説明

カルバメート化合物の製造方法

【課題】 本発明は、簡便かつ工業的にも好適なカルバメート化合物の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明の課題は、加水分解酵素触媒の存在下、アミン化合物とカーボネート化合物とを溶媒の非存在下にて反応させることにより、目的とするカルバメート化合物を収率良く、工業的にも好適に製造出来る方法により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボネート化合物とアミン化合物とを反応させて、カルバメート化合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カルバメート化合物は、例えば、イソシアネート化合物を製造するための原料として有用である。従来、毒性のあるホスゲンを使用しないカルバメート化合物の製造方法として、金属塩等の固体触媒を用いる方法が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
一方、加水分解酵素を用いてカルバメート化合物を得る方法としては、加水分解酵素の存在下、及びピリジンとテトラヒドロフラン混合溶媒存在下で、3’,5’−ジアミノヌクレオシド(アミン化合物)とジエチルカーボネートとの反応によるカルバメートの合成方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
ジアミンとカーボネートを、加水分解酵素存在下、1,4−ジオキサン溶媒中で反応させて、酵素的非対称化による光学活性アミンを合成している例がある(例えば、非特許文献2参照)。
【0005】
また、改変型リパーゼを用いたカーボネート化合物とアミン化合物とをトルエン中で反応させてカルバメート化合物を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭54−88201号公報
【特許文献2】特開2004−262892号公報
【特許文献3】特願2011−256937号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J.Org.Chem.,2004,Vol.69,1748−1751
【非特許文献2】J.Org.Chem.,2009,Vol.74,2571−2574
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記の非特許文献1の方法では、基質に対する酵素量が多く、反応時間も長い。更に生成物の収率も低い為、工業的に満足する製造方法とはいい難い。
また前記の非特許文献2の方法も同様に、触媒量が多く必要であり、反応時間も長い。そして溶媒に毒性のある1,4−ジオキサンを利用している点で工業的に好ましい方法ではない。
このように、加水分解酵素触媒存在下、アミン化合物とカーボネート化合物によるカルバメートの合成例は知られているが、いずれも溶媒の使用が必須であり、溶媒による加水分解酵素触媒の活性低下が問題とされている。更に溶媒と生成物を分離する精製工程、コスト面からの溶媒回収工程などが必須であり、工業的に問題点を有している。
【0009】
しかしながら、原料であるアミン化合物やカーボネート化合物などの溶解性、反応液の均一性、攪拌性の観点から、溶媒の非存在下で反応を行うことは避けられる傾向にある。そのため、溶媒の非存在下での効率的な合成例はこれまで報告されていなかった。
本発明の反応では、アミン化合物とカーボネート化合物とから、カルバメート化合物を製造するに当たり、溶媒の非存在下で反応を行うことにより、上記の課題を解決している。
【0010】
即ち、本発明は、少ない酵素量で、反応速度が高く、生成物の収率も高いカルバメート化合物の製造方法を提供することが出来るものである。
そして、本発明は、溶媒の非存在下で反応を行うため、溶媒による触媒の活性低下がなく、生成物の精製工程も必要が無い。更に溶媒を回収する工程も不要となり有利である。
以上から、本発明は、簡便かつ工業的にも好適なカルバメート化合物の製造方法を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、加水分解酵素触媒の存在下、アミン化合物とカーボネート化合物とを溶媒の非存在下にて反応させることにより、目的とするカルバメート化合物を収率良く、工業的にも好適に製造出来る方法を見出し、本発明に至った。
【0012】
すなわち本発明は、加水分解酵素を用いて、1分子中に1つ以上のアミノ基を有する、脂環式基又は芳香族基で置換されていても良いか、脂環式基又は芳香族基で中断されていても良い脂肪族アミン、及び脂肪族基で置換されていても良い脂環式アミンからなる群より選択されるアミン化合物とカーボネート化合物とを溶媒の非存在下にて反応させる工程を含む、カルバメート化合物の製造方法に関する。
本発明は、加水分解酵素が、担体に固定化されている前記に記載のカルバメート化合物の製造方法に関する。
本発明は、加水分解酵素が、固定床として反応容器に内装され、担体に固定化されている加水分解酵素であり、反応が、アミン化合物とカーボネート化合物とを該反応容器に流通させる工程を含む反応である、前記に記載のカルバメートの製造方法に関する。
本発明は、加水分解酵素が、リパーゼである、前記に記載のカルバメート化合物の製造方法に関する。
本発明は、アミン化合物が、一般式(1):
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、Rは、置換基を有していても良い、炭素原子数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素原子数2〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基、炭素原子数2〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキニル基、炭素原子数4〜24のシクロアルキルアルキル基、炭素原子数7〜21のアラルキル基、又は炭素原子数3〜20のシクロアルキル基であり、
nは、0又は1である。)
で示されるモノアミン化合物である、前記に記載のカルバメート化合物の製造方法に関する。
本発明は、アミン化合物が、一般式(4)
