている。またロータRTは、カップ状に形成されたロータヨークRYの内周に永久磁石m1およびm2を取り付けて2極の磁石界磁を構成したものからなっている。
【0020】
ブラシレスモータはまた、ステータSTの各相の電機子コイルに対してそれぞれ設定された検出位置でロータRTの磁極を検出して、検出している磁極の極性が切り替わる毎にレベル変化を示す位置検出信号を出力する位置センサhu,hv及びhwを備えた位置検出装置と、ロータRTを回転させるべく位置検出装置が出力する位置検出信号に応じて決定した通電パターンで三相の電機子コイルに駆動電流を流すモータ駆動部MDとを備えている。位置センサとしてはホールICが用いられている。
【0021】
モータ駆動部MDは、ブリッジの上辺を構成する3つのスイッチ素子QuないしQwと、ブリッジの下辺を構成する3つのスイッチ素子QxないしQzとからなっていて直流側端子t1及びt2と、三相の交流側端子tuないしtwとを有するインバータ回路INVと、ロータRTを所定の回転方向に回転させるべく位置検出装置が出力する位置検出信号に応じて決定した通電パターンで三相の電機子コイルに駆動電流を流すように、インバータ回路INVのスイッチ素子QuないしQw及びQxないしQzにそれぞれ駆動信号SuないしSw及びSxないしSzを与えるインバータ制御部Dとにより構成される。
【0022】
図示のインバータ回路INVにおいては、ブリッジの上辺を構成するスイッチ素子QuないしQwとしてドレインが直流側端子t1に共通接続されたMOSFETが用いられ、ブリッジの下辺を構成するスイッチ素子QxないしQzとしては、ソースが直流側端子t2に共通接続され、ドレインがスイッチ素子QuないしQwをそれぞれ構成するMOSFETのソースに接続されたMOSFETが用いられている。図示の例では、スイッチ素子QuないしQw及びQxないしQzをそれぞれ構成するMOSFETのドレインソース間に形成された寄生ダイオードにより、ブラシレスモータがエンジン側から駆動されて発電機として機能する際に、該発電機の交流出力を整流する全波整流回路が構成されている。
【0023】
なおインバータ回路を構成するスイッチ素子QuないしQw及びQxないしQzとしては、バイポーラトランジスタなどの他のオンオフ制御が可能なスイッチ素子を用いることもできる。スイッチ素子QuないしQw及びQxないしQzとしてバイポーラトランジスタを用いる場合には、ブラシレスモータが発電機として動作する際に全波整流回路を構成するためのダイオードを各トランジスタのコレクタエミッタ間に逆並列接続しておく。
【0024】
図示の例では、電機子コイルLuないしLwがスター結線され、これらの電機子コイルの中性点と反対側の端子がそれぞれインバータ回路INVの三相の交流側端子tuないしtwに接続されている。またインバータ回路INVの直流側端子t1,t2間にバッテリBatが接続されている。
【0025】
図1に示したロータRTを図示の矢印方向(時計方向)に回転させる際には、例えば図2に示された通電パターンで三相の電機子コイルLuないしLwにそれぞれ駆動電流を流すように、位置センサhuないしhwがそれぞれ出力する位置検出信号HuないしHwに応じて、インバータ制御部Dからインバータ回路INVを構成するスイッチ素子QuないしQw及びQxないしQzにそれぞれ駆動信号SuないしSw及びSxないしSzが与えられて、スイッチ素子QuないしQw及びQxないしQzがオンオフ制御される。
【0026】
図2の(A)ないし(C)はそれぞれ位置検出信号HuないしHwを示し、(D)ないし(I)はそれぞれスイッチ素子Qu,Qv,Qw,Qx,Qy及びQzのオンオフの状態の変化を示したものである。これらのスイッチ素子がオン状態にある期間バッテリからオン状態にあるスイッチ素子を通して電機子コイルLuないしLwに駆動電流が流れる。
【0027】
ブラシレスモータBLMは、エンジンを始動する際にスタータモータとして運転されるが、エンジンが始動した後は、エンジンにより駆動される状態になるため、磁石式交流発電機として機能する。この発電機が出力する交流電流は、インバータ回路のスイッチ素子Qu,Qv,Qw,Qx,Qy及びQzを構成するMOSFETのドレインソース間に形成された寄生ダイオードにより構成される全波整流回路により整流されて、バッテリBat及び該バッテリに接続されている負荷に供給される。
【0028】
