説明

カッティングプロッタ

【課題】構造及び操作が比較的簡単で、容易に目的とする形状の紙製品を製作することができるカッティングプロッタを提供する。
【解決手段】カッティングプロッタは、はがき大シート2をX軸方向に搬送するX方向搬送手段と、カッティングペン6をY軸方向に移動させるY方向移動手段と、カッティングペン6をZ軸方向に移動させるZ方向移動手段とを有し、Y方向移動手段は、Y軸方向に沿って設けられたY方向バー15と、その略中央位置に回動自在に設けられたピニオン及びその駆動モータ19と、ピニオンと噛み合いY方向バー15の長手方向に沿って往復移動するラック17と、ラック17に固定されたキャリッジ7及びキャリッジ7に支持されたカッティングペン6と、を有し、Z方向移動手段は、Y方向バー15をラック17及びピニオンごと傾斜させてキャリッジ7に支持されたカッティングペン6の刃先を被切断媒体2に接触させる揺動手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カッティングフィルム等のシート状媒体を所望の形状に切断するカッティングプロッタに係り、特に、対象となるシート状媒体の大きさを特定し、部品点数を限定したカッティングプロッタに関する。
【背景技術】
【0002】
シート状媒体を所定の形状に切断するカッティングプロッタとしては、例えばシート状媒体の両端部分を駆動ローラと従動ローラとで挟持し、前記駆動ローラを正逆回転させることにより前記シート状媒体を第1の方向(例えばX軸方向)に移動させるX方向搬送手段と、前記第1の方向と直交する第2の方向(例えばY軸方向)に移動可能に設けられたキャリッジと、このキャリッジに搭載され、前記シート状媒体に対して圧接、離反するカッティングペンを前記キャリッジごと移動させるY方向移動手段とを有し、前記カッティングペンをシート状媒体に対して相対的に二次元方向に移動させるとともに、選択的に前記シート状媒体に対して圧接、離反させて、これを所望の形状に切断する被切断媒体駆動型のカッティングプロッタが知られている。
【0003】
一方、平板状のテーブルにシート状媒体を載置し、前記載置テーブルに対して第1の方向(X軸方向)に移動可能に設けられたYバーと、このYバー上を摺動することにより前記第1の方向と直交する第2の方向(Y軸方向)に移動可能に設けられたキャリッジと、このキャリッジに搭載され、前記載置テーブル上のシート状媒体に圧接、離反するカッティングペンと有し、前記Yバー及びキャリッジの移動を制御すると共に、前記カッティングペンを前記シート状媒体に対して選択的に圧接、離反させることにより、シート状媒体を所望の形状に切断するフラットベッド型のカッティングプロッタが知られている。
このようなカッティングプロッタは、例えば予め図形、図柄等が印刷(記録)されたシート状媒体を、箱体、容器等の展開図形状に切断し、最終的に箱体、容器等の立体物を作成する際、または衣服等の型紙、装飾用のステンシルもしくはマスクパターン、年賀状等のグリーティングカード、ペーパークラフト等の紙製品を作成する際に適用される。
【0004】
カッティングプロッタに関する従来技術として、例えば特許文献1には、ハーフカット用シートのアウトラインカットから不要シート部の引剥がしまでの一連の作業を自動で行うことを目的として開発された装置であって、剥離シート上にシート本体を積層したハーフカット用シートの当該シート本体に対し、切抜き対象となるキャラクタをアウトラインカットすると共に、カットしたキャラクタ部を残して他の不要シート部を前記剥離シートから引き剥がして切抜き文字を作成するカッティングプロッタであって、シート排出口に連なるシート走行路と、前記シート走行路上において前記ハーフカット用シートを正逆送りするシート送り機構と、前記シート送り機構と協働して前記キャラクタをアウトラインカットするカッティングプロッタ機構と、前記剥離シートから前記不要シート部を引き剥がすシート剥離機構と、前記シート排出口が形成されると共に、前記シート走行路、前記シート送り機構、前記カッティングプロッタ機構及び前記シート剥離機構を収容した装置ケースとを備えたカッティングプロッタが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、切断時の騒音を軽減することを目的として開発された装置であって、被切断物が載置される載置体と、前記被切断物を切断する刃部