説明

オートバイライダー用靴

【課題】ペダル操作に不具合を生じさせずに靴内に容易に空気を取り込むことができる。
【解決手段】オートバイライダー用靴はつま先部2を有する甲部と両側面部と底部5とを有している。つま先部2と両側面部にそれぞれ通気部を形成した。つま先部2は、トリコット8と不織布19からなる多孔質の通気部6を覆っていて複数の貫通孔7Aを網目状に形成した強化プラスチックメッシュ7を備えている。強化プラスチックメッシュ7は貫通孔7Aを仕切るリブ部7Bに凸部7Cを突出して形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートバイライダーがオートバイに乗るとき等に着用可能なオートバイライダー用靴に関する。
【背景技術】
【0002】
オートバイライダーがオートバイに乗車する時に着用する靴は、万一の転倒時等に足首やくるぶし等を保護するためにくるぶしを覆ってガードするように形成されているものが多い。しかも、オートバイを運転中に変速操作する際には、オートバイのステップに両足を着座させた状態で、靴の甲のつま先部分でその上側に位置するシフトペダルを押して操作している。そのため、オートバイライダー用靴の甲のつま先部分には、一般に強度と耐摩耗性を有する強化合成樹脂パッドが配設されている。
このようなオートバイライダー用靴は、足を入れる開口が通常の靴よりも高い位置に延びており、長時間着用していると蒸れることがある。そのため、オートバイライダー靴の甲の部分を除く両側面部は通気用のメッシュ生地が採用されており、底部にも通気孔が形成されていて、走行時に靴の内部に空気が流入し易くして内部の蒸れを防ぐようにしている。
しかしながら、オートバイライダー用靴はライダーが乗車時にステップに両足を着座させているために、甲の部分が走行方向前面を向いており、この部分が最も通気し易いにも関わらず、上述のようにつま先部分は強化合成樹脂パッドで覆われているために通気性がない。メッシュ状の通気部が設けられた側面部はオートバイの走行方向にほぼ平行であるために通気の効率が十分とはいえない。
そのため、オートバイ走行時等における靴内の通気性を更に高めるために例えば下記特許文献1に記載されたような、靴の甲のつま先部に入気装置が設けられたものが提案されている。このオートバイライダー用靴の甲部分に設けた入気装置は、開口部が穿孔された固定板と、固定板に滑動可能に保持された滑動板から構成され、滑動板を摺動させることで開口部を開閉操作するようにしている。
【特許文献1】特開2006−149998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載された従来のオートバイライダー用靴は、入気装置の滑動板の入気口部分が隆起して靴の表面から突設されているため、変速操作の際に入気装置の突起部分がシフトペダルに引っかかったりシフトペダルを誤操作するおそれがあり、シフトペダル操作の邪魔であると共に危険でもある。また、入気口と開口部がつま先部の一部にしか設けられていないので、靴内に取り入れる空気流量が制約される不具合があった。
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、ペダル操作に不具合を生じることなく靴内に容易に空気を取り込むことができるようにしたオートバイライダー用靴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明に係るオートバイライダー用靴は、つま先部を有する甲部と両側面部と底部とを有していて、つま先部と両側面部と底部にそれぞれ通気部を形成してなるオートバイライダー用靴であって、つま先部は、多孔質の前記通気部を覆っていて複数の貫通孔が形成されている強化合成樹脂からなる外層部を備えており、つま先部によってシフトペダルを操作するようにしたことを特徴とする。
本発明によれば、オートバイのステップに足を載せて走行する際、前面に位置するつま先部に設けられた外層部の貫通孔を通して通気部から空気を靴内に効率的に取り込むことができる。また、走行時につま先部でシフトペダル操作等を繰り返しても、つま先部は複数の貫通孔を有する強化合成樹脂からなる外層部によってカバーされているためにシフトペダルと通気部とが直接当接せず、外層部によって靴の甲の部分の磨耗を抑えることができる。
【0005】
また、本発明に係るオートバイライダー用靴の外層部は、貫通孔を仕切るリブ部と該リブ部に設けた凸部を有していることが好ましい。
これによって、外層部の貫通孔と貫通孔との間のリブ部に設けた突起でシフトペダルを押すことができ、通気部への接触を一層防いで保護の強化を図ることができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、つま先部に形成した外層部でシフトペダルを繰り返して操作しても靴の耐久性を維持しながら靴内に走行時の空気を効率的に取り込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明によるオートバイライダー用靴の一実施形態について、図1から図7を参照して説明する。
本実施形態に係るオートバイライダー用靴1は、図1から図3に示すように、つま先部2と靴ひも部4とを有する前面アッパー部である甲部3と、靴後部9と、甲部3と靴後部9との間の両側側面部10、10と、靴底部5とで概略構成されている。
