説明

カップ保持具

【課題】ブラジャー等のパッド付きカップ部にフィットするカップ保持具を提供する。
【解決手段】カップ部を有する衣類の左右カップ部を被せる左右一対のカップ保持用突出部を基体に突設したカップ保持具であって、前記カップ保持用突出部3には、最も膨出させた頂点4より下半周側の外縁に達する下部領域の少なくとも一部に、ブラジャー等のカップ部に装着されるパッドの膨出部に対応させる凹状円弧部10を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は下着のカップ保持具に関し、特に、ブラジャーの販売展示用あるいは購入したブラジャーの収容用として好適に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ブラジャー等のカップ部を有する衣類を立体的に展示する場合には、マネキンが用いられている。
この種のマネキンでは、ブラジャーのカップ部を支持するバスト状膨出部は、いずれも図9(A)に示すように、女性のバストの形状に添わせて略半球状に膨らませており、該バスト状膨出部100の頂点部分100aから下側半周部も円弧状に膨らませて湾曲させている。
【0003】
一方、近時販売されているブラジャーには、カップ部の裏面側の下半周部にパッドが着脱自在または一体に取り付けられている場合が多く、カップ部の下半周部は裏面側へと膨らんでいる。
よって、ブラジャーのパッド付きの左右カップ部をマネキンの左右のバスト状膨出部に被せると、図9(B)に示すように、ブラジャーBの裏面側へ膨出したパッド付き部分Pがマネキンの円弧状の膨出部に接触するため、ブラジャーBのカップCがマネキンのバスト状膨出部からずり下がり、ブラジャーのカップ部がマネキンのバスト状膨出部にぴったりとフィットしなくなる。その結果、カップ部の上端縁とマネキンのバスト状膨出部との間に大きな隙間があいてしまい、外観が悪くなる問題がある。
【0004】
なお、マネキンに関しては、特開2002−339132号公報で肩パッド部材についての提案はなされているが、ブラジャーのカップ部を支持するバスト状膨出部に関する提案はない。
また、本出願人は特開2003−237865号公報でブラジャー陳列台兼ブラジャー収納容器を提供しているが、ブラジャーのカップ部を被せるカップ保持突起については、従来と同様な略半球状としているため、ブラジャーのパッド付きカップ部がカップ保持突起にフィットしない問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開2002−339132号公報
【特許文献2】特開2003−237865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ブラジャー等のパッド付き衣類のカップに、フィットするカップ保持用突出部を備えるカップ保持具を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、カップ部を有する衣類の左右カップ部を被せる左右一対のカップ保持用突出部を基体に突設したカップ保持具であって、
前記カップ保持用突出部には、最も膨出させた頂点より下半周側の外縁に達する下部領域の少なくとも一部に、パッド膨出部に対応させる凹状円弧部を設けていることを特徴とするカップ保持具を提供している。
【0008】
従来のカップ保持用突出部では、女性のバストの形状に添わせて頂点から下半周部も凸状の円弧部としていたものを、本発明のカップ保持用突出部では逆に凹状円弧部として窪ませ、ブラジャーのカップの裏面側にパッドを取り付けた場合に発生する裏面側へ膨出部分を凹状円弧部に位置させ、それにより、カップ部がカップ保持用突出部からずり下がることなくフィットさせ、その結果、ブラジャー等の衣類のカップ部がカップ保持用突出部とフィットせずカップ部の上端側でカップ保持用突出部との間に大きな隙間があくのを防止している。
よって、該カップ保持用突出部を備えたマネキンやトルソとした場合、ブラジャー等の衣類のカップ部をマネキンのカップ保持用突出部にぴったりと添わせて、カップ部およびブラジャー等の衣類全体の外観を好ましくすることができる。
【0009】
前記カップ保持用突出部は、前記頂点より下側に3mm〜3cmの位置までは凸状円弧部とし、該凸状円弧部から下端外縁までを前記凹状円弧部としていることが好ましい。
