説明

オムツ交換リフター

【課題】介護現場で楽に患者の足を持ち上げるオムツ交換リフターを提供する。
【解決手段】介護者が患者のオムツを交換するために人の両足にパッド9を装着しそのパッドに釣り紐8を付け、これを持ち上げるための釣り棒2と、この釣り棒の上下動作をガイドする昇降ガイドフレーム1を備え、介護師が移動のとき自由に方向の変えられる駆動車輪1つを持つ電動走行台車6と、陰部の汚れを洗い流すシャワー装置13と、その汚水を吸引するトレイ10、タンク14、吸引モータと、ワンタッチで取り付け両足を持ち上げるパッドとを備えるオムツ交換リフター。また、同じ機能の釣り棒、パッド、シャワー装置、汚水トレイ、タンクを持つ介護ロボット形式のオムツ交換リフター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は介護の現場でオムツ交換作業に関し、介護師が毎日行うオムツ交換の時患者の両足を上げて楽に作業が行えるようにしたリフター装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
身体障害者や老人のオムツ交換作業は介護施設や病院或いは在宅では大変重労働な作業となっている。これを解決するために仰向け状態で膝を架けて吊り上げる膝上げ棒を備えた吊り上げ紐を巻き上げる方法で臀部を持ち上げるものが提案されている。たとえば特開2005−236961号公報(特許文献1)に開示されている。また、昇降フレームに逆U字形を形成する先端部に被介護者の足首を結わえ、持ち上げて恰も乳児のおむつ交換と同様な体勢によりオムツ交換を行うものがある。たとえば特開1996−84929号公報(特許文献2)に開示されている。
【0003】
しかし、これらの方法ではオムツ交換をすることは出来ない。まず特許文献1で、膝上げ棒で吊り上げる場合、膝が上に上がり臀部が浮き上がる前に膝が棒から外れてしまう。また膝上げ棒の紐を巻き上げる巻上げ棒を支えるために左右に脚があるとオムツ交換作業の邪魔になり介護者は作業が出来ない。
【0004】
特許文献2では足を揃えた状態で上げても陰部を露出させることが出来ずオムツを外すことは勿論、陰部の汚れをふき取り洗浄することは出来ない。また、腰の真横にラチェット式の回動部の支点が有ることは、この位置では足を立てることしか出来ず臀部を上げることはできない。特に、寝たきりの高齢者は腰の骨が曲がらず無理をすると骨が折れてしまい、恰も乳児のおむつ交換と同様な体勢をとることなど全く出来ない
【特許文献1】 特開2005−236961号公報
【特許文献2】 特開1996−84929号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、作業者に使い易く楽にオムツ交換ができ、オムツ使用者にも無理の無い体勢で陰部や臀部を持ち上げ、腰周りまできれいに洗浄できるオムツ交換リフトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のオムツ交換リフターは、昇降ガイドフレームに沿って電動昇降リフトが上下動作を行う。この電動昇降リフトの先端と昇降ガイドフレーム側に吊り下げフックを具備し、要介護者の膝の関節の上辺りを足上げパッドで巻き、これに付属の吊り下げ紐を架ける。介護者は上下動作押しボタンスイッチを押すことにより電動昇降リフトを上昇させ要介護者の両足を揚げ臀部を浮かすことが出来る。
【0007】
このとき吊り下げフックの間隔は約1メートル位で要介護者が股を開いた間隔を採る。要介護者は長期の療養生活を行いオムツ交換がしやすいように股を開いて膝を立てた状態が多く、長期に渡ってあまり動かさないためこの状態で固まってしまうこともあるため、この状態のまま持ち上げる必要がある。
【0008】
また、足上げパッドでは、介護者が短時間で作業できるためワンタッチで操作できる必要がある。本発明では足に巻くパッドにマジックテープを具備し簡単に足に装着することが出来る。この足上げパッドに3段の長さ調整ができる紐を具備し要介護者の足の高さにあわせて長さを調整することが出来る。
【0009】
この紐を左右とも要介護者の足に足上げパッドを装着する前に片方の紐だけ架けた状態で昇降リフトを膝の上まで下ろしすぐに足上げパッドを装着することにより素早く作業が出来る。通常このおむつ交換作業は短時間に多くの要介護者のオムツを交換するため少しでも早い作業が要求される。
【0010】
