説明

オキシムエーテル誘導体またはその塩、並びに農園芸用殺菌剤

【課題】新規オキシムエーテル誘導体またはその塩を有効成分とする農園芸用殺菌剤を提供する。
【解決手段】式(I)で表わされるオキシムエーテル誘導体またはその塩、並びにこれらの化合物から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含有する農園芸用殺菌剤。


なお、式(I)中、XはC1〜8アルキル基等を表わす。nはXの置換数を表わし且つ0〜4のいずれかの整数である。R1およびR2はそれぞれ独立して水素原子等を表す。mは括弧内の単位の繰返し数を表わし且つ1〜8のいずれかの整数である。R3はC1〜8アルキル基等を表す。R4はC1〜8アルキル基等を表す。R5は水素原子等を表す。Yは酸素原子または硫黄原子を表す。Zは酸素原子等を表す。Qは無置換の若しくは置換基を有するピラゾール環基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オキシムエーテル誘導体またはその塩、並びに農園芸用殺菌剤に関する。より詳細に、本発明は、新規なオキシムエーテル誘導体またはその塩、並びに該オキシムエーテル誘導体またはその塩から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含有する農園芸用殺菌剤に関する。
【背景技術】
【0002】
農園芸作物の栽培では、作物の病害に対して種々の防除薬剤が使用されている。しかしながらこうした防除薬剤の多くは、その防除効力が不十分である、薬剤耐性の病原菌の出現によりその使用が制限される、植物体に薬害や汚染を生ずる、若しくは人畜魚類に対する毒性や環境への影響が大きい、などの不具合があるため、十分に満足できる防除薬剤とは言い難い。そのため、かかる不具合が少なくて、防除効果が高く、安全に使用できる防除薬剤の出現が強く望まれている。
【0003】
本発明に関連して、オキシアミン誘導体(特許文献1)、オキシム誘導体(特許文献2)、若しくはオキシムエーテル誘導体(特許文献3)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−168683号公報
【特許文献2】特開2003−231672号公報
【特許文献3】WO2009/075112
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜3に記載されているオキシアミン誘導体、オキシム誘導体、若しくはオキシムエーテル誘導体またはその塩は、工業的に容易に合成でき、防除効果が高く、安全に使用できる防除薬剤として使用できるものであった。しかし、特許文献1〜3に記載されている化合物は、防除薬剤として使用する際に必要とする化合物の施用量(g/ヘクタール)が、対象病害によっては比較的多く必要であり、また農園芸作物に対する化合物の浸透移行性が低いため実用面において十分な防除効果が得られない場合があった。
このような実情に鑑み、本発明は、工業的に容易に製造でき、低い濃度で且つ施用量が少なくても防除効果が大きく、また多くの農園芸作物に対する浸透移行性と残効性が高く、病害に対する防除効果が確実で、且つ安全に使用できる農園芸用殺菌剤の有効成分となりうる、新規オキシムエーテル誘導体またはその塩、並びに農園芸用殺菌剤を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、式(I)で表される、ピラゾール環基を有する新規なオキシムエーテル誘導体またはその塩を得るに至った。そして、これらオキシムエーテル誘導体またはその塩は、工業的に容易に製造できること、また、これらの化合物から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含有する農園芸用殺菌剤が、低い濃度で且つ施用量が少なくても防除効果が大きいこと、多くの農園芸作物に対する浸透移行性と残効性が高いため病害に対する防除効果が確実であること、および植物体への薬害や汚染が少なく人畜魚類に対する毒性や環境への影響が少ないので安全性に優れること、を見出した。本発明は、これらの知見に基づきさらに検討を重ねることによって、完成するに至ったものである。
【0007】
すなわち、本発明は以下の態様を包含するものである。
【0008】
〔1〕 式(I)で表されるオキシムエーテル誘導体またはその塩(以下、本発明化合物と表記することがある)。
【0009】
【化1】

【0010】
〔式(I)中、Xはハロゲン原子、C1〜8アルキル基、C1〜8アルコキシ基、C1〜8ハロアルキル基、またはC1〜8ハロアルコキシ基を表す。nはXの置換数を表わし且つ0〜4のいずれかの整数である。nが2以上の場合、X同士は、同一であっても、相異なっていてもよい。
1およびR2はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1〜8アルキル基、C1〜8ハロアルキル基、または無置換の若しくは置換基を有するC3〜8シクロアルキル基を表す。R1とR2とが一緒になって結合して環を形成してもよい。mは括弧内の単位の繰返し数を表わし且つ1〜8のいずれかの整数である。mが2以上の場合、R1同士、R2同士は、同一であっても、相異なっていてもよい。
3は、水素原子、C1〜8アルキル基、C2〜8アルケニル基、C2〜8アルキニル基、C1〜8ハロアルキル基、C2〜8ハロアルケニル基、C2〜8ハロアルキニル基、または無置換の若しくは置換基を有するC3〜8シクロアルキル基を表す。
4は、水素原子、C1〜8アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC3〜8シクロアルキル基、C2〜8アルケニル基、C2〜8アルキニル基、C1〜8ハロアルキル基、C2〜8ハロアルケニル基、またはC2〜8ハロアルキニル基を表す。
