説明

カーボンブラシ及びその製造方法

【課題】ブラシ本体とリード線との固着力低下や接触抵抗増大を生ずることなく、ブラシ本体の破損を防止しつつ、導電性の粉体止めでブラシ本体にリード線を確実に取り付けることができる。
【解決手段】ブラシ本体20と、ブラシ本体20のリード線取付穴21に嵌合され、リード線取付穴21の周縁に沿って配置され、且つブラシ本体20側と逆側の端部がブラシ本体20のリード線取付穴21周辺の端面と面一となるように配置若しくはブラシ本体20のリード線取付穴21周辺の端面から突出するように配置される筒体30と、筒体30内を通すようにしてリード線取付穴21に配置されているリード線40と、リード線40とリード線取付穴21との間に充填して加圧されている導電性の粉体50とを備えるカーボンブラシ10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機等に用いられるカーボンブラシ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カーボンブラシを製造する際に、ブラシ本体に通電用のリード線を取り付けることが行われており、代表的には銅粉止め等の導電性の粉体止めでリード線が取り付けられている。銅粉止めによるリード線の取り付けは、ブラシ本体に形成されたリード線取付穴にリード線を差し込み、その状態でリード線取付穴とリード線との間に銅粉を充填し、充填した銅粉を加圧して取り付けるものである。特許文献1、2には、銅粉止めによるリード線の取り付けが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−154453号公報
【特許文献2】特開2006−50772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、小型のカーボンブラシのブラシ本体に銅粉止めでリード線を取り付ける場合、銅粉の加圧時の応力によってブラシ本体が破損することがある。これを回避するためには、銅粉の加圧力を低減することが考えられるが、銅粉加圧力を低減すると、ブラシ本体とリード線との固着力が低下する、ブラシ本体とリード線との接触抵抗が増大する等の不具合が生ずる。そのため、ブラシ本体とリード線との固着力低下や接触抵抗増大を生ずることなく、ブラシ本体の破損を防止しつつ、導電性の粉体止めでブラシ本体にリード線を取り付けられる構成が求められている。
【0005】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、ブラシ本体とリード線との固着力低下や接触抵抗増大を生ずることなく、ブラシ本体の破損を防止しつつ、導電性の粉体止めでブラシ本体にリード線を確実に取り付けることができるカーボンブラシ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のカーボンブラシは、通電用のリード線を備えるカーボンブラシであって、ブラシ本体と、前記ブラシ本体のリード線取付穴に嵌合され、前記リード線取付穴の周縁に沿って配置され、且つ前記ブラシ本体側と逆側の端部が前記ブラシ本体の前記リード線取付穴周辺の端面と面一となるように配置若しくは前記ブラシ本体の前記リード線取付穴周辺の端面から突出するように配置される筒体と、前記筒体内を通すようにして前記リード線取付穴に配置されているリード線と、前記リード線と前記リード線取付穴との間に充填して加圧されている導電性の粉体とを備えることを特徴とする。
前記構成では、ブラシ本体のリード線取付穴に配置される筒体により、導電性の粉体を加圧する際にブラシ本体に負荷される応力を低減することができる。従って、ブラシ本体の破損を防止しつつ、導電性の粉体に必要十分な加圧を行って導電性の粉体止めでブラシ本体にリード線を取り付けることができ、ブラシ本体とリード線との十分な固着力や低い接触抵抗を有する高品質なカーボンブラシを安定して得ることができる。
【0007】
また、本発明のカーボンブラシは、前記筒体には前記筒体のブラシ本体側と逆側の端部に鍔部が設けられ、前記鍔部が前記ブラシ本体の前記リード線取付穴周辺の端面に載置され、前記筒体の前記ブラシ本体側の端部が前記リード線取付穴の底部よりも外側に配置されることを特徴とする。