を有するカッタと、前記カッタを保持する移動手段とを備え、前記移動手段は前記刃部の高さを連続的に変化させるように構成されているカッティングプロッタであって、前記被切断物を第1方向に搬送する搬送手段を設け、前記第1方向と略直交する第2方向に前記移動手段を移動させる送り手段を設け、前記刃部を前記被切断物に挿入し前記第2方向へ移動させながら、前記被切断物を前記第1方向へ移動させることにより、前記被切断物を所定の形状に切断する構成とし、且つ移動手段は固定体と、可動体と、モータと、プーリと、ベルトとから構成され、前記可動体は前記カッタを保持し、かつ前記固定体に上下スライド可能に設けられ、前記プーリは前記モータの軸に固定され、前記ベルトの一端及び他端は各々前記可動体の一端及び他端に固定され、前記ベルトの中部は前記プーリに当接することにより駆動力を得る構成としたカッティングプロッタが開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−137596号公報
【特許文献2】特開2001−063164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術には、何れも部品点数が多く、構造が複雑で、製造コストが高価であり、また、これを使用して特定形状の紙製品を製造する際の操作が煩雑で、使用勝手が悪いという問題がある。特に、機械操作が苦手な高齢者または若年者にとって、このようなカッティングプロッタを使いこなすことは容易ではない。
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、その課題は、構造及び操作が比較的簡単で、機械操作が苦手な需要者であっても、容易に目的とする形状の紙製品を製作することができる使い勝手のよいカッティングプロッタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係るカッティングプロッタは、被切断媒体をX軸方向に搬送するX方向搬送手段と、カッティングペンを前記X軸方向と直交するY軸方向に移動させるY方向移動手段と、前記カッティングペンを前記X軸方向及びY軸方向と直交するZ軸方向に移動させるZ方向移動手段とを有し、前記カッティングペンを前記被切断媒体に対して相対的に二次元方向に移動させると共に、前記カッティングペンの刃先を選択的に前記被切断媒体に圧接、離反させて前記被切断媒体を所望の形状に切断するカッティングプロッタにおいて、前記Y方向移動手段は、前記Y軸方向に沿って設けられたY方向バーと、このY方向バーの所定位置に回動自在に設けられたピニオン及びこのピニオンを駆動する駆動モータと、前記ピニオンと噛み合い前記Y方向バーの長手方向に沿って往復移動するラックと、このラックに固定されたキャリッジ、及びキャリッジに支持された前記カッティングペンと、を有し、前記Z方向移動手段は、前記Y方向バーを前記ピニオン及びラックごと傾斜させて前記キャリッジに支持されたカッティングペンの刃先を前記被切断媒体に接触させる揺動手段を有することを特徴とする。
この場合において、前記Y方向バーの揺動手段は、前記Y方向バーの長手方向に沿って設けられた回動軸と、この回動軸とは偏芯して設けられた偏芯軸と、この偏芯軸に係合されたカム部材と、このカム部材を回転させる駆動手段と、を有するものであることが好ましい。
また、前記カッティングペンの先端部に、刃先調整用キャップを嵌合させることもできる。
【0009】
更に、前記被切断媒体が載置される載置テーブルに、前記被切断媒体の先端部を位置決めする出没自在のリブを設け、このリブの前記載置テーブルからの出没動作と、前記X方向搬送手段とを連動させ、前記リブを前記載置テーブルから突出させると共に、前記X方向搬送手段における前記被切断媒体の挟持状態を開放する前記被切断媒体の位置決め状態と、前記リブを前記載置テーブルに埋没させ、前記X方向搬送手段によって前記被切断媒体を挟持する切断開始待機状態とを切り替えるレバー部材を設けることが好ましい。
更にまた、前記X方向搬送手段を構成する駆動ローラ及び従動ローラの少なくとも一方の表面に、すべり防止材が貼着されたものとすることもできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のカッティングプロッタによれば、部品点数が少なく、操作が簡単で、機械操作が苦手な需要者であっても十分に使いこなすことができ、目的とする特定形状にカッティングされた紙製品を容易に作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るカッティングプロッタであって、はがき大シートを任意の形状に切断する定型シート専用の被切断媒体駆動型カッティングプロッタの概略構成を示す模式図である。
