説明

カッティングプロッタ

【課題】構造及び操作が比較的簡単で、容易に目的とする形状の紙製品を製作することができるカッティングプロッタを提供する。
【解決手段】はがき大シートをX軸方向に搬送するX方向搬送手段と、カッティングペン20をY軸方向に移動させるY方向移動手段と、カッティングペン20をZ軸方向に移動させるZ方向移動手段とを有し、Y方向移動手段は、Y方向バー15と、Y方向バー15の長手方向に沿って設けられたラック17と、ラック17上を移動するカッティングペン20を支持するキャリッジ16と、キャリッジ16に設けられたピニオン18及びピニオン18を回転させる駆動モータ19を有し、Z方向移動手段は、Y方向バー15をラック17及びピニオン18ごと傾斜させてキャリッジ16に支持されたカッティングペン20の刃先をはがき大シートに接触させる揺動手段を有するカッティングプロッタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カッティングフィルム等のシート状媒体を所望の形状に切断するカッティングプロッタに係り、特に、対象となるシート状媒体の大きさを特定し、部品点数を限定したカッティングプロッタに関する。
【背景技術】
【0002】
シート状媒体を所定の形状に切断するカッティングプロッタとしては、例えばシート状媒体の両端部分を駆動ローラと従動ローラとで挟持し、前記駆動ローラを正逆回転させることにより前記シート状媒体を第1の方向(例えばX軸方向)に移動させるX方向搬送手段と、前記第1の方向と直交する第2の方向(例えばY軸方向)に移動可能に設けられたキャリッジ及びこのキャリッジに搭載され、前記シート状媒体に対して圧接、離反するカッティングペンを前記キャリッジごと移動させるY方向移動手段とを有し、前記カッティングペンをシート状媒体に対して相対的に二次元方向に移動させるとともに、選択的に前記シート状媒体に対して圧接、離反させて、これを所望の形状に切断する被切断媒体駆動型のカッティングプロッタが知られている。
【0003】
一方、平板状のテーブルにシート状媒体を載置し、前記載置テーブルに対して第1の方向(X軸方向)に移動可能に設けられたYバーと、このYバー上を摺動することにより前記第1の方向と直交する第2の方向(Y軸方向)に移動可能に設けられたキャリッジと、このキャリッジに搭載され、前記載置テーブル上のシート状媒体に圧接、離反するカッティングペンと有し、前記Yバー及びキャリッジの移動を制御すると共に、前記カッティングペンを前記シート状媒体に対して選択的に圧接、離反させることにより、シート状媒体を所望の形状に切断するフラットベッド型のカッティングプロッタが知られている。
このようなカッティングプロッタは、例えば予め図形、図柄等が印刷(記録)されたシート状媒体を、箱体、容器等の展開図形状に切断し、最終的に箱体、容器等の立体物を作成する際、または衣服等の型紙、装飾用のステンシルもしくはマスクパターン、年賀状等のグリーティングカード、ペーパークラフト等の紙製品を作成する際に適用される。
【0004】
カッティングプロッタに関する従来技術として、例えば特許文献1には、ハーフカット用シートのアウトラインカットから不要シート部の引剥がしまでの一連の作業を自動で行うことを目的として開発された装置であって、剥離シート上にシート本体を積層したハーフカット用シートの当該シート本体に対し、切抜き対象となるキャラクタをアウトラインカットすると共に、カットしたキャラクタ部を残して他の不要シート部を前記剥離シートから引き剥がして切抜き文字を作成するカッティングプロッタであって、シート排出口に連なるシート走行路と、前記シート走行路上において前記ハーフカット用シートを正逆送りするシート送り機構と、前記シート送り機構と協働して前記キャラクタをアウトラインカットするカッティングプロッタ機構と、前記剥離シートから前記不要シート部を引き剥がすシート剥離機構と、前記シート排出口が形成されると共に、前記シート走行路、前記シート送り機構、前記カッティングプロッタ機構及び前記シート剥離機構を収容した装置ケースとを備えたカッティングプロッタが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、切断時の騒音を軽減することを目的として開発された装置であって、被切