上記のように、インバータ制御部Dは、エンジンの始動時には、エンジンを始動させる方向にロータRTを回転させるべく、位置センサhuないしhwの出力に応じて、インバータ回路INVを構成するスイッチ素子QuないしQw及びQxないしQzにそれぞれ駆動信号SuないしSw及びSxないしSzを与えるタイミングを制御するが、エンジンが始動した後、ブラシレスモータが磁石式交流発電機として動作する際には、該発電機の出力電圧をバッテリBatを充電するのに適した範囲に保つように、インバータ回路INVを制御する。この制御は、次のようにして行う。即ち、発電機の出力電圧が設定値未満のときには、インバータ回路INJを構成するすべてのMOSFETをオフ状態に保って、発電機の整流出力をそのままバッテリに供給し、発電機の出力電圧が設定値未満のときには、例えばインバータ回路のブリッジの下辺を構成する3つのMOSFETを同時にオン状態にして、発電機の出力を短絡することによりバッテリの充電を停止させる。
【0029】
上記ブラシレスモータは、ロータRTの回転角度位置とクランク角位置との関係が一義的に決まるようにして(ロータがクランク軸に直結されるか、または一定の変速比のギアを介して結合されて)ロータがクランク軸に取り付けられている。本実施形態では、ロータRTが図示しないエンジンのクランク軸に直結されている。
【0030】
ブラシレスモータのロータRTのヨークRYの外周にはリラクタ(ヨークの周方向に伸びる円弧状の突起)rが設けられ、このリラクタの回転方向の前端側及び後端側のエッジを検出してパルス信号を発生する信号発生器SGがロータRTの近傍に配置されている。信号発生器SGは、リラクタrに対向する磁極部を有する鉄心と該鉄心に磁気結合された永久磁石と、該鉄心に巻回されたピックアップコイルPUとを備えた周知のもので、ピックアップコイルPUは、リラクタrが信号発生器の鉄心の磁極部との対向を開始する際、及び対向を終了する際にそれぞれ鉄心内で生じる磁束の変化を検出して、極性が異なる1対のパルス信号を出力する。本実施形態では、これら1対のパルス信号のうち、先に発生するパルス信号Vpを、位置検出装置(位置センサhuないしhw)が発生する位置検出信号HuないしHwの各レベル変化に対応するクランク角位置を検出する際の基準信号として用いる。
【0031】
図1に示した例では、ブラシレスモータのロータRTが1対の(2極の)磁石界磁を有し、ステータ側に設けられる3相の電機子コイルLuないしLwがそれぞれ単一のコイルからなっていて、この構成が1対極の構成となっている。この構成において、3相の電機子コイルLuないしLwにそれぞれ流れる電流の1サイクルの区間が電気角の360°の区間となる。実際のブラシレスモータでは、コギングを減らすために、n対極(nは1以上の整数)の構成をとっている。n対極の構成を有する三相ブラシレスモータは、2n極の磁石界磁を有するロータと、3m個の電機子コイルとにより構成される。n対極のブラシレスモータでは、機械角で(360/n)°の区間が電気角で360°の区間に相当する。
【0032】
本実施形態では、ブラシレスモータRTが、実際には、図3に示すように6対極の構成を有している。図3に示したブラシレスモータでは、ロータRTに12極の磁石界磁が構成されていて、ステータ鉄心SCが、18個のポールP1ないしP18を有している。ステータ鉄心SCの周方向領域は、それぞれが60°の角度幅(電気角で360°)を有する6つのブロックB1ないしB6に分けることができる。6つのブロックのそれぞれには3つのポールが設けられており、これらのブロックにそれぞれ属する3つのポールに、コイル(Lu1,Lv1,Lw1),(Lu2,Lv2,Lw2),(Lu3,Lv3,Lw3),(Lu4,Lv4,Lw4),(Lu5,Lv5,Lw5)及び(Lu6,Lv6,Lw6)が巻回されている。同じ相のコイルがそれぞれ直列に接続されるか、または並列に接続されることにより三相の電機子コイルLuないしLwが構成されている。
【0033】
図3において、bsはロータヨークRYの底壁部の中央に形成されボス部で、このボス部に設けられたテーパ孔h内に図示しないエンジンのクランク軸に設けられたテーパ部が嵌合される。ボス部bsが適宜の手段によりクランク軸のテーパ部に対して締め付けられることにより、ロータRTがエンジンのクランク軸に取りつけられる。
【0034】
ロータヨークRTの外周にはリラクタrが形成され、このリラクタのエッジを検出してパルス信号を発生するピックアップコイルを備えた信号発生器SGが、ロータRTの近傍に配置されて、エンジンのケース等に固定されている。本発明においては、信号発生器SGに設けられたピックアップコイルが、エンジンの始動時に該エンジンからブラシレスモータにかかる負荷が非常に軽くなる区間である、エンジンの1つの気筒の膨張行程の終期(他の気筒の吸気行程の終期)に、ピックアップコイルがリラクタrの回転方向の前端側エッジを検出してパルス信号Vpを発生するように、信号発生器SGの配設位置が設定されている。
