ガスセンサの校正方法及びガス分析装置
【課題】4種類の濃度の測定ガス成分を含んだ校正用ガスを用いることなく、1種類又は2種類の濃度の測定ガス成分を含んだ校正用ガスを用いて校正する方法及び複数の校正方法を選択可能にしたガス分析装置を提供することにある。
【解決手段】測定ガス成分の濃度が0ppm(ゼロガス)である第一校正点と、測定ガス成分の濃度が所望の測定レンジの10分の1以上である第二校正点を設け、該第一校正点におけるあらかじめ記録されたポンピング電流値を実測値に校正するとともに、該第二校正点における実測値とあらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値との割合を比率補正値として算出し、該比率補正値を第一校正点を除く部分の該基準検量線に乗じて校正するようにした。これにより、2点の校正点のみ使用する簡便な校正作業となるとともに、低濃度の領域及び所望の測定領域での精度の高い校正が可能となる。
【解決手段】測定ガス成分の濃度が0ppm(ゼロガス)である第一校正点と、測定ガス成分の濃度が所望の測定レンジの10分の1以上である第二校正点を設け、該第一校正点におけるあらかじめ記録されたポンピング電流値を実測値に校正するとともに、該第二校正点における実測値とあらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値との割合を比率補正値として算出し、該比率補正値を第一校正点を除く部分の該基準検量線に乗じて校正するようにした。これにより、2点の校正点のみ使用する簡便な校正作業となるとともに、低濃度の領域及び所望の測定領域での精度の高い校正が可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスセンサの校正方法及び複数の校正方法を有するガス分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年において、環境先進国を標榜するわが国において、大気汚染を抑止するべく環境技術が盛んに研究、開発されてきた。さらにわが国を含めた近隣諸国においても、世界的に高まってきている環境基準への強い要求から、大気汚染物質を抑止する技術の導入が必要となってきている。なかでも、大気汚染の原因物質の一つである発電所やボイラー等の工業用燃焼機関から出る排ガス中の窒素酸化物等に対して、精度の高い濃度計測技術を適用する必要が高まってきている。このため、窒素酸化物の濃度計測において、高い水準の精度を維持しつつ、簡便かつ、経済的に運用できるNOx計の開発が待たれていた。
【0003】
また従来から、被測定ガス中における所望のガス成分の濃度を知るために、各種の測定方法や装置が提案されてきており、例えば、燃焼ガス等の被測定ガス中のNOxを測定する方法としては、RhのNOx還元性を利用し、ジルコニア等の酸素イオン伝導性の固体電解質上にPt電極およびRh電極を形成させたセンサを用いて、それら両電極間の起電力を測定するようにした手法が知られている。
また更に、Pt電極と酸素イオン伝導性の固体電解質よりなる一組の電気化学的ポンプセルとセンサセル、およびRh電極と酸素イオン伝導性の固体電解質よりなるもう一組の電気化学的ポンプセルとセンサセルを組合せ、各々のポンプ電流値の差により、NOxを測定する方式が知られている。
【0004】
特許文献1においては、上述の酸素イオン伝導性の固体電解質を用いたNOxセンサにより、NOxを有利に測定し得る方法が開示されており、そこには図1に示すようなNOxセンサの原理を示す素子断面説明図が記述されている。図1において、被測定ガスは、第一の拡散律速通路112を介して、第一の内部空所106に導入され、該第一の内部空所106内の酸素分圧は酸素濃度制御手段たる第一の電気化学的ポンプセル156によりNOxが還元されない所定の、望ましくは低い値に制御される。そして、その酸素分圧が制御された第一の内部空所106内の雰囲気は、該第一の内部空所106から第二の拡散律速通路114を介して連通する第二の内部空所108に導かれ、該第二の内部空所108においてNOxが還元され、その際生成する酸素を第二の電気化学的ポンプセル158を用いてガス拡散律速条件下で該第二の内部空所108中より汲み出し、該第二の電気化学的ポンプセル58に流れるポンピング電流値Ipにより、被測定ガス中のNOx量が測定されるものである。
【0005】
この方法では、NOx濃度:Cnは、Cn=K・Ip−Aで求められる。但し、Kは感度係数、Ipは第二の電気化学的ポンプセル158に流れる電流値、Aは第一の内部空所106に残留する少量の酸素に起因する定数である。ここで、Ipは、その大部分が被測定ガス中のNOx成分が分解して生成した酸素によるものであり、被測定ガス中の酸素による影響を排除した状態で、微量のNOxまで精度良く測定出来るものである。
【0006】
また、特許文献2においては、一定の低い酸素分圧値への制御手段である第三の電気化学的ポンプと、第二の空所から導かれた測定ガス成分を還元又は分解し、その際に発生する酸素の汲み出し手段である第四の電気化学的ポンプとが配置された空所である第三の空所と、第一と第二の電気化学的ポンプの外側ポンプ電極を、被測定ガスに直接晒されないように隔離し、酸素を第一の空所に汲み入れる際には酸素の供給源としての役割を果たす汲み込みエア用ダクトとからなるガスセンサと、該ガスセンサにおける前記第一〜第三の空所に配置された電気化学的ポンプの駆動部と、該電気化学的ポンプに流れるポンピング電流を測定ガス成分値に演算する演算部とその表示部と、該ガスセンサのヒータ駆動部とを備えたことにより、NOx濃度を正確モニターできるガス分析計、及びこれを使用した校正方法が開示されている。
【0007】
ここで、特許文献2で提供されるNOx計においては、複数の既知の測定ガス成分濃度に対するポンピング電流Ipを測定し、検量線を作成して、このガス分析計を校正する。すなわち、ガス分析計の演算部内に、複数の既知の測定ガス成分濃度に対するポンピング電流Ipのデータを蓄積し、このデータに基づき、目的とする測定ガス成分のポンピング電流Ipから被測定ガス成分濃度への変換、校正を行うようにする。例えば、図2に示すように、a、b、cという各濃度の校正用ガス(標準ガス)を用いて測定を行い、そのときのポンピング電流(Ia、Ib、Ic)をそれぞれ求め、検量線を作成することにより、行うことができる。
【0008】
【特許文献1】特許第2885336号公報
【特許文献2】特開2001−159620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に、上述の固体電解質を用いたNOx計においては、客先の現場でのメンテナンス作業で校正を行う際には有効な精度を確保する為の手段として、以下の校正方法をとっていた。即ち、ゼロガス、ミドルガス、スパンガス、ハイガスからなる4種類の校正用ガスを用意して、各校正用ガスにおけるガスセンサ感度の測定を行い、4点の校正点を設け、次いで、ポンピング電流Ipのあらかじめ蓄積されたデータからなる基準検量線を、各4点の校正点でのポンピング電流の実測測定値を基に基準検量線を作成し記録することで校正を行っていた。
【0010】
また、工場出荷時において校正済のセンサであっても、センサの設置条件や、経年変化等の諸条件によってセンサの特性が変質することもある。このため、客先の所望する時期に、要求する範囲の精度でかつ容易に入手可能な校正用ガスを用いた校正方法が望まれていた。
しかしながら、従来の固体電解質を用いたNOx計での校正方法においては、客先の測定条件及び精度に応じた校正方法を選択することができず、4種類もの既知の濃度の校正用ガスがその都度必要となっており、校正作業時の負担となっていた。本発明は、かかる従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、4種類の濃度の用校正用ガスを用いることなく、1種類又は2種類の校正用ガスを用いて校正するガスセンサの校正方法及び複数の校正方法(校正モード)からいずれか一つの校正方法を適宜選択可能としたガス分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記従来の問題に鑑みて鋭意検討の結果、4種類の校正用ガスを用意することなく、1種類又は2種類の校正用ガスを用いた1つまたは2つの校正モードのみで、短時間に効率的かつ簡便に校正を行うためには、校正点における実測値とあらかじめ蓄積されたデータに基づく基準検量線との誤差を所望の測定範囲において効果的に再現し、これを補正する必要があることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0012】
本発明によれば、酸素イオン伝導性の固体電解質を用いたガスセンサの校正方法において、1種類又は2種類の濃度の測定ガス成分を含んだ校正用ガスを用いて校正点を設け、各校正点における該センサのポンピング電流を測定して実測値とし、あらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値と実測値から補正値を算出し、該補正値を用いて基準検量線を校正することを特徴とするガスセンサの校正方法、が提供される。