断物が載置される載置体と、前記被切断物を切断する刃部を有するカッタと、前記カッタを保持する移動手段とを備え、前記移動手段は前記刃部の高さを連続的に変化させるように構成されているカッティングプロッタであって、前記被切断物を第1方向に搬送する搬送手段を設け、前記第1方向と略直交する第2方向に前記移動手段を移動させる送り手段を設け、前記刃部を前記被切断物に挿入し前記第2方向へ移動させながら、前記被切断物を前記第1方向へ移動させることにより、前記被切断物を所定の形状に切断する構成とし、且つ移動手段は固定体と、可動体と、モータと、プーリと、ベルトとから構成され、前記可動体は前記カッタを保持し、かつ前記固定体に上下スライド可能に設けられ、前記プーリは前記モータの軸に固定され、前記ベルトの一端及び他端は各々前記可動体の一端及び他端に固定され、前記ベルトの中部は前記プーリに当接することにより駆動力を得る構成としたカッティングプロッタが開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−137596号公報
【特許文献2】特開2001−063164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術には、何れも部品点数が多く、構造が複雑で、製造コストが高価であり、また、これを使用して特定形状の紙製品を製造する際の操作が煩雑で、使用勝手が悪いという問題がある。特に、機械操作が苦手な高齢者または若年者にとって、このようなカッティングプロッタを使いこなすことは容易ではない。
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、その課題は、構造及び操作が比較的簡単で、機械操作が苦手な需要者であっても、容易に目的とする形状の紙製品を製作することができる使い勝手のよいカッティングプロッタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係るカッティングプロッタは、被切断媒体をX軸方向に搬送するX方向搬送手段と、カッティングペンを前記X軸方向と直交するY軸方向に移動させるY方向移動手段と、前記カッティングペンを前記X軸方向及びY軸方向と直交するZ軸方向に移動させるZ方向移動手段とを有し、前記カッティングペンを前記被切断媒体に対して相対的に二次元方向に移動させると共に、前記カッティングペンの刃先を選択的に前記被切断媒体に圧接、離反させて前記被切断媒体を所望の形状に切断するカッティングプロッタにおいて、前記Y方向移動手段は、前記Y軸方向に沿って設けられたY方向バーと、このY方向バーの長手方向に沿って設けられたラックと、このラック上を移動する前記カッティングペンを支持するキャリッジと、このキャリッジに設けられた前記ラックと噛み合うピニオン及びこのピニオンを回転させる駆動手段とを有し、前記Z方向移動手段は、前記Y方向バーを前記ラック及びピニオンごと傾斜させて前記キャリッジに支持されたカッティングペンの刃先を前記被切断媒体に接触させる揺動手段を有することを特徴とする。
【0009】
この場合において、前記Y方向バーの揺動手段は、前記Y方向バーの長手方向に沿って設けられた回動軸と、この回動軸とは偏芯して設けられた偏芯軸と、この偏芯軸に係合された第1のカム部材と、この第1のカム部材を回転させる駆動手段と、を有するものとすることができる。
また、前記Z方向移動手段は、前記カッティングペンの刃先を前記被切断媒体へ押圧する押圧力の調整手段を有し、このカッティングペン押圧力調整手段は、カッティングプロッタの本体フレームに支持された第2のカム部材と、この第2のカム部材と前記Y方向バーとの間に挟持されたバネ部材とを有し、前記第2のカム部材の回動によって前記バネ部材における前記Y方向バーを介して前記キャリッジに支持されたカッティングペンの刃先を前記被切断媒体に押圧する圧力を変化させるものとすることができる。
【0010】
更に、前記第2のカム部材は、前記刃先の前記被切断媒体に対する押圧力を3〜5段階に変化させるものとすることができる。
更にまた、前記第2のカム部材は、手動操作されるものであってもよい。
