説明

オートクレーブ滅菌方法

【課題】内視鏡を、高温高圧水蒸気により滅菌した後、冷却するに際して、特に、光源用コネクタ内に配設された光学部品に結露が生じるのを防止することができ、滅菌後において、内視鏡のライトガイドへの光入射率が低減するのを防止することができるオートクレーブ滅菌方法を提供すること。
【解決手段】本発明のオートクレーブ滅菌方法は、内視鏡100を、滅菌槽内で高温高圧水蒸気により滅菌する第1の工程と、内視鏡100を常温まで冷却する第2の工程とを有し、前記第2の工程において、例えば、内視鏡100から露出した光源用コネクタ(金属部分)181を、断熱性を有する光源用コネクタキャップ(カバー部材)17で被覆した状態で、内視鏡100を冷却することにより、光源用コネクタ181の冷却速度が遅くなるよう構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートクレーブ滅菌方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療の分野では、消化管等の検査や診断に、内視鏡が使用されている。このような内視鏡は、体腔内に挿入される挿入部可撓管と、該挿入部可撓管の湾曲操作を行う操作部と、光源プロセッサ装置に接続される光源差込部とを有している。
【0003】
光源差込部には、光源プロセッサ装置の接続部に挿入される光源差込部が突設されており、その内部に、内視鏡内に連続して配設されたライトガイドの入射端部が挿通配置されるとともに、このライトガイドに照明光を導く集光レンズや導光レンズ等の光学系が配設される(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
このライトガイド接続筒を光源プロセッサ装置の接続部に挿入すると、光源プロセッサで生成された照明光が、光学系を介してライドガイドの入射端面に入射する。ライトガイドに入射した照明光は、ライトガイド内を伝搬して挿入部可撓管の先端部(ライトガイドの出射端面)から出射され、被写体を照明する。
【0005】
ところで、ライトガイド接続筒は、光源プロセッサ装置に接続されている際、光源から生じる熱によって加熱され、光源プロセッサから取り外されたときに帯熱している。この帯熱したライトガイド接続筒に術者が直接触れると、火傷を負うおそれがある。このため、ライトガイド接続筒は、接続部から取り外した後速やかに冷却されるように、通常、真鍮等の熱伝導率の比較的大きな材料によって構成されている。
【0006】
しかしながら、ライトガイド接続筒を、熱伝導率の大きな材料で構成すると、次のような問題を生じる。
【0007】
ここで、内視鏡は、内視鏡検査に繰り返し使用されるが、感染症等の伝播を防止するため、検査の終了毎に洗浄および消毒・滅菌が行われる。
【0008】
内視鏡を消毒・滅菌する滅菌方法としては、薬剤や滅菌ガス等の残留の問題がないことから、高温高圧水蒸気を用いて滅菌を行うオートクレーブ滅菌法が広く用いられる。
【0009】
このオートクレーブ滅菌法では、次のような工程を経ることにより内視鏡を消毒・滅菌する。
【0010】
すなわち、I:まず、内視鏡を、オートクレーブ装置が有する滅菌槽内に収容する。II:次に、この滅菌槽内に高温高圧水蒸気を供給して一定時間放置する。III:次に、滅菌槽から高温高圧水蒸気を排気する。IV:次に、内視鏡を常温まで冷却する。
【0011】
以上のようなオートクレーブ滅菌を行う場合、ライトガイド接続筒が、内視鏡を構成する他の部材よりも熱伝導率が大きいと、オートクレーブ滅菌を施した内視鏡を常温まで冷却するときに、ライトガイド接続筒が、他の部材よりも優先的に冷却される。
【0012】
このように、ライトガイド接続筒が他の部材よりも優先的に冷却されると、内視鏡内部にも若干の水蒸気が含まれることから、この水蒸気がライトガイド接続筒において水滴となる。その結果、ライトガイド接続筒内に配設された集光レンズ等の光学部品に結露が生じる。
【0013】
このように、集光レンズに結露が生じると、光源プロセッサからの照明光が集光レンズで減衰することとなり、光の入射率が低減するという問題が生じる。
【0014】
また、結露内に埃等が混入していると、この埃等により結露に濁りが生じ、光の入射率がさらに低減するという問題も生じる。
【0015】
【特許文献1】特開2001−157664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、内視鏡を、高温高圧水蒸気により滅菌した後、冷却するに際して、特に、光源用コネクタ内に配設された光学部品に結露が生じるのを防止することができ、滅菌後において、内視鏡のライトガイドへの光入射率が低減するのを防止することができるオートクレーブ滅菌方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
このような目的は、以下(1)〜(12)の本発明により達成される。
(1) 高温高圧水蒸気を用いて内視鏡を滅菌するオートクレーブ滅菌方法であって、
前記内視鏡を、滅菌槽内で高温高圧水蒸気により滅菌する第1の工程と、
前記内視鏡を常温まで冷却する第2の工程とを有し、
前記第2の工程において、前記内視鏡から露出した金属部分を、断熱性を有するカバー部材で被覆した状態で、前記内視鏡を冷却することにより、前記金属部分の冷却速度が遅くなるよう構成したことを特徴とするオートクレーブ滅菌方法。
【0018】
これにより、内視鏡を、高温高圧水蒸気により滅菌した後、冷却するに際して、内視鏡の各部に結露が生じるのを防止することができ、滅菌後において、内視鏡の各部の機能が低減するのを確実に防止することができる。
【0019】
(2) 前記金属部分は、被写体を照明する照明光の光源を備える光源装置への差込部分である光源差込部が有する光源用コネクタである上記(1)に記載のオートクレーブ滅菌方法。
【0020】
これにより、内視鏡を、高温高圧水蒸気により滅菌した後、冷却するに際して、光源差込部の内部に配設された光学部品に結露が生じるのを防止することができ、滅菌後において、内視鏡が有するライトガイドへの光入射率が低減するのを確実に防止することができる。
【0021】
(3) 前記光源用コネクタの外表面を構成する金属材料は、主として銅合金、アルミニウム合金またはステンレス鋼で構成される上記(1)または(2)に記載のオートクレーブ滅菌方法。
【0022】
特に、前記金属材料がかかる材料で構成される場合に、本発明のオートクレーブ滅菌方法が好適に適用される。
【0023】
(4) 前記カバー部材は、その熱伝導率が前記金属部分の熱伝導率よりも小さい材料で構成される上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のオートクレーブ滅菌方法。
【0024】
