説明

カンジキ

【課題】 雪中に沈み込んでしまった場合にも簡単に脱出できると共に、歩行中の着雪や着氷などを自動的に脱落、排除可能とすることができる新たなカンジキ技術を提供する。
【解決手段】 左右一対のサイドレール2,2各前端間を前弓幹3で、また同各後端間は後弓幹4で夫々連結するようにし、それら左右一対のサイドレール2,2、前・後弓幹3,4によって利用対象者足S型を囲む枠状本体10を形成すると共に、当該左右サイドレール2,2各前後長中途であってやや前方寄り適所間には、足繋縛機構6が適所に組み込まれたブリッジ5を掛け渡して連結する一方、それらブリッジ5および前・後弓幹3,4には、利用対象者足Sの踏み込み動作に応じて左右サイドレール2,2間隔を拡大可能、且つ、左右サイドレール2,2間隔を元に復帰可能とする弾発性回帰機構8を組み込んでなるカンジキ1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、雪上の歩行を補助可能とする装備、特に足元の雪中への沈み込みだけではなく、交互に繰り出す際の足のもつれを可能な限り少なくするようにしたカンジキやスノーシューに関するものであり、それらを製造する分野は勿論のこと、その輸送、保管、組み立ておよび設置に必要となる設備、器具類を提供、販売する分野から、それら資材や機械装置、部品類に必要となる素材、例えば、木材、石材、各種繊維類、プラスチック、各種金属材料等を提供する分野、それらに組み込まれる電子部品やそれらを集積した制御関連機器の分野、各種計測器の分野、当該設備、器具を動かす動力機械の分野、そのエネルギーとなる電力やエネルギー源である電気、オイルの分野といった一般的に産業機械と総称されている分野、更には、それら設備、器具類を試験、研究したり、それらの展示、販売、輸出入に係わる分野、将又、それらの使用の結果やそれを造るための設備、器具類の運転に伴って発生するゴミ屑の回収、運搬等に係わる分野、それらゴミ屑を効率的に再利用するリサイクル分野などの外、現時点で想定できない新たな分野までと、関連しない技術分野はない程である。
【背景技術】
【0002】
(着目点)
冬山登山や雪原を歩行する際に、足の接地面積を拡大して雪中への沈み込みを防止して軽快且つ安全に歩行しようとするのに、カンジキやスノーシューを装着するのが一般的且つ有効であることは周知の事実となっており、一般に市販されているものは、木製、プラスチック製、アルミ製などの硬質で堅牢な材質からなり、装着、歩行中に、例えば、雪下にススキ、笹、倒木などが在るところなどのように、雪下が軟弱であったり、空間が存在した場合などには、カンジキを付けていても雪層を踏み抜き、膝上まで雪中に沈み込んでしまうことも多く、このように雪中に沈み込んでしまったカンジキやスノーシューを、雪上、それが特に凍結して硬く締まった雪上まで抜き出すことは容易ではなく、どうしても抜けない場合には、止むなく、靴をカンジキに縛り付けている紐やベルト類などを一旦外し去り、足だけを雪中から抜き出した上で、カンジキを掘り出してから再度足に装着し直すといった煩わしい作業が必要となっていたし、それら踏み抜き事態を回避しようとして設置面を大きくとると、それでなくとも足を交互に繰り出す際、前に送るがわの足を大きく外がわに迂回するようにする普段には行わない足の運びを、更に不自然なものにせざるを得なくしてしまって、便利な筈のカンジキの有効性が失われ、反って煩雑で負担の大きな歩行を強いられてしまうことになるという課題があった。
【0003】
(従来の技術)
こうした状況を憂慮し、例えば、下記の特許文献1(1)に提案されている発明に代表されるように、積雪面に接地する本体フレームと靴の間に、爪先から踵に向かう軸心回りに回動自在に連結支持可能な丸型パイプを設け、急斜面横断に使用の場合、靴を鉛直方向に強く踏み込むと、本体フレーム下面全体が急斜面に強く接して高い摩擦力を生じ、平地歩行感覚で急斜面横断を可能としたものや、同特許文献1(2)に見られるような、前部パイプフレームに、後部パイプフレームを前後方向進退自在に差込み、双方を任意の差し込み位置で固定可能な金具を設け、パイプフレーム接地面積を任意に変更可能としたものなどが散見される。
【0004】
しかし、前者特許文献1(1)に示されているような接地フレームに対して靴が回動自在となるよう装着可能とし、傾斜面の歩行を安全且つ容易にしたものや、特許文献1(2)のカンジキ前部フレームに対して後部フレームが伸縮自在に装着されて前後寸法長の変更が可能なものなどは、何れも接地フレーム部分自体が雪中に沈み込んでしまい、抜け出すことができなくなってしまった場合には、その形状や寸法を簡単に変更することができず、従前までと同様に一旦、カンジキから足(靴)を外してカンジキを雪中から掘り出してから、再度、足(靴)をカンジキ上の所定位置に繋縛し直すことが必要となることに何等変わりはない上、歩行の際の足を交互に繰り出す動きに不自然さが伴ってしまい、使い辛くなってしまうという欠点は解消できないままとなっている。
【特許文献1】(1)特開2001−137011号公報 (2)特開2001−112512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(問題意識)
上述したとおり、従前までに提案のある各種カンジキは、雪上での歩行安定性は改善されても、一旦雪中に沈み込んでしまった場合の対応や、何よりも足を交互に繰り出す際の動作の点には何等の改善も見られないという大きな欠点を止めていて、歩行中の足腰への負担が大きくなって体力を消耗させてしまう従前からの課題が未だに放置されたままになっている現状を目の当たりにするにつけ、雪国に住まいする者にとって、カンジキが冬期間の生活に欠かせない履物の一つであるだけに、歩行安定性の追求は勿論のこと、トラブル回避策や円滑な歩行動作の実現策についても、更なる改善の必要性があるものと云える。
【0006】
(発明の目的)
そこで、この発明は、雪中に沈み込んでしまったときでも簡単に脱出できる上、歩行中の着雪や着氷などを自動的に脱落、排除可能にすると共に、少しでも自然歩行に近い動作での使用が可能となる新たなカンジキ技術の開発はできないものかとの判断から、逸速くその開発、研究に着手し、長期に渡る試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、今回、遂に新規な構造のカンジキを実現化することに成功したものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述することとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の構成)