更にまた、前記Y方向バーに、このY方向バーを傾斜させて前記カッティングペンの刃先を前記被切断媒体に接触させた際、前記被切断媒体に近接してその反り上がりを防止するシート押さえ部材を設けることもできる。この場合において、前記シート押さえ部材は、湾曲した先端部を有する部材であることが好ましい。また、前記シート押さえ部材は、湾曲した先端部を有する櫛歯状の部材であってもよい。
この場合において、前記X方向搬送手段を構成する駆動ローラ及び従動ローラの少なくとも一方の表面に、すべり防止材が貼着されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のカッティングプロッタによれば、部品点数が少なく、操作が簡単で、機械操作が苦手な需要者であっても十分に使いこなすことができ、目的とする特定形状にカッティングされた紙製品を容易に作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るカッティングプロッタであって、はがき大シートを任意の形状に切断する定型シート専用の被切断媒体駆動型カッティングプロッタの概略構成を示す模式図である。
図1において、このカッティングプロッタは、プロッタ本体1と、このプロッタ本体1に設けられたX方向搬送手段、Y方向移動手段及びZ方向移動手段とから主として構成されている。
即ち、プロッタ本体1には、被切断媒体(以下、はがき大シートともいう)2を載置する載置テーブル3が設けられており、この載置テーブル3には、はがき大シート2の左右両端部をそれぞれ支持して位置決めする一対の固定リブ4と、はがき大シート2の先端部を位置決めするためのガイドライン5とが設けられている。
【0013】
X方向搬送手段は、はがき大シート2の、例えば両側部を挟持して、そのセット方向(図1中、矢印A方向)であるX軸方向又はその逆方向(以下、X軸に沿った方向という)に搬送する搬送ローラとしての駆動ローラ8及びピンチローラ(以下、従動ローラという)9とから主として構成されている。Y方向移動手段は、カッティングペン6及びこのカッティングペン6を搭載するキャリッジ7をX軸方向と直交するY軸方向に移動させるものであり、Y方向バー15と、Y方向バー15の長手方向に沿って設けられたラック17及びこのラック17と噛み合う図示省略したピニオンとから主として構成されている。Z方向移動手段は、カッティングペン6をキャリッジ7ごとX軸方向及びY軸方向と直交するZ軸方向に移動させるものであり、後述する図2において詳細に説明する。
【0014】
図2は、図1の分解組み立て図である。
図2において、X方向搬送手段としての搬送ローラは、載置テーブル3の表面に一部が露出するように埋設された駆動ローラ8と、この駆動ローラ8の上部に当接するように配置された従動ローラ9とから主として構成されており、載置テーブル3のはがき大シート2の挿入端近傍にY軸方向に沿って配置されている。
従動ローラ9の軸受け9aには、バネ部材14が連結されており、従動ローラ9は、バネ部材14によって下方の駆動ローラ8に向かって付勢されている。従動ローラ9には、その長さ方向に沿って所定間隔を隔てて弾性部材からなるシート押さえロール9bが設けられている。駆動ローラ8は、その両端部が軸受け8aによって支持されており、ローラ表面は、すべり防止部材としての、例えばサンドペーパ11が貼着されている。駆動ローラ8は、軸受け8a、歯車12を介して連結された駆動モータ13の回転によって回動する。
このような構成のX方向搬送手段は、駆動ローラ8と従動ローラ9とではがき大シート2を挟持し、駆動モータ13の回転に伴って駆動ローラ8を正逆回転させてはがき大シート2をX軸に沿った方向に前進又は後退移動させる。
【0015】
Y方向移動手段は、プロッタ本体1の載置テーブル3上に、Y軸方向に沿って架設されたY方向バー15と、このY方向バー15の長手方向に沿って設けられたラック17と、このラック17に噛み合うピニオン18とから主として構成されている。ピニオン18は、Y方向バー17上をその長手方向に沿って移動するキャリッジ16に回動自在に設けられている。また、キャリッジ16には、ピニオン18を回転駆動する駆動モータ19が搭載されている。ピニオン18は、駆動モータ19によって回動し、このピニオン18の回動に伴って、キャリッジ16がY方向バー15の長手方向に沿って往復移動する。このときキャリッジ16は、Y方向バー15と平行に設けられた支持バー28によって支持され、支持バー28に沿って移動する。キャリッジ16には、カッティングペン20が搭載されており、キャリッジ16の往復移動に伴ってカッティングペン20がY軸に沿った方向に往復移動する。