【0013】
上記校正方法においては、測定ガス成分の濃度が0ppm(ゼロガス)である校正点を設けて該校正点における実測値とあらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値との差を差分補正値として算出し、該差分補正値を検量線に加算して校正することが好ましい。
【0014】
また本発明の校正方法においては、測定ガス成分の濃度が所望の測定レンジの10分の1以上(ミドルガス、スパンガス又はハイガス)である校正点を一点設け、該校正点における実測値とあらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値との割合を比率補正値として算出し、該比率補正値を該基準検量線に乗じて校正することが好ましく、より具体的には、上記測定ガス成分の濃度が50ppm以上かつ500ppm以下(ミドルガス、スパンガス又はハイガス)の範囲内で校正点を一点設けることが望ましい。
【0015】
さらに、本発明においては、測定ガス成分の濃度が0ppm(ゼロガス)である第一校正点と、測定ガス成分の濃度が所望の測定レンジの10分の1以上(ミドルガス、スパンガス又はハイガス)である第二校正点を設け、該第一校正点におけるあらかじめ記録されたポンピング電流値を実測値に校正するとともに、該第二校正点における実測値とあらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値との割合を比率補正値として算出し、該比率補正値を第一校正点を除く部分の該基準検量線に乗じて校正することが好ましい。なお、測定ガス成分の濃度測定レンジとしては、上記と同様、50ppm以上かつ500ppm以下(ミドルガス、スパンガス又はハイガス)の範囲内で校正点を一点設けることが望ましい。
【0016】
また、本発明においては、上記したそれぞれのガスセンサの校正方法のうちから少なくとも1つの校正方法を備えたことを特徴とするガス分析装置、が提供される。
【0017】
また、本発明においては、上記したそれぞれのガスセンサの校正方法のうちから少なくとも1つの校正方法と、複数の濃度の測定ガス成分を含んだ校正用ガスを用いて校正するガスセンサの校正方法とを備え、これら複数の校正方法の中からいずれか一つの校正方法を選択できるようにしたことを特徴とするガス分析装置、が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明のガスセンサの校正方法によれば、現場でのメンテナンス作業において、4種類の濃度の校正用ガスを用いることなく、1種又は2種の測定ガス成分を含んだ校正用ガスを用いて簡便かつ効率的に校正作業を行うことができる。
また、本発明のガス分析装置によれば、各種の校正方法(校正モード)を備えているので、4種類もの既知の濃度の校正用ガスが備えられている現場においては、その校正モードでより精度の高い校正が可能であるとともに、4種類もの既知の濃度の校正用ガスが備えられておらず、1種類又は2種類の濃度の校正用ガスが備えられているか、若しくは早期に入手可能な現場においては、それに対応した校正モードを適宜選択して校正することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明を実施するための実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明は、これらに何ら限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものであることは言うまでもない。
【0020】
本発明の基本的技術思想は、酸素イオン伝導性の固体電解質を用いたガスセンサの校正方法において、1種類又は2種類の濃度の校正用ガスを用いて校正点を設け、各校正点における該センサのポンピング電流を測定して実測値とし、あらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値と実測値から補正値を算出し、該補正値を用いて検量線を校正するという校正方法である。
この校正を行う際には、所望の測定ガス成分の濃度測定範囲に対応した校正点を含み、所望の精度に応じて校正方法を適宜選択可能或いは変更可能である。
【0021】
より具体的にいえば、本発明の好ましい一実施態様(校正方法1)としては、測定ガス成分の濃度が0ppmである校正点を設けて該校正点における実測値とあらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値との差を差分補正値として算出し、この差分補正値を基準検量線に加算して校正する方法がある。この場合、校正用ガスとしてN2ガスを1種類用意すればよく、入手も容易である。また、校正点の濃度が0ppmであることにより、測定ガス成分が低濃度の場合に充分な精度が得られる。
【0022】
また、本発明の他の好ましい実施態様(校正方法2)としては、測定ガス成分の濃度が測定レンジの10分の1以上(ミドルガス、スパンガス又はハイガス)、具体的には、例えば、測定ガス成分の濃度が50ppm以上かつ500ppm以下の範囲内における校正点を一つのみ設けて、該校正点における実測値とあらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値との割合を比率補正値として算出し、該比率補正値を検量線に乗じて校正する方法がある。この方法の場合、測定レンジの中央付近においてNOxセンサの基準検量線からの誤差が大きくなる傾向があるため、この範囲に校正点を設けることでより精度の高い校正が期待できる。このようにして、比率補正値として基準検量線に反映されることにより、簡便な校正方法が得られる。
【0023】
また、本発明の更に別の好ましい実施態様(校正方法3)としては、測定ガス成分の濃度が0ppm(ゼロガス)である第一校正点と、測定ガス成分の濃度が所望の測定レンジの10分の1以上(ミドルガス、スパンガス又はハイガス)、具体的には、例えば、測定ガス成分の濃度が50ppm以上かつ500ppm以下の範囲内における第二校正点を設け、該第一校正点におけるあらかじめ記録されたポンピング電流値を実測値に校正するとともに、該第二校正点における実測値とあらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値との割合を比率補正値として算出し、該比率補正値を第一校正点を除く部分の該基準検量線に乗じて校正する方法がある。この方法の場合には、第一校正点を実測値に変更するとともに、第二校正点の補正に比率補正値を用いたことにより、0ppm(ゼロガス)の濃度(低濃度)の領域及び所望の測定領域においても、より精度の高い校正が可能となり、また、2点の校正点のみ使用する簡便な校正作業においても精度の高い校正が可能である。
【0024】
また、更に測定ガス成分の濃度が0ppm(ゼロガス)である第一校正点と、測定ガス成分の濃度が所望の測定レンジの10分の1以上(ミドルガス、スパンガス又はハイガス)である第二校正点を設け、該第一校正点における実測値とあらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値との差を差分補正値として算出し、該差分補正値を第一校正点のあらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値に加算するとともに、該第二校正点における実測値とあらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値との割合を比率補正値として算出し、該比率補正値を第一校正点を除く部分の該基準検量線に乗じて校正することも可能である。
【0025】
次に、本発明に係るガス分析装置としてのNOx−O2計について説明する。
本発明のガス分析装置(NOx−O2計)は、上記で説明した各種の校正方法(校正モード)、及び4種類の濃度の測定ガス成分を含んだ校正用ガスを用いて校正する校正方法(校正モード)とを備え、これら複数の校正方法(校正モード)の中からいずれか一つの校正方法(校正モード)を選択できるようにしたことを特徴とするものである。
【0026】
本発明のガス分析装置(NOx−O2計)は、複数の校正方法(校正モード)を備えているので、例えば4種類もの既知の濃度の測定ガス成分を含んだ校正用ガスが備えられておらず、1種類又は2種類の濃度の測定ガス成分を含んだ校正用ガスしか準備できない現場の作業環境下においても、それに対応した校正モードを校正作業者が適宜選択して校正することができる。もちろん、現場において、4種類もの既知の濃度の測定ガス成分を含んだ校正用ガスが備えられている場合には、その校正モードで校正を行うことにより精度の高い校正が可能である。
【0027】