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、Rは、置換基を有していても良い、炭素原子数1〜20の直鎖状又は分岐鎖のアルキレン基、炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキレン−炭素原子数3〜20のシクロアルキレン−炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキレン基、又は炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン−炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキレン基、炭素原子数3〜20のシクロアルキレン基、又は炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキレン−炭素原子数3〜20のシクロアルキレン基であり、
m及びpは、互いに独立して、0又は1である。)
で示されるジアミン化合物である、前記に記載のカルバメート化合物の製造方法に関する。
本発明は、ジアミン化合物が、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,12−ドデカメチレンジアミン、イソホロンジアミン、1,3−ビス(アミノメチルシクロヘキサン)、1,4−ビス(アミノメチルシクロヘキサン)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキサンアミン)、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼン、及び1,4−ビス(アミノメチル)ベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、前記に記載のカルバメート化合物の製造方法に関する。
本発明は、反応温度が20〜90℃である、前記に記載のカルバメート化合物の製造方法に関する。
本発明は、カーボネート化合物がジメチルカーボネート又はジエチルカーボネートである、前記に記載のカルバメート化合物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、少ない酵素量で、収率良く、カルバメート化合物を製造することが出来る。また、反応溶媒による酵素触媒の活性の低下を起こすことないので、高い反応速度を得ることが出来る。更に、生成物と反応溶媒の分離工程も、溶媒の回収工程も必要とせずカルバメート化合物を製造することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明においては、加水分解酵素を用いて、分子中に少なくとも1つのアミノ基を有する、脂環式基又は芳香族基で置換されていても良いか、脂環式基又は芳香族基で中断されていても良い脂肪族アミン、及び脂肪族基で置換されていても良い脂環式アミンからなる群より選択されるアミン化合物と、カーボネート化合物とを溶媒の非存在下にて反応させることにより、カルバメート化合物が得られる。
【0019】
本発明の原料である、1分子中に1つ以上のアミノ基を有する有機化合物(以下「アミン化合物」という)は、第1級アミノ基(NH基)を1つ以上有するアミノ基含有有機化合物であって、脂環式基又は芳香族基で置換されていても良いか、脂環式基又は芳香族基で中断されていても良い脂肪族アミン、及び脂肪族基で置換されていても良い脂環式アミンからなる群より選択されるアミン化合物からなる群より選択される。
【0020】
本発明において、脂肪族アミンとは、脂肪族炭化水素基の炭素原子に直接結合する第1級アミノ基を1つ以上有する化合物であり、脂肪族炭化水素基は、脂環式基又は芳香族基で置換されていても良く、脂環式基又は芳香族基で中断されていても良い。
脂肪族炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状であり、不飽和結合を有していても良い、炭化水素基であり、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、又は炭素原子数2〜20のアルキニル基が挙げられる。
【0021】
脂環式基で置換された脂肪族アミンは、上記で定義された脂肪族アミンの炭化水素基が脂環式基で置換された化合物である。脂環式基は、環構造を含む炭化水素基であり、総炭素数3〜20の飽和又は不飽和の、単環又は多環(例えば、2〜4環)式の炭化水素基であり、炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、炭素原子数3〜20のシクロアルケニル基等が挙げられる。よって、脂環式基で置換された脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素原子数3〜20のシクロアルキル基で置換された炭素原子数1〜20のアルキル基が挙げられる。
【0022】
芳香族基で置換された脂肪族アミンは、上記で定義された脂肪族アミンの炭化水素基が、芳香族基で置換された化合物であり、芳香脂肪族ともいう。芳香族基は、炭素原子数6〜20の、単環又は多環の、ベンゼン環又はナフタレン環等の芳香環構造を有する炭化水素基であり、例えば、炭素原子数6〜20のアリール基が挙げられる。よって、芳香族基で置換された脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素原子数6〜20のアリール基で置換された炭素原子数1〜20のアルキル基が挙げられる。
【0023】
脂環式基で中断された脂肪族アミンは、上記で定義された脂肪族アミンの炭化水素基の炭素−炭素結合が、2価の脂環式基で中断された化合物である。2価の脂環式基としては、上記で定義された脂環式基から水素原子を1つ除いた2価の基が挙げられ、例えば、炭素原子数3〜20のシクロアルキレン基、炭素原子数3〜20のシクロアルケニレン基等が挙げられる。よって、脂環式基で中断された脂肪族基としては、例えば、炭素原子数1〜15のアルキレン−炭素原子数3〜20のシクロアルキレン−炭素原子数1〜15のアルキレン基が挙げられる。
【0024】
芳香族基で中断された脂肪族アミンとは、上記で定義された脂肪族アミンの炭化水素基の炭素−炭素結合が、2価の芳香族基で中断された化合物である。2価の芳香族基としては、上記で定義された芳香族基から水素原子を1つ除いた2価の基が挙げられ、例えば、炭素原子数6〜20のアリーレン基が挙げられる。芳香族基で中断された脂肪族基としては、例えば、炭素原子数1〜15のアルキレン−炭素原子数3〜20のアリーレン−炭素原子数1〜15のアルキレン基が挙げられる。
【0025】