カッティングペン20のY軸に沿った方向への移動と、上述した被切断シートとしてのはがき大シート2のX軸に沿った方向への移動との相互作用によってカッティングペン20がはがき大シート2に対して相対的に二次元方向に移動する。
【0016】
Z方向移動手段は、Y方向バー15を、キャリッジ16ごと、例えば、はがき大シート2をプロッタ本体1の載置テーブル3にセットする際の差し込み端側に傾斜させてキャリッジ16に搭載されたカッティングペン20の刃先をはがき大シート2に接触させる揺動手段を備えている。
Y方向バーの揺動手段は、Y方向バー15の長手方向に沿って設けられた回転軸21と、この回転軸21とは所定間隔だけ偏芯して設けられた偏芯軸22とを有している。偏芯軸22には、第1のカム部材23が係合されており、第1カム部材23を回動させる駆動モータ24が第1のカム部材23に隣接するように、例えばプロッタ本体1の側面に固定されている。なお、第1カム部材23は、例えば偏芯幅が角度90度ごと変化するものであるが、これに限定されず、180度ごと変化するもの、又はそれ以外の角度ごと変化するものであってもよい。
駆動モータ24を駆動させ、第1カム部材23を回動することによって、第1カム部材23の回転中心軸23aと偏芯軸22との間の間隔が変動し、この間隔の変動に伴って偏芯軸22が図2中下方に移動したとき、Y方向バー15がキャリッジ16を伴って中心軸21を中心として図1中、はがき大シート2の差し込み端側に傾斜し、キャリッジ16に搭載されたカッティングペン20の刃先がはがき大シート2に当接する。このようにして、カッティングペン20の刃先をはがき大シート2に当接させ、上述したように、これを相対的に二次元方向に移動させることによって、はがき大シート2が任意の形状に切断される。
【0017】
Z方向移動手段は、また、カッティングペン20の刃先のはがき大シート2に対する押圧力調整手段を備えている。
刃先の押圧力調整手段は、第2のカム部材25と、この第2のカム部材25とY方向バー15との間に挟持されたバネ部材26とから主として構成されている。第2のカム部材25と、バネ部材26とは、図示省略したプロッタ本体1のカバー部材の裏側に動作可能に支持されている。第2のカム部材25のツマミ部分は、例えばカバー部材から突出するように設けられており、需要者は手動で第2のカム部材25を回動操作することができる。即ち、需要者が第2のカム部材25のツマミを回すことにより、バネ部材26の支持板26aに当接するカム部材25の周端部と回転中心軸との幅が、例えば5段階に変化し、この変化に基づいて第2カム部材25がバネ部材26に固定された支持板26aを押圧する押圧力が変化し、この押圧力の変化に伴って、Y方向バー15にキャリッジ16を介して搭載されたカッティングペン20の刃先がはがき大シート2を押圧する力が変化する。このようにして刃先の押圧力を調整することによって、例えば切断深さが調整される。なお、バネ部材26として、例えばトーションバネが用いられるが、これに限定されるものではなく、同様の作用効果が得られれば、別のバネ部材を適用してもよい。
【0018】
Y方向バー15に設けられたラック17の下部には、切断操作中に被切断媒体が持ち上がるのを防止するシート押さえ部材27が設けられている。シート押さえ部材27は、例えば湾曲した先端部を有する櫛歯状の部材からなる。シート押さえ部材27の下端部とはがき大シート2とは常時非接触状態にあり、その間には、例えば3mmの隙間が確保されている。従って、切断動作中に何らかの力が作用してはがき大シート2に反りが発生し、載置テーブル3から浮き上がった場合、はがき大シート2はシート押さえ部材27によって下方に押さえ付けられる。これによって、切断データに基づいた忠実な切断操作が行われる。
【0019】
本実施形態に係るカッティングプロッタには、図示省略した制御手段が設けられている。制御手段は、切断すべき形状のカットデータに基づいて、駆動ローラ8を駆動制御し、従動ローラ9を駆動ローラ8に従動させてはがき大シート2を図1のX軸に沿った方向に移動させるとともに、カッティングペン20をY軸に沿った方向に移動させ、これによって、カッティングペン20の刃先をはがき大シート2に対して相対的に二次元方向に移動させ、更に、カッティングペン20の刃先を押圧力調整手段によって選択的にはがき大シート2に圧接、離反させることにより、これを所望の形状に切断するよう各系統を制御する。
