説明

ガイド付き振り出し竿の穂先保護カバー

【課題】従来の穂先保護カバーは、上方向に対しては係止されていなかったため、竿の向け方によっては穂先竿がグラついて係止駒から上方に抜け、穂先竿に後側の重量が掛かって竿管やガイドが損傷してしまう虞があった。
【解決手段】係止駒13の駒本体15内に、前後及び上方向に貫通した挿通用スリット29を備えた仕切り部23を設け、その仕切り部23に横方向から延出して本体の内部空間を上方から遮る庇39、39を連設する。この庇39、39によりガイドG2を備えた二番竿の上方への移動が規制されて、抜けが阻止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイド付き振り出し竿の穂先保護カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来繊細な穂先を持つ磯上物竿等に対して、太くて重い石鯛竿や鯉竿、投げ竿等のガイド付き振り出し竿の穂先保護カバーは、特許文献1に示すように、カバー本体内に内設する係止駒の後端にスリット付きの仕切り板を設け、この仕切り板の後端面を二番竿の係止面とすることで、穂先を保護していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−28341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
而して、ガイド付き振り出し竿を穂先保護カバーに装着したときには、締付けベルトを元竿に巻き回して締付け固定しているが、従来の係止駒では上方向に対しては係止されていなかったため、竿の向け方によっては穂先竿が大きくグラついて係止駒から上方に抜け、穂先竿に後側の重量が掛かって竿管やガイドが損傷してしまう虞があった。
それ故、本発明は、上下方向のグラつきのみならず、竿をどのような方向に向けようとも穂先竿を十分に保護できる新規且つ有用な穂先保護カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
締付け固定部の剛性を向上させる等して元竿を如何に強固に締付け固定しても、例えば穂先保護カバーを持って竿を持ち上げたりすると、穂先竿が上方向に大きくグラついてしまう場合がある。
本発明者は、試行錯誤の末、係止駒側に着目し、係止駒の形状に工夫を加えることで、従来と同様の一体成形法で、穂先竿の上方への抜けを阻止できるものを作り出せることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明の請求項1の発明は、ガイド付き振り出し竿の穂先保護カバーであって、そのカバー本体には、上側に受入れ口が設けられ、後端が開口した割り筒状の係止駒が内設されており、前記係止駒の内側に、前後及び上方向に貫通したスリットを備えた仕切り部を設けると共に、前記仕切り部から後側に両横方向から延出して筒の内部空間を上方から遮る庇を連設したことを特徴とするガイド付き振り出し竿の穂先保護カバーである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載したガイド付き振り出し竿の穂先保護カバーにおいて、係止駒の仕切り部の前面側を受入れ口を超えて上方に突出させたことを特徴とするガイド付き振り出し竿の穂先保護カバーである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載したガイド付き振り出し竿の穂先保護カバーにおいて、係止駒の仕切り部の後側の内面を、頂点が前側を向き中心軸より上側を切断面とする切断円錐形にしてスリットより内部空間を広げたことを特徴とするガイド付き振り出し竿の穂先保護カバーである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載したガイド付き振り出し竿の穂先保護カバーにおいて、切断円錐形は、頂点が上部にくる斜円錐形になっていることを特徴とするガイド付き振り出し竿の穂先保護カバーである。
【0010】
請求項5の発明は、請求項2から4のいずれかに記載したガイド付き振り出し竿の穂先保護カバーにおいて、仕切り部の突出部分と庇とは連結されていることを特徴とするガイド付き振り出し竿の穂先保護カバーである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の穂先保護カバーによれば、竿をどの方向に向けようとも、カバー本体内に穂先竿の竿管が行儀よく収まって穂先竿に後側の重量が掛かることはない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る穂先保護カバーの側面図である。