【0035】
電子式エンジン制御装置ECUは、マイクロコンピュータを用いてエンジンの点火制御や燃料噴射制御等のエンジンの回転を維持するために必要な制御を行う装置で、本実施形態では、この制御装置が、位置検出装置から出力される位置検出信号HuないしHwが示す各レベル変化に対応するエンジンのクランク角位置を検出するクランク角位置検出手段SIを備えている。クランク角位置検出手段SIは、後記するように、ピックアップコイルPUが出力するパルス信号Vpを基準にして、位置検出信号HuないしHwが示す各レベル変化に対応するクランク角位置(各レベル変化が生じたときのクランク角位置)を検出する。
【0036】
図4は、本実施形態において位置センサhu,hv及びhwがそれぞれ出力する位置検出信号Hu,Hv及びHwの波形と、エンジンの始動時の回転速度の変化と、ピックアップコイルPUが出力するパルス信号の波形とを、クランク角θを横軸にとって示したものである。
【0037】
ピックアップコイルPUは、エンジンのクランキング負荷(エンジンのクランキング時にエンジンからスタータモータにかかる負荷)が軽い状態にあるクランク角区間でパルス信号Vp及びVp′を出力するように設けられる。エンジンのクランキング負荷が軽い状態にあるクランク角区間とは、例えば、エンジンの各気筒で行われる燃焼サイクルが膨張行程、排気行程若しくは吸気行程のそれぞれの全区間、又は圧縮行程の初期の区間である。本実施形態では、エンジンの2つの気筒のうち、1つの気筒が膨張行程の終期にあり、他の気筒が吸気行程の終期にあるときにパルス信号Vp及びVp′を出力するようにピックアップコイルPUが設けられている。
【0038】
ピックアップコイルPUからしきい値レベル以上の大きさのパルス信号を発生させるためには、エンジンが信号検出限界速度以上の回転速度で回転している必要がある。図4(F)はブラシレスモータBLMによりエンジンのクランキングを行った際に、エンジンの回転速度がエンジンの行程変化に伴って変動する様子を示したものである。エンジンの始動を開始した後、圧縮行程にある気筒においてそのピストンが上死点(TDC)に向かって変位していく過程では、エンジンからブラシレスモータBLMに加わる負荷が大きくなっていくため、エンジンの回転速度が低くなっていくが、ピストンが上死点を越えて、今まで圧縮行程にあった気筒が膨張行程に入ると、ブラシレスモータに加わる負荷が軽くなるため、エンジンの回転速度は急速に上昇していく。
【0039】
本発明においては、図4(F)に示したように、エンジンのいずれかの気筒が圧縮行程にある間は、エンジンの回転速度が信号検出限界速度未満になるのを許容するが、その気筒内のピストンが圧縮行程の上死点を越えて、膨張行程に入った後は、エンジンの回転速度を信号検出限界速度よりも十分に高い回転速度まで上昇させることができるように、ブラシレスモータBLMの仕様が定められている。即ち、本発明においては、エンジンのいずれかの気筒が圧縮行程にある間もエンジンを信号検出限界速度以上の速度で回転させるようにブラシレスモータの仕様を定めていた従来のエンジンシステムに比べて、小形のブラスレスモータが用いられる。
【0040】
本発明では、エンジンの始動時に、ブラシレスモータがエンジンの回転速度を信号検出限界速度を超えて上昇させる領域でピックアップコイルPUがパルス信号Vp,Vp′を発生するように構成されるため、制御装置ECU内のマイクロコンピュータは、エンジンを始動する際にパルス信号Vp,Vp′を確実に認識することができる。
【0041】
位置センサhuないしhwは、ホールICからなっていて、ロータの磁極を検出して、図4(B)ないし(D)に示されているように、検出している磁極の極性に応じて異なるレベルを示す矩形波状の位置検出信号HuないしHwを出力する。これらの位置検出信号は、ロータRTがステータの6つのブロックB1ないしB6の区間(電気角で360°の区間)をそれぞれ回転する間に同じパターンで発生する。
【0042】