本発明において、脂環式アミンとは、単環又は多環式である脂環式基の環上の炭素原子に直接結合する第1級アミノ基を1つ以上有する化合物であり、脂肪族基で置換されていても良い。脂環式アミンにおける、脂環式基としては、上記で定義された脂環式基と同様の基が挙げられる。
脂肪族基で置換された脂環式アミンとは、上記で定義された脂環式アミンの脂環式基が、脂肪族炭化水素基で置換された化合物である。脂肪族炭化水素基としては、上記で定義された脂肪族炭化水素基が挙げられる。脂肪族基で置換された脂環式アミンとしては、例えば、炭素原子数1〜20のアルキル基で置換された炭素原子数3〜20のシクロアルキル基が挙げられる。
本発明において、脂肪族基で置換された脂環式アミンであって、脂肪族基の炭素原子に直接結合する第1級アミノ基を有する脂環式アミンは、脂環式アミンに含むものとする。
【0026】
なお、アミン化合物は、例えば、エーテル結合、チオエーテル結合等の安定な結合をその分子骨格中に含んでいても良く、ハロゲン原子、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基、シアノ基、ニトロ基及びアセチル基、芳香環炭素原子に直接結合するアミノ基等の安定な置換基で置換されていても良い。
【0027】
本発明において、アミン化合物は、第1級アミノ基を1つ又は2つ有する化合物であることが望ましい。第1級アミノ基を1つ又は2つ有するアミン化合物として、例えば、一般式(1):
【0028】
【化3】

【0029】
(式中、
は、置換基を有していても良い、炭素原子数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素原子数2〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基、炭素原子数2〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキニル基、炭素原子数4〜24のシクロアルキルアルキル基、炭素原子数7〜21のアラルキル基、又は炭素原子数3〜20のシクロアルキル基であり、
nは、0又は1である。)
で示される分子中に1つの第1級アミノ基を有するモノアミン化合物(以下、「モノアミン化合物」という)、又は一般式(4):
【0030】
【化4】

【0031】
(式中、
は、置換基を有していても良い、炭素原子数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキレン基、炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキレン−炭素原子数3〜20のシクロアルキレン−炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキレン基、炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン−炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキレン基、炭素原子数3〜20のシクロアルキレン基、又は炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキレン−炭素原子数3〜20のシクロアルキレン基であり、
m及びpは、互いに独立して、0又は1である。)
で示される分子中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物(以下、「ジアミン化合物」という)が挙げられる。
【0032】
における炭素原子数1〜20の直鎖状又は分岐鎖のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基等が挙げられるが、好ましくは炭素原子数1〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、更に好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ドデシル基、イソプロピル基及びt−ブチル基である。
【0033】
における炭素原子数2〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基としては、アリル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−ペンテニル基、イソプロパニル基等が挙げられるが、好ましくは炭素原子数2〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基であり、更に好ましくはアリル基である。
【0034】
における炭素原子数2〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキニル基としては、エチニル基、プロパルギル基、ブテニル基、1−メチル−2−プロピニル基等が挙げられるが、好ましくは炭素原子数2〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキニル基であり、更に好ましくはエチニル基、プロパルギル基である。
【0035】
における炭素原子数3〜20のシクロアルキル基は、炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていても良い、単環又は多環の脂環式炭化水素基であり、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基等が挙げられるが、好ましくは炭素原子数3〜12のシクロアルキル基であり、更に好ましくはシクロヘキシル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基である。
【0036】
における炭素原子数4〜24のシクロアルキルアルキル基は、上記で定義された炭素原子数3〜20シクロアルキル基で置換された炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキル基であり、例えば、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、トリメチルシクロヘキシルメチル基、ノルボルニルメチル基等が挙げられるが、好ましくは炭素原子数3〜10のシクロアルキル基で置換された−炭素原子数1〜4のアルキル基であり、更に好ましくはシクロヘキシルメチル基である。
【0037】
