説明

オキサゾリンおよび/またはオキサジン組成物

いかなるフェノール性化合物も含まず、オキサゾリンおよび/またはオキサジンならびにカチオン性硬化開始剤を含む硬化性組成物は、半導体基板およびデバイスのための成形または被覆組成物として使用するのに適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年2月9日に提出された米国仮出願第61/153831号の利益を主張し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、いかなるフェノール性化合物も含まず、オキサゾリンおよび/またはオキサジン成分ならびにカチオン性硬化開始剤を含むオキサゾリンおよび/またはオキサジン組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
回路基板、半導体、トランジスタ、およびダイオードのような電子デバイスは、保護するためにエポキシ樹脂のような材料で被覆されることが多い。そのような被覆材料は、硬化剤としてフェノール樹脂を用いて電子デバイスの表面上で加熱によって硬化されることが多い。これはいくつかの問題を引き起こす。電子デバイスは、多くの場合、熱に敏感であり、あまりにも加熱し過ぎるとデバイス性能に悪影響を及ぼす可能性がある。被覆材料が熱に応答して著しく収縮または膨張する場合、被覆されたデバイスは歪む可能性がある。フェノール樹脂が存在すると、硬化被膜中にボイドが発生し、それは最終的にデバイス破損につながる。さらに、マイクロ電子パッケージおよび組立品は、アンダーフィル等のカプセル材料として、または接着剤として類似の材料をしばしば使用し、同じような付随する問題を伴う。すなわち、フェノール樹脂を使用せずに比較的低い温度、短い時間で硬化し、かつ最終用途デバイスを損傷する可能性を最小にするために加熱処理で容積変化がほぼゼロである材料を開発することは望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、いかなるフェノール性化合物または樹脂を含まず、オキサゾリンおよび/またはオキサジン化合物ならびにカチオン性硬化開始剤を含む、電子デバイスまたはパッケージを成形または被覆するのに適した硬化性組成物である。オキサゾリン化合物は、オキサゾリン部分構造を含有する任意のモノマー、オリゴマー、またはポリマーであり、それらにおいてオキサゾリン部分構造はイミドエーテル連結を有する5員ヘテロ環状環である。オキサジン化合物は、オキサジン部分構造を含有する任意のモノマー、オリゴマー、またはポリマーであり、それらにおいてオキサジン部分構造はイミドエーテル連結を有する6員ヘテロサイクリック環である。オキサゾリンおよびオキサジン部分構造は、構造:
【0005】
【化1】

を有し、ここで、R、R、R、R、およびXは、水素または二価有機基への直接結合であり、mは、オキサゾリンに対しては1、オキサジンに対しては2である。
【0006】
例示的な化合物は、構造:
【0007】
【化2】