即ち、カップ部の裏面側に装着するパッドはカップ部の頂点より下半周側にあり、頂点部分をくっきりと突出させるには、頂点に連続した位置から凹状円弧部の窪みを形成するよりは、前記のように3mm〜2cmの範囲は従来と同様に凸状円弧部として膨らませておく方が見栄えがよくなる。
なお、頂点位置から下端周縁まで凹状円弧部としてもよい。
【0010】
前記基体は保形性を有する繊維体からなり、前記カップ保持用突出部を前記基体をプレスして形成している。この場合、繊維体を金型に被せて熱プレスすることにより簡単にカップ保持用突出部を設けることができる。かつ、繊維体から形成すると、ブラジャー等の色を引き立たせる色で基体を設けることが容易にできる。
【0011】
あるいは、前記基体は樹脂成形品とし、前記カップ保持用突出部を一体的に成形してもよい。マネキンや裏面側を平坦面とした半身型トルソとする場合には、樹脂成形品とすることが好ましい。
【0012】
前記基体は熱プレスにより保形性を有する繊維基材と、該繊維基材の表面に積層一体化した表示面側繊維材とからなり、かつ、前記基体の外形は長方形状とし、その左右両側に前記カップ保持用突出部を設けていることが好ましい。ブラジャーの場合は、前記基体の裏面側にブラジャーの背面部をまわして止めることが好ましい。
具体的には、前記繊維基材は熱プレスで所要形状に成形され、該プレス加工された形状を保形する繊維、例えば、アクリル繊維が混紡され不織布等を用いている。一方、表示面側繊維材は、高級感を出す場合にはベルベット生地、シャープなイメージを出す場合には光沢のあるポリエステル布帛等、素材と色とを要望に応じて任意に変えるものとしている。該表面側繊維材が薄い布帛であっても裏面側の繊維基材と複層一体化することで保形性を保持することができる。
【0013】
前記基体を収容ケースの底面に配置し、または収容ケースの底面を前記基体としてケースと一体成形してもよい。
具体的には、前記収容ケースを樹脂製容器あるいは紙器とし、その底面に前記繊維体からなる基体を挿入配置してもよい。あるいは、収容ケースを樹脂成形し、その底面に前記カップ保持用突出部を一体成形で設けておいてもよい。
このように、収容ケースの底面にカップ保持用突出部を設けておくと、特許文献2に記載のように、展示用ケースとして利用でき、かつ、該ケース付きのままで販売すると、購入者はケースをブラジャーの収納容器として利用することができる。
なお、前記基体をケース内に入れず、基体だけを用い、そのカップ保持用突出部にブラジャーのカップを順次被せることにより、購入者はブラジャーの保持具として用いることもできる。
【0014】
前記基体の外形を長方形の台紙状とし、壁面に取付具で取り付けてブラジャーを立体展示可能とし、あるいは額縁内に取り付けて展示用とすることができる。
従来、ブラジャーを目立つように立体的に展示する場合は、マネキンにブラジャーを装着することによりなされている。しかしながら、マネキンは場所をとると共に高価であるため、多数のブラジャーを展示することができない。
これに対して、前記のように台紙状とすると、壁面に吊り下げたり、張り付けることができ、ブラジャーの販売ショップの壁面を利用して多数のブラジャーを立体展示することができる。
さらに、台紙の外周縁を平坦状としておくことにより、額縁内の表面台紙と裏板との間に周縁部を挟持して額縁内に収めることができる。1つの額縁内に1つのブラジャーを取り付けた基体を配置してもよいし、大きな1つの額縁内に複数のブラジャーをそれぞれ基体に取り付けて表示することもできる。
このように、本発明のブラジャー保持具を用いると、ショップの壁面を利用した展示を行うことができる。
【0015】
前記基体は、樹脂成形品からなるマネキンあるいは背面側は平坦面としているトルソからなる展示用としても良いことは言うまでもない。
【0016】
また、前記基体には、肩紐を挟むスリットや、ブラジャー等のカップ部の脇側部分を挟むスリットを設けることが好ましい。
【0017】
本発明のカップ保持具に被せる下着は、ブラジャー、ブラ付きスリップ、ブラ付きボディスーツ、水着等のカップ部を有する衣類である。特に、ブラジャーの展示用および収容用とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
前述したように、本発明のブラジャー保持具は、カップ保持用突出部の形状を、ブラジャー等のパッド付きカップ部の形状に添わせているため、カップ保持用突出部にブラジャー等のカップ部をぴったりとフィットさせることができる。よって、ブラジャー等のカップ部がずり落ちることを防止でき、カップ部の上端縁がカップ保持用突出部から隙間をあけた状態とならず、ブラジャー等のカップ部の造形性を的確に表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明のカップ保持具の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図4に第一実施形態のカップ保持具を示す。
