説明

オガ粉乾燥装置

【課題】 水分を多く含んだ乾燥初期のオガ粉がオガ粉排出口に入り込んで詰まったままの状態となるのを未然に防止し、乾燥終了後の乾燥オガ粉の排出を常に円滑にできるようにしたオガ粉乾燥装置を提供する。
【解決手段】 オガ粉乾燥用のビン1は、通気床2により区画して上部にオガ粉貯留室3をかつ下部に通気室4を形成してある。ビン1は円筒状である。通気床2の中央部にオガ粉排出口6を設ける。オガ粉排出口6側を公転中心としてビン1内周近傍まで延びるオガ粉排出オーガ10を設ける。オガ粉排出オーガ10の公転中心側にはその回転螺旋体を自転させる駆動源12を備える。オガ粉排出オーガ10の先端部には回転螺旋体と一体に走行輪17を設ける。通気床2の中央部には、オガ粉排出口6の上部をオガ粉排出オーガ10の周囲に開口部16が形成されるように覆うカバー15を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状のオガ粉乾燥用のビンからなるオガ粉(大鋸粉)乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木材の加工、製材等に伴って発生するオガ粉は、燃料、堆肥の原料、茸類の栽培基など、広範囲の利用が可能であるが、オガ粉を燃料として利用する場合には十分乾燥していることが必要であり、また、堆肥の原料や茸類の栽培基として利用する場合にも、その保管や運搬などのうえから、やはり十分乾燥していることが求められる。
【0003】
一般に、丸太材などの製材に伴って発生するオガ粉は、それ自体かなりの水分を含んでおり、また、木材の加工や材木の切断に伴って発生するオガ粉も、その収集や保管の状況によるが、水分を多く含んだ状態で提供されるので、多くの場合、収集されるオガ粉は、それを所要の水分まで乾燥しなければならないものである。
【0004】
従来、オガ粉の乾燥装置としては、オガ粉の静止堆積層に熱風または常温風を通風して乾燥するものが種々知られている。また穀物用の乾燥装置として、円筒状のビンからなるものも種々知られている(特開2001−20655公報、特開2001−153561公報、特開平5−184238号公報、特開平5−187770号公報、特開平8−130975号公報、特開平8−85630号公報、特開平8−67346号公報参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2001−20655公報
【特許文献2】特開2001−153561公報
【特許文献3】特開平5−184238号公報
【特許文献4】特開平5−187770号公報
【特許文献5】特開平8−130975号公報
【特許文献6】特開平8−85630号公報
【特許文献7】特開平8−67346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水分を多く含んだオガ粉の堆積層は、粘性をともなった高密度状態となるので、乾燥用ビンの通気床に設けてあるオガ粉排出口付近には、初期に堆積したオガ粉がそのまま固まった状態で止まる現象を呈し、乾燥後に乾燥ビンからオガ粉を排出しようとしても、乾燥ビンのオガ粉排出口が塞がって、乾燥オガ粉の排出ができないか、排出に支障をきたすことが指摘されていた。
【0007】
そこで、本発明は、オガ粉乾燥装置の乾燥用のビンにおいて通気床の中央部のオガ粉排出口の上部を、オガ粉排出オーガの周囲を除いて覆うカバーを設けたことにより、水分を多く含んだ乾燥初期のオガ粉がオガ粉排出口に入り込んで詰まったままの状態となるのを未然に防止し、乾燥終了後の乾燥オガ粉の排出を常に円滑にできるようにしたオガ粉乾燥装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明は請求項1ないし6に係るオガ粉乾燥装置を提供する。