を有し、ここで、kは、0−6であり;mおよびnは、各々、独立して、1または2であり;Xは、分岐鎖アルキル、アルキレン、アルキレンオキシド、エステル、アミド、カルバメートおよびウレタン種または連結から選択される約12から約500個の炭素原子を有する1価もしくは多価基であり;RからRは、各々、独立して、C1−40アルキル、C2−40アルケニルから選択され、それらの各々は1種以上の−O−、−NH−、−S−、−CO−、−C(O)O−、−NHC(O)−、およびC6−20アリール基によって、任意に、置換されているかまたは割り込まれている。
【0008】
他の実施形態では、本発明は、フェノール性化合物も含まず、オキサゾリンおよび/またはオキサジン化合物(ここで化合物は、任意のモノマー、オリゴマーまたはポリマーを意味する)ならびにカチオン性硬化開始剤を含む組成物を、組成物の硬化に充分な温度に加熱し、それによって硬化PBOを形成することを含む、硬化ポリオキサゾリンおよび/またはオキサジン(PBO)組成物を製造する方法である。1つの実施形態では、組成物は約160℃から約240℃の範囲の温度でまたはその温度範囲に約2分から約4分間加熱される。本方法を使用して、例えば、回路基板および半導体のような電子デバイス上に被膜を付与する。
【0009】
他の実施形態では、本発明は、いかなるフェノール性化合物も含まず、オキサゾリンおよび/またはオキサジン化合物ならびにカチオン性硬化開始剤を含む組成物でデバイスを被覆すること、およびその組成物を硬化するのに充分な温度にその組成物を加熱することを含む、デバイスを被覆または成形する方法である。1つの実施形態では、組成物は約160℃から約240℃の範囲の温度でまたはその温度範囲に約2分から約4分間加熱される。特定の実施形態では、デバイスは電子デバイス、例えば、半導体または回路基板である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書で用いる場合、下記の用語が適合される。
【0011】
アルキルは、1から8個の炭素原子を含有する直鎖または分岐炭化水素鎖である。アルキルの例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、および2−メチルヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0012】
シクロアルキルは、3から8個の炭素原子を含有する環状アルキル基である。シクロアルキルのいくつかの例は、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロへキシル、シクロヘプチル、アダマンチル、およびノルボルニルである。ヘテロシクロアルキルは、窒素、酸素、または硫黄のようなヘテロ原子を1−3個含有するシクロアルキル基である。ヘテロシクロアルキルの例としては、ピペリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフリル、およびモルホリニルが挙げられる。
【0013】
アリールは、6−12個の環原子を含有する芳香族基であり、縮合環を含んでいてもよい。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フェナントリル、およびアントラシルが挙げられる。ヘテロアリールは、窒素、酸素、または硫黄のようなヘテロ原子を1−3個含有するアリールであり、縮合環を含んでいてもよい。ヘテロアリールのいくつかの例は、ピリジル、フラニル、ピローリル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、インドリル、ベンゾフラニル、およびベンズチアゾリルである。
【0014】
アミノ基は、置換されていないか、例えば、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、またはヘテロアラルキルのような基で一置換されているか、または二置換されていてよい。
【0015】
環状部分構造は、5から6員シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール部分構造を意味する。環状部分構造は、先に記述の2種以上の基から形成される縮合環であってよい。これらの部分構造の各々は、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、ヒドロキシルアルキル、カルボキシル、ハロ、ハロアルキル、アミノ、アミノアルキル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルオキシカルボニル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、アミノカルボニル、アルキルスルホニルアミノ、アミノスルホニル、スルホン酸、またはアルキルスルホニルで任意に置換される。
【0016】
ハロは、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードを意味する。
【0017】
成形組成物は、本発明のPBOポリマー組成物を形成することができる、オキサゾリンおよび/またはオキサジン化合物を含む組成物を意味する。
【0018】
本発明の組成物は、それらが良好なカル(cull)硬化を成す場合に硬化されると判断され、カル硬化とは強くてかつ脆くはないポリマーを生じる硬化である。
【0019】
適したオキサゾリンおよび/またはオキサジン化合物(モノマー)は、2当量のホルムアルデヒドを1当量の第1級アミン(例えば、メチルアミンおよびアニリン)と縮合させ、1当量のフェノール(例えば、ビスフェノールA)と反応させることによって製造されうる。参考文献としてBurkeらの、J.Org.Chem.30(10)、3423(1965)を参照されたし。置換基は特に限定されず、水素に加えて、例えば、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、ヒドロキシルアルキル、カルボキシル、ハロ、ハロアルキル、アミノ、アミノアルキル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルオキシカルボニル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、アミノカルボニル、アルキルスルホニルアミノ、アミノスルホニル、スルホン酸、またはアルキルスルホニルであってよい。2官能性オキサゾリンおよび/またはオキサジンモノマー(例えば、ビスフェノールA、ホルムアルデヒド、およびアニリンから製造されたオキサゾリンおよび/またはオキサジンモノマー)も本重合反応で使用されうる。
【0020】
5員オキサゾリン化合物は、6員オキサジン化合物より大きな環歪みを有するので特に適する。適した例示的なオキサゾリンとしては、4,4’,5,5’−テトラヒドロ−2,2’−ビス−オキサゾール、2,2’−ビス(2−オキサゾリン);2,2’−(アルカンジイル)ビス[4,4−ジヒドロオキサゾールジヒドロオキサゾール]、例えば、2,2’−(2,4−ブタンジイル)ビス[4,5−ジヒドロオキサゾール]および2,2’−(1,2−エタンジイル)ビス[4,5−ジヒドロオキサゾール];2,2’−(アリーレン)ビス[4,5−ジヒドロオキサゾール]、例えば、2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(4,5−ジヒドロオキサゾール]、2,2’−(1,5−ナフタレニル)ビス(4,5−ジヒドロオキサゾール]、2,2’−(1,3−フェニレン)ビス[4,5−ジヒドロオキサゾール)、および2,2’−(1,8−アントラセニル)ビス[4,5−ジヒドロオキサゾール];スルホニル、オキシ、チオまたはアルキレンビス2−(アリーレン)[4,5−ジヒドロオキサゾール]、例えば、スルホニルビス2−(1,4−フェニレン)[4,5−ジヒドロオキサゾール]、チオビス2,2’−(1,4−フェニレン)[4,5−ジヒドロオキサゾール]およびメチレンビス2,2’−(1,4−フェニレン)[4,5−ジヒドロオキサゾール];2,2’,2’’−(1,3,5−アリーレン)トリス[4,5−ジヒドロオキサゾール]、例えば、2,2’,2’’−トリス[4,5−ジヒドロオキサゾール]1,3,5−ベンゼン;ポリ[(2−アルケニル)4,5−ヒドロオキサゾール]、例えば、ポリ[2−(2−プロペニル)4,5−ジヒドロオキサゾール]、および他のもの、およびそれらの混合物が挙げられる。ある実施形態では、オキサゾリン化合物は下記の構造を有することができる。
【0021】
【化3】

