説明

カチオン重合性樹脂組成物、コーティング剤、およびコーティング層表面の加工方法

【課題】 耐溶剤性に優れ、コーティング剤適用後のコーティング表面に箔押しや印刷などの後加工を施すことのできる時間が長く、後加工性が良好なコーティング剤とすることのできるカチオン重合性樹脂組成物、これを用いたコーティング剤、およびこれを用いた加工方法を提供する。
【解決手段】 必須の構成成分として、(1)カチオン重合性有機物質と、(2)少なくとも化学量論量のエネルギー線感受性カチオン重合開始剤と、を含有するカチオン重合性樹脂組成物であって、前記(1)カチオン重合性有機物質100gに対して、酸トラップ性もしくはプロトントラップ性を有する官能基を0.1〜20mmol含有するカチオン重合性樹脂組成物、それを用いたコーティング剤、およびコーティング層表面の加工方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン重合性樹脂組成物、これを用いたコーティング剤、およびこれを用いた加工方法に関するものである。詳しくは、耐溶剤性に優れ、コーティング剤適用後のコーティング表面に箔押しや印刷などの後加工を施すことのできる時間が長く、後加工性が良好であるコーティング剤とすることのできるカチオン重合性樹脂組成物、これを用いたコーティング剤、およびこれを用いたコーティング層表面の加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からカチオン重合性樹脂組成物によるプラスチック製品表面へのコーティングが行われており、例えば特許文献1には、ダイマー酸変性エポキシ樹脂をカチオン重合性樹脂として用いる技術が開示されている。また、特許文献2には、ポリブタジエンアクリロニトリル変性エポキシ樹脂を主体とする可撓性コーティング剤が開示されている。
【特許文献1】特開2003−192762号公報
【特許文献2】特開2001−329045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1記載のコーティング剤は多少後加工性を有するものの、工業的な加工処理を施すことのできる充分な時間、後加工性を保持することのできないものであった。また、特許文献2記載のコーティング剤は、後加工性について記載されておらず、またここで使用されているコーティング剤は後加工性を有するものではなかった。
【0004】
そこで、本発明の目的は、耐溶剤性に優れ、コーティング剤適用後のコーティング表面に箔押しや印刷などの後加工を施すことのできる時間が長く、後加工性が良好なコーティング剤とすることのできるカチオン重合性樹脂組成物、これを用いたコーティング剤、およびこれを用いた加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、カチオン重合性樹脂組成物に酸トラップ性もしくはプロトントラップ性を有する官能基を含有させることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明のカチオン重合性樹脂組成物は、必須の構成成分として、(1)カチオン重合性有機物質と、(2)少なくとも化学量論量のエネルギー線感受性カチオン重合開始剤と、を含有するカチオン重合性樹脂組成物であって、前記(1)カチオン重合性有機物質100gに対して、酸トラップ性もしくはプロトントラップ性を有する官能基を0.1〜20mmol含有することを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明にかかる酸トラップ性もしくはプロトントラップ性を有する官能基が前記(1)カチオン重合性有機物質の少なくとも一部に対して導入されていることが好ましく、更に、酸トラップ性もしくはプロトントラップ性を有する官能基が導入される前記(1)カチオン重合性有機物質がエポキシ化合物であるものがより好ましい。更にまた、前記(1)カチオン重合性有機物質の1〜50質量%がオキセタン化合物であることが好ましい。なお、さらに(3)表面調整剤、流動性調整剤および溶剤のいずれか一種以上を好適に含有することができる。
【0008】
本発明のコーティング剤は、上記本発明のカチオン重合性樹脂組成物を用いたことを特徴とするものである。
【0009】
本発明のコーティング層表面の加工方法は、上記本発明のコーティング剤を用いてコーティング層を形成した後、得られたコーティング層表面に加工を施すことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果は、耐溶剤性に優れ、コーティング剤適用後のコーティング表面に箔押しや印刷などの後加工を施すことのできる時間が長く、後加工性良好なコーティング剤とすることのできるカチオン重合性樹脂組成物、これを用いたコーティング剤、およびこれを用いた加工方法を提供することができることにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に使用する(1)カチオン重合性有機物質としては、エネルギー線照射などにより活性化したカチオン重合開始剤により高分子化または、架橋反応を起こす物質であればどのような物質でもよく特に限定されるものではないが、一例を挙げると以下の通りである。
【0012】