本発明のガス分析装置としてのNOx−O2計としては、例えば、図3に示す構成を備えているものが好ましく用いられる。図3は、本発明に係るNOx−O2計の具体例を示す説明図である。図3に示すように、NOx−O2計10は、例えばエンジン、ボイラ、工業用炉等の排気管内の煙道Kに取り付けられ、その煙道Kを流れる被測定ガス(排ガス)Gに含まれる測定ガス成分の濃度を検出する検出手段1と、検出手段1に電気的に接続された分析手段2とを備えている。検出手段1は煙道K内に挿入固定されており、分析手段2は外部に設置されている。すなわち、煙道壁12には検出手段1を挿通可能とした筒状の検出手段挿入口13が突設されており、検出手段挿入口13の先端外周縁には環状のフランジ部14が形成されている。検出手段挿入口13を介して検出手段1は煙道K内に挿入されており、検出手段1はフランジ部14に固定されている。
【0028】
検出手段1内には、ガスセンサ11(NOx−O2ガスセンサ)が固定されており、そのガスセンサ11の先端部に校正用ガスを供給する校正用ガス供給用配管71が配設されている。校正用ガス供給用配管71の外部には、所定濃度の測定ガス成分を含んだ校正用ガスPを有するガスボンベ(図示しない)が接続されており、校正用ガス供給用配管71の一端から流入した校正用ガスPは校正用ガス供給用配管71の他端から流出してガスセンサ11の先端部へ供給される。
【0029】
検出手段1は、一端が開口した円筒状の支持筒21を備えており、支持筒21の開口端縁にはフランジ部22が形成されている。支持筒21は検出手段挿入口13に挿入され、煙道壁12のフランジ部14の外面と支持筒21のフランジ部22の内面との間にシール部材Sを介在させた状態で、ボルト23、ナット24にて支持筒21は煙道壁12に締め付け固定されている。
【0030】
支持筒21の先端壁31には、ガスセンサ11の先端部を収容固定可能とした収容部32が貫通して形成されており、また、支持筒21の先端壁31には、支持筒21の内部と収容部32の内部とを連通するL字状の連通路34が形成されている。さらに、先端壁31の開口部周縁には環状のフィルタ支持部35が突設されており、フィルタ支持部35の先端部には防塵用のフィルタ36が固定されている。
【0031】
収容部32にはガスセンサ11が固定されている。ガスセンサ11は筒状のセンサケース42を備えており、センサケース42の外周面における先端寄りにはセンサナット43が形成されている。また、センサケース42の外周面において、センサナット43よりも先端側にはねじ部44が形成されており、ねじ部44よりも先端側には複数個のガス導入孔45がセンサケース42の周方向に所定間隔をおいて配置形成されている。センサケース42の先端部を先端壁31の収容部32に挿入して、センサケース42のねじ部44を締め付けることにより、センサケース42は先端壁31に固定されている。
センサケース42の内部には、ジルコニア等の酸素イオン伝導性の固体電解質体により板状又は棒状に形成された高温作動型のセンサ素子(図示略)及び当該センサ素子を加熱するヒータ(図示略)が収容されている。前記センサ素子には、一対の電極が設けられており、両電極間の化学ポテンシャル(電位に相当)の差(電位差に相当)に起因して発生する電流(ポンピング電流)を測定することにより、被測定ガスG中の測定ガス成分(例えばNOxガス、O2ガス)の濃度を検出することが可能となっている。ヒータは、固体電解質体が所定の温度に加熱、保持されている。両電極にはガスセンサ11からの出力電圧を取り出す複数本のリード線46の一端が接続されており、各リード線46の他端はセンサケース42の基端部に装着されたリード線押さえ部材47を介して外部に導出されている。また、ガスセンサ11にはヒータが設けられており、ヒータには電力供給用の複数のリード線46の一端が接続されており、各リード線46の他端もリード線押さえ部材47を介して外部に導出されている。リード線押さえ部材47は弾性、耐熱性及び絶縁性を有するゴム材料(例えば、フッ素ゴム、シリコンゴム等)により円板状に形成されており、リード線46の本数と同数のリード線挿通孔とが環状に配置形成されている。各リード線46はリード線押さえ部材47の各リード線挿通孔にそれぞれ1本ずつ挿通されている。また、各リード線46はリード線挿通管48に挿通されることにより束ねられている。一端がガスセンサ11に接続された各リード線46の他端はそれぞれ単一の雄型コネクタ49が接続されている。
【0032】
煙道壁12のフランジ部14には、ボルト23を介して直方体状の端子箱51が固定されている。すなわち、端子箱51の煙道壁12側の一側壁51aの外面において、一対の支持部材52、52が溶接により固定されている。支持部材52は端子箱51の一側壁51a外面に固定された支持部52aと、支持部52aに対して直交するように外方へ突出する固定部52bとから断面L字状に形成されている。固定部52bをボルト23、ナット53を締め付けることにより端子箱51はフランジ部14に固定されている。端子箱51の一側壁51aの中央には挿通孔54が形成されており、挿通孔54の周囲には一対の円弧状のボルト挿通孔55が形成されている。また、端子箱51において、一側壁51aに対向する他側壁51bには空気供給管56の一端がチューブ継手57を介して固定されており、同じく他端は一側壁51aの挿通孔54を介して支持筒21内に導入されている。チューブ継手57は冷却用空気を生成する圧縮空気源(図示せず)に接続されており、空気供給管56の一端から流入した冷却用空気は空気供給管56の他端から流出してガスセンサ11の基端部へ供給される。すなわち、空気供給管56の他端は冷却用空気をガスセンサ11の基端部に供給するノズル部56aとされている。さらに、一端が分析器11bに接続された出力取出用ケーブル58の他端が、他側壁51bにおけるチューブ継手57の下方に固定されたケーブル用継手59を介して、端子箱51内に導入されている。出力取出用ケーブル58の他端には雌型コネクタ60が接続されており、雌型コネクタ60は端子箱51内において雄型コネクタ49と接続されている。
【0033】
端子箱51の一側壁51aの外面には、一端が開口した有底円筒状の接続管61が固定されている。すなわち、接続管61の基端部外周面には互いに反対側に位置する一対の固定部材62が溶接等により固定されている。固定部材62は接続管61の外周面に固定される接続管側固定壁62aと、端子箱51の一側壁51aに固定される端子箱側固定壁62bとからL字状に形成されている。また、端子箱側固定壁62bにはボルト挿通孔63が形成されている。そして、端子箱51の一側壁51aのボルト挿通孔55及び端子箱側固定壁62bのボルト挿通孔63に端子箱51の内側からボルト64を挿通し、ナット65を締付けることにより、接続管61は端子箱51の一側壁51aの外面に固定されている。また、接続管61の先端壁には、ガスセンサ11のセンサナット43を嵌合可能とした嵌合孔66が形成されている。接続管61を端子箱51の一側壁51aに固定し、かつ支持筒21のフランジ部22及び端子箱51の固定部52bを検出手段挿入口13のフランジ部14に固定した状態において、接続管61は嵌合孔66にセンサナット43が嵌合した状態に保持されている。接続管61の基端側には複数個の空気導入孔67が接続管61の周方向に所定間隔をおいて形成されている。また、接続管61の長手方向における中央よりも若干先端寄りには、複数個の空気導出孔68が接続管61の周方向に所定間隔をおいて形成されている。支持筒21の内周面と接続管61の外周面との間には、分析手段2を校正するための校正用ガスPを供給する校正用ガス供給用配管71が挿入されている。校正用ガス供給用配管71の先端部は支持筒21の先端壁31に形成された連通路34における先端壁31内面側の開口部に螺合されている。また、校正用ガス供給用配管71の基端部は端子箱51の一側壁51aと支持筒21のフランジ部22との間の空間を通って側方へ導出されて外部の校正用ガスの供給源、例えば、ガスボンベに接続されている。従って、ガスボンベからの校正用ガスPは校正用ガス供給用配管71及び連通路34を通って収容部32へ供給される。
【0034】
分析手段2には、駆動部、増幅部、演算部、ヒータ制御部が備えられ(図示しない)、駆動部による酸素ポンピング制御、増幅部によるポンピング電流値の増幅、ポンピング電流値からのNOx、O2各濃度の演算およびガスセンサ内のヒータの制御が行われる。上述の校正方法を実施する場合には、演算部内にてソフトウェア上で校正を実現するものである。また、分析手段2には、濃度表示出力部、NOx−O2表示切替部が備えられ(図示しない)、NOx−O2表示切替部をNOxガス側若しくはO2ガス側に切り替えることで、濃度表示出力部にて各ガスの濃度表示・出力が行われる。さらには、分析手段2には、校正モード選択部が備えられ(図示しない)、この校正モード表示選択部は、従来行われている4点の校正点を用いた校正モード(校正方法)に加えて、上述の本発明の各種の校正モード(校正方法)を備え、校正作業者が準備可能な校正用ガス、客先の測定条件や精度に応じて校正モード表示選択部の各種モードを自由に選択するようになっている。
