説明

カメラ用羽根駆動装置

【課題】電磁アクチュエータによって、2枚の羽根を、それらの重なり量を変化させながら同時に同じ方向へ往復回転させるようにした小型化に有利なカメラ用羽根駆動装置を提供すること。
【解決手段】地板1に立設されている羽根取付け軸1d,1eにシャッタ羽根11,12が回転可能に取り付けられている。また、シャッタ羽根13は、シャッタ羽根12に立設された羽根取付け軸12dに回転可能に取り付けられている。更に、シャッタ羽根11,12,13には長孔11b,12c,13cが形成されていて、それらに回転子3の出力ピン3cが挿入されている。そのため、回転子3が回転すると、1枚のシャッタ羽根11と2枚のシャッタ羽根12,13とが相反する方向へ回転させられるが、シャッタ羽根12,13は、その回転によって、相互の重なり量を変化させるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁アクチュエータが、複数枚の羽根を往復作動させて撮影光路に進退させるようにしたカメラ用羽根駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などを含む情報端末機器に内蔵されるカメラや、コンパクトカメラなどに採用されるカメラ用羽根駆動装置としては、レンズシャッタ装置(以下、シャッタ装置という),絞り装置,フィルタ装置,レンズバリア装置が知られているが、それらのうち、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置の場合には、単独でユニット化されることもあるし、それらの二つ以上を一つのユニットとして構成されることもある。そして、下記の特許文献1には、3枚の羽根を有するシャッタ装置と、1枚の羽根を有する絞り装置とを、一つのユニットとして構成したカメラ用羽根駆動装置が記載されている。
【0003】
一般に、情報端末機器内蔵用カメラのシャッタ装置は、羽根を1枚だけ備えているものが多い。ところで、特許文献1に記載のシャッタ装置は、3枚の羽根を備えていて、2枚一組の羽根と1枚の羽根とを、電磁アクチュエータの出力ピンによって相反する方向へ同時に回転させ、露光開口を開閉するようにしている。このように複数枚の羽根を相反する方向へ回転させる構成のシャッタ装置は、周知のように、羽根を1枚備えたシャッタ装置よりも好適な画像が得られる。ところが、そのような構成のシャッタ装置は、どうしても大きな配置スペースを必要とするため、これまでは、主にコンパクトカメラに採用されてきたが、最近では、情報端末機器用カメラへの採用も要求されるようになってきた。
【0004】
このような観点から、特許文献1に記載されているシャッタ装置を見てみると、開閉作動中には、2枚で一組となっている方の羽根が、相互の重なり量を変化させるようになっていて、露光開口を全開にしているときには、その重なり量を最大にしている。そのため、露光開口の全開時における羽根の収容面積を小さくすることができ、装置の小型化には有利な構成になっている。また、2枚一組の羽根と他方の3枚目の羽根との配置関係を工夫しているため、装置全体を細長くてコンパクトに構成することが可能になっている。その結果、このような構成のシャッタ装置は、特異なデザインの小型カメラにも採用することが可能であり、特に、携帯電話を含む情報端末機器用のカメラに採用するのに適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−53433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のシャッタ装置において、装置全体の小型化を可能にしている大きな要因は、相反する方向へ回転する羽根の一方を2枚の羽根で構成し、作動中に相互の重なり量を変化させるようにしたことである。そして、このような羽根の構成は、羽根を1枚だけ備えている従来のシャッタ装置にも、適用することが可能である。
【0007】
ところで、このような構成を採用すると、羽根の枚数が1枚増える分だけ、地板に対する取付け部(通常は、地板に立設された軸)も一つ増えることになる。ところが、一般的に考えると、たとえ、そのように羽根の取付け部が一つ増えたとしても、羽根の収容面積をかなり小さくすることができるはずなので、装置全体を小型化するに何の問題もないと考えがちである。ところが、実際には、そう簡単なことではない。
