説明

カッティング装置及びカットデータ生成プログラム

【課題】 メディアのジャムを生じさせることなく綺麗にカット対象物を完全にカットすること。
【解決手段】 このカッティング装置では、メディアMのカット対象物Sの線分31に非切断部32を設定し、非切断部32を残した状態で線分31をプレカットする。プレカットした後、各非切断部32の切断を行い、カット対象物Sのフルカットを行う。このように、プレカットされた後に非切断部32を刃20で切断するようにすれば、メディアMが刃20により引っ張られる距離は僅かであるため、或いは、刃20を刺し込むのみで非切断部32を切断できるため、メディアMを進退移動することがなく、メディアMのジャムが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メディアに対して刃を刺し込んだ状態で相対移動させてメディアに作図したカット対象物をカットするカッティング装置及びカットデータ生成プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3は、一般的なグリッドタイプのカッティングプロッタのカッターユニット付近を示す斜視図である。カッティングプロッタのプラテン2上には、ホルダー8に所定の刃20を保持したカッターユニット1が配置されている。このカッターユニット1は、ガイドレール5に沿って走査方向(X軸方向)に移動する。ホルダー8はZ軸方向に昇降し、Z軸を中心として回転する。また、グリッドローラ3は、プラテン2の端に沿って複数配置され、当該グリッドローラ3にはピンチローラ4が一定圧で付勢されている。また、グリッドローラ3は、その上部がプラテン2の上面と略同じ高さになるように配置される。メディアMは、グリッドローラ3とピンチローラ4との間にセットされ、当該グリッドローラ3の回転によりY軸方向に移動される。
【0003】
カッティングプロッタでは、メディアMに作成したカット対象物をカットする場合、カット対象物を構成する多数の線分の始端に刃20を入れ、その状態で刃20とメディアMを相対移動させてカットを行う。このため、始端からカットを始めて終端でカットを終えるまでの間に、メディアMに対して刃20を走査方向及び副走査方向(グリッドローラ3によるメディアMの移動方向)に大きく進退移動しなければならない。
【0004】
しかしながら、カット工程においてメディアMを大きく進退移動させると、刃20によりカットされながらメディアMが引っ張られながら動くことになるから、カット対象物がメディアMから切り離されるまでの間に、切り離されたカット対象物の一部が浮いてジャムを発生させるという問題点があった。そこで、特許文献1に記載の技術のように、メディアに対して点線カットを行うことが考えられる(例えば特許文献1の段落番号0054及び図14参照)。点線カットによりメディアを分離しなければ、メディアを大きく移動してもジャムが生じることがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−111814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、メディア上のカット対象物の輪郭を点線カットするものであるが、最終的にカット対象物を切り離すのはユーザが手で行わなければならない。
【0007】
そこで、この発明の目的は、メディアのジャムを生じさせることなくカット対象物を完全にカットすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、刃とメディアとを相対移動させて当該メディアを切断箇所に沿ってカットするカッティング装置において、前記刃により前記メディアを切断箇所に沿って非切断部を残してプレカットした後、前記非切断部を切断するフルカットを行うことを特徴とする。
【0009】
前記メディアの切断箇所(カット対象物を構成する線分を含むが、これに限定されない)に非切断部を残しておけば、刃とメディアとの相対移動によりメディアが浮くことがない。また、プレカットされた後に非切断部を刃で切断することで、刃を刺し込むのみで非切断部を切断する場合であればメディアが移動することがないし、或いは、刃とメディアとを相対移動させる場合でもメディアが刃により引っ張られる距離は僅かですむ。このため、メディアが浮くことがなくなるのでメディアのジャムが防止される。なお、前記刃には、所謂タンジェンシャルカッターのみならず回転刃等の各種の刃も含まれる。また、この発明は、グリッドローリング型及びフラットベッド型のカッティング装置のいずれにも適用できる。
【0010】
