説明

エンジン排熱を利用する冷暖房装置とその運転方法

【目的】 簡単でコンパクトな装置で効率よく、運転できるエンジン排熱を利用する冷暖房装置とその運転方法を提供する。
【構成】 発電用エンジン24の排熱を温水又は蒸気として回収する排ガス熱交換器26と、回収した排熱を熱源とする吸収冷温水機と暖房用熱交換器とを有すると共に、該吸収冷温水機と暖房用熱交換器に接続する冷房用冷水系15又は暖房用温水系15を有するエンジン排熱5を利用する冷暖房装置において、前記冷房用冷水系15では発電用エンジン24で発電25した電気を利用する圧縮式冷凍機23を接続すると共に、前記暖房用温水系15では発電用エンジン24で発電25した電気を利用する電気ヒーター22を接続したものであり、電気負荷が定格未満であり、冷暖房負荷が運転中の発電用エンジン排熱による冷暖房出力を上回る場合に、発電用エンジンで発電した電気で圧縮式冷凍機23又は電気ヒーター22を駆動することとしたものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、冷暖房装置に係り、特に発電用エンジンの排熱と発電した電気の両方を用いる冷暖房装置に関する。
【0002】
【従来の技術】エンジン排熱で駆動する吸収冷凍機において、電気負荷が少ないと、排熱量が少なく冷凍出力(能力)が少なくなる。この状態で、冷房負荷が大きければ、電気を消費させて圧縮冷凍機を運転すると、冷房負荷のバックアップになるばかりでなく、発電量増加により排熱(温水熱量)も増加し、吸収冷凍機の出力も増加することは、特公昭58−15705号公報に記載されている。ところが、この公報には発電設備における熱回収方法が冷房のみしか記載されていない。
【0003】暖房の場合、暖房のバックアップをヒートポンプで行うことが考えられるが、この場合、低温側熱源に何を用いるかが問題となる。ビル空調などで、冷房する部屋があるような場合は、これらを熱源とするが、一般には、空気を熱源とすることが多くなる。この方式は、電気ヒーターを用いる場合よりも効率は良いが装置が複雑で、また装置も大きくなる。空気熱交換器が、吸収冷凍機用冷却塔なみの大きさになることもある。また、外気温度条件によっては、空気熱交換器に霜がついたりするので、除霜運転が必要になり、装置も複雑になる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の点に鑑み、暖房の場合も簡単でコンパクトな装置で効率よく、運転できるエンジン排熱を利用する冷暖房装置とその運転方法を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明では、発電用エンジンの排熱を温水又は蒸気として回収する排ガス熱交換器と、回収した排熱を熱源とする吸収冷温水機と暖房用熱交換器とを有すると共に、該吸収冷温水機と暖房用熱交換器に接続する冷房用冷水系又は暖房用温水系を有するエンジン排熱を利用する冷暖房装置において、前記冷房用冷水系では発電用エンジンで発電した電気を利用する圧縮式冷温水機を接続すると共に、前記暖房用温水系では発電用エンジンで発電した電気を利用する電気ヒーターを接続することとしたものである。
【0006】前記冷暖房装置において、吸収冷温水機と圧縮式冷凍機は、冷却塔と冷却水配管で結び、冷却水が冷却塔からまず吸収冷凍機をついで圧縮式冷凍機を通り冷却塔に戻るように接続するのがよい。また、上記した本発明のエンジン排熱利用冷暖房装置の運転方法において、電気負荷が定格未満であり、冷暖房負荷が運転中の発電用エンジン排熱による冷暖房出力を上回る場合に、発電用エンジンで発電した電気で圧縮式冷凍機又は電気ヒーターを駆動することとしたものである。
【0007】上記のように、本発明においては、発電用エンジンの排熱を温水(又は蒸気、又は温水と蒸気)として回収し、冷房運転時には、前記排熱を熱源とする吸収冷凍機で冷房用冷水を製造し、また、暖房運転時には、前記排熱と熱交換(又は、吸収冷凍機を経由)して暖房用温水を製造するエンジン排熱利用冷暖房装置において、発電用エンジンで発電した電気を利用する圧縮式冷凍機を冷房用冷水系に設け、また、発電用エンジンで発電した電気を利用する電気ヒーターを暖房用温水系に設けたものである。また、前記暖房用熱交換器は吸収冷温水機で兼ねることができ、この場合暖房用熱交換器を別に設ける必要はない。
