説明

エンジン排気管内に燃料を噴射する装置及び噴射量の測定方法

【課題】排気ガス後処理装置を装備したエンジンの排気管に添加燃料を噴射する燃料噴射装置において、噴射燃料の霧化を促進するとともに燃料噴射量を正確に測定する。
【解決手段】排気管1に装着した燃料噴射弁2の前方に衝突板4を設け、これをステー5により燃料噴射弁2に取り付ける。排気ガス後処理装置用の添加燃料として噴孔22から噴射された燃料は、衝突板4に衝突し周囲に拡散して霧化が行われ、排気ガス中の残存酸素と化合する。そのため、燃料噴射弁2の噴孔の径を縮小して霧化を図る必要はなく、噴孔にデポジットが生じる事態を回避できる。また、衝突板4の温度は、噴射された燃料により冷却されて低下するが、衝突板4に温度センサTSを内蔵させて排気ガスの温度との温度差を測定すると、噴射された燃料の量を測定することが可能であり、このような測定方法を用いて、排気管に噴射される添加燃料の量を制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン排気ガス中の有害成分を減少させるための排気ガス後処理装置に関し、ことに、排気ガス後処理装置に添加燃料を供給する燃料噴射装置及び燃料噴射量の測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
環境対策の重要な一環として、車両用エンジンに対し、排気ガス中の有害成分とされる窒素酸化物(NOx)あるいは炭化水素(HC)等の規制が実施される一方、有害成分の低減に向けて各種の技術の開発が精力的に行われている。車両用エンジンにはガソリンエンジンとディーゼルエンジンとがあり、ディーゼルエンジンは、トラック等の商用車を中心として広く普及している。ディーゼルエンジンは、シリンダ内に供給される空気を圧縮し、高温高圧となった空気中に燃料を噴射して燃焼させるエンジンであって、ガソリンエンジンと比べ一般的に熱効率が高い。そのため、二酸化炭素(CO)の排出量がその分少なくなり、この面では環境対策でも優れた特性を有しているものの、NOx及び粒子状物質(パティキュレート:、PM)については、その削減が強く要請されている。
【0003】
NOxを削減するには、エンジンの排気ガスを吸気に再循環させるEGR装置等各種の装置が知られているが、その中に、NOx吸蔵還元触媒を用いる排気ガス後処理装置がある。この装置では、例えばディーゼルエンジンのような基本的に空燃比の大きい状態(リーン)で燃焼を行わせるエンジンにおいて、酸素過剰な排気ガス雰囲気にあるときに排気ガス中のNOxを触媒に吸蔵し、間欠的に還元雰囲気のガス(スパイクガス)を触媒に通過させNOxを還元して除去する。排気ガスを還元雰囲気ガスとするには、エンジンのシリンダ内に噴射する燃料を大幅に増量する方法や、排気管に設けた燃料噴射装置から排気ガス中に燃料を添加して燃焼させ、空気過剰率λを1以下とする方法がある。
【0004】
また、排気ガス中のPMを削減するには、ディーゼルエンジンの排気管にディーゼル・パティキュレート・フィルタ(DPF)と呼ばれるフィルタを装着し、このDPFによってPMを捕捉する技術が一般的に採用される。このDPFでは、堆積したPMを適宜除去してDPFの機能を回復させるいわゆるDPFの再生を行う必要があり、このときにも、排気管に設けた燃料噴射装置から排気ガス中に燃料を添加して排気ガスを高温化し、DPFに堆積したPMを燃焼して除去する方法が用いられる場合がある。
【0005】
このような添加燃料を排気ガス中に噴射する燃料噴射装置が、一例として特開2008−19735号公報に開示されている。この添加燃料の噴射装置では、図6(a)に示すとおり、ディーゼルエンジン100の排気管101に装備されたNOx吸蔵還元触媒102の上流側に燃料噴射弁103を設置する。燃料噴射弁103は、流量調節弁104、添加燃料用蓄圧室105等を介して、シリンダ内に噴射する高圧燃料を蓄圧したコモンレール106と連結されており、燃料噴射弁103には、燃料タンク107からのシリンダ内噴射用の燃料が分岐して供給される。