5は、水素原子、C1〜8アルキル基、アシル基、ホルミル基、C1〜8アルコキシC1〜8アルキル基、C2〜8アシルオキシC1〜8アルキル基、C1〜8アルコキシカルボニル基、C1〜8アルキルスルホニル基、または無置換の若しくは置換基を有するフェニルスルホニル基を表す。
Yは、酸素原子または硫黄原子を表す。
Zは、単結合、酸素原子、硫黄原子、またはNR6で示される基を表す。R6は、水素原子若しくはC1〜8アルキル基を表す。
Qは、無置換の若しくは置換基を有するピラゾール環基を表す。〕
【0011】
〔2〕 XがC1〜8アルキル基であり、R1、R2、R3、R4およびR5がそれぞれ独立に水素原子またはC1〜8アルキル基であり、YおよびZが酸素原子であり、Qが無置換の若しくは置換基を有する1H−ピラゾール−3−イル基または無置換の若しくは置換基を有する2H−ピラゾール−3−イル基であり、mが1であり、且つnが0〜1である、前記〔1〕に記載のオキシムエーテル誘導体またはその塩。
【0012】
〔3〕 前記〔1〕または〔2〕に記載のオキシムエーテル誘導体またはその塩から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含有する農園芸用殺菌剤(以下、本発明殺菌剤と表記することがある。)。
【発明の効果】
【0013】
本発明化合物は、工業的に容易に製造することができ、多くの農園芸作物に対して、少ない施用量で防除効果が大きく、浸透移行性と残効性が優れるために病害に対する防除効果が確実で、しかも安全に使用できる農園芸用殺菌剤の活性成分として有用な新規化合物である。
【0014】
本発明殺菌剤は、本発明化合物の濃度が低く且つ施用量が少なくても、優れた防除効果を有し、植物体に薬害や汚染を生じることがなく、人畜魚類に対する毒性や環境への影響が少ない、安全性に優れる薬剤である。
【0015】
このような本発明が有する効果は、特許文献1〜3の知見から予測することは困難であり、特に低い濃度で且つ施用量が少なくても防除効果が大きく、多くの農園芸作物に対して浸透移行性や残効性が高いため病害に対する防除効果が確実である、という効果は特許文献3から予測することはできない。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(1)オキシムエーテル誘導体またはその塩
本発明化合物は、式(I)で表されるオキシムエーテル誘導体またはその塩である。
【0017】
[ X ]
式(I)中、Xはハロゲン原子、C1〜8アルキル基、C1〜8アルコキシ基、C1〜8ハロアルキル基、またはC1〜8ハロアルコキシ基を表す。nはXの置換数を表わし且つ0〜4のいずれかの整数、好ましくは0〜2のいずれかの整数、より好ましくは1である。nが2以上の場合、X同士は、同一であっても、相異なっていてもよい。
【0018】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
C1〜8アルキル基は、直鎖状であっても、分岐していてもよい。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が挙げられる。
C1〜8アルコキシ基は、直鎖状であっても、分岐していてもよい。例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
C1〜8ハロアルキル基は、ハロゲン原子で置換されたアルキル基であれば特に制限されない。例えば、フルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ジフルオロメチル基、ジクロロメチル基、ジブロモメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基、2,2,2−トルフルオロエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、ペンタフルオロエチル基等が挙げられる。
C1〜8ハロアルコキシ基は、ハロゲン原子で置換されたアルコキシ基であれば特に制限されない。例えば、クロロメトキシ基、ジクロロメトキシ基、トリクロロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、1−フルオロエトキシ基、1,1−ジフルオロエトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基等が挙げられる。
これらのうち、XはC1〜8アルキル基であることが好ましい。
【0019】
[ R1、R2
1およびR2はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1〜8アルキル基、C1〜8ハロアルキル基、または無置換の若しくは置換基を有するC3〜8シクロアルキル基を表す。mは括弧内の単位の繰返し数を表わし且つ1〜8のいずれかの整数、好ましくは1〜3のいずれかの整数、より好ましくは0〜1のいずれかの整数である。mが2以上の場合、R1同士、R2同士は、同一であっても、相異なっていてもよい。
【0020】
1およびR2における、ハロゲン原子、C1〜8アルキル基、およびC1〜8ハロアルキル基としては、前記Xにおけるハロゲン原子、C1〜8アルキル基、およびC1〜8ハロアルキル基として記述したものと同じものが挙げられる。
無置換のC3〜8シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