例えば、エポキシ化合物、オキセタン化合物、環状ラクトン化合物、環状アセタール化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルトエステル化合物、ビニル化合物などであり、これらの1種または2種以上を使用することができる。中でも入手するのが容易であり、取り扱いに便利なエポキシ化合物が適している。該エポキシ化合物としては、芳香族エポキシ化合物、脂環族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物などが適している。
【0013】
前記脂環族エポキシ樹脂の具体例としては、少なくとも1個の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテルまたはシクロヘキセンやシクロペンテン環含有化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られるシクロヘキセンオキサイドやシクロペンテンオキサイド含有化合物が挙げられる。たとえば、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−1−メチルヘキサンカルボキシレート、6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1−エポキシエチル−3,4−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシ−4−エポキシエチルシクロヘキサン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート等が挙げられる。
【0014】
前記脂環族エポキシ樹脂として好適に使用できる市販品としては、UVR−6100、UVR−6105、UVR−6110、UVR−6128、UVR−6200(以上、ユニオンカーバイド社製)、セロキサイド2021、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、セロキサイド2000、セロキサイド3000、サイクロマーA200、サイクロマーM100、サイクロマーM101、エポリードGT−301、エポリードGT−302、エポリード401、エポリード403、ETHB、エポリードHD300(以上、ダイセル化学工業(株)製)、KRM−2110、KRM−2199(以上、旭電化工業(株)製)などを挙げることができる。
【0015】
前記脂環族エポキシ樹脂の中でも、シクロヘキセンオキサイド構造を有するエポキシ樹脂は、本発明の効果、および硬化性(硬化速度)の点で好ましい。
【0016】
前記芳香族エポキシ樹脂の具体例としては、少なくとも1個の芳香族環を有する多価フェノールまたは、そのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、またはこれらに更にアルキレンオキサイドを付加した化合物のグリシジルエーテルやエポキシノボラック樹脂などが挙げられる。
【0017】
また、前記脂肪族エポキシ樹脂の具体例としては、脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートのビニル重合により合成したホモポリマー、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートとその他のビニルモノマーとのビニル重合により合成したコポリマー等が挙げられる。代表的な化合物として、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテルなどの多価アルコールのグリシジルエーテル、また、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステルが挙げられる。さらに、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルやフェノール、クレゾール、ブチルフェノール、また、これらにアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシ化大豆油、エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。
【0018】
前記芳香族および脂肪族エポキシ樹脂として好適に使用できる市販品としてはエピコート801、エピコート828、エピコートYX−4000、YDE−305、871、872(以上、ジャパンエポキシレジン社製)、PY−306、0163、DY−022(以上、チバガイギー社製)、KRM−2720、EP−4100、EP−4000、EP−4080、EP−4088、EP−4900、ED−505、ED−506(以上、旭電化工業(株)製)、エポライトM−1230、エポライトEHDG−L、エポライト40E、エポライト100E、エポライト200E、エポライト400E、エポライト70P、エポライト200P、エポライト400P、エポライト1500NP、エポライト1600、エポライト80MF、エポライト100MF、エポライト4000、エポライト3002、エポライトFR−1500(以上、共栄社化学(株)製)、サントートST0000、YD−716、YH−300、PG−202、PG−207、YD−172、YDPN638(以上、東都化成(株)製)、デナコールEX321、デナコールEX313、デナコール314、デナコールEX−411、EM−150(長瀬化成工業)、EPPN−201、EOCN−1020、EPPN−501H(日本化薬)、ブレンマーG(日本油脂)、エポブレンド(ダイセル化学工業)、EHPE−3150(ダイセル化学工業)などを挙げることができる。