【0035】
次に、上記ガス分析装置(NOx−O2計)を用いて本発明の各校正方法を具体的にNOガス、O2ガスにて実施した例を詳しく説明する。
【実施例】
【0036】
(実施例1:NOxガス)
表1は、ガス分析装置(NOx−O2計)を用いて、校正前の初期Ip値(μA)と、従来技術である4点の校正点を用いた校正方法による4種類のNOxの濃度(0ppm、50ppm、250ppm、500ppm)におけるポンピング電流、即ち4点校正Ip(μA)の実測値を示す。図4は、表1をグラフ化したものである。
【0037】
【表1】
【0038】
なお、ここで言う初期Ip値とは、工場出荷時に計測し、蓄積されたポンピング電流をもとに作成された基準検量線上の数値である。この基準検量線は、1次直線、あるいは複次曲線等からなり、演算部において、自動的に基準検量線を作成することも可能である。しかしながら、本発明においては、あらかじめ作成された基準検量線を基にした校正方法に主眼をおくことから、4点の校正点を用いた従来の校正方法としては、説明のために簡便な4点を直線的に結んだものを使用する。
【0039】
この初期Ip値は、個々のセンサの特性により異なるものであるとともに、出荷後の経時変化等により実際のNOx濃度からは誤差が生じるものである。この誤差を図6に示されるように、ゼロガス(0ppm)、ミドルガス(50ppm)、スパンガス(250ppm)、ハイガス(500ppm)の各4点の校正点の測定結果に基づいて校正を行った。但し、ここで言う各4点の濃度の値は、適用する条件に応じて適宜変更可能な数値であることを付け加えておく。また、実施例1の各校正方法においてゼロガスはN2を使用し、ミドルガス、スパンガス、ハイガスはNOを使用した。実施例1では、ミドルガス、スパンガス、ハイガスにNOを使用したが、NO2等の他の窒素酸化物を使用して校正を行うことは可能である。
【0040】
(校正方法1)
次に、本発明のガスセンサの校正方法の一例を実施した。まず、ゼロガスを用いて実測値を計測し、初期Ip値からなる基準検量線として記録されたポンピング電流値との差を差分補正値として算出する。表2において示すように、ここでの差分補正値は、
0.164(μA)−0.085(μA)=0.079(μA)
となる。この値を基準検量線に加算して校正することにより、表2の残り3点(ミドルガス、スパンガス、ハイガス)に示す値が得られるので、校正することができる。このとき、校正用ガスとしてN2を1種類用意すればよく、客先の現場での入手も容易である。また、校正点の濃度が0ppmであることにより、被測定ガスが低濃度の場合に充分な精度が得られる。この表2をグラフ化したものが図5である。
【0041】
【表2】
【0042】
(校正方法2)
次いで、本発明の別のガスセンサの校正方法を実施した。
すなわち、測定ガス成分の濃度が所望の測定レンジの10分の1以上(測定ガス成分の濃度が50ppm以上かつ500ppm以下の範囲内)である校正点として(ミドルガス、スパンガス又はハイガスのうちいずれか一つを使用する)一つのみ設けて、該校正点における実測値とあらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値との割合を比率補正値として算出する。ここでは、校正点として、スパンガス(250ppm)を用いた。即ち、スパンガスでの、実測値1.287(μA)に対しての初期Ip値0.940(μA)の比率補正値は、
1.287(μA)÷0.940(μA)=1.369
である。この値を基準検量線に乗じて校正することにより、表3に示すように残りの3点(ゼロガス、ミドルガス、ハイガス)を校正することができる。得られた結果を図6に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
(校正方法3)
本発明のさらに別のガスセンサの校正方法を実施した。
すなわち、ゼロガスである第一校正点と、測定ガス成分の濃度が所望の測定レンジの10分の1以上(ミドルガス、スパンガス又はハイガスの濃度が50ppm以上かつ500ppm以下の範囲内)である第二校正点を設ける。ここでは、スパンガスを用いる。第二校正点における実測値1.287(μA)とあらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値0.940(μA)との割合を比率補正値として算出する。比率補正値は、
1.287(μA)÷0.940(μA)=1.369
である。この値を第一校正点(0点)を除く部分の基準検量線に乗じて比率補正検量線とする。
【0045】
更にここで、第一校正点(ゼロガス)におけるあらかじめ基準検量線として記録された0点のポンピング電流値(初期Ip値)0.085(μA)を実測値0.164(μA)に変更する(校正する)。したがって、第一校正点の実測値への変更及び比率補正値を第一校正点を除く部分の基準検量線に乗じて校正することにより、表4に示すように0点及び残りの2点(ミドルガス、ハイガス)を校正することができる。得られた結果を図7に示す。
【0046】
【表4】
【0047】
(実施例2:O2ガス)
表5は、ガス分析装置(NOx−O2計)を用いて、校正前の初期Ip値(μA)と、従来技術である4点の校正点を用いた校正方法による4種類のO2の濃度(0ppm、50ppm、250ppm、500ppm)におけるポンピング電流、即ち4点校正Ip(μA)の実測値を示す。図8は、表5をグラフ化したものである。
【0048】
【表5】
【0049】
誤差を図8に示されるように、ゼロガス(0ppm)、ミドルガス(50ppm)、スパンガス(250ppm)、ハイガス(500ppm)の各4点の校正点の測定結果に基づいて校正を行った。但し、ここで言う各4点の濃度の値は、適用する条件に応じて適宜変更可能な数値であることを付け加えておく。また、実施例2の各校正方法においてゼロガスはN2を使用し、ミドルガス、スパンガス、ハイガスはO2を使用した。
【0050】
(校正方法1)
次に、本発明のガスセンサの校正方法の一例を実施した。まず、ゼロガスを用いて実測値を計測し、初期Ip値からなる基準検量線として記録されたポンピング電流値との差を差分補正値として算出する。表6において示すように、ここでの差分補正値は、
0.174(μA)−0.102(μA)=0.072(μA)
となる。この値を基準検量線に加算して校正することにより、表6に示すように残り3点(ミドルガス、スパンガス、ハイガス)に示す値が得られるので、校正することができる。このとき、校正用ガスとしてN2を1種類用意すればよく、客先の現場での入手も容易である。また、校正点の濃度が0ppmであることにより、測定ガス成分が低濃度の場合に充分な精度が得られる。この表6をグラフ化したものが図9である。
【0051】
【表6】
【0052】
(校正方法2)
次いで、本発明の別のガスセンサの校正方法を実施した。
すなわち、測定ガス成分の濃度が所望の測定レンジの10分の1以上(測定ガス成分の濃度が50ppm以上かつ500ppm以下の範囲内)である校正点として(ミドルガス、スパンガス又はハイガスのうちいずれか一つを使用する)一つのみ設けて、該校正点における実測値とあらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値との割合を比率補正値として算出する。ここでは、校正点として、スパンガス(250ppm)を用いた。即ち、スパンガスでの、実測値8.464(μA)に対しての初期Ip値7.360(μA)の比率補正値は、
8.464(μA)÷7.360(μA)=1.150
である。この値を基準検量線に乗じて校正することにより、表7に示すように残りの3点(ゼロガス、ミドルガス、ハイガス)に示す値が得られるので、校正することができる。得られた結果を図10に示す。
【0053】
【表7】
【0054】
本願の実施形態では、校正方法2において校正点として、スパンガス(250ppm)を用い、残りの3点(ゼロガス、ミドルガス、ハイガス)を校正するようにしたが、校正点として、ミドルガスもしくはハイガスを用い、残りの3点(ゼロガス、スパンガス、ハイガス)もしくは(ゼロガス、ミドルガス、スパンガス)を校正するようにしてもよい。また、校正方法3においても校正点として、スパンガス(250ppm)を用い、残りの2点(ミドルガス、ハイガス)を校正するようにしたが、校正点として、ミドルガスもしくはハイガスを用い、残りの2点(スパンガス、ハイガス)もしくは(ミドルガス、スパンガス)を校正するようにしてもよい。
【0055】
(校正方法3)
本発明のさらに別のガスセンサの校正方法を実施した。