における炭素原子数7〜21のアラルキル基は、例えば、炭素原子数6〜12のアリール基で置換された炭素原子数1〜9のアルキル基で示される基が挙げられる。炭素原子数6〜12のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられる。よって、炭素原子数7〜21のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられるが、好ましくは炭素原子数7〜11のアラルキル基であり、更に好ましくはベンジル基である。なお、これらの基は各種異性体を含む。
【0038】
前記Rとして挙げられた基は、さらなる置換基を有していても良い。Rにおけるさらなる置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素原子数1〜4のアルコキシ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基等の炭素原子数1〜6のアルキル基で二置換されたジアルキルアミノ基、シアノ基、ニトロ基及びアセチル基、及びRがアラルキル基である場合のベンゼン環に直接結合するアミノ基等が挙げられる。
【0039】
上記より、Rとして、好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ドデシル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、シアノメチル基、ニトロメチル基、フルオロエチル基、トリフルオロエチル基、トリクロロエチル基、シアノエチル基、ニトロエチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、t−ブトキシエチル基等の置換基を有していても良い、炭素原子数1〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素原子数3〜12のシクロアルキル基、炭素原子数4〜14のシクロアルキル基、ベンジル基、フルオロベンジル基、クロロベンジル基、ブロモベンジル基、ヨードベンジル基、メトキシベンジル基、ジメトキシベンジル基、ニトロベンジル基、ジニトロベンジル基、シアノベンジル基及びアミノベンジル基等の置換基を有していても良い、炭素原子数7〜11のアラルキル基であり;更に好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ドデシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、及びベンジル基である。
【0040】
以上より、一般式(1)で示されるモノアミン化合物として、好ましくはn−ヘキシルアミン、n−ドデシルアミン、シクロヘキシルメチルアミン、ベンジルアミンが挙げられる。
【0041】
における炭素原子数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−へキシレン基、n−ヘプチレン基、n−オクチレン基、n−ノニレン基、n−デシレン基、n−ドデシレン基等の直鎖状アルキレン基、及び2−メチルプロピレン基、2−メチルへキシレン基、テトラメチルエチレン基等の分岐鎖状アルキレン基が挙げられるが、好ましくは炭素原子数1〜20の直鎖状のアルキレン基であり、更に好ましくはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基である。
【0042】
における炭素原子数3〜20のシクロアルキレン基は、単環又は多環の炭化水素基であり、炭素原子数1〜4で置換されていてもよく、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,6−ジイル基が挙げられるが、好ましくは炭素原子数3〜12のシクロアルキレン基であり、更に好ましくはシクロへキシレン基、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,6−ジイル基である。
【0043】
の炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキレン−炭素原子数3〜20のシクロアルキレン−炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキレン基における、炭素原子数1〜4の直鎖状アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられる。炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキレン−炭素原子数3〜20のシクロアルキレン−炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキレン基としては、メチレン−シクロペンチレン−メチレン基、エチレン−シクロペンチレン−エチレン基、メチレン−シクロへキシレン−メチレン基等が挙げられるが、好ましくは炭素原子数1〜4の直鎖状アルキレン−炭素原子数3〜12のシクロヘキシレン−炭素原子数1〜4の直鎖状アルキレン基であり、更に好ましくはメチレン−シクロヘキシレン−メチレン基である。
【0044】
における、炭素原子数1〜4の直鎖状アルキレン−炭素原子数3〜20のシクロアルキレン基としては、好ましくは炭素原子数1〜4の直鎖状アルキレン−炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されている炭素原子数3〜12のシクロアルキレン基であり、更に好ましくはメチレン−トリメチルシクロヘキシレン基である。
【0045】
における、炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキレン−炭素原子数6〜20アリーレン−炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキレン基としては、好ましくは炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキレン−フェニレン−炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキレン基であり、更に好ましくはキシリレン基である。なお、これらの基は各種異性体を含む。
【0046】