これにより、金属部分の冷却速度を遅くする機能をカバー部材に発揮させることができる。
【0025】
(5) 前記カバー部材は、主として樹脂材料で構成される上記(4)に記載のオートクレーブ滅菌方法。
【0026】
これにより、カバー部材の熱伝導率が金属部分の熱伝導率よりも小さくなり、金属部分の冷却速度を遅くする機能をカバー部材に確実に発揮させることができる。
【0027】
(6) 前記金属部分が露出しない他の部分は、前記金属部分よりも熱伝導率の小さい材料で構成され、
前記金属部分の冷却速度を、前記他の部分の冷却速度に近づくように遅くする上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のオートクレーブ滅菌方法。
【0028】
かかる構成とすることにより、金属部分内に配設された光学部品に結露が生じるのを好適に防止することができる。その結果、内視鏡の滅菌後における前記ライトガイドへの光入射率が低減することをより確実に防止し得る。
【0029】
(7) 前記他の部材は、前記内視鏡から露出する部分が主として樹脂材料で構成される上記(6)に記載の内視鏡。
【0030】
(8) 前記カバー部材は、前記光源用コネクタに装着する第1のキャップである上記(2)ないし(7)のいずれかに記載のオートクレーブ滅菌方法。
これにより、光源用コネクタの冷却速度を確実に遅くすることができる。
【0031】
(9) 前記内視鏡は、内部に電気接点が配設された画像信号用コネクタを有し、
前記第1の工程に先立って、前記光源用コネクタおよび前記画像信号用コネクタに、それぞれ、前記第1のキャップおよび第2のキャップを装着する上記(8)に記載のオートクレーブ滅菌方法。
これにより、光源用コネクタの冷却速度を確実に遅くすることができる。
【0032】
(10) 前記第2のキャップは、防水性を有する上記(9)に記載のオートクレーブ滅菌方法。
【0033】
これにより、画像信号用コネクタを高温高圧水蒸気から保護することができ、画像信号用コネクタ内に配設された電気部品の腐食を防止することができる。
【0034】
(11) 前記第1のキャップと前記第2のキャップとは、一体的に形成されている上記(9)または(10)に記載のオートクレーブ滅菌方法。
これにより、これらキャップを1つのキャップとして管理することができる。
【0035】
(12) 前記滅菌槽は、その内部に前記内視鏡が載置される支持台を備え、
前記カバー部材は、前記支持台に設けられ、前記内視鏡を前記支持台に載置した状態で、前記光源用コネクタの周囲を囲むコネクタ被包部である上記(2)ないし(7)のいずれかに記載のオートクレーブ滅菌方法。
これにより、光源用コネクタの冷却速度を確実に遅くすることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、内視鏡を、高温高圧水蒸気により滅菌した後、冷却するオートクレーブ滅菌を施すに際し、特に、光源用コネクタ内に配設された光学部品における結露の発生を確実に防止し得る。そのため、前記オートクレーブ滅菌の後において、内視鏡が有するライトガイドへの光の入射率が低減することを確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明のオートクレーブ滅菌方法を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0038】
<内視鏡>
まず、本発明のオートクレーブ滅菌方法により滅菌が施される内視鏡(電子内視鏡)の一例について説明する。
【0039】
図1は、内視鏡(電子スコープ)を示す全体図、図2は、図1に示す内視鏡が有する光源用コネクタを一部破断して示す図である。以下、図1中、上側を「基端」、下側を「先端」として説明する。
【0040】
図1に示す内視鏡100は、可撓性(柔軟性)を有する長尺物の挿入部可撓管120と、挿入部可撓管120の基端部に接続され、術者が把持して内視鏡100全体を操作する操作部160と、操作部160に接続された接続部可撓管170と、接続部可撓管170の先端部に接続された光源差込部180とを有している。
【0041】
挿入部可撓管120は、体腔内に挿入して使用される。図1に示すように、挿入部可撓管120は、手元(基端)側から可撓管部121と、可撓管部121の先端部に設けられ、湾曲可能な湾曲部122とを有している。
【0042】
湾曲部121の先端部内側には、観察部位における被写体像を撮像する図示しない撮像素子(CCD)が設けられており、この撮像素子は、挿入部可撓管120内、操作部160内および接続部可撓管170内に連続して配設された画像信号ケーブル(図示せず)により、光源差込部180に設けられた画像信号用コネクタ182に接続されている。この画像信号用コネクタ182の内側には、光源プロセッサ装置(光源装置)の接続部と電気的に接続される電気接点(図示せず)が、外部に露出するように設けられている。
【0043】
また、光源差込部180の先端部には、光源用コネクタ181が画像信号用コネクタ182と併設されており、その基端部には、逆止弁110が設けられている。
【0044】
光源用コネクタ181は、図2に示すように、光源差込部180から突設し、その外周部(外表面)を構成するライトガイド接続筒183と、ライトガイド接続筒183内に挿通配置されたライトガイド184と、ライトガイド接続筒183の突端に取り付けられた集光レンズ185と、ライトガイド184の入射端面と集光レンズ185の間に配設されたロッドレンズ186とによって構成されている。
【0045】
ライトガイド接続筒183は、通常、熱伝導率の大きな材料で構成されている。かかる構成とすることにより、光源用コネクタ181を後述する光源プロセッサ装置の挿入部から取り外した際に、ライトガイド接続筒183に帯熱している熱を速やかに放出し得ることから、術者等がこれに触れて火傷を負うのを確実に防止することができる。
【0046】
このような熱伝導率の大きい材料としては、真鍮(黄銅)、洋白のような銅合金およびアルミニウム合金等の金属材料や、これら金属材料にアルマイト処理、クロムメッキ処理等の表面処理を施したもの等が挙げられる。すなわち、内視鏡100において、ライトガイド接続筒183は、主として銅合金またはアルミニウム合金で構成される。なお、後述する本発明のオートクレーブ滅菌方法は、特に、ライトガイド接続筒183がこのような熱伝導率の大きい材料で構成される場合に、好適に適用される。
【0047】
なお、ライトガイド接続筒183は、上述したような熱伝導率の大きな材料で構成される場合の他、ライトガイド接続筒183の耐久性(耐腐食性)を向上させる観点から、ステンレス鋼のような耐久性に優れた材料で構成されることもある。
【0048】