前記構成では、筒体の端部をリード線取付穴の底部よりも外側に配置して粉体止めすることにより、粉体によるブラシ本体と筒体とリード線の三者の固着力を高めることができる。また、鍔部をリード線取付穴周辺の端面に載置することにより、筒体をリード線取付穴に所定長さだけ簡単に挿入することが可能となる。また、筒体の所定長さの挿入において、リード線取付穴の内部に特別な加工を施す必要を無くすことができる。
【0008】
また、本発明のカーボンブラシは、前記ブラシ本体に固着された前記リード線の周囲に設けられるコイルスプリングを有し、前記コイルスプリングの前記ブラシ本体側の端部が前記鍔部の外周に配置されることを特徴とする。
前記構成では、カーボンブラシを付勢して摺動するためのコイルスプリングを鍔部を利用して簡単に取り付けることができる。また、コイルスプリングを取り付けるためにカーボンブラシの鍔部に対応する位置に施すボス加工が不要となり、カーボンブラシの製造コスト低減を図ることができる。
【0009】
また、本発明のカーボンブラシは、前記粉体の端面と前記鍔部の内周面で形成される領域に前記粉体を被覆する樹脂が設けられることを特徴とする。
前記構成では、粉体端面と鍔部内周面による形成領域を用いて、フェノール樹脂等の樹脂を安定して所定領域に塗布し、粉体を被覆することができる。従って、導電性の粉体の脱落をより確実に防止することができると共に、リード線の引き抜き強度をより高めることができる。
【0010】
また、本発明のカーボンブラシは、前記リード線取付穴の下側で内方に突出している段差面に前記筒体の前記ブラシ本体側の端部を当接するようにして前記筒体が前記リード線取付穴に嵌挿され、前記筒体の前記ブラシ本体側の端部が前記リード線取付穴の底部よりも外側に配置されることを特徴とする。
前記構成では、筒体の端部をリード線取付穴の底部よりも外側に配置して粉体止めすることにより、粉体によるブラシ本体と筒体とリード線の三者の固着力を高めることができる。また、筒体の端部を段差面に当接することにより、筒体をリード線取付穴に所定長さだけ簡単に挿入することが可能となる。
【0011】
本発明のカーボンブラシの製造方法は、通電用のリード線を備えるカーボンブラシの製造方法であって、ブラシ本体のリード線取付穴に筒体を嵌挿して、前記筒体を前記リード線取付穴の周縁に沿って配置し、且つ前記筒体の前記ブラシ本体側と逆側の端部を前記ブラシ本体の前記リード線取付穴周辺の端面と面一となるように配置若しくは前記ブラシ本体の前記リード線取付穴周辺の端面から突出するように配置すると共に、前記筒体内を通すようにして前記リード線取付穴にリード線を挿入する工程と、前記リード線と前記リード線取付穴との間に導電性の粉体を充填する工程と、前記充填した粉体を加圧して前記リード線を前記本体に固着する工程とを備えることを特徴とする。
前記構成では、ブラシ本体のリード線取付穴に配置される筒体により、導電性の粉体を加圧する際にブラシ本体に負荷される応力を低減することができる。従って、ブラシ本体の破損を防止しつつ、導電性の粉体に必要十分な加圧を行って導電性の粉体止めでブラシ本体にリード線を取り付けることができ、ブラシ本体とリード線との十分な固着力や低い接触抵抗を有する高品質なカーボンブラシを安定して得ることができる。
【0012】
また、本発明のカーボンブラシの製造方法は、前記筒体を前記リード線取付穴に配置する工程において、前記筒体の前記ブラシ本体側と逆側の端部に設けられている鍔部を前記ブラシ本体のリード線取付穴周辺の端面に載置することを特徴とする。また、本発明のカーボンブラシの製造方法は、前記ブラシ本体に固着した前記リード線の周囲にコイルスプリングを設けると共に、前記コイルスプリングの前記ブラシ本体側の端部を前記鍔部の外周に配置する工程を備えることを特徴とする。また、本発明のカーボンブラシの製造方法は、前記リード線を前記ブラシ本体に固着する工程の後に、前記粉体の端面と前記鍔部の内周面で形成される領域に樹脂を塗布して前記粉体を被覆する工程を備えることを特徴とする。また、本発明のカーボンブラシの製造方法は、前記筒体を前記リード線取付穴に配置する工程において、前記リード線取付穴の下側で内方に突出している段差面に前記筒体の前記ブラシ本体側の端部を当接するまで前記筒体を嵌挿することを特徴とする。これらの製造方法は、対応する構成を有するカーボンブラシと同様の作用効果を奏する。
【0013】
本発明の電動機は、本発明のカーボンブラシ或いは本発明の製造方法によるカーボンブラシを備えることを特徴とする。