図1において、このカッティングプロッタは、プロッタ本体1と、このプロッタ本体1に設けられたX方向搬送手段、Y方向移動手段及びZ方向移動手段とから主として構成されている。
プロッタ本体1には、被切断媒体(以下、はがき大シートともいう)2を載置する載置テーブル3が設けられており、この載置テーブル3には、はがき大シート2の左右両端部をそれぞれ支持して位置決めする一対の固定リブ4と、はがき大シート2の先端部を支持して位置決めする例えば一対(一方は、図示省略されている)の可動リブ5とが設けられている。
【0012】
図1において、X方向搬送手段は、はがき大シート2の、例えば両側部を挟持して、そのセット方向(図1中、矢印A方向)であるX軸方向又はその逆方向(以下、単にX軸に沿った方向という)に搬送する搬送ローラとしての駆動ローラ8及びピンチローラ(以下、従動ローラという)9とから主として構成されている。駆動ローラ8は、載置テーブル3の表面に一部が露出するように埋設されており、この駆動ローラ8と、その上部に当接するように配置された従動ローラ9とは、載置テーブル3のはがき大シート2の挿入端近傍にY軸方向に沿って配置されている。
従動ローラ9の軸受けには、図示省略したバネ部材が連結されており、従動ローラ9は、バネ部材によって下方の駆動ローラ8に向かって付勢されている。従動ローラ9には、その長さ方向に沿って所定間隔を隔てて弾性部材からなるシート押さえロール9bが設けられている。駆動ローラ8は、その両端部が軸受けによって支持されており、ローラ表面は、すべり防止部材としての、例えばサンドペーパ(図示省略)が部分的または全面に貼着されている。駆動ローラ8は、例えば軸受け、歯車を介して連結された駆動モータ13の回転によって回動する。このような構成のX方向搬送手段は、駆動ローラ8と従動ローラ9とではがき大シート2を挟持し、駆動モータ13の回転に伴って駆動ローラ8を正逆回転させてはがき大シート2をX軸方向に沿った方向に前進又は後退移動させる。
【0013】
Y方向移動手段は、カッティングペン6及びこのカッティングペン6を搭載するキャリッジ7をX軸方向と直交するY軸方向に移動させるものであり、プロッタ本体1の載置テーブル3上に、Y軸方向に沿って配置されたY方向バー15と、このY方向バー15の長さ方向の略中央に設けられたピニオン18(図中、後述するラック17に隠れている。)及びこのピニオン18を駆動する駆動モータ19と、ピニオン18と噛み合うラック17とから主として構成されている。ラック17は、駆動モータ19及びピニオン18の回動によってY方向バー15の長さ方向に沿って往復移動する。ラック17には、カッティングペン6を支持するキャリッジ7が固着されており、ラック17の移動に伴ってキャリッジ7及びこれに支持されたカッティングペン6がY軸に沿った方向に往復移動する。
【0014】
カッティングペン6のY軸に沿った方向への移動と、上述したはがき大シート2のX軸に沿った方向への移動との相互作用によってカッティングペン6は、はがき大シート2に対して相対的に二次元方向に移動する。
Z方向移動手段は、Y方向バー15を、キャリッジ7ごと、例えば、はがき大シート2をプロッタ本体1の載置テーブル3にセットする際の差し込み端側(図1中、左下方向)に傾斜させてキャリッジ7に搭載されたカッティングペン6の刃先をはがき大シート2に接触させる揺動手段を備えている。
【0015】
図2は、Z方向移動手段としてのY方向バーの揺動手段を示す部分拡大図である。Y方向バーの揺動手段は、Y方向バー15をキャリッジ7及びこれに搭載されたカッティングペン6(図1参照)ごと傾斜させ、これによってカッティングペン6を、Z軸方向に移動させ、その刃先を被切断媒体2に接触させるものである。
図2において、Y方向バー揺動手段は、Y方向バー15の長手方向に沿って設けられた回転軸21と、この回転軸21とは所定間隔だけ偏芯して設けられた偏芯軸22とを有している。偏芯軸22には、カム部材23が係合されており、カム部材23を回動させる駆動モータ24がカム部材23に隣接するように、例えばプロッタ本体1の側面に設けられている(図1参照)。なお、カム部材23は、例えば偏芯幅が角度90度ごと変化するものであるが、これに限定されず、180度ごと変化するもの、又はそれ以外の角度ごと変化するものであってもよい。