ライトガイド184は、入射端面と反対側で延長され、光源差込部180内、接続部可撓管170内、操作部160内および挿入部可撓管120内に連続して配設されている。このようなライトガイド184は、例えば、石英、多成分ガラス、プラスチック等で構成される光ファイバーを複数本束ねたもので構成されている。
【0049】
ここで、光源用コネクタ181および画像信号用コネクタ182を、光源プロセッサ装置(図示せず)の接続部に挿入することにより、光源差込部180が光源プロセッサ装置(光源装置)に接続される。この光源プロセッサ装置には、ケーブルを介してモニタ装置(図示せず)が接続されている。
【0050】
光源プロセッサ装置から発せられた光は、集光レンズ185によって集光され、ロッドレンズ186を通過して、ライトガイド184の入射端面に入射する。そして、ライトガイド184に入射した光は、ライトガイド184を通り、湾曲部122の先端部(ライトガイドの出射端部)より観察部位に照射され、照明する。
【0051】
前記照明光により照明された観察部位からの反射光(被写体像)は、撮像素子で撮像される。撮像素子では、撮像された被写体像に応じた画像信号が出力される。この画像信号は、画像信号ケーブルを介して光源差込部180に伝達される。
【0052】
そして、光源差込部180内および光源プロセッサ装置内で所定の処理(例えば、信号処理、画像処理等)がなされ、その後、モニタ装置に入力される。モニタ装置では、撮像素子で撮像された画像(電子画像)、すなわち動画の内視鏡モニタ画像が表示される。
【0053】
逆止弁110は、内視鏡100の内部から外部への気体の通過を許容し、内視鏡100の外部から内部への気体の通過を許容しない連通路として機能するものである。かかる構成の逆止弁110を光源差込部180に設けることにより、後述するオートクレーブ装置1が備える滅菌槽2内では内視鏡100内の空気が外部へ抜けて内圧が下げられるが、滅菌時や洗浄時には蒸気、ガスまたは洗浄水等が内視鏡100内に侵入することを防止し得る。
【0054】
操作部160の上面には、図1に示すように、第1操作ノブ161、第2操作ノブ162、第1ロックレバー163および第2ロックレバー164が、それぞれ独立に回動自在に設けられている。
【0055】
各操作ノブ161、162を回転操作すると、挿入部可撓管120内に配設されたワイヤ(図示せず)が牽引されて、湾曲部122が4方向に湾曲し、湾曲部122の方向を変えることができる。
【0056】
各ロックレバー163、164を反時計回りに回転操作すると、それぞれ、湾曲部122の湾曲状態(上下方向および左右方向への湾曲状態)を固定(保持)することができ、一方、時計回りに回転操作すると、湾曲した状態で固定された湾曲部122の固定を解除することができる。
【0057】
また、操作部160の図4中側面(周面)には、複数(本実施形態では、3つ)の制御ボタン165、吸引ボタン166および送気・送液ボタン167が設けられている。
【0058】
内視鏡100を光源プロセッサ装置(外部装置)に接続した状態で、各制御ボタン165を押圧操作することにより、光源プロセッサ装置やモニタ装置等の周辺機器の諸動作(例えば、電子画像の動画と静止画との切り替え、電子画像のファイリングシステムや撮影装置の作動および/または停止、電子画像の記録装置の作動および/または停止等)を遠隔操作することができる。
【0059】
吸引ボタン166および送気・送液ボタン167は、それぞれ、光源差込部180内、接続部可撓管170内、操作部160内および挿入部可撓管120内に連続して形成され、一端が挿入部可撓管120の先端で開放し、他端が光源差込部180で開放する吸引チャンネルおよび送気・送液チャンネル(いずれも図示せず)を開閉する機能を有している。
【0060】
すなわち、吸引ボタン166および送気・送液ボタン167を押圧操作する前には、吸引チャンネルおよび送気・送液チャンネルは閉塞されており(流体が通過不能な状態とされており)、一方、吸引ボタン166および送気・送液ボタン167を押圧操作すると、吸引チャンネルおよび送気・送液チャンネルが連通する(流体が通過可能な状態となる)。
【0061】
なお、内視鏡100の使用時には、吸引チャンネルの他端には、吸引手段が接続され、送気・送液チャンネルの他端には、送気・送液手段が接続される。
【0062】
これにより、吸引チャンネルが連通した状態では、挿入部可撓管120の先端から体腔内の体液や血液等を吸引することができ、また、送気・送液チャンネルが連通した状態では、挿入部可撓管120の先端から体腔内へ液体や気体を供給することができる。
【0063】
以上のような内視鏡100では、その外部に露出する部材のうち、光源用コネクタ181のライトガイド接続筒183が主として前述したような金属材料によって構成されているのに対し、内視鏡100の大半を占める部材の露出する部分は、すなわち挿入部可撓管120および接続部可撓管170は、その外皮が主として熱可塑性エラストマーによって構成され、操作部160および光源差込部180は、そのケーシングが主として熱可塑性プラスチックにより構成されている。
【0064】
金属材料(特に、銅合金およびアルミニウム合金)は、これら樹脂材料(熱可塑性エラストマーや熱可塑性プラスチック)と比較して熱伝導率が大きいことから、高温高圧水蒸気により滅菌した後、このまま内視鏡100を冷却した場合には、ライトガイド接続筒183(光源用コネクタ181)がこれら樹脂材料で構成される部材よりも速く冷却される。
【0065】
ここで、内視鏡100内部にも若干の水蒸気が含まれることから、かかる状態で内視鏡100を冷却すると、ライトガイド接続筒183(光源用コネクタ181)が樹脂製部材よりも速く冷却されるため、内部に存在する水蒸気が、ライトガイド接続筒183内において優先的に水滴となり、ライトガイド接続筒183内に配設された集光レンズ等の光学部品が結露するとともに、この結露に起因した曇りが生じるという問題がある。
【0066】
かかる問題を解決することを目的に、本発明のオートクレーブ滅菌方法は、滅菌槽2内で高温高圧水蒸気により滅菌することにより高温となった内視鏡100を冷却する際に、内視鏡100から露出した金属部分(光源用コネクタ181)を、断熱性を有するカバー部材で被覆した状態とすることにより、前記金属部分の冷却速度が遅くなるよう構成したこと特徴とするものである。
【0067】
かかる構成とすることにより、金属部分内に配設された光学部品に結露が生じるのを防止することができる。その結果、内視鏡100の滅菌後におけるライトガイドへの光入射率が低減することを確実に防止し得る。
【0068】
以下の各実施形態では、高温高圧水蒸気滅菌の後に行う冷却工程を、上述したような構成の内視鏡100に対して行う場合を一例にして、本発明のオートクレーブ滅菌方法を詳述する。
【0069】
<オートクレーブ滅菌方法>
<<第1実施形態>>
まず、第1実施形態で用いるオートクレーブ装置の一例について説明する。