すなわち、ゼロガスである第一校正点と、測定ガス成分の濃度が所望の測定レンジの10分の1以上(ミドルガス、スパンガス又はハイガスの濃度が50ppm以上かつ500ppm以下の範囲内)である第二校正点を設ける。ここでは、スパンガスを用いる。第二校正点における実測値8.464(μA)とあらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値7.360(μA)との割合を比率補正値として算出する。比率補正値は、
8.464(μA)÷7.360(μA)=1.150
である。この値を第一校正点(0点)を除く部分の基準検量線に乗じて比率補正検量線とする。
【0056】
更にここで、第一校正点(ゼロガス)におけるあらかじめ基準検量線として記録された0点のポンピング電流値(初期Ip値)0.102(μA)を実測値0.174(μA)に変更する(校正する)。したがって、第一校正点の実測値への変更及び比率補正値を第一校正点を除く部分の基準検量線に乗じて校正することにより、表8に示すように0点及び残りの2点(ミドルガス、ハイガス)を校正することができる。得られた結果を図11に示す。
【0057】
【表8】
【0058】
(考察)
校正方法1のゼロガス1点で校正する方法では、入手容易なN2ガスをゼロガス(0ppm)として使用することは、短時間に効率的かつ簡便に校正を行うことができるとともに、測定ガス成分が低濃度の場合に校正誤差が小さくなるが、高濃度での点での校正誤差を適正に補正することが出来ない場合がある。また、校正方法2の測定ガス成分の濃度が所望の測定レンジ範囲のガス(例:スパンガス)1点で校正する方法では、測定レンジ範囲の濃度にあるガスの1点で校正するため、短時間に効率的かつ簡便に校正を行うことができるとともに、測定ガス成分が高濃度の場合に校正誤差が小さくなるが、低濃度での点での校正誤差を校正方法1ほど適正に補正することが出来ない場合がある。
このような場合、校正方法3のゼロガス及び測定ガス成分の濃度が所望の測定レンジ範囲のガス(例:スパンガス)の2点で校正する方法では、ゼロガスにより測定した実測値及びスパンガスでの比率補正値による補正を導入することで、校正方法1及び校正方法2の問題は解決される。
【0059】
本願の実施形態では、校正方法3において、実施例1のNOxガスでは第一校正点(ゼロガス)についてあらかじめ基準検量線として記録された0点のポンピング電流値(初期Ip値)0.085(μA)を実測値0.164(μA)に変更し、実施例2のO2ガスでは第一校正点について0点のポンピング電流値(初期Ip値)0.102(μA)を実測値0.174(μA)に変更するようにしたが、下記のようにしてもよい。
NOxガスでは、第一校正点の実測値0.164(μA)とあらかじめ標準検量線として記録されたポンピング電流値(初期Ip値)0.085(μA)との差を差分補正値として算出する。差分補正値は、
0.164(μA)−0.085(μA)=0.079(μA)
である。
この差分補正値を0点のポンピング電流値(初期Ip値)0.085(μA)に加算して第一校正点を校正するようにする。このようにしても、表4及び図6に示すように校正することができる。
また、O2ガスでは第一校正点の実測値0.174(μA)とあらかじめ標準検量線として記録されたポンピング電流値(初期Ip値)0.102(μA)との差を差分補正値として算出する。差分補正値は、
0.174(μA)−0.102(μA)=0.072(μA)
である。
この差分補正値を0点のポンピング電流値(初期Ip値)0.102(μA)に加算して第一校正点を校正するようにする。このようにしても、表8及び図11に示すように校正することができる。
すなわち、差分補正値を第一校正点のあらかじめ基準検量線として記録された0点のポンピング電流値実測値へ加算するとともに、比率補正値を第一校正点を除く部分の基準検量線に乗じて校正するようにする。このようにしても実施例1及び実施例2の校正方法3と同様の低濃度の領域及び所望の測定領域において、より精度の高い校正が可能となり、また、2点の校正点のみ使用する簡便な校正作業においても精度の高い校正が可能である。
【0060】
また、本願の実施形態は、次のように変更して実施してもよい。
本願の実施形態では、図3に示すようにNOx及びO2ガスを測定するガスセンサを備えたガス分析装置(NOx−O2計)について実施したが、CO、CO2、SO2、H2、NH3、O2、及びHCL等のガスを測定する各々のガスセンサ及びそのセンサを備えたガス分析装置に上述した本願発明の1種類又は2種類の測定ガス成分を含んだ校正用ガスを用いて校正するセンサの校正方法を利用することも可能である。また、複数の校正方法(校正モード)からいずれか一つのモードを適宜選択可能としたガス分析装置を提供することも可能である。
【0061】
本願の実施形態では、本発明のNOx−O2計は、1種類又は2種類の濃度の測定ガス成分を含んだ校正用ガスで校正を行う3つの校正方法、及び4種類の濃度の測定ガス成分を含んだ校正用ガスを用いて校正する校正方法とを備え、これら複数の校正方法の中からいずれか一つの校正方法を選択できるようにしたが、1種類又は2種類の濃度の測定ガス成分を含んだ校正用ガスで校正を行う3つの校正方法のみ備え、これら3つの校正方法の中からいずれか一つの校正方法を選択できるようにしてもよい。このようにしても同様の効果を得ることができる。
また、1種類又は2種類の濃度の校正ガスで校正を行う3つの校正方法の中から少なくとも一つの校正方法を備えるようにしてもよい。このように少なくとも一つの校正方法を備えれば、簡便かつ効率的に校正作業を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、大気汚染の原因物質である窒素酸化物(NOx)及び酸素(O2)の濃度計測において、高い水準の精度を維持しつつ、簡便かつ、経済的に運用できるガスセンサの校正方法及びその校正方法を備えたガス分析装置が提供される。特に、エンジン、ボイラ、工業用炉等の排気管に取り付けられて排気管内の煙道を流れる窒素酸化物(NOx)及び酸素(O2)の濃度計測するガス分析装置を校正する場合においては非常に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】従来のNOxセンサの原理を示す素子断面説明図である。
【図2】従来のNOx計の校正方法を示す模式図である。
【図3】本発明に係るNOx−O2計の具体例を示す説明図である。
【図4】本発明のNOx−O2計の4点のNOx濃度の校正方法の実施形態によって得られたグラフである。
【図5】本発明のNOx−O2計のNOx濃度の校正方法の実施形態(校正方法1)によって得られたグラフである。
【図6】本発明のNOx−O2計のNOx濃度の校正方法の別の実施形態(校正方法2)によって得られたグラフである。
【図7】本発明のNOx−O2計のNOx濃度の校正方法の更に別の実施形態(校正方法3)によって得られたグラフである。
【図8】本発明のNOx−O2計の4点の酸素(O2)濃度の校正方法の実施形態によって得られたグラフである。
【図9】本発明のNOx−O2計の酸素(O2)濃度の校正方法の実施形態(校正方法1)によって得られたグラフである。
【図10】本発明のNOx−O2計の酸素(O2)濃度の校正方法の別の実施形態(校正方法2)によって得られたグラフである。
【図11】本発明のNOx−O2計の酸素(O2)濃度の校正方法の更に別の実施形態(校正方法3)によって得られたグラフである。
【符号の説明】
【0064】
1…検出手段、2…分析手段、10…ガス分析装置(NOx−O2計)、11…ガスセンサ、12…煙道壁、13…検出手段挿入口、14…フランジ部、21…支持筒、22…フランジ部、46…リード線、51…端子箱、52…支持部材、61…接続管、71…校正用ガス供給用配管、102…センサ素子、106…第一の内部空所、108…第二の内部空所、112…第一の拡散律速通路、114…第二の拡散律速通路、156…第一の電気化学的ポンプセル、158…第二の電気化学的ポンプセル、G…被測定ガス、K…煙道、P…校正用ガス。
【技術分野】
【0001】
本発明はガスセンサの校正方法及び複数の校正方法を有するガス分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年において、環境先進国を標榜するわが国において、大気汚染を抑止するべく環境技術が盛んに研究、開発されてきた。さらにわが国を含めた近隣諸国においても、世界的に高まってきている環境基準への強い要求から、大気汚染物質を抑止する技術の導入が必要となってきている。なかでも、大気汚染の原因物質の一つである発電所やボイラー等の工業用燃焼機関から出る排ガス中の窒素酸化物等に対して、精度の高い濃度計測技術を適用する必要が高まってきている。このため、窒素酸化物の濃度計測において、高い水準の精度を維持しつつ、簡便かつ、経済的に運用できるNOx計の開発が待たれていた。
【0003】
また従来から、被測定ガス中における所望のガス成分の濃度を知るために、各種の測定方法や装置が提案されてきており、例えば、燃焼ガス等の被測定ガス中のNOxを測定する方法としては、RhのNOx還元性を利用し、ジルコニア等の酸素イオン伝導性の固体電解質上にPt電極およびRh電極を形成させたセンサを用いて、それら両電極間の起電力を測定するようにした手法が知られている。