また、本発明は、一方向及び上下方向に移動される刃と、前記一方向と交差する他方向にメディアを支持台上で移動させる移動手段とを有し、前記刃を一方向に移動させると共に前記メディアを前記支持台とその上側の構造物との間を他方向に進退移動させることにより前記刃と前記メディアとを相対移動させてメディアを切断箇所にそってカットするカッティング装置において、前記刃により前記メディアを切断箇所に沿って非切断部を残してプレカットした後、前記非切断部を切断するフルカットを行うことを特徴とする。
【0011】
特にグリッドローリング型のカッティング装置では、刃が一方向に移動し、メディアが当該一方向と交差する他方向にプラテン等の支持台上を移動する。係る構造においてメディアが浮いてしまうと、前記支持台とその上側の構造物との間でジャムを発生させる原因になる。そこで、この発明では、前記メディアの切断箇所(カット対象物を構成する線分を含むが、これに限定されない)に非切断部を残してプレカットし、その後に非切断部を刃で切断することで、刃を刺し込むのみで非切断部を切断する場合であればメディアが移動することがないし、或いは、刃とメディアとを相対移動させる場合でもメディアが刃により引っ張られる距離は僅かですむ。この結果、メディアが浮くことがなくなるので、メディアのジャムが防止される。
【0012】
また、本発明において、前記非切断部の幅は、許容できる刃の刺し込み量から切断可能となる最大切断幅より小さくするのが好ましい。
【0013】
即ち、刃の種類、刃先角度、メディア、プラテン等の諸条件に基づいて許容できる刃の刺し込み量が定まり、その刃の刺し込み量から当該刃により切断可能な非切断部の最大切断幅が決まる。このため、カットに用いる刃の最大切断幅より小さい幅の非切断部であれば、当該非切断部に対して刃を上下動させるだけで当該非切断部の切断が可能となる。例えば、ある刃において、当該刃の幅が最大切断幅であれば、非切断部の幅は当該切断幅より小さくする。別の刃において、当該刃の幅の半分が最大切断幅であれば、非切断部の幅は切断幅の半分以下にする。このようにすれば、非切断部の切断においてメディアを進退移動させなくても良いので、メディアのジャムがより防止される。
【0014】
また、本発明において、前記非切断部に対して、前記刃を複数回上下動させ且つ各上下動のたびに刃を僅かに移動させて当該非切断部を切断するようにするのが好ましい。
【0015】
この発明では、非切断部に対して刃を複数回上下動させて刺し込み、各上下動のたびに刃を僅かに移動させることで当該非切断部を切断する。この僅かな移動量は、非切断部を完全に切断するにあたり当該非切断部の幅を超える必要はない。このようにすれば、メディアの進退動作は極めて少なくなるので、メディアのジャムは有効に防止される。
【0016】
また、本発明において、前記刃は、回転するホルダーに対して設けられ、前記非切断部に対して、前記刃を上下動させた後、当該刃を所定角度回転させてから再び上下動させることで当該非切断部を切断するようにするのが好ましい。
【0017】
このようにすれば、メディアを動かさなくても、当該刃による1回の上下動で得られる切断幅の倍の切断幅が得られる。
【0018】
また、本発明において、前記非切断部の刃による切断を、メディアの移動方向の一方側から順番に行うようにするのが好ましい。
【0019】
メディアの進退移動を行うとメディアのジャムが発生しやすいため、非切断部を完全に切断するときにも、メディアの移動方向の一方側から順に当該非切断部を切断する。これにより、メディアを進退移動する必要がなくなり、メディアのジャムが防止される。
【0020】
また、本発明において、前記刃による非切断部の切断を、同じ方向を向いている非切断部から順番に行うようにするのが好ましい。
【0021】
同じ方向を向いている非切断部から切断すれば、刃の方向を変える時間を削減できるので、加工時間が早くなる。特に、捨て切りにより刃の方向を変更する構造のカッティング装置に好適である。
【0022】
また、本発明は、刃とメディアとを相対移動させて当該メディアを切断箇所に沿ってカットするカッティング装置を動作させるカットデータ生成プログラムであって、当該メディアの切断箇所に沿って所望の位置に非切断部を設定する非切断部設定手段、前記設定された非切断部の幅に基づいて当該非切断部を切断するための非切断部加工パスを生成する非切断部加工パス生成手段、非切断部加工パス生成手段により生成した非切断部加工パスを用いて切断箇所の加工パスを生成する加工パス生成手段、としてコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0023】