【0008】
地板には、羽根のほかに、羽根に往復作動をさせるための電磁アクチュエータを取り付ける必要がある。また、地板との間に羽根室を構成しているカバー板などの取付け部も設ける必要があるし、各羽根の作動を停止させるためのストッパも設ける必要がある。そして、それらは、占有面積を変えることなく、全体面積を小さくした地板上に配置されることになるため、地板の全体面積に対するそれらの配置に必要な面積の割合は、当然大きくなってくる。
【0009】
従って、それらの配置位置との関係を考慮しながら、羽根の作動に支障のないようにして、各羽根の取付け部の配置位置を決めることは、決して簡単なことではない。そのため、特許文献1に記載されているシャッタ装置の場合にも、シャッタ羽根の形状や、羽根の取付け位置と電磁アクチュエータの配置位置との関係などを見てみれば、如何にも不自然であって、苦心している様子を察することができる。しかも、最近では、電磁アクチュエータを、地板とカバー板の間に配置した構成を要求されることが多いが、そのような要求に応えようとすると、それだけ地板の活用可能面積が少なくなるので、益々困難になってしまう。
【0010】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、電磁アクチュエータによって、2枚の羽根を、それらの重なり量を変化させながら同時に同じ方向へ往復回転させるようにしたカメラ用羽根駆動装置において、小さい面積の地板に対して、必要な構成要素を好適に配置できるようにした、小型であるにもかかわらず設計の自由度が大きくなるカメラ用羽根駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、撮影光路用の開口部を有する地板と、前記開口部とのいずれかによって光軸を中心にした露光開口を規制する開口部を有していて前記地板との間に羽根室を構成しているカバー板と、長さ方向の一端を前記地板の羽根室側の面に回転可能に取り付けており該一端と先端側の遮光部との間に該一端側から取付け部と長孔とを順に形成している第1羽根と、長さ方向の一端を前記取付け部に回転可能に取り付けており該一端と先端側の遮光部との間に長孔を形成している第2羽根と、前記二つの長孔に挿入した出力ピンを有していて前記地板に取り付けられており該出力ピンの往復作動によって前記二つの羽根を同じ方向へ往復回転させ前記二つの遮光部の重なり量を変化させながら前記露光開口に進退させる電磁アクチュエータと、を備えているようにする。
【0012】
その場合、前記二つの羽根が露光開口へ進入して停止したとき、前記二つの羽根に形成された開口形成縁の両方によって、露光開口よりも小さい開口が光軸を中心にして形成されるようにすると、カメラ用の絞り装置が得られる
【0013】
また、本発明のカメラ用羽根駆動装置においては、長さ方向の一端を前記地板の羽根室側の面に回転可能に取り付けていて該一端と先端側の遮光部との間に長孔を形成した第3羽根を備えており、前記電磁アクチュエータは、前記出力ピンを前記第3羽根の前記長孔にも挿入していて、該出力ピンの往復作動によって前記第3羽根を、前記第1及び第2羽根とは相反する方向へ往復回転させ、前記第1及び第2羽根と協働して露光開口を開閉させるようにすると、携帯電話を含む情報端末機器に内蔵する比較的高級なカメラや小型のコンパクトカメラなどに採用して有利なシャッタ装置が得られる。
【0014】
更に、本発明のカメラ用羽根駆動装置においては、前記二つの開口部との三者のいずれかによって露光開口を規制するようにした開口部を有している仕切り板が、前記地板と前記カバー板との間に配置されていて、前記カバー板との間に羽根室を構成しており、前記電磁アクチュエータは、前記地板と前記カバー板との間において前記仕切り板よりも前記地板側に配置されていて、前記出力ピンを、前記仕切り板に形成された逃げ孔から羽根室内に挿入しているようにすると、全ての構成部材を地板に対して同じ方向から順に組み付けることができて、組立作業が容易になるほか、地板とカバー板の間に電磁アクチュエータを配置しても内部がコンパクトに構成され、外観もシンプルな装置が得られる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、電磁アクチュエータによって、2枚の羽根を、それらの重なり量を変化させながら同時に同じ方向へ往復回転させるようにしたカメラ用羽根駆動装置において、それらの2枚のうちの一方だけを地板に対して回転可能に取り付けるようにし、他方の羽根をその一方の羽根に対して回転可能に取り付けるようにしたため、小さい面積の地板に対する必要な構成要素の好適なレイアウトが行えるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例の分解斜視図である。