【図2】図1の穂先保護カバーのカバー本体に内設した係止駒の斜視図である。
【図3】図2の係止駒の要部の上面図、及び横方向切断断面図である。
【図4】図2の係止駒の上下方向切断断面図である。
【図5】図2の係止駒の後面図である。
【図6】図1の穂先保護カバーへの穂先竿の装着手順を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態に係る穂先保護カバー1を、図面にしたがって説明する。
図1中、符号3は透明なカバー本体を示し、樹脂で構成され一体に成形されている。カバー本体3の前側部分は筒状のカバー部5となっており、その前端はキャップ7により閉塞されている。後側部分は上部が切り欠かれて上面に開口しており、大きく切欠かれた後端寄りが竿体取付部9となっており、そこに2つの締付けベルト11、11の一端がそれぞれ取り付けられている。
【0014】
符号13は係止駒を示し、樹脂により一体に成形されている。この係止駒13の駒本体15の下面にはスライド突起17が形成されており、このスライド突起17がカバー本体3に形成されたスライド用スリットに嵌り込んで前後方向にスライド移動可能になっている。
【0015】
以下、係止駒13の構成について、図2から図5にしたがって詳細に説明する。
駒本体15は上側が欠けた割り筒状になっており、その軸方向が前後方向を向いている。上側の割り縁によって受入れ口19が構成されている。駒本体15の前端は前端壁21により閉塞され、後端は開口している。
【0016】
符号23は仕切り部を示す。この仕切り部23の前側は平板状をした平板部25になっており、その板面が前後方向を向いた状態で板厚側の縁が駒本体15の内側に連設して駒本体15と一体になっている。この平板部25の板厚側の縁のうち上側は受入れ口19を超えて上方突出して、突出部27になっている。
【0017】
突出部27から平板部25にかけて、挿通用スリット29が形成されている。図5に示すように、この挿通用スリット29は突出部27の上端から下方に切り込まれてなるものであり、縁が上下方向に正立したU字形の輪郭線として現れている。この挿通用スリット29により、突出部27は左右に分かれて一対となっている。挿通用スリット29の下端は駒本体15の内側底面より上がっている。
【0018】
挿通用スリット29の縁に連なってその後側に上側が切断して開口した割り筒状体31が配されている。割り筒状体31の切断縁が上側開口33になっている。割り筒状体31は駒本体15の受入れ口19を超えて上方に突出しており、結果的に突出部27の後端面の下部側とも連結し、突出部27を後側から支持した状態となっている。
【0019】
割り筒状体31は前側が切断円筒状体35になっており、その内周断面の輪郭線は挿通用スリット29と同じU字形を描いている。
切断円筒状体35より後側には、頂点が前側を向き中心軸より上部を切断面とする切断円錐状体37が連なっている。切断円錐状体37の内周断面の輪郭線は上側が欠けた円弧を描いている。切断円錐状体37は、頂点がほぼ最上部にくる斜円錐形になっている。
上記構成により、切断円錐状体37の内部空間は、切断円筒状体35より左右及び上下に広がっており、後方にいくほど広がりは大きくなっている。
切断円筒状体35と切断円錐状体37の内周面の境界は段差なく連続している。
【0020】
切断円錐状体37の円弧は円周の2/3を超えているため、上側が内部空間を上方から遮る庇39となる。上側開口33の口幅が前後方向では後端を除いて一定なので、後方に向かうほどこの庇39によって遮られる割合が大きくなる。図5に示すように、この一対の庇39、39は後方より見ると、両横側から互いに近づく方句に延びているように見える。庇39、39の間の隙間は穂先竿Hの竿管tが挿通できる程度にあればよい。
【0021】
割り筒状体31の上側開口33を囲む部位は突出部27と連結して一体になっており、突出部27が補強されている。
駒本体15の外面のうち、庇39を含めた円弧状の後縁部分及び受入れ口19の縁部分に対応する補強部分41は肉厚になって補強されている。
【0022】
次に、穂先竿Hの装着状態を説明する。
図1に示す穂先竿Hを装着し、その元竿Mを締付けベルト11、11で締付け固定すると、図3、図4に示すように、穂先竿Hの竿管tが挿通用スリット29を通り、穂先竿Hの遊動ガイドG1と二番竿の固定ガイドG2との間に仕切り部23がくる。ガイドG2を備えた二番竿は切断円錐状体37に後側から当接して前方への移動が規制される。また、庇39、39の存在により、二番竿は上方への移動も規制される。さらに、二番竿の竿管は円弧状に係止されるので竿がどの向きを向いてもぐらつかず安定的に収まる。