本発明では、このオムツ交換リフターを手際良く移動するために昇降ガイドフレームの下で全体重量の掛かる所の車輪1輪のみモータで駆動し残り3輪を自在キャスターにする。通常、駆動走行する場合は2輪が駆動し、走行方向を変える場合どちらかの車輪の回転を遅くして回転差を設けることで方向を変えるが、装置と制御が複雑になり操作も難しくなる。そのため簡単にベッド横にセットすることが出来なくなる。
【0011】
本発明の1輪のみの駆動では作業者がハンドルを掴み、行きたい方向に向けることで自在に方向を変えることができるため直感的に操作することが出来、短時間でセットしたい場所にオムツ交換リフターを置くことが出来る。
【0012】
本発明であるオムツ交換リフターを使用することで簡単に要介護者の臀部を浮き揚げることが出来る。このことはこの浮いた臀部下とベッドの間が開くことになり、この下にゴム製などで出来た汚水トレイを挿入することが出来る。オムツを外した後陰部の洗浄は従来濡れタオルやスプレー水などを吹きかけ、タオルで拭いていたが汚れがひどい場合拭き取ることが困難であった。
【0013】
臀部下にトレイを敷くことが出来れば陰部上からシャワー水をかけて洗い流すことが出来る。シャワーは陰部だけでなく臀部下、腰周りまで洗うことが出来、その後タオルで拭けば清潔さを保つことが出来る。シャワーにより流れ出た水は汚水トレイに溜り吸引ホースを介してバキュームタンクに溜まる。
【0014】
シャワー水は人の体温よりも少し温かい温水であれば要介護者にも優しく接することが出来るため、シャワーノズル内にヒータを装着し、吸引ホースも保温タイプのものを使い、洗浄水もお湯を使用することでシャワーの出始めから温水を出すことが出来る。
【0015】
通常のオムツ交換作業では、例えば4人部屋など数人が一部屋で要介護者が居る場合、介護者は廊下に台車を置き、新しいオムツと汚れた使用済みオムツ入れを持って一人一人交換しては廊下の台車まで取りに来る必要があった。或いは少し大きな袋に使用済みオムツを入れて取りに来る回数を減らしている場合もある。
【0016】
本発明のオムツ交換リフトの昇降ガイドフレームに新しいオムツ収納棚と使用済みオムツ入れを設置することによりこの台車まで取りに行く回数或いは大きな袋を持ち歩く手間が省け楽に作業ができる。
【発明の効果】
【0017】
これまでオムツ交換作業は介護者2人或いは3人掛りで行っていた。また、オムツを臀部から取り外すために要介護者を横にし半身の姿勢にしていた。しかも、半身の体勢が取れない要介護者ではオムツ交換作業の間、他の介護者が臀部を持ち上げ浮かせていた。
本発明では、この重労働の作業が一人でしかも短時間で行うことが出来る。要介護者も無理の無い姿勢でオムツの交換をしてもらえる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1におけるオムツ交換リフターを使用した作業中を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるオムツ交換リフターを使用した作業中を模式的に示す側面図である。
【図3】本発明の実施の形態1におけるオムツ交換リフターを使用した作業中を模式的に示す正面図である。
【図4】本発明の実施の形態1におけるオムツ交換リフターに取付ける足上げパッドを模式的に示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態1におけるオムツ交換リフターの台車部を模式的に表した平面図、側面図である。
【図6】本発明の実施の形態1におけるオムツ交換リフターの汚水トレイと汚水吸引タンクを模式的に示す斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態2における介護ロボットを使用した状態を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0020】
(実施の形態1)
【0021】
図1は、本発明の実施の形態1におけるオムツ交換リフターを模式的に示す斜視図である。図2は本発明の実施の形態1におけるオムツ交換リフターを模式的に示す正面図であり、図3は同じく本発明の実施の形態1におけるオムツ交換リフターを図2に於いて矢視A−Aより見た矢視図である。
【0022】
図1及び図2を参照して説明すると、本実施の形態に於けるオムツ交換リフターはモータにより上下する釣り棒2とこの釣り棒の上下動作をガイドする昇降ガイドフレーム1、このガイドフレームを支える走行台申16を備えている。尚、図2ではベッドの向こう側に配置した本実施形態におけるオムツ交換リフターが重なって見えるが、状態を見やすくするため透過状態で表現してある。