【0070】
図3は、オートクレーブ装置の全体構成を示すブロック図、図4は、図1に示すオートクレーブ装置が有する支持台上に内視鏡を載置した状態を示す平面図、図5は、図1に示すオートクレーブ装置が有する支持台上に内視鏡を載置した状態を示す模式的な斜視図である。以下、図5中、上側を「上」、下側を「下」として説明する。
【0071】
これらの図に示すオートクレーブ装置1は、内視鏡100にオートクレーブ滅菌を施すものであり、内視鏡100を収容する滅菌槽2と、該滅菌槽2内の圧力を調節する滅菌槽内減圧手段3と、滅菌層2内に水蒸気を供給する水蒸気供給手段4と、滅菌槽2内の圧力を検出する圧力センサ6と、各部の作動を制御する制御手段7とを有している。以下、各部の構成について説明する。
【0072】
滅菌槽2は、内視鏡100を収容(収納)して、密閉状態とすることができる密閉容器となっている。
【0073】
図3に示すように、滅菌槽2には、槽内給気流路83の一端部が接続されており、該槽内給気流路83の他端部は、外気に開放している。槽内給気流路83の途中には、第3電磁弁13が設けられている。
【0074】
滅菌槽2内(内部空間)が減圧状態(大気圧より低い圧力)にあるときに第3電磁弁13を開状態にすると、外気が槽内給気流路83を通って滅菌槽2内に流入し、その結果、滅菌槽2内の圧力は、上昇して大気圧に復帰する。また、第3電磁弁13を閉状態にすると、槽内給気流路83は、遮断(閉塞)される。
【0075】
また、滅菌槽2には、排蒸流路84の一端部が接続されており、該排蒸流路84の他端部は、外気に開放している。排蒸流路84の途中には、第4電磁弁14が設けられている。
【0076】
滅菌槽2内に水蒸気が充填された状態で第4電磁弁14を開状態にすると、該水蒸気は、排蒸流路84を通って外部に流出し、滅菌槽2内は、大気圧に復帰する。第4電磁弁14を閉状態にすると、排蒸流路84は、遮断(閉塞)される。
【0077】
なお、槽内給気流路83と排蒸流路84とは、1つの流路で兼用するようにしてもよい。
【0078】
滅菌槽内減圧手段3は、滅菌槽2内の圧力を減圧するものであり、滅菌槽2内を減圧(排気)する吸引ポンプ(真空ポンプ)31と、滅菌槽2にその一端部が接続された槽内排気流路81とを有し、槽内排気流路81の途中には、第1電磁弁11が設けられている。
【0079】
吸引ポンプ31は、槽内排気流路81の他端側に設けられており、この吸引ポンプ31を作動するとともに、第1電磁弁11を開状態にすると、滅菌槽2内の空気が槽内排気流路81を通って排出され、滅菌槽2内は、減圧状態(低真空状態)になる。第1電磁弁11を閉状態にすると、槽内排気流路81は、遮断(閉塞)される。
【0080】
水蒸気供給手段4は、高温高圧の水蒸気を滅菌槽2内に供給するものであり、高温高圧の水蒸気を発生する蒸気発生部41と、該蒸気発生部41と滅菌槽2とを接続する給蒸流路42とを有し、給蒸流路42の途中には、第2電磁弁12が設けられている。
【0081】
蒸気発生部41で発生した水蒸気は、第2電磁弁12を開状態にすると、給蒸流路42を通って滅菌槽2内に供給される。第2電磁弁12を閉状態にすると、給蒸流路42が遮断(閉塞)される。
【0082】
圧力センサ6は、滅菌槽2内の圧力を検出する槽内圧検出手段となるものであり、本実施形態では、滅菌槽2内に連通する管路82に設けられている。この圧力センサ6は、管路82の他、滅菌槽2内に連通する他の流路や滅菌槽2内に設けるようにしてもよい。
【0083】
上述した第1電磁弁11〜第4電磁弁14、吸引ポンプ31、圧力センサ6は、それぞれ制御手段7に電気的に接続されている。制御手段7は、予め定められたプログラムや圧力センサ6からの入力信号等に基づいて、各部の作動を制御する。
【0084】
また、滅菌槽2の内部には、図4、5に示すように、滅菌の対象たる内視鏡100を載置する支持台9が設けられている。
【0085】
支持台9は、複数のワイヤにより格子状に形成された底部91と、底部91の外縁に沿って上方に突出するように設けられた外壁部材92と、底部91から上方に突出する1対の突出部93と、底部91から下方に突出する1対の脚部94とを有している。
【0086】
この支持台9では、突出部93の上部に内視鏡100を載置することにより、内視鏡100が、底部91に対して、所定の間隔を空けて支持される。このように所定の間隔を空けて支持する構成とすることにより、内視鏡100を支持台9に載置した際に、内視鏡100の底部91と対向する側の面すなわち下側の面をも確実に高温高圧水蒸気により滅菌することができる。
【0087】
支持台9の各部を構成する材料としては、高温高圧水蒸気に対して耐性のあるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、各種金属材料や各種樹脂材料等が挙げられる。
【0088】
次に、本実施形態のオートクレーブ滅菌方法を、上述したオートクレーブ装置1を用いて行う場合を一例に説明する。
【0089】
図6は、図1に示す内視鏡が有する光源用コネクタに、光源用コネクタキャップを装着した状態を示す側面図である。
【0090】
本実施形態のオートクレーブ滅菌方法は、[1]光源用コネクタに光源用コネクタキャップを装着するキャップ装着工程と、[2]内視鏡を高温高圧水蒸気により滅菌する滅菌工程と、[3]滅菌槽内から水蒸気を排気する水蒸気排気工程と、[4]内視鏡を冷却する冷却工程とを有している。以下、各工程について説明する。
【0091】
[1]キャップ装着工程
まず、滅菌の対象である内視鏡100の光源用コネクタ181に、光源用コネクタキャップ17を被せる。
【0092】
本実施形態では、光源用コネクタキャップ17が、光源用コネクタ181に装着した状態でライトガイド接続筒183(光源用コネクタ181)の少なくとも一部を被覆して、後工程[4](第2の工程)において、内視鏡100を常温まで冷却するに際し、ライトガイド接続筒183の冷却速度を遅くする機能を有する断熱性を有するカバー部材を構成する。
【0093】
光源用コネクタキャップ17を断熱性を有するカバー部材としての機能を発揮させるには、I:光源用コネクタキャップ17の熱伝導率、II:光源用コネクタキャップ17の厚さ、III:光源用コネクタキャップ17の内側面とライトガイド接続筒183の外周面との隙間の大きさ等を適宜設定することにより行うことができる。中でも、I:光源用コネクタキャップ17の熱伝導率を適宜設定すること、すなわち、光源用コネクタキャップ17をライトガイド接続筒(金属部分)183よりも熱伝導率の小さい材料により構成することにより、比較的容易に行うことができる。
【0094】