また、本発明は、刃とメディアとを相対移動させて当該メディアを切断箇所に沿ってカットするカッティング装置を動作させるカットデータ生成プログラムであって、刃の形状や幅等の刃情報を有すると共に前記メディアのカットに使用する刃を選択する刃選択手段、前記刃により当該メディアを切断箇所に沿って非切断部を残してプレカットする際の当該非切断部の幅を、前記刃選択手段で選択された刃の刃情報から設定する非切断部設定手段、前記設定された非切断部の幅に基づいて当該非切断部を切断するためのパスを生成する非切断部加工パス生成手段、としてコンピュータを機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、切断箇所に非切断部を残したプレカットをした後、当該非切断部を切断してフルカットを行うので、メディアと刃の相対移動をなくすか又は最小にでき、メディアのジャムを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の実施の形態1にカッティング装置を示す説明図である。
【図2】図1に示したカッティング装置を示す構成図である。
【図3】カッターユニットの周辺の斜視図である。
【図4】このカッティング装置によりカットするメディアの例を示す平面図である。
【図5】この発明のカッティング装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】生成される非切断部加工パスの例を示す説明図である。
【図7】生成される非切断部加工パスの例を示す説明図である。
【図8】生成される非切断部加工パスの例を示す説明図である。
【図9】生成される非切断部加工パスの例を示す説明図である。
【図10】生成される非切断部加工パスの例を示す説明図である。
【図11】ホルダーを回転させる場合の切断例を示す説明図である。
【図12】ホルダーを回転させる場合の別の切断例を示す説明図である。
【図13】刃の幅より小さい幅の非切断部を生成した場合の加工の具体例を示す説明図である。
【図14】刃の幅より小さい幅の非切断部を生成した場合の加工の別の具体例を示す説明図である。
【図15】この発明のカッティング装置の別の動作を示すフローチャートである。
【図16】刃の幅より小さい幅の非切断部をカット対象物の線分に設定した例を示す説明図である。
【図17】刃の幅より大きい幅の非切断部をカット対象物の線分に設定した例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1にカッティング装置を示す説明図である。図2は、図1に示したカッティング装置を示す構成図である。図3は、カッターユニットの周辺の斜視図である。このカッティング装置100は、カッティングプロッタ101と、このカッティングプロッタ101に接続したコンピュータ102とからなる。このカッティングプロッタ101は、各種の刃20を取り付けるホルダー8を有するカッターユニット1と、メディアMの支持台となるプラテン2に内設しその上部がプラテン2の上面から露出し、メディアMを移動する複数のグリッドローラ3と、各グリッドローラ3に対応した複数のピンチローラ4とを有する。前記グリッドローラ3は、X軸方向に所定間隔をもって複数配置され、一つのモータ10により駆動される。ピンチローラ4は、プラテン2の上側に配置された構造物の一つであって、グリッドローラ3に対して所定圧で付勢され、前記グリッドローラ3に従動して回転する。
【0027】
前記カッターユニット1は、X軸駆動機構及びZ軸駆動機構によりX軸方向及びZ軸方向に移動制御される。X軸駆動機構は、カッターユニット1を直動可能に取り付けるガイドレール5と、このガイドレール5に平行に設けたタイミングベルト(図示省略)と、タイミングベルトを駆動するモータ6とを有する。Z軸駆動機構は、カッターユニット1内に設けた図示しない直動案内とモータ7とを有する。
【0028】
前記ホルダー8は、Z軸を中心として回転自在な構造であり、カッターユニット1のXY方向の移動に追従して回転するようになっている。係る構造のホルダー8では、刃20をカット方向に向けるために、いわゆる捨て切りと呼ばれる操作を行う必要がある。捨て切りは、メディアMの隅等の不使用箇所において5mm前後の直線状のカット線をカットすることで、そのカット線の方向に刃20を向ける操作である。本実施の形態において刃20の方向は、当該捨て切りの操作により行われるものとする。
【0029】
また、ホルダー8は、ソレノイド等のアクチュエータ9により刃20の回転を所定角度で固定可能である。即ち、捨て切りの操作により刃20を所定の方向に向け、この姿勢を維持するため、ホルダー8の回転を一時的にアクチュエータ9で固定するものである。例えば、ソレノイドの可動部をホルダー8に対して押し当てることで当該ホルダー8の回転を固定する。
【0030】