C3〜8シクロアルキル基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等のC1〜6アルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のC1〜6アルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;等が挙げられる。
1とR2とは一緒になって結合して環を形成してもよい。該環には、酸素原子、硫黄原子や窒素原子等のヘテロ原子が含まれていてもよい。かかる環としては、シクロプロパン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、テトラヒドロピラン環等が挙げられる。
【0021】
[ R3
3は、水素原子、C1〜8アルキル基、C2〜8アルケニル基、C2〜8アルキニル基、C1〜8ハロアルキル基、C2〜8ハロアルケニル基、C2〜8ハロアルキニル基、または無置換の若しくは置換基を有するC3〜8シクロアルキル基を表す。
【0022】
3におけるC1〜8アルキル基、C1〜8ハロアルキル基、および無置換の若しくは置換基を有するC3〜8シクロアルキル基としては、前記XまたはR1等における、C1〜8アルキル基、C1〜8ハロアルキル基、および無置換の若しくは置換基を有するC3〜8シクロアルキル基として記述したものと同じものが挙げられる。
【0023】
C2〜8アルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−メチル−2−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基等が挙げられる。
C2〜8アルキニル基としては、エチニル基、1−プロピニル基、プロパルギル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−メチル−2−プロピニル基、2−メチル−3−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基、1−メチル−2−ブチニル基、2−メチル−3−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、1,1−ジメチル−2−ブチニル基等が挙げられる。
C2〜8ハロアルケニル基としては、3−クロロ−2−プロペニル基、4−クロロ−2−ブテニル基、4,4−ジクロロ−3−ブテニル基、4,4−ジフルオロ−3−ブテニル基、3,3−ジクロロ−2−プロペニル基等が挙げられる。
C2〜8ハロアルキニル基としては、3−クロロ−1−プロピニル基、3−クロロ−1−ブチニル基、3−ブロモ−1−ブチニル基、3−ブロモ−2−プロピニル基、3−ヨード−2−プロピニル基等が挙げられる。
【0024】
[ R4
4は、水素原子、C1〜8アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC3〜8シクロアルキル基、C2〜8アルケニル基、C2〜8アルキニル基、C1〜8ハロアルキル基、C2〜8ハロアルケニル基、またはC2〜8ハロアルキニル基を表す。
【0025】
4における、C1〜8アルキル基としては、前記Xにおける、C1〜8アルキル基として記述したものと同じものが挙げられる。
4における、無置換の若しくは置換基を有するC3〜8シクロアルキル基としては、前記R1等における、無置換の若しくは置換基を有するC3〜8シクロアルキル基として記述したものと同じものが挙げられる。
4における、C2〜8アルケニル基、C2〜8アルキニル基、C1〜8ハロアルキル基、C2〜8ハロアルケニル基、およびC2〜8ハロアルキニル基としては、前記R3における、C2〜8アルケニル基、C2〜8アルキニル基、C1〜8ハロアルキル基、C2〜8ハロアルケニル基、およびC2〜8ハロアルキニル基として記述したものと同じものが挙げられる。
【0026】
[ R5
5は、水素原子、C1〜8アルキル基、アシル基、ホルミル基、C1〜8アルコキシC1〜8アルキル基、C2〜8アシルオキシC1〜8アルキル基、C1〜8アルコキシカルボニル基、C1〜8アルキルスルホニル基、または無置換の若しくは置換基を有するフェニルスルホニル基を表す。
5におけるC1〜8アルキル基としては、前記XにおけるC1〜8アルキル基として記述したものと同じものが挙げられる。
アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ピバロイル基、トリフルオロアセチル基、トリクロロアセチル基、ベンゾイル基、4−メチルベンゾイル基、2−クロロベンゾイル基等が挙げられる。
C1〜8アルコキシC1〜8アルキル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、i−プロポキシメチル基、1−メトキシエチル基、2−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基、2−エトキシエチル基、1−メトキシ−n−プロピル基、2−メトキシ−n−プロピル基、3−メトキシ−n−プロピル基等が挙げられる。
C2〜8アシルオキシC1〜8アルキル基としては、アセトキシメチル基、アセトキシエチル基、プロポニルオキシメチル基、ピバロイルオキシメチル基、1−アセトキシエチル基、2−アセトキシエチル基、1−アセトキシ−n−プロピル基等が挙げられる。
C1〜8アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等を挙げられる。
C1〜8アルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、n−プロピルスルホニル基、i−プロピルスルホニル基等が挙げられる。
無置換の若しくは置換基を有するフェニルスルホニル基としては、フェニルスルホニル基、4−メチルフェニルスルホニル基、2−クロロフェニルスルホニル基、2,4−ジメチルフェニルスルホニル基等が挙げられる。
