説明

オパール色調化粧材の製造方法及びその製造方法によって得られる化粧材

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、オパール色調化粧材の製造方法及びその製造方法によって得られる化粧材に関する。
【0002】
【従来技術】オパールは魅力的な宝石として重宝されているが、その産出量は少なく非常に高価である。したがって、最近では、人工オパールであるプラスチックオパールの開発が進められ、製造が行われている。このプラスチックオパールは、例えば、ポリスチロールエマルジョンにおいて粒子を沈澱させ、その沈澱状態において乾燥して水分を除去し、整列配置される粒子間に樹脂を充填して製造している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のプラスチックオパールの製造方法の場合、乾燥後に別途粒子間に樹脂を充填するので、その充填工程に手間がかかるとともに、充填時に粒子の整列配置が崩れる場合があり、そのように整列配置が崩れると遊色効果が損なわれて美麗な輝きが得られなくなるという問題点があった。
【0004】また、従来においては、宝石としての人工オパールは製造されているものの、オパール色調が広くデザイン的に利用されてはいなかった。
【0005】この発明は上記の事情に鑑みて行ったもので、人工的オパール構造を製造容易に得られるようにすることを目的とする。
【0006】さらには、オパール色調を広くデザイン的に利用できるようにすることを目的とする。
【0007】
【問題点を解消するための手段】本発明は、上述した目的を達するためになされたものであり、請求項1記載の発明では、基材表面に、水性エマルジョンにバインダを混合してなるオパール色調塗料が乾燥した際にそのエマルジョン中の粒子を保持する粒子保持体を設け、その粒子保持体上に、(1)前記オパール色調塗料、(2)前記水性エマルジョンにおける粒子が内部架橋構造である、および/または、粒子の径がほぼ等しいオパール色調塗料、上記(1),(2)のいずれかの塗料を塗布、乾燥して製造した。
【0008】請求項2記載の発明では、請求項1記載の発明における前記粒子保持体として不織布を用いる構成とした。
【0009】請求項3記載の発明では、基材表面に、水性エマルジョンにバインダを混合してなるオパール色調塗料が乾燥した際にそのエマルジョン中の粒子を保持する粒子保持体を設け、基材表面に、(1)前記オパール色調塗料、(2)前記水性エマルジョンにおける粒子が内部架橋構造である、および/または、粒子の径がほぼ等しいオパール色調塗料、上記(1),(2)のいずれかの塗料を塗布、乾燥し、その後にその表面に前記水性エマルジョンの粒子に吸収される発色塗料層を塗布して製造した。
【0010】請求項4記載の発明では、基材表面に、水性エマルジョンにバインダを混合してなるオパール色調塗料が乾燥した際にそのエマルジョン中の粒子を保持する粒子保持体を貼り付け、その粒子保持体上に、(1)前記オパール色調塗料、(2)前記水性エマルジョンにおける粒子が内部架橋構造である、および/または、粒子の径がほぼ等しいオパール色調塗料、上記(1),(2)のいずれかの塗料を塗布し、この塗料層を一定期間の常態乾燥の後に強制乾燥し、その乾燥後にその表面に前記水性エマルジョンの粒子に吸収される発色塗料層を塗布して製造した。
【0011】請求項5記載の発明では、前記請求項1から4の1つに記載の製造方法によってオパール化粧材を得た。
【0012】
【作用】本発明の請求項1記載の発明によれば、オパール色調塗料が乾燥した際にそのエマルジョン中の粒子が粒子保持体に保持されるので、オパール色調塗膜が補強された強固なオパール色調化粧材が得られる。
【0013】請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明において、粒子が不織布の繊維間に保持されるので、オパール色調塗膜が補強された強固なオパール色調化粧材が得られる。
【0014】請求項3記載の発明によれば、発色塗料が塗られることでオパール色調塗膜がぬれ色となるとともに、粒子に発色塗料層が吸収されることで粒子が膨張し、オパール色調塗膜の発色が異なるものとなるオパール色調化粧材が得られる。
【0015】請求項4記載の発明によれば、請求項1、3記載の発明の作用が併せて発揮されるオパール色調化粧材が得られる。
