説明

カップホルダ

【課題】主に、インナートレーに対する支持強度を向上し得るようにする。
【解決手段】アウターケース2と、インナートレー3との間に、インナートレー3の最大引出時に、インナートレー3の奥側端部をアウターケース2の手前側端部に対して支持可能な引出時支持部15を設ける。この引出時支持部15を、インナートレー3の奥側端部下面の幅方向中央部に設けられて、アウターケース2の手前側端部下縁部に当接可能な、引出方向へ延びる下部支持部16とする。また、インナートレー3の奥側端部上面の幅方向中央部に設けられてアウターケース2の手前側端部上縁部に当接可能な上部当接部17とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インナートレーに対する支持強度を向上し得るようにしたカップホルダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、車室内にインストルメントパネルなどの内装パネルが設けられている。そして、このインストルメントパネルなどの内装パネルには、飲料容器を保持するためのカップホルダが備えられている。このようなカップホルダの中には、引出式のものが存在している。この引出式のカップホルダは、アウターケースと、アウターケースに引出収納自在に取付けられたインナートレーとを備えている。そして、インナートレーは、飲料容器を上方から挿入可能な挿入孔部を有している。更に、インナートレーの下面側には、挿入孔部へ挿入された飲料容器の底部を支持可能な底部支持部材が、上下回動自在に取付けられている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−11615号公報
【特許文献2】特開平5−193406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の引出式のカップホルダには、以下のような問題があった。
【0005】
即ち、アウターケースからインナートレーを引出した状態にすると、インナートレーは片持支持になるので、インナートレーに対する支持強度が不足するという問題があった。
【0006】
これは、特許文献1のように、飲料容器を1個のみ保持し得るようにした狭幅タイプのものの場合には特に大きな問題にはならないが、特許文献2のように、飲料容器を2個同時に保持し得るようにした広幅タイプのものの場合には、広幅化によるインナートレーの強度低下と飲料容器の保持数増加による荷重増加とによって大きな問題となる。
【0007】
そのため、広幅タイプの引出式のカップホルダでは、アウターケースやインナートレーを樹脂のみで作成するのが難しく、現実には、アウターケースを金属部材で補強するなどの対策が取られていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のカップホルダは、アウターケースと、該アウターケースに引出収納自在に取付けられたインナートレーとを備え、該インナートレーが、飲料容器を上方から挿入可能な左右一対の挿入孔部を有し、前記インナートレーの下面側に前記挿入孔部へ挿入された飲料容器の底部を支持可能な底部支持部材が上下回動自在に取付けられたカップホルダにおいて、前記アウターケースと、インナートレーとの間に、インナートレーの最大引出時に、インナートレーの奥側端部をアウターケースの手前側端部に対して支持可能な引出時支持部が設けられ、該引出時支持部が、インナートレーの奥側端部下面の幅方向中央部に設けられて、アウターケースの手前側端部下縁部に当接可能な、引出方向へ延びる下部支持部と、インナートレーの奥側端部近傍上面の幅方向中央部に設けられてアウターケースの手前側端部上縁部に当接可能な上部当接部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、アウターケースとインナートレーとの間に引出時支持部を設けることによって、インナートレーの最大引出時に、インナートレーの奥側端部をアウターケースの手前側端部に支持させることができる。これにより、引出されたインナートレーに対する支持強度を確保・向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例にかかるカップホルダの全体斜視図である。
【図2】図1の分解斜視図である。
【図3】図1のインナートレーを底面側から見た斜視図である。
【図4】図2のガイド部の部分拡大斜視図である。
【図5】図4の平面図である。
【図6】収納時保持部を示すカップホルダの手前側部分の断面図である。
【図7】図1の底部支持部材の斜視図である。
【図8】収納状態の作動図(幅方向中央部で破断した断面図)である。
【図9】引出途中の作動図(幅方向中央部で破断した断面図)である。
【図10】引出完了後の状態を示す作動図(幅方向中央部で破断した断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1〜図10は、この実施例を示すものである。
【実施例】
【0012】
<構成>以下、構成について説明する。
【0013】
図1〜図7は、この実施例の構成図である。
【0014】
自動車などの車両には、車室内にインストルメントパネルなどの内装パネルが設けられている。そして、このようなインストルメントパネルなどの内装パネルに、飲料容器を保持するためのカップホルダが備えられる。このカップホルダを、引出式のものとする。