【図2】カバー板を外して撮影待機状態を示した実施例の平面図である。
【図3】構成部材の重なり状態を理解し易く示した実施例の断面図である。
【図4】図2と同様にして撮影終了状態を示した実施例の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態を、図示した実施例によって説明する。尚、実施例は、本発明を3枚のシャッタ羽根を備えたシャッタ装置として構成したものであるが、本発明は、その他のシャッタ装置として構成することもできるし、絞り装置やレンズバリア装置として構成することもできるものである。そのため、それらの構成については、実施例の説明中において、随時、説明することにする。
【実施例】
【0018】
図1〜図4を用いて本実施例を説明するが、図1は、分解斜視図であり、図2は、カバー板を外して撮影待機状態を示した平面図であり、図3は、構成部材の重なり状態を理解し易く示した断面図であり、図4は、図2と同じようにして撮影終了状態を示した平面図である。尚、本実施例の説明に際しては、本実施例のシャッタ装置がカメラに組み付けられた状態を想定し、図1の下方側(図2,図4の背面側、図3の上方側)を「被写体側」といい、上方側を「撮像素子側」ということにする。しかしながら、周知のように、実際には、反対向きにしてカメラに組み付けられることもあることは言うまでもない。
【0019】
そこで先ず、本実施例の構成を説明する。本実施例の地板1は、合成樹脂製であって、平面外形形状は略長方形をしており、その中央よりも長さ方向の一端寄りに、円形をした撮影光路用の開口部1aを有している。また、地板1の撮像素子側の面には、電磁アクチュエータを配置するために複雑な形状をした凹部1bが形成されていて、その底部の一部には、被写体側の面まで貫通した比較的大きな逃げ孔1c(図3参照)が形成されている。
【0020】
地板1の撮像素子側の面には、二つの羽根取付け軸1d,1eと、三つのストッパ1f,1g,1hと、四つのカバー板取付け軸1i,1j,1k,1mが立設されていて、上記の凹部1bの底面には、回転子取付け軸1nが立設されている。本実施例は、このような地板1に対して、撮像素子側から他の構成部材を順に組み付けてゆき、最後に、一番撮像素子側に配置されるカバー板2を取り付けることによって、ユニットの組立が完了するようになっている。そのため、以下においては、それらの各構成部材を、その組み付け順に説明する。
【0021】
先ず、最初に組み付けられる電磁アクチュエータについて説明する。本実施例の電磁アクチュエータは、周知の電流制御式のアクチュエータであって、地板1に対しては、回転子と固定子を別々に組み付けるようになっているが、その組み付け順は、回転子を先に組み付けても、固定子を先に組み付けてもよいようになっている。しかし、ここでは、回転子の方を先にした場合で説明する。
【0022】
本実施例の回転子3は、上記の回転子取付け軸1nに回転可能に取り付けられている。この回転子3は、中心に孔を設けることによって円筒状をしている本体部3aと、その本体部3aから径方向へ伸びている腕部3bと、その腕部3bの先端に形成された出力ピン3cとからなっており、本体部3aの孔を上記の回転子取付け軸1nに嵌合させている。また、本実施例の場合には、本体部3aは、径方向に2極に着磁された永久磁石製であって、腕部3bと出力ピン3cとが合成樹脂製であるが、周知のように、腕部3bと出力ピン3cとを含めて全体が永久磁石製であってもよい。
【0023】
次に、固定子について説明する。本実施例の固定子は、固定子枠4と、コイル5と、ヨーク6とで構成されているが、コイル5については、図3にだけ示されている。それらのうち、固定子枠4は、筒状をしたボビン部4aを有しており、地板1側の面には、図3に示されているように、二つの端子ピン4b,4cを立設している。
【0024】
また、図3においてだけ示されているコイル5は、上記のボビン部4aの外側に巻回されており、図示していないが、その両端部は、上記の端子ピン4b,4cに巻き付けられている。