【0019】
前記オキセタン化合物の具体例としては、例えば以下の化合物を挙げることができる。3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−(メタ)アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、4−メトキシ−[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル]フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、3,3’−(1,3−(2−メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス−(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールF(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテルなどを例示することがでる。
【0020】
前記オキセタン化合物として好適に使用できる市販品としては具体的な製品名としては、アロンオキセタンOXT−101,OXT−121,OXT−221,OXT−212,OXT−211(以上、東亞合成(株)製)、エタナコールEHO,OXBP,OXTP,OXMA(以上、宇部興産(株)製)などが挙げられる。これらは1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
その他のカチオン重合性有機物質としては、テトラヒドロフラン、2,3−ジメチルテトラヒドロフランなどのオキソラン化合物、トリオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,6−トリオキサンシクロオクタンなどの環状アセタール化合物、β−プロピオラクトン、ε−カプロラクトンなどの環状ラクトン化合物、エチレンスルフィド、チオエピクロルヒドリンなどのチイラン化合物、1,3−プロピンスルフィド、3,3−ジメチルチエタンなどのチエタン化合物、テトラヒドロチオフェン誘導体などの環状チオエーテル化合物、エチレングリコールジビニルエーテル、アルキルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、プロピレングリコールのプロペニルエーテルなどのビニルエーテル化合物、エポキシ化合物とラクトンの反応によって得られるスピロオルトエステル化合物、スチレン、ビニルシクロヘキセン、イソブチレン、ポリブタジエンなどのエチレン性不飽和化合物および上記誘導体などが挙げられる。
【0022】
本発明においては、カチオン重合性有機物質として、上述したカチオン性有機化合物のうち1種または2種以上を配合して使用することができる。
【0023】
上記のカチオン重合性有機物質として、本発明の効果をより顕著に得るためには好ましくは(1)カチオン重合性有機物質の1〜50質量%、より好ましくは5〜35質量%をオキセタン化合物とすることがよい。その他のカチオン重合性有機物質成分は、エポキシ樹脂や、エポキシ化合物以外のカチオン重合性有機物質であってよい。
【0024】
本発明に使用する(2)少なくとも化学量論量のエネルギー線感受性カチオン重合開始剤とは、エネルギー線照射によりカチオン重合を開始させる物質を放出させることが可能な化合物であり、特に好ましいのは、照射によってルイス酸を放出するオニウム塩である複塩、またはその誘導体である。かかる化合物の代表的なものとしては、一般式[A]m+[B]m-で表される陽イオンと陰イオンの塩を挙げることができる。
【0025】
ここで陽イオン[A]m+はオニウムであることが好ましく、その構造は、例えば、[(R7aQ]m+で表すことができる。更にここで、R7は炭素原子数が1〜60であり、炭素原子以外の原子をいくつ含んでいてもよい有機の基である。aは1〜5なる整数である。a個のR7は各々独立で、同一でも異なっていてもよい。また、少なくとも1つは、芳香環を有する前記のような有機の基であることが好ましい。QはS,N,Se,Te,P,As,Sb,Bi,O,I,Br,Cl,F,N=Nからなる群から選ばれる原子あるいは原子団である。また、陽イオン[A]m+中のQの原子価をqとしたとき、m=a−qなる関係が成り立つことが必要である。但し、N=Nは原子価0として扱う。
【0026】
また、陰イオン[B]m-は、ハロゲン化物錯体であることが好ましく、その構造は、例えば、[LXbm-で表すことができる。更にここで、Lはハロゲン化物錯体の中心原子である金属または半金属(Metalloid)であり、B,P,As,Sb,Fe,Sn,Bi,Al,Ca,In,Ti,Zn,Sc,V,Cr,Mn,Co等である。Xはハロゲン原子である。bは3〜7なる整数である。また、陰イオン[B]m-中のLの原子価をpとしたとき、m=b−pなる関係が成り立つことが必要である。