における炭化水素基は、置換基を有していても良い。Rにおける置換基としては、Rにおける炭化水素基の置換基と同様の基が挙げられる。また、Rが、炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキレン−炭素原子数6〜20アリーレン−炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキレン基である場合、Rにおける置換基として、アリーレン基の芳香族炭素原子に直接結合する第1級アミノ基が挙げられる。
【0047】
以上より、Rとして、好ましくは炭素原子数1〜20の直鎖状又は分岐鎖のアルキレン基、炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキレン−炭素原子数3〜20のシクロアルキレン−炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキレン基、炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン−炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキレン基、炭素原子数3〜20のシクロアルキレン基、又は炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキレン−炭素原子数3〜20のシクロアルキレン基であり;更に好ましくは炭素原子数1〜12の直鎖状アルキレン基、炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキレン−炭素原子数3〜12のシクロアルキレン−炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキレン基、炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキレン−フェニレン−炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキレン基、炭素原子数3〜12のシクロアルキレン基、及び炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキレン−炭素原子数1〜4の直鎖状アルキル基で置換されている炭素原子数3〜12のシクロアルキレン基であり;より好ましくはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、シクロヘキシレン基、メチレン−トリメチルシクロヘキシレン基、シクロヘキシレンジメチレン基、キシリレン基である。
【0048】
本発明の原料であるアミン化合物としては、好ましくはジイソシアネートの原料となるビスカルバメート化合物が得られるジアミン化合物が挙げられ、更に好ましくは1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,12−ドデカメチレンジアミン、イソホロンジアミン、1,3−ビス(アミノメチルシクロヘキサン)、1,4−ビス(アミノメチルシクロヘキサン)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキサンアミン)、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼン、1,4−ビス(アミノメチル)ベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0049】
本発明において、アミン化合物がモノアミン化合物である場合は、本発明のカルバメート化合物の製造方法は、下記反応式〔I〕で示される。反応式〔I〕において、一般式(3)で示されるモノカルバメート化合物は、溶媒の非存在下、加水分解酵素を用いて、一般式(1)で示されるモノアミン化合物と一般式(2)で示されるカーボネート化合物とを反応させることにより得られる。
【0050】
【化5】

【0051】
(式中、R、R及びnは、前記で定義されたとおりである。)
【0052】
一般式(2)において、Rの置換基を有していても良い一価の炭化水素基は、一般式(1)で定義されたRと同義の基が挙げられる。Rにおける炭化水素基として、好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基等の炭素原子数1〜20、更に好ましくは炭素原子数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、より好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0053】
前記Rにおける炭化水素基は、置換基を有していても良い。Rにおける炭化水素基の置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、メトキシル基、エトキシル基、プロポキシル基、ブトキシル基等の炭素原子数1〜4のアルコキシ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基等の炭素原子数1〜4のアルキル基で二置換されたジアルキルアミノ基、シアノ基及びニトロ基が挙げられる。
【0054】
以上より、一般式(2)で示される化合物として、好ましくはジメチルカーボネート又はジエチルカーボネートである。
【0055】
〔反応式II〕
本発明において、アミン化合物がジアミン化合物である場合は、本発明のカルバメート化合物の製造方法は、下記反応式〔II〕で示される。反応式〔II〕において、一般式(5)で示されるビスカルバメート化合物は、溶媒の非存在下、加水分解酵素を用いて、一般式(4)で示されるジアミン化合物と一般式(2)で示されるカーボネート化合物とを反応させることにより得られる。
【0056】
【化6】

【0057】
(式中、R、R3、m及びpは、前記で定義されたとおりである。)
【0058】
反応式〔I〕において、一般式(1)で示されるモノアミン化合物1モルに対して、一般式(2)で示されるカーボネート化合物の量は、好ましくは1〜100モル、更に好ましくは1〜50モル、より好ましくは2〜20モル、特に好ましくは2〜10モルである。
反応式〔II〕において、一般式(4)で示されるジアミン化合物1モルに対して、一般式(2)で示されるカーボネート化合物の量は、好ましくは2〜200モル、更に好ましくは2〜100モル、より好ましくは4〜40モル、特に好ましくは4〜20モルである。
【0059】