本発明によれば、本発明のカーボンブラシ或いは本発明に製造方法の作用効果を有する電動機を構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、導電性の粉体を加圧する際にブラシ本体に負荷される応力を低減することができる。従って、ブラシ本体の破損を防止しつつ、導電性の粉体に必要十分な加圧を行って導電性の粉体止めでブラシ本体にリード線を確実に取り付けることができ、ブラシ本体とリード線との十分な固着力や低い接触抵抗を有する高品質なカーボンブラシを安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は本発明による第1実施形態のカーボンブラシの正面図、(b)は同図(a)のカーボンブラシの縦断面図。
【図2】第1実施形態のカーボンブラシに於ける筒体の斜視図。
【図3】第1実施形態のカーボンブラシにコイルスプリングとキャップを取り付けた状態を示す正面図。
【図4】(a)は本発明による第2実施形態のカーボンブラシの正面図、(b)は同図(a)のカーボンブラシの縦断面図。
【図5】第2実施形態のカーボンブラシに於ける筒体の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第1実施形態のカーボンブラシ及びその製造方法〕
本発明による第1実施形態のカーボンブラシ及びその製造方法について説明する。図1は本発明による第1実施形態のカーボンブラシの正面図及び縦断面図、図2は第1実施形態のカーボンブラシに於ける筒体の斜視図、図3は第1実施形態のカーボンブラシにコイルスプリングとキャップを取り付けた状態を示す正面図である。
【0017】
第1実施形態のカーボンブラシ10は、電動機等に用いられるものであり、図1及び図3に示すように、例えば黒鉛粉を熱硬化性樹脂等のバインダーと混錬して硬化して製造されるブラシ本体20と、ブラシ本体20に形成されているリード線取付穴21に嵌合して配置される筒体30と、リード線取付穴21に配置されている通電用のリード線40と、リード線40とリード線取付穴21との間に充填して加圧されている導電性の粉体50と、粉体50を被覆する樹脂60とを備える。
【0018】
ブラシ本体20は、略直方体形であり、図1で上側に位置する端面22の略中央位置には平面視略円形の有底のリード線取付穴21が形成されている。本実施形態におけるブラシ本体20は、リード線40の取付面となる端面22の面積が約25mm以下の小型のものである。本発明は、前記面積以下の小型のカーボンブラシ10に適用するとその効果がより一層発揮されるが、これ以外のカーボンブラシにも適用可能である。
【0019】
筒体30は、図2に示すように、略円筒形の本体31を有し、本体31の軸方向の一方端には外側に突出して鍔部32が形成されており、後述の如く鍔部32は、筒体30のブラシ本体20側と逆側の端部に位置して設けられている。本実施形態の鍔部32は本体31の端部を外側に折り曲げるようにして形成され、図示例では若干湾曲するように形成されているが、別部材の環状部材を本体31の端部に固着して設けるようにすることも可能である。
【0020】
筒体30は、図2に示すように、ブラシ本体20のリード線取付穴21に嵌合され、リード線取付穴21の周縁に沿って配置されると共に、ブラシ本体20側と逆側の端部に位置する鍔部32が、リード線取付穴21周辺の端面22に載置され、端面22よりも外側に突出するように配置されている。また、本体31の長さは、リード線取付穴21の深さよりも短く形成されており、筒体30のブラシ本体20側の端部である本体31の端部は、リード線取付穴21の底部よりも外側に配置され、図示例では、リード線取付穴21の略中間程度の深さに配置されている。
【0021】
リード線40の先端近傍は、筒体30を通すようにしてリード線取付穴21内に挿入され、リード線取付穴21内に配置されている。導電性の粉体50は、筒体30内を通してリード線取付穴21内に充填され、リード線40とリード線取付穴21と筒体30とに接触するように充填されて加圧されており、この充填、加圧でリード線40がブラシ本体20に固定されている。導電性の粉体50は、銅粉、黒鉛粉、又は鉄粉等とすることが可能である。
【0022】
樹脂60は、例えばフェノール樹脂等であり、粉体50の端面51と鍔部32の内周面で形成される領域に塗布して設けられ、粉体50の端面51を被覆するようになっている。
【0023】