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明のカンジキは、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、利用対象者足寸法長に相当する長さとした左右一対のサイドレールを、その相互間隔が利用対象者足の左右両がわにおいて足巾を超え、且つそれらが足型に平行状となるよう配置してなるものとした上、それら左右サイドレール各前端間は前弓幹で、また同各後端間は後弓幹で夫々連結するようにし、それら左右一対のサイドレール、前・後弓幹によって利用対象者足型を囲む枠状本体を形成すると共に、当該左右サイドレール各前後長中途であってやや前方寄り適所間には、足繋縛機構が適所に組み込まれたブリッジを掛け渡して連結する一方、それらブリッジおよび前・後弓幹には、利用対象者体重を受けて左右サイドレール間隔を適正範囲内で拡大可能とし、また、利用対象者体重から解放されると左右サイドレール間隔を元に復帰可能とする弾発性回帰機構を組み込んでなるものとした構成を要旨とするカンジキである。
【0008】
この基本的な構成からなるカンジキを、その表現を変えて示すと、利用対象者足寸法長に相当する長さとした左右一対のサイドレールを、その相互間隔が利用対象者足の左右両がわにおいて足巾を超え、且つそれらが足型に平行状となるよう配置してなるものとした上、それら左右サイドレール各前端間は前弓幹で、また同各後端間は後弓幹で夫々連結するようにし、それら左右一対のサイドレール、前・後弓幹によって利用対象者足型を囲む枠状本体を形成すると共に、当該左右サイドレール各前後長中途であってやや前方寄り適所間には、足繋縛機構が適所に組み込まれたブリッジを掛け渡して連結する一方、それらブリッジおよび前・後弓幹に弾発性回帰機構を組み込み、利用対象者が踏み込むと、その体重が弾発性回帰機構に加わり、当該枠状本体の左右巾を自動的に広げて接地巾を適正範囲内で拡大し、また、利用対象者体重から解放されると、当該枠状本体の左右巾が自動的に元の間隔寸法に復帰するよう自動変形可能となるものとした構成からなるカンジキとなる。
【0009】
より具体的には、利用対象者足寸法長に相当する長さとした直線棒状とした左右一対のサイドレールを、その相互間隔が利用対象者足の左右両がわにおいて足巾を超え、且つそれらが足型に平行状となるよう配置してなるものとした上、それら左右サイドレール各前端間には、前方に向けて凸円弧形掛け渡し状とした可撓性前弓幹の左右端夫々を連結し、同左右サイドレール各後端間には、後方に向けて凸円弧形掛け渡し状とした可撓性後弓幹の左右端夫々を連結するようにし、それら左右一対のサイドレール、前・後弓幹によって利用対象者足型を囲む枠状本体を形成すると共に、当該左右サイドレール各前後長中途であってやや前方寄り適所間には、鉛直上方に向けて凸円弧形とした板バネ製のブリッジを掛け渡し連結し、それら板バネ製ブリッジおよび可撓性前・後弓幹が伴って弾発性回帰機構を形成するものとした上、該ブリッジの左右巾中央に、利用対象者足寸法巾より大きな左右巾とし、足繋縛機構が適所に組み込まれた足載せ台を装着してなるものとした構成からなるカンジキとなる。
【0010】
これを換言すると、利用対象者足寸法長に相当する長さとした直線棒状とした左右一対のサイドレールを、その相互間隔が利用対象者足の左右両がわにおいて足巾を超え、且つそれらが足型に平行状となるよう配置してなるものとした上、それら左右サイドレール各前端間には、前方に向けて凸円弧形掛け渡し状とした弾発性前弓幹の左右端夫々を連結し、同左右サイドレール各後端間には、後方に向けて凸円弧形掛け渡し状とした弾発性後弓幹の左右端夫々を連結するようにし、それら左右一対のサイドレール、前・後弓幹によって利用対象者足型を囲む枠状本体を形成すると共に、当該左右サイドレール各前後長中途であってやや前方寄り適所間には、鉛直上方に向けて凸円弧形とした板バネ製のブリッジを掛け渡し連結し、それら板バネ製ブリッジおよび弾発性前・後弓幹が伴って弾発性回帰機構を形成するものとした上、該ブリッジの左右巾中央に、利用対象者足寸法巾より大きな左右巾とし、足繋縛機構が適所に組み込まれた足載せ台を装着してなるものとした構成からなるカンジキとなる。
【発明の効果】
【0011】
以上のとおり、この発明のカンジキによれば、従前までのものとは違い、上記したとおりの固有の特徴ある構成から、利用対象者の足(靴)に装着して歩行、踏み込むと、そのブリッジおよび前・後弓幹からなる弾発性回帰機構が作用して枠状本体左右サイドレール間隔を適正範囲内で広げ、その接地範囲を拡大して雪中への沈み込み防止効果を各段に高めるものとなり、歩行の過程で利用対象者体重から解放される度毎に、当該弾発性回帰機構のブリッジの弾発性能、および、前・後弓幹の可撓性能または弾発性能により、左右サイドレール間隔が自動的且つ瞬時に復帰して歩行に適切な巾に縮小すると共に、その瞬間的変形による振動で枠状本体上や外周壁に付着した雪や氷片などを振り落とし、歩行負担を大幅に軽減するものとなり、体力の消耗を最小限度に抑えることができ、また、表層の硬い雪層を踏み抜いて雪中に沈み込んでしまった場合でも、ブリッジに掛かる体重を解除すると、左右サイドレール間隔が自動的に狭まり、カンジキを足(靴)から紐やベルト類を外して離脱することなく、低抵抗にて簡単に雪中から抜き出すことができ、冬山登山や雪原や氷上歩行の容易性、安全性および移動効率を各段に高めることができるという秀れた特徴が得られるものである。
【0012】
加えて、当該弾発性回帰機構を構成するブリッジおよび前・後弓幹の中、ブリッジに弾発性能を与え、前・後弓幹には可撓性を有するものとした場合には、利用対象者体重が加わったとき、該ブリッジだけがその弾発力によって体重を弾性的に支え、また、前・後弓幹は左右サイドレールの離反(開き)移動ならびに接近移動に従って追従変形するものとなり、更に、ブリッジおよび前・後弓幹の全てに弾発性能を与えたものの場合には、利用対象者体重が加わったとき、ブリッジおよび前・後弓幹が協同して弾発力を発揮し、その総合的な弾発力が体重を弾性的に支えるものとなり、何れの場合にも同様の動作を実現して雪上や氷上の歩行移動を少しで普段の歩行行動に近づけ、安定化することができるものとなる。