具体的には、光源用コネクタキャップ17の熱伝導率は、0.01〜10W/(m・K)程度であるのが好ましく、0.01〜1W/(m・K)程度であるのがより好ましい。熱伝導率が前記範囲より小さい場合には、光源用コネクタキャップ17の断熱効果が大きくなりすぎ、ライトガイド接続筒183を常温まで冷却するのに長時間を要することとなり好ましくない。また、熱伝導率が前記範囲より大きい場合には、光源用コネクタキャップ17の断熱効果が小さくなり、ライトガイド接続筒183の冷却速度が遅くならないおそれがある。
【0095】
このような熱伝導率の小さい材料としては、ポリアセタール等のプラスチック、シリコンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム等のゴム材、オレフィン系エラストマー等のエラストマー等の樹脂材料や、セラミック等の無機材料が挙げられる。
【0096】
また、光源用コネクタキャップ17を上述したような熱伝導率を有する材料で構成する場合、光源用コネクタキャップ17の平均厚さは、0.5〜10mm程度であるのが好ましく、1〜10mmであるのがより好ましい。
【0097】
さらに、光源用コネクタキャップ17の内側面と、ライトガイド接続筒183の外周面とは、完全に接触していてもよく、隙間を有していてもよいが、隙間を有する場合、その隙間の大きさ(平均)は、10mm以下であるのが好ましく、5mm以下であるのがより好ましい。また、隙間を有する場合でも、光源用コネクタキャップ17の内側面とライトガイド接続筒183の外周面との少なくとも一部は、互いに接触しているのが好ましい。これにより、光源用コネクタキャップ17の内側面とライトガイド接続筒183の外周面とが接触する部分の摩擦力によって、光源用コネクタキャップ17の脱落が防止される。
【0098】
なお、光源用コネクタキャップ17の形状は、特に限定されないが、その内側面の形状が、当該光源用コネクタキャップ17によって覆われるライトガイド接続筒183の外形の相似形であるのが好ましい。これにより、光源用コネクタキャップ17は、ライトガイド接続筒183に対して、均一に断熱効果を及ぼすことができる。
【0099】
以上のように、光源用コネクタキャップ17を光源用コネクタ181に装着することにより、ライトガイド接続筒183の冷却速度を遅くすることができるが、このとき、ライトガイド接続筒183の冷却速度を、金属部材が露出しない他の部分、すなわち、本実施形態では、挿入部可撓管120、接続部可撓管170、操作部160および光源差込部180等の外表面を構成する樹脂材料の冷却速度に近づけるのが好ましい。かかる構成とすることにより、金属部分内に配設された光学部品に結露が生じるのを好適に防止することができる。その結果、内視鏡100の滅菌後におけるライトガイドへの光入射率が低減することをより確実に防止し得る。
【0100】
具体的には、後工程[4]おいて内視鏡100を冷却するに際し、光源用コネクタキャップ17を装着した状態でのライトガイド接続筒183の冷却速度と、前記金属部材が露出しない他の部分の冷却速度との差は、10℃/分以下であるのが好ましく、0.1〜1℃/分程度であるのがより好ましい。冷却速度の差が前記範囲より大きい場合には、ライトガイド接続筒183が前記他の部材よりも速く冷却されることに起因して、ライトガイド接続筒183内に配設された光学部品(集光レンズ185およびロッドレンズ186等)に結露および結露に起因した曇りを生じるおそれがある。
【0101】
[2]滅菌工程(第1の工程)
次に、支持台9上に内視鏡100を載置し、滅菌槽2内を密閉状態とした後、操作者はオートクレーブ装置の図示しないフロントパネルに設けられたスタートボタンを押す。スタートボタンを押すと、オートクレーブ装置1の作動が開始され、まず、滅菌槽2内の気滞を排気して減圧する。すなわち、吸引ポンプ31を作動するとともに、第1電磁弁11を開状態、第2電磁弁12、第3電磁弁13および第4電磁弁14を閉状態とする。
【0102】
これにより、内視鏡100は、減圧(陰圧)の環境下におかれることとなるが、光源差込部180に取り付けられている逆止弁110を介して、光源差込部180の内部(内視鏡100の内部)の気体がその外部に排出されることから、内視鏡100内も滅菌槽2と同様に減圧されることとなる。
【0103】
次に、滅菌槽2内および各内視鏡100内が所定の圧力となった時点で、減圧を終了し、滅菌槽2内に高温の水蒸気を供給する。すなわち、蒸気発生部41を作動するとともに第2電磁弁12を開状態、第1電磁弁11、第3電磁弁13および第4電磁弁14を閉状態とする。
【0104】
これにより、蒸気発生部41で発生した高温の水蒸気が滅菌槽2内に供給・充填され、その結果、滅菌槽2内の圧力は上昇する。
【0105】
滅菌槽2内に高温高圧の水蒸気が充填されると、この水蒸気により、内視鏡100の外表面等が消毒・滅菌される。
【0106】
この水蒸気の温度は、特に限定されないが、110〜150℃程度であるのが好ましく、120〜140℃程度であるのがより好ましい。また、滅菌時間は、特に限定されないが、1〜40分程度であるのが好ましく、10〜20分程度であるのがより好ましい。
【0107】
なお、滅菌槽2内に高温高圧の水蒸気が充填される際には、逆止弁110により、内視鏡100内部への水蒸気の浸入が許容されないため、内視鏡100は、その内部の圧力を減圧状態に維持することができる。
【0108】
[3]水蒸気排気工程
次に、滅菌槽2内に充填された水蒸気を排気するとともに、内視鏡100を乾燥させる。
【0109】
本工程では、まず、第2電磁弁12が開状態、第1電磁弁11、第3電磁弁13および第4電磁弁14が閉状態となっている状態から、第2電磁弁12を閉状態として水蒸気の供給を停止するとともに、第4電磁弁14を開状態として滅菌槽2内の水蒸気を排出する。
【0110】
そして、滅菌送2内の圧力が大気圧まで降下した時点で、第4電磁弁14を閉状態とするとともに第1電磁弁11を開状態として、吸引ポンプ31で滅菌槽2内を吸引し、滅菌槽2内の水蒸気をさらに排出する。これにより、滅菌槽2内が減圧状態となることから内視鏡100を効率よく乾燥させることができる(真空乾燥)。
【0111】
この真空乾燥の後には、パルス乾燥を行うのが好ましい。パルス乾燥を行うことにより内視鏡100をより効率よく乾燥させることができる。
【0112】
パルス乾燥では、まず、第3電磁弁13を開状態、第1電磁弁11、第2電磁弁12および第4電磁弁14を閉状態とする。これにより、槽内給気流路83を通って外気が滅菌槽2内に流入することとなり、滅菌槽2内の圧力が上昇する。
【0113】
滅菌槽2内の圧力が所定の圧力まで上昇した時点で、吸引ポンプ31を作動するとともに、第1電磁弁11を開状態、第2電磁弁12、第3電磁弁13および第4電磁弁14を閉状態とする。これにより、滅菌槽2内に流入した外気が吸引ポンプで排気され、滅菌槽2内の圧力が低下する。
【0114】