本実施形態のカーボンブラシ10には、電動機等に設ける場合に、図3に示すように、コイルスプリング71やキャップ72が設けられる。コイルスプリング71は、ブラシ本体20に固着されたリード線40の周囲に設けられ、リード線40の軸方向に伸縮可能であり、カーボンブラシ10を付勢して図示下側に位置する摺接面を整流子に接触させる。コイルスプリング71のブラシ本体20側の端部は鍔部32の外周に配置される一方、ブラシ本体20側と逆側の端部は、キャップ72に当接して配置される。
【0024】
キャップ72は、コイルスプリング71のブラシ本体20側と逆側の端部を覆い、キャップ72の中心部には、リード線40を挿通できる挿通孔が形成されている。
【0025】
次に、第1実施形態のカーボンブラシ10の製造方法について説明する。先ず、ブラシ本体20に通電用のリード線40のリード線取付穴21を形成する。リード線取付穴21はブラシ本体20の成形時に形成することが可能である。次いで、筒体30をブラシ本体20のリード線取付穴21に嵌挿することにより、筒体30の本体31をリード線取付穴21の周縁に沿ってリード線取付穴21の内側に配置すると共に、筒体30の鍔部32をブラシ本体20のリード線取付穴21周辺の端面22から突出するように配置する。その後、リード線40を筒体30内を挿通するようにして、リード線取付穴21に挿入する。
【0026】
そして、リード線40とリード線取付穴21との間に、導電性の粉体50を充填し、粉体50を加圧してリード線40をブラシ本体20に固着する。さらに、粉体50の端面51と筒体30の鍔部32の内周面で形成される領域に、樹脂60を塗布し、端面51を被覆して、第1実施形態のカーボンブラシ10の製造が完了する。
【0027】
第1実施形態のカーボンブラシ10は、ブラシ本体20のリード線取付穴21に配置される筒体30により、導電性の粉体50を加圧する際にブラシ本体20に負荷される応力或いは局所的な応力集中を低減することができる。従って、ブラシ本体20の破損を防止しつつ、導電性の粉体50に必要十分な加圧を行って導電性の粉体50止めでブラシ本体20にリード線40を取り付けることができる。また、ブラシ本体50とリード線40との十分な固着力や低い接触抵抗を有する高品質なカーボンブラシを安定して得ることができる。
【0028】
また、筒体30の端部をリード線取付穴21の底部よりも外側に配置して粉体止めすることにより、粉体50によるブラシ本体50と筒体30とリード線40との三者の固着力を高めることができる。また、筒体30の鍔部32をリード線取付穴21周辺の端面22に載置することにより、筒体30をリード線取付穴21に所定長さだけ簡単に挿入することが可能となる。また、筒体30の所定長さの挿入において、リード線取付穴21の内部に特別な加工を施す必要を無くすことができる。また、カーボンブラシ10を付勢して摺動するためのコイルスプリング71を筒体30の鍔部32を利用して簡単に取り付けることができる。また、コイルスプリング71を取り付けるためにカーボンブラシ10の鍔部32に対応する位置に施すボス加工が不要となり、カーボンブラシ10の製造コスト低減を図ることができる。
【0029】
また、樹脂60が粉体50の端面と鍔部32の内周面で形成される領域を被覆することにより、粉体50の脱落を確実に防止でき、且つリード線40の引き抜き強度を高めることができる。
【0030】
〔第2実施形態のカーボンブラシ及びその製造方法〕
次に、第2実施形態のカーボンブラシ及びその製造方法について説明する。図4は本発明による第2実施形態のカーボンブラシの正面図及び縦断面図、図5は第2実施形態のカーボンブラシに於ける筒体の斜視図である。
【0031】
第2実施形態のカーボンブラシ10aは、図4に示すように、ブラシ本体20aと、ブラシ本体20aに形成されているリード線取付穴21aに嵌合して配置される筒体30aと、リード線40と、リード線40とリード線取付穴21aとの間に充填して加圧されている導電性の粉体50aと、粉体50aを被覆する樹脂60aとを備える。ここで、第1実施形態のカーボンブラシと同じ構成については、同じ符号を付与し、詳細な説明は省略する。
【0032】
ブラシ本体20aは、段差を有する円柱形であり、図4で上側に位置する、リード線40の取付面となる端面22aは縮径して形成されている。端面22aの略中央位置には平面視略円形の有底のリード線取付穴21aが形成されており、リード線取付穴21aの下部には、内方に突出している段差面23aが形成されている。
【0033】