位置検出信号HuないしHwからは、電気角で360°の各区間内におけるクランク角位置を検出することができる。例えば、位置検出信号のいずれかがレベル変化を示した直後の位置検出信号Hu,Hv,Hwの状態を0と1とで表すと、位置検出信号が変化を示す位置は、(101),(100),(110),(010),(011),(001)のように表すことができ、これらの位置はそれぞれ各ブロックの開始位置から、0°,10°,20°、30°,40°及び50°の位置である。従って、いずれかの位置検出信号がレベル変化を示した直後の3つの位置検出信号の状態を識別することにより、そのレベル変化が生じた位置が、各ブロックの開始位置から何度離れた位置であるかを、10°刻みで検出することができる。
【0043】
しかし、位置検出信号Hu,Hv及びHwだけでは、これらの信号から検出されるクランク角位置が、ステータ鉄心のいずれのブロックに属する位置であるかは検出できない。ブラシレスモータを回転させるためには、電気角で360°の区間のクランク角位置を検出できればよいが、エンジンの点火時期や燃料噴射時期を検出するためには、位置検出信号HuないしHwのレベルが変化する位置がいずれのブロックにあるのかをも検出する必要がある。
【0044】
そのため、本発明においては、ピックアップコイルPUが出力するパルス信号を基準として用いて、位置検出信号が示す各レベル変化に対応するクランク角位置を検出するクランク角位置検出手段SIを設けている。ピックアップコイルがパルス信号Vpを発生するクランク角位置が、ステータ鉄心のいずれのブロックに属するクランク角位置であるかは予め分かっているため、パルス信号Vpを基準として用いることにより、位置センサから得られる一連の位置検出信号がレベル変化を示す位置が、ステータ鉄心のいずれのブロックに属するクランク角位置であるかを検出することができる。例えば図示の例では、パルス信号VpがブロックB4で発生するため、パルス信号Vpが発生した直後に位置検出信号Hwがレベル変化を示した(010)の位置が、ブロックB4に属する(010)の位置、即ちブロックB4の始点から30°離れたクランク角位置であることが分かる。このようにして一度位置検出信号がレベル変化を示す位置がいずれのブロックのクランク角位置であるかを識別することができれば、以後は、位置検出信号のレベル変化とクランク角位置との関係を自動的に識別することができる。
【0045】
図4(A)に示したように、パルス信号Vpが発生すると同時、または発生した直後にいずれかの位置検出信号(図示の例では位置検出信号Hu)がレベル変化を示したときにカウンタに初期値(図示の例では1)を設定し、以後いずれかの位置検出信号がレベル変化を示す毎にカウンタの計数値を1ずつインクリメントして、クランク軸が10°回転する毎にカウンタの計数値を更新し、クランク軸が2回転してカウンタの計数値が最大値(図示の例では72)になるまでの間、位置検出信号がレベル変化を示す毎にカウンタの計数値をインクリメントする。カウンタの計数値が最大値に達した後に位置検出信号がレベル変化を示したときには、カウンタの計数値を初期値に戻し、以後同じことを繰り返す。このような動作を行わせることにより、エンジンの各気筒で1燃焼サイクルが行われる720°の区間におけるクランク角位置を10°刻みで検出することができる。図示の例では、このようにして位置検出信号のレベル変化からクランク角位置を検出した場合に、カウンタの計数値が58となるクランク角位置が、エンジンの一方の気筒でピストンが圧縮行程の上死点に達する位置(他方の気筒でピストンが排気行程の上死点に達する位置)となるようになっている。
【0046】
電子式エンジン制御装置ECUは、信号レベル変化識別手段SIにより、エンジンのクランク角位置との関係が識別された位置検出信号のレベル変化からエンジンのクランク角情報を得てエンジンの点火時期の制御を含む各種の制御を行う。
【0047】
図示の例では、エンジンの点火時期を制御するために、ECUに点火時期制御部C1と、点火回路IGとが設けられている。点火時期制御部C1は、位置検出信号がレベル変化を示す周期からエンジンの回転速度を演算する回転速度演算手段と、エンジンの始動が完了しているときにこの回転速度演算手段により演算された回転速度に対してマップを検索して必要な補間演算を行うことによりエンジンの点火時期を演算す点火時期演算手段とを備えていて、エンジンのピストンが上死点に達する位置(TDC)に相当するクランク角位置(58番の番号が付された位置)よりも一定角度位相が進んだ位置、例えば55番の番号が付されたクランク角位置を基準クランク角位置として、この基準クランク角位置で演算された点火時期の計測を開始し、演算され点火時期の計測を完了した時に点火回路IGに点火信号Siを与える。
【0048】