カッティングプロッタ101には、当該カッティングプロッタ101を制御するコントローラ103が設けられている。このコントローラ103および前記コンピュータ102は、一体となってカッティング装置100の情報処理を行い、当該コントローラ103及びコンピュータ102のハードウェアに所定のプログラムが格納されることで、メディアMにカット対象物Sを作図する作図部21と、加工パス30に従ってメディアMの加工を行う制御部22と、カット対象物Sの加工パス30を生成する加工パス生成部23と、登録された複数の刃からカットに用いる刃を選択するための刃選択部24と、非切断部32を線分31に設定する非切断部設定部25と、非切断部32の選択した刃20による加工パスを生成する非切断部加工パス生成部26とを構成する。また、前記制御部22は、カッターユニット1及びグリッドローラ3の各モータ6,7,10及びアクチュエータ9のドライバユニット11,12に接続されている。
【0031】
なお、前記コンピュータ102は、カッティングプロッタ101とUSBケーブルやRS−232C等の専用ケーブル、ネットワーク、無線近距離通信により接続される。なお、コンピュータ102は、インターネット空間で構築されるリソース形態を取るものであっても良い。
【0032】
図4は、このカッティング装置によりカットするメディアの例を示す平面図である。この発明では、カット対象物Sを構成する線分31をカットする加工パス30を生成する際、加工パス30の一部に非切断部32を設定し、まず非切断部32を残した状態でプレカットを行い、その後、非切断部32を切断することでフルカット(カット対象物Sの完全なカット)を行う。以下、説明のため加工パス30を拡大して模式的に表示する。
【0033】
図5は、この発明のカッティング装置の動作を示すフローチャートである。まず、ユーザは、作図部21によりカットするカット対象物Sを作成する(ステップS1)。ユーザは、例えば図4(a)に示すような矩形のカット対象物Sを作図する。カット対象物Sのデータは、コンピュータ102からカッティングプロッタ101に送られて所定のメディアMに印刷される。或いは、別のプリンタに送られてメディアMに印刷される。
【0034】
次に、作図したカット対象物Sの線分31の一部に、非切断部32を設定する(ステップS2)。非切断部設定部25は、ユーザがカット対象物Sを構成する線分31の所望位置を指定することで、カット対象物Sの線分31のデータに非切断部32のデータを重畳し、図4(b)に示すように、線分31上に非切断部32を自動生成する。非切断部32の生成位置の指定は、線分31を選択するだけでその両端近傍や中央に自動的に生成されるようにしても良いし、線分31を指定したうえでその線分31上の位置を数値入力することで生成しても良い。この非切断部32の幅は、予めユーザが設定できる。また、非切断部32の幅の指定は、非切断部32の指定毎に行うこともできる。
【0035】
次に、ユーザは、刃選択部24によりカットに使用する刃20を選択する(ステップS3)。なお、この刃20の選択は、非切断部32の設定(ステップS2)の前でも良いし、カット対象物Sの作図(ステップS1)の前に行っても良い。なお、選択可能な刃20は画面上に表示される。刃選択部24は、刃20の幅、厚さ、刃先角度等の刃情報を保持している。
【0036】
非切断部加工パス生成部26は、選択した刃20に係る刃情報に基づいて非切断部加工パスを生成する(ステップS4)。図6〜図12は、生成される非切断部加工パスの例を示す説明図である。
【0037】
図6に示すように、非切断部32の幅W1(線分31方向の長さ)が刃20の幅W2よりも小さい場合、刃20を非切断部32の上方から下降させて当該非切断部32に刺し込みそのまま上方に退避するような非切断部加工パスを生成する。具体的には、非切断部32の幅方向の中央位置と刃20の中央位置を合わせ、非切断部32を完全に切断できるだけの刺し込み量をもって上下動させる非切断部加工パスを生成する。この非切断部加工パスによれば、メディアMを移動することなく非切断部32を切断し、メディアMの移動に起因したジャムが起こるのを防止し、カット対象物Sをフルカットできる。
【0038】
なお、メディアMと刃20を相対移動させない場合の好ましい条件を図7を用いて説明する。刃20のメディアMの表面からの刺し込み量D1は、刃20により非切断部32を完全に切断できるだけの量が必要であって、刃20の刃先角度に大きく依存する。例えば45度の刃先角度を持つ刃20を用いる場合、図7(a)に示すように、メディアMを貫通してプラテン2に刺し込まれる量D2が切断できる非切断部32の幅W1となる。
【0039】