従って、竿がどの方向を向いても、穂先竿Hが係止駒13から抜けることも、グラつきもない。
【0023】
次に、穂先の穂先保護カバー1への装着手順を、図6にしたがって説明する。
図6(1)に示すように、穂先保護カバー1の係止駒13を、最も後側にスライド移動させた状態で、受入れ口19を斜め上方に向ける向きに片方の手で持ち、もう片方の手で竿の元竿Mを持つ。図6(2)に示すように、ガイドG1を平板部25に連設された突出部27の前面に載せて引っ掛けた後に、元竿Mを後側下方に引くことで穂先竿Hの竿管t(図1)を伸ばし、ガイドG2をガイドG1から十分に離す。
次に、図6(3)に示すように、ガイドG1を平板部25側に押し込みながら穂先竿全体を受入れ口19から駒本体15内に差込む。このとき、ガイドG2は係止駒13より後方になり、差込み動作には干渉しない。
その後は、図6(4)に示すように、元竿Mを押し戻して穂先竿Hの竿管tを収めながらガイドG2を切断円錐状体37に係止させる。そして、その状態を保ちながら係止駒を最も前側にスライド移動させた後、締付けベルトで元竿Mを締め付け固定する。
上記したように突出部27を利用して穂先竿Hの竿菅を伸ばせるので、装着作業が容易になっている。
【0024】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の具体的構成は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨から外れない範囲での設計変更があっても本発明に含まれる。
いずれにしても、特許請求されている形状等を除いては、従来からあるまたは将来案出される形状や製造を任意に組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の穂先保護カバーの係止駒は、従来と同様に、樹脂を素材とし一体成形法で製造できるので、製造上の負担はない。
【符号の説明】
【0026】
1‥‥穂先保護カバー
3‥‥透明なカバー本体 5‥‥筒状のカバー部
7‥‥キャップ 9‥‥竿体取付部
11‥‥締付けベルト
13‥‥係止駒 15‥‥駒本体
17‥‥スライド突起 19‥‥受入れ口
21‥‥前端壁 23‥‥仕切り部
25‥‥平板部 27‥‥突出部
29‥‥挿通用スリット 31‥‥割り筒状体
33‥‥上側開口 35‥‥切断円筒状体
37‥‥切断円錐状体 39‥‥庇
41‥‥補強部分
M‥‥元竿 t‥‥穂先竿の竿管
G1‥‥穂先竿の遊動ガイド G2‥‥二番竿の固定ガイド
H‥‥穂先竿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイド付き振り出し竿の穂先保護カバーであって、
そのカバー本体には、上側に受入れ口が設けられ、後端が開口した割り筒状の係止駒が内設されており、前記係止駒の内側に、前後及び上方向に貫通したスリットを備えた仕切り部を設けると共に、前記仕切り部から後側に両横方向から延出して筒の内部空間を上方から遮る庇を連設したことを特徴とするガイド付き振り出し竿の穂先保護カバー。
【請求項2】
請求項1に記載したガイド付き振り出し竿の穂先保護カバーにおいて、
係止駒の仕切り部の前面側を受入れ口を超えて上方に突出させたことを特徴とするガイド付き振り出し竿の穂先保護カバー。
【請求項3】
請求項2に記載したガイド付き振り出し竿の穂先保護カバーにおいて、
係止駒の仕切り部の後側の内面を、頂点が前側を向き中心軸より上側を切断面とする切断円錐形にしてスリットより内部空間を広げたことを特徴とするガイド付き振り出し竿の穂先保護カバー。
【請求項4】
請求項3に記載したガイド付き振り出し竿の穂先保護カバーにおいて、
切断円錐形は、頂点が上部にくる斜円錐形になっていることを特徴とするガイド付き振り出し竿の穂先保護カバー。
【請求項5】
請求項2から4のいずれかに記載したガイド付き振り出し竿の穂先保護カバーにおいて、
仕切り部の突出部分と庇とは連結されていることを特徴とするガイド付き振り出し竿の穂先保護カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−31409(P2013−31409A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169963(P2011−169963)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000237385)富士工業株式会社 (24)
【Fターム(参考)】