すなわち、請求項1に係るオガ粉乾燥装置は、通気床により区画して上部にオガ粉貯留室をかつ下部に通気室を形成し、下部の通気室から上部のオガ粉貯留室に乾燥用空気を送風するようにした円筒状のオガ粉乾燥用のビンにおいて、通気床の中央部にオガ粉排出口を設けるとともに、このオガ粉排出口側を公転中心としてビン内周近傍まで延びるオガ粉排出オーガを設け、前記オガ粉排出オーガの公転中心側にはその回転螺旋体を自転させる駆動源を備えるとともに、オガ粉排出オーガの先端部には回転螺旋体と一体に走行輪を設けてあり、前記通気床の中央部には、オガ粉排出口の上部をオガ粉排出オーガの周囲を除いて覆うカバーを設けたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に係るオガ粉乾燥装置は、請求項1の構成において、オガ粉排出口の上部を覆うカバーは、オガ粉排出オーガの公転中心を中心として回転する回転体としたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に係るオガ粉乾燥装置は、請求項1または2の構成において、オガ粉排出口の上部を覆うカバーは、円錐形のカバーとしたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に係るオガ粉乾燥装置は、請求項2の構成において、オガ粉排出口の上部を覆うカバーは、その上面に撹拌翼を備えていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項5に係るオガ粉乾燥装置は、請求項1の構成において、オガ粉排出オーガには、その長さ方向の適間隔ごとにオガ粉の堆積層を崩すための揺動体を設けたことを特徴とするものである。
【0013】
請求項6に係るオガ粉乾燥装置は、請求項1または5の構成において、オガ粉排出オーガには、その公転力を増強するための補助公転機構を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、オガ粉乾燥装置の乾燥ビンにおいて通気床の中央部のオガ粉排出口の上部を、オガ粉排出オーガの周囲を除いて覆うカバーを設けたことにより、水分を多く含んだ乾燥初期のオガ粉がオガ粉排出口入り込んで詰まったままの状態となるのを未然に防止し、乾燥終了後の乾燥オガ粉の排出を常に円滑にできるようにしたオガ粉乾燥装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明に係るオガ粉乾燥装置の断面図、図2は同上要部の斜視図、図3はカバー部分の他の形態を示す斜視図、図4はカバー部分のさらに他の形態を示す斜視図、図5は本発明の他の実施の形態を示す斜視図、図6は図5の走行輪方向から表した側面図、図7及び図8は本発明のさらに他の実施の形態を示す斜視図である。
【0016】
図1および図2において、1は乾燥用のビンであって、このビン1は密閉状のものであり、その下部は通気床2で上下に区画され、上部がオガ粉貯留室3、下部が通気室4となっている。上記オガ粉貯留室3には乾燥しようとするオガ粉が、投入口29から投入(空気搬送)されて堆積貯留される。通気室4にはオガ粉貯留室3の方向に空気を循環流通させるため送風装置(図示せず)が接続されており、5はその給気口である。
【0017】
上記ビン1のオガ粉貯留室3内において、通気床2の中央部にはオガ粉排出口6が開口されており、通気室4内に形成されたオガ粉排出樋7にシャッタ8を介して接続されている。オガ粉排出樋7には、オガ粉排出コンベア9が内装されており、その排出端側は昇降機(図示せず)に接続されている。また、上記通気床2上には、オガ粉排出口6側を公転中心としてビン1の内周近傍まで延びるオガ粉排出オーガ10が設けられており、このオガ粉排出オーガ10の公転中心側にはその回転螺旋体11を自転させる駆動源12が備えられている。この駆動源12は、モータ13および減速機構からなるものであり、オガ粉排出オーガ10の回転螺旋体11の螺旋軸14がギア機構に連結されている。
【0018】
ビン1内には移動しながらオガ粉の堆積層を撹拌する撹拌オーガ19が設けられている。
【0019】