本発明で使用される加水分解酵素としては、例えば、プロテアーゼ、エステラーゼ、リパーゼ等が挙げられるが、好ましくは豚肝臓由来のエステラーゼ(PLE)、豚肝臓由来のリパーゼ(PPL)、酵母又は細菌から単離可能な微生物のリパーゼ;更に好ましくはバルクホルデリア・セパシア(シュードモナス・セパシア)(Burkholderia cepacia (Pseudomonas cepacia))を起源とするリパーゼ(例えば、Amano PS(アマノエンザイム社製)等)、カンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)を起源とするリパーゼ(例えば、Novozym 435(ノボザイム社製)等)、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor Miehei)を起源とするリパーゼ(例えば、Lipozyme RM IM(ノボザイム社製)等)、サーモマイセス・ラヌギノサス(Thermomyces lanuginosus)を起源とするリパーゼ(Lipase TL)、ムコール・ミエヘイ(Mucor Miehei)を起源とするリパーゼ(Lipase MM)、より好ましくはCandida antarcticaを起源とするリパーゼが使用される。なお、これらの加水分解酵素は、天然の形又は固定化酵素として市販品をそのまま使用することが出来、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0060】
これら加水分解酵素は、上記のような微生物から得られた加水分解酵素をコードする遺伝子を、酵母や糸状菌のような適切な宿主に導入して得られた組換え体の培養物から得たものであっても良い。
【0061】
加水分解酵素の組換え発現のために使用される組換えDNA技術は、例えば、特許文献3に記載されている。加水分解酵素のアミノ酸配列は特に限定されず、具体的には、これらの配列において、1個又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ加水分解酵素活性を有するタンパク質を本発明の反応に好適に使用することができる。又、これらの配列と、例えば90%以上、好ましくは95%、より好ましくは97%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列からなり、かつ加水分解酵素活性を有するタンパク質も本発明の反応に好適に使用することもできる。
【0062】
前記の加水分解酵素は、天然の形又は固定化酵素として市販されているものを、化学的処理又は物理的処理を行った後に使用することも出来る。本発明において、加水分解酵素は、好ましくは担体に固定化されているものであり、更に好ましくは加水分解酵素が、固定床として反応容器に内装されている、担体に固定化されている加水分解酵素である。
【0063】
前記化学的処理又は物理的処理方法としては、例えば、加水分解酵素を緩衝液に溶解させ(必要に応じて有機溶媒を存在させても良い)、これをそのまま、又は攪拌した後、凍結乾燥する等の方法が挙げられる。なお、ここでの凍結乾燥とは、例えば、J.Am.Chem.Soc.,122(8),1565−1571(2000)記載の水溶液又は水分を含む物質を急速に氷点以下の温度で凍結させ、その凍結物の水蒸気圧以下に減圧して水を昇華させて除去し、物質を乾燥させる方法である。なお、当該処理によって、触媒活性(反応性や選択性等)を向上させることができる。
【0064】
前記加水分解酵素の使用量は、反応式〔I〕の場合、一般式(1)で示されるモノアミン化合物1gに対して、好ましくは0.1〜1000mg、更に好ましくは1〜200mg、より好ましくは10〜100mgである。
反応式〔II〕の場合、一般式(4)で示されるジアミン化合物1gに対して、好ましくは0.1〜1000mg、更に好ましくは1〜200mg、より好ましくは10〜100mgである。
【0065】
本発明の反応における反応温度は、酵素が失活しない温度であれば特に制限されないが、収率良く、所望のカルバメート化合物を得るために、好ましくは20℃〜90℃、更に好ましくは40℃〜90℃、より好ましくは50℃〜90℃である。また、反応圧力は、特に制限されないが、好ましくは常圧下又は減圧下である。
【0066】
本発明では、溶媒の非存在下にて反応を行うため、反応生成物を溶媒と分離する必要が無いという点で有利である。
【0067】
また、本発明では、本発明の反応が一般に均一系であり、触媒再利用が可能かつ後処理が簡便であるが可能であるという点で有利である。即ち、反応終了時にろ過により触媒を取り除き、得られたろ液を濃縮することにより生成物が取得できる。また得られたろ液からの晶析操作によっても生成物を得ることができる。
【0068】
本発明の反応のために用いられる製造装置は、特に制限されず、例えば、反応容器、加熱(冷却)装置等の一般的な製造装置が挙げられる。本発明において、好ましくは加水分解酵素が担体に固定化されており、固定床として反応容器に内装されている装置である。よって、本発明の反応は、好ましくは一般式(1)で示される一般式(1)で示されるモノアミン化合物又は一般式(4)で示されるジアミン化合物と、一般式(2)で示されるカーボネート化合物とを、該反応容器に流通させる工程を含む反応である。
【0069】
更に、本発明の製造方法によって得られた、一般式(3)で示されるモノカルバメート化合物又は一般式(6)で示されるビスカルバメート化合物は、例えば、蒸留、分液、抽出、晶析、再結晶及びカラムクロマトグラフィー等の一般的な方法によって、更に精製することも出来る。
【実施例】
【0070】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定され
るものではない。
【0071】
得られた目的物は、ガスクロマトグラフィーを用いて収率を求めた。
反応収率は、生成物標準品と内標比の検量線から、生成物量を定量して算出した。
分析条件は、下記の通りである。
【0072】
ガスクロマトグラフィー条件
カラム:DB−1 30m×0.25mmID 0.25μm
カラム温度:80℃(2分間保持)→昇温速度10℃/分→250℃(2分間保持)
注入口温度:200℃ 検出器:FID 検出器温度:250℃
キャリアーガス:ヘリウム、線速度30cm/秒
スプリット比;50:1、注入量 : 1.0μl
【0073】
実施例1(N−ヘキシル−O−メチルカルバメートの合成)
攪拌装置、温度調節及び冷却装置を備えた内容積19mlのガラス製容器に、n−ヘキシルアミン200mg(1.97mmol)とジメチルカーボネート(DMC)0.214g(2.38mmol、n−ヘキシルアミン1モルに対して、1.2モル)