図6(b)に示すとおり、燃料噴射弁103は、噴孔103Aを備えた弁本体、噴孔103Aを開閉するニードル103B、ニードル103Bの上部に形成されたアーマチュア103C及びソレノイドコイル103Dを備えており、ニードル103Bの周囲には、燃料流入口103Eから添加燃料が供給される。排気ガスを還元雰囲気ガスとするときは、ソレノイドコイル103Dに通電してニードル103Bを吸引し、噴孔103Aを通して燃料を排気管101内に噴射する。添加する燃料の量は、ソレノイドコイル103Dの通電時間あるいは添加燃料用蓄圧室105内の燃料圧力を変えることにより制御可能であって、ディーゼルエンジンに設けられたエンジン制御装置ECUは、添加燃料圧力センサ108、圧力制御弁109等を用いて、添加する燃料量を制御している。なお、この燃料噴射弁103では、燃料を排気管内に噴射しないときでも、燃料流入口103Eから燃料流出口103Fへ燃料を流し、燃料噴射弁103の冷却を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−19735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
エンジンの排気管に取り付けられる燃料噴射弁は、常時排気ガスの熱に晒されて高温となるので、噴射終了時の燃料や排気ガス中の未燃焼成分が噴孔に付着すると、これが炭化を起こして膠着し、いわゆるデポジットを生じる場合がある。このデポジットによる噴孔の閉塞は、噴孔の径が小さいほど発生しやすい。特許文献1の燃料噴射弁では、燃料による冷却を行っているものの、噴射燃料の霧化を良好にして排気ガスとの混合を促進するよう噴孔の径を小さくしたときには、デポジットにより噴孔が閉塞する虞れがある。
【0008】
また、噴射する添加燃料の燃料量は、排気ガス中の残存空気量に応じて正確に制御することが必要であり、例えば、NOx吸蔵還元触媒に還元雰囲気ガスを通過させるときは、排気ガスのλが還元に適切な値となるよう、添加燃料量を制御しなければならない。ところが、通常の燃料噴射弁では、燃料噴射量が噴射弁入口の燃料圧力やエンジンの排気ガスの圧力に応じて変動し、燃料噴射量の正確な制御が困難である。ことに、燃料噴射弁の噴孔にデポジットが付着すると、噴孔が完全に閉塞しないまでも噴孔面積が小さくなり、同一の入口燃料圧力、弁開度であっても燃料噴射量は大幅に異なったものとなるため、正確な制御は実質的に不可能となる。
本発明の課題は、エンジンの排気管に添加燃料を噴射する燃料噴射装置であって、デポジットの発生がなく燃料の霧化特性が優れた装置を提供し、さらに、この燃料噴射装置を利用した燃料噴射量の正確な測定装置を提供して、上述の問題点を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題に鑑み、本発明の第1のもの(第1発明)は、エンジンの排気管に噴射された燃料が衝突する衝突板を設けて霧化の促進を図るものである。すなわち、第1発明は、請求項1に記載のように、
「エンジンの排気ガス中に燃料を噴射する燃料噴射装置であって、
前記エンジンの排気管に装着された燃料噴射弁と、前記燃料噴射弁から噴射された燃料が衝突する衝突板とを設けた」
ことを特徴とする燃料噴射装置となっている。
【0010】
第1発明の燃料噴射装置は、請求項2に記載のように、排気管にNOx吸蔵還元触媒が装備されているエンジンに適用することが可能であり、また、請求項3に記載のように、排気管にディーゼル・パティキュレート・フィルタが装備されているディーゼルエンジンに適用することが可能である。
【0011】