【0020】
図3は、本実施形態における制御系統を示す機能ブロック図である。図3において、この制御系統は、コンピュータ等の上位装置46から送信されるカットデータ又はROM45に蓄積された記録データに基づいてカッティングペン20による切断データを作成する制御装置40と、この制御装置40から送信される切断データに基づいてX軸駆動制御手段42、Y軸駆動制御手段43およびZ軸駆動制御手段44を各々駆動制御する駆動制御装置41から主として構成されている。
X軸駆動制御手段42は、駆動ローラ8を正逆方向に回転駆動する駆動モータ13を制御する。Y軸駆動制御手段43は、カッティングペン20をY方向バー15に沿って移動させるピニオン18の駆動モータ19を制御する。Z軸駆動制御手段44は、第1カム部材23を回動させる駆動モータ24を制御する。なお、第2カム部材25が電動制御される場合、Z軸駆動制御手段44は第2カム部材25の図示省略した駆動モータをも制御する。
【0021】
図4は、プリンタ等により予めキャラクタの図柄が印刷されたはがき大シートを示す説明図である。図4において、はがき大シート50には、キャラクタの図柄51が印刷されている。
以下、本実施形態のカッティングプロッタを用いてはがき大シート50をキャラクタの図柄51の外径に沿って切断する方法について説明する。
はがき大シート50を図柄51の外形に沿って切断する際、先ず、はがき大シート50を、カッティングプロッタ本体1の載置テーブル3の所定位置にセットする。即ち、はがき大シート2を、載置テーブル3に設けられた固定リブ4の間にセットし、X軸方向に沿って挿入してその先端部を従動ローラ9に突き合わせる。従動ローラ9は駆動ローラ8に押圧されているので、これによりはがき大シート2のX軸方向端部はカッティングプロッタのY軸と正確に一致する。この状態で、カッティングプロッタ本体1の側部に設けられたフィードノブ(図示省略)を回すことにより、駆動ローラ8およびこれに押圧されている従動ローラ9を回転させ、はがき大シート2を駆動ローラ8および従動ローラ9に挟持させる。さらにフィードノブを回してはがき大シート2を搬送し、そのX軸方向端部をガイドライン5に合わせる。この状態ではがき大シート2が位置決めされるとともに、カッティングプロッタ1は切断開始待機状態となる。
【0022】
次に、本実施形態装置は、被切断シートの大きさを規定した、はがき大シート専用機であるために、載置テーブル3に設けられた一対の固定リブ4及びガイドライン5は、カッティングペン20がはがき大シート2に対して相対的に移動する二次元平面におけるX座標軸及びY座標軸と合致するように構成されている。従って、上述のようにして被切断シート2を位置決めすることによって、はがき大シート2を、カッティングペン20が移動する二次元平面のX座標軸及びY座標軸に合致させることができる。
【0023】
はがき大シート2の位置決めが完了した後、従来装置であれば、カッティングペン20を動作原点に復帰させる、いわゆる初期動作が必要になるが、本実施形態装置は、定型のはがき大シート専用機であるために、上述のように、初期動作は不要である。
従って、切断開始待機状態とした後、プロッタ本体1の起動ボタンを押して切断動作を開始する。起動ボタンを押すと、図3の制御装置40において、所定の情報が記録されたROM45からの記録データを参照しつつ、コンピュータ等の上位装置46から送信されるカットデータに基づいてカッティングペン20による切断データが作成される。
【0024】
