説明

カメラの圧板構造

【課題】簡易な構造で、かつ、カメラの小型化に有利なカメラの圧板構造を提供する。
【解決手段】本発明のカメラの圧板構造は、フィルムカートリッジ対応カメラ、すなわちAPSカメラに適用される。圧板8は、アパーチャ11が形成されたアパーチャ枠部材12に、ねじ22で固定されている。圧板8の図2中下側(アパーチャ枠部材12側)の面は、平らになっている。一方、圧板8の図2中上側(アパーチャ枠部材12と反対側)の面には、写真フィルムのパーフォレーションの通過を検知する2つの光センサー24、25と、写真フィルムの磁気記録層への情報の記録および再生を行う磁気ヘッド26と、IC27と、抵抗と、コンデンサと、磁気ヘッド26を駆動するための電子部品等が実装され、また、これらを電気的に接続する図示しない配線が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カメラの圧板構造に関する。
【0002】
【従来の技術】銀塩写真フィルム(写真フィルム)がフィルムカートリッジ内に完全に収納されていて、フィルムカートリッジがカメラに装填されたときに、フィルムカートリッジから写真フィルムが送り出され、すべてのコマについて撮影(露光)が終了すると再びフィルムカートリッジ内に写真フィルムが完全に引き込まれる(収納される)構成のフィルムカートリッジ対応カメラ、すなわちAPSカメラが知られている。
【0003】このカメラは、フィルムカートリッジがカメラに装填されたときに、フィルムカートリッジから写真フィルムが送り出されるようになっているので、従来のカメラのように、開閉する裏蓋を設ける必要がない。このため、圧板は、裏蓋に対しバネ等を介して支持されておらず、アパーチャを形成するアパーチャ取付部の背面側に固定的に設置されている。
【0004】そして、この圧板の背面側(アパーチャ取付部とは逆側)には、写真フィルムのパーフォレーションを検知するための光センサと、写真フィルムの磁気記録層に情報を記録する磁気ヘッドと、磁気ヘッドを駆動するための電子部品等が実装された回路基板が設置されている。
【0005】しかしながら、前記従来のカメラでは、カメラの厚さ方向に、圧板と、回路基板とが別々に配置されているので、カメラの厚さ方向のスペースを多く必要とし、カメラが大型化するという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、簡易な構造で、かつ、カメラの小型化に有利なカメラの圧板構造を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記(1)〜(6)の本発明により達成される。
【0008】(1) フィルムカートリッジから送り出された写真フィルムの露光領域を規制するアパーチャに対し、写真フィルムの厚さ方向のフィルム位置を規制する圧板を有するカメラの圧板構造であって、前記圧板は、カメラボディーに対して固定的に設置され、電子部品の実装基板を前記圧板で兼用したことを特徴とするカメラの圧板構造。
【0009】(2) 前記カメラボディーは、前記アパーチャを形成する枠部材であり、この枠部材に前記圧板が固定されている上記(1)に記載のカメラの圧板構造。
【0010】(3) フィルムカートリッジから送り出された写真フィルムの露光領域を規制するアパーチャに対し、写真フィルムの厚さ方向のフィルム位置を規制する圧板を有するカメラの圧板構造であって、前記圧板は、該圧板から前記アパーチャまでの距離が不変的に設置され、電子部品の実装基板を前記圧板で兼用したことを特徴とするカメラの圧板構造。
【0011】(4) 前記アパーチャを形成する枠部材に前記圧板が固定されている上記(3)に記載のカメラの圧板構造。
【0012】(5) 前記圧板の角部付近をねじ部材で固定した上記(2)または(4)に記載のカメラの圧板構造。
【0013】(6) 前記圧板には、少なくとも、写真フィルムの磁気記録層に情報を記録する磁気ヘッドと、写真フィルムのパーフォレーションの通過を検知するセンサーとが実装されている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のカメラの圧板構造。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明のカメラの圧板構造を添付図面に示す好適実施例に基づいて詳細に説明する。
【0015】図1は、本発明の圧板構造をレンズシャッター式カメラに適用した場合のカメラ全体を示す斜視図、図2は、図1に示すカメラの主要部である圧板構造を示す分解斜視図、図3は、図1に示すカメラの主要部である圧板構造の断面図(図2中のA−A’線での断面図)である。