この後、第1電磁弁11と、第3電磁弁13との開・閉を交互に2〜10サイクル程度繰り返す。これにより、滅菌槽2内は、圧力の上昇・低下を繰り返す、すなわち外気の流入・排出が繰り返される(パルス乾燥)。このパルス乾燥により、滅菌槽2内の水蒸気がほぼ完全に排出されて外気に換気される。
【0115】
パルス乾燥の後、吸引ポンプ31を停止するとともに、第3電磁弁13および第4電磁弁14を開状態、第1電磁弁11および第2電磁弁12を閉状態とすることにより滅菌槽2内を大気圧に復帰させる。
【0116】
[4]冷却工程(第2の工程)
次に、内視鏡100の温度が外気の温度(常温)とほぼ等しくなるまで冷却(放冷)する。
【0117】
冷却は、内視鏡100を滅菌槽2内に収容した状態で行ってもよく、内視鏡100を滅菌槽2から取り出して行うようにしてもよい。
【0118】
なお、滅菌層2内に収容した状態で行う場合、吸引ポンプ31を作動するとともに、第2電磁弁12および第4電磁弁14を閉状態、第1電磁弁11および第3電磁弁13を開状態とするようにしてもよい。これにより、外気が滅菌槽2内を循環することとなり、内視鏡100をより迅速に冷却することができる。
【0119】
ここで、この内視鏡100では、ライトガイド接続筒183(光源用コネクタ181)が、挿入部可撓管120、接続部可撓管170、操作部160および光源差込部180等の他の部材の外表面を構成する樹脂性材料よりも熱伝導率の大きな材料によって構成されているが、前記工程[2]で説明したように、光源用コネクタ181に光源用コネクタキャップ(第1のキャップ)17が装着されている。これにより、光源用コネクタキャップ17が断熱性を有するカバー部材として機能して、ライトガイド接続筒183(光源用コネクタ181)の放熱が抑えられる。これにより、ライトガイド接続筒183と、前記他の部材とがほぼ同じ冷却速度で冷却される。したがって、前記工程[2]および[3]を経ることにより、内視鏡100の内に水蒸気が残存したとしても、ライトガイド接続筒183内で、この水蒸気が優先的に水滴になるのが防止され、ライトガイド接続筒183内に配設された光学部品に結露が生じるのが防止される。さらには、埃等が混入している結露が乾燥した場合に生じる曇りも防止される。その結果、ライトガイド184の入射端に対する照明光の入射率が維持され、オートクレーブ滅菌前と同様に、光源からの照明光によって被写体を効率よく照射することができる。
以上の工程を経ることによりオートクレーブ滅菌が完了する。
【0120】
なお、内視鏡100の冷却は、本実施形態のように放冷によって行ってもよいが、ペルチェ素子のような冷却手段を用いて内視鏡100を強制的に冷却するようにしてもよい。
【0121】
<<第2実施形態>>
次に、オートクレーブ滅菌方法の第2実施形態について説明する。
【0122】
図7は、図1に示す内視鏡100が有する光源用コネクタ181および画像信号用コネクタ182の双方を被覆し得る光源・画像信号用コネクタキャップ18を装着した状態を示す側面図である。
【0123】
以下、この第2実施形態について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0124】
第2実施形態のオートクレーブ滅菌方法では、図7に示すように、工程[1]において、光源用コネクタキャップ17に代えて、光源用コネクタ181および画像信号用コネクタ182の双方を被覆し得る光源・画像信号用コネクタキャップ18を用いることにより、光源用コネクタ181を被覆するとともに、画像信号用コネクタ182をも被覆してオートクレーブ滅菌を施す以外は、前記第1実施形態と同様である。
【0125】
本実施形態では、光源・画像信号用コネクタキャップ18は、光源用コネクタ181を被覆する第1の凹部181’と画像信号用コネクタ182を被覆する第2の凹部182’とがそれぞれ個別に設けられていることから、光源用コネクタ181を被覆する光源用コネクタキャップ(第1のキャップ)17と画像信号用コネクタ182を被覆する画像信号用コネクタキャップ(第2のキャップ)とが一体的に形成されていると捉えることができる。
【0126】
ここで、第1の凹部181’により光源用コネクタ181を被覆することにより、光源・画像信号用コネクタキャップ18に光源用コネクタキャップ17と同一の機能を発揮させることができる。すなわち、光源・画像信号用コネクタキャップ18に断熱性を有するカバー部材としての機能を発揮させることができる。
【0127】
また、第2の凹部182’により画像信号用コネクタ182を被覆するとともに、第2の凹部182’の開口部付近において例えばOリング等により水密にシールする構成とすることにより、光源・画像信号用コネクタキャップ18に防水用キャップとしての機能を発揮させることができる。これにより、[2]滅菌工程において、高温高圧水蒸気から画像信号用コネクタ182が保護され、その内側に露出して設けられた電気接点等の腐食を防止することができる。
【0128】
光源・画像信号用コネクタキャップ18の構成材料としては、前記光源用コネクタキャップ17で説明したのと同様の材料を用いることができる。
【0129】
かかる構成の光源・画像信号用コネクタキャップ18を用いる本実施形態においても、前記第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【0130】
さらに、第2実施形態のオートクレーブ滅菌方法では、特に、画像信号用コネクタ182にも光源・画像信号用コネクタキャップ18により被覆するので、滅菌工程において画像信号用コネクタを構成する各部の腐食を防止することができる。
【0131】
したがって、このようにしてオートクレーブ滅菌が施された内視鏡100は、ライトガイド184の入射端に対する照明光の入射率がオートクレーブ滅菌前と比較して低減するのが防止されているとともに、画像信号用コネクタ182がオートクレーブ滅菌前と同様の機能を維持しており、撮像素子からの画像信号を光源プロセッサに確実に伝達することができる。
【0132】
なお、本実施形態のように、光源・画像信号用コネクタキャップ18を、第1の凹部181’と第2の凹部182’とを有する構成、すなわち、光源用コネクタキャップ17と画像信号用コネクタキャップとを一体的に形成する構成とする場合に限定されず、例えば、光源用コネクタキャップ17と画像信号用コネクタキャップとを個別に形成するようにしてもよい。ただし、本実施形態のような構成とすることにより、光源用コネクタキャップ17と画像信号用コネクタキャップとを一度の動作で光源用コネクタ181と画像信号用コネクタ182とに装着できるとともに、これらのキャップを1つのキャップとして管理することができるという利点が得られる。
【0133】
<<第3実施形態>>
次に、オートクレーブ滅菌方法の第3実施形態について説明する。
【0134】