【0013】
そして、当該弾発性回帰機構の総弾発力の中、70%をブリッジが、残りの15%ずつを前・後弓幹が夫々発揮するよう弾発力設定するようにしてなるものとした場合には、それらブリッジが利用対象者体重を確りと受け止め、前・後弓幹が歩行の障害とならない程度の弾発力を発揮して、爪先がわの蹴り出し力増加や踵がわ着地衝撃の緩衝などの作用を増強し、一段と歩行効率を高めて疲労を軽減できるという秀れた効果を発揮するものになる。
【0014】
ブリッジに被着スリットを形成し、該被着スリットに足載せ台底壁から垂下した下駄歯を下向きに差し込み、同下駄歯下端の鈎爪を下向き露出状に突出するように組み合わせてなるカンジキは、利用対象者が踏み込む度毎に、該下駄歯下端の鈎爪が雪中や氷中に突き刺さり、しかも各鈎爪は、歩行蹴り出し方向に直交する三角板形状に形成されているから、より確実に蹴り出し力を雪上や氷上に伝えることができ、スリップによる摩擦損失を大幅に低減して極めて効率的で疲労の少ない安全な歩行を実現化する。
【0015】
また、足載せ台の天面に左右保持壁を上向き突設したものを組み込んでなるカンジキは、足繋縛機構にて緊縛した利用対象者足(靴)の左右方向へのズレを確実に防止し、より効率的で安全な歩行を実現化できるものとなり、しかも、各左右保持壁より左右外がわに左右掛止片部を一体化形成してなる足載せ台を組み込んでなるカンジキは、ブリッジに、その弾発性能を超えた過大な荷重入力を受けた場合、左右掛止片部が左右サイドレールに係合するようにして、ブリッジの上向き凸型円弧形状が、下向きに反転してしまうのを未然に阻止するものとなり、段差からの飛び降りや倒木の乗り越えなどで生じる過重にも良く耐えて弾発性回帰機構が安定に作動するものとなり、各段に歩行し易く、一層耐久性に秀れたものとすることができるという大きな効果を奏するものとなる。
【0016】
そして、当該カンジキは、左右サイドレール、前・後弓幹、ブリッジ、足繋縛機構、足載せ台などの各部夫々が分解機構を介して分解自在に組み立てられるようにしてあるから、何れの部品も簡単な作業で短時間の中に交換可能であり、破損したときでも、破損部品だけを個別に交換して修繕できるようにしてメンテナンス性を確保し、カンジキ全体を新品に買い換える必要をなくして維持経費の大幅な削減を実現化できるものとした上、利用対象者の靴サイズや歩幅、体重などの各種条件に応じて各部品を寸法、形状の異なるものに交換可能であり、さらに、弾発性回帰機構の構成部品であるブリッジおよび前後弓幹などを同一形状で弾発性能の異なる交換部品と入れ替えて利用対象者の歩行技術、利用場所の雪質や氷質、地形などに応じて自由に調整できるものになるという秀れた特徴を発揮するものとなる。
【0017】
また、前・後弓幹が夫々、その全部または一部が弾発素材製であって、しかも弓形中途複数適所に左右対称形状の蛇腹状軟弱部を設けてなるものを組み込んだカンジキの場合には、複数箇所に配した各蛇腹状軟弱部が応力を分散可能で、集中荷重による破損を効果的に防止できるものとなり、しかもその凹凸形状が雪上や氷上の摩擦力を高めて歩行の安全性を一段と高めると共に、踵がわの着地や爪先がわの蹴り出しのスリップを阻止して、歩行安全性を各段に高めるという大きな効果を奏するものになる。
【0018】
さらに、弾発性回帰機構が、利用対象者体重を受けた場合の枠状本体左右寸法巾を、無負荷状態の枠状本体左右寸法巾に対して15ないし22%の範囲内で拡大可能なものとしてなるものは、左右両足を揃えて立った場合にも、利用対象者が僅かに開脚するだけで、左右足双方の枠状本体同士が干渉するのを回避することができ、歩行中にも左右何れか歩を進めているがわの枠状本体が、左右反対の接地しているがわの足、脛、膝などに、接触してしまって不自然な歩行行動になってしまうのを少しでも避けることができる寸法設定が可能となり、より一層安全で軽快な雪上、氷上歩行を実現化できるものになるという秀れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
上記したとおりの構成からなるこの発明の実施に際し、その最良もしくは望ましい形態について説明を加えることにする。
枠状本体は、利用対象者足型を囲み、雪上などの接地面と利用対象者足との間に介在して、利用対象者足の接地面積を枠状に拡大可能とする機能を果たし、利用対象者体重を受けて雪上に接地した場合に、その荷重に耐える充分な強度で利用対象者足を支持可能な剛性および強度を有するものとし、しかも利用対象者が踏み込むと、当該枠状本体の左右巾を自動的に広げて接地巾を適正範囲内で拡大し、また、利用対象者体重から解放されると、当該枠状本体の左右巾が自動的に元の間隔寸法に復帰するよう自動変形可能な弾発性回帰機構を組み込んでなるものとしなければならず、左右一対のサイドレール各前端間を前弓幹で、また同各後端間を後弓幹で夫々連結し、利用対象者足型を囲む枠状に形成したものとすべきであり、その全体または一部を木製、金属製、合成樹脂製、または、それらと同等以上の強度を有する各種複合素材製などとすることができ、枠状本体の左右巾拡大の適正範囲は、元の左右巾寸法よりも15ないし22%の範囲内とするのが望ましく、15%未満では接地巾拡大機能が充分に得られないため、歩行安定性を高める機能が充分に得られ難く、しかも体重を解除したときの巾寸法縮小率が小さく、雪中に沈み込んだ場合などの脱出が困難になることが懸念され、また、22%を超えると、踏み込んだときの接地巾が拡大し過ぎて、反って躓きや左右足同士が引っ掛かり易くなってしまい、歩行安全性を確保できないといった欠点を生じる虞がある。
【0020】
サイドレールは、利用対象者足型を囲む枠状本体の左右がわフレーム部分を形成するものであり、利用対象者体重を充分に支持可能な強度を確保したものとしなければならず、左右一対のサイドレール各前端間は前弓幹、各後端間は後弓幹で夫々連結し、当該左右サイドレール各前後長中途であってやや前方寄り適所間には、足繋縛機構が適所に組み込まれたブリッジを掛け渡して連結し、それらブリッジおよび前・後弓幹に弾発性回帰機構を組み込んでなるものとすべきであり、後述する実施例に示すように、当該左右サイドレールは夫々、利用対象者足寸法長に相当する長さとした木製、合板性、金属製、強化プラスチック製、同等強度の各種複合素材製、または、金属部品と合成樹脂部品との組み合わせなどからなる直線棒状のものなどとすることができ、各部品の連結箇所にネジ孔やボルト・ナット、各種ジョイント構造などからなる分解機構を設けたものとするのが望ましい。