そして、本発明の第2のもの(第2発明)は、第1発明の衝突板を利用し、衝突板に温度センサを設置するとともに排気ガス温度センサを設けて燃料噴射量の測定装置を構成するものである。すなわち、第2発明は、請求項4に記載のように、
「エンジンの排気ガス中に噴射された燃料の量を測定する燃料量測定装置であって、
エンジンの排気管に装着された燃料噴射弁から噴射された燃料が衝突する衝突板を設け、かつ、前記衝突板に温度センサを設置するとともにエンジンの排気ガスの温度を測定する排気ガス温度センサを設け、
前記燃料噴射弁から燃料が噴射されたときに生じる、前記衝突板の温度とエンジンの排気ガスの温度との差を検出する検出手段と、前記検出手段の出力に基づき燃料の噴射量を演算する演算手段とを備えていることを特徴とする燃料量測定装置」
ことを特徴とする燃料量測定装置となっている。
【0012】
第2発明の燃料量測定装置は、請求項5に記載のように、排気管にNOx吸蔵還元触媒が装備されているエンジンにおいて、前記NOx吸蔵還元触媒に還元ガスを供給するときに、排気ガス中に噴射する燃料を制御するため使用することが可能であり、また、請求項6に記載のように、排気管にディーゼル・パティキュレート・フィルタが装備されているディーゼルエンジンにおいて、前記ディーゼル・パティキュレート・フィルタを再生するときに、排気ガス中に噴射する燃料を制御するため使用することが可能である。さらに、第2発明は、請求項7に記載のように、方法の発明として実施することもできる。
【発明の効果】
【0013】
本願の第1発明では、エンジンの排気管に装着された燃料噴射弁と、この燃料噴射弁から噴射された燃料が衝突する衝突板とが設けられる。添加燃料を排気管に供給する必要があるときは、排気管に装着された燃料噴射弁から燃料を噴射するが、噴射された燃料は、衝突板に衝突して周囲に霧状に拡散される。拡散された燃料は、高温の排気ガスによって迅速に気化されて排気ガス中に残存する酸素と化合し、例えば、NOx吸蔵還元触媒を通過する排気ガスを還元雰囲気のガスとする。このように、第1発明の燃料噴射装置では、衝突板により燃料の良好な霧化が達成されるので、燃料噴射弁の噴孔の径を減少させて霧化特性の向上を図る必要はなく、高温の排気ガスによるデポジットの発生を防止することができる。
【0014】
本願の第2発明は、上記の衝突板に温度センサを設置するとともに排気ガスの温度を検出する排気ガス温度センサを設け、両方の温度センサで検出された温度の差に基づいて噴射燃料量を求めるものである。
衝突板の温度は、燃料が噴射されない状態では排気ガスの温度と一致している。添加燃料を噴射したときは、噴射燃料が衝突板に衝突すると、噴射燃料によって冷却されて衝突板の温度が降下する。そして、衝突板と排気ガスとの温度差は、噴射燃料量が増加するほど増大する。つまり、よく知られている熱線流速計と同様に、衝突板と排気ガスとの温度差は、燃料噴射弁から噴射された燃料量の関数となるので、この温度差と燃料噴射量との関係を予め実験等に基づいて定めておくことにより、温度差を検出して燃料噴射量を演算することが可能である。
【0015】
第2発明の燃料噴射量の測定装置及び測定方法は、噴射された燃料の量を直接測定するものであり、排気管に装着された燃料噴射弁の状態の影響を受けることがない。例えば、燃料噴射弁の圧力と噴射量の特性が変化したとしても、その変化の影響を受けることなく正確な燃料噴射量の測定が可能である。また、エンジンの運転状態が変化して排気ガスの温度あるいは圧力が変動した場合でも、燃料噴射量を正確に検出することができる。したがって、この燃料噴射量測定装置を、請求項5に記載のように、NOx吸蔵還元触媒を備えたエンジンにおける添加燃料の制御装置に適用したときは、NOx吸蔵還元触媒を通過する排気ガスの空気過剰率λを的確に制御して、NOx吸蔵還元触媒の還元作用を効率的に行わせることが可能である。請求項6に記載のように、DPFを備えたディーゼルエンジンのDPF再生制御に適用したときは、必要かつ十分の添加燃料を排気ガス中に供給して、無駄な燃料の消費やDPFの焼損を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に基づく燃料噴射装置の全体を示す概略図及び一部拡大図である。