【0023】
昇降ガイドフレーム1に支えられた釣り棒2は台車16内に配置したモータの力でワイヤーを介して上下動作を行い、この釣り棒2の先端部にフック5a、根元部にフック5bを具備しその間隔は人の股を開いて膝の間隔に合わせた約1メートル位の位置に配置する。
【0024】
このフック5a,5bは釣り紐8が簡単に掛かるようU型の片方が釣り棒に溶接されもう片方は開いた形状を成す。しかも人が触ったとき危なくないよう両方が向かい合った状態で設置してある(図3の中央方向)。
【0025】
この釣り棒2には介護師がオムツ交換作業を行うときこの釣り棒を上下させるために押しボタンスイッチ4を具備している。上昇ボタンを押せば釣り棒は上昇し下降ボタンを押せば釣り棒は下降する。どのボタンも押している時だけ動作しボタンから指を離すと上下動作は止まる。
【0026】
また、この釣り棒2にはシャワーノズル3の取り付けホルダ27とシャワーホース13を固定する金具を具備する。オムツを交換した後、陰部の汚れを拭き取った後シャワーノズル3で温水を陰部、臀部にかけこの部分を清潔に保つ。使い終わればまた釣り棒2のホルダ26に架ける。
【0027】
このシャワーノズル3では水を出す押しボタンスイッチが付き、ボタンを押すと蛇口が開くと同時に水タンク14に取り付けたポンプ15が回り水タンク14内の水を送り出す。
【0028】
このとき、特に冬など冷たい水をいきなり陰部に当てると患者はびっくりするので温水を使用するが、蛇口が開いたと同時に温水を出すためにはこのシャワーノズル3内にヒータを設置し且つシャワーホース13も保温材を巻いたものであり水タンク14も温水を満たし保温することが効果を上げる。
【0029】
これらを備えた釣り棒2は昇降ガイドフレーム1に沿って上下動作を行うが、この動作は上下昇降モータの力で動作する。この昇降ガイドフレーム1にはハンドル6を備え走行モータ18で駆動する台車16の舵を取るときに使用する。作業者はこのハンドル6を操作し行きたい方向に向けることで舵を切ることが出来る。
【0030】
また、この昇降ガイドフレーム1には新しいオムツを入れるオムツ収納棚30と使用済みのオムツを入れるオムツポケット26を具備する。オムツ交換後汚れたオムツを収納すれば毎回廊下に置いたワゴン車まで置きに行く手間が省けて作業効率が良くなる。
【0031】
図4では足上げパッド9の様子を示す。本実施の形態に於けるオムツ交換リフターは図1及び図2、図3のような状態で患者の両足を持ち上げるが、このとき足を吊り上げる部位にこのパッドを巻くことにより紐の食込みに拠る痛みを和らげる働きを持つ。また、吊り上げた時のずれ防止も兼ねている。このように膝の上辺りをパッドで巻きつけ固定しないと特許文献1で示したように膝が吊り上げ紐8から外れてしまい、臀部を持ち上げることができない。
【0032】
足に巻く足上げパッド9と吊り下げ紐8、簡単に着脱できるマジックテープ20を具備し、吊り下げ紐8には3箇所の釣り下げ高さが選べる引っ掛け部を備える。これを左右足に備えるため同じものを2本用意する。介護者はこの足上げパッド9の吊り下げ紐8の片方を吊り下げフック5a、5bに架け、両方の足分を片方ずつ架けておき患者の膝の上辺りに釣り棒2を配置する。この後もう片方の吊り下げ紐8を患者の膝下を潜らし吊り下げフック5a、5bに架ける。この後ずり落ちないように膝より少し上あたりに足上げパッド9を巻きマジックテープ20で留める。
【0033】
これを左右の足に施して後、釣り棒2を上げるため押しボタンスイッチ4を押し釣り棒2を上昇させ、臀部が少し浮いた状態で止める。臀部が浮き上がったらベッドと臀部の間に汚水トレイ10を差し込み、前記シャワーノズル3より出した洗浄水を受け止め吸引ホース12を介して汚水吸引タンク11に回収する。
【0034】
図1、図2、図3にこの配置関係を表し、図6にこの汚水吸引装置の全体を現す。図6で臀部の下に敷く汚水トレイ10の形状を現すが例えばシリコンゴムのような柔らかい材料で製作し後部に汚水を集める窪みを設け、そこに溜まった汚水を吸引ホース12の取り付け口を設置し汚水を吸引しやすくし、すぐに取り出しやすくする取っ手28を具備する。
【0035】
この吸引ホース12は台車部16の上に配置した汚水吸引タンク11の上部に取り付け同様に吸引モータ25のホースも汚水吸引タンクの上部に取り付け、吸引ホース12から吸引された汚水を吸引モータ25内に入らない工夫をした汚水吸引タンク11を備え、この汚水吸引タンク11は取っ手29を具備し満タン時安易に交換することができる。