制御装置40で作成された切断データは、制御装置40から駆動制御装置41に送られ、駆動制御装置41によって、X軸駆動制御手段42としての駆動ローラ8に対して制御信号が発信され、駆動ローラ8は、従動ローラ9との間ではがき大シート2を挟持してこれをX軸に沿った方向に移動する。また、制御装置40で作成された切断データは、駆動制御装置41からY軸駆動制御手段43としてのピニオン18を回動し、この回動によってカッティングペン20を搭載するキャリッジ16がカッティングペン20ごとY軸に沿って往復移動する。このカッティングペン20のY軸に沿った方向への往復移動と、上述したはがき大シート2のX軸に沿った方向への移動との相互作用によってカッティングペン20ははがき大シート2に対して相対的に二次元方向に移動する。このとき、制御装置40で作成された切断データは、駆動制御装置41からZ軸駆動制御手段44としての第1カム部材23を回転駆動する駆動モータ24にも送られ、駆動モータ24を回動させてY方向バー15をキャリッジ16及びこれに搭載されたカッティングペン20ごと揺動させてカッティングペン20の刃先をはがき大シート2に当接させる。なお、カッティングペン20の刃先のはがき大シート2への押圧力は、需要者による第2カム部材25の手動操作によって又は図示省略した駆動モータによって制御される。
このような、はがき大シート2のX軸に沿った方向への移動、カッティングペン20のY軸に沿った方向への移動、及びカッティングペン20の刃先のZ軸方向への移動によって、カッティングペン20が所定の押圧力で、相対的にはがき大シート2上を、図4の、例えばA→B→C→D→E→F→G→H→I→J→K→Aの順に移動してキャラクタの図柄51を切り出す。
このとき、シート押さえ部材27によって、はがき大シート2の反り上がりが防止されるので、切り口とキャラクタ51の外形線とが一致し、良好なカット製品が切り出される。
【0025】
本実施形態によれば、Y方向移動手段をY方向バー15に設けたラック17とこれに噛み合うピニオン18とを有するものとし、Z方向移動手段をY方向バー15の回動軸21と、偏芯軸22と、この偏芯軸22と係合する第1のカム部材23と、この第1カム部材23を回動させる駆動モータ24等とで構成したことにより、従来技術に比べて、部品点数が少なく、操作が簡単になる。従って、機械操作が苦手な需要者であっても十分に使いこなすことができ、所望の特定形状にカッティングされた紙製品を容易に作成することができる。
また、本実施形態によれば、カッティングペンの押圧力調整手段として、第2カム部材25と、バネ部材26との組み合わせを採用したことにより、従来技術における、例えばアクチュエータ等が不要となる。
更に、本実施形態によれば、Y方向バー15に沿って移動するキャリッジ16にピニオン18を駆動する駆動モータ19を搭載したことにより、高価なタイミングベルト、リード線等が不要となり、製作コストの面でも有利である。
更にまた、本実施形態によれば、特定の大きさのシート、例えばはがき大シート専用機としたことにより、基準マーク読取センサ及びカッティングペン20を被切断シートの動作原点に復帰させる初期動作が不要となり、操作が簡単で、使い勝手が向上する。
【0026】
本実施形態において、カッティングペン20の刃先押圧力調整手段としての第2カム部材25及びバネ部材26をプロッタ本体1のカバー部材の内面に設ける構成としたが、本発明においては、特に設置場所を限定するものではなく、例えば、プロッタ本体1の側面に設けることもできる。また、第2カム部材25の回動を手動でなく、電動手段等を用いて自動制御するようにしてもよい。
なお、本実施形態は、はがき大シート専用機として説明したが、本発明は、これに限定するものではなく、B5版、A4版等の専用機とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係るカッティングプロッタの概略構成を示す模式図である。
【図2】図1の組み立て分解図である。
【図3】本発明の実施形態における制御系統を示す機能ブロック図である。
【図4】被切断媒体を示す説明図である。
【符号の説明】
【0028】
1 プロッタ本体
2 被切断媒体(はがき大シート)
3 載置テーブル
4 固定リブ
5 ガイドライン
6 カッティングペン
7 キャリッジ
8 駆動ローラ
8a 軸受け
9 従動ローラ(ピンチローラ)
9a 軸受け
9b シート押さえロール
11 サンドペーパー
12 歯車
13 駆動モータ
14 バネ部材
15 Y方向バー
16 キャリッジ
17 ラック
18 ピニオン
19 駆動モータ
20 カッティングペン
21 回転軸
22 偏芯軸
23 第1カム部材
23a 中心軸
24 駆動モータ
25 第2カム部材
26 バネ部材
26a 支持板