駆動モータ24を駆動させ、カム部材23を回動することによって、カム部材23の回転中心軸23aと偏芯軸22との間の間隔が変動し、この間隔の変動に伴って偏芯軸22が図2中下方に移動したとき、Y方向バー15がキャリッジ7を伴って中心軸21を中心として図1中、例えばはがき大シート2の差し込み端側(左下方向)に傾斜し、キャリッジ7に搭載されたカッティングペン6の刃先がはがき大シート2に当接する。
【0016】
カッティングペン6の先端部には、例えば刃先調整キャップ(図示省略)が嵌合されている。刃先調整キャップは、例えば、カッティングペン6の先端部に着脱可能に構成され、その最先端部には、カッティングペン6の刃先部が突出する貫通孔が設けられている。刃先調整キャップの構成材料は、例えばポリアセタール樹脂(polyoxymethylene:POM)であり、例えば図のZ軸方向の長さが順次異なる複数のキャップ部材が備えられている。キャップ部材のZ軸方向の長さが順次異なる複数の刃先調整キャップを使い分けることによって、貫通孔から突出する刃先の長さを調整することができる。即ち、刃先調整キャップを任意に選択することによって、刃出量を、例えば0.1mm、0.2mm、0.3mm……に段階的に変化させることができ、被切断部材の材質、切断条件等に従って刃先調整キャップを選択して刃出量が決定される。
図1のプロッタ本体1には、その側面近傍に、はがき大シート2の位置決めを行う位置決め状態と、位置決めされたはがき大シート2の切断を開始する切断開始待機状態とを切り替える操作レバー10が設けられている。
【0017】
図3〜図5は、はがき大シートの位置決め状態と切断開始待機状態とを切り替える切り替え手段を示す説明図であり、図3は、プロッタ本体1のX軸方向に沿った縦断面図、図4は、プロッタ本体1の裏面図であって、リブ部材の説明図、図5は、図3のカム部材を示す斜視図である。
図3において、被切断媒体としてのはがき大シート2の位置決め状態と切断開始待機状態とを切り替える切り替え手段は、プロッタ本体1の載置テーブル3の下方に揺動自在に配置されたリブ部材31と、搬送手段としての駆動ローラ8及び従動ローラ9を当接又は離間させるカム部材32と、このカム部材32を操作する操作レバー33(10)とから主として構成されている。
リブ部材31は、略正方形の枠状体を呈しており(図4参照)、枢軸34によって揺動自在に支持されている。リブ部材31の図3中、カム部材32側の端部31bの近傍には、バネ部材35が配置されており、リブ部材31の端部31bは、バネ部材35によって下方に付勢されている。
【0018】
カム部材32は、図5に斜視図として示したように、細長の箱型形状を呈しており、その長さ方向両端部に設けられたカム部32aと、カム部32aを相互に連結する胴部32bと、この胴部32bの一辺中央部に設けられた切欠部32cとから主として構成されている。カム部材32は、図3に示されるように、カム部32aに設けられた貫通孔32dを駆動ローラ8の回転軸に貫通させることによってプロッタ本体1に組み込まれている。
カム部32aは、大径部32eと小径部32fとを有しており、カム部材32から延設された操作レバー33(10)を操作することによって、例えば大径部32eを従動ローラ9の回転軸に当接して駆動ローラ8と従動ローラ9とを離間させる。一方、小径部32fを従動ローラの回転軸に当接させるか、又は従動ローラと離間させて駆動ローラ8と従動ローラ9とを当接させる。
カム部材32の胴部32bに設けられた切欠部32cは、上述したリブ部材31のカム部材側端部31bと係合及び離脱可能に形成されており、カム部材32に設けられたレバー部材33(10)を操作することによって、リブ部材31の一端31bと係合してこれをバネ部材35の付勢方向とは逆方向に押し上げ、これによって、リブ部材31の他方端の可動リブ31a(5)を載置テーブル3に埋没させ、また、リブ部材31の一端31bとの係合を解いてこれをバネ部材35による付勢力に従って付勢方向(図3中、下方)に移動させ、これによって、リブ部材31の他方端の可動リブ31a(5)を載置テーブル3から突出させる。
