説明

ガスサンプリング装置

【課題】採取したサンプリングガスが高濃度ダストを含む場合であっても冷却管を詰まらせないようにする。
【解決手段】冶金炉の炉壁に設置して炉内ガスをサンプリングする装置である。炉壁への設置時、先端部が炉壁内面から炉外側に亘って位置する水冷プローブ1と、この水冷プローブ1の炉外に位置する基端側に接続され、水冷プローブ1の先端より採取されたサンプリングガスから粗粒ダストを取り除く除塵器2と、この除塵器2の下流側に配置され、前記粗粒ダストが取り除かれたサンプリングガスを冷却する冷却装置3を一体として構成した。
【効果】冷却装置の上流側に除塵器を配置したので、採取されたガスが高濃度ダストを含む場合であっても、冷却管の閉塞を発生させることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉等の冶金炉の炉壁に設置され、高濃度のダストを含有する高温の炉内ガスをサンプリングする装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のサンプリング装置によってサンプリングされた、燃焼炉の排気ガス(以下、排ガスと略す。)や高炉の炉内ガスなどの高温で高濃度のダストを含有するガスは、成分分析に供される場合が多い。
【0003】
しかしながら、サンプリングした前記ガスは、高温で高濃度のダストを含有するので、サンプリングした状態のままでは成分分析を行うことができず、冷却してガス温度を下げるのと共に、ガス中のダストを除去する必要がある。そのためには、サンプリングガスの冷却や除塵等の処理を事前に行う装置を併設する必要があり、自ずと装置自体が大掛かりになる。
【0004】
例えば、石炭燃焼用ボイラーから排出される燃焼排ガス中のSO2、NOx、CO2、COなどの成分を連続分析するために、ガス採取部より採取した燃焼排ガスに含まれる粉塵や煤塵をサイクロンによって分離除去する装置が、特許文献1、2に開示されている。
【特許文献1】特開平8−254486号公報
【特許文献2】特開平9−311098号公報
【0005】
しかしながら、冶金炉においては、高炉下部のように1000℃を超える高温ガスの吸引を行う場合もあり、その場合には、ガス採取部を保護するために冷却が必要となる。従って、高温で高濃度のダストを含有する炉内ガスをサンプリングする装置として、特許文献1、2で開示された技術を適用することは困難である。
【0006】
また、高炉でのガス成分測定装置において、サイクロン式除塵機を用いたガスサンプリング装置が、特許文献3に開示されている。
【特許文献3】実開平2−95835号公報
【0007】
しかしながら、特許文献3で開示された装置には、サンプリングガスの冷却器が設けられていないため、高炉ガスのような高温のガスをサンプリングする場合には、サンプルガス供給管自体がガス温度にまで熱せられて破損に至る場合がある。破損を防ぐためには、サンプルガス供給管自体を長距離に亘って冷却する必要があり、さらに大掛かりな設備になる。
【0008】
これらの問題を解決するために、出願人は、高炉内の高温かつ高濃度ダストを含むガスをサンプリングする装置を特許文献4で提案した。この装置は、高炉内からの高温ガス採取部、冷却器、除塵器を、それぞれに関して機能を保持しながら、かつ一体構造の装置とすることで、省スペース化を図っている。
【特許文献4】特開2006−249501号公報
【0009】
この特許文献4で提案した装置は、高温雰囲気から保護するため、ガス採取部を冷却しており、さらにサンプリングガス自体を冷却する冷却器も備えている。そして、これらをコンパクトな一体構造とすることで、採取されたサンプリングガスはガス採取部近傍でも冷却されて低温でガス分析計に送ることができるため、ガス分析計までのガス供給管が破損する心配は少なくなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献4の装置でも、高炉の炉下部のように溶融物の存在が多くなる部位で使用する際には、ガス採取部に侵入した炉内の滴下溶融スラグが急冷されて固化し、ガス採取部を閉塞してしまうという問題が生じる場合がある。また、ガス採取部、冷却器、除塵器の順に配置されているため、採取されたサンプリングガスが高濃度ダストを含む場合、螺旋状の冷却管が詰まってしまう場合もある。
【0011】
ガス採取部の閉塞や冷却管の詰りが発生した際には、炉を停機している状態であっても、装置を取り付けた状態のまま内部を掃除する手立てがなく、装置一式を取外して詰りを除去しなければならないといったメンテナンス性の問題もある。
【0012】
本発明が解決しようとする問題点は、以下の点である。
(1)冷却器は除塵器の上流に配置されているので、採取されたサンプリングガスが高濃度ダストを含む場合、螺旋状の冷却管が詰まる場合がある。冷却器は本体と一体であるため、冷却管が詰まった際にはこれを取除くことが困難、もしくは不可能である。
【0013】