27 シート押さえ部材
28 支持バー
40 制御装置
41 駆動制御装置
42 X軸駆動制御手段
43 Y軸駆動制御手段
44 Z軸駆動制御手段
45 ROM
46 上位装置(コンピュータ)
50 はがき大シート
51 キャラクタの図柄




【特許請求の範囲】
【請求項1】
被切断媒体をX軸方向に搬送するX方向搬送手段と、
カッティングペンを前記X軸方向と直交するY軸方向に移動させるY方向移動手段と、
前記カッティングペンを前記X軸方向及びY軸方向と直交するZ軸方向に移動させるZ方向移動手段とを有し、
前記カッティングペンを前記被切断媒体に対して相対的に二次元方向に移動させると共に、前記カッティングペンの刃先を選択的に前記被切断媒体に圧接、離反させて前記被切断媒体を所望の形状に切断するカッティングプロッタにおいて、
前記Y方向移動手段は、
前記Y軸方向に沿って設けられたY方向バーと、
このY方向バーの長手方向に沿って設けられたラックと、
このラック上を移動する前記カッティングペンを支持するキャリッジと、
このキャリッジに設けられた前記ラックと噛み合うピニオン及びこのピニオンを回転させる駆動手段とを有し、
前記Z方向移動手段は、
前記Y方向バーを前記ラック及びピニオンごと傾斜させて前記キャリッジに支持されたカッティングペンの刃先を前記被切断媒体に接触させる揺動手段を有する
ことを特徴とするカッティングプロッタ。
【請求項2】
前記Y方向バーの揺動手段は、
前記Y方向バーの長手方向に沿って設けられた回動軸と、
この回動軸とは偏芯して設けられた偏芯軸と、
この偏芯軸に係合された第1のカム部材と、
この第1のカム部材を回転させる駆動手段と、を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のカッティングプロッタ。
【請求項3】
前記Z方向移動手段は、前記カッティングペンの刃先を前記被切断媒体へ押圧する押圧力の調整手段を有し、
このカッティングペン押圧力調整手段は、
カッティングプロッタの本体フレームに支持された第2のカム部材と、
この第2のカム部材と前記Y方向バーとの間に挟持されたバネ部材とを有し、
前記第2のカム部材の回動によって前記バネ部材における前記Y方向バーを介して前記キャリッジに支持されたカッティングペンの刃先を前記被切断媒体に押圧する圧力を変化させるものである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のカッティングプロッタ。
【請求項4】
前記第2のカム部材は、前記刃先の前記被切断媒体に対する押圧力を多段階に変化させるものであることを特徴とする請求項3に記載のカッティングプロッタ。
【請求項5】
前記第2のカム部材は、手動操作されるものである
ことを特徴とする請求項3又は4に記載のカッティングプロッタ。
【請求項6】
前記Y方向バーに、このY方向バーを傾斜させて前記カッティングペンの刃先を前記被切断媒体に接触させた際、前記被切断媒体に近接してその反り上がりを防止するシート押さえ部材を設けた
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のカッティングプロッタ。
【請求項7】
前記シート押さえ部材は、湾曲した先端部を有する部材であることを特徴とする請求項6に記載のカッティングプロッタ。
【請求項8】
前記シート押さえ部材は、湾曲した先端部を有する櫛歯状の部材である
ことを特徴とする請求項6に記載のカッティングプロッタ。
【請求項9】
前記X方向搬送手段を構成する駆動ローラ及び従動ローラの少なくとも一方の表面に、すべり防止材が貼着されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のカッティングプロッタ。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−105140(P2008−105140A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290864(P2006−290864)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(000105062)グラフテック株式会社 (31)
【Fターム(参考)】