【図2】本発明の衝突板の実施例及び変形例を示す図である。
【図3】本発明に基づく燃料噴射装置の他の実施例を示す概略図である。
【図4】本発明の燃料噴射量測定装置のフローチャートである。
【図5】本発明の燃料噴射量測定装置を用いた制御フローの一例である。
【図6】従来の燃料噴射装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明について説明する。図1は、本発明の燃料噴射装置FIをディーゼルエンジンの排気管の曲がり部に設けた実施例を示すものである。図1には省略されているが、図6に示されるディーゼルエンジンと同様に、排気管の燃料噴射装置FIの下流にはNOx吸蔵還元触媒(あるいはDPF)が装備されており、燃料噴射装置FIには、シリンダ内に噴射する燃料が分岐して供給される。添加燃料として排気管に噴射する燃料の噴射時期及び噴射量は、エンジン制御装置ECUによりディーゼルエンジンの運転状態に応じて制御される。
【0018】
ディーゼルエンジンの排気管1には、燃料噴射弁2が装着されている。A部拡大図に示すとおり、燃料噴射弁2は、ニードル弁21を図示しないソレノイドによって開閉する、図6の燃料噴射弁と同様な電磁弁である。ただし、燃料噴射弁2の先端の噴孔22は、径の小さな噴孔を複数設けたものではなく、比較的大径の単一の噴孔を設けたものである。燃料噴射弁2には、燃料供給管3が接続されており、これを経由してディーゼルエンジンの燃料噴射装置から分岐された燃料が供給される。
【0019】
排気管1の中に挿入された燃料噴射弁2の前方には衝突板4が設けられており、衝突板4は、噴孔22の近傍の、噴射された燃料が液体のまま衝突する位置に設置される。図2(a)に示すとおり、衝突板4は、耐熱性合金あるいはセラミック等の耐熱性材料からなるディスク状の部材である。衝突板4の表面には、衝突した燃料が周囲に拡散して流れるよう、中央に凸部41が形成されその周りに放射状の溝42が形成されている。また、衝突板4は、燃料噴射弁2の本体に溶接された4本のステー5により支持され、燃料噴射弁2と一体となっている。この実施例では衝突板がディスク状であるが、衝突板を長方形状その他の形状としてもよい。
【0020】
添加燃料が燃料噴射弁2の噴孔22から噴射されると、噴射された燃料は、図1のA部拡大図において2点鎖線で示すように、衝突板4に衝突してその表面上を流れた後霧状に周囲に飛散される。衝突板4の周囲には高温の排気ガスが流れており、飛散した燃料は、排気ガスの流れに巻き込まれて速やかに気化し排気ガス中の酸素と化合する。このように、衝突板4によって噴射された燃料の霧化及び排気ガスとの混合が大幅に促進されるので、噴孔22の径を比較的大きなものとすることが可能であり、高温の排気ガス中に置かれた噴孔であっても、デポジットの発生する虞れはない。
衝突板4の周囲に流れる排気ガスに乱流を生じさせて飛散した燃料との混合を促進するよう、図2(b)に示すように、ステー5Aの間に金網5Bを設置してこれに衝突板4を取り付けてもよい。また、排気管1の直線部分に燃料噴射弁2を装着するときは、図3のように、排気管1にステー5Cを固定して衝突板4を支持し、衝突板4で飛散した燃料が排気管内に均一に広がるよう、衝突板4を噴射燃料に対し傾斜させて取り付けることもできる。
【0021】
次いで、衝突板を利用した本発明の燃料噴射量測定装置について説明する。