【0021】
前・後弓幹は、利用対象者足型を囲む枠状本体の前後がわフレーム部分を形成し、左右一対のサイドレールの前後端を夫々枠状且つ、当該左右サイドレールの左右間隔巾を適正範囲内で拡大、および、元の間隔巾に復帰するという変形を反復可能に連結し、当該枠状本体の前後端の連結強度を確保可能とするものであり、それらの一部または全体に弾発性回帰機構を組み込み、可撓性を有するものとしなければならず、弾発性を有するものとするのが望ましく、前・後弓幹が夫々、その全部または一部が木製、合板製、合成樹脂製、金属製、あるいは、それらの複合素材製などとすることが可能であり、しかも後述する実施例に示すように弾発素材製であって、弓形中途複数適所に左右対称形状、または、左右非対称形状の何れかとした軟弱部を設けてなるものとすることができ、各軟弱部は、蛇腹状の屈曲形状部分や、肉圧寸法を薄く設定した薄肉部分、切り欠き形状部分、あるいは、弾発性の別部品を組み込んでなるものなどとすることができる。
【0022】
ブリッジは、当該枠状本体左右サイドレール各前後長中途であってやや前方寄り適所間に、利用対象者足を装着可能とすると共に、利用対象者体重を受けて左右サイドレール間隔を適正範囲内で拡大可能とし、また、利用対象者体重から解放されると左右サイドレール間隔を元に復帰可能とする弾発性回帰機構を組み込み可能とするものであり、当該左右サイドレール各前後長中途のやや前方寄り適所間を連結すると共に、利用対象者足を適所に繋縛可能な足繋縛機構を組み込んだものとしなければならず、木製、合板製、金属製、合成樹脂製またはそれらの複合素材製の板バネからなり、利用対象者体重による下向きの圧縮加重を左右サイドレール間隔の拡大力に変換可能とする、ゴム製ブロック板などの弾性部品や、弾性復帰力を発揮可能な弾性部品を組み込んだリンク機構、または、下向きの垂直方向圧縮力を油圧回路などを介して水平左右方向の圧力に変換可能としたシリンダ・ピストン機構などに置き換えることが可能である。
【0023】
足繋縛機構は、ブリッジの適所に利用対象者足を充分な強度で繋縛可能とするものであり、当該枠状本体を装着した利用対象者足から不用意に離脱しないよう確りと固定状に装着可能とするものでなければならず、ブリッジの適所に利用対象者足繋縛用となる紐やベルトなどを適宜組み込んでなるものとすることができる外、後述する実施例に示すように、該ブリッジの左右巾中央に、利用対象者足寸法巾より大きな左右巾とした足載せ台を装着し、同足載せ台に対して利用対象者足を仮固定可能とする紐、ベルト、または、固定金具類などとすることが可能である。
【0024】
足載せ台は、ブリッジ上の適所に利用対象者足の靴底を合わせた状態に載せた姿勢で、利用対象者自身の体重(足)を踏み込み可能とすると共に、紐やベルトなどの足繋縛機構による繋縛を可能としてブリッジおよび枠状本体に一体状に仮固定可能とする機能を果たし、利用対象者体重の繰り返し荷重に充分に耐えるものとしなければならず、後述する実施例に示すように、靴底と当接する天面などに滑り止め用の凹凸部を形成可能であり、ブリッジの前後寸法長中央に、左右に長い被着スリットを鉛直方向に穿設し、該スリットに対応する足載せ台底壁からは、該被着スリットに貫通状に組み合わせ可能であって、該スリット下に下向き突出状に露出可能な一個または複数個の鈎爪を一体化形成した下駄歯を垂下してなるものとすることができる外、足載せ台天面中央から利用対象者足寸法巾を超えた左右適所夫々に、足の左右方向ズレを阻止可能な左右保持壁を上向き突設すると共に、各左右保持壁より左右外がわに、利用対象者体重を受けて相互間隔が拡大状態にある場合の左右サイドレール左右間隔に達する左右突出寸法長とした、沈下防止用の左右掛止片部を一体化形成してなるものとすることが可能である。
【0025】
弾発性回帰機構は、利用対象者が、その足に装着したカンジキを踏み込むと、その体重を受けた枠状本体が、左右巾を自動的に広げて、その接地巾を適正範囲内で拡大し、また、利用対象者体重から解放されると、当該枠状本体の左右巾が自動的に元の間隔寸法に復帰するよう自動変形可能とするものであり、ブリッジおよび前・後弓幹に組み込まれたものとしなければならず、弾発性のブリッジと可撓性の前・後弓幹との組み合わせからなるものや、弾発性のブリッジと弾発性の前・後弓幹との組み合わせからなるものなどとすることが可能であり、後述する実施例に示すように、利用対象者体重を受けた場合の枠状本体左右寸法巾を、無負荷状態の枠状本体左右寸法巾に対して、15ないし22%の範囲内で拡大可能としてなるものとするのが望ましい。
以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構造について詳述することとする。
【実施例1】
【0026】
図1のカンジキの側面図、図2のカンジキの平面図、図3のカンジキの正面図、図4の分解状態の枠状本体の側面図および平面図、図5のブリッジの三面図、図6の足載せ台の三面図、図7の左右巾が拡大したブリッジの平面図、図8の左右巾が拡大したブリッジの正面図、図9の一部を変更した足載せ台の三面図、図10の一部変更の足載せ台を組み込んだカンジキの正面図、図11の一部変更の足載せ台を組み込んだカンジキの側面図、図12の一部変更の足載せ台を組み込んだカンジキの平面図、図13の一部変更足載せ台組み込みのカンジキの左右巾拡大状態の正面図、および、図14の一部変更足載せ台左右掛止片部がサイドレールに接合した状態の正面図に示す事例は、左右一対のサイドレール2,2各前端間を前弓幹3で、また同各後端間は後弓幹4で夫々連結するようにし、それら左右一対のサイドレール2,2、前・後弓幹3,4によって利用対象者足型を囲む枠状本体10を形成すると共に、当該左右サイドレール2,2各前後長中途であってやや前方寄り適所間には、足繋縛機構6が適所に組み込まれたブリッジ5を掛け渡して連結する一方、それらブリッジ5および前・後弓幹3,4には、利用対象者足Sの踏み込み動作に応じて左右サイドレール2,2間隔を拡大可能、且つ、左右サイドレール2,2間隔を元に復帰可能とする弾発性回帰機構8を組み込んでなるものとしたこの発明のカンジキにおける代表的な一実施例を示すものである。