【0008】
【作用】上記のように、本発明においては、暖房負荷が排熱による出力を上回る場合圧縮式冷凍機を用いないで、すなわちヒートポンプとしての運転をしないで、ヒーターを用いてバックアップシステムを簡単にしている。電気負荷が少ないと、排熱量が少なく、この状態で暖房負荷が大きければ、電気を消費させてヒーターを利用すると、暖房負荷のバックアップになり、また発電量増加による排熱増加もあり、暖房出力が増加する。
【0009】このように、本発明では通常の電気ヒーター単独の場合より、燃料をベースにした効率では排熱を利用するシステムであるので効率は良い。また、本発明では、冷却水を吸収式と圧縮式に共通で使うことができる。一般に排熱の温度があまり高くないので、吸収式になるべく低い冷却水を供給するのがよく、冷却塔からの冷却水は、まず吸収冷凍機について圧縮式へと流すのが好ましい。
【0010】
【実施例】以下、本発明を図面を用いて具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
実施例1図1及び図2は、本発明のエンジン排熱利用冷暖房装置の全体構成図を示したものであり、図1は吸収冷温水機の容量制御に、吸収冷温水機への温水流量制御30をした例であり、図2は、吸収冷温水機の容量制御に、吸収冷温水機内の再生器/凝縮器缶胴と吸収器/蒸発器缶胴の間の冷媒蒸気弁7の開度制御(冷媒蒸気量制御)をした例である。
【0011】図1及び図2において、Gは再生器、Aは吸収器、Eは蒸発器、Cは凝縮器、Hは溶液熱交換器、管1〜4は溶液通路、管5,6は冷媒通路、7は冷媒弁、8は冷媒ガスバイパス通路、9は冷却塔、10は冷却水ポンプ、11は溶液ポンプ、12は冷媒ポンプ、管13,14は熱源通路、管16,17は冷却水通路であり、これらで吸収式冷温水機を構成する。また、吸収式冷温水機に併設して、圧縮機18と冷却器19及び蒸発器20からなる圧縮式冷凍機23と、熱交換器21及びヒーター22からなる暖房用温水機を設けている。
【0012】さらに、電気を発電するために、エンジン24と発電機25を備え、該エンジン24の排ガスの熱量を回収する排ガス熱交換器26が設けられている。そして、再生器Gの熱源となる温水が熱源通路14の排ガス熱交換器26で加熱され、再生器Gで熱源として利用され、冷却された温水が通路13からエンジン24の冷却用として利用された後に、排ガス熱交換器26で加熱され、循環する。このような装置において、冷房サイクルでは冷房負荷がエンジン排ガスのみでまかなえる場合は、再生器Gを排ガスから回収した温水で運転する。
【0013】冷媒を吸収した希溶液は吸収器Aから管1を通り、ポンプ11により熱交換器Hの被加熱側に送られ、熱交換により加熱された希溶液を管2を通り再生器Gに導入される。再生器Gでは、管14からのエンジンのジャケット温水及び排ガスの熱源により加熱されて、吸収した冷媒蒸気を蒸発して濃縮される。濃縮された濃溶液は管3から熱交換器Hの加熱側を通って、管4から吸収器Aに導入され再び冷媒を吸収して希溶液となって管1から循環される。
【0014】一方、発生器Gで発生した冷媒蒸気は凝縮器Cに至り、凝縮器C中の冷却水16によって冷却されて凝縮し、管5から蒸発器Eに導入される。蒸発器Eでは、冷媒は冷水から熱を奪い、冷凍効果を発揮して蒸発する。蒸発した冷媒蒸気は吸収器Aで溶液に吸収される。吸収の際の吸収熱は吸収器を流れる管16からの冷却水により冷却される。また、暖房サイクルにおいては、吸収式冷温水機に吸収器A及び凝縮器Cに流れる冷却水を閉じて、再生器Gからの冷媒蒸気を直接蒸発器Eに導入して、その凝縮熱により暖房用温水15を加熱することによる。
【0015】そして、電気により、バックアップをかけるのは、冷房負荷あるいは暖房負荷を発電用エンジン24の排熱で賄いきれない場合である。但し、電気負荷が定格点になるまでで、定格点以上ではバックアップはかけられない。冷房時は、例えば、冷水温度で所定の温度まで下がらなければ、負荷が大きいとして圧縮式冷凍機23でバックアップをかける。この際、発電量を監視し、定格電力を越えないよう圧縮式を運転する。すなわち、発電電流を定格以下に抑えるよう圧縮式冷凍機の容量制御をする。例えば、回転速度で圧縮式冷凍機の容量を制御している場合であれば、電流がオーバーしないように回転速度に制限を加える。