衝突板4には、図3、図1のA部拡大図に示されるように、温度センサTSが埋め込まれている。この実施例では、温度センサTSは測温抵抗体であり、温度によって変化する電気抵抗を計測して衝突板4の温度を検出するように構成されている。排気管には、燃料噴射弁2の上流に排気ガスの温度を検出する排気ガス温度センサGTSが設けられる。衝突板4は、高温の排気ガス中に置かれた熱容量の小さな部品であるから、燃料が噴射されていないときは、その温度は排気ガスの温度と一致している。
【0022】
添加燃料の供給時には、噴射された燃料が衝突板4に衝突して中心部から周囲に拡散して流れるため、衝突板4は、燃料により冷却されてその温度が降下し、衝突板4の温度と排気ガスの温度との間に温度差が発生する。そして、衝突板4の温度は、冷却する燃料の量が増大するほど低下する(ただし、衝突板の温度が低下すると、衝突板には周囲を流れる排気ガスの熱が流入する)から、衝突板4と排気ガスとの間に温度差は、結局、噴射された燃料量の関数となる。温度差と噴射された燃料量との具体的な関係は、衝突板の形状や燃料噴射弁噴孔と衝突板との距離などに応じて変化するが、特定の燃料噴射装置における温度差と燃料量との具体的な関係を、予め実験的に求めておくことにより、衝突板4と排気ガスとの間の温度差から燃料噴射量を演算することができる。
本発明の燃料噴射量の測定装置は、燃料噴射弁2から衝突板4に噴射された燃料の量を直接測定するものである。したがって、燃料噴射弁の圧力と噴射量の特性が変化したとしても、その変化の影響を受けることなく正確な燃料噴射量の測定が可能となる。
【0023】
図4には、本発明の燃料噴射量測定装置が実行する処理のフローチャートを示す。
このフローチャートでは、添加燃料の供給が開始されると、排気ガス温度センサGTSで検出した排気ガス温度GT及び温度センサTSで検出した衝突板4の温度PTを読み込み(ステップS1)、排気ガス温度TGと衝突板4の温度TSとの温度差(TG−TS)を求める(ステップS2)。これらは、請求項4における、衝突板の温度とエンジンの排気ガスの温度との差を検出する検出手段となっている。そして、燃料噴射量測定装置には、温度差(GT−PT)と燃料噴射量との関係を実験的に定めたグラフがマップMとして格納されており、検出された温度差に対応する燃料噴射量がマップMにより決定される(ステップS3)。これは、請求項4における、検出手段の出力に基づき燃料の噴射量を演算する演算手段である。
【0024】
図5には、本発明の燃料噴射量測定装置を用いてNOx吸蔵還元触媒に還元ガスを供給するときの制御フロー図を示す。
エンジンがNOx吸蔵還元触媒に還元ガスを供給する運転状態となった際には、エンジン制御装置ECMが、エンジンのシリンダ内に噴射する燃料量及びシリンダに供給する空気量に基づいて排気ガス中の残存酸素量を演算する(B1)。次いで、排気ガス中の酸素を消費して還元雰囲気ガスとするために必要な排気ガス中への燃料噴射量Qが演算され(B2)、その燃料量が、マップMにより排気ガスと衝突板との温度差ΔTに換算されて、目標値としての温度差ΔTDとなる。目標値の温度差ΔTDは、加算点B3で実際の温度差ΔTAと比較されてその偏差eが求められ、偏差eに応じて燃料噴射弁の噴射圧力あるいは弁開度が増減される(B4)。その結果生じた新たな温度差ΔTAは、加算点B3にフィードバックされる。こうした制御は、エンジン制御装置により実行され、排気ガスの空気過剰率λが変動しても、迅速にその変動に追随し燃料噴射量を正確に制御することが可能である。なお、エンジンの排気管に排気ガスの空気過剰率λを検出するλセンサを設置し、排気ガス中の残存酸素量を演算することもできる。
【0025】