【0019】
本実施形態に係るカッティングプロッタには、図示省略した制御手段が設けられている。制御手段は、切断すべき形状のカットデータに基づいて、駆動ローラ8を駆動制御し、従動ローラ9を駆動ローラ8に従動させてはがき大シート2を図1のX軸に沿った方向に移動させるとともに、カッティングペン6をY軸に沿った方向に移動させ、これによって、カッティングペン6の刃先をはがき大シート2に対して相対的に二次元方向に移動させ、選択的に圧接、離反させることにより、これを所望の形状に切断するよう各系統を制御する。
【0020】
図6は、本実施形態における制御系統を示す機能ブロック図である。図6において、この制御系統は、コンピュータ等の上位装置46から送信されるカットデータ又はROM45に蓄積された記録データに基づいてカッティングペン6による切断データを作成する制御装置40と、この制御装置40から送信される切断データに基づいてX軸駆動制御手段42、Y軸駆動制御手段43およびZ軸駆動制御手段44を各々駆動制御する駆動制御装置41から主として構成されている。
X軸駆動制御手段42は、駆動ローラ8を正逆方向に回転駆動する駆動モータ13を制御する。Y軸駆動制御手段43は、カッティングペン6をY方向バー15に沿って移動させるピニオン18の駆動モータ19を制御する。Z軸駆動制御手段44は、カム部材23を回動させる駆動モータ24を制御する。
【0021】
図7は、プリンタ等により予めキャラクタの図柄が印刷されたはがき大シートを示す説明図である。図7において、はがき大シート50には、キャラクタの図柄51が印刷されている。
以下、本実施形態のカッティングプロッタを用いてはがき大シート50をキャラクタの図柄51の外径に沿って切断する方法について説明する。
はがき大シート50を図柄51の外形に沿って切断する際、先ず、はがき大シート50を、カッティングプロッタ本体1の載置テーブル3の所定位置にセットする。即ち、図3において、図示省略された操作レバー33(10)(図1又は図5参照)を、シート出口側である図3中右側に倒し、これによって、リブ部材31の一端31bとカム部材32の切欠部32cとの係合状態を開放し、リブ部材31の一端31bをバネ部材35の付勢力に従って下降させ、リブ部材31の他方端に設けられた可動リブ31a(5)を載置テーブル3から突出させる。このとき、操作レバーの図3中右方向への回動に伴ってカム部32aの従動ローラ9との当接部が小径部32fから大径部32eに移り、駆動ローラ8と従動ローラ9とが離間してはがき大シート2の位置決め状態となる。
【0022】
次に、この位置決め状態で、はがき大シート2を、載置テーブル3に設けられた固定リブ4相互間であって、且つ駆動ローラ8と従動ローラ9との間にセットし、X軸方向に沿って挿入してその先端部を可動リブ31a(5)に当接させ、位置決めする。
このようにして被切断シートであるはがき大シート2の左右両端部及び先端部の位置決めをした後、図示省略された操作レバー33(10)(図1又は図5参照)を、図3中左方向に倒し、リブ部材31の一端31bとカム部材32の切欠部32cとを係合させてリブ部材31の一端31bをバネ部材35の付勢力に逆らって図3中上方に移動させ、これによってリブ部材31の他端の可動リブ31a(5)を載置テーブル3に埋没させる。このとき、カム部材32のカム部32aの従動ローラ9との当接部が大径部32eから小径部32fに移り、従動ローラ9がはがき大シート2を介して駆動ローラ8に押圧され、はがき大シート2を搬送可能に挟持する切断開始待機状態になる。
【0023】
本実施形態装置は、被切断シートの大きさを規定した、はがき大シート専用機であるために、載置テーブル3に設けられた一対の固定リブ4及び可動リブ31a(5)は、カッティングペン6がはがき大シート2に対して相対的に移動する二次元平面におけるX座標軸及びY座標軸と合致するように構成されている。従って、上述のようにして被切断シート2を位置決することによって、はがき大シート2を、カッティングペン6が移動する二次元平面のX座標軸及びY座標軸に合致させることができる。
はがき大シート2の位置決めが完了した後、従来装置であれば、カッティングペン6を動作原点に復帰させる、いわゆる初期動作が必要になるが、本実施形態装置は、定型のはがき大シート専用機であるために、上述のように、初期動作は不要である。