(2)高炉の炉下部のように溶融物が多い部位での使用は、ガス採取部に侵入した滴下溶融スラグが急冷されて固化し、ガス採取部が閉塞してサンプリングガスの流量不足や測定不可能に至る場合がある。ガス採取部は内部で螺旋状の冷却管へと直結されているので、閉塞した場合、この閉塞を取り除くことは困難、もしくは不可能である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のガスサンプリング装置は、
採取したサンプリングガスが高濃度ダストを含む場合であっても冷却管を詰まらせないようにするために、
冶金炉の炉壁への設置時、先端部が炉壁内面から炉外側に亘って位置する水冷プローブと、
この水冷プローブの炉外に位置する基端側に接続され、水冷プローブの先端より採取されたサンプリングガスから粗粒ダストを取り除く除塵器と、
この除塵器の下流側に配置され、前記粗粒ダストが取り除かれたサンプリングガスを冷却する冷却装置と、
が一体として構成されていることを最も主要な特徴としている。
【0015】
本発明のガスサンプリング装置において、前記水冷プローブの先端部の管内径を20mm以上とした場合には、ガス採取部に侵入した炉内の滴下溶融スラグが固化した場合であっても、水冷プローブを閉塞させることがない。
【0016】
また、本発明のガスサンプリング装置において、前記水冷プローブを、前記除塵器の横断面における中心より外周側の位置に接続させた場合には、除塵器の内部でサイクロンが発生し、サンプリングガスに含まれる粗粒ダストを効率良く除去できるようになる。
【0017】
また、本発明のガスサンプリング装置において、前記冷却装置が、直管からなる冷却管を多数備えた構成で、前記除塵器と反対の側に取り外しが可能な蓋を設けたものとした場合は、冷却機の内部の掃除が可能になる。その際、直管からなる冷却管は、個別に取外すことが出来、単体での取り替えを可能とすることが望ましい。
【0018】
また、本発明のガスサンプリング装置において、前記水冷プローブの下流側に清掃用配管を備えるようにすれば、この清掃用配管を介して炉外側から水冷プローブ内の掃除を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、冷却装置の上流側に除塵器を配置したので、採取されたガスが高濃度ダストを含む場合であっても、冷却管の閉塞を発生させることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を用いてさらに詳細に説明する。
本発明例では、高炉の炉下部であるボッシュ(朝顔)部からシャフト(炉胸)下部の1箇所ないし数箇所において、高炉炉内からガスを採取する場合について説明する。
【0021】
高炉炉内から採取するガスは、高温(1000〜1200℃)で、かつ、高圧(150〜400kPa)であり、連続的に採取するためには、冷却装置が必須である。
従って、本発明のガスサンプリング装置は、図1〜図4に示すような装置構成を採用している。
【0022】
図1において、1は炉外側から炉壁に差込まれて固定配置されるプローブであり、中央部は空洞(以下、中央空洞部1aという。)で、この中央空洞部1aの外周部1bに通水して水冷する構造となっている。プローブ1の材質は特に限定するものではないが、冷却性能を確保できる銅または銅合金製が望ましい。
【0023】
このプローブ1における中央空洞部1aの内径は、プローブ1に例えば炉内の滴下溶融スラグが侵入して固化した場合でも、プローブ1の中央空洞部1aを閉塞しないように、例えば20mm以上となされている。
【0024】
前記プローブ1の先端から採取された炉内のガス(サンプリングガス)は、プローブ1の中央空洞部1aを通過して除塵器2に導入される。この除塵器2として、添付図面に示した発明例では、サイクロン式のものを示している。
【0025】
すなわち、プローブ1の先端から採取されたサンプリングガスは、図2に示すように、除塵器2を水平に横断して見た場合に、中心ではなく、中心より外周側の位置に導入される。このような構成とすることで、ガス流速の低下と相俟って、サンプリングガス中に含まれる粗粒ダストを効率良く沈降して除去することができる。
【0026】
粗粒ダストを除去した後のサンプリングガスは、除塵器2の下流側に配置された冷却装置3に導かれて冷却される。発明例では、メンテナンス性を考慮して、直管からなる冷却管3aを多数備えた構成の冷却装置3を設けている。
【0027】
このように粗粒ダストが取り除かれ、かつ冷却されたサンプリングガスは、冷却装置3を出た後、更にフィルターを通過させて微細なダストを取り除いた後にガス分析計に導入される。
【0028】
ところで、発明例では、冷却装置3の、前記除塵器2と反対の側に、図3に示すように、取り外しが可能な蓋3bを設けている。このような構成とすれば、この蓋3bを開放することで、図4に示すように、清掃用ノズル4aにより、多数の冷却管3aの内部を個別に清掃でき、また、交換が必要な時には、冷却装置3を単体で取り替えることができる。
【0029】