カップ保持具1は、図1(A)に示すように、外形を横長な長方形状とした基体2の左右に、左右一対のカップ保持用突出部3(以下、突出部3と略称する)を設けている。
【0020】
図1(B)(C)に示すように、前記突出部3は最も膨出させた頂点4を挟んで、上半周部5は女性のバストに添わせて凸状円弧部の形状としている。頂点4より下側で下側外周縁6に達するまでの下半周部7では、頂点4から下側に3mm〜3cmの範囲の位置までは凸状円弧部8とし、該凸状円弧部8から下側外周縁6までは凹状円弧部10としている。該凹状円弧部の曲率は大きくして浅い窪みとしている。
【0021】
該凹状円弧部10の窪みは、図2に示すブラジャー20のカップ部21の背面側に装着されるパッド22の厚さおよび形状に添わせたものとしている。即ち、パッド22をカップ部21に装着した状態で、該パッド装着部は裏面側に膨出し、この膨出した部分が前記凹状円弧部10の窪みにフィットするように設定している。その際、ブラジャー20に装着されるパッド22のうち、最大厚みのパッド22に対応させた窪みとしていることが好ましい。
前記パッド22は頂点4の直下部分が最も上下方向に長く、前側中央部から脇側にかけて次第に上下長さを短くした形状としている。よって、前記凹状円弧部10はパッド22の形状に添わせて、頂点4の直下部分では上下方向に長くし、前側中央部および脇側に向かう左右両側部では上下方向を短くしている。
【0022】
前記突出部3を設けた基体2は、保形性を有する繊維体からなり、突出部を熱プレスして形成している。
前記繊維体からなる基体2は、図3に示すように、保形性を有する繊維基材11と、該繊維基材11の表面に接着剤で積層一体化した表示面側繊維材12とからなる。
前記繊維基材11は、アクリル繊維を含む繊維材からなり、メッシュ状の厚肉部を薄い基布に設けた一対の表面材11aの間に不織布11bを挟んで一体化してダンボール状とし、保形性を有するものとしている。該繊維基材11の表面に積層一体化する表面側繊維材12は任意の布帛からなり、本実施形態では高級感を出すためにベルベットを用いている。
前記左右一対の突出部3を囲む周縁部分15は平坦状としている。
【0023】
前記構成からなるカップ保持具1に、パッド付きブラジャー20を装着し、ブラジャー20の左右のカップ部21をカップ保持具1の左右の突出部3に被せると、図4に示すように、ブラジャー20の裏面側に膨出したパッド取付部分が突出部3の凹状円弧部10に密着する。よって、パッド取付部分が突出部3からずり下がることはなく、カップ部21が突出部3に密着した状態でかぶさり、カップ部21の上縁側は突出部3との間に隙間があかず、密着させることができる。
【0024】
前記左右一対の突出部3を備えた基体2からなる1枚の長方形状のカップ保持具をブラジャーの展示用として用いる場合は、ブラジャー20のカップ部21を突出部3に被せ、該ブラジャー20の背面部を基体2の裏面側に回し、基体2でブラジャー20を保持させる。これを、図5(A)に示すように、インナーウエアのショップの壁面に止め具25で止めたり、吊り下げることで、壁面を利用したブラジャーの立体展示を行うことができる。
【0025】
また、図5(B)(C)に示すように、額縁26に入れて展示することもできる。この場合、ブラジャー20を取り付けた基体2の周縁部を額縁26の表面台紙と裏板との間で挟持させればよい。
【0026】
なお、基体2の繊維基材11は前記の基材に限定されず、保形性を有する素材であればよい。かつ、基体2を樹脂成形品とし、突出部を一体成形で設けてもよい。
【0027】
図6に前記第一実施形態の変形例を示す。
図6に示すように、基板2の上辺から左右に間隔をかけてL形状の切り込み16を入れ、図2に示すブラジャー20の肩紐24を挿入して位置決めできるようにしている。さらに、左右両側壁にL形状の切り込み17を入れ、ブラジャー20の左右両側脇部を挿入し、位置決めできるようにしている。
【0028】
図7に示す第二実施形態のカップ保持具は、透明な樹脂製のケース30に第一実施形態の基体2を挿入し、ケース30の底壁30aの内面に配置している。該ケースの底壁内面はカップ保持具1の基体2の外形と略同一とし、基体2を移動不可としている。該ケース30の上面は開口としている。なお、ケース30は折り畳み型の紙器でもよい。