【0027】
前記一般式の陰イオン[LXbm-の具体例としては、テトラフルオロボレート(BF4-、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(B(C654-、ヘキサフルオロホスフェート(PF6-、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF6-、ヘキサフルオロアルセネート(AsF6-、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl6-等を挙げることができる。
【0028】
また、陰イオン[B]m-は、[LXb-1(OH)]m-で表される構造のものも好ましく用いることができる。L、X、bは前記と同様である。
【0029】
さらに、その他用いることのできる陰イオンとしては、過塩素酸イオン(ClO4-、トリフルオロメチル亜硫酸イオン(CF3SO3-、フルオロスルホン酸イオン(FSO3-、トルエンスルホン酸陰イオン、トリニトロベンゼンスルホン酸陰イオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を挙げることができる。
【0030】
本発明では、このようなオニウム塩の中でも、下記の(イ)〜(ハ)の芳香族オニウム塩を使用するのが特に有効であり、好ましい。これらの中から、その1種を単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
(イ)フェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、フェニルジアゾニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メトキシフェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−メトキシフェニルジアゾニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メチルフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、4−メチルフェニルジアゾニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のアリールジアゾニウム塩
(ロ)ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジ(4−メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−メチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジ(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリルクミルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のジアリールヨードニウム塩
(ハ)トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4,4’−ビス(ジフェニルスルホニオ)フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート、4,4’−ビス(ジフェニルスルホニオ)フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ビス(ジフェニルスルホニオ)フェニルスルフィド−ビス−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4,4’−ビス[ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ]フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート、4,4’−ビス[ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ]フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ビス[ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ]フェニルスルフィド−ビス−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−[4’−(ベンゾイル)フェニルチオ]フェニル−ビス−(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−[4’−(ベンゾイル)フェニルチオ]フェニル−ビス−(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−[4’−(ベンゾイル)フェニルチオ]フェニル−ビス−(4−フルオロフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のトリアリールスルホニウム塩
【0031】