【0027】
本発明においては、R1、R2、R3、R4およびR5がそれぞれ独立に水素原子またはC1〜8アルキル基であることが好ましい。
【0028】
[ Y、Z ]
Yは、酸素原子または硫黄原子を表す。
Zは、単結合、酸素原子、硫黄原子、またはNR6で示される基を表す。
6は、水素原子、またはC1〜8アルキル基を表す。R6におけるC1〜8アルキル基としては、前記XにおけるC1〜8アルキル基として記述したものと同じものが挙げられる。
本発明では、YおよびZが酸素原子であることが好ましい。
【0029】
[ Q ]
Qは、無置換の若しくは置換基を有するピラゾール環基を表す。該ピラゾール環基と、R1およびR2を有する炭素との結合位置は特に限定されない。Qは、無置換の若しくは置換基を有する1H−ピラゾール−3−イル基または無置換の若しくは置換基を有する2H−ピラゾール−3−イル基であるのが好ましい。
【0030】
前記ピラゾール環基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基等のC1〜6アルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基等のC1〜6アルコキシ基;クロロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基等のC1〜6ハロアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、i−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、i−ブチルチオ基、s−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基等のC1〜6アルキルチオ基;メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、i−プロピルスルホニル基、n−ブチルスルホニル基等のC1〜6アルキルスルホニル基;クロロメチル基、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基等のC1〜6ハロアルキル基;メチルスルホニルオキシ基、エチルスルホニルオキシ基、i−プロピルスルホニルオキシ基、n−ブチルスルホニルオキシ基等のC1〜6アルキルスルホニルオキシ基;等が挙げられる。
【0031】
本発明化合物の中で、特に好ましい化合物は、式(I)で表されるオキシムエーテル誘導体またはその塩において、XがC1〜8アルキル基であり、R1、R2、R3、R4およびR5がそれぞれ独立に水素原子またはC1〜8アルキル基であり、YおよびZが酸素原子であり、Qが無置換の若しくは置換基を有する1H−ピラゾール−3−イル基または無置換の若しくは置換基を有する2H−ピラゾール−3−イル基であり、mが1であり、且つnが0〜1であるものである。
【0032】
本発明のオキシムエーテル誘導体には、炭素−窒素二重結合に基づく幾何異性体(シス−トランス異性体)が存在し得るが、これらの異性体はすべて本発明に含まれる。
【0033】
本発明化合物であるオキシムエーテル誘導体の塩は、化学的に許容される塩であれば、特に制限されない。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の塩;鉄、銅等の遷移金属の塩;アンモニア、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ヒドラジン等の有機塩基の塩;等が挙げられる。
【0034】
本発明化合物は、広範囲の種類の糸状菌、例えば、藻菌類(Oomycetes)、子嚢菌類(Ascomycetes),不完全菌類(Deuteromycetes)、担子菌類(Basidiomycetes)に属する菌に対し優れた殺菌力を有するので、農園芸用殺菌剤の有効成分として有用である。
【0035】
本発明化合物は、公知の方法、例えば特許文献3に記載の方法に準拠して、工業的に容易に製造することができる。製造された化合物の構造は、IRスペクトル、NMRスペクトル、マススペクトル、元素分析等の公知の分析手段により、同定、確認することができる。
【0036】
(2)農園芸用殺菌剤
本発明殺菌剤は、本発明化合物から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含有するものである。
【0037】
本発明殺菌剤は、本発明化合物と同様に、広範囲の種類の糸状菌、例えば、藻菌類(Oomycetes)、子嚢菌類(Ascomycetes),不完全菌類(Deuteromycetes)、担子菌類(Basidiomycetes)に属する菌に対し優れた殺菌力を有する。
【0038】
本発明殺菌剤は、花卉、芝、牧草を含む農園芸作物の栽培に際し発生する種々の病害の防除に、種子処理、茎葉散布、土壌施用または水面施用等の手段を用いることにより使用することができる。
【0039】