図8は、第3実施形態で用いるオートクレーブ装置が備える支持台上に内視鏡が載置された状態を示す平面図である。図9は、図8に示す支持台のコネクタ被包部が設けられた部分を拡大した部分拡大図(斜視図)である。以下、図8中、紙面手前側を「上」、紙面奥側を「下」とし、図9中、上側を「上」、下側を「下」として説明する。
【0135】
以下、この第3実施形態について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0136】
第3実施形態のオートクレーブ滅菌方法では、オートクレーブ装置1が備える支持台9として、内視鏡100を載置した状態で、光源用コネクタ181の周囲を囲むコネクタ被包部95が設けられたものを用い、また、前記工程[1]を行わず、前記工程[4]において、内視鏡を、この支持台9上に載置した状態で常温まで冷却する以外は、前記第1実施形態と同様である。
【0137】
図8に示すように、本実施形態で用いられる支持台9は、1対の突出部93の上部に内視鏡100を載置したとき、この内視鏡100が有する光源用コネクタ181が配置される領域を囲むようコネクタ被包部95が設けられている以外は、前記第1実施形態で説明した支持台9と同様である。
【0138】
かかる構成の支持台9を用いることにより、突出部93の上部に内視鏡100を載置する際に、コネクタ被包部95により光源用コネクタ181を取り囲んだ(被覆した)状態となる。
【0139】
すなわち、本実施形態では、光源用コネクタキャップ17に代えて、コネクタ被包部95が、光源用コネクタ181に装着した状態でライトガイド接続筒183(光源用コネクタ181)の少なくとも一部を被覆して、前記工程[4](第2の工程)において、内視鏡100を常温まで冷却するに際し、ライトガイド接続筒183の冷却速度を遅くする機能を有する断熱性を有するカバー部材を構成する。
【0140】
なお、コネクタ被包部95の熱伝導率、構成材料、平均厚さ、形状、および、その内側面とライトガイド接続筒183の外周面との間に形成される隙間の大きさは、前記光源用コネクタキャップ17で説明したのと同様にすることができる。
【0141】
このようなコネクタ被包部95により光源用コネクタ181を被覆する構成とした場合においても、金属部分内に配設された光学部品に結露が生じるのを防止することができる。その結果、内視鏡100の滅菌後におけるライトガイドへの光入射率が低減することを確実に防止し得る。
【0142】
光源用コネクタ181がコネクタ被包部95によって囲まれる方位は、全方位(光源用コネクタの両側、上下側および先端側)であってもよく、一部の方位であってもよい。ただし、光源用コネクタ181の全方位をコネクタ被包部95によって囲むことにより、より大きな断熱効果を得ることができる。
【0143】
一方、一部の方位(例えば上側)を開放することにより、光源用コネクタ181を、このコネクタ被包部95によって囲まれた領域に容易に収納することができる。
【0144】
また、コネクタ被包部95は、上述した図9(a)に示した構成のものの他、例えば、図9(b)に示すような構成のものであってもよい。
【0145】
図9(b)に示すコネクタ被包部95は、枠体951と、蓋体952と、蓋体952を枠体951に対し回動可能に支持するヒンジ部953とを有している。
【0146】
枠体951は、図9(a)に示したコネクタ被包部95を半体とした際に下側となる第1の断熱部材955と、この第1の断熱部材955を補強する第1の被覆部956とで構成されている。
【0147】
また、蓋体952は、図9(a)に示したコネクタ被包部95を半体とした際に上側となる第2の断熱部材957と、この第2の断熱部材957を補強する第2の被覆部958とで構成されている。
【0148】
第1の被覆部956および第2の被覆部958の構成材料としては、それぞれ、第1の断熱部材955および第2の断熱部材957を補強し得るもので構成されていればよく、特に限定されるものではないが、例えば、各種金属材料および各種樹脂材料等により構成することができる。
【0149】
コネクタ被包部95をかかる構成とし、前記工程[2]において内視鏡100を支持台9上に載置する際に、枠体951に対して蓋体952を開くことにより、枠体951内に容易に収納することができる。
【0150】
そして、滅菌槽2内を密閉状態とするのに先立って、枠体951に対して蓋体952を閉じることにより、前記工程[4]において内視鏡100を冷却する際に、コネクタ被包部95により光源用コネクタ181を確実に取り囲むことができる。
【0151】
また、本実施形態では、蓋体952には係合部954が、枠体951には凸部959がそれぞれ設けられ、蓋体952を閉じた際に、凸部959に係合部954が係合するようになっている。かかる構成とすることにより、蓋体952が枠体951に対して固定され、前記工程[2]〜[4]において、蓋体952が開いてしまうのを確実に防止することができる。
【0152】
以上説明した第3実施形態のオートクレーブ滅菌方法では、[1]キャップ装着工程を省略することができるので、オートクレーブ滅菌方法の工程を簡略化することができ、また、キャップの管理等の手間を省略することができる。
【0153】
なお、以上の実施形態では、前記[4]冷却工程を、ライトガイド接続筒の冷却速度が、樹脂材料で構成される他の部材の冷却速度が近づくような条件で行うようにしているが、冷却速度を制御する部材はライトガイド接続筒に限るものではなく、その他の部材の冷却速度が、さらに他の部材の冷却速度に近づくような条件で行うようにしてもよい。
【0154】
以上、本発明のオートクレーブ滅菌方法を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0155】
例えば、本発明のオートクレーブ滅菌方法では、必要に応じて、1以上の任意の目的の工程を追加してもよい。
【0156】
また、本発明のオートクレーブ滅菌方法では、各前記実施形態のうち任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【実施例】
【0157】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
(実施例1)
図1に示すような内視鏡を用意し、この内視鏡の光源用コネクタに図6に示すようなフッ素ゴム製の光源用コネクタキャップを装着した。
【0158】
次に、この内視鏡を、図3に示すようなオートクレーブ装置の滅菌槽内に収容し、高温高圧水蒸気により滅菌を行った後、滅菌槽から水蒸気を排気した。
【0159】
そして、この滅菌槽内で、内視鏡を常温まで冷却した。
以上の工程により、内視鏡を滅菌した。
【0160】
(実施例2)