従って、切断開始待機状態とした後、プロッタ本体1の起動ボタン押して切断動作を開始する。起動ボタンを押すと、図6の制御装置40において、所定の情報が記録されたROM45からの記録データを参照しつつ、コンピュータ等の上位装置46から送信されるカットデータに基づいてカッティングペン6による切断データが作成される。
【0024】
制御装置40で作成された切断データは、制御装置40から駆動制御装置41に送られ、駆動制御装置41によって、X軸駆動制御手段42としての駆動ローラ8に対して制御信号が発信され、駆動ローラ8は、従動ローラ9との間ではがき大シート2を挟持してこれをX軸に沿った方向に移動する。また、制御装置40で作成された切断データは、駆動制御装置41からY軸駆動制御手段43としての駆動モータ19によってピニオン18(図示省略)を回動し、この回動によってラック17、即ちカッティングペン6を搭載するキャリッジ7がラック17ごとY軸に沿って往復移動する。このカッティングペン6のY軸に沿った方向への往復移動と、上述したはがき大シート2のX軸に沿った方向への移動との相互作用によってカッティングペン6ははがき大シート2に対して相対的に二次元方向に移動する。このとき、制御装置40で作成された切断データは、駆動制御装置41からZ軸駆動制御手段44としてのカム部材23を回転駆動する駆動モータ24にも送られ、駆動モータ24を回動させてY方向バー15をキャリッジ7及びこれに搭載されたカッティングペン6ごと揺動させてカッティングペン6の刃先をはがき大シート2に当接させる。なお、カッティングペン6の刃先突出量は、予め、カッティング条件に従って選択され、カッティングペン6の先端部に装着される刃先調整キャップによって、例えば0.1mmに調整される。
このような、はがき大シート2のX軸に沿った方向への移動、カッティングペン6のY軸に沿った方向への移動、及びカッティングペン6の刃先のZ方向への移動によって、カッティングペン6が所定の押圧力及び刃先幅で、相対的にはがき大シート2上を、図7の、例えばA→B→C→D→E→F→G→H→I→J→K→Aの順に移動してキャラクタ51の図柄を切り出す。
このとき、図示省略したシート押さえ部材によって、はがき大シート2の反り上がりが防止されるので、切り口と図柄51の外形線とが一致し、良好なカット製品が切り出される。
【0025】
本実施形態によれば、Y方向移動手段をY方向バー15の長さ方向略中央部に設けられたピニオン18(図示省略)とこれに噛み合うラック17とを有するものとし、Z方向移動手段をY方向バー15の回動軸21と、偏芯軸22と、この偏芯軸22と係合するカム部材23と、このカム部材23を回動させる駆動モータ24とで構成したことにより、従来技術に比べて、部品点数が少なく、操作が簡単になる。従って、機械操作が苦手な需要者であっても十分に使いこなすことができ、所望の特定形状にカッティングされた紙製品を容易に作成することができる。
また、本実施形態によれば、カッティングペン6による切断深さを調整するための刃出量調整手段として、カッティングペン6の先端部に装着されるZ軸方向長さが順次異なる複数の刃先調整キャップを採用したことにより、従来技術における、例えばアクチュエータ等が不要となる。
【0026】
更に、本実施形態によれば、Y方向バー15に、その長さ方向略中央部に配置されたピニオン18[図示省略]と、これを回転駆動する駆動モータ19を設けたことにより、高価なタイミングベルト、リード線等が不要となり、製作コストの面でも有利である。
更にまた、本実施形態によれば、特定の大きさのシート、例えばはがき大シート専用機としたことにより、基準マーク読取センサ及びカッティングペン6を被切断シートの動作原点に復帰させる初期動作が不要となり、操作が簡単で、使い勝手が向上する。
なお、本実施形態は、はがき大シート専用機として説明したが、本発明は、これに限定するものではなく、B5版、A4版等の専用機とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係るカッティングプロッタの概略構成を示す模式図である。
【図2】Z方向移動手段としてのY方向バー揺動手段の要部を示す部分拡大図である。
【図3】図1のX軸方向に沿った断面図である。
【図4】図1の裏面図であって、リブ部材を示す説明図である。
【図5】図4のカム部材を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施形態における制御系統を示す機能ブロック図である。