点火回路IGは、点火コイルと、点火信号が与えられたときに点火コイルの一次電流に急激な変化を生じさせるように点火コイルの一次電流を制御する一次電流制御回路とを備えた周知のもので、点火信号Siが与えられたときに、点火コイルの一次電流に急激な変化を生じさせることにより点火コイルの二次コイルに点火用の高電圧を誘起させる。この点火用高電圧はエンジンの点火時期にある気筒に取りつけられた点火プラグに印加されるため、該点火プラグで火花放電が生じてエンジンが点火される。
【0049】
ECUにはまた、燃料噴射制御部C2と、燃料噴射装置INJとが設けられている。燃料噴射装置INJは、噴射指令信号Sjに応答して弁を開いてエンジンの吸気管内や気筒内等に燃料を噴射するインジェクタ(電磁式燃料噴射弁)と、インジェクタに燃料を与える燃料ポンプとにより構成されている。燃料ポンプからインジェクタに与えられる燃料の圧力は一定に保たれているため、燃料の噴射量はインジェクタから燃料の噴射を行わせる時間(噴射時間)により管理される。
【0050】
燃料噴射制御部C2は、例えば、エンジンの回転速度とスロットルバルブ開度とから推定した(またはエンジンの吸気管内圧力と回転速度とから推定した)エンジンの吸入空気量に対して、混合ガスの空燃比を適正な範囲に保つために必要な燃料の噴射量を与える噴射時間を基本燃料噴射時間として演算する基本噴射時間演算手段と、エンジンの温度、大気圧などの制御条件に対して基本燃料噴射時間を補正して実際の噴射時間を演算する噴射時間補正手段と、噴射時間演算手段により演算された噴射時間に無効噴射時間を加算した時間に相当する信号幅を有する矩形波状の噴射指令信号Sjを出力する噴射指令信号出力手段とを備えた周知のものである。
【0051】
信号レベル変化識別手段SI、点火時期制御部C1及び燃料噴射制御部C2を構成するための各手段は、ECU内に設けられた図示しないマイクロコンピュータに所定のプログラムを実行させることにより実現される。なお図1に示されたインバータ制御部Dを構成するための手段は、ECU内のマイクロコンピュータとは別個のマイクロコンピュータにより実現してもよく、ECU内のマイクロコンピュータにより実現してもよい。本実施形態では、ECU内のマイクロコンピュータによりインバータ制御手段Dを構成する。
【0052】
本実施形態において、信号レベル変化識別手段SI、点火時期制御部C1,燃料噴射制御部C2及びインバータ制御部Dを構成するために、ECU内のマイクロコンピュータに実行させる処理のアルゴリズムの一例を図5に示した。この例では、エンジンの始動時に極低速時の点火位置として適したクランク角位置、例えば図4において58の数字が付されたクランク角位置で点火動作を行わせ、燃料の噴射を開始するのに適した一定のクランク角位置で燃料噴射を開始させるものとする。
【0053】
図5に示した処理は、位置センサを構成するホールICが出力する位置検出信号がレベル変化を示す毎に実行される割り込み処理である。図5に示した処理が開始されると、先ずステップS101でクランク角位置の検出が済んでいるか否かを判定する。最初はクランク角位置の検出が済んでいないため、ステップS102に進み、ピックアップコイルからのパルス信号の入力があったか否かを判定する。その結果、パルス信号の入力がない場合には、ステップS114に移行して、位置センサの出力に基づいてブラシレスモータの通電パターンを判断し、判断した通電パターンに従ってブラシレスモータに駆動電流を流すように、インバータ回路INVのスイッチ素子に駆動信号を与えてメインルーチンに復帰する。
【0054】
マイクロコンピュータが実行する図示しないメインルーチンでは、位置センサが出力する位置検出信号の発生周期からエンジンの回転速度を演算する処理、演算された回転速度に対して点火時期を演算する処理、燃料噴射時間を演算する処理等が行われる。
【0055】
図5のステップS102において、ピックアップコイルからのパルス信号Vpの入力があったと判定されたときには、ステップS103に進んで、その時のクランク角位置を特定し、ステップS104でカウンタに初期値(図4に示した例では1)をセットする。次いでステップS105でクランク位置検出済みフラグをセットしてステップS114に進む。
【0056】
図5のステップS101でクランク角位置の検出が済んでいる(クランク角位置検出フラグがセットされている)と判定されたときには、ステップS106に進んで、位置センサが出力する位置検出信号のパターンからエンジンが正回転しているか逆回転しているかを判定し、正回転しているときには、ステップS107に進んでカウンタの計数値を1つ増加させる。またステップS106でエンジンが逆回転していると判定されたときには、ステップS108に進んでカウンタの計数値を1つ減少させる。