図2に詳細を示すように、上記通気床2の中央部には、オガ粉排出口6の上部を覆うカバー15が設けられており、オガ粉排出オーガ10の周囲は開口部16をなしていて、開口部16には通気室4から乾燥用空気が吹き上げるようになっている。カバー15は、オガ粉排出オーガ10のその回転螺旋体11を自転させる駆動源12と連動して回転するようになっている。カバー15は、図3に示すように円錐状にすれば堆積オガ粉の滞留が生じず、さらに図4に示すように、カバー15の上面に撹拌翼17を設けることにより、その回転にともなってオガ粉の堆積層を撹拌して流動を促進させることができる。
【0020】
図5に示す実施の形態では、オガ粉排出オーガ10の公転先端部には、その回転螺旋体11の螺旋軸14と多角走行輪31が一体に取り付けられており、この多角走行輪31は回転螺旋体11とともに回転して、オガ粉排出オーガ10を通気床2上に沿って公転させる推進輪をなすものである。さらにオガ粉排出オーガ10の公転力を増強するための補助公転機構25を備えている。この補助公転機構25は、減速機21からオガ粉排出オーガ10に沿って延出させた回転軸26に公転補強用の設置面積の広い車輪27を備えたものであって、28はその軸受である。なお車輪27は多角走行輪31より低回転で回転するようになっていている。オガ粉排出オーガ10のフレーム18には、その上面に進行方向に向けて突起する板状若しくは棒状の揺動体20が適間隔ごとに備えられていている。
【0021】
オガ粉排出オーガ10の螺旋軸14が進行方向に向かって回転することによって、先端に取り付けられた多角走行輪31が回転を開始し、図6に示すように図6のAからBのように多角走行輪31の突起部32と通気床2の接触によって回転螺旋軸11は上下の運動を行いながら進行方向に移動を開始する。この上下運動は補助公転機構25の車輪27の軸心を支点としてαの距離を上下する事となり、フレーム18に備えられた揺動体20においてはαの距離より多いβの距離をもって揺動体20の先端が上下に揺動する事となる。
【0022】
オガ粉の堆積状態によっては固着した壁面をなすので、多角走行輪31が回転するにも係わらず、同位置で空転を繰り返す状態が発生するが、補助公転機構25の車輪27を支点として揺動体20が上下方向に振動するので、揺動体20の先端によってオガ粉の壁面を徐々に崩しながら、そして崩したオガ粉を回転螺旋体11によって開口部16へ搬送し、オガ粉排出口6へ良好にオガ粉を投入できるようになっている。オガ粉排出オーガ10の周囲の開口部16からは乾燥用空気が吹き上げるようになっているので、開口部16付近に堆積するオガ粉の量は少なく、そして良好に乾燥されているのでオガ粉による壁面を構成することがなく、いち早くオガ粉排出口6から機外に排出されて開口部16付近の空間を確保して、揺動体20によって崩されたオガ粉を良好に開口部16へ導くことを可能としている。
【0023】
図7に示す実施の形態では、オガ粉排出オーガ10の公転先端部には、その回転螺旋体11の螺旋軸14と走行輪17が一体に取り付けられており、この走行輪17は回転螺旋体11とともに回転して、オガ粉排出オーガ10を通気床2上に沿って公転させる推進輪をなすものである。
【0024】
上記形態においてもオガ粉排出オーガ10の長さ方向の適間隔ごとに、オガ粉の堆積層を崩すための揺動体20設けてある。すなわち、オガ粉排出オーガ10の公転中心部側に備えた減速機21からオガ粉排出オーガ10に沿って延出させた回転軸22に、偏心カラー23を介して棒状の揺動体20が適間隔ごとに備えられており、この揺動体20が上下方向に揺動を繰り返してオガ粉の堆積層を崩す作用をするものである。
【0025】
図8に示す実施の形態においては、図7に示すものと同様にオガ粉排出オーガ10の長さ方向の適間隔ごとに、オガ粉の堆積層を崩すための揺動体20を設けてあるが、オガ粉排出オーガ10の公転中心部側に備えた減速機21からオガ粉排出オーガ10に沿って延出させた回転軸22に、円筒溝カム24を介して棒状の揺動体20が適間隔ごとに備えられており、この揺動体20が左右方向に揺動を繰り返してオガ粉の堆積層を崩す作用をするものである。なお、図5および図6に示す実施の形態においては、オガ粉排出オーガ10の公転力を増強するための補助公転機構25を備えている。この補助公転機構25は、減速機21からオガ粉排出オーガ10に沿って延出させた回転軸26に公転補強用の車輪27を備えたものである。28はその軸受である。