【図7】被切断媒体を示す説明図である。
【符号の説明】
【0028】
1 プロッタ本体
2 被切断媒体(はがき大シート)
3 載置テーブル
4 固定リブ
5 可動リブ
6 カッティングペン
7 キャリッジ
8 駆動ローラ
9 従動ローラ(ピンチローラ)
9b シート押さえロール
10 操作レバー
13 駆動モータ
15 Y方向バー
17 ラック
18 ピニオン
19 駆動モータ
21 回転軸
22 偏芯軸
23 カム部材
23a 中心軸
24 駆動モータ
31 リブ部材
31a 可動リブ
31b リブ部材のカム部材側端部
32 カム部材
32a カム部
32b 胴部
32c 切欠部
32d 貫通孔
32e 大径部
32f 小径部
33 操作レバー
34 枢軸
35 バネ部材
40 制御装置
41 駆動制御装置
42 X軸駆動制御手段
43 Y軸駆動制御手段
44 Z軸駆動制御手段
45 ROM
46 上位装置(コンピュータ)
50 はがき大シート
51 キャラクタの図柄




【特許請求の範囲】
【請求項1】
被切断媒体をX軸方向に搬送するX方向搬送手段と、
カッティングペンを前記X軸方向と直交するY軸方向に移動させるY方向移動手段と、
前記カッティングペンを前記X軸方向及びY軸方向と直交するZ軸方向に移動させるZ方向移動手段とを有し、
前記カッティングペンを前記被切断媒体に対して相対的に二次元方向に移動させると共に、前記カッティングペンの刃先を選択的に前記被切断媒体に圧接、離反させて前記被切断媒体を所望の形状に切断するカッティングプロッタにおいて、
前記Y方向移動手段は、
前記Y軸方向に沿って設けられたY方向バーと、
このY方向バーの所定位置に回動自在に設けられたピニオン及びこのピニオンを駆動する駆動モータと、
前記ピニオンと噛み合い前記Y方向バーの長手方向に沿って往復移動するラックと、
このラックに固定されたキャリッジ、及びキャリッジに支持された前記カッティングペンと、を有し、
前記Z方向移動手段は、
前記Y方向バーを前記ピニオン及びラックごと傾斜させて前記キャリッジに支持された前記カッティングペンの刃先を前記被切断媒体に接触させる揺動手段を有することを特徴とするカッティングプロッタ。
【請求項2】
前記Y方向バーの揺動手段は、
前記Y方向バーの長手方向に沿って設けられた回動軸と、
この回動軸とは偏芯して設けられた偏芯軸と、
この偏芯軸に係合されたカム部材と、
このカム部材を回転させる駆動手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載のカッティングプロッタ。
【請求項3】
前記カッティングペンの先端部に、刃先調整用キャップが嵌合されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載のカッティングプロッタ。
【請求項4】
前記被切断媒体が載置される載置テーブルに、前記被切断媒体の先端部を位置決めする出没自在のリブを設け、
このリブの前記載置テーブルからの出没動作と、前記X方向搬送手段とを連動させ、
前記リブを前記載置テーブルから突出させると共に、前記X方向搬送手段における前記被切断媒体の挟持状態を開放する前記被切断媒体の位置決め状態と、前記リブを前記載置テーブルに埋没させ、前記X方向搬送手段によって前記被切断媒体を挟持する切断開始待機状態とを切り替えるレバー部材を設けた
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のカッティングプロッタ。
【請求項5】
前記X方向搬送手段を構成する駆動ローラ及び従動ローラの少なくとも一方の表面に、すべり防止材が貼着されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のカッティングプロッタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−105139(P2008−105139A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290832(P2006−290832)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(000105062)グラフテック株式会社 (31)
【Fターム(参考)】