【0016】請求項5記載の発明によれば、前記請求項1から4の1つに記載の発明の製造方法によるオパール色調化粧材が得られる。
【0017】
【実施例】図1はこの発明によって得られるオパール色調化粧材の断面構成を示し、1は合板等よりなり表面に抽象柄等のパターン紙2があらかじめ貼着された基材、3は基材1上に接着剤4を介して貼着される粒子保持体としての不織布、5は不織布3位置に形成される人工オパール層、6は人工オパール層5上に塗布されて設けられる発色塗料層、7は発色塗料層6上に塗布され、かつ、サンディングされてその表面が面一とされるサンディングシーラー層、8はそのサンディングシーラー層7上に塗布されて設けられる補強層としてのトップコート層である。
【0018】次に、上記オパール色調化粧材の製造について順次説明する。
【0019】[1]基材1上への不織布3の貼着基材1のパターン紙2上に接着剤4(1.0g/尺2)を介して、例えば、表面ナイロンコートのポリエステル繊維製の不織布3(30g/m2)を貼着する。上記のパターン紙2は、意匠性を高めるとともに、基材1の平滑性を高め、さらに基材1の後に説明する水性エマルジョンの吸い込みを阻止するように用いられる。
【0020】上記接着剤4としては、パターン紙2のパターンを隠すことがないようにクリヤータイプで、後に説明する水性エマルジョンと溶け合うことがないように溶剤型のものを用いる。
【0021】上記不織布3の貼着は、プレス等で押圧することなく接着剤4層上に載置し乾燥して行う。このようして貼着することで、不織布3内に後に説明するエマルジョン粒子の保持空間を確保する。
【0022】[2]オパール色調塗料の塗布、乾燥上記不織布3上にオパール色調塗料を、例えば、スプレーにより塗布(5.0〜7.0/尺2)する。そして、乾燥は、始めに15〜20間放置乾燥を行い、その後紫外線等を用いて30分間強制乾燥する。
【0023】上記オパール色調塗料は、水性エマルジョンにバインダ、保湿剤が混合されたものである。そして、例えば、水性エマルジョンとしては、内部架橋型ポリスチレン樹脂粒子が単分散(粒子径が等しい)するものを、バインダとしては紫外線硬化型モノマ、オリゴマ、光開始剤、増感剤よりなる紫外線硬化型の樹脂バインダを、また、保湿剤としてはポリオキシプロピレンジグリセリンエーテルを用いる。
【0024】また、上記のように、初期に放置乾燥を行うのは、水性エマルジョン中の粒子の規則正しい配列を乱すことがないようにして水分の蒸発を待つものである。初期において強制乾燥を行うと、水性エマルジョン内に対流が発生して粒子の配列が崩れ、その場合美しいオパール色調が得られなくなる。そして、紫外線によりバインダの強制乾燥を行う。
【0025】上記のようにしてオパール色調塗料が乾燥されて不織布の空間内それぞれに粒子が分離され、かつ、整列配置されてバインダで固定されることで人工オパール層5が形成される。
【0026】このようして、粒子はバインダにより固着されることで整列状態に維持されることにより人工オパール層5はオパール色調を呈する。また、人工オパール層5は不織布3の繊維により割れが発生することのないよう補強されている。
【0027】また、上記のように、エマルジョン粒子として単分散のものも用いることで粒子の規則正しい整列状態が得られ、さらに、内部架橋型のものを用いることで粒子間の結合が発生がしないので、これによって、人工オパール5において美麗なオパール色調が得られる。
【0028】また、保湿剤が塗料に加えられることで、乾燥後においても湿潤性が得られて粒子がバラけることが押さえられ、これにっても粒子の規則正しい整列状態が確保される。さらに、オパール色調が濁ったり不鮮明となったりするのが防がれ、より美麗なオパール色調が得られる。
【0029】また、不織布3の空間内に粒子が分散配置される場合、そのそれぞれの粒子群の配置構成は異なったものとなるので、これにより、全体において色変化のあるオパール色調が得られる。
【0030】[3]発色塗料の塗布、乾燥人工オパール層3上に少量の発色塗料を塗布(1.0g/尺2)し、紫外線により硬化する。
【0031】上記発色塗料としては紫外線硬化型モノマ、オリゴマ、光開始剤、増感剤よりなる紫外線硬化型の塗料を用いる。
【0032】この発色塗料層6は、まず、人工オパール層3面をぬれ色として、オパール色調をより艶やかなものとして意匠性を高める。また、発色塗料はその一部が人工オパール層5内の粒子に吸収され、粒子が膨張して異なる発色を行うようになり、これによっても意匠性を高める。