【0026】
以上のように構成された本発明に係るオガ粉乾燥装置1によれば、ビン1の通気床2の中央部に位置するオガ粉排出口6の上部を、オガ粉排出オーガ10の周囲を除いて覆うカバー16を設けたので、オガ粉排出口6には水分を多く含んだ乾燥初期のオガ粉が入り込まず、したがってオガ粉排出口6にオガ粉が詰まったまま固まった状態となることがないので、乾燥終了後の乾燥オガ粉の排出を常に円滑にできることになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るオガ粉乾燥装置の断面図である。
【図2】同上要部の斜視図である。
【図3】カバー部分の他の形態を示す斜視図である。
【図4】カバー部分のさらに他の形態を示す斜視図である。
【図5】本発明の他の実施の形態を示す斜視図である。
【図6】図5の走行輪方向から表した側面図である。
【図7】本発明の他の実施の形態を示す斜視図である。
【図8】本発明の他の実施の形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1 乾燥用ビン
2 通気床
3 オガ粉貯留室
4 通気室
5 給気口
6 オガ粉排出口
7 オガ粉排出樋
8 シャッタ
9 オガ粉排出コンベア
10 オガ粉排出オーガ
11 回転螺旋体
12 駆動源
13 モータ
14 螺旋軸
15 カバー
16 開口部
17 走行輪
18 フレーム
19 撹拌オーガ
20 揺動体
21 減速機
22 回転軸
23 偏心カラー
24 円筒溝カム
25 補助公転機構
26 回転軸
27 車輪
28 軸受
29 投入口
30 攪拌翼
31 多角走行輪
32 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気床により区画して上部にオガ粉貯留室をかつ下部に通気室を形成し、下部の通気室から上部のオガ粉貯留室に乾燥用空気を送風するようにした円筒状のオガ粉乾燥用のビンにおいて、
通気床の中央部にオガ粉排出口を設けるとともに、このオガ粉排出口側を公転中心としてビン内周近傍まで延びるオガ粉排出オーガを設け、
前記オガ粉排出オーガの公転中心側にはその回転螺旋体を自転させる駆動源を備えるとともに、オガ粉排出オーガの先端部には回転螺旋体と一体に走行輪を設けてあり、
前記通気床の中央部には、オガ粉排出口の上部をオガ粉排出オーガの周囲を除いて覆うカバーを設けたこと
を特徴とするオガ粉乾燥装置。
【請求項2】
オガ粉排出口の上部を覆うカバーは、オガ粉排出オーガの公転中心を中心として回転する回転体としたことを特徴とする請求項1記載のオガ粉乾燥装置。
【請求項3】
オガ粉排出口の上部を覆うカバーは、円錐形のカバーとしたことを特徴とする請求項1または2記載のオガ粉乾燥装置。
【請求項4】
オガ粉排出口の上部を覆うカバーは、その上面に撹拌翼を備えていることを特徴とする請求項2記載のオガ粉乾燥装置。
【請求項5】
オガ粉排出オーガには、その長さ方向の適間隔ごとにオガ粉の堆積層を崩すための揺動体を設けたことを特徴とする請求項1記載のオガ粉乾燥装置。
【請求項6】
オガ粉排出オーガには、その公転力を増強するための補助公転機構を備えたことを特徴とする請求項1または5記載のオガ粉乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−145048(P2008−145048A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332781(P2006−332781)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【出願人】(000001465)金子農機株式会社 (53)
【Fターム(参考)】