【0027】
それら各図からも明確に把握できるとおり、この発明のカンジキ1は、図4中に示すように、利用対象者足S寸法長に相当する例えば25〜27cmの長さSLに設定したアルミニウム合金製、直線丸棒状パイプである内層パイプ20,20の外壁に、その両端がわが接続端部22,23として夫々突出状に露出するよう寸法設定した外層パイプ21,21を被着状に嵌合、一体化してなる左右一対のサイドレール2,2を有し、前後各続端部22,23夫々の周回り180°毎となる複数箇所には、直径肉厚方向に貫通し、内壁に小鍋ネジ用ナットを熔接した小鍋ネジ用ネジ孔90,90,……を形成し、また、図1、図2および図3中に示すように、利用対象者足Sの左右両がわにおいて足巾を超え、且つそれらが足型に平行状となるよう配置した左右サイドレール2,2の前後寸法長SLの中央C1よりも前方寄りとなる外層パイプ21,21適所上方周壁から、互いに前後適宜間隔を隔てた一対の、貫通孔を鉛直肉厚方向に貫通し、内層パイプ20,20の内壁に大鍋ネジ用ナットを熔接した大鍋ネジ用ネジ孔91,91,……を形成し、前後大鍋ネジ用ネジ孔91,91,……間の中央C2に対応する外層パイプ21,21の鉛直下方外壁から、側面形が逆二等辺三角形状の板からなるスパイク片24,24を突設したものとしてある。
【0028】
図1ないし図4中に示すように、左右サイドレール2,2各前接続端部22,22には、利用対象者足S爪先の外がわを回り込むよう、前方に向けて凸円弧形に湾曲し、且つ、左右端がわから中央(前方)がわに向かうほど上方に向けて湾曲し、さらに、前方(中央)寄りの左右2箇所合計4箇所、および、左右端よりの左右3箇所合計6箇所の夫々に、曲率中心から放射状配置、且つ左右対称形状の蛇腹状軟弱部30,30,……を形成してなる円弧状ステンレス鋼板バネ製前弓幹3であって、同前弓幹3の各左右端に一体化形成し、内径が内層パイプ20外径に一致し、外径が外層パイプ21外径に一致するよう設定したキャップ状連結用スリーブ31,31を装着し、各前接続端部22,22小鍋ネジ用ネジ孔90,90,……に対応させた左右連結用スリーブ31,31各貫通孔から小鍋ネジ92,92,……を螺合して着脱自在、且つ強固に連結したものとする。
【0029】
図1ないし図4中に示すように、左右サイドレール2,2各後接続端部23,23には、利用対象者足S踵の外がわを回り込むよう、後方に向けて凸円弧形に湾曲し、且つ、左右端がわから中央(後方)に向かうほど上方に向けて僅かに(前弓幹3よりも上向きの曲率が小さく)湾曲し、さらに、後方中央寄りの左右2箇所合計4箇所、および、左右端よりの左右3箇所合計6箇所の夫々に曲率中心から放射状配置、且つ左右対称形状の蛇腹状軟弱部40,40,……を形成してなる円弧状ステンレス鋼板バネ製後弓幹4の各左右端に有って、内径が内層パイプ20外径に一致し、外径が外層パイプ21外径に一致するよう設定したキャップ状連結用スリーブ41,41を装着し、各後接続端部23,23の小鍋ネジ用ネジ孔90,90,……に対応する左右連結用スリーブ41,41の各貫通孔を通じて小鍋ネジ92,92,……を螺合し、着脱自在且つ強固に連結したものとする。
【0030】
図5に示すように、ブリッジ5は、平面形状の左右巾BWが22cm、前後長BLが7.5cmの矩形状であって、正面形状高さBHが9〜11cmの上向き凸型左右対称円弧形状で、15kg±3kgの荷重で弾性変形を始める性能を有しており、その左右端夫々には、左右サイドレール2,2各外層パイプ21,21の外周壁に接合可能な筒状面座(左右掛け渡し端)50,50を一体化形成したステンレス板バネ製であり、前後寸法長の中央には、左右筒状面座50,50間に、平面形が左右一文字状となる被着スリット51を上下肉厚方向に貫通すると共に、左右巾中央には、該被着スリット51の前後に配して一対をなすボルト用貫通孔93,93を穿孔し、左右筒状面座50,50夫々には、左右サイドレール2,2の大鍋ネジ用ネジ孔91,91,……に対応する大鍋ネジ用貫通孔94,94を穿孔したものである。
【0031】
図1および図2中に示すように、当該ブリッジ5には足載せ台7を組み合わせ可能であり、該足載せ台7は、図6に示すように、左右巾13cm(図6中DW)、前後長8cm(図6中DL)の平面矩形状肉厚台板70の天面に滑り止め用の凹凸加工を施し、下面壁の前後長中央からは、左右全巾に渡って当該ブリッジ5被着スリット51に嵌合且つ貫通状装着可能であって、下端縁左右間に渡り鋸刃状の鈎爪72,72,……を一体化形成した下駄歯71が垂下し、該台板70の左右巾中央で下駄歯71前後がわに相当し、当該ブリッジ5ボルト用貫通孔93,93に対応可能となる前後2箇所には夫々、六角穴付きボルト用のボルト頭部埋め込み可能なボルト用座ぐり孔95,95を鉛直下方に向けて穿設してなるものであり、当該ブリッジ5左右巾中央の天面壁上に該足載せ台7左右巾中央の下面壁を接合すると共に、被着スリット51から下駄歯71が下向き露出状に貫通し、且つ、各ボルト用座ぐり孔95,95がボルト用貫通孔93,93夫々に同心状に重なるよう配置させた上、図1中に破線で示すように、各ボルト用貫通孔93,93下に配したボルト用ナット97,97に、各ボルト用座ぐり孔95,95から下向き装着した六角穴付きボルト96,96を螺合して分解自在に一体化したものとすることが可能である。
【0032】
図1および図2中に示すように、当該足載せ台7を搭載し六角穴付きボルト・ナット96,96,97,97で組み込んだブリッジ5は、その左右掛け渡し端50,50を左右サイドレール2,2の前後寸法長の中央C1よりも偏心寸法CLの3〜6cm分、前方寄りとなる周壁上に夫々載置状として各大鍋ネジ用ネジ孔91,91,……に、大鍋ネジ用貫通孔94,94,……を夫々同心状に重ね合わせた上、夫々に大鍋ネジ98,98を下向き螺合して分解自在且つ強固に組み合わせたものとしてあり、図3中に示すように、無負荷状体にあるカンジキ1は、左右サイドレール2,2接地下面周壁から、足載せ台7下駄歯71鈎爪72の先端までの高さTHが7〜8cmになるよう設定してある。
【0033】
また、図2中に示すよう当該カンジキ1は、無負荷状態の場合に、その左右巾寸法W1が22cm、前後長寸法Lが33cmになるよう設定してあり、しかも、該ブリッジ5および前・後弓幹3,4の各板バネが、利用対象者体重を受けて弾発性能を発揮するものとなっていて、その弾発力の発生割合は、該ブリッジ5が全体の70%、前・後弓幹3,4が夫々15%ずつとなるよう設定された弾発性回帰機構8を形成するものとしてある。