別の観点からは、図7(b)に示すように、例えばメディアMがシールであってその台紙M2とシールM1との厚さを同じとし、刃先角度を45度とすると、プラテン2に刃20が至る前に非切断部32を完全にカットするには、非切断部32の幅W1を台紙M2の厚さD3以下とすれば良い。このため、非切断部32の切断の観点では、刃20の種類、刃先角度、メディアM、プラテン2等の諸条件に基づいて許容できる刃20の刺し込み量D1から、当該刃20により切断可能な非切断部32の最大の幅(以下、刃20の最大切断幅という)が決まる。このため、カットに用いる刃20の最大の切断幅より小さい幅の非切断部32であれば、当該非切断部32に対して刃20を上下動させるだけで当該非切断部32の切断が可能となる。
【0040】
次に、図8に示すように、非切断部32の幅W1が刃20の最大切断幅より大きい場合、刃20を非切断部32の上方から数回に分けて下降させて当該非切断部32に刺し込むような非切断部加工パスを生成する。具体的には、同図に示すように、刃20を非切断部32に刺し込んで非切断部32の一部を切断し、この1回目の切断後に刃20をいったん上昇してから当該刃20とメディアMを僅かに相対移動させ、1回目の切断部分と連続するように刃20を非切断部32に刺し込む。そして、この2回目の切断後に再び刃20を上昇させ、必要により再び当該刃20とメディアMを僅かに相対移動させ、前記2回目の切断部分と連続するように刃20を非切断部32に刺し込み、このような切断を非切断部32の幅W1の分だけ行うような非切断部加工パスを生成する。
【0041】
この非切断部加工パスによれば、X軸方向ではメディアMと刃20とを相対移動させることなくフルカットできる。Y軸方向の成分が非切断部32に含まれてもY軸方向のメディアMの移動は僅かである。メディアMの移動量は、非切断部32の幅W1を超える必要はない。例えば、図8の例では3回に分けて刃20を上下動して切断するので、移動量は、各上下動で非切断部32の幅W1の3分の1である。2回に分けて切断するときの移動量は、各上下動で非切断部32の幅W1の2分の1である。このため、当該メディアMの移動に起因したジャムが起こるのを防止できる。また、この加工パス30は、非切断部32の幅W1が刃20の幅W2より小さい場合にも適用できる。
【0042】
次に、図9に示すように、非切断部32の幅W1が刃20の最大切断幅より大きい場合、同図(a)及び(b)に示すように、刃20を非切断部32の端の上方から下降させて当該非切断部32に刺し込み、同図(c)に示すように、そのまま微小移動するような非切断部加工パスを生成する。即ち、刃20による通常のカットを極めて短い範囲で行うものである。このように、非切断部32の幅W1が比較的小さければ、刃20により通常のカットを行っても、刃20とメディアMとの相対移動が僅かであるので、メディアMのジャムが起こるのを防止できる。
【0043】
次に、図10に示すように、非切断部32の幅W1が刃20の最大切断幅より大きい場合、同図(a)に示すように、1回目に刃20を非切断部32に刺し込んで一部を切断し、同図(b)に示すように、いったん上昇し、捨て切りによりホルダー8を180度回転させ、同図(c)に示すように、2回目に刃20を非切断部32に刺し込むような非切断部加工パスを生成する。
【0044】
図11は、ホルダー8を回転させる場合の切断例を示す説明図である。直線状の非切断部32を切断する場合、同図(a)に示すように、刃20を非切断部32の一部に刺し込んで当該一部を切断する。そして、刃20を上昇し、同図(b)に示すように、ホルダー8を180度回転させて非切断部32の残り部分に刺し込み、完全に切断する。刃20は、前記ホルダー8に対して偏芯して取り付けられているので、ホルダー8を回転させることで最大で刃20の2倍の長さの幅を持つ非切断部32を刃20とメディアMとを相対移動させることなく切断できる。
【0045】
また、図12に示すように、カット対象物Sの角に非切断部32を設けた場合、ホルダー8を回転させることで角の非切断部32を切断できる。即ち、同図(a)に示すように、1回目に刃20を非切断部32に刺し込んで一部を切断し、同図(b)に示すように、いったん上昇し、捨て切りによりホルダー8を所定角度だけ回転させ、2回目に刃20を非切断部32に刺し込む。これを線分31の角に設定した非切断部32に対して行うような非切断部加工パスを生成する。このようにすれば、カット対象物Sの線分31と線分31の角に非切断部32を設定しても、メディアMを移動することなく当該非切断部32を切断し、カット対象物Sをフルカットできるので、メディアMの移動に起因したジャムが起こるのを防止できる。
【0046】
更に、図6〜図12に示した非切断部32の切断方法を組み合わせて非切断部加工パスを生成することもできる。例えば、刃20の幅より小さい幅の非切断部32には図6に示した切断方法を適用し、刃20の幅より大きい幅の非切断部32には図7に示した切断方法を適用する。
【0047】