【0016】暖房時は、例えば温水温度が所定の温度まで上がらなければ、負荷が大きいとしてヒーター22でバックアップをかける。この際、発電量を監視し、定格電力を越えないようヒーター入力を制限する。バックアップのタイミングを、冷房の場合について図3に示す。この場合、比例制御をしているものとして表現する。排熱吸収冷温水機を優先的に使用するために、排熱冷温水機の冷水出口の制御目標温度を、圧縮式冷温水機の冷水出口目標温度よりも低く設定する。排熱吸収冷温水機の制御の目標冷水出口温度をT(例えば7℃)に設定する。一方、圧縮式の目標冷水出口温度をT+α(例えば9℃)に設定し、圧縮式の起動温度をT+α+β(例えば10℃)、停止温度をT+α−β(例えば8℃)とする。
【0017】バックアップのタイミングを、暖房の場合について図4に示す。排熱吸収冷温水機を優先的に使用するために、排熱冷温水機の温水出口の制御目標温度を、ヒーターの温水出口目標温度よりも高く設定する。排熱吸収冷温水機の制御の目標温水出口温度をT(例えば42℃)に設定する。一方、ヒーターの目標温水出口温度をT−α(例えば40℃)に設定する。
【0018】冷暖房バックアップは、前述のとおりであるが、排熱過剰の場合は次のようにする。図1、2とも、吸収冷凍機での排熱使用量が減ると、エンジン系の温水温度が上昇し、空冷用ファン28が起動し、また放熱器29への温水流量を制御して、放熱している。空冷用ファンを用いないでも、例えば、エンジン系の温水温度が上昇した場合には、吸収冷凍機用冷却塔9に放熱するようにすることもできる。
【0019】
【発明の効果】本発明によれば、排熱だけでは冷房、暖房負荷に対応できない場合のバックアップシステムを簡単でコンパクトな装置で行うことができると共に、エンジン排熱及びエンジンにより発電した電力を有効に利用して効率のよい冷暖房運転ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のエンジン排熱利用冷暖房装置の一例を示す全体構成図。
【図2】本発明のエンジン排熱利用冷暖房装置の他の例を示す全体構成図。
【図3】冷房運転の場合の目標設定値の関係を示すグラフ。
【図4】暖房運転の場合の目標設定値の関係を示すグラフ。
【符号の説明】
G:再生器、A:吸収器、C:凝縮器、E:蒸発器、H:溶液熱交換器、1〜4:溶液通路、5,6:冷媒通路、7:冷媒弁、8:冷媒蒸気通路、9:冷却塔、10:冷却水ポンプ、11:溶液ポンプ、12:冷媒ポンプ、13,14:熱源通路、15:冷温水通路、16,17:冷却水通路、18:圧縮機、19:冷却器、20:蒸発器、21:熱交換器、22:ヒーター、23:圧縮式冷凍機、24:エンジン、25:発電機、26:排ガス熱交換器、27:切換弁、28:空冷用ファン、29:放熱器、30:制御弁、31:排ガス、

【特許請求の範囲】
【請求項1】 発電用エンジンの排熱を温水又は蒸気として回収する排ガス熱交換器と、回収した排熱を熱源とする吸収冷温水機と暖房用熱交換器とを有すると共に、該吸収冷温水機と暖房用熱交換器に接続する冷房用冷水系又は暖房用温水系を有するエンジン排熱を利用する冷暖房装置において、前記冷房用冷水系では発電用エンジンで発電した電気を利用する圧縮式冷凍機を接続すると共に、前記暖房用温水系では発電用エンジンで発電した電気を利用する電気ヒーターを接続したことを特徴とするエンジン排熱利用冷暖房装置。
【請求項2】 前記吸収冷温水機と圧縮式冷凍機は、冷却塔と冷却水配管で結び、冷却水が冷却塔からまず吸収冷凍機をついで圧縮式冷凍機を通り冷却塔に戻るように接続したことを特徴とする請求項1記載のエンジン排熱利用冷暖房装置。
【請求項3】 前記請求項1又は2記載のエンジン排熱利用冷暖房装置の運転方法において、電気負荷が定格未満であり、冷暖房負荷が運転中の発電用エンジン排熱による冷暖房出力を上回る場合に、発電用エンジンで発電した電気で圧縮式冷凍機又は電気ヒーターを駆動することを特徴とするエンジン排熱利用冷暖房装置の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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