また更に、Pt電極と酸素イオン伝導性の固体電解質よりなる一組の電気化学的ポンプセルとセンサセル、およびRh電極と酸素イオン伝導性の固体電解質よりなるもう一組の電気化学的ポンプセルとセンサセルを組合せ、各々のポンプ電流値の差により、NOxを測定する方式が知られている。
【0004】
特許文献1においては、上述の酸素イオン伝導性の固体電解質を用いたNOxセンサにより、NOxを有利に測定し得る方法が開示されており、そこには図1に示すようなNOxセンサの原理を示す素子断面説明図が記述されている。図1において、被測定ガスは、第一の拡散律速通路112を介して、第一の内部空所106に導入され、該第一の内部空所106内の酸素分圧は酸素濃度制御手段たる第一の電気化学的ポンプセル156によりNOxが還元されない所定の、望ましくは低い値に制御される。そして、その酸素分圧が制御された第一の内部空所106内の雰囲気は、該第一の内部空所106から第二の拡散律速通路114を介して連通する第二の内部空所108に導かれ、該第二の内部空所108においてNOxが還元され、その際生成する酸素を第二の電気化学的ポンプセル158を用いてガス拡散律速条件下で該第二の内部空所108中より汲み出し、該第二の電気化学的ポンプセル58に流れるポンピング電流値Ipにより、被測定ガス中のNOx量が測定されるものである。
【0005】
この方法では、NOx濃度:Cnは、Cn=K・Ip−Aで求められる。但し、Kは感度係数、Ipは第二の電気化学的ポンプセル158に流れる電流値、Aは第一の内部空所106に残留する少量の酸素に起因する定数である。ここで、Ipは、その大部分が被測定ガス中のNOx成分が分解して生成した酸素によるものであり、被測定ガス中の酸素による影響を排除した状態で、微量のNOxまで精度良く測定出来るものである。
【0006】
また、特許文献2においては、一定の低い酸素分圧値への制御手段である第三の電気化学的ポンプと、第二の空所から導かれた測定ガス成分を還元又は分解し、その際に発生する酸素の汲み出し手段である第四の電気化学的ポンプとが配置された空所である第三の空所と、第一と第二の電気化学的ポンプの外側ポンプ電極を、被測定ガスに直接晒されないように隔離し、酸素を第一の空所に汲み入れる際には酸素の供給源としての役割を果たす汲み込みエア用ダクトとからなるガスセンサと、該ガスセンサにおける前記第一〜第三の空所に配置された電気化学的ポンプの駆動部と、該電気化学的ポンプに流れるポンピング電流を測定ガス成分値に演算する演算部とその表示部と、該ガスセンサのヒータ駆動部とを備えたことにより、NOx濃度を正確モニターできるガス分析計、及びこれを使用した校正方法が開示されている。
【0007】
ここで、特許文献2で提供されるNOx計においては、複数の既知の測定ガス成分濃度に対するポンピング電流Ipを測定し、検量線を作成して、このガス分析計を校正する。すなわち、ガス分析計の演算部内に、複数の既知の測定ガス成分濃度に対するポンピング電流Ipのデータを蓄積し、このデータに基づき、目的とする測定ガス成分のポンピング電流Ipから被測定ガス成分濃度への変換、校正を行うようにする。例えば、図2に示すように、a、b、cという各濃度の校正用ガス(標準ガス)を用いて測定を行い、そのときのポンピング電流(Ia、Ib、Ic)をそれぞれ求め、検量線を作成することにより、行うことができる。
【0008】
【特許文献1】特許第2885336号公報
【特許文献2】特開2001−159620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に、上述の固体電解質を用いたNOx計においては、客先の現場でのメンテナンス作業で校正を行う際には有効な精度を確保する為の手段として、以下の校正方法をとっていた。即ち、ゼロガス、ミドルガス、スパンガス、ハイガスからなる4種類の校正用ガスを用意して、各校正用ガスにおけるガスセンサ感度の測定を行い、4点の校正点を設け、次いで、ポンピング電流Ipのあらかじめ蓄積されたデータからなる基準検量線を、各4点の校正点でのポンピング電流の実測測定値を基に基準検量線を作成し記録することで校正を行っていた。
【0010】
また、工場出荷時において校正済のセンサであっても、センサの設置条件や、経年変化等の諸条件によってセンサの特性が変質することもある。このため、客先の所望する時期に、要求する範囲の精度でかつ容易に入手可能な校正用ガスを用いた校正方法が望まれていた。
しかしながら、従来の固体電解質を用いたNOx計での校正方法においては、客先の測定条件及び精度に応じた校正方法を選択することができず、4種類もの既知の濃度の校正用ガスがその都度必要となっており、校正作業時の負担となっていた。本発明は、かかる従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、4種類の濃度の用校正用ガスを用いることなく、1種類又は2種類の校正用ガスを用いて校正するガスセンサの校正方法及び複数の校正方法(校正モード)からいずれか一つの校正方法を適宜選択可能としたガス分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記従来の問題に鑑みて鋭意検討の結果、4種類の校正用ガスを用意することなく、1種類又は2種類の校正用ガスを用いた1つまたは2つの校正モードのみで、短時間に効率的かつ簡便に校正を行うためには、校正点における実測値とあらかじめ蓄積されたデータに基づく基準検量線との誤差を所望の測定範囲において効果的に再現し、これを補正する必要があることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0012】
本発明によれば、酸素イオン伝導性の固体電解質を用いたガスセンサの校正方法において、1種類又は2種類の濃度の測定ガス成分を含んだ校正用ガスを用いて校正点を設け、各校正点における該センサのポンピング電流を測定して実測値とし、あらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値と実測値から補正値を算出し、該補正値を用いて基準検量線を校正することを特徴とするガスセンサの校正方法、が提供される。
【0013】
上記校正方法においては、測定ガス成分の濃度が0ppm(ゼロガス)である校正点を設けて該校正点における実測値とあらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値との差を差分補正値として算出し、該差分補正値を検量線に加算して校正することが好ましい。
【0014】
また本発明の校正方法においては、測定ガス成分の濃度が所望の測定レンジの10分の1以上(ミドルガス、スパンガス又はハイガス)である校正点を一点設け、該校正点における実測値とあらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値との割合を比率補正値として算出し、該比率補正値を該基準検量線に乗じて校正することが好ましく、より具体的には、上記測定ガス成分の濃度が50ppm以上かつ500ppm以下(ミドルガス、スパンガス又はハイガス)の範囲内で校正点を一点設けることが望ましい。
【0015】
さらに、本発明においては、測定ガス成分の濃度が0ppm(ゼロガス)である第一校正点と、測定ガス成分の濃度が所望の測定レンジの10分の1以上(ミドルガス、スパンガス又はハイガス)である第二校正点を設け、該第一校正点におけるあらかじめ記録されたポンピング電流値を実測値に校正するとともに、該第二校正点における実測値とあらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値との割合を比率補正値として算出し、該比率補正値を第一校正点を除く部分の該基準検量線に乗じて校正することが好ましい。なお、測定ガス成分の濃度測定レンジとしては、上記と同様、50ppm以上かつ500ppm以下(ミドルガス、スパンガス又はハイガス)の範囲内で校正点を一点設けることが望ましい。
【0016】
また、本発明においては、上記したそれぞれのガスセンサの校正方法のうちから少なくとも1つの校正方法を備えたことを特徴とするガス分析装置、が提供される。
【0017】
また、本発明においては、上記したそれぞれのガスセンサの校正方法のうちから少なくとも1つの校正方法と、複数の濃度の測定ガス成分を含んだ校正用ガスを用いて校正するガスセンサの校正方法とを備え、これら複数の校正方法の中からいずれか一つの校正方法を選択できるようにしたことを特徴とするガス分析装置、が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明のガスセンサの校正方法によれば、現場でのメンテナンス作業において、4種類の濃度の校正用ガスを用いることなく、1種又は2種の測定ガス成分を含んだ校正用ガスを用いて簡便かつ効率的に校正作業を行うことができる。