筒体30aは、図5に示すように、略円筒形であり、ブラシ本体20aのリード線取付穴21aに嵌合されることによって、リード線取付穴21aの周縁に沿ってリード線取付穴21aの内側に配置される。筒体30aは、そのブラシ本体21a側の端部が、リード線取付穴21aの下側で内方に突出している段差面23aに当接するまでリード線取付穴21aに嵌挿されており、筒体30aのブラシ本体21a側の端部はリード線取付穴21aの底部よりも外側に配置されている。また、前記段差面23aとの当接により、筒体30aのブラシ本体20a側と逆側の端部は、ブラシ本体20aのリード線取付穴21a周辺の端面22aと面一となるように配置されている。
【0034】
導電性の粉体50aは、筒体30a内を通してリード線取付穴21a内に充填され、リード線40とリード線取付穴21aと筒体30aとに接触するように充填されて加圧されており、この充填、加圧でリード線40がブラシ本体20aに固定されている。導電性の粉体50aは、銅粉、黒鉛粉、又は鉄粉等とすることが可能である。
【0035】
樹脂60aは、少なくとも粉体50aの端面51aを被覆するように設けられ、第2実施形態では、端面22a、筒体30aの端面、及び粉体50aの端面51aを被覆するように設けられている。
【0036】
次に、第2実施形態のカーボンブラシ10aの製造方法について説明する。先ず、ブラシ本体20aに通電用のリード線40のリード線取付穴21aを形成する。リード線取付穴21aはブラシ本体20aの成形時に形成することが可能である。次いで、ブラシ本体20aのリード線取付穴21aに筒体30aを嵌挿することにより、筒体30aをリード線取付穴21aの周縁に沿ってリード線取付穴21aの内側に配置する。この際、筒体30aのブラシ本体21a側の端部がリード線取付穴21aの下側で内方に突出している段差面23aに当接することによって、筒体30aのブラシ本体20a側と逆側の端部が、筒体30aのブラシ本体20aのリード線取付穴21a周辺の端面22aと面一となるように配置される。次いで、筒体30a内を挿通するようにして、リード線取付穴21にリード線40を挿入する。
【0037】
そして、リード線40とリード線取付穴21aとの間に、導電性の粉体50aを充填し、粉体50aを加圧してリード線40をブラシ本体20aに固着する。さらに、粉体50aの端面51aと筒体30aの本体31aの内周面で形成される領域に、樹脂60aを塗布し、少なくとも端面51aを被覆、第2実施形態では、端面22a、筒体30aの端面、及び端面51aを被覆して、カーボンブラシ10aを製造が完了する。
【0038】
第2実施形態のカーボンブラシ10aは、ブラシ本体20aのリード線取付穴21aに配置される筒体30aにより、導電性の粉体50aを加圧する際にブラシ本体20aに負荷される応力を低減することができる。従って、ブラシ本体20aの破損を防止しつつ、導電性の粉体50aに必要十分な加圧を行って導電性の粉体50a止めでブラシ本体20aにリード線40を取り付けることができる。また、ブラシ本体20aとリード線40との十分な固着力や低い接触抵抗を有する高品質なカーボンブラシを安定して得ることができる。
【0039】
また、筒体30aの端部をリード線取付穴21aの底部よりも外側に配置して粉体止めすることにより、粉体50aによるブラシ本体20aと筒体30aとリード線40との三者の固着力を高めることができる。また、筒体30aの端部がリード線取付穴21aの段差面23aに当接するため、筒体30aをリード線取付穴21aに所定長さだけ容易に挿入することが可能となり、筒体30aのブラシ本体20a側と逆側の端部を、ブラシ本体20aのリード線取付穴21a周辺の端面22aと面一にでき、粉体50aの適度な加圧を容易に行うことができる。
【0040】
また、ブラシ本体20aの端面22aと、筒体30aの端面と、端面51aとを被覆する等、樹脂60aで少なくとも粉体50aの端面51aで形成される領域を被覆することにより、粉体50aの脱落を確実に防止でき、且つリード線40の引き抜き強度を高めることができる。
【0041】
〔実施形態の変形例等〕
本明細書開示の発明は、各発明や実施形態の構成の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものを含み、下記の変形例等も包含する。
【0042】