また、発明例では、図2に示すように、前記除塵器2におけるプローブ1の連結部と相対する位置にも清掃用配管5を設けている。このような構成では、図4に示すように、この配管5の蓋5aをとって清掃用ノズル4bを挿入すれば、炉外側からプローブ1の中央空洞部1aの清掃を行うことができる。
【0030】
5aaは前記蓋5aに設けられた栓部材であり、サンプリング時にプローブ1から除塵器2に導入されたガスが清掃用配管5に侵入しないように、清掃用配管5の除塵器2との接続側に挿入されるものである。なお、この栓部材5aaの先端面の形状は、図2に示すように、除塵器2の内周面と同じ形状とすることが望ましい。
【実施例】
【0031】
以下、本発明の効果を確認するために、図1に示したサンプリング装置を使用して、90日間連続使用した時の、冷却管3aの閉塞性を確認した。比較として、出願人が特許文献4で提案した従来のサンプリング装置を使用した場合についても冷却管の閉塞性を確認した。その結果を下記表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
表1に示すように、本発明では冷却前に除塵するので、従来と異なり、90日間の連続使用の間、粗粒ダストによる冷却管3aの詰まりは皆無であった。また、プローブ1の中央空洞部1aの内径を20mm以上とした場合は、滴下溶融スラグの侵入固化によるプローブ1の閉塞が無いことも確認でき、中央空洞部1aの内径を16mmとした場合においても軽微な閉塞により吸引量が低下する場合はあったが、いずれの場合も安定的にサンプリングを継続することができた。
【0034】
また、定期休風時にプローブ1内で固化したスラグを確認したが閉塞には至っておらず、蓋5aを取り外して容易に除去することが出来た。
【0035】
このように、本発明では、プローブ1の閉塞や冷却管3aの詰りを改善することができるので、メンテナンスに要する時間の短縮も可能となり、測定頻度を増加することが可能になる。
【0036】
本発明は上記の最良の形態例に限らず、各請求項に記載された技術的思想の範囲内で、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、ボッシュ部からシャフト下部の範囲のみならず、他の部位に設置してガスを採取する場合にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明のガスサンプリング装置の側面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明のガスサンプリング装置の図である。
【図4】本発明のガスサンプリング装置の冷却装置の上部に設けた蓋を開放し、冷却装置の多管直管内とプローブの清掃を行っている状態を示した図である。
【符号の説明】
【0039】
1 プローブ
1a 中央空洞部
2 除塵器
3 冷却装置
3a 冷却管
3b 蓋
5 清掃用配管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
冶金炉の炉壁に設置して炉内ガスをサンプリングする装置であって、
前記炉壁への設置時、先端部が炉壁内面から炉外側に亘って位置する水冷プローブと、
この水冷プローブの炉外に位置する基端側に接続され、水冷プローブの先端より採取されたサンプリングガスから粗粒ダストを取り除く除塵器と、
この除塵器の下流側に配置され、前記粗粒ダストが取り除かれたサンプリングガスを冷却する冷却装置と、
が一体として構成されていることを特徴とするガスサンプリング装置。
【請求項2】
前記水冷プローブは、先端部の管内径が20mm以上であることを特徴とする請求項1に記載のガスサンプリング装置。
【請求項3】
前記水冷プローブは、前記除塵器の横断面における中心より外周側の位置に接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスサンプリング装置。
【請求項4】
前記冷却装置は、直管からなる冷却管を多数備えた構成で、前記除塵器と反対の側に取り外しが可能な蓋を設けたものであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のガスサンプリング装置。
【請求項5】
前記直管からなる冷却管は、個別に取り外すことが出来、単体での取り替えが可能であることを特徴とする請求項4に記載のガスサンプリング装置。
【請求項6】
前記水冷プローブの下流側に清掃用配管を備えたことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のガスサンプリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−294174(P2009−294174A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−150577(P2008−150577)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】