【0057】
次いでステップS109に進んで、メインルーチンで演算されている回転速度から、エンジンが低速(始動が完了する前の速度)で回転しているか否かを判定し、低速で回転していると判定されたときには、ステップS110に進む。ステップS110では今回の割り込み処理が行われたタイミングが始動時の点火時期として定められたタイミングであるか否か(今の例では、図4において58の番号が付された位置であるか否か)を判定し、始動時の点火時期であると判定されたときにはステップS111において点火回路に点火信号Siを与える。ステップS110で今回の割り込みタイミングが点火時期として定められたタイミングではないと判定されたとき、及びステップS111で点火回路に点火信号を与える処理が完了したときには、次いでステップS112を実行する。
【0058】
ステップS112においては、今回の割り込みタイミングが燃料噴射を開始するタイミングであるか否かを判定し、その結果燃料噴射を開始するタイミングであると判定されたときには、ステップS113に進んで燃料噴射装置に噴射指令信号を与える処理を行わせる。ステップS112で今回の割り込みタイミングが燃料噴射を開始するタイミングでないと判定されたとき、及びステップS113で行う噴射指令信号を発生させるための処理が完了したときには、ステップS114に移行してブラシレスモータを駆動するための制御を行わせる。
【0059】
図5に示したアルゴリズムによる場合には、ステップS101ないしS108により、信号レベル変化識別手段が構成される。またステップS110及びS111により、点火時期制御部C1を構成する手段の内、エンジンの始動時の点火時期を制御する手段が構成され、ステップS112及びS113により、燃料噴射制御部C2を構成する手段の内、エンジンの始動時の燃料噴射を制御する手段が構成される。
【0060】
本発明においては、ブラシレスモータとして、いずれかの気筒が圧縮行程にあるときにエンジンの回転速度が信号検出限界速度を下回ることを許容する小形のものを用いるため、エンジンの潤滑オイルの粘性の増大などによりエンジンを始動させるために必要なトルクが大きくなっている場合に、始動時に圧縮行程においてエンジンが停止寸前の状態になることが考えられるが、ブラシレスモータに設けられている位置センサは、ロータが停止している状態でも位置検出信号を発生するため、エンジンが停止した状態または停止寸前の状態になった場合でも、ブラシレスモータをエンジンを始動させる方向に回転させるべく、ブラシレスモータに駆動電流を流し続けることができる。始動時に圧縮行程においてエンジンが停止状態または停止寸前の状態になった場合でも、ブラシレスモータの駆動電流が制限値を超えない範囲で、該ブラシレスモータを駆動し続けることにより、ピストンを上死点に向けてゆっくりと変位させることができるので、ピストンが上死点を越えるまでエンジンの始動動作を継続することができる。ピストンが上死点を越えれば、ブラシレスモータにかかる負荷が急に軽くなるため、ブラシレスモータを一気に加速することができ、その間に位置検出信号がレベル変化を示す位置に対応するクランク角位置を検出して、位置検出信号からエンジンのクランク角位置情報を得ることができるようになる。
【0061】
上記の実施形態では、エンジンが2気筒4ストロークエンジンであるとしたが、単気筒2ストロークエンジンが用いられる場合にも本発明が有効である。
【0062】
上記の説明では、エンジンの始動時を問題としたが、本発明によれば、エンジンが始動した後に、エンジンの負荷が著しく重くなって、エンジンの回転速度が信号検出限界速度未満にまで低下した場合にも、クランク角位置の情報を取得することができるため、エンジンの点火時期の制御と燃料噴射制御とを的確に行わせて、エンジンがストールするのを防ぐことができる。
【0063】
また本発明のように、ブラスレスモータに設けられている位置検出装置から得られる位置検出信号が示す各レベル変化からクランク角位置情報を得るようにすると、ピックアップコイルからのみクランク角位置情報を得る場合に比べて、クランク角位置情報を細かく(上記の例では10°刻みで)得ることができるため、特定の制御を開始するクランク角位置(例えば燃料噴射を開始する位置)を検出する際に、ピックアップコイルが特定のパルス信号を発生したときにタイマを起動して、制御を開始するクランク角位置を検出するための計時動作を行わせる等の面倒な処理を行う必要がなくなり、制御を簡単にすることができる。