内視鏡の光源用コネクタに光源用コネクタキャップを装着せず、図9(a)に示すようなシリコンゴム製のコネクタ被包部を有する支持台を備えたオートクレーブ装置を用いる以外は、前記実施例1と同様にして内視鏡を滅菌した。
【0161】
(実施例3)
内視鏡の光源用コネクタに光源用コネクタキャップを装着せず、図9(b)に示すようなシリコンゴム製のコネクタ被包部を有する支持台を備えたオートクレーブ装置を用いる以外は、前記実施例1と同様にして内視鏡を滅菌した。
【0162】
(比較例)
内視鏡の光源用コネクタに、ライトガイド接続筒キャップを装着しない以外は、前記実施例1と同様にして内視鏡を滅菌した。
【0163】
<評価>
各実施例および比較例について、オートクレーブ滅菌前およびオートクレーブ滅菌後の内視鏡の照明光の入射率を評価した。
【0164】
その結果、各実施例のオートクレーブ滅菌が施された内視鏡では、オートクレーブ滅菌後においてもオートクレーブ滅菌前と同様の入射率が得られたのに対して、比較例のオートクレーブ滅菌が施された内視鏡では、オートクレーブ滅菌後の入射率がオートクレーブ滅菌前に比べて減少していた。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】本発明のオートクレーブ滅菌方法によって滅菌が施される内視鏡の一例を示す全体図である。
【図2】図1に示す内視鏡が有する光源用コネクタを一部破断して示す図である。
【図3】本発明のオートクレーブ滅菌方法で用いるオートクレーブ装置の一例の全体構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示すオートクレーブ装置が有する支持台上に、内視鏡を載置した状態を示す平面図である。
【図5】図3に示すオートクレーブ装置が有する支持台上に、内視鏡を載置した状態を示す模式的な斜視図である。
【図6】第1実施形態のオートクレーブ滅菌方法において、内視鏡が有する光源用コネクタに、光源用コネクタキャップを装着した状態を示す側面図である。
【図7】第2実施形態のオートクレーブ滅菌方法において、内視鏡が有する光源用コネクタおよび画像信号用コネクタの双方を被覆し得る光源・画像信号用コネクタキャップを装着した状態を示す側面図である。
【図8】第3実施形態で用いるオートクレーブ装置が備える支持台上に、内視鏡が載置された状態を示す平面図である。
【図9】図8に示す支持台のコネクタ被包部が設けられた部分を拡大した斜視図である。
【符号の説明】
【0166】
100 内視鏡
110 逆止弁
120 挿入部可撓管
121 可撓管部
122 湾曲部
160 操作部
161 第1操作ノブ
162 第2操作ノブ
163 第1ロックレバー
164 第2ロックレバー
165 制御ボタン
166 吸引ボタン
167 送気・送液ボタン
170 接続部可撓管
180 光源差込部
181 光源用コネクタ
181’ 第1の凹部
182 画像信号用コネクタ
182’ 第2の凹部
183 ライトガイド接続筒
184 ライトガイド
185 集光レンズ
186 ロッドレンズ
1 オートクレーブ装置
2 滅菌槽
3 滅菌槽内減圧手段
31 吸引ポンプ
4 水蒸気供給手段
41 蒸気発生部
42 給蒸流路
6 圧力センサ
7 制御手段
81 槽内排気流路
82 管路
83 槽内給気流路
84 排蒸流路
9 支持台
91 底部
92 外壁部材
93、93 突出部
94、94 脚部
95 コネクタ被包部
951 枠体
952 蓋体
953 ヒンジ部
954 係合部
955 第1の断熱部材
956 第1の被覆部
957 第2の断熱部材
958 第2の被覆部
959 凸部
11 第1電磁弁
12 第2電磁弁
13 第3電磁弁
14 第4電磁弁
17 光源用コネクタキャップ
18 光源・画像信号用コネクタキャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温高圧水蒸気を用いて内視鏡を滅菌するオートクレーブ滅菌方法であって、
前記内視鏡を、滅菌槽内で高温高圧水蒸気により滅菌する第1の工程と、
前記内視鏡を常温まで冷却する第2の工程とを有し、
前記第2の工程において、前記内視鏡から露出した金属部分を、断熱性を有するカバー部材で被覆した状態で、前記内視鏡を冷却することにより、前記金属部分の冷却速度が遅くなるよう構成したことを特徴とするオートクレーブ滅菌方法。
【請求項2】
前記金属部分は、被写体を照明する照明光の光源を備える光源装置への差込部分である光源差込部が有する光源用コネクタである請求項1に記載のオートクレーブ滅菌方法。
【請求項3】
前記光源用コネクタの外表面を構成する金属材料は、主として銅合金、アルミニウム合金またはステンレス鋼で構成される請求項1または2に記載のオートクレーブ滅菌方法。
【請求項4】
前記カバー部材は、その熱伝導率が前記金属部分の熱伝導率よりも小さい材料で構成される請求項1ないし3のいずれかに記載のオートクレーブ滅菌方法。
【請求項5】
前記カバー部材は、主として樹脂材料で構成される請求項4に記載のオートクレーブ滅菌方法。
【請求項6】
前記金属部分が露出しない他の部分は、前記金属部分よりも熱伝導率の小さい材料で構成され、
前記金属部分の冷却速度を、前記他の部分の冷却速度に近づくように遅くする請求項1ないし5のいずれかに記載のオートクレーブ滅菌方法。
【請求項7】
前記他の部材は、前記内視鏡から露出する部分が主として樹脂材料で構成される請求項6に記載の内視鏡。
【請求項8】
前記カバー部材は、前記光源用コネクタに装着する第1のキャップである請求項2ないし7のいずれかに記載のオートクレーブ滅菌方法。
【請求項9】
前記内視鏡は、内部に電気接点が配設された画像信号用コネクタを有し、
前記第1の工程に先立って、前記光源用コネクタおよび前記画像信号用コネクタに、それぞれ、前記第1のキャップおよび第2のキャップを装着する請求項8に記載のオートクレーブ滅菌方法。
【請求項10】
前記第2のキャップは、防水性を有する請求項9に記載のオートクレーブ滅菌方法。
【請求項11】
前記第1のキャップと前記第2のキャップとは、一体的に形成されている請求項9または10に記載のオートクレーブ滅菌方法。
【請求項12】
前記滅菌槽は、その内部に前記内視鏡が載置される支持台を備え、
前記カバー部材は、前記支持台に設けられ、前記内視鏡を前記支持台に載置した状態で、前記光源用コネクタの周囲を囲むコネクタ被包部である請求項2ないし7のいずれかに記載のオートクレーブ滅菌方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−86526(P2008−86526A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−270082(P2006−270082)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】