また、その他好ましいものとしては、(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1,2,3,4,5,6−η)−(1−メチルエチル)ベンゼン]−アイアン−ヘキサフルオロホスフェート等の鉄―アレーン錯体や、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム、トリス(エチルアセトナトアセタト)アルミニウム、トリス(サリチルアルデヒダト)アルミニウム等のアルミニウム錯体とトリフェニルシラノール等のシラノール類との混合物等も挙げることができる。
【0032】
これらの中でも実用面と光感度の観点から芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、鉄−アレーン錯体を用いることが好ましい。
【0033】
以上のようなエネルギー線感受性カチオン重合開始剤は、本発明に使用する(1)カチオン重合性有機物質に対して、化学量論的必要量を使用すればよいが、概ね、(1)カチオン重合性有機物質100質量部に対して、0.05〜10質量部用いることが好ましい。但し、カチオン重合性有機物質の性質、光等のエネルギー線の照射強度、所望とする硬化時間、硬化物の物性、コストなどの要因により、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤の配合量を本発明の目的を逸脱しない範囲内で上述の範囲より増減させて用いることも可能である。
【0034】
本発明のカチオン重合性樹脂組成物は、酸トラップ性もしくはプロトントラップ性を有する官能基を含むことが必要であり、その含有量は、(1)カチオン重合性有機物質100gに対して0.1〜20mmol、好ましくは0.1〜10mmolである。酸トラップ性もしくはプロトントラップ性を有する官能基が上記未満であると本発明の効果である後加工性を充分に得ることができず、上記を超えると耐溶剤性が劣るものとなってしまう。
【0035】
酸トラップ性もしくはプロトントラップ性を有する官能基が本発明のカチオン重合性樹脂組成物に含有される形態は何ら限定されず、例えば、必須の構成成分である(1)カチオン重合性有機物質中の官能基として含有されていてもよく、また、これとは別に酸トラップ性もしくはプロトントラップ性を有する官能基を含む化合物を配合してもよい。またはその双方であってもよい。
【0036】
酸トラップ性もしくはプロトントラップ性を有する官能基としては、酸トラップ性もしくはプロトントラップ性を有していればよく、特に限定されるものではないが、例えば、ニトリル基、アミノ基、ウレタン結合基などを挙げることができる。
【0037】
酸トラップ性もしくはプロトントラップ性を有する官能基が、(1)カチオン重合性有機物質に含まれる場合、カチオン重合性有機物質としては(1)成分として使用することのできる化合物を全て使用することができるが、好ましくはエポキシ化合物を用いるのが本発明の効果を顕著に得る観点から好ましく、特に脂環族エポキシ樹脂が適している。
【0038】
これらの酸トラップ性もしくはプロトントラップ性を有する官能基をカチオン重合性有機物質に導入する方法は何ら限定されるものではなく、常法により行うことができる。カチオン重合性有機物質としてエポキシ樹脂を用いた場合に関し、一例を挙げれば、ブタジエンなどのオレフィンとアクリロニトリルなどの共重合物の末端をカルボキシル基などのようなエポキシ樹脂との反応性を有する基とした化合物を、エポキシ樹脂と反応させればよい。また、エポキシ樹脂にp−シアノ安息香酸や、シアノ酢酸などを反応させてもよい。
【0039】
また、エポキシ樹脂を常法によりウレタン変性した、ウレタン変性エポキシ樹脂や、アミノ化合物に例えばグリシジルエーテルを反応させた、例えばテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンなどを使用することもできる。
【0040】
その他これとは別の酸トラップ性もしくはプロトントラップ性を有する官能基を含む化合物としては、例えばアセトニトリルなどのような低分子の化合物を用いることができる。
【0041】
本発明のカチオン重合性樹脂組成物は、さらに(3)表面調整剤、流動性調整剤および溶剤のいずれか一種以上を含有することができ、本発明のカチオン重合性樹脂組成物をコーティングとして使用した場合、コーティングされた物体表面を平滑にし、物体同士が相互に付着せず、いわゆるスリップ性を与えることができる点から好ましい。
【0042】
表面調整剤は本発明のカチオン重合性樹脂組成物の硬化物表面を平滑化する働きを有するもので、塗料やインキなどにおけるレベリング剤や消泡剤などとして知られている化合物であればよく、例えばシリコンオイルなどを挙げることができる。表面調整剤は、好ましくは本発明のカチオン重合性樹脂組成物中、0.01〜5質量%程度使用するのがよい。
【0043】
流動性調整剤は本発明のカチオン重合性樹脂組成物の硬化物表面の微細な凹部を埋め、表面を平滑化する働きを有するもので、例えばシリカ微粉末、鉱物系微粉末、ポリマー系微粉末など公知の微粒子フィラーを上げることができる。流動性調整剤は、好ましくは本発明のカチオン重合性樹脂組成物中、0.5〜10質量%程度使用するのがよい。
【0044】