【0025】
更に、ヨーク6は、略U字形をしており、二つの脚部の先端近傍部位を、回転子3の本体部3aの周面に対向させる磁極部としている。そして、このヨーク6は、図1の左上方から、直線状をしている方の脚部を、固定子枠4のボビン部4aに貫通させている。
【0026】
ところで、このような構成をしている本実施例の固定子は、先ず固定子枠4に対してフレキシブルプリント配線板7を取り付けておき、その後、固定子枠4にヨーク6を取り付けてから、地板1に装着されている。そこで先ず、固定子枠4に対するフレキシブルプリント配線板7の取付け方を簡単に説明する。
【0027】
上記のように、固定子枠4のボビン部4aにコイル5を巻回し、それらの端部を端子ピン4b,4cに巻き付けた後、フレキシブルプリント配線板7に形成された二つの孔7a,7bを端子ピン4b,4cに緩く嵌合させ、半田付けをする。そのため、図3から分かるように、半田付け後における半田部8,9は、端子ピン4b,4cを中心に盛り上がった形状になる。そして、その後に、フラックスなどの汚れを洗浄したものが、組み付け用に供される。
【0028】
そこで次に、上記のようにして、固定子枠4のボビン部4aにヨーク6を取り付けておいてから、地板1の凹部1b内に装着する。そして、その装着状態においては、固定子は、複雑に形成された凹部1b内の形状によって、撮影光路に対して直交する方向への動きと被写体側への動きが規制されると共に、周知のように、ヨーク6の二つの磁極部が、回転子3の本体部3aの周面に対向した状態になる。また、図3に示されているように、このとき、半田部8,9は端子ピン4b,4cと共に地板1の逃げ孔1cに存在し、一部を被写体側に突き出している。更に、フレキシブルプリント配線板7は、地板1の側面から外部に引き出されているようになる。
【0029】
尚、本実施例の場合には、このように、電磁アクチュエータを、地板1のカバー板2側の面に組み付けているが、本発明は、このような構成に限定されず、反対側の面に組み付けるようにしても差し支えない。そして、そのようにする場合には、特許文献1などで周知のように、出力ピン3cを、地板1に設けた円弧状の孔からカバー板2側へ貫通させることになる。
【0030】
このような構成をしている電磁アクチュエータの次に、地板1に対して、仕切り板10が取り付けられている。この仕切り板10は、合成樹脂製の薄い板部材であって、地板1の開口部1aと重なるところに、開口部1aよりも直径の小さな円形の開口部10aを有しているほか、円弧状の長孔10bと、円形をした二つの孔10c,10dを有している。そして、長孔10bには、上記の回転子3の出力ピン3cが挿入されており、孔10c,10dには、上記の羽根取付け軸1d,1eが嵌合している。このようにして取り付けられた後、仕切り板10は、最後に取り付けられるカバー板2の所定の部位によって地板1側へ押され、回転子3と固定子とが撮像素子側へ移動するのを規制するようにしている。
【0031】
仕切り板10の次には、シャッタ羽根11が取り付けられている。そして、このシャッタ羽根11は、長さ方向の一端側に円形の孔11aを有し、その近傍には円弧状の長孔11bを有していて、他端側には遮光部11cを有しており、孔11aを、上記の羽根取付け軸1dに対して回転可能に嵌合させている。また、長孔11bには、上記の回転子3の出力ピン3cが挿入されている。
【0032】
その次には、シャッタ羽根12が取り付けられている。このシャッタ羽根12は、その長さ方向の一端に円形の孔12aを有し、他端側には遮光部12bを有していて、それらの孔12aと遮光部12bとの間には長孔12cを有している。また、撮像素子側の面には、孔12aと長孔との間に、羽根取付け軸12dを立設しており、さらに、被写体側の面には、長さ方向の一端近傍部と他端近傍部とに、上記のシャッタ羽根11の厚さよりも大きい寸法で垂直方向に突き出している突起部12e,12fが設けられている。そして、このシャッタ羽根12は、その孔12aを、上記の羽根取付け軸1eに対して回転可能に嵌合させており、長孔12cには、上記の回転子3の出力ピン3cが挿入されている。
【0033】