【0016】図1に示すカメラ1は、通常(非装填時)は銀塩写真フィルム(写真フィルム)がフィルムカートリッジ内に完全に収納されていて、フィルムカートリッジがカメラ1に装填されたときに、フィルムカートリッジから写真フィルムが送り出され、すべてのコマについて撮影(露光)が終了すると再びフィルムカートリッジ内に写真フィルムが完全に引き込まれる(収納される)構成のフィルムカートリッジ対応カメラ、すなわちAPS(Advanced Photographing System )カメラである。
【0017】図1に示すように、カメラ1は、カメラボディー2を有し、カメラボディー2の背面には、ファインダー接眼窓3と、モードスイッチ、ドライブスイッチ、ストロボスイッチおよびイメージスイッチ等、カメラ1の機能を選択するスイッチ4と、シャッター速度、絞り値、撮影枚数(撮影コマ数)および選択されたカメラ1の機能等を表示する液晶表示パネル5とが、カメラボディー2の前面(正面)には、図示しない撮影光学系等が、カメラボディー2の上面には、図示しないレリーズスイッチ等が、それぞれ設置されている。
【0018】カメラボディー2内には、写真フィルムが収納されたフィルムカートリッジが装填される図示しないフィルムカートリッジ室と、図示しないスプール室と、このフィルムカートリッジ室とスプール室との間に配置された後述する背板(プレート)9(図2参照)とが形成されている。
【0019】そして、カメラボディー2の下面には、前記フィルムカートリッジ室を開閉するカートリッジ蓋7が、カメラボディー2の背面には、前記カートリッジ蓋7のロックを解除するロック解除操作レバー6が、それぞれ設置されている。前記カートリッジ蓋7は、辺71を中心に回動して開閉する。
【0020】前記スプール室には、図示しない写真フィルム給送機構によって駆動する図示しないスプールが設けられている。スプールは、その周面に写真フィルムを巻き付けながら、フィルムカートリッジ内の写真フィルムを巻き上げる構成となっている。
【0021】また、前記フィルムカートリッジ室には、フィルムカートリッジ室に装填されたフィルムカートリッジを駆動する図示しないフォークが設けられている。このフォークは、前記写真フィルム給送機構によって駆動する。
【0022】フィルムカートリッジ室に装填されるフィルムカートリッジには、フィルムカートリッジに収納されている写真フィルムについての撮影可能コマ数、写真フィルム感度などの各種情報が担持されている。
【0023】図4は、フィルムカートリッジに収納されている写真フィルムの構成例を示す図である。
【0024】同図に示すように、フィルムカートリッジに収納されている写真フィルム30の幅方向一端側(図4中下側)には、その長手方向(走行方向)に沿って磁気記録層31が形成されている。また、写真フィルム30の幅方向他端側(図4中上側)には、フィルム走行制御(フィルム走行および検知)のための複数のパーフォレーション32が形成されている。この場合、パーフォレーション32は、1コマにつき2つずつ、すなわち、コマ33の両端部に配置されている。
【0025】ここで、カートリッジ蓋7を回動して開き、フィルムカートリッジ室にフィルムカートリッジを装填し、カートリッジ蓋7を閉じると、前記写真フィルム給送機構によって、フォークが所定方向に回転し、これによりフィルムカートリッジから写真フィルム30が送り出されて、スプールに写真フィルム30のリーダ部が巻き取られ、所定のコマまで送られる。この場合、写真フィルム30が未撮影(未露光)のものであるときは、1コマ目まで送られ、写真フィルム30が一部撮影済のものであるときは、未撮影のコマのうちの最初のコマまで送られる。このような判断は、写真フィルム30の磁気記録層31への情報の記録の有無、またはそれに記録された情報に基づいて行われる。
【0026】また、撮影が1コマ終了したら、前記写真フィルム給送機構によって、スプールが所定方向に回転し、これにより、写真フィルム30がスプールに巻き付けられ、次のコマまで送られる。
【0027】そして、すべてのコマについて撮影が終了した場合、または、強制巻き戻しが行われた場合には、前記写真フィルム給送機構によって、フォークが前記と逆方向に回転し、これによりフィルムカートリッジ内に写真フィルム30が巻き戻される。
【0028】図2に示すように、カメラ1は、圧板8を有している。圧板8は、所定の電子部品を実装する回路基板(電子部品の実装基板)を兼ねるものである。この圧板8は、カメラボディー2内の背板9に固定されている。なお、圧板8については、後に詳述する。
【0029】カメラボディー2内には、前述したように、フィルムカートリッジ室とスプール室との間に配置された背板9が形成されている。この背板9には、写真フィルム30の1コマ(フレーム)の最大露光領域(露光領域)を規制するアパーチャ(開口)11が形成されたアパーチャ枠部材12が設けられている。