【0034】
図1、図3および図8中に示すように、当該足載せ台7の左右端縁には夫々、利用対象者足(靴)Sを着脱自在に確りと装着、固定可能とするよう、バックルまたは自在ファスナーなどの長さ調節機構を備えた踵ベルト61を有する甲帯60の左右下端が夫々3本ずつ合計6本の鍋ネジ99,99,……でネジ留め結合し、足繋縛機構6が形成されたものとしてある。
該踵ベルト61を有する甲帯60は、甲部分にバックルまたは自在ファスナーなどの長さ調節機構(図示せず)を備えたものに変更することが可能である外、従来型のカンジキに用いられているような紐(図示せず)をブリッジ5に巻掛けたり、被着スリット51に挿し通したりして取り回し、利用対象者足(靴)Sを縛り付けるようにしたものなどに変更することが可能である。
【0035】
図9ないし図14に示すように、当該足繋縛機構6足載せ台7は、該足載せ台7台板70の天面中央から利用対象者足(靴)S寸法巾を僅かに超えた左右適所夫々に、足の左右方向ズレを阻止可能な左右保持壁73,73を上向き突設すると共に、各左右保持壁73,73より左右外がわに、図14中に示すように、利用対象者のジャンプ後の着地や、高所からの着地などによる過大な体重を受けて相互間隔が最大に拡大した状態の左右サイドレール2,2外周壁上に達する左右突出寸法長とした、沈下防止用の左右掛止片部74,74を一体化形成してなるものとした上、当該左右保持壁73,73の各左右外側壁には夫々、バックルまたは自在ファスナーなどの長さ調節機構を備えた踵ベルト61を有する甲帯60の左右下端が夫々6本ずつ合計12本の鍋ネジ・ナット99,99,……でネジ留め結合し、足繋縛機構6を形成するものとしてある。
【0036】
(実施例1の作用)
以上のとおりの構成からなるこの発明のカンジキ1は、図4ないし図6に示すように、左右一対のサイドレール2,2の前端間に前弓幹3、後端間に後弓幹4を連結して枠状本体10を形成し、左右サイドレール2,2の前方寄り適所間に足載せ台7を組み込んだブリッジ5を掛け渡し結合し、該足載せ台7には、踵ベルト61を有する甲帯60を装着したものとしてあり、それらの結合部分は、ネジやボルト・ナット類による分解機構9を有して、ドライバーや六角レンチなどの工具類を用いて簡単に分解、組み立て可能なものとなっている。
【0037】
当該カンジキ1は、図1ないし図3中に示すように、利用対象者足(靴)Sの靴底を足繋縛機構6の足載せ台7天面中央C上に載せ、甲帯60、踵ベルト61で緊縛して確りと装着し、雪上歩行に利用可能となり、図2および図3中に示すように、左右巾W1(22cm)のカンジキ1が、利用対象者の15kg±3kgを超える歩行荷重を受けると、図7および図8中に示すように、弾発性回帰機構8の働きによって左右巾W2(25.3〜26.84cm)が15ないし22%広がり、枠状本体10の接地範囲を広げて歩行安定性と雪中への沈み込み防止性能とを高める作用を発揮するものとなり、さらに、歩行荷重から解放されると、図2および図3中に示すように、弾発性回帰機構8が、枠状本体10を元の左右巾W1(22cm)に自動的に復帰させ、その瞬間的な変形復帰過程中に、枠状本体10上や周囲に付着した雪や氷などを自動的に振り落とし、除去してしまうという作用を発揮するものとなる。
【0038】
当該弾発性回帰機構8ブリッジ5の弾性変形開始荷重が、18kgを超えるよう設定されたものを使用した場合には、通常の歩行中に、枠状本体10の接地巾変化が充分に得られず、雪中への沈み込み防止性能を効果的に高めることができないという欠点を生ずる虞があり、また、同弾性変形開始荷重が、12kg未満に設定されたものの場合には、ブリッジ5の強度が充分に得られず、安定した歩行が困難になるだけでなく、耐久強度に劣るものとなってしまう虞があり、このようなブリッジ5の弾発性能の過不足は、当該弾発性回帰機構8前・後弓幹3,4の弾発性能を適度に調節(部品変更、追加または削除などによる)して枠状本体10全体でバランスさせるよう調整することが可能である。
【0039】
加えて、図3中に示すように、枠状本体10左右サイドレール2,2のブリッジ5筒状面座(左右掛け渡し端)50,50の連結箇所直下となる位置に下向き突設されたスパイク片24,24は、図8中に示すように、左右サイドレール2,2が利用対象者荷重を受けて左右間隔巾を広げると、同図8中の矢印に示すように、同スパイク片24,24の下向き先端を、自動的に左右外がわに傾斜させて雪中や氷中に突き刺さるよう姿勢変形するものとなり、より摩擦力の高い接地性能を発揮可能なものとなる。
【0040】
また、図1ないし図6に示すように、当該ブリッジ5の被着スリット51は、足載せ台7下駄歯71を嵌合状に装着可能として足載せ台7の固定強度を確保するものとなる外、踵ベルト61を有する甲帯60を設けない場合に、該被着スリット51に繋縛紐やベルト類などを挿し通したり、取り回したりするなどしてブリッジ5上の足載せ台7諸共利用対象者足(靴)Sを固定可能とするものとなる。
【0041】
そして、図8中に示すように、利用対象者がカンジキ1を踏み込むと、当該足載せ台7下駄歯71下端縁に形成した鈎爪72が、雪中や氷中に刺さって滑り止め作用を発揮し、蹴り出し力を効率的に接地雪面や氷面に伝達可能とし、効率的で疲労度の少ない歩行を可能とするものとなり、さらに、図9ないし図12中に示すよう形成した足載せ台7は、左右保持壁73,73が、利用対象者足(靴)Sを左右がわから強力のサポートして、足載せ台7上における利用対象者足(靴)Sの横滑りを確実に防止するものとなり、歩行の安定性を高めると共に、甲帯60への左右方向の荷重負担を大幅に軽減するものとなる。
【0042】
また、図9ないし図12に示すように、左右端から左右掛止片部74,74を延伸した足載せ台7は、図13に示すように、通常歩行のときには、図8に示したカンジキ1と同様に安定歩行可能であり、段差からの飛び降りや、倒木の乗り越えなどのように、弾発性回帰機構8であるブリッジ5および前・後弓幹3,4の弾発性能を超えた大荷重が加わった場合には、図14中に示すように、当該左右掛止片部74,74の左右端下面壁が、サイドレール2,2(ブリッジ5左右掛け渡し端50,50)の上面壁、または、それらを固定している大鍋ネジ98,98,……頭部に当接して、ブリッジ5を介さずにサイドレール2,2に直接利用対象者体重を伝達するよう作用し、ブリッジ5の凸型ブリッジ形状の凹型反転を確実に阻止して、最大の接地巾および最大の接地摩擦力を安定確実に発揮可能とし、大荷重から解放された瞬間に、図10に示すように、元の左右巾W1形状に復帰可能なものとなる。