例えば、「テンサイ」の褐斑病(Cercospora beticola); 「ラッカセイ」の褐斑病(Mycosphaerella arachidis)、黒渋病(Mycosphaerella berkeleyi); 「キュウリ」のうどんこ病(Sphaerotheca fuliginea)、つる枯病(Mycosphaerella melonis)、菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、灰色かび病(Botrytis cinerea)、黒星病(Cladosporium cucumerinum)、褐斑病(Corynespora cassicola)、苗立枯病(Pythium debaryanam、Rhizoctonia solani Kuhn)、斑点細菌病(Pseudomonas syringae pv.Lecrymans); 「トマト」の灰色かび病(Botrytis cinerea)、葉かび病(Cladosporium fulvum); 「ナス」の灰色かび病(Botrytis cinerea)、黒枯病(Corynespora melongenae)、うどんこ病(Erysiphe cichoracearum)、すすかび病(Mycovellosiella nattrassii); 「イチゴ」の灰色かび病(Botrytis cinerea)、うどんこ病(Sohaerotheca humuli)、炭そ病(Colletotrichum acutatum、Colletotrichum fragariae); 「タマネギ」の灰色腐敗病(Botrytis allii)、灰色かび病(Botrytis cinerea)、白斑葉枯病(Botrytis squamosa); 「キャベツ」の根こぶ病(Plasmodiophora brassicae)、軟腐病(Erwinia carotovora); 「インゲン」の菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、灰色かび病(Botrytis cinerea); 「りんご」の うどんこ病(Podosphaera leucotricha)、黒星病(Venturia inaequalis)、モニリア病(Monilinia mali)、腐らん病(Valsa mali)、斑点落葉病(Alternaria mali)、赤星病(Gymnosporangium yamadae)、輪紋病(Botryosphaeria berengeriana)、炭そ病(Colletotrichum gloeosprioides)、褐斑病(Diplocarpon mali); 「カキ」の うどんこ病(Phyllactinia kakicola)、炭そ病(Gloeosporium kaki)、角斑落葉病(Cercospora kaki); 「モモ・オウトウ」の灰星病(Monilinia fructicola); 「ブドウ」の灰色かび病(Botrytis cinerea)、うどんこ病(Uncinula necator)、晩腐病(Glomerella cingulata); 「ナシ」の黒星病(Venturia nashicola)、赤星病(Gymnosporangium asiaticum)、黒斑病(Alternaria kikuchiana); 「チャ」の輪斑病(Pestalotia theae)、炭そ病(Colletotrichum theae-sinensis); 「カンキツ」の そうか病(Elsinoe fawcetti)、青かび病(Penicillium italicum)、緑かび病(Penicillium digitatum)、灰色かび病(Botrytis cinerea)、黒点病(Diaporthe citri)、かいよう病(Xanthomonas campestris pv.Citri); 「コムギ」のうどんこ病(Erysiphe graminis f.sp.tritici)、赤かび病(Gibberella zeae)、赤さび病(Puccinia recondita)、褐色雪腐病(Pythium iwayamai)、紅色雪腐病(Monographella nivalis)、眼紋病(Pseudocercosporella herpotrichoides)、葉枯病(Septoria tritici)、ふ枯病(Leptosphaeria nodorum)、雪腐小粒菌核病(Typhula incarnata)、雪腐大粒菌核病(Myriosclerotinia borealis)、立枯病(Gaeumanomyces graminis); 「オオムギ」の斑葉病(Pyrenophora graminea)、雲形病(Rhynchosporium secalis)、裸黒穂病(Ustilago tritici、U.nuda); 「イネ」の いもち病(Pyricularia oryzae)、紋枯病(Rhizoctonia solani)、馬鹿苗病(Gibberella fujikuroi)、ごま葉枯病(Cochliobolus niyabeanus); 「タバコ」の菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、うどんこ病(Erysiphe cichoracearum); 「チューリップ」の灰色かび病(Botrytis cinerea); 「ベントグラス」の雪腐大粒菌核病(Sclerotinia borealis); 「オーチャードグラス」の うどんこ病(Erysiphe graminis); 「ダイズ」の紫斑病(Cercospora kikuchii); 「ジャガイモ・トマト」の疫病(Phytophthora infestans); 「キュウリ」の べと病(Pseudoperonospora cubensis); 「ブドウ」の べと病(Plasmopara viticola)等の、花卉、芝、牧草を含む農園芸作物の栽培で発生する種々の病害の防除に使用することができる。
【0040】
また、本発明の殺菌剤は、ベンズイミダゾール系殺菌剤やジカルボキシイミド系殺菌剤等の従来の殺菌剤に対して耐性を有するようになった菌に対しても優れた殺菌効果を有する。係る耐性菌としては、チオファネートメチル、ベノミル、カルベンダジム等のベンズイミダゾール系殺菌剤に耐性を示す灰色かび病菌(Botrytis cinerea)やテンサイ褐斑病菌(Cercospora beticola)、リンゴ黒星病菌(Venturia inaequalis)、ナシ黒星病菌(Venturia nashicola);ジカルボキシイミド系殺菌剤(例えば、ビンクロゾリン、プロシミドン、イプロジオン)に耐性を示す灰色かび病菌(Botrytis cinerea)などが挙げられる。