更に、内部標準物質として、テトラエチレングリコールジメチルエーテル80.0mgを加えた後、固定化リパーゼ(Novozym 435(商品名);ノボザイム社製)10.0mgを混合し、攪拌しながら70℃にて24時間反応させた。反応中、3、6及び9時間後の反応液25μlを採取し、メタノール475μlを加えたものをろ過し、1.0μlをガスクロマトグラフィーによりN−ヘキシル−O−メチルカルバメートを分析して反応収率を算出した。
その結果、反応収率は、3時間後に31%、6時間後に47%、そして9時間後には52%にまで達した。
【0074】
実施例2(N−ヘキシル−O−メチルカルバメートの合成)
実施例1においてDMCの量を0.535g(5.94mmol、n−ヘキシルアミン1モルに対して、3.0モル)としたこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。
その結果、反応収率は、3時間後に36%、6時間後に61%、そして9時間後には73%にまで達した。
【0075】
実施例3(N−ヘキシル−O−メチルカルバメートの合成)
実施例1においてDMCの量を1.07g(11.9mmol、n−ヘキシルアミン1モルに対して、6.0モル)としたこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。
その結果、反応収率は、3時間後に50%、6時間後に93%、そして9時間後には96%にまで達した。
【0076】
実施例4(N−ヘキシル−O−メチルカルバメートの合成)
攪拌装置、温度調節及び冷却装置を備えた内容積19mlのガラス製容器に、n−ヘキシルアミン200mg(1.97mmol)とジメチルカーボネート(DMC)1.72g(19mmol、n−ヘキシルアミン1モルに対して、9.6モル)
更に、内部標準物質として、テトラエチレングリコールジメチルエーテル40.0mgを加えた後、固定化リパーゼ(Novozym 435(商品名);ノボザイム社製)10.0mgを混合し、攪拌しながら70℃にて24時間反応させた。反応中、3、6、9及び24時間後の反応液50μlを採取し、メタノール150μlを加えたものをろ過し、1.0μlをガスクロマトグラフィーによりN−ヘキシル−O−メチルカルバメートを分析して反応収率を算出した。
その結果、反応収率は、3時間後に29%、6時間後に55%、9時間後に77%、そして24時間後には96%にまで達した。
【0077】
比較例1(N−ヘキシル−O−メチルカルバメートの合成)
実施例4においてDMCの量を1.72gから0.536gに変え、1,4-ジオキサンを2.0ml加えたこと以外は、実施例4と同様にして反応を行った。
その結果、反応収率は、3時間後に10%、6時間後に18%、9時間後に24%、そして24時間後でも50%にまでしか到らなかった。
【0078】
以上の結果より、溶媒として1,4−ジオキサンを用いた場合に比較して、溶媒を加えない方が、高い反応速度と高い収率を示すことが分かった。
【0079】
実施例5(1,3−ビス(メトキシカルボニルアミノメチル)ベンゼンの合成)
攪拌装置、温度調節及び冷却装置を備えた内容積19mlのガラス製容器に、1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼン200mg(1.46mmol)とジメチルカーボネート(DMC)1.72g(19mmol、1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼン1モルに対して、13モル)
更に、内部標準物質として、テトラエチレングリコールジメチルエーテル40.0mgを加えた後、固定化リパーゼ(Novozym 435(商品名);ノボザイム社製)10.0mgを混合し、攪拌しながら70℃にて24時間反応させた。反応中、3、6、9及び24時間後の反応液50μlを採取し、メタノール150μlを加えたものをろ過し、1.0μlをガスクロマトグラフィーにより1,3−ビス(メトキシカルボニルアミノメチル)ベンゼンを分析して反応収率を算出した。
その結果、反応収率は、3時間後に8%、6時間後に36%、9時間後に49%、そして24時間後には87%にまで達した。
【0080】
比較例2(1,3−ビス(メトキシカルボニルアミノメチル)ベンゼンの合成)
実施例5においてDMCの量を1.72gから0.79gに変え、1,4-ジオキサンを2.0ml加えたこと以外は、実施例5と同様にして反応を行った。
その結果、反応収率は、3時間後に2%、6時間後に10%、9時間後に17%、そして24時間後でも56%にまでしか到らなかった。
【0081】
以上の結果より、溶媒として1,4−ジオキサンを用いた場合に比較して、溶媒を加えない方が、高い反応速度と高い収率を示すことが分かった。
【0082】
実施例6(N−ヘキシル−O−エチルカルバメートの合成)
攪拌装置、温度調節及び冷却装置を備えた内容積19mlのガラス製容器に、n−ヘキシルアミン200mg(1.97mmol)とジエチルカーボネート1.66g(14mmol、n−ヘキシルアミン1モルに対して、7.1モル)更に、内部標準物質として、テトラエチレングリコールジメチルエーテル40.0mgを加えた後、固定化リパーゼ(Novozym 435(商品名);ノボザイム社製)10.0mgを混合し、攪拌しながら70℃にて24時間反応させた。反応中、3、6、9及び24時間後の反応液50μlを採取し、メタノール150μlを加えたものをろ過し、1.0μlをガスクロマトグラフィーによりN−ヘキシル−O−エチルカルバメートを分析して反応収率を算出した。
その結果、反応収率は、3時間後に25%、6時間後に53%、9時間後に71%、そして24時間後には99%にまで達した。
【0083】
比較例3(N−ヘキシル−O−エチルカルバメートの合成)
実施例6においてジエチルカーボネートの量を1.66gから0.69gに変え、1,4-ジオキサンを2.0ml加えたこと以外は、実施例6と同様にして反応を行った。
その結果、反応収率は、3時間後に9%、6時間後に18%、9時間後に23%、そして24時間後でも55%にまでしか到らなかった。
【0084】
以上の結果より、溶媒として1,4−ジオキサンを用いた場合に比較して、溶媒を加えない方が、高い反応速度と高い収率を示すことが分かった。
【0085】
実施例7(1,3−ビス(メトキシカルボニルアミノメチル)シクロヘキサンの合成)
【0086】
【化7】

【0087】