ケース30内に収容する基体2にブラジャーを装着して展示販売しても良いし、基体2を備えたケース30をブラジャー収容容器としてもよい。
【0029】
図8(A)(B)に第三実施形態のカップ保持具を示す。
第三実施形態は図8(A)のマネキン40、図8(B)の裏面側が平坦面とした半身型トルソ41のカップ保持部の形状を第一実施形態の突出部3と同一形状としている。
これらマネキン40およびトルソ41は樹脂成形品からなり、突出部3を設ける基体2は、マネキン40およびトルソ41の本体部となり、該本体部と前記突出部3とを一体成形で設けている。
このようにマネキンやトルソとすると、床面や台座から起立させて設置することができ、かつ、ブラジャーと対のパンティを着用させて展示することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第一実施形態のカップ保持具を示し、(A)は全体斜視図、(B)はカップ保持用突出部の拡大図、(C)は(B)の断面図である。
【図2】前記カップ保持具で保持するパッド付きブラジャーを示す図である。
【図3】カップ保持具の基材を示す一部断面斜視図である。
【図4】ブラジャーのカップ部を被せた状態の断面図である。
【図5】(A)(B)(C)はカップ保持具にブラジャーを装着して展示している状態を示す図である。
【図6】第一実施形態の変形例を示す図である。
【図7】第二実施形態のカップ保持具を示す図である。
【図8】(A)(B)は第三実施形態を示す図である。
【図9】(A)(B)は従来例を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1 カップ保持具
2 基体
3 カップ保持用突出部
4 頂点
5 上半周部
6 下側外周縁
8 凸状円弧部
10 凹状円弧部
20 ブラジャー
21 カップ部
22 パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ部を有する衣類の左右カップ部を被せる左右一対のカップ保持用突出部を基体に突設したカップ保持具であって、
前記カップ保持用突出部には、最も膨出させた頂点より下半周側の外縁に達する下部領域の少なくとも一部に、パッド膨出部に対応させる凹状円弧部を設けていることを特徴とするカップ保持具。
【請求項2】
前記カップ保持用突出部は、前記頂点より下側に3mm〜3cmの位置までは凸状円弧部とし、該凸状円弧部から下端外縁までを前記凹状円弧部としている請求項1に記載のカップ保持具。
【請求項3】
前記基体は保形性を有する繊維体からなり、前記カップ保持用突出部を前記基体をプレスして形成し、あるいは
前記基体は樹脂成形品からなり、前記カップ保持用突出部を一体的に成形している請求項1または請求項2に記載のカップ保持具。
【請求項4】
前記基体は保形性を有する繊維基材と、該繊維基材の表面に積層一体化した表示面側繊維材とからなり、かつ、前記基体の外形は長方形状とし、その左右両側に前記カップ保持用突出部を設けている請求項3に記載のカップ保持具。
【請求項5】
前記基体を収容ケースの底面に配置し、または収容ケースの底面を前記基体としてケースと一体成形している請求項3または請求項4に記載のカップ保持具。
【請求項6】
前記基体の外形を長方形の台紙状とし、壁面に取付具で取り付けて下着のカップ部を立体展示可能とし、あるいは額縁内に取り付けて展示用としている請求項3に記載のカップ保持具。
【請求項7】
前記基体は樹脂成形品からなるマネキンあるいは背面側は平坦面としているトルソからなる展示用としている請求項3に記載のカップ保持具。
【請求項8】
前記下着はブラジャー、ブラ付きスリップ、ブラ付きボディスーツ、水着等のカップ部を有する衣類である請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のカップ保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−155622(P2010−155622A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334005(P2008−334005)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(504313424)
【Fターム(参考)】