【0015】
そして、図1の全体斜視図、または、図2の分解斜視図に示すように(主に図2参照)、この引出式のカップホルダ1は、アウターケース2と、アウターケース2に引出収納自在に取付けられたインナートレー3とを備えている。アウターケース2は、インナートレー3の上下面および両側面を包持可能な箱枠状のものとされる。アウターケース2の手前側の面には、インナートレー3を引出収納するための開口部が設けられる。そして、インナートレー3が、飲料容器を上方から挿入可能な挿入孔部4を有している。更に、インナートレー3の下面側に、挿入孔部4へ挿入された飲料容器の底部を支持可能な底部支持部材5が、上下回動自在に取付けられている。
【0016】
この場合、少なくともアウターケース2とインナートレー3とは、樹脂によって構成される。そして、インナートレー3は、飲料容器を2個同時に保持できるように左右一対の挿入孔部4を備えた広幅タイプのものとされている(広幅カップホルダ)。
【0017】
更に、インナートレー3の各挿入孔部4には、飲料容器の側部を押圧可能な、可動フラップ6が、それぞれ上下回動自在に取付けられている。この可動フラップ6は弾性部材6aによって上方へ回動するように付勢されている。
【0018】
そして、アウターケース2の内部両側部と、インナートレー3の外部両側部との間には、インナートレー3の引出・収納を案内する側部ガイド部7が設けられている。この側部ガイド部7は、アウターケース2の内側部に設けられた引出方向へ延びるガイド用突条部7aと、インナートレー3の外側部に設けられた引出方向へ延びるガイド溝部7bとを有している。このガイド溝部7bは、上記ガイド用突条部7aの上下面を案内するものとされる。
【0019】
また、アウターケース2と、インナートレー3との間には、インナートレー3の最大引出位置をクリック感などによって感知させる引出状態感知部9が設けられている。この引出状態感知部9は、アウターケース2の内部両側部に対して設けられた板バネなどの弾性部材9aと、インナートレー3に設けられた突起部9bとを有している。そして、突起部9bが弾性部材9aに乗上げることなどによってクリック感を発生させるようにしている。なお、上記した弾性部材9aは、インナートレー3の幅方向へのフラ付きを弾性力によって拘束する拘束機能も有している。
【0020】
更に、インナートレー3の手前側端部には、把持部11aを有するリッド部材11が取付けられている。
【0021】
そして、以上のような全体的な構成に対し、この実施例のものでは、以下のような構成を備えるようにしている。
【0022】
(構成1)
アウターケース2と、インナートレー3との間に、図2および図3に示すように、インナートレー3の最大引出時に、インナートレー3の奥側端部(またはその近傍。以下同様)をアウターケース2の手前側端部(またはその近傍。以下同様)に対して支持可能な引出時支持部15を設ける。
【0023】
この引出時支持部15は、図3に示すような、下部支持部16を有している。この下部支持部16は、インナートレー3の奥側端部下面の幅方向中央部に設けられて、アウターケース2の手前側端部下縁部に当接可能なものとされる。
【0024】
また、図2に示すように、引出時支持部15は、上部当接部17を有している。
この上部当接部17は、インナートレー3の奥側端部上面の幅方向中央部に設けられてアウターケース2の手前側端部上縁部に当接可能なものとされる。
【0025】
この場合、下部支持部16は、引出方向へ延びるリブ状のものとされている。また、上部当接部17は、引出方向へ延びるリブ状のものとされている。
【0026】
(構成2)
上記において、図2および図4、図5の部分拡大図に示すように、アウターケース2の手前側端部下縁部に、下部支持部16の両側部を案内可能な一対のガイド部21を設ける。
【0027】
ここで、一対のガイド部21は、下部支持部16の両側部に対して摺接可能な間隔を有して対向配置されている。一対のガイド部21には、その手前側の部分および奥側の部分に、それぞれ下部支持部16を呼込むための呼込テーパ部21a,21bを設けることができる。呼込テーパ部21a,21bは、それぞれ、引出方向の手前側および奥側へ向かって開くものとされる。この場合、一対のガイド部21は、台座部22の上部に設けられている。
【0028】
更に、図3および図6の断面図に示すように、インナートレー3の手前側端部下面の幅方向中央部に、下部支持部16と同様の収納時保持部23を設けることもできる。この収納時保持部23は、上記した一対のガイド部21によって両側部を案内可能なものとされる。この収納時保持部23は、収納時におけるインナートレー3の左右のガタ付きを規制するためのものである。なお、図6中符号26は、収納時保持部23の両側部に設けられたインナートレー3の補強リブである。
【0029】
(構成3)
上記において、図7の斜視図に示すように、底部支持部材5に、上記したガイド部21との干渉を防止可能な逃凹部25を設ける。
【0030】
ここで、逃凹部25は、底部支持部材5の手前側部分における幅方向中央部の下面側に凹設形成される。この逃凹部25は、上記した台座部22をも逃げられる大きさを有するものとされている。
【0031】
<作用>以下、この実施例の作用効果について説明する。
【0032】
図8〜図10は、この実施例の作動図である。