つま先部2は、靴1の先端から靴ひも部4との間を連結しており、図4に示すように、多孔質の通気部6と、通気部6の表面を覆う外層部を構成する強度と耐摩耗性の高い強化プラスチックメッシュ7(外層部)とが積層して配設されている。強化プラスチックメッシュ7は、網目状を形成するリブ部7Bの材質として適宜のものを採用できるが、例えば 熱可塑性ポリウレタン樹脂(TPU)からなっている。メッシュ状の網目には多数の貫通孔7Aが設けられており、通気部6を通して靴の内部にエアを流通させることになる。
【0008】
通気部6は、図示しない細孔が多数形成され、靴の内側から外側に向けて通気性に優れたトリコット8とナイロン6、66等の不繊布19とが積層されて構成されている。強化プラスチックメッシュ7の貫通孔7A間にはリブ部7B上に凸部7Cが形成されている。強化プラスチックメッシュ7は、オートバイに取り付けられたシフトペダルを押したり擦ったりする操作を繰り返しても耐摩耗性と強度を発揮できる所定の耐久性を有している。
そのため、シフトペダル操作時にシフトペダルには強化プラスチックメッシュ7のリブ部7Bの凸部7cが接触するが、通気部6は接触しないようになっている。
【0009】
両側面部10,10は、図5に示すように、靴の内側から順にトリコット8とポリエステル又はナイロン等の合成樹脂製繊維等からなるメッシュ11とが積層されて通気部6Aを構成している。このメッシュ11は靴表面の生地を構成しており、合成樹脂製繊維を織り込んで形成されている通気性の細孔が多数形成されている。また、両側面部10,10の中央には、反射板12がメッシュ11の表面に固着されて積層されている。
【0010】
図1及び図3に示すように、両側面部10,10の上部開口はオートバイライダーが靴1を履いた際にくるぶしの下側に位置している。そして、両側面部10,10の上部開口には、くるぶし部分を保護するための一対のアンクルガード13、13が両側面部10、10の内側に縫いつけられている。アンクルガード13は、図6に示すように、クッション等の衝撃吸収用のフォーム部15が、外側の強化プラスチック(熱可塑性ポリウレタン樹脂(TPU)等)からなるガード層16と内側のメッシュ11(エアーメッシュ等)とに挟まれて覆われている。フォーム部15とガード層16との間には金属メッシュが配設され、ガード層16には複数の空気孔16Aが穿孔され、内部のフォーム部15とメッシュ11を通して靴1の内側に通気可能とされている。
また、靴後部9には通気孔のない合成樹脂製の生地からなる補強面14がメッシュ11の上に縫いつけられ、この補強部14は両側面部10,10に向けて延びて、つま先部2の先端部を囲うように全周に亘って形成されている。
【0011】
靴底部5は、靴1の内側から外側にインソール18、ミッドソール20、アウトソール21を積層して備えている。
図4及び図7に示すように、インソール18は中敷きであり、複数の換気用孔18Aが厚み方向に貫通して設けられている。
ミッドソール20は、図4及び図7に示すように、インソール18側から外側に向けて補強布22とメッシュ11とが積層されて構成されている。前足底側の後述する通気孔26の近傍では、メッシュ11の下側に金属メッシュ17が配設されている。
アウトソール21として、衝撃吸収用のクッション部材や弾性を有する合成樹脂等からなる所定厚みの靴底用フォーム部23がほぼ靴裏全面に固定されている。靴底用フォーム部23の裏面には靴底用フォーム部23の表面のうち、地面に接する領域すなわち土踏まずの前後両側に比較的薄層の合成ゴム層25が被覆されて覆われている。また、靴底用フォーム部23において、土踏まずを跨ぐ指及び前足底とかかとの部分には合成ゴム層25を所定の方向と形状に切除した複数の溝23、23Aが設けられている。
【0012】
また、アウトソール21に積層された靴底用フォーム23及び合成ゴム層25を部分的に切除した平面視略楕円形状の通気孔(底側通気部)26,27が複数設けられている。通気孔26、27は外側から内側に向けて漸次断面積が小さくなるテーパ穴形状とされている。前足底側に設けた複数の通気孔26はその底部開口26aにミッドソール20を構成する補強布22とメッシュ11と金属メッシュ17からなる通気部29Aが形成され、靴1の内部に空気が流入出可能とされている。靴1の前足底側に設けられた通気孔26からは、金属メッシュ17が視認可能となっている。
一方、かかと側の複数(図2では2つ)の通気孔27には、その底部開口27aには金属メッシュ17に代えて複数のリブ28が足長方向に所定の間隔で複数本設けられており、その内側にはミッドソール20を構成する補強布22とメッシュ11からなる通気部29Bが形成され、靴1の内部に空気が流入出可能とされている。各リブ28は、先端がアウトソール21の表面に沿うように形成されている。
【0013】
次に、本実施形態に係るオートバイライダー用靴1の作用について説明する。
まず、オートバイライダーがオートバイライダー用靴1を履くと、両側のアンクルガード13、13がそれぞれの足のくるぶしの両側に当接してガードする位置にくる。これによって、アンクルガード13は転倒時等にくるぶしを保護すると共に、内側のアンクルガード13はエンジンの熱がくるぶしに伝達するのを抑制する。
