説明

カウンター

【課題】浴室等の壁面に設置されるカウンターにおいて、トップ面に付着した水の排水による汚れを目立たせないようにする。
【解決手段】本体部1の後端部に設けた取付基部2の左右幅寸法を、トップ面1aの左右幅寸法よりも狭く形成し、取付基部上面2aをトップ面1aよりも低く形成する。トップ面1aは取付基部2へ向かう下り勾配の傾斜面に形成する。取付基部2を壁面Wへ当接させて取り付けると、トップ面1aと壁面Wとの間に排水溝3が形成され、トップ面1aに付着した水は排水溝3内へ流下したのち、左右端部からカウンター本体部1の側面1bを伝わって排出される。排水溝3の左右両端が、トップ面1aの左右両端の内側に位置するので、通常の使用者位置からは、排水溝3から排出される水、及び、これにより本体部側面1bに付着する汚れが目視できない配置となり、美観性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として浴室等の水を使用する環境に設置されるカウンターに関し、トップ面に付着した水を壁面側から排水するように構成したものであって、排水による汚れを目立たせないようにすることを目的とする。
【背景技術】
【0002】
浴室の壁面に設置されるカウンターにおいて、トップ面(上面)と壁面との間に排水溝を設け、トップ面に付着する水を、この排水溝から排出するようにしたものが特許文献1又は2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−126020号公報
【特許文献2】実開平6−68587号公報(図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1又は2に記載されているカウンターは、トップ面の左右幅全長にわたり排水溝が形成されており、排水溝の左右両端部が、使用者から容易に観察できる位置となっている。トップ面から排水溝に流れ込んだ水は、排水溝の左右端部から、カウンター本体部の左右側面を伝わって流出する。このため、排水による汚れが、カウンター左右側面の観察可能な位置に残り、美観性を損なうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記従来の問題に鑑みて創案した本発明の特徴とするところは、壁面に取り付けられるカウンターであって、本体部の後端部に設けた取付基部の左右幅寸法を本体部の上面に設けたトップ面の左右幅寸法よりも狭く形成して、取付基部の左右両端がトップ面の左右両端の内側に位置するように設定すると共に、取付基部の上面をトップ面よりも低く形成して排水溝の底面と成し、トップ面を取付基部へ向かって下り勾配となる傾斜面に形成したことである。
【0006】
上記カウンターにおいて、トップ面の全部又は一部に滑り止め加工を施し、取付基部の上面は平滑面に形成することが可能である。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るカウンターは、本体部の後端部に設けた取付基部の上面を、本体部の上面に設けたトップ面よりも低く形成したので、取付基部を壁面へ当接させて取り付けることにより、トップ面と壁面との間に、取付基部の上面を底面とする排水溝が形成される。トップ面は、取付基部へ向かって下り勾配となる傾斜面に形成されているから、トップ面に付着した水は、取付基部の方へ自然に流動して排水溝内へ流れ込んだのち、排水溝の左右端部からカウンター本体部の側面を伝わって排出される。本発明では、取付基部の左右幅寸法を、トップ面の左右幅寸法よりも狭く形成して、排水溝の左右両端がトップ面の左右両端の内側に位置するように設定したので、通常の使用者位置からは、排水溝の左右端部を容易には目視できない配置とすることができる。従って、排水溝から排出される水、及び、これにより本体部側面に付着する汚れが容易には見えなくなるから、美観性が向上する。
【0008】