また、本実施例の場合、このシャッタ羽根12には、シャッタ羽根13が取り付けられている。そのシャッタ羽根13は、その長さ方向の一端に円形の孔13aを有し、他端側には遮光部13bを有していて、それらの孔13aと遮光部13bとの間には長孔13cを有している。そして、その孔13aを、シャッタ羽根12の上記の羽根取付け軸12dに対して回転可能に嵌合させており、長孔13cには、上記の回転子3の出力ピン3cが挿入されている。
【0034】
尚、本実施例の場合には、3枚のシャッタ羽根11,12,13が、仕切り板10側から、それらの符号の順に配置されているが、逆の順番で配置しても差し支えない。但し、その場合には、シャッタ羽根12に設けられている羽根取付け軸12dは、仕切り板10側に設けられ、突起部12e,12fは、カバー板2側に設けられることになる。
【0035】
最後に、カバー板2について説明する。本実施例のカバー板2は、合成樹脂製であって、平面外形形状は地板1と略同じ形状をしている。そして、このカバー板2は、地板1の開口部1aと仕切り板10の開口部10aとに重なるところに円形の開口部2aを有しているほか、円形をした七つの孔2b,2c,2d,2e,2f,2g,2hと、二つの長孔2i,2jを有している。また、このカバー板2の外周縁部には、二つの逃げ部2k,2mも設けられている。
【0036】
そして、このカバー板2は、それらの四つの孔2b,2c,2d,2eを、地板1に立設されている上記のカバー板取付け軸1i,1j,1k,1mに嵌合させ、それらの孔2b,2c,2d,2eから突き出したカバー板取付け軸1i,1j,1k,1mの先端を熱で溶融させ、フランジ状に変形させることによって地板1に取付けられている。図3には、そのようにしてカバー板2を取り付けた後の、カバー板取付け軸1i,1mの変形形状が示されている。
【0037】
このようにしてカバー板2が地板に取り付けられた状態においては、開口部2aが、地板1の開口部1aと仕切り板10の開口部10aとに重なっているが、本実施例の場合には、この開口部2aの直径は、地板1の開口部1aの直径よりも小さく、仕切り板10の開口部10aの直径よりも大きいため、露光開口は、仕切り板10の開口部10aによって規制される。しかしながら、開口部1a,2aのいずれか一方の直径を一番小さくし、露光開口を規制させるようにしても構わない。
【0038】
更に、上記のようにして、カバー板2が地板1に取り付けられた状態においては、孔2f,2gには、羽根取付け軸1d,1eの先端が挿入され、孔2hには、ストッパ1hの先端が挿入されている。また、長孔2iには、出力ピン3cの先端が挿入され、長孔2jには、羽根取付け軸12dの先端が挿入されている。そして、逃げ部2k,2mは、ストッパ1f,1gの先端を逃げ、干渉しないようになっている。
【0039】
尚、本実施例においては、仕切り板10が、このように、開口部10aを露光開口にしており、また、上記したように、電磁アクチュエータがカバー板2側へ移動するのを抑える役目もしているが、本発明は、このような仕切り板10を備えることを必須としない。周知のように、レンズを地板1に接近して配置するようにしたり、開口部1a,2aの加工精度が好適に得られたりする場合には、仕切り板10を必要としない場合があるし、電磁アクチュエータの移動を他の手段で抑えるようにしたり、電磁アクチュエータを地板1の反対側(外側)の面に取り付けるようにした場合などにも、仕切り板10を必要としない場合がある。
【0040】
図2は、このように構成された本実施例のシャッタ装置を、カバー板2を取り付ける前に、撮像素子側から見た平面図である。この図2を見れば明白なように、地板1には、シャッタ羽根13を取り付けるための第3の羽根取付け軸を立設する余地は全くない。言うまでもなく、その第3の羽根取付け軸は、単に立設すればよいというのではなく、電磁アクチュエータの出力ピン3cによって、シャッタ羽根13が、シャッタ羽根12と共に、それらの重なり量を変化させながら往復回転し得る位置に立設しなければならない。そのため、第3の羽根取付け軸を立設し得るようにするためには、地板1の面積をもっと大きくする必要が生じてしまう。
【0041】
このことは、言い換えれば、本実施例は、特許文献1に記載されている従来のシャッタ装置よりも、構成部材の形状や配置に無理がなく、装置全体のコンパクト化と小型化が可能になっており、それによって、安定した所期の作動も得られるようになっているということである。
【0042】