【0033】
図8に示すようにアウターケース2にインナートレー3が収納された状態から、図9を経て図10に示すようにアウターケース2に対してインナートレー3を引出すと、インナートレー3の下面側から自重により底部支持部材5が下方へ回動されて使用可能な状態となる。そして、挿入孔部4へ飲料容器を上方から挿入すると、底部支持部材5が飲料容器の底部を支持することにより、挿入孔部4に飲料容器を保持することが可能となる。
【0034】
反対に、図10に示す引出状態から、図9を経て図8に示すようにアウターケース2の内部へインナートレー3を押込むと、底部支持部材5がアウターケース2の手前側下縁部により上方へ回動されて、インナートレー3の下面側へ収容された状態となる。これにより、インナートレー3と底部支持部材5とをまとめてアウターケース2の内部に収納することが可能となる。
【0035】
そして、図10に示すように、アウターケース2に対してインナートレー3を最大限に引出した状態では、インナートレー3が片持状態になるので、インナートレー3に対する支持強度を確保することが必要となる。
【0036】
<効果>この実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0037】
(効果1)
アウターケース2とインナートレー3との間に引出時支持部15を設けることによって、インナートレー3の最大引出時に、インナートレー3の奥側端部をアウターケース2の手前側端部に支持させることができる。これにより、引出されたインナートレー3に対する支持強度を確保・向上することができる。
【0038】
この際、引出時支持部15としての引出方向へ延びる下部支持部16は、インナートレー3の奥側端部下面の幅方向中央部を、アウターケース2の手前側端部下縁部に対して当接支持させる。
【0039】
また、引出時支持部15としての上部当接部17は、インナートレー3の奥側端部上面の幅方向中央部を、アウターケース2の手前側端部上縁部に当接支持させる。
【0040】
これにより、インナートレー3の上下面が同時にアウターケース2に支持される。
【0041】
このように、引出時支持部15を設けることにより、支持強度を確保・向上することができるので、幅広タイプであっても、アウターケース2とインナートレー3とを、金属部材で補強することなく、樹脂のみによって構成することが可能となる。
【0042】
また、インナートレー3の幅方向中央部をアウターケース2に支持させるようにすることにより、下部支持部16や上部当接部17を、左右一対の挿入孔部4から避けた位置に支障なく設けることができる。
【0043】
(効果2)
また、アウターケース2の手前側端部下縁部に一対のガイド部21を設けることにより、一対のガイド部21が下部支持部16の両側部を案内するようになるので、インナートレー3の最大引出時周辺で、アウターケース2に対するインナートレー3の引出・収納を円滑に行わせることができる。
【0044】
(効果3)
底部支持部材5に逃凹部25を設けることにより、インナートレー3の引出・収納時に、逃凹部25によって底部支持部材5のガイド部21との干渉を防止することができる。
【0045】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。
【符号の説明】
【0046】
1 カップホルダ
2 アウターケース
3 インナートレー
4 挿入孔部
5 底部支持部材
15 引出時支持部
16 下部支持部
17 上部当接部
21 ガイド部
25 逃凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターケースと、該アウターケースに引出収納自在に取付けられたインナートレーとを備え、
該インナートレーが、飲料容器を上方から挿入可能な左右一対の挿入孔部を有し、前記インナートレーの下面側に前記挿入孔部へ挿入された飲料容器の底部を支持可能な底部支持部材が上下回動自在に取付けられたカップホルダにおいて、
前記アウターケースと、インナートレーとの間に、インナートレーの最大引出時に、インナートレーの奥側端部をアウターケースの手前側端部に対して支持可能な引出時支持部が設けられ、
該引出時支持部が、インナートレーの奥側端部下面の幅方向中央部に設けられて、アウターケースの手前側端部下縁部に当接可能な、引出方向へ延びる下部支持部と、
インナートレーの奥側端部近傍上面の幅方向中央部に設けられてアウターケースの手前側端部上縁部に当接可能な上部当接部とを有することを特徴とするカップホルダ。
【請求項2】
前記アウターケースの手前側端部下縁部に、前記下部支持部の両側部を案内可能な一対のガイド部を設けたことを特徴とする請求項1記載のカップホルダ。
【請求項3】
前記底部支持部材に、前記ガイド部との干渉を防止可能な逃凹部を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2記載のカップホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−1371(P2013−1371A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138198(P2011−138198)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】