なお、カウンターのトップ面の全部又は一部に滑り止め加工を施した場合は、その上に載置した物品が滑りにくくなり、落下を防止することができる。これに対し、取付基部の上面(排水溝底面)は平滑面に形成するので、トップ面から流入した水の排水流動に支障を与えるおそれがない。なお、滑り止め加工を施す領域をトップ面の一部とする場合、主要部分に対し一様に滑り止めを施すほか、縞状・渦巻状・バッチ状に滑り止め加工を施すことが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係るカウンターの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係るカウンターの一実施形態を示すものであって、図(A)は平面図、図(B)は正面図である。
【図3】本発明に係るカウンターの一実施形態を示すものであって、図(A)は側面図、図(B)は側面断面図である。
【図4】本発明に係るカウンターにおける排水溝部分を拡大して示す側面図であって、図(A)は排水溝底面を壁面へ向かって上り勾配となる傾斜面に形成した例を示すもの、図(B)は排水溝底面を壁面へ向かって下り勾配となる傾斜面に形成した例を示すものである。
【図5】本発明に係るカウンターの一実施形態を示すものであって、構成部材を分解して示す斜視図である。
【図6】本発明に係るカウンターの設置例を示す浴室の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るカウンターKは、例えば図6に示すように、浴槽N、鏡M、水栓器具Sと共に、浴室Y等に設置される。その他、シャワールームなどの水が使用される環境を、主たる設置対象とする。
【0011】
図1〜3に示す如く、カウンターKは、本体部1の上面に、洗面器や石鹸・シャンプー・リンス・ブラシ等の小物を載置するための平坦なトップ面1aを有する。後端には、壁面Wへ当接させる取付基部2が設けられる。図3(A)に示す如く、トップ面1aは、取付基部2へ向かって下り勾配θを持つ傾斜面に形成されている。トップ面1aの全面又は一部に梨地加工やエンボス加工等の滑り止め加工Nを施して、上に載置した物品が滑って落下するのを防止するようにしてもよい。但し、この場合、取付基部2の上面2aは平滑な状態とすることが望ましい。
【0012】
本発明に係るカウンターKは、取付基部2の上面2aを、トップ面1aより低く形成すると共に(図3参照)、取付基部2の左右幅寸法L2を、トップ面1aの左右幅寸法L1より狭く設定して、取付基部2が、トップ面1aの左右幅内に収まるように構成したところを特色とする(図2(A)参照)。従って、当該カウンターKを壁面Wへ取り付けることにより、トップ面1aと壁面Wとの間に、取付基部2の上面2aを底面とする排水溝3が形成される(図3,4参照)。そして、このとき、排水溝3の左右両端部は、トップ面1aと壁面Wとの間に形成される隙間4に臨むこととなる。従って、カウンターKが、本体部1の左右端部の一方又は両方を、浴槽エプロン、又は、浴槽エプロンと対向する壁面(カウンターKの取付壁面Wとは直角方向の壁面)に接するよう施工される仕様であっても、カウンターK上の水を上記隙間4を通じて排水できるという利点が得られる。
なお、カウンターKを左右対称な形態として、左右の隙間4の長さ寸法を左右で同一とするのが通常であるが、状況に応じ、左右で隙間4の長さ寸法を異ならせることを妨げない。
【0013】
かかる構成により、本発明に係るカウンターKは、トップ面1aに付着した水が、トップ面1aの勾配θにより取付基部2側(壁面W側)へ向かって自然に流動し、排水溝3内へ流れ込む。そして、排水溝3の左右両端から流れ出た後、本体部側面1bを伝わって排出される。本発明では、排水溝3の左右端部が、トップ面1aと壁面Wとの間に形成される狭い隙間4に臨んでおり、そのため、通常の使用位置に居る使用者が、排水溝3から水が流出する様子を目視するのが困難になっている。従って、排水溝3から流出する水の汚れが本体部側面1bに付着残存したとしても、これは使用者が容易に見ることのできない位置となるので、美観性が向上する。
【0014】
ところで図4に例示するように、排水効率を高めるため、排水溝3の底面(取付基部2の上面2a)に、壁面Wへ向かう方向に対し多少の勾配を付与することが考えられる。この場合、図4(A)に示す如く、壁面Wへ向かって上り勾配αを付与するか、反対に、同図(B)に示す如く、壁面Wへ向かって下り勾配βを付与する態様が考えられる。いずれを採用するかは、状況に応じ適宜選択される。勿論、排水溝3の底面を、壁面Wへ向かう方向に対し水平に形成することも可能である。また排水溝3の底面に、中央部から左右端部へ向かって下り傾斜となる排水勾配を形成することも考えられる。(図5参照)