【0041】
本発明殺菌剤の適用が好ましい病害としては、テンサイの褐斑病、コムギのうどんこ病、イネのいもち病、リンゴ黒星病、キュウリの灰色かび病、ラッカセイの褐斑病等が挙げられる。また本発明殺菌剤は薬害が少なく、魚類や温血動物への毒性が低く、安全性の高い薬剤である。
【0042】
本発明殺菌剤は、一般の農薬のとり得る形態、即ち、水和剤、粒剤、粉剤、乳剤、水溶剤、懸濁剤、顆粒水和剤等の農薬製剤の形態で使用するものであってもよい。
【0043】
固形の製剤とする場合に使用する添加剤及び担体としては、大豆粉、小麦粉等の植物性粉末、珪藻土、燐灰石、石こう、タルク、ベントナイト、パイロフィライト、クレー等の鉱物性微粉末、安息香酸ソーダ、尿素、芒硝等の有機及び無機化合物が挙げられる。
【0044】
液体の製剤とする場合に使用する溶剤としては、ケロシン、キシレン及び石油系の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アルコール、アセトン、トリクロロエチレン、メチルイソブチルケトン、鉱物油、植物油、水等が挙げられる。
【0045】
これらの製剤には、均一かつ安定な形態をとるために、必要に応じ界面活性剤を添加することができる。
添加することができる界面活性剤としては特に限定はないが、例えば、ポリオキシエチレンが付加したアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンが付加したアルキルエーテル、ポリオキシエチレンが付加した高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンが付加したソルビタン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンが付加したトリスチリルフェニルエーテル等の非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンが付加したアルキルフェニルエーテルの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリカルボン酸塩、リグニンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩のホルムアルデヒド縮合物、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0046】
このようにして得られた水和剤、乳剤、フロアブル剤、水溶剤、顆粒水和剤は水で所定の濃度に希釈して、溶解液、懸濁液あるいは乳濁液の形態で植物に散布する方法で使用される。また、粉剤・粒剤はそのまま植物に散布する方法で使用される。
【0047】
本発明殺菌剤中における有効成分量は、通常、製剤全体に対して、好ましくは0.01〜90重量%、より好ましくは0.05〜85重量%である。
【0048】
本発明殺菌剤の施用量は、気象条件、製剤形態、施用磁気、施用方法、施用場所、防除対象病害、対象作物等により異なるが、通常1ヘクタール当たり有効成分化合物量にして1〜1,000g、好ましくは10〜100gである。
【0049】
水和剤、乳剤、懸濁剤、水溶剤、顆粒水和剤等を水で希釈して施用する場合、その施用濃度は1〜1000ppm、好ましくは10〜250ppmである。
【0050】
本発明殺菌剤には、本発明化合物のほかに、他の殺菌剤、殺虫・殺ダニ剤、共力剤などを混合することもできる。
【0051】
混合して使用できる他の殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、植物生長調節剤の代表例を以下に示す。
【0052】
殺菌剤:
キャプタン、フォルペット、チウラム、ジラム、ジネブ、マンネブ、マンコゼブ、プロピネブ、ポリカーバメート、クロロタロニル、キントーゼン、キャプタホル、イプロジオン、プロサイミドン、ビンクロゾリン、フルオロイミド、サイモキサニル、メプロニル、フルトラニル、ペンシクロン、オキシカルボキシン、ホセチルアルミニウム、プロパモカーブ、トリアジメホン、トリアジメノール、プロピコナゾール、ジクロブトラゾール、ビテルタノール、ヘキサコナゾール、マイクロブタニル、フルシラゾール、メトコナゾール、エタコナゾール、フルオトリマゾール、シプロコナゾール、エポキシコナゾール、フルトリアフェン、ベンコナゾール、ジニコナゾール、サイプロコナゾーズ、フェナリモール、トリフルミゾール、プロクロラズ、イマザリル、ペフラゾエート、トリデモルフ、フェンプロピモルフ、トリホリン、ブチオベート、ピリフェノックス、アニラジン、ポリオキシン、メタラキシル、オキサジキシル、フララキシル、イソプロチオラン、プロベナゾール、ピロールニトリン、ブラストサイジンS、カスガマイシン、バリダマイシン、硫酸ジヒドロストレプトマイシン、ベノミル、カルベンダジム、チオファネートメチル、ヒメキサゾール、塩基性塩化銅、塩基性硫酸銅、フェンチンアセテート、水酸化トリフェニル錫、ジエトフェンカルブ、メタスルホカルブ、キノメチオナート、ビナパクリル、レシチン、重曹、ジチアノン、ジノカップ、フェナミノスルフ、ジクロメジン、グアザチン、ドジン、IBP、エディフェンホス、メパニピリム、フェルムゾン、トリクラミド、メタスルホカルブ、フルアジナム、エトキノラック、ジメトモルフ、ピロキロン、テクロフタラム、フサライド、フェナジンオキシド、チアベンダゾール、トリシクラゾール、ビンクロゾリン、シモキサニル、シクロブタニル、グアザチン、プロパモカルブ塩酸塩、オキソリニック酸、ヒドロキシイソオキサゾール、イミノクタジン酢酸塩等。
【0053】
殺虫・殺ダニ剤:
有機燐およびカーバメート系殺虫剤:
フェンチオン、フェニトロチオン、ダイアジノン、クロルピリホス、ESP、バミドチオン、フェントエート、ジメトエート、ホルモチオン、マラソン、トリクロルホン、チオメトン、ホスメット、ジクロルボス、アセフェート、EPBP、メチルパラチオン、オキシジメトンメチル、エチオン、サリチオン、シアノホス、イソキサチオン、ピリダフェンチオン、ホサロン、メチダチオン、スルプロホス、クロルフェンビンホス、テトラクロルビンホス、ジメチルビンホス、プロパホス、イソフェンホス、エチルチオメトン、プロフェノホス、ピラクロホス、モノクロトホス、アジンホスメチル、アルディカルブ、メソミル、チオジカルブ、カルボフラン、カルボスルファン、ベンフラカルブ、フラチオカルブ、プロポキスル、BPMC、MTMC、MIPC、カルバリル、ピリミカーブ、エチオフェンカルブ、フェノキシカルブ、EDDP等。
【0054】
ピレスロイド系殺虫剤:
ペルメトリン、シペルメトリン、デルタメスリン、フェンバレレート、フェンプロパトリン、ピレトリン、アレスリン、テトラメスリン、レスメトリン、ジメスリン、プロパスリン、フェノトリン、プロトリン、フルバリネート、シフルトリン、シハロトリン、フルシトリネート、エトフェンプロクス、シクロプロトリン、トロラメトリン、シラフルオフェン、ブロフェンプロクス、アクリナスリン等。
【0055】
ベンゾイルウレア系その他の殺虫剤:
ジフルベンズロン、クロルフルアズロン、ヘキサフルムロン、トリフルムロン、テトラベンズロン、フルフェノクスロン、フルシクロクスロン、ブプロフェジン、ピリプロキシフェン、メトプレン、ベンゾエピン、ジアフェンチウロン、アセタミプリド、イミダクロプリド、ニテンピラム、フィプロニル、カルタップ、チオシクラム、ベンスルタップ、硫酸ニコチン、ロテノン、メタアルデヒド、機械油、BTや昆虫病原ウイルス等の微生物農薬等。
【0056】
殺線虫剤:
フェナミホス、ホスチアゼート等。
【0057】
殺ダニ剤:
クロルベンジレート、フェニソブロモレート、ジコホル、アミトラズ、BPPS、ベンゾメート、ヘキシチアゾクス、酸化フェンブタスズ、ポリナクチン、キノメチオネート、CPCBS、テトラジホン、アベルメクチン、ミルベメクチン、クロフェンテジン、シヘキサチン、ピリダベン、フェンピロキシメート、テブフェンピラド、ピリミジフェン、フェノチオカルブ、ジエノクロル等。
【0058】
植物生長調節剤:
ジベレリン類(例えばジベレリンA3、ジベレリンA4、ジベレリンA7)、IAA、NAA等。
【実施例】
【0059】
次に、実施例を示して、本発明を具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例により何ら限定されることはない。
【0060】
本発明化合物は、特許文献3に記載の方法に準拠して製造した。製造された本発明化合物の一部について、NMRデータを表1に、融点(℃)または屈折率を表2に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
次に、本発明殺菌剤の製剤実施例を以下に示すが、添加物および添加割合は、これら製剤実施例に限定されるものではなく、広範囲に変化させることが可能である。また、製剤実施例中の部は重量部を示す。
【0064】
製剤実施例1 水和剤
本発明のオキシムエーテル誘導体化合物 40部
クレー 48部
ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩 4部
リグニンスルホン酸ナトリウム塩 8部
以上を均一に混合して微細に粉砕し、有効成分40%の水和剤を得る。
【0065】
製剤実施例2 乳剤
本発明のオキシムエーテル誘導体化合物 10部
ソルベッソ200 53部
シクロヘキサノン 26部
ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム塩 1部
ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル 10部
以上を混合溶解し、有効成分10%の乳剤を得る。
【0066】
製剤実施例3 粉剤
本発明のオキシムエーテル誘導体化合物 10部
クレー 90部
以上を均一に混合して微細に粉砕し、有効成分10%の粉剤を得る。
【0067】
製剤実施例4 粒剤
本発明のオキシムエーテル誘導体化合物 5部
クレー 73部
ベントナイト 20部
ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩 1部
リン酸カリウム 1部
以上をよく粉砕混合し、水を加えてよく練り合せた後、造粒乾燥して有効成分5%の粒剤を得る。
【0068】
製剤実施例5 懸濁剤
本発明のオキシムエーテル誘導体化合物 10部
ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル 4部
ポリカルボン酸ナトリウム塩 2部
グリセリン 10部
キサンタンガム 0.2部
水 73.8部
以上を混合し、粒度が3ミクロン以下になるまで湿式粉砕し、有効成分10%の懸濁剤を得る。
【0069】
製剤実施例6 顆粒水和剤
本発明のオキシムエーテル誘導体化合物 40部
クレー 36部
塩化カリウム 10部
アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩 1部
リグニンスルホン酸ナトリウム塩 8部
アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩のホルムアルデヒド縮合物
5部
以上を均一に混合して微細に粉砕後,適量の水を加えてから練り込んで粘土状にする。粘土状物を造粒した後乾燥し、有効成分40%の水和剤を得る。
【0070】