溶剤は本発明のカチオン重合性樹脂組成物の粘度を下げて硬化物表面を平滑化する働きを有するもので、例えば、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル系溶剤、芳香族石油系溶剤などを挙げることができる。溶剤の使用量は作業環境によって任意に選択することができる。
【0045】
本発明のコーティング剤は、上記した本発明のカチオン重合性樹脂組成物からなるものである。本発明のコーティング剤は、特に合成樹脂などのプラスチック製品の表面をコーティングするのに有用である。特に、本発明のコーティング剤はコーティング剤適用後のコーティング表面に箔押しや印刷などの後加工を施すことのできる時間が長く、後加工性良好なコーティングを形成することができるものである。
【0046】
本発明のコーティング剤を適用する基材としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ABS、ポリスチレンなどを好適に挙げることができる。
【0047】
本発明の加工方法は、上記本発明のコーティング剤を用いてコーティング層を形成した後、得られたコーティング層表面に加工を施す、コーティング層表面の加工方法である。
【0048】
まず、コーティング層を形成する工程について詳述する。コーティング層を形成する基材は上述の基材を用いることができる。該基材の表面に上記本発明のコーティング剤を塗布する。塗布方法は何ら限定されるものではなく、例えば、刷毛塗り、スプレー、ディッピング、スピンコーティングなどの公知の方法を用いることができる。なお、コーティング剤の使用量は特に限定されるものではないが、概ね、硬化後の安定なコーティング層として厚さ0.5〜100μm、好ましくは1〜10μm程度となる量を使用すればよい。
【0049】
本発明のコーティング剤は上記本発明のカチオン重合性樹脂組成物からなるものであるので、エネルギー線の照射によって硬化させることができる。硬化は従来公知のエネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させる方法によればよく、特に限定されるものではないが、例えば、紫外線、可視光線、電子線、X線、ガンマ線などのエネルギー線を照射する方法が挙げられ、特に紫外線が好ましい。紫外線を発生させる方法は特に限定されず、水銀ランプ、紫外線レーザーなど公知の方法を利用することができる。このようにしてコーティング剤を硬化することによりコーティング層を形成することができる。
【0050】
次に、このコーティング層表面に加工を施す工程について詳述する。コーティング層表面に施す加工は特に限定されるものではないが、上記の本発明のコーティング剤によるコーティング層表面は、特に箔押しやインキによる印刷などの加工を施すのに適している。詳細にはコーティング剤が充分に硬化、即ち、指触タック無しの状態にした後、常法により箔押しやインキ印刷を施せばよい。本発明のコーティング剤を使用することにより、硬化後、工業的に箔押しやインキ印刷を施すための充分な時間、加工性を保持できるので、良好な加工を施すことができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を、実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1〜11、比較例
下記のカチオン重合性有機物質、ニトリル基含有変性エポキシ樹脂、その他の酸トラップ性もしくはプロトントラップ性を有する官能基を導入したカチオン重合性有機物質、酸トラップ性もしくはプロトントラップ性を有する官能基を有する化合物、カチオン重合開始剤、その他の任意成分を表1に記載の通りに配合して、各種のカチオン重合性樹脂組成物を調製した。なお、各成分の表中の数値は質量%を表す。
[カチオン重合性有機物質A]
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート
[カチオン重合性有機物質B]
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(商品名:EP−4100、旭電化工業株式会社製)
[カチオン重合性有機物質C]
3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン
【0052】
酸トラップ性もしくはプロトントラップ性を有する官能基を導入したカチオン重合性樹脂を下記操作に従い合成し、または入手した。
[官能基含有樹脂A]
上記のカチオン重合性有機物質A100質量部に対して、両末端カルボキシル化ブタジエン−アクリロニトリル共重合体(商品名:HYCAR CTBN 1300×13、宇部興産(株)製、平均分子量:3500、ニトリル基含有量:0.509mol/100g)10質量部を仕込み、100℃で5時間反応させ、ニトリル基含有変性エポキシ樹脂を得た。これを官能基含有樹脂Aとした。
[官能基含有樹脂B]
上記のカチオン重合性有機物質A100質量部に対して、両末端カルボキシル化ブタジエン−アクリロニトリル共重合体(商品名:HYCAR CTBNX 1300×9、宇部興産(株)製、平均分子量:3500、ニトリル基含有量:0.321mol/100g)25質量部を仕込み、100℃で5時間反応させ、ニトリル基含有変性エポキシ樹脂を得た。これを官能基含有樹脂Bとした。
[官能基含有樹脂C]