【0015】
本発明に係るカウンターKが、上に述べた諸効果を確実に発揮するため、各部の寸法は以下のように設定することが考えられる。
・トップ面1aの左右幅寸法L1と取付基部2の上面2aの幅寸法L2との差L1−L2は、50mm以上とすることが望ましい。(図2(A)参照)
・取付基部2の上面2aの奥行き寸法Dは、10〜50mmとすることが望ましい。(図2(A)参照)
・トップ面1aと取付基部上面2aとの高低差Hは、10〜30mmとすることが望ましい。(図3(A)参照)
・トップ面1aに付与する勾配θは2度以上とすることが望ましい。(図3(A)参照)
・排水溝3の底面2aに付与する勾配α,βは2度以上とすることが望ましい。(図4参照)
【0016】
本発明に係るカウンターKの材質は、特に限定されるものではなく、プラスチック・金属・セラミックスや、これらの組み合わせ、あるいは複合素材が使用可能である。
【0017】
本発明に係るカウンターKを壁面Wへ取り付ける手段は、特に制限はないが、本例では以下のような取付構造を採用した。
図5に示す如く、カウンターKを、トップ面1aを構成するトップ部材10、本体部1を構成するボディ部材20、及び、ブラケット30の3つの部材で構成する。トップ部材10の後端部には、トップ面1aの左右幅寸法より幅が狭く、且つ、トップ面1aよりも一段低く形成した溝形成部11を一体に設ける。他方、ボディ部材20の後端部には、上記溝形成部11の左右幅寸法に合わせた取付基部2が設けられる。また、トップ部材10とボディ部材20との間には、例えば係止爪と係止凹部の如き、適当な嵌合構造を設けておく。
【0018】
ブラケット30には、トップ部材10を支持する支承部31,壁面Wへ固定される起立部32,ボディ部材20が接合される接合部33,34が設けられる。さらに、ブラケットの30の起立部32及び接合部33,34には、ネジ又はボルト等の挿通孔J1〜J4が形成される。同様に、ボディ部材20には、ネジ又はボルト等の挿通孔P1,P2を形成しておく。
【0019】
前記部材10,20,30を用いてカウンターKを構築する手順の概略は、次の如くである。まず、ブラケット30を、起立部32において、壁面Wの所定位置に固定する。次いで、ブラケット30の挿通孔J3,J4と、ボディ部材20の挿通孔P1,P2との位置を合わせ、両者をネジ等で接合する。しかる後、トップ部材10を、ブラケット30の支承部31上に載置すると共に、ボディ部材20に対し、適当な嵌合構造により、無理嵌め状態に嵌合させる。以上述べたような簡単な作業工程により、本発明に係るカウンターKを目的の場所に容易に設置することができる。
【符号の説明】
【0020】
1…本体部 1a…トップ面 1b…本体部側面 2…取付基部 2a…取付基部の上面(排水溝底面) 3…排水溝 10…トップ部材 20…ボディ居部材 30…ブラケット K…カウンター N…滑り止め加工 W…壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に取り付けられるカウンターであって、本体部の後端部に設けた取付基部の左右幅寸法を本体部の上面に設けたトップ面の左右幅寸法よりも狭く形成して、取付基部の左右両端がトップ面の左右両端の内側に位置するように設定されると共に、取付基部の上面をトップ面よりも低く形成して排水溝の底面と成し、トップ面は取付基部へ向かって下り勾配となる傾斜面に形成されていることを特徴とするカウンター。
【請求項2】
トップ面の全部又は一部に滑り止め加工が施され、取付基部の上面は平滑面に形成した請求項1に記載のカウンター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−67340(P2011−67340A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220386(P2009−220386)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】