【0043】
(実施例1の効果)
以上のような構成からなる実施例1のカンジキ1は、前記この発明の効果の項で記載の特徴に加え、利用対象者の15kg±3kgを超える歩行荷重を受けたときに、図7および図8中に示すように、弾発性回帰機構8が自動的に働き、枠状本体10左右サイドレール2,2間隔W1(図2および図3に示す)の22cmを15ないし22%の範囲内で間隔W2の25.3〜26.84cmに拡大し、その接地巾を歩行に支障がなく、しかも秀れた雪中沈み込み防止性能、または、氷上摩擦増大性能を発揮可能とするものとなり、弾発性回帰機構8が12kg未満の荷重で作動してしまうものや、18kgを超えないと作動しないものを組み込んだ場合よりも、各段に安定した雪上(氷上)歩行性能を発揮できるものとなる。
【0044】
加えて、図1および図3中に示すように、左右サイドレール2,2下外周壁に突設したスパイク片24,24は、利用対象者体重が加わり、左右サイドレール2,2間の間隔が拡大した瞬間、図8中の矢印に示すように、各下向き先端が左右外がわに向けて広がり、互いに正面「八」字型の傾斜姿勢となって雪中や氷中に刺さり、より高い接地摩擦力を発生可能なものとなるという秀れた効果を奏することができ、体重から開放されると元の鉛直姿勢に自動復帰するものとなる。
【0045】
また、足繋縛機構6足載せ台7の天面は、図1および図2中に示すように、滑り止め用の凹凸加工が施してあり、長さ調節可能な踵ベルト61を有する甲帯60で緊縛可能であり、利用対象者足(靴)Sをより確実に固定することができ、図1および図3、または、図10および図11中に示すように、該甲帯60が複数本の鍋ネジ(・ナット)99,99,……で、足載せ台7の左右端壁か、または、左右保持壁73,73の左右外側壁かの何れかに結合してあり、各鍋ネジ99,99,……の軸心に直交する方向に緊縛荷重が加わるようになっているから、各鍋ネジ99,99,……の脱抜、脱落を防ぎ、耐久性に秀れたものとすることができる。
【0046】
さらに、図1ないし図3に示すように、前・後弓幹3,4が、それら各円弧形の曲率中心から放射状配置、且つ左右対称形状の複数の蛇腹状軟弱部30,30,……,40,40,……を形成した円弧状ステンレス鋼板バネ製のものであるから、各蛇腹状軟弱部30,30,……,40,40,……の凹凸形状が枠状本体10の雪上や氷上の摩擦力を各段に高めると共に、荷重を分散して耐久強度を大幅に高めるものとなり、しかもブリッジ5を含めた弾発性部品がステンレス鋼板製であり、左右サイドレール2,2をアルミニウム合金製としているから、防錆に秀れ、耐久強度や軽量化の面でも高い品質を得ることが可能となり、厳冬期の雪山などの厳しい自然環境下での酷使にも充分に耐える信頼性に秀れたカンジキ1を提供することができる。
【0047】
(結 び)
叙述の如く、この発明のカンジキは、その新規な構成によって所期の目的を遍く達成可能とするものであり、しかも製造も容易で、従前からのカンジキ技術に比較して雪上や氷上の接地摩擦力を大幅に高め、且つ極力自然歩行に近づけて歩行の容易性および安定性を向上させ、軽量且つ低廉化を果たすこととなって雪上歩行の疲労を各段に軽減できる上に、一部部品が破損したときにも、これを一部の部品交換に止め得るようメンテナンス性を大幅に改善してあるから、遥かに経済的で自然環境にも優しく、従来型のカンジキに欠点を感じながらも、その課題を解決できないままに使用を続けていた雪国の人々には勿論のこと、より高い歩行性能と安全性との実現化を希望する登山愛好家や猟友会などスポーツ用品業界およびアウトドア用品業界においても高く評価され、広範に渡って利用、普及していくものになると予想される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図面は、この発明のカンジキの技術的思想を具現化した代表的な一実施例を示すものである。
【図1】カンジキを示す側面図である。
【図2】カンジキを示す平面図である。
【図3】カンジキを示す正面図である。
【図4】分解状態の枠状本体を示す側面図および平面図である。
【図5】ブリッジを示す三面図である。
【図6】足載せ台を示す三面図である。
【図7】左右巾が拡大したブリッジを示す平面図である。
【図8】左右巾が拡大したブリッジを示す正面図である。
【図9】一部を変更した足載せ台を示す三面図である。
【図10】一部変更の足載せ台を組み込んだカンジキを示す正面図である。
【図11】一部変更の足載せ台を組み込んだカンジキを示す側面図である。
【図12】一部変更の足載せ台を組み込んだカンジキを示す平面図である。
【図13】左右巾が拡大したカンジキを示す正面図である。
【図14】左右掛止片部がサイドレールに接合した状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 カンジキ
10 同 枠状本体
2 サイドレール
20 同 内層パイプ
21 同 外層パイプ
22 同 前接続端部
23 同 後接続端部
24 同 スパイク片
3 前弓幹
30 同 蛇腹状軟弱部
31 同 連結用スリーブ
4 後弓幹
40 同 蛇腹状軟弱部
41 同 連結用スリーブ
5 ブリッジ
50 同 左右掛け渡し端(筒状面座)
51 同 被着スリット
6 足繋縛機構
60 同 甲帯
61 同 踵ベルト
7 足載せ台
70 同 台板
71 同 下駄歯
72 同 鈎爪
73 同 左右保持壁
74 同 左右掛止片部
8 弾発性回帰機構
9 分解機構
90 同 小鍋ネジ用ネジ孔
91 同 大鍋ネジ用ネジ孔
92 同 小鍋ネジ
93 同 ボルト用貫通孔
94 同 大鍋ネジ用貫通孔
95 同 ボルト用座ぐり孔
96 同 六角穴付きボルト
97 同 ボルト用ナット
98 同 大鍋ネジ
99 同 鍋ネジ・ナット
S 利用対象者足(靴)
SL 利用対象者足寸法長
C1 左右サイドレール2前後寸法長の中央
C2 ブリッジ5足載せ台7前後長の中央位置
CL 偏心寸法
W1 枠状本体10左右巾
W2 拡開した枠状本体10左右巾
BW ブリッジ5左右巾
BL ブリッジ5前後長