【0030】アパーチャ枠部材12のアパーチャ11の外側には、写真フィルム30の走行方向に延びる一対の平行な内レール13a、13bおよび一対の平行な外レール14a、14bが形成されている。
【0031】この場合、外レール14a、14bは、内レール13a、13bの外側に配置されている。
【0032】図3に示すように、外レール14a、14bの写真フィルム厚さ方向の高さは、内レール13a、13bの写真フィルム厚さ方向の高さより高くなっている。この高さの差は、写真フィルム30の厚さ以上とされる。
【0033】外レール14a、14bの表面には、圧板8の図3中左側(アパーチャ枠部材12側)の面が当接しており、これにより、圧板8と内レール13a、13bとの間にトンネル空間が形成される。写真フィルム30の幅方向の両側縁部は、このトンネル空間を通過する。
【0034】ここで、内レール13a、13bおよび圧板8は、写真フィルム30の表面に接触し、前後方向(写真フィルム厚さ方向)における写真フィルム30の位置および写真フィルム30の湾曲を規制する。そして、外レール14a、14bは、写真フィルム30の幅方向の縁に接触し、上下方向(写真フィルム幅方向)における写真フィルム30の位置を規制するとともに、写真フィルム30の送りが円滑になるように、写真フィルム30を案内する。
【0035】図2に示すように、外レール14a、14bの外側には、4つの突出部15が設けられ、各突出部15には、ねじ22と螺合するねじ孔16が形成されている。
【0036】圧板8は、ほぼ長方形の板状部材であって、その4つの角部付近には、それぞれ、ねじ22が挿入される貫通孔17が形成されている。そして、圧板8は、対応する貫通孔17およびねじ孔16に、4つのねじ22を螺入することにより、アパーチャ枠部材12、すなわち、背板9に固定され、これによりアパーチャ枠部材12から圧板8までの距離が不変となっている。
【0037】なお、圧板8の図2中下側(アパーチャ枠部材12側)の面は、平らになっている。
【0038】一方、圧板8の図2中上側(アパーチャ枠部材12と反対側)の面には、写真フィルム30のパーフォレーション32の通過を検知(写真フィルム30の走行を検知)する2つの光センサー(フォトリフレクタ)24、25と、写真フィルム30の磁気記録層31への情報の記録および再生を行う磁気ヘッド26と、IC(集積回路:Integrated Circuit)27と、抵抗と、コンデンサと、磁気ヘッド26を駆動するための電子部品等が実装(搭載)され、また、これらを電気的に接続する図示しない配線が形成されている。
【0039】図3に示すように、光センサー24、25は、内レール13aと外レール14aの間、すなわち、写真フィルム30のパーフォレーション32に対応する位置に配置されている。これら光センサー24、25は、その投光部および受光部が、アパーチャ枠部材12の方向(図3中左側)を向くように設置されている。
【0040】圧板8には、光センサー24、25の投光部および受光部と対向する部位に、開口18、19が形成されている。
【0041】また、圧板8には、内レール13bと外レール14bの間、すなわち、写真フィルム30の磁気記録層31に対応する部位に、開口21が形成されている。
【0042】そして、磁気ヘッド26は、この開口21に嵌入されている。なお、磁気ヘッド26は、そのヘッド部が、アパーチャ枠部材12の方向(図3中左側)を向くように設置されている。
【0043】図2に示すように、圧板8上の各電子部品は、可撓性の中継回路基板(FPC)23を介して、図示しない他の回路基板(回路ブロック)に電気的に接続されている。
【0044】ところで、このカメラ1では、フィルムカートリッジがカメラ1に装填されたときに、フィルムカートリッジから写真フィルム30が自動的に送り出されるようになっているので、裏蓋を設ける必要がない。このため、カメラ1では、圧板8をバネ等の付勢手段で付勢する必要がないので、圧板8の背面を自由に利用することができる。さらに、圧板8は、アパーチャ枠部材12に固定されているので、安定している。本発明では、これらの点に着目し、圧板8の背面に所定の電子部品を実装した圧板構造とした。
【0045】前記光センサ24、25は、走行する写真フィルム30のパーフォレーション32を検知する。光センサ24、25の出力は、制御回路であるIC27に入力され、IC27は、その出力の変化に基づいてパーフォレーション32の通過を検知し、通過数をカウントして写真フィルム30の走行量を測定する。この測定結果は、ローディング時には最初のコマ出し、撮影時にはコマ送り、巻戻し時には巻戻し完了の検知等に利用され、撮影コマ数が液晶表示パネル5に表示される。