また、本発明のガス分析装置によれば、各種の校正方法(校正モード)を備えているので、4種類もの既知の濃度の校正用ガスが備えられている現場においては、その校正モードでより精度の高い校正が可能であるとともに、4種類もの既知の濃度の校正用ガスが備えられておらず、1種類又は2種類の濃度の校正用ガスが備えられているか、若しくは早期に入手可能な現場においては、それに対応した校正モードを適宜選択して校正することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明を実施するための実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明は、これらに何ら限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものであることは言うまでもない。
【0020】
本発明の基本的技術思想は、酸素イオン伝導性の固体電解質を用いたガスセンサの校正方法において、1種類又は2種類の濃度の校正用ガスを用いて校正点を設け、各校正点における該センサのポンピング電流を測定して実測値とし、あらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値と実測値から補正値を算出し、該補正値を用いて検量線を校正するという校正方法である。
この校正を行う際には、所望の測定ガス成分の濃度測定範囲に対応した校正点を含み、所望の精度に応じて校正方法を適宜選択可能或いは変更可能である。
【0021】
より具体的にいえば、本発明の好ましい一実施態様(校正方法1)としては、測定ガス成分の濃度が0ppmである校正点を設けて該校正点における実測値とあらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値との差を差分補正値として算出し、この差分補正値を基準検量線に加算して校正する方法がある。この場合、校正用ガスとしてN2ガスを1種類用意すればよく、入手も容易である。また、校正点の濃度が0ppmであることにより、測定ガス成分が低濃度の場合に充分な精度が得られる。
【0022】
また、本発明の他の好ましい実施態様(校正方法2)としては、測定ガス成分の濃度が測定レンジの10分の1以上(ミドルガス、スパンガス又はハイガス)、具体的には、例えば、測定ガス成分の濃度が50ppm以上かつ500ppm以下の範囲内における校正点を一つのみ設けて、該校正点における実測値とあらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値との割合を比率補正値として算出し、該比率補正値を検量線に乗じて校正する方法がある。この方法の場合、測定レンジの中央付近においてNOxセンサの基準検量線からの誤差が大きくなる傾向があるため、この範囲に校正点を設けることでより精度の高い校正が期待できる。このようにして、比率補正値として基準検量線に反映されることにより、簡便な校正方法が得られる。
【0023】
また、本発明の更に別の好ましい実施態様(校正方法3)としては、測定ガス成分の濃度が0ppm(ゼロガス)である第一校正点と、測定ガス成分の濃度が所望の測定レンジの10分の1以上(ミドルガス、スパンガス又はハイガス)、具体的には、例えば、測定ガス成分の濃度が50ppm以上かつ500ppm以下の範囲内における第二校正点を設け、該第一校正点におけるあらかじめ記録されたポンピング電流値を実測値に校正するとともに、該第二校正点における実測値とあらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値との割合を比率補正値として算出し、該比率補正値を第一校正点を除く部分の該基準検量線に乗じて校正する方法がある。この方法の場合には、第一校正点を実測値に変更するとともに、第二校正点の補正に比率補正値を用いたことにより、0ppm(ゼロガス)の濃度(低濃度)の領域及び所望の測定領域においても、より精度の高い校正が可能となり、また、2点の校正点のみ使用する簡便な校正作業においても精度の高い校正が可能である。
【0024】
また、更に測定ガス成分の濃度が0ppm(ゼロガス)である第一校正点と、測定ガス成分の濃度が所望の測定レンジの10分の1以上(ミドルガス、スパンガス又はハイガス)である第二校正点を設け、該第一校正点における実測値とあらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値との差を差分補正値として算出し、該差分補正値を第一校正点のあらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値に加算するとともに、該第二校正点における実測値とあらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値との割合を比率補正値として算出し、該比率補正値を第一校正点を除く部分の該基準検量線に乗じて校正することも可能である。
【0025】
次に、本発明に係るガス分析装置としてのNOx−O2計について説明する。
本発明のガス分析装置(NOx−O2計)は、上記で説明した各種の校正方法(校正モード)、及び4種類の濃度の測定ガス成分を含んだ校正用ガスを用いて校正する校正方法(校正モード)とを備え、これら複数の校正方法(校正モード)の中からいずれか一つの校正方法(校正モード)を選択できるようにしたことを特徴とするものである。
【0026】
本発明のガス分析装置(NOx−O2計)は、複数の校正方法(校正モード)を備えているので、例えば4種類もの既知の濃度の測定ガス成分を含んだ校正用ガスが備えられておらず、1種類又は2種類の濃度の測定ガス成分を含んだ校正用ガスしか準備できない現場の作業環境下においても、それに対応した校正モードを校正作業者が適宜選択して校正することができる。もちろん、現場において、4種類もの既知の濃度の測定ガス成分を含んだ校正用ガスが備えられている場合には、その校正モードで校正を行うことにより精度の高い校正が可能である。
【0027】
本発明のガス分析装置としてのNOx−O2計としては、例えば、図3に示す構成を備えているものが好ましく用いられる。図3は、本発明に係るNOx−O2計の具体例を示す説明図である。図3に示すように、NOx−O2計10は、例えばエンジン、ボイラ、工業用炉等の排気管内の煙道Kに取り付けられ、その煙道Kを流れる被測定ガス(排ガス)Gに含まれる測定ガス成分の濃度を検出する検出手段1と、検出手段1に電気的に接続された分析手段2とを備えている。検出手段1は煙道K内に挿入固定されており、分析手段2は外部に設置されている。すなわち、煙道壁12には検出手段1を挿通可能とした筒状の検出手段挿入口13が突設されており、検出手段挿入口13の先端外周縁には環状のフランジ部14が形成されている。検出手段挿入口13を介して検出手段1は煙道K内に挿入されており、検出手段1はフランジ部14に固定されている。
【0028】
検出手段1内には、ガスセンサ11(NOx−O2ガスセンサ)が固定されており、そのガスセンサ11の先端部に校正用ガスを供給する校正用ガス供給用配管71が配設されている。校正用ガス供給用配管71の外部には、所定濃度の測定ガス成分を含んだ校正用ガスPを有するガスボンベ(図示しない)が接続されており、校正用ガス供給用配管71の一端から流入した校正用ガスPは校正用ガス供給用配管71の他端から流出してガスセンサ11の先端部へ供給される。
【0029】
検出手段1は、一端が開口した円筒状の支持筒21を備えており、支持筒21の開口端縁にはフランジ部22が形成されている。支持筒21は検出手段挿入口13に挿入され、煙道壁12のフランジ部14の外面と支持筒21のフランジ部22の内面との間にシール部材Sを介在させた状態で、ボルト23、ナット24にて支持筒21は煙道壁12に締め付け固定されている。
【0030】
支持筒21の先端壁31には、ガスセンサ11の先端部を収容固定可能とした収容部32が貫通して形成されており、また、支持筒21の先端壁31には、支持筒21の内部と収容部32の内部とを連通するL字状の連通路34が形成されている。さらに、先端壁31の開口部周縁には環状のフィルタ支持部35が突設されており、フィルタ支持部35の先端部には防塵用のフィルタ36が固定されている。
【0031】
収容部32にはガスセンサ11が固定されている。ガスセンサ11は筒状のセンサケース42を備えており、センサケース42の外周面における先端寄りにはセンサナット43が形成されている。また、センサケース42の外周面において、センサナット43よりも先端側にはねじ部44が形成されており、ねじ部44よりも先端側には複数個のガス導入孔45がセンサケース42の周方向に所定間隔をおいて配置形成されている。センサケース42の先端部を先端壁31の収容部32に挿入して、センサケース42のねじ部44を締め付けることにより、センサケース42は先端壁31に固定されている。