例えば第1実施形態では、筒体30に鍔部32を設ける構成としたが、鍔部32を設けずに、筒体30のブラシ本体20と逆側の端部がブラシ本体20のリード線取付穴21周辺の端面22から突出する構成等とすることも可能である。また、第2実施形態で、リード線取付穴21aに段差面23aを形成せずに、筒体30aの長さをリード線取付穴21aの深さと略同一として筒体30aをリード線取付穴21aに挿入し、筒体30aのブラシ本体20a側と逆側の端部を、ブラシ本体20aのリード線取付穴21a周辺の端面22aと面一にする構成等とすることも可能である。
【0043】
また、筒体30、30aの内壁又は外壁又はこれらの両者に微細凹凸等を形成して粗面とする構成、或いは筒体30の本体31や筒体30aの適宜箇所に貫通穴を形成し、若しくはブラシ本体20、20a側の端部から途中までスリットを形成し、これらの貫通穴若しくはスリットに粉体を入り込ませて固着力を高める構成等とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、例えばカーボンブラシやカーボンブラシを備える電動機等に利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
10、10a… カーボンブラシ 20、20a…ブラシ本体 21、21a…リード線取付穴 22、22a…端面 23a…段差面 30、30a…筒体 31…本体 32…鍔部 40…リード線 50、50a…粉体 51、51a…端面 60、60a…樹脂 71…コイルスプリング 72…キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電用のリード線を備えるカーボンブラシであって、
ブラシ本体と、
前記ブラシ本体のリード線取付穴に嵌合され、前記リード線取付穴の周縁に沿って配置され、且つ前記ブラシ本体側と逆側の端部が前記ブラシ本体の前記リード線取付穴周辺の端面と面一となるように配置若しくは前記ブラシ本体の前記リード線取付穴周辺の端面から突出するように配置される筒体と、
前記筒体内を通すようにして前記リード線取付穴に配置されているリード線と、
前記リード線と前記リード線取付穴との間に充填して加圧されている導電性の粉体とを備えることを特徴とするカーボンブラシ。
【請求項2】
前記筒体には前記筒体のブラシ本体側と逆側の端部に鍔部が設けられ、
前記鍔部が前記ブラシ本体の前記リード線取付穴周辺の端面に載置され、
前記筒体の前記ブラシ本体側の端部が前記リード線取付穴の底部よりも外側に配置されることを特徴とする請求項1記載のカーボンブラシ。
【請求項3】
前記ブラシ本体に固着された前記リード線の周囲に設けられるコイルスプリングを有し、
前記コイルスプリングの前記ブラシ本体側の端部が前記鍔部の外周に配置されることを特徴とする請求項2記載のカーボンブラシ。
【請求項4】
前記粉体の端面と前記鍔部の内周面で形成される領域に前記粉体を被覆する樹脂が設けられることを特徴とする請求項2又は3記載のカーボンブラシ。
【請求項5】
前記リード線取付穴の下側で内方に突出している段差面に前記筒体の前記ブラシ本体側の端部を当接するようにして前記筒体が前記リード線取付穴に嵌挿され、
前記筒体の前記ブラシ本体側の端部が前記リード線取付穴の底部よりも外側に配置されることを特徴とする請求項1記載のカーボンブラシ。
【請求項6】
通電用のリード線を備えるカーボンブラシの製造方法であって、
ブラシ本体のリード線取付穴に筒体を嵌挿して、前記筒体を前記リード線取付穴の周縁に沿って配置し、且つ前記筒体の前記ブラシ本体側と逆側の端部を前記ブラシ本体の前記リード線取付穴周辺の端面と面一となるように配置若しくは前記ブラシ本体の前記リード線取付穴周辺の端面から突出するように配置すると共に、前記筒体内を通すようにして前記リード線取付穴にリード線を挿入する工程と、
前記リード線と前記リード線取付穴との間に導電性の粉体を充填する工程と、
前記充填した粉体を加圧して前記リード線を前記本体に固着する工程と、
を備えるカーボンブラシの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5の何れかに記載のカーボンブラシを備えることを特徴とする電動機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−50142(P2011−50142A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195215(P2009−195215)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000103585)オーパック株式会社 (6)
【Fターム(参考)】