【0046】また、写真フィルム30が次のコマまで巻き上げられる際、写真フィルム30の磁気記録層31には、例えば、撮影年月日、撮影時間、シャッター速度や絞り値等の撮影条件、プリントサイズやプリント枚数等のプリント条件のような撮影したコマ毎の情報が、磁気ヘッド26により記録される。なお、磁気ヘッド26の駆動は、磁気ヘッド駆動回路を介して、IC27により制御される。
【0047】以上説明したように、カメラ1の圧板構造によれば、圧板8が回路基板を兼ねるので、圧板の他に、別途回路基板を設けた場合に比べ、構造が簡易であるとともに、カメラの小型化(薄型化)に有利である。
【0048】そして、カメラ1の圧板構造によれば、部品点数が減少し、低コスト化に有利である。
【0049】また、圧板8がアパーチャ枠部材12に固定されているので、電子部品が安定して支持され、断線や短絡等の事故を防止することができる。そして、実装された電子部品やそれらにより構成される回路の信頼性も向上する。
【0050】以上、本発明のカメラの圧板構造を、図示の実施例に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0051】例えば、本発明のカメラの圧板構造は、図示のように、圧板8がアパーチャ枠部材12(背板9)に固定されたものに限らず、圧板8とアパーチャ枠部材12(背板9)の相対的位置関係が規制されれば、圧板8は、カメラボディー2内のいずれの部材(部位)に固定されていてもよい。
【0052】また、本発明のカメラの圧板構造は、レンズシャッター式カメラに限らず、一眼レフレックスカメラにも適用することができる。
【0053】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のカメラの圧板構造によれば、圧板に、所定の電子部品が実装されるので、カメラの小型化に有利である。そして、部品点数を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧板構造をレンズシャッター式カメラに適用した場合のカメラ全体を示す斜視図である。
【図2】図1に示すカメラの主要部である圧板構造を示す分解斜視図である。
【図3】図1に示すカメラの主要部である圧板構造を図2中のA−A’線で切断した断面図である。
【図4】フィルムカートリッジに収納されている写真フィルムの構成例を示す図である。
【符号の説明】
1 カメラ
2 カメラボディー
3 ファインダー接眼窓
4 スイッチ
5 液晶表示パネル
6 ロック解除操作レバー
7 カートリッジ蓋
71 辺
8 圧板
9 背板
11 アパーチャ
12 アパーチャ枠部材
13a、13b 内レール
14a、14b 外レール
15 突出部
16 ねじ孔
17 貫通孔
18、19、21 開口
22 ねじ
23 中継回路基板
24、25 光センサー
26 磁気ヘッド
27 IC
30 写真フィルム
31 磁気記録層
32 パーフォレーション
33 コマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 フィルムカートリッジから送り出された写真フィルムの露光領域を規制するアパーチャに対し、写真フィルムの厚さ方向のフィルム位置を規制する圧板を有するカメラの圧板構造であって、前記圧板は、カメラボディーに対して固定的に設置され、電子部品の実装基板を前記圧板で兼用したことを特徴とするカメラの圧板構造。
【請求項2】 前記カメラボディーは、前記アパーチャを形成する枠部材であり、この枠部材に前記圧板が固定されている請求項1に記載のカメラの圧板構造。
【請求項3】 フィルムカートリッジから送り出された写真フィルムの露光領域を規制するアパーチャに対し、写真フィルムの厚さ方向のフィルム位置を規制する圧板を有するカメラの圧板構造であって、前記圧板は、該圧板から前記アパーチャまでの距離が不変的に設置され、電子部品の実装基板を前記圧板で兼用したことを特徴とするカメラの圧板構造。
【請求項4】 前記アパーチャを形成する枠部材に前記圧板が固定されている請求項3に記載のカメラの圧板構造。
【請求項5】 前記圧板の角部付近をねじ部材で固定した請求項2または4に記載のカメラの圧板構造。
【請求項6】 前記圧板には、少なくとも、写真フィルムの磁気記録層に情報を記録する磁気ヘッドと、写真フィルムのパーフォレーションの通過を検知するセンサーとが実装されている請求項1ないし5のいずれかに記載のカメラの圧板構造。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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