攪拌装置、温度調節及び冷却装置を備えた内容積19mlのガラス製容器に、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン400mg(2.81mmol)とジメチルカーボネート(DMC)1.62g(18mmol、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン1モルに対して、6.5モル)
更に、内部標準物質として、テトラエチレングリコールジメチルエーテル40.0mgを加えた後、固定化リパーゼ50.0mgを混合し、攪拌しながら50℃にて24時間反応させた。反応中、5,8,12及び24時間後の反応液50μlを採取し、ジメチルホルムアミド150μlを加えたものをろ過し、1.0μlをガスクロマトグラフィーにより1,3−ビス(メトキシカルボニルアミノメチル)シクロヘキサンを分析して反応収率を算出した。
【0088】
固定化リパーゼは、市販固定化リパーゼと、特許文献3に記載のCandida antarcticaを起源とするリパーゼの改変体を固定化したものを用いた。なお、改変リパーゼの調製、及び、固定化については、特許文献3に記載の通りである。
【0089】
固定化リパーゼとして「Novozyme435(ノボザイム社製)」を用いた場合には、反応収率は、5時間後に5%、8時間後に7%、12時間後に16%、そして24時間後には45%にまで達した。
【0090】
固定化リパーゼとして「UCAL−ER: Q193E/L278R変異型リパーゼ固定化物(担体重量比担持酵素量10質量%)」を用いた場合には、反応収率は、5時間後に4%、8時間後に8%、12時間後に23%、そして24時間後には77%にまで達した。
【0091】
固定化リパーゼとして「UCAL−FEK:W104F/Q193E/L278K変異型リパーゼ(担体重量比担持酵素量10質量%)」を用いた場合には、反応収率は、5時間後に3%、8時間後に6%、12時間後に14%、そして24時間後には36%にまで達した。
【0092】
以上の結果より、溶媒の非存在下であっても、高い反応速度と高い収率を示すことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、アミン化合物とカーボネート化合物からカルバメート化合物を得る方法に関する。本発明の製造方法によって得られるカルバメート化合物は、例えば、毒性のあるホスゲンを使用しないイソシアネートの製造原料として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解酵素を用いて、1分子中に1つ以上のアミノ基を有する、脂環式基又は芳香族基で置換されていても良いか、脂環式基又は芳香族基で中断されていても良い脂肪族アミン、及び脂肪族基で置換されていても良い脂環式アミンからなる群より選択されるアミン化合物とカーボネート化合物とを溶媒の非存在下にて反応させる工程を含む、カルバメート化合物の製造方法。
【請求項2】
加水分解酵素が、担体に固定化されている請求項1記載のカルバメート化合物の製造方法。
【請求項3】
加水分解酵素が、固定床として反応容器に内装され、担体に固定化されている加水分解酵素であり、反応が、アミン化合物とカーボネート化合物とを該反応容器に流通させる工程を含む反応である、請求項1又は2に記載のカルバメートの製造方法。
【請求項4】
加水分解酵素が、リパーゼである、請求項1から3いずれか1項に記載のカルバメート化合物の製造方法。
【請求項5】
アミン化合物が、一般式(1):
【化7】

(式中、Rは、置換基を有していても良い、炭素原子数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素原子数2〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基、炭素原子数2〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキニル基、炭素原子数4〜24のシクロアルキルアルキル基、炭素原子数7〜21のアラルキル基、又は炭素原子数3〜20のシクロアルキル基であり、
nは、0又は1である。)
で示されるモノアミン化合物である、請求項1から4いずれか1項に記載のカルバメート化合物の製造方法。
【請求項6】
アミン化合物が、一般式(4)
【化8】

(式中、Rは、置換基を有していても良い、炭素原子数1〜20の直鎖状又は分岐鎖のアルキレン基、炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキレン−炭素原子数3〜20のシクロアルキレン−炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキレン基、又は炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン−炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキレン基、炭素原子数3〜20のシクロアルキレン基、又は炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキレン−炭素原子数3〜20のシクロアルキレン基であり、
m及びpは、互いに独立して、0又は1である。)
で示されるジアミン化合物である、請求項1から4いずれか1項に記載のカルバメート化合物の製造方法。
【請求項7】
ジアミン化合物が、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,12−ドデカメチレンジアミン、イソホロンジアミン、1,3−ビス(アミノメチルシクロヘキサン)、1,4−ビス(アミノメチルシクロヘキサン)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキサンアミン)、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼン、及び1,4−ビス(アミノメチル)ベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項6記載のカルバメート化合物の製造方法。
【請求項8】
反応温度が20〜90℃である、請求項1から7のいずれか1項記載のカルバメート化合物の製造方法。
【請求項9】
カーボネート化合物がジメチルカーボネート又はジエチルカーボネートである、請求項1から8のいずれか1項記載のカルバメート化合物の製造方法。