以上詳述したように、本発明は、エンジンの排気管に添加燃料を噴射する燃料噴射装置において、噴射された燃料が衝突する衝突板を設けて霧化の促進を図るものであり、さらには、この衝突板を利用して噴射燃料量を測定する測定装置を構成するものである。上記の実施例では、NOx吸蔵還元触媒(又はDPF)を排気管に装備したディーゼルエンジンに本発明を適用した場合について説明したが、本発明は、リーン燃焼を行わせ排気管にNOx吸蔵還元触媒を備えたガソリンエンジンにも適用することができる。また、衝突板と排気ガスの温度差を計測する方法として、上記実施例における測温抵抗体の電気抵抗の変化を検出する方法に限らず、例えば、衝突板が排気ガスと同一温度となるよう測温抵抗体に電流を流し、その電流値を検出して温度差を求めることも可能である。このように、本発明の実施に際しては上記の実施例に限られるものではなく、これに対し種々の変更が可能であるのは明らかである。
【符号の説明】
【0026】
1 排気管
2 燃料噴射弁
21 ニードル弁
22 噴孔
3 燃料供給管
4 衝突板
41 凸部
42 溝
5 ステー(衝突板取り付け用)
TS 温度センサ
GTS 排気ガス温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気ガス中に燃料を噴射する燃料噴射装置であって、
エンジンの排気管に装着された燃料噴射弁と、前記燃料噴射弁から噴射された燃料が衝突する衝突板とを設けたことを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料噴射装置を備え、かつ、前記燃料噴射装置の下流の排気管にはNOx吸蔵還元触媒が装備されているエンジン。
【請求項3】
請求項1に記載の燃料噴射装置を備え、かつ、前記燃料噴射装置の下流の排気管にはディーゼル・パティキュレート・フィルタが装備されているディーゼルエンジン。
【請求項4】
エンジンの排気ガス中に噴射された燃料の量を測定する燃料量測定装置であって、
エンジンの排気管に装着された燃料噴射弁から噴射された燃料が衝突する衝突板を設け、かつ、前記衝突板に温度センサを設置するとともにエンジンの排気ガスの温度を測定する排気ガス温度センサを設け、
前記燃料噴射弁から燃料が噴射されたときに生じる、前記衝突板の温度とエンジンの排気ガスの温度との差を検出する検出手段と、前記検出手段の出力に基づき燃料の噴射量を演算する演算手段とを備えていることを特徴とする燃料量測定装置。
【請求項5】
排気管にNOx吸蔵還元触媒を装備したエンジンであって、請求項4に記載の燃料量測定装置を備えており、前記NOx吸蔵還元触媒に還元ガスを供給するときに、前記燃料量測定装置を使用して排気ガス中に噴射する燃料を制御するエンジン。
【請求項6】
排気管にディーゼル・パティキュレート・フィルタを装備したディーゼルエンジンであって、請求項4に記載の燃料量測定装置を備えており、前記ディーゼル・パティキュレート・フィルタを再生するときに、前記燃料量測定装置を使用して排気ガス中に噴射する燃料を制御するディーゼルエンジン。
【請求項7】
エンジンの排気ガス中に噴射された燃料の量を測定する燃料量測定方法であって、
エンジンの排気管に装着された燃料噴射弁から噴射された燃料が衝突する衝突板を設け、かつ、前記衝突板に温度センサを設置するとともにエンジンの排気ガスの温度を測定する排気ガス温度センサを設け、
前記燃料噴射弁から燃料が噴射されたときに生じる、前記衝突板の温度とエンジンの排気ガスの温度との差に基づき、燃料の噴射量を求めることを特徴とする燃料量測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−168907(P2010−168907A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9722(P2009−9722)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】