センサケース42の内部には、ジルコニア等の酸素イオン伝導性の固体電解質体により板状又は棒状に形成された高温作動型のセンサ素子(図示略)及び当該センサ素子を加熱するヒータ(図示略)が収容されている。前記センサ素子には、一対の電極が設けられており、両電極間の化学ポテンシャル(電位に相当)の差(電位差に相当)に起因して発生する電流(ポンピング電流)を測定することにより、被測定ガスG中の測定ガス成分(例えばNOxガス、O2ガス)の濃度を検出することが可能となっている。ヒータは、固体電解質体が所定の温度に加熱、保持されている。両電極にはガスセンサ11からの出力電圧を取り出す複数本のリード線46の一端が接続されており、各リード線46の他端はセンサケース42の基端部に装着されたリード線押さえ部材47を介して外部に導出されている。また、ガスセンサ11にはヒータが設けられており、ヒータには電力供給用の複数のリード線46の一端が接続されており、各リード線46の他端もリード線押さえ部材47を介して外部に導出されている。リード線押さえ部材47は弾性、耐熱性及び絶縁性を有するゴム材料(例えば、フッ素ゴム、シリコンゴム等)により円板状に形成されており、リード線46の本数と同数のリード線挿通孔とが環状に配置形成されている。各リード線46はリード線押さえ部材47の各リード線挿通孔にそれぞれ1本ずつ挿通されている。また、各リード線46はリード線挿通管48に挿通されることにより束ねられている。一端がガスセンサ11に接続された各リード線46の他端はそれぞれ単一の雄型コネクタ49が接続されている。
【0032】
煙道壁12のフランジ部14には、ボルト23を介して直方体状の端子箱51が固定されている。すなわち、端子箱51の煙道壁12側の一側壁51aの外面において、一対の支持部材52、52が溶接により固定されている。支持部材52は端子箱51の一側壁51a外面に固定された支持部52aと、支持部52aに対して直交するように外方へ突出する固定部52bとから断面L字状に形成されている。固定部52bをボルト23、ナット53を締め付けることにより端子箱51はフランジ部14に固定されている。端子箱51の一側壁51aの中央には挿通孔54が形成されており、挿通孔54の周囲には一対の円弧状のボルト挿通孔55が形成されている。また、端子箱51において、一側壁51aに対向する他側壁51bには空気供給管56の一端がチューブ継手57を介して固定されており、同じく他端は一側壁51aの挿通孔54を介して支持筒21内に導入されている。チューブ継手57は冷却用空気を生成する圧縮空気源(図示せず)に接続されており、空気供給管56の一端から流入した冷却用空気は空気供給管56の他端から流出してガスセンサ11の基端部へ供給される。すなわち、空気供給管56の他端は冷却用空気をガスセンサ11の基端部に供給するノズル部56aとされている。さらに、一端が分析器11bに接続された出力取出用ケーブル58の他端が、他側壁51bにおけるチューブ継手57の下方に固定されたケーブル用継手59を介して、端子箱51内に導入されている。出力取出用ケーブル58の他端には雌型コネクタ60が接続されており、雌型コネクタ60は端子箱51内において雄型コネクタ49と接続されている。
【0033】
端子箱51の一側壁51aの外面には、一端が開口した有底円筒状の接続管61が固定されている。すなわち、接続管61の基端部外周面には互いに反対側に位置する一対の固定部材62が溶接等により固定されている。固定部材62は接続管61の外周面に固定される接続管側固定壁62aと、端子箱51の一側壁51aに固定される端子箱側固定壁62bとからL字状に形成されている。また、端子箱側固定壁62bにはボルト挿通孔63が形成されている。そして、端子箱51の一側壁51aのボルト挿通孔55及び端子箱側固定壁62bのボルト挿通孔63に端子箱51の内側からボルト64を挿通し、ナット65を締付けることにより、接続管61は端子箱51の一側壁51aの外面に固定されている。また、接続管61の先端壁には、ガスセンサ11のセンサナット43を嵌合可能とした嵌合孔66が形成されている。接続管61を端子箱51の一側壁51aに固定し、かつ支持筒21のフランジ部22及び端子箱51の固定部52bを検出手段挿入口13のフランジ部14に固定した状態において、接続管61は嵌合孔66にセンサナット43が嵌合した状態に保持されている。接続管61の基端側には複数個の空気導入孔67が接続管61の周方向に所定間隔をおいて形成されている。また、接続管61の長手方向における中央よりも若干先端寄りには、複数個の空気導出孔68が接続管61の周方向に所定間隔をおいて形成されている。支持筒21の内周面と接続管61の外周面との間には、分析手段2を校正するための校正用ガスPを供給する校正用ガス供給用配管71が挿入されている。校正用ガス供給用配管71の先端部は支持筒21の先端壁31に形成された連通路34における先端壁31内面側の開口部に螺合されている。また、校正用ガス供給用配管71の基端部は端子箱51の一側壁51aと支持筒21のフランジ部22との間の空間を通って側方へ導出されて外部の校正用ガスの供給源、例えば、ガスボンベに接続されている。従って、ガスボンベからの校正用ガスPは校正用ガス供給用配管71及び連通路34を通って収容部32へ供給される。
【0034】
分析手段2には、駆動部、増幅部、演算部、ヒータ制御部が備えられ(図示しない)、駆動部による酸素ポンピング制御、増幅部によるポンピング電流値の増幅、ポンピング電流値からのNOx、O2各濃度の演算およびガスセンサ内のヒータの制御が行われる。上述の校正方法を実施する場合には、演算部内にてソフトウェア上で校正を実現するものである。また、分析手段2には、濃度表示出力部、NOx−O2表示切替部が備えられ(図示しない)、NOx−O2表示切替部をNOxガス側若しくはO2ガス側に切り替えることで、濃度表示出力部にて各ガスの濃度表示・出力が行われる。さらには、分析手段2には、校正モード選択部が備えられ(図示しない)、この校正モード表示選択部は、従来行われている4点の校正点を用いた校正モード(校正方法)に加えて、上述の本発明の各種の校正モード(校正方法)を備え、校正作業者が準備可能な校正用ガス、客先の測定条件や精度に応じて校正モード表示選択部の各種モードを自由に選択するようになっている。
【0035】
次に、上記ガス分析装置(NOx−O2計)を用いて本発明の各校正方法を具体的にNOガス、O2ガスにて実施した例を詳しく説明する。
【実施例】
【0036】
(実施例1:NOxガス)
表1は、ガス分析装置(NOx−O2計)を用いて、校正前の初期Ip値(μA)と、従来技術である4点の校正点を用いた校正方法による4種類のNOxの濃度(0ppm、50ppm、250ppm、500ppm)におけるポンピング電流、即ち4点校正Ip(μA)の実測値を示す。図4は、表1をグラフ化したものである。
【0037】
【表1】
【0038】
なお、ここで言う初期Ip値とは、工場出荷時に計測し、蓄積されたポンピング電流をもとに作成された基準検量線上の数値である。この基準検量線は、1次直線、あるいは複次曲線等からなり、演算部において、自動的に基準検量線を作成することも可能である。しかしながら、本発明においては、あらかじめ作成された基準検量線を基にした校正方法に主眼をおくことから、4点の校正点を用いた従来の校正方法としては、説明のために簡便な4点を直線的に結んだものを使用する。
【0039】
この初期Ip値は、個々のセンサの特性により異なるものであるとともに、出荷後の経時変化等により実際のNOx濃度からは誤差が生じるものである。この誤差を図6に示されるように、ゼロガス(0ppm)、ミドルガス(50ppm)、スパンガス(250ppm)、ハイガス(500ppm)の各4点の校正点の測定結果に基づいて校正を行った。但し、ここで言う各4点の濃度の値は、適用する条件に応じて適宜変更可能な数値であることを付け加えておく。また、実施例1の各校正方法においてゼロガスはN2を使用し、ミドルガス、スパンガス、ハイガスはNOを使用した。実施例1では、ミドルガス、スパンガス、ハイガスにNOを使用したが、NO2等の他の窒素酸化物を使用して校正を行うことは可能である。
【0040】
(校正方法1)
次に、本発明のガスセンサの校正方法の一例を実施した。まず、ゼロガスを用いて実測値を計測し、初期Ip値からなる基準検量線として記録されたポンピング電流値との差を差分補正値として算出する。表2において示すように、ここでの差分補正値は、
0.164(μA)−0.085(μA)=0.079(μA)
となる。この値を基準検量線に加算して校正することにより、表2の残り3点(ミドルガス、スパンガス、ハイガス)に示す値が得られるので、校正することができる。このとき、校正用ガスとしてN2を1種類用意すればよく、客先の現場での入手も容易である。また、校正点の濃度が0ppmであることにより、被測定ガスが低濃度の場合に充分な精度が得られる。この表2をグラフ化したものが図5である。
【0041】
【表2】
【0042】
(校正