本発明殺菌剤の活性を確認するための試験を以下のように行った。
なお、防除効果は下記のアボット(Abbot)の式から防除価として算出した。
防除価 (%)= (1 − α/β) × 100
αは、処理された植物の菌類感染量に対応し、
βは、無処理(対照)の植物の菌類感染量に対応する。
防除価0%は、処理された植物の感染レベルが、未処理の対照植物のそれと一致することを意味し、効果100%は処理された植物が全く感染しなかったことを意味する。
【0071】
(試験例1)リンゴ黒星病防除試験
製剤実施例2の処方に従って製造した乳剤を水で希釈し、有効成分濃度100ppmに調整した。該希釈剤を、素焼きポットで栽培したリンゴ幼苗(品種「国光」、3〜4葉期)に散布した。次いで、室温で自然乾燥した。リンゴ黒星病菌(Venturia inaequalis)の分生胞子を接種し、明暗を12時間毎に繰り返す20℃、高湿度の室内に2週間保持した。葉上の病斑出現状態を無処理と比較調査し、防除効果を調べた。
リンゴ黒星病防除試験を、表1の化合物番号1、2、3、4、5、6、7、9、および10のオキシムエーテル誘導体化合物について行った。その結果、いずれの化合物も75%以上の優れた防除価を示した。
【0072】
(試験例2)コムギうどんこ病防除試験
製剤実施例1の処方に従って製造した水和剤を水で希釈し、有効成分濃度100ppmに調整した。該希釈剤を、素焼きポットで栽培したコムギ幼苗(品種「チホク」、1.0〜1.2葉期)に散布した。次いで、葉を風乾させた。コムギうどんこ病菌(Erysiphe graminis f.sp.tritici)の分生胞子を振り払い接種し、22〜25℃の温室で7日間保持した。葉上の病斑出現状態を無処理と比較調査し、防除効果を調べた。
コムギうどんこ病防除試験を表1の化合物番号1、3、4、5、および7のオキシムエーテル誘導体化合物について行った。その結果、いずれの化合物も75%以上の優れた防除価を示した。
【0073】
(試験例3)コムギ赤さび病防除試験
製剤実施例1の処方に従って製造した水和剤を水で希釈し、有効成分濃度100ppmに調整した。該希釈剤を、素焼きポットで栽培したコムギ幼苗(品種「農林61号」、1.0〜1.2葉期)に散布した。次いで、葉を風乾させた。コムギ赤さび病菌(Puccinia recondita)の夏胞子を振り払い接種し、22〜25℃の温室で10日間保持した。葉上の病斑出現状態を無処理と比較調査し、防除効果を調べた。
コムギ赤さび病防除試験を表1の化合物番号1、3、4、5、7、8、9、および10のオキシムエーテル誘導体化合物について行った。その結果、いずれの化合物も75%以上の優れた防除価を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表されるオキシムエーテル誘導体またはその塩。



〔式(I)中、Xはハロゲン原子、C1〜8アルキル基、C1〜8アルコキシ基、C1〜8ハロアルキル基、またはC1〜8ハロアルコキシ基を表す。nはXの置換数を表わし且つ0〜4のいずれかの整数である。nが2以上の場合、X同士は、同一であっても、相異なっていてもよい。
1およびR2はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1〜8アルキル基、C1〜8ハロアルキル基、または無置換の若しくは置換基を有するC3〜8シクロアルキル基を表す。R1とR2とが一緒になって結合して環を形成してもよい。mは括弧内の単位の繰返し数を表わし且つ1〜8のいずれかの整数である。mが2以上の場合、R1同士、R2同士は、同一であっても、相異なっていてもよい。
3は、水素原子、C1〜8アルキル基、C2〜8アルケニル基、C2〜8アルキニル基、C1〜8ハロアルキル基、C2〜8ハロアルケニル基、C2〜8ハロアルキニル基、または無置換の若しくは置換基を有するC3〜8シクロアルキル基を表す。
4は、水素原子、C1〜8アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC3〜8シクロアルキル基、C2〜8アルケニル基、C2〜8アルキニル基、C1〜8ハロアルキル基、C2〜8ハロアルケニル基、またはC2〜8ハロアルキニル基を表す。
5は、水素原子、C1〜8アルキル基、アシル基、ホルミル基、C1〜8アルコキシC1〜8アルキル基、C2〜8アシルオキシC1〜8アルキル基、C1〜8アルコキシカルボニル基、C1〜8アルキルスルホニル基、または無置換の若しくは置換基を有するフェニルスルホニル基を表す。
Yは、酸素原子または硫黄原子を表す。
Zは、単結合、酸素原子、硫黄原子、またはNR6で示される基を表す。R6は、水素原子若しくはC1〜8アルキル基を表す。
Qは、無置換の若しくは置換基を有するピラゾール環基を表す。〕
【請求項2】
XがC1〜8アルキル基であり、R1、R2、R3、R4およびR5がそれぞれ独立に水素原子またはC1〜8アルキル基であり、YおよびZが酸素原子であり、Qが無置換の若しくは置換基を有する1H−ピラゾール−3−イル基または無置換の若しくは置換基を有する2H−ピラゾール−3−イル基であり、mが1であり、且つnが0〜1である、請求項1に記載のオキシムエーテル誘導体またはその塩。
【請求項3】
請求項1または2に記載のオキシムエーテル誘導体またはその塩から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含有する農園芸用殺菌剤。

【公開番号】特開2013−100234(P2013−100234A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44194(P2010−44194)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】