そこで次に、本実施例の作動を説明する。図2に示されている状態は、カメラの電源スイッチをオンにした撮影待機状態を示したものである。このとき、3枚のシャッタ羽根11,12,13は、開口部10aを全開にしている。そのため、図示していない撮像素子には被写体光が当たっており、撮影者は、モニターによって被写体像を観察することが可能になっている。
【0043】
また、このとき、電磁アクチュエータのコイル5には通電されていない。ところが、周知のように、回転子3は、本体部3aの永久磁石の磁極とヨーク6の二つの磁極部との対向配置関係によって、時計方向へ回転するように付勢されている。そのため、回転子3の出力ピン3cによって、シャッタ羽根11には反時計方向へ回転する力が加わり、シャッタ羽根12,13には時計方向へ回転する力が加わっている。しかしながら、シャッタ羽根11がストッパ1gに接触し、シャッタ羽根13がストッパ1fに接触しているので、その回転は阻止され、図2に示された状態が安定的に得られている。
【0044】
撮影に際してレリーズボタンを押すと、撮像素子に蓄積されていた電荷を放出して撮影が開始され、新たな電荷が撮像素子に蓄積されていく。そして、所定の時間が経過すると、露光時間制御回路からの信号によって、コイル5に対して順方向の電流が供給される。そのため、回転子3が反時計方向へ回転させられ、出力ピン3cによって、シャッタ羽根11を時計方向へ回転させ、シャッタ羽根12,13を反時計方向へ回転させていく。
【0045】
ところが、このとき、羽根取付け軸12dと出力ピン3cとの距離が、羽根取付け軸1eと出力ピン3cとの距離よりも短くて、羽根取付け軸12dが、羽根取付け軸1eと出力ピン3cとを結ぶ線上には存在していないことから、シャッタ羽根13の方がシャッタ羽根12よりも速く回転させられることになる。そのため、シャッタ羽根12,13は、それらの遮光部12b,13bの重なり量を小さくしながら、遮光部13bの方を先頭にして、反時計方向へ回転させられていくことになる。
【0046】
このように、シャッタ羽根11,12,13による開口部10aの閉じ作動が行われ、開口部10aを完全に閉鎖すると、その直後に、シャッタ羽根13がストッパ1hに当接して、3枚の羽根11,12,13の作動が停止させられる。その状態が、図4に示されている。
【0047】
尚、本実施例の場合には、シャッタ羽根12,13が細長い部材であるため、それらの先端側が、各々の面の垂直方向へ傾き易くなっている。そのため、作動中にバタつくことによって、各シャッタ羽根の摺接面の摩擦が変動したり、他の羽根と干渉したりして作動が安定しなくなるおそれがある。そのため、本実施例の場合には、シャッタ羽根12に突起部12e,12fを所定の厚さ(高さ)に形成して、それらを仕切り板10に摺接し得るようにすることによって所定の姿勢を保てるようにしている。しかしながら、それらの突起部12e,12fは、必ずしも必要でないし、設ける場合であっても先端側の突起部12fだけでもよい場合がある。
【0048】
このようにして、図4に示された状態になると、撮像素子に蓄積された電荷が、撮像情報として記憶装置に転送される。そして、その転送が終わると、コイル5に対して、今度は逆方向の電流が供給される。そのため、回転子3は時計方向へ回転させられ、出力ピン3cによって、シャッタ羽根11を反時計方向へ回転させ、シャッタ羽根12,13を時計方向へ回転させて、開口部10aの開き作動を行わせるが、このときにも、シャッタ羽根13は、シャッタ羽根12より速く回転されられるので、両者の遮光部12b,13bは、それらの重なり量を大きくしていく。
【0049】
その後、開口部10aを全開にすると、その直後に、シャッタ羽根11がストッパ1gに当接し、シャッタ羽根13がストッパ1fに当接することによって、シャッタ羽根11,12,13の開き作動が終了する。その後、電磁アクチュエータのコイル5に対する通電を断つと、図2の撮影待機状態に復帰したことになる。尚、本実施例のシャッタ装置をフィルムカメラに採用した場合は、周知のように、図4の状態が撮影待機状態であって、撮影時には、シャッタ羽根11,12,13は、開き作動を行ってから閉じ作動を行うことになる。
【0050】