図5に戻り、加工パス生成部23は、非切断部加工パス生成部26により生成した非切断部加工パスを用いて、カット対象物Sの加工パス30を生成する(ステップS4)。加工パス30は、プレカットのカット工程と、フルカットのカット工程とに分かれる。プレカットのカット工程は、後述する図13(a)に示した加工パスによるものである。フルカットのカット工程は、後述する図13(b)に示した加工パスによるものである。なお、加工パスは、製品(カット対象物S)となる側と製品でない側、刃20の種類、非切断部加工パス等に基づいて生成される。
【0048】
自動生成された加工パス30は、コンピュータ102からカッティングプロッタ101のコントローラ103に送られる。コントローラ103の制御部22は、加工パス30に従ってドライバユニット11,12を制御してモータ6,7,10及びアクチュエータ9を駆動する(ステップS6)。カット対象物Sが印刷されたメディアMは、ユーザがカッティングプロッタ101の所定位置にセットしておく。メディアMはなるべくプラテン2の右端に沿ってセットする。ユーザはカッティングプロッタ101のジョグキーを押してメディアMの原点を検出し、加工をスタートさせる。
【0049】
刃20の幅W2より小さい幅W1の非切断部32を生成した場合の加工の具体例を、図13を参照して説明する。以下の動作は、制御部22が、生成された加工パスに従って行う。まず、図13(a)に示すように、生成された加工パス30に従い、カット対象物Sを構成する線分31のカット開始点P1の上方にカッターユニット1を移動させて刃20の位置決めを行い、続いてZ軸方向に刃20を下降させる(このとき刃20は、捨て切りにより線分31のカット方向に向いている)。続いて、カッターユニット1及びグリッドローラ3を加工パス30に従って駆動制御し、メディアMに対して刃20を相対移動させることで当該線分31のカットを行う。
【0050】
続いて、当該線分31のカットが進んで非切断部32に至ると、刃20の移動を停止し、刃20を上方に上昇させる。そして、刃20を上方に上昇させたまま非切断部32の幅W1だけ移動し、再び刃20を線分31上に下降させる。この状態でカッターユニット1及びグリッドローラ3を加工パス30に従って駆動制御し、メディアMと刃20を相対移動させて当該線分31のカットを再開する。
【0051】
刃20が次の非切断部32に至ると上記同様に刃20の移動を停止し、刃20を上方に上昇させる。そして、刃20を上方に上昇させたまま非切断部32の幅W1だけ移動し、再び刃20を線分31上に下降させる。この状態で、カッターユニット1及びグリッドローラ3を加工パス30に従って駆動制御し、メディアMと刃20を相対移動させて当該線分31のカットを行う。このように、全ての非切断部32を除いた状態で線分31のカットを行う。なお、非切断部32は後に完全に切断されるので、刃20が非切断部32に対してオーバランしても問題ない。
【0052】
非切断部32を除く線分31のカットが終了したら、図6に示した方法で非切断部32の完全カットを行う。制御部22は、図13(b)に示すように、カット開始点P1の近くの非切断部32の上方にカッターユニット1を移動させ、刃20の方向を非切断部32の幅方向に合わせる。また、刃20は、刃先の表側が斜めに研磨されているため、カット端が垂直となる側が製品側になるようにする。刃20の方向は、ホルダー8を所定角度回転させて合わせる。そして、刃20を下降させて非切断部32に刺し込み、当該非切断部32を切断する。
【0053】
図5に戻り、第1の非切断部32を完全に切断したら刃20を上昇させ、刃20とメディアMを相対移動させて第2の非切断部32の上方に刃20を移動させ、刃20の方向を非切断部32の幅方向に合わせる。また、上記同様、カット後にそのカット端が垂直となる側が製品側になるようにする。そして、刃20を下降させて非切断部32に刺し込み、当該非切断部32を完全に切断する。第2の非切断部32を完全に切断したら再び刃20を上昇させ、図13(c)に示すように、第3以降の非切断部32を前記同様に順次切断する。
【0054】
なお、複数の非切断部32の切断順序は上記に限定されない。例えば、グリッドローラ3によりメディアMの往復移動が生じないように、図14に示すように、非切断部32を残してカットした後、メディアMをいったんバックフィードし、Y軸方向の移動方向側から順に非切断部32を切断する。切断順の例を図14中に(1)〜(8)の番号で示す。このようにすれば、グリッドローラ3によりメディアMを一方向のみに移動させればよいので、メディアMを進退動作させずに済む。このため、メディアMのジャムが発生するのを抑制できる。なお、非切断部32の切断順は、メディアの移動方向の一方側から切断していければ、図14に示したものに限定されない。