BH ブリッジ5高さ
DW 足載せ台7左右巾
DL 足載せ台7前後長
TH 鈎爪72の先端までの高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用対象者足寸法長に相当する長さとした左右一対のサイドレールを、その相互間隔が利用対象者足の左右両がわにおいて足巾を超え、且つそれらが足型に平行状となるよう配置してなるものとした上、それら左右サイドレール各前端間は前弓幹で、また同各後端間は後弓幹で夫々連結するようにし、それら左右一対のサイドレール、前・後弓幹によって利用対象者足型を囲む枠状本体を形成すると共に、当該左右サイドレール各前後長中途であってやや前方寄り適所間には、足繋縛機構が適所に組み込まれたブリッジを掛け渡して連結する一方、それらブリッジおよび前・後弓幹には、利用対象者体重を受けて左右サイドレール間隔を適正範囲内で拡大可能とし、また、利用対象者体重から解放されると左右サイドレール間隔を元に復帰可能とする弾発性回帰機構を組み込んでなるものとしたことを特徴とするカンジキ。
【請求項2】
利用対象者足寸法長に相当する長さとした左右一対のサイドレールを、その相互間隔が利用対象者足の左右両がわにおいて足巾を超え、且つそれらが足型に平行状となるよう配置してなるものとした上、それら左右サイドレール各前端間は前弓幹で、また同各後端間は後弓幹で夫々連結するようにし、それら左右一対のサイドレール、前・後弓幹によって利用対象者足型を囲む枠状本体を形成すると共に、当該左右サイドレール各前後長中途であってやや前方寄り適所間には、足繋縛機構が適所に組み込まれたブリッジを掛け渡して連結する一方、それらブリッジおよび前・後弓幹に弾発性回帰機構を組み込み、利用対象者が踏み込むと、その体重が弾発性回帰機構に加わり、当該枠状本体の左右巾を自動的に広げて接地巾を適正範囲内で拡大し、また、利用対象者体重から解放されると、当該枠状本体の左右巾が自動的に元の間隔寸法に復帰するよう自動変形可能となるものとしたことを特徴とするカンジキ。
【請求項3】
利用対象者足寸法長に相当する長さとした直線棒状とした左右一対のサイドレールを、その相互間隔が利用対象者足の左右両がわにおいて足巾を超え、且つそれらが足型に平行状となるよう配置してなるものとした上、それら左右サイドレール各前端間には、前方に向けて凸円弧形掛け渡し状とした可撓性前弓幹の左右端夫々を連結し、同左右サイドレール各後端間には、後方に向けて凸円弧形掛け渡し状とした可撓性後弓幹の左右端夫々を連結するようにし、それら左右一対のサイドレール、前・後弓幹によって利用対象者足型を囲む枠状本体を形成すると共に、当該左右サイドレール各前後長中途であってやや前方寄り適所間には、鉛直上方に向けて凸円弧形とした板バネ製のブリッジを掛け渡し連結し、それら板バネ製ブリッジおよび可撓性前・後弓幹が伴って弾発性回帰機構を形成するものとした上、該ブリッジの左右巾中央に、利用対象者足寸法巾より大きな左右巾とし、足繋縛機構が適所に組み込まれた足載せ台を装着してなるものとしたことを特徴とするカンジキ。
【請求項4】
利用対象者足寸法長に相当する長さとした直線棒状とした左右一対のサイドレールを、その相互間隔が利用対象者足の左右両がわにおいて足巾を超え、且つそれらが足型に平行状となるよう配置してなるものとした上、それら左右サイドレール各前端間には、前方に向けて凸円弧形掛け渡し状とした弾発性前弓幹の左右端夫々を連結し、同左右サイドレール各後端間には、後方に向けて凸円弧形掛け渡し状とした弾発性後弓幹の左右端夫々を連結するようにし、それら左右一対のサイドレール、前・後弓幹によって利用対象者足型を囲む枠状本体を形成すると共に、当該左右サイドレール各前後長中途であってやや前方寄り適所間には、鉛直上方に向けて凸円弧形とした板バネ製のブリッジを掛け渡し連結し、それら板バネ製ブリッジおよび弾発性前・後弓幹が伴って弾発性回帰機構を形成するものとした上、該ブリッジの左右巾中央に、利用対象者足寸法巾より大きな左右巾とし、足繋縛機構が適所に組み込まれた足載せ台を装着してなるものとしたことを特徴とするカンジキ。
【請求項5】
弾発性回帰機構が、その総弾発力の70%をブリッジで、残りの15%ずつを前・後弓幹で、夫々発揮するよう弾発力設定されてなるものとした、請求項4記載のカンジキ。
【請求項6】
ブリッジは、前後寸法長中央に、左右に長い被着スリットを鉛直方向に穿設し、該スリットに対応する足載せ台底壁からは、該被着スリットに貫通状に組み合わせ可能であって、該被着スリット下に下向き突出状に露出可能な一個または複数個の鈎爪を一体化形成した下駄歯を垂下してなるものとした、請求項3ないし5何れか一方記載のカンジキ。
【請求項7】
足載せ台は、その天面中央から利用対象者足寸法巾を超えた左右適所夫々に、足の左右方向ズレを阻止可能な左右保持壁を上向き突設すると共に、各左右保持壁より左右外がわに、利用対象者体重を受けて相互間隔が拡大状態にある場合の左右サイドレール左右間隔に達する左右突出寸法長とした、沈下防止用の左右掛止片部を一体化形成してなるものとした、請求項3ないし6何れか一項記載のカンジキ。
【請求項8】
左右サイドレール各前端と前弓幹左右端、左右サイドレール各後端と後弓幹左右端、および、左右サイドレール各前後長中途であってやや前方寄り適所間とブリッジ左右掛け渡し端の各連結箇所には、夫々分解機構を組み込んでなるものとした、請求項1ないし7何れか一項記載のカンジキ。
【請求項9】
前・後弓幹は、夫々その全部または一部が弾発素材製であって、しかも弓形中途複数適所に左右対称形状の蛇腹状軟弱部を設けてなるものとした、請求項1ないし8何れか一項記載のカンジキ。
【請求項10】
弾発性回帰機構は、利用対象者体重を受けた場合の枠状本体左右寸法巾を、無負荷状態の枠状本体左右寸法巾に対して、15ないし22%の範囲内で拡大可能としてなるものとした、請求項1ないし9何れか一項記載のカンジキ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2011−72684(P2011−72684A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229051(P2009−229051)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(509273352)
【Fターム(参考)】