そして、オートバイライダーは図示しないオートバイに乗車して両側のステップに足を載置する。
【0014】
この状態でオートバイを走行したとき、走行風がオートバイライダー用靴1に吹き付ける。このとき、甲部3のつま先部2の強化プラスチックメッシュ7の貫通孔7Aを通して走行風が流入する。走行風は貫通孔7Aから不織布19及びトリコット8からなる通気部6を通して靴1の内部に流入する。特につま先部2の強化プラスチックメッシュ7は走行方向前面に位置するために効率良く風を流入させる。
また、両側面部10,10においても表面の生地を構成するメッシュ11及びトリコット8からなる通気部6Aを通して走行風が靴1内に流入し、アンクルガード13の空気孔16Aからも走行風が導入される。また靴底部5においても通気孔26を通して走行風が通気部29Aである金属メッシュ17,メッシュ11及び補強布22を通して靴内に流入し、通気孔27を通して走行風が通気部29Bであるメッシュ11及び補強布22を通して靴内に流入する。
【0015】
靴内に入った空気は、靴内をつま先側からかかと方向に流通し、靴内の湿った空気とともに、両側面部10,10の靴後部9近傍の通気部6Aや靴底部5のかかと側の通気部29B等から、そして靴1の開口から靴外に排出される。
こうして、走行中に靴1内に暖かくて湿った空気が滞留しない状態が維持される。
【0016】
上述のように、本実施形態によるオートバイライダー用靴1によれば、オートバイのステップに足を載せて走行する際、靴1の走行方向前方に位置するつま先部2における強化プラスチックメッシュ7の貫通孔7Aを通してつま先の通気部6から走行風を靴内に取り込むことができて空気の流通を効率良く行える。しかも、走行時につま先部2でシフトペダル操作を繰り返しても、シフトペダルが通気部6の不繊布10に直接当接せず、強化プラスチックメッシュ7によって押されるので、つま先部2の通気性を良くする上にこの部の磨耗を好適に抑えることができる。
従って、靴の耐久性を維持しながら靴内に走行時の空気を効率的に取り込むことができる。
【0017】
また、靴底部5に通気孔26,27を設けることによって、甲側の通気部6から靴内に取り込まれた走行風を通気孔26,27から靴外に排出させたり、通気孔26,27から走行風を靴1内に流入させることもでき、靴内をより好適に換気して蒸れないようにすることができる。そして、オートバイの乗車時のみならず、歩行時のかかとからの着地から蹴り上げ動作に至る足の体重移動に伴い、靴と足との間に形成される隙間の変化に合わせたポンピング動作においても、空気の循環を形成させることができる。
【0018】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば上述の実施形態において、外層部を構成する強化プラスチックメッシュ7のリブ部7Bに形成する凸部7Cは山形に限定されることなく断面台形や半球状等適宜形状を採用できることはいうまでもない。また、強化プラスチックメッシュ7における貫通孔7Aの形状や数も任意に選択できる。外層部はメッシュ形状でなくてもよく、要するに強化合成樹脂からなると共に貫通孔7Aが適宜数穿孔されていて、つま先部2での通気性と強度と耐摩耗性を確保できればよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るオートバイライダー用靴を示す平面図である。
【図2】図1に示すオートバイライダー用靴の底面図である。
【図3】図1に示すオートバイライダー用靴の斜視図である。
【図4】実施形態によるオートバイライダー用靴のつま先部に関するもので、(a)は強化プラスチックメッシュの拡大縦断面図、(b)は同図(a)のメッシュ部の更に拡大した図、(c)はメッシュ部の平面図である。
【図5】オートバイライダー用靴の側面部に設けた反射板部分の拡大断面図である。
【図6】オートバイライダー用靴のアンクルガードの要部拡大断面図である。
【図7】図2に示すオートバイライダー用靴の靴底部のA−A断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 オートバイライダー用靴
2 つま先部
3 甲部
4 側面部
5 靴底部
6、6A、29A、29B 通気部
7 強化プラスチックメッシュ(外層部)
7A 貫通孔
7B リブ部
7C 凸部
26,27 通気孔(底側通気部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
つま先部を有する甲部と両側面部と底部とを有していて、前記つま先部と両側面部と底部とにそれぞれ通気部を形成してなるオートバイライダー用靴であって、
前記つま先部は、多孔質の前記通気部を覆っていて複数の貫通孔が形成されている強化合成樹脂からなる外層部を備えており、
前記つま先部によってシフトペダルを操作するようにしたことを特徴とするオートバイライダー用靴。
【請求項2】
前記外層部は、貫通孔を仕切るリブ部と該リブ部に設けた凸部を有していることを特徴とする請求項1に記載のオートバイライダー用靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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