【0055】
また、このカッティング装置100では、メディアMの不要部分において捨て切りを行うことで刃20の方向を変更するところ、捨て切りの回数を少なくするような切断順序を選択しても良い。例えば、図14において(イ)〜(チ)の順番に切断を行う。具体的には、まず、図中横方向の切断となる(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)の順番で非切断部32の切断を行い、次に、捨て切りにより図中縦方向に刃20を回転させ、(ホ)、(ヘ)、(ト)、(チ)の順番で非切断部32の切断を行う。即ち、同じ方向を向いている非切断部32を先に切断し、その後、別の方向を向いている非切断部32を切断するようにする。このようにすれば、捨て切り回数が少なくなるので、加工時間を短縮できる。
【0056】
また、上記図5に示した加工プロセスの非切断部32の設定(ステップS2)と刃20の選択(ステップS3)との順を入れ換えても良い。図15は、この発明のカッティング装置の別の動作を示すフローチャートである。その他のプロセスは上記図5の例と同じであるからその説明を省略する。
【0057】
ユーザは、刃選択部24によりカットに使用する刃20を選択する(ステップS2)。このとき、選択可能な刃20は画面上に表示される。刃選択部24は、選択可能な各刃20に関する刃20の幅、厚さ、刃先角度等の刃情報を有している。そして、ユーザが刃20を選択したら、非切断部設定部25は、選択された刃20の幅に基づいて非切断部32の幅を決定する(ステップS3)。
【0058】
第1の例として、非切断部32設定部26は選択された刃20の最大切断幅より小さい幅の非切断部32を設定する。図16に、刃の幅より小さい幅の非切断部をカット対象物の線分に設定した例を示す。非切断部設定部25では、選択された刃20により自動的に非切断部32の幅を設定するので、ユーザは、線分31上の所望の位置を選択或いは入力することで当該幅の非切断部32を自動的に線分31上に生成できる。非切断部加工パス生成部26は、図6に示した切断のパスを生成する。このようにすれば、刃20を非切断部32に刺し込むことでメディアMと刃20を相対移動させることなく非切断部32を切断できる。
【0059】
第2の例として、非切断部設定部25は、刃20を複数回刺し込むことで切断できる幅の非切断部32を設定する。図17に、刃20の幅より大きい幅の非切断部32をカット対象物Sの線分31に設定した例を示す。非切断部加工パス生成部26は、図7に示した切断のパスを生成する。このようにすれば、刃20を非切断部32に複数回に分けて刺し込むことでメディアMに対して刃20を僅かに相対移動させることで、当該非切断部32を切断できる。このようにすれば、刃20の幅W2に基づいて最適な非切断部32を生成し、その切断のパスも生成するので、メディアMのジャムが生じない。
【0060】
以上、この発明の実施の形態1に係るカッティング装置100によれば、カット対象物Sの線分31をカットする際に非切断部32を残してカットした後、メディアMを動かすことなく或いは僅かに動かすことで非切断部32を切断し、カット対象物Sのフルカットを行う。このため、メディアMのジャムが発生しない。特に、非切断部32を刃20の最大切断幅より小さくすれば、刃20の上下動のみで当該非切断部32が切断できるので、メディアMを動かす必要がないため、よりジャムの防止ができるようになる。
【0061】
非切断部32の幅W1が刃20の最大切断幅より大きい場合でも、刃20を数回に分け僅かに移動させながら上下動させて当該非切断部32に刺し込むことで、メディアMを動かすことなく非切断部32を切断できるため、よりジャムの防止ができる。また、刃20がホルダー8に偏芯して取り付けられている場合、ホルダー8を回転させることでメディアMを移動することなく、最大切断幅より大きい非切断部32を切断できる。
【0062】
更に、メディアMの一方向から順に非切断部32を切断するようにすれば、メディアMが進退動作しないので、メディアMのジャムはより防止される。また、捨て切りの回数を省く観点から、同じ方向の非切断部32から順に切断するようにすれば、加工時間を短くできる。
【0063】
(実施の形態2)
上記実施の形態1では、ホルダー8を回転自在な構造とし、捨て切り操作により刃20を所定の方向に向けるようにしていたが、ホルダー8の回転をサーボモータにより制御するようにしても良い。この場合、上記アクチュエータ9としてサーボモータが配置され、当該サーボモータはコンピュータ102及びコントローラ103により制御される。係る構成によれば、上記捨て切り操作をすることなく、刃20の方向を位置決めできるようになるので、加工時間を実施の形態1のカッティング装置100より大幅に短縮化できる。なお、サーボモータによりホルダー8を回転させる構成は、図10及び図11に示した刃20を回転させて切断する場合に好適である。