【0064】
上記の実施形態では、ブラシレスモータとして三相ブラシレスモータを用いたが、三相以外の多相のブラシレスモータを用いる場合にも本発明を適用することができる。
【0065】
上記の実施形態では、ECUに燃料噴射制御部が設けられているが、燃料噴射装置を用いないエンジンを制御の対象とする場合にも本発明を適用することができるのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施形態のハードウェアの構成を概略的に示した回路図である。
【図2】本発明の実施形態においてブラシレスモータの位置センサが出力する位置検出信号とインバータ回路の通電パターンとを示した波形図である。
【図3】本発明の実施形態で用いるブラシレスモータのロータとステータの構成例を示した正面図である。
【図4】本発明の実施形態において位置センサが出力する位置検出信号と、エンジンの始動時の回転速度の変化と、ピックアップコイルが出力するパルス信号の波形とを、対応するクランク角位置が検出された位置検出信号のレベル変化位置に付された一連の番号とともに示した波形図である。
【図5】本発明の実施形態において、位置検出信号がレベル変化を示す毎にマイクロコンピュータに実行させる割り込み処理のアルゴリズムの一例を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0067】
BLM ブラシレスモータ
RT ロータ
ST ステータ
Lu〜Lw 電機子コイル
hu〜hw 位置センサ(ホールIC)
SG 信号発生器
PU 信号発生器内に設けられたピックアップコイル
ECU 電子式エンジン制御装置
SI クランク角位置検出手段
C1 点火時期制御部
C2 燃料噴射制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多相の電機子コイルを有するステータと、2n極(nは1以上の整数)の磁石界磁を有するロータと、前記ステータの各相の電機子コイルに対してそれぞれ設定された検出位置で前記ロータの磁極を検出して検出している磁極の極性が切り替わる毎にレベル変化を示す位置検出信号を出力する位置センサを備えた位置検出装置と、前記ロータを回転させるべく前記位置検出装置が出力する位置検出信号に応じて決定した通電パターンで前記多相の電機子コイルに駆動電流を流すモータ駆動部とを備えたブラシレスモータをスタータモータとして備え、前記スタータモータのロータの回転角度位置とクランク角位置との関係が一義的に決まるようにして前記ロータがクランク軸に取り付けられたエンジンの点火時期の制御を含む各種の制御を行う電子式エンジン制御装置において、
前記エンジンの一定のクランク角位置で磁束の変化を検出してパルス信号を出力するピックアップコイルと、
前記ピックアップコイルが出力するパルス信号を基準にして、前記位置検出信号が示す各レベル変化に対応する前記エンジンのクランク角位置を検出するクランク角位置検出手段と、
を具備し、
前記ピックアップコイルは、前記エンジンのクランキング負荷が軽いクランク角区間で前記パルス信号を出力するように設けられ、
前記ブラシレスモータは、前記ピックアップコイルが発生する前記パルス信号の大きさをしきい値レベル以上とするために必要な回転速度で前記エンジンを回転させるために必要とされる出力トルクを発生するように構成され、
前記クランク角位置検出手段により対応するクランク角位置が検出されている前記位置検出信号のレベル変化から前記エンジンのクランク角情報を得て前記エンジンの点火時期の制御を含む各種の制御を行うように構成されていること、
を特徴とする電子式エンジン制御装置。
【請求項2】
前記エンジンは単気筒の2ストロークエンジンか、または2つの気筒で行われる行程が360°ずれている関係にある2気筒4ストロークエンジンである請求項1に記載の電子式エンジン制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−292009(P2007−292009A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−123068(P2006−123068)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000001340)国産電機株式会社 (191)
【Fターム(参考)】