【0022】
これらの化合物の1つ、または2つ、またはそれ以上が本発明の組成物において使用されうる。第1の構造1,3ビスオキサゾリンは、それが固体であるが故に成形化合物用途で特に有用である。上記すべてのビスオキサゾリンの組合せは液体組成物を形成し、液体材料が必要とされる場合、例えば、アンダーフィル用途で特に有用である。
【0023】
組成物中に存在するオキサゾリンおよび/またはオキサジンモノマーの重量%は、全組成物の5.0重量%から20.0重量%の範囲にある。1つの実施形態では、存在するオキサゾリンおよび/またはオキサジンモノマーの重量%は、約10.0%から約15.0%である。
【0024】
適したカチオン性開始剤としては、ルイス酸および他の公知のカチオン性開始剤が挙げられる。これらとしては、AlCl、AlBr、BF、SnCl、SbCl、ZnCl、TiCl、WCl、VCl、PCl、PF、SbCl、(C(SbCl、およびPClのようなメタルハライド;RAlCl、RAlCl、およびRAl(ここで、Rは炭化水素であり、好ましくは1から8個の炭素原子のアルキルである)のような有機金属誘導体;アルミニウムフタロシアニン塩化物のようなメタロポルフィリン化合物;メチルトシラート、メチルトリフレート、およびトリフリック酸;POCl、CrOCl、SOCl、およびVOClのようなオキシハライドが挙げられる。他の開始剤としてはHClOおよびHSOが挙げられる。ルイス酸開始剤は、水、アルコール、および有機酸のようなプロトンまたはカチオンドナーと共に使用されることが多い。1つの実施形態では、カチオン性開始剤はメチル−p−トルエンスルホネートである。
【0025】
オキサゾリンおよび/またはオキサジン含有組成物は、任意の従来の方法によって製造されうる。例えば、成分は粉末化され、乾式ブレンドされ、高温の差動ロールミル上で圧縮され、次いで造粒化されうる。組成物は半導体または回路基板のような電子デバイスを被覆するために使用されてよい。製造された組成物は任意の適した成形装置によって成形されてよい。そのような装置の例はマルチキャビティー金型を取り付けたトランスファープレスである。成形組成物を製造、および電子デバイスを被覆するための方法についてより詳細は、米国特許第5,476,716号公報を参照されたし。
【0026】
さらなる実施形態では、また、本硬化性組成物はエポキシ樹脂および第2の酸触媒を含んでいてよい。
【0027】
エポキシ樹脂は任意に添加されてよく、存在する場合、適したエポキシ樹脂はエポキシクレゾールノボラックである。組成物は、例えば、約0.5重量%から約7.0重量%、好ましくは約1.5重量%から3.5重量%のエポキシ樹脂を含んでいてよい。
【0028】
成形組成物中に含まれてよい他の添加物の例、および組成物中のそれらの重量%の好ましい範囲としては、(1)ブロム化エポキシノボラック難燃剤のような難燃剤(例えば、日本化薬から入手できるBREN)で、全組成物の最高3.0重量%、より好ましくは0.1−1.0重量%の量で存在;(2)SbまたはWOのような難燃性相乗剤で、全組成物の最高3.0重量%、より好ましくは0.25−1.5重量%の量で存在;(3)フィラー、例えば、シリカ、カルシウムケイ酸塩、およびアルミニウムオキシドで、全組成物の70−90重量%、より好ましくは75−85重量%の量で存在;(4)カーボンブラックのような着色剤で、全組成物の0.1−2.0重量%、より好ましくは0.1−1.0重量%の量で存在;(5)カルナバワックス、パラフィンワックス、S−ワックス、およびE−ワックスのようなワックスまたはワックスの組合せで、全組成物の0.1−2.0重量%、より好ましくは0.3−1.5重量%の量で存在;(6)ヒュームドシリカ、例えば、エアロジルで、全組成物の0.3−5.0重量%、より好ましくは0.7−3.0重量%の量で存在;(7)カップリング剤、例えば、シラン型カップリング剤で、全組成物の0.1−2.0重量%、より好ましくは0.3−1.0重量%の量で存在、が挙げられる。
【0029】
本組成物は約1分から5分で硬化する。1つの実施形態では、それらは約2分から4分で硬化する。
【実施例】
【0030】
ボイドを目視観測によって決定した。
【0031】
硬化後の容積収縮を米国材料試験協会(ASTM D955−73)の標準試験手順に従って測定した。
【0032】
実施例1
下記の構造の下に示すモル比でビスオキサゾリン化合物、および触媒として3重量%でメチル−p−トルエンスルホネート(MeOTs)か、40重量%でフェノール性硬化剤(Rezicure3700)のいずれかを含むように2種類の組成物を製造した。
【0033】
【化4】