【符号の説明】
【0064】
100 カッティング装置
101 カッティングプロッタ
102 コンピュータ
103 コントローラ
1 カッターユニット
2 プラテン
3 グリッドローラ
4 ピンチローラ
21 作図部
22 制御部
23 加工パス生成部
24 刃選択部
25 非切断部加工パス生成部
26 非切断部設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃とメディアとを相対移動させて当該メディアを切断箇所に沿ってカットするカッティング装置において、
前記刃により前記メディアを切断箇所に沿って非切断部を残してプレカットした後、前記非切断部を切断するフルカットを行うことを特徴とするカッティング装置。
【請求項2】
一方向及び上下方向に移動される刃と、
前記一方向と交差する他方向にメディアを支持台上で移動させる移動手段とを有し、
前記刃を一方向に移動させると共に前記メディアを前記支持台とその上側の構造物との間を他方向に進退移動させることにより前記刃と前記メディアとを相対移動させてメディアを切断箇所にそってカットするカッティング装置において、
前記刃により前記メディアを切断箇所に沿って非切断部を残してプレカットした後、前記非切断部を切断するフルカットを行うことを特徴とするカッティング装置。
【請求項3】
前記非切断部の幅は、許容できる刃の刺し込み量から切断可能となる最大切断幅より小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載のカッティング装置。
【請求項4】
前記非切断部に対して、前記刃を複数回上下動させ且つ各上下動のたびに刃を僅かに移動させて当該非切断部を切断することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のカッティング装置。
【請求項5】
前記刃は、回転するホルダーに対して設けられ、
前記非切断部に対して、前記刃を上下動させた後、当該刃を所定角度回転させてから再び上下動させることで当該非切断部を切断することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のカッティング装置。
【請求項6】
前記刃による非切断部の切断を、メディアの移動方向の一方側から順番に行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載のカッティング装置。
【請求項7】
前記刃による非切断部の切断を、同じ方向を向いている非切断部から順番に行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載のカッティング装置。
【請求項8】
刃とメディアとを相対移動させて当該メディアを切断箇所に沿ってカットするカッティング装置を動作させるカットデータ生成プログラムであって、
当該メディアの切断箇所に沿って所望の位置に非切断部を設定する非切断部設定手段、
前記設定された非切断部の幅に基づいて当該非切断部を切断するための非切断部加工パスを生成する非切断部加工パス生成手段、
非切断部加工パス生成手段により生成した非切断部加工パスを用いて切断箇所の加工パスを生成する加工パス生成手段、
としてコンピュータを機能させることを特徴とするカットデータ生成プログラム。
【請求項9】
刃とメディアとを相対移動させて当該メディアを切断箇所に沿ってカットするカッティング装置を動作させるカットデータ生成プログラムであって、
刃の形状や幅等の刃情報を有すると共に前記メディアのカットに使用する刃を選択する刃選択手段、
前記刃により当該メディアを切断箇所に沿って非切断部を残してプレカットする際の当該非切断部の幅を、前記刃選択手段で選択された刃の刃情報から設定する非切断部設定手段、
前記設定された非切断部の幅に基づいて当該非切断部を切断するためのパスを生成する非切断部加工パス生成手段、
としてコンピュータを機能させることを特徴とするカットデータ生成プログラム。


【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−192493(P2012−192493A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58503(P2011−58503)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000137823)株式会社ミマキエンジニアリング (437)
【Fターム(参考)】