【0036】
図5では台車部の機能を模式的に示す。上の図が平面図で台車部16の下に隠れた駆動車輪17、駆動モータ18及び3個の自在キャスター19をわかりやすくするため透過で表す。下の図はその上面図で駆動車輪17と自在キャスター19の配置を示す。
【0037】
この図に於いて駆動車輪17は1個に対して自在キャスター19を3個配備し、上記ハンドル6の操作で走行方向を自由に変えることができる。
【0038】
(実施形態2)
【0039】
図7は本発明の実施形態2に於けるオムツ交換リフターの機能を介護ロボットで行うことを表した斜視図である。図7を参照して、介護ロボットが胴体21を90度旋回した状態で患者の寝ている介護ベッド7の横に配置し、2本あるアームの片方のアーム24の先端に供えた釣り棒22を上下させて上記オムツ交換リフト機能を達成するものである。
【0040】
この介護ロボットの胴体21には実施形態1で示したシャワー用水タンク14と、汚水吸引タンク11と、オムツ収納棚30とオムツポケット26を具備し実施形態1で示したオムツ交換リフターと同様の陰部洗浄機能が提供できる。
【0041】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0042】
1 昇降ガイドフレーム、2 釣り棒、3 シャワーノズル、4 押しボタンスイッチ、5a,5b 吊り下げフック、6 ハンドル、7 介護ベッド、8 吊り下げ紐、9 足上げパッド、10 汚水トレイ、11 汚水吸引タンク、12 吸引ホース、13 シャワーホース、14 水タンク、15 ポンプ、16 台車部、17 駆動車輪、18 駆動モータ、19 自在キャスター、20 マジックテープ、21 介護ロボット胴体、22 釣り棒、24 アーム、25 吸引モータ、26 オムツポケット、27 ホルダ、28 取っ手、29 取っ手、30 オムツ収納棚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オムツを交換するために人の両足にワンタッチで取り付けできる足上げパッドと長さの変えられる釣り紐と、この釣り紐を持ち上げるための釣り棒と、この釣り棒の上下動作をガイドする昇降ガイドフレームと、介護者が自由に方向の変えられる電動走行台車と、患者の陰部の汚れを洗い流すシャワー装置と、その汚水を吸引するトレイ、タンク、吸引モータとを備えるオムツ交換リフター。
【請求項2】
前記人の両足を持ち上げるために間隔の開いたフックと昇降ボタン、シャワーノズルを掛けておくホルダの付いた請求項1に記載のおむつ交換リフター用釣り棒と昇降ガイドフレーム。
【請求項3】
前記オムツ交換時、患者の陰部を洗浄するためのシャワーノズルと、ホース、洗浄水タンク、ポンプを含む請求項1に記載のオムツ交換リフター用シャワー装置。
【請求項4】
前記オムツ交換時陰部を洗浄するためのシャワー装置から陰部を洗浄した汚水を回収する汚水トレイと、吸引ホース、汚水吸引タンク、吸引モータを含む請求項1に記載のオムツ交換リフター用汚水吸引装置。
【請求項5】
前記昇降ガイドフレームを支える台車に於いて台車を支える車輪4個中、モータで駆動する車輪1個を備え、残り3個は自在キャスターとし、作業者の思う向きに方向が変えられる請求項1に記載のオムツ交換リフター用走行台車。
【請求項6】
前記、患者の足にワンタッチで巻きつけることのできるパッドと、長さ調整可能な紐を備え、請求項2の釣り棒に簡単に引っ掛けることのできる請求項1に記載のオムツ交換リフター用足上げパッド。
【請求項7】
請求項2のオムツ交換リフターの釣り棒と、請求項3のオムツ交換用シャワー装置と、請求項4のオムツ交換用汚水吸引装置と、請求項6の足上げパッドを備え、介護ロボットのアーム先端に取り付けた形の請求項1に記載のオムツ交換リフターと同様の機能を成すロボットハンド。。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−11028(P2011−11028A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174765(P2009−174765)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
【出願人】(509168380)
【Fターム(参考)】