【0034】
組成物を、熱膨張係数、弾性率(GPa)、硬化収縮%、およびボイドの存在に関して試験した。結果を下記の表に示すが、フェノール性硬化剤を含まない組成物はすべての試験において性能が優れていた。
【0035】
【表1】

【0036】
実施例2
実施例1と同じビスオキサゾリン化合物の混合物を49重量%、ベンゾキサジンの混合物を49重量%、およびメチル−p−トルエンスルホネートを2重量%含む組成物を製造した。ベンゾキサジンは下記の構造を有し、構造の下に示す量で存在した。
【0037】
【化5】

【0038】
試料を実施例1と同じように試験した。結果を下記の表に示すが、ボイドが存在せず、硬化収縮が小さいことを示す。
【0039】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
いかなるフェノール性化合物も含まず、オキサゾリンおよび/またはオキサジンならびにカチオン性硬化開始剤を含む、硬化性組成物。
【請求項2】
前記オキサゾリンおよび/またはオキサジン化合物が、1,3ビスオキサゾリンである、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記カチオン性硬化開始剤が、メチル−p−トルエンスルホネートである、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
さらに、フィラーを含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記無機フィラーが、シリカである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
硬化された請求項1に記載の硬化性組成物で被覆または成形されたデバイス。

【公表番号】特表2012−518070(P2012−518070A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551117(P2011−551117)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/023482
【国際公開番号】WO2010/096295
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(500538520)ヘンケル コーポレイション (99)
【氏名又は名称原語表記】HENKEL CORPORATION
【Fターム(参考)】