上記のように、本実施例は、本発明を、3枚のシャッタ羽根を備えたシャッタ装置とし、シャッタ羽根11とシャッタ羽根12,13とを相反する方向へ回転させるようにしたものであるが、本発明は、このような構成に限定されるものではない。本実施例におけるシャッタ羽根11を外し、シャッタ羽根12,13の遮光部12b,13bの面積を大きくすることによって、2枚のシャッタ羽根12,13だけで開口部10aを開閉できるようにしても差し支えない。また、その場合、遮光部12b,13bの縁に、予め各々半円形などの開口形成縁を形成しておき、開口部10aを覆った状態のとき、それらの開口形成縁によって、開口部10aより小さい開口を形成するようにすれば、絞り装置とすることもできる。更に、本実施例のシャッタ装置は、殆ど同じ構成のまま、レンズバリア装置とすることも可能である。
【0051】
また、本実施例は、シャッタ装置を単独でユニット化したものであるが、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、シャッタ装置などを単独でユニット化したものに限定されず、特許文献1に記載されているカメラ用羽根駆動装置のように、地板1とカバー板2との間を中間板で仕切って羽根室を二つに分割し、一方にはシャッタ羽根を配置し、他方には絞り羽根を配置するようにして、地板には、二つの電磁アクチュエータを備えるようにしても差し支えない。
【符号の説明】
【0052】
1 地板
1a,2a,10a 開口部
1b 凹部
1c 逃げ孔
1d,1e,12d 羽根取付け軸
1f〜1h ストッパ
1i〜1k,1m カバー板取付け軸
1n 回転子取付け軸
2 カバー板
2b〜2h,7a,7b,10c,10d,11a,12a,13a 孔
2i,2j,10b,11b,12c.13c 長孔
2k,2m 逃げ部
3 回転子
3a 本体部
3b 腕部
3c 出力ピン
4 固定子枠
4a ボビン部
4b,4c 端子ピン
5 コイル
6 ヨーク
7 フレキシブルプリント配線板
8,9 半田部
10 仕切り板
11,12,13 シャッタ羽根
11c,12b,14b 遮光部
12e,12f 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影光路用の開口部を有する地板と、前記開口部とのいずれかによって光軸を中心にした露光開口を規制する開口部を有していて前記地板との間に羽根室を構成しているカバー板と、長さ方向の一端を前記地板の羽根室側の面に回転可能に取り付けており該一端と先端側の遮光部との間に該一端側から取付け部と長孔とを順に形成している第1羽根と、長さ方向の一端を前記取付け部に回転可能に取り付けており該一端と先端側の遮光部との間に長孔を形成している第2羽根と、前記二つの長孔に挿入した出力ピンを有していて前記地板に取り付けられており該出力ピンの往復作動によって前記二つの羽根を同じ方向へ往復回転させ前記二つの遮光部の重なり量を変化させながら前記露光開口に進退させる電磁アクチュエータと、を備えていることを特徴とするカメラ用羽根駆動装置。
【請求項2】
前記二つの羽根が露光開口へ進入して停止したとき、前記二つの羽根に形成された開口形成縁の両方によって、露光開口よりも小さい開口が光軸を中心にして形成されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項3】
長さ方向の一端を前記地板の羽根室側の面に回転可能に取り付けていて該一端と先端側の遮光部との間に長孔を形成した第3羽根を備えており、前記電磁アクチュエータは、前記出力ピンを前記第3羽根の前記長孔にも挿入していて、該出力ピンの往復作動によって前記第3羽根を、前記第1及び第2羽根とは相反する方向へ往復回転させ、前記第1及び第2羽根と協働して露光開口を開閉させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項4】
前記二つの開口部との三者のいずれかによって露光開口を規制するようにした開口部を有している仕切り板が、前記地板と前記カバー板との間に配置されていて、前記カバー板との間に羽根室を構成しており、前記電磁アクチュエータは、前記地板と前記カバー板との間において前記仕切り板よりも前記地板側に配置されていて、前記出力ピンを、前記仕切り板に形成された逃げ孔から羽根室内に挿入しているようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のカメラ用羽根駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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