上記のカチオン重合性有機物質A100質量部に対して、p−シアノ安息香酸(分子量:147.13)0.5質量部を仕込み、100℃で5時間反応させ、ニトリル基含有変性エポキシ樹脂を得た。これを官能基含有樹脂Cとした。
[官能基含有樹脂D]
上記のカチオン重合性有機物質A100質量部に対して、シアノ酢酸(分子量:85.06)0.2質量部を仕込み、100℃で5時間反応させ、ニトリル基含有変性エポキシ樹脂を得た。これを官能基含有樹脂Dとした。
[官能基含有樹脂E]
ウレタン変性エポキシ樹脂(商品名:EPU−1395、旭電化工業(株)製、ウレタン結合含有量:31.2mmol/100g)
[官能基含有樹脂F]
テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(分子量:422.5)
【0053】
[酸トラップ性もしくはプロトントラップ性を有する官能基を有する化合物(官能基含有化合物)]
アセトニトリル(分子量:41.05)
[カチオン重合開始剤]
4,4’−ビス[ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ]フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロホスフェート
[流動性調整剤]
シリカ微粉末(商品名:TS−100、デグッサ製)
【0054】
さらに、これらのカチオン重合性樹脂組成物をコーティング剤として用いて、下記に示す方法で硬化性、スリップ性、後加工性、耐アルコール性を試験した。得られた結果を表1に併せて示す。
(1)硬化性
各カチオン重合性樹脂組成物をポリエチレン基材上に厚さ約5μmで塗布し、高圧水銀灯を用いて約200mJ/cm2の紫外線を照射し、表面の状態を観察し、以下の基準で評価した。
◎:紫外線照射直後に指触タックなし
○:紫外線照射直後は指触タックあるが、1分以内で指触タック無し
△:紫外線照射後指触タック有り、1分以上10分以内で指触タックなくなる
×:紫外線照射後10分経過するも指触タックあり
(2)後加工性
上記の方法で硬化させた被膜に、油性フェルトペンにて、線幅2mmの「あ」の字を書き、そのはじき具合を観察し、以下の基準で評価した。なお、評価は硬化直後、25℃に保ち一週間後、二週間後に行った。
◎:きれいに文字が書け、インキのはじきはなかった
○:文字の一部が細るが、インキのはじきは僅かであった
△:文字の読み取りは可能だが一部欠如し、インキのはじきがあった
×:文字の読み取りが不能であり、インキのはじきが顕著であった
(3)スリップ性
上記の方法で硬化させた被膜同士を擦り合わせ、それらの滑り具合からスリップ性を以下の基準で評価した。
◎:滑らかに滑り、スリップ性良好
○:若干の抵抗があるもスリップ性あり
△:滑るがかなりの抵抗がありスリップ性なし
×:滑らず、スリップ性なし
(4)耐アルコール性
上記の方法で硬化させた被膜を80℃で1時間ポストキュアした後、99.5%エタノール含浸綿棒で10回擦り、膜の状態を観察し、以下の基準で評価した。
◎:外観異常なし
○:膜は削られないが、擦った跡が残る
△:膜が削られたが、下地は露出しない
×:膜が脱落し、下地が露出する
【0055】
【表1】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
必須の構成成分として、(1)カチオン重合性有機物質と、(2)少なくとも化学量論量のエネルギー線感受性カチオン重合開始剤と、を含有するカチオン重合性樹脂組成物であって、前記(1)カチオン重合性有機物質100gに対して、酸トラップ性もしくはプロトントラップ性を有する官能基を0.1〜20mmol含有することを特徴とするカチオン重合性樹脂組成物。
【請求項2】
前記酸トラップ性もしくはプロトントラップ性を有する官能基が、前記(1)カチオン重合性有機物質の少なくとも一部に対して導入されている請求項1記載のカチオン重合性樹脂組成物。
【請求項3】
前記酸トラップ性もしくはプロトントラップ性を有する官能基が導入される前記(1)カチオン重合性有機物質がエポキシ化合物である請求項2記載のカチオン重合性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(1)カチオン重合性有機物質の1〜50質量%がオキセタン化合物である請求項1〜3のうちいずれか一項記載のカチオン重合性樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、(3)表面調整剤、流動性調整剤および溶剤のいずれか一種以上を含有する請求項1〜4のうちいずれか一項記載のカチオン重合性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか一項記載のカチオン重合性樹脂組成物を用いたことを特徴とするコーティング剤。
【請求項7】
請求項6記載のコーティング剤を用いてコーティング層を形成した後、得られたコーティング層表面に加工を施すことを特徴とするコーティング層表面の加工方法。

【公開番号】特開2007−45899(P2007−45899A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−230531(P2005−230531)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】