【0033】次の式はブラッグの方程式であり、上記のように粒子の径が膨張して粒子径が変化した際に色(波長)が変わることを表す。式においてλは波長、dは粒子径、θは入射角を示す。
【0034】λ=2dsinθしたがって、吸収度合いが異なる発色塗料を種々用いるようにすることで、適宜所望の発色を可能として、これにより、意匠性が高められる。
【0035】[4]サンディングシーラー層、トップコート層の形成。
【0036】通常の化粧等と同様に、発色塗料層上にサンディングシーラーを塗布、乾燥し、さらにその上面にトップコートを塗布、乾燥してサンディングシーラー層7、トップコート層8を形成し、これによりオパール色調化粧材が完成される。
【0037】
【発明の効果】本発明の請求項1または2記載の発明によれば、オパール色調塗膜が補強されてひび割れ等が発生しない美麗、かつ、強固なオパール色調化粧材が得られる。
【0038】請求項3記載の発明によれば、さらに、製造容易に、美麗でしかも適宜の発色が可能なオパール色調化粧材が得られる。
【0039】請求項4記載の発明によれば、請求項1、3記載の発明の効果が発揮されるオパール色調化粧材が得られる。
【0040】請求項5記載の発明によれば、このオパール色調化粧材を用いることで、家屋の床、壁等をオパール色調に美麗に仕上げることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明によって得られるオパール色調化粧材の断面図。
【符号の説明】
1 基材、
3 不織布(粒子保持体)
5 人工オパール層
6 発色塗料層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基材表面に、水性エマルジョンにバインダを混合してなるオパール色調塗料が乾燥した際にそのエマルジョン中の粒子を保持する粒子保持体を設け、その粒子保持体上に、(1)前記オパール色調塗料、(2)前記水性エマルジョンにおける粒子が内部架橋構造である、および/または、粒子の径がほぼ等しいオパール色調塗料、上記(1),(2)のいずれかの塗料を塗布、乾燥して行うオパール色調化粧材の製造方法。
【請求項2】 前記粒子保持体として不織布を用いる請求項1記載のオパール色調化粧材の製造方法。
【請求項3】 基材表面に、水性エマルジョンにバインダを混合してなるオパール色調塗料が乾燥した際にそのエマルジョン中の粒子を保持する粒子保持体を設け、基材表面に、(1)前記オパール色調塗料、(2)前記水性エマルジョンにおける粒子が内部架橋構造である、および/または、粒子の径がほぼ等しいオパール色調塗料、上記(1),(2)のいずれかの塗料を塗布、乾燥し、その後にその表面に前記水性エマルジョンの粒子に吸収される発色塗料層を塗布して行うことを特徴とするオパール色調化粧材の製造方法。
【請求項4】 基材表面に、水性エマルジョンにバインダを混合してなるオパール色調塗料が乾燥した際にそのエマルジョン中の粒子を保持する粒子保持体を貼り付け、その粒子保持体上に、(1)前記オパール色調塗料、(2)前記水性エマルジョンにおける粒子が内部架橋構造である、および/または、粒子の径がほぼ等しいオパール色調塗料、上記(1),(2)のいずれかの塗料を塗布し、この塗料層を一定期間の常態乾燥の後に強制乾燥し、その乾燥後にその表面に前記水性エマルジョンの粒子に吸収される発色塗料層を塗布して行うオパール色調化粧材の製造方法。
【請求項5】 前記請求項1から4の1つに記載の製造方法によって得られるオパール色調化粧材。

【図1】
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【特許番号】特許第3160744号(P3160744)
【登録日】平成13年2月23日(2001.2.23)
【発行日】平成13年4月25日(2001.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−39729
【出願日】平成7年2月28日(1995.2.28)
【公開番号】特開平8−231900
【公開日】平成8年9月10日(1996.9.10)
【審査請求日】平成9年5月20日(1997.5.20)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【参考文献】
【文献】特開 平6−100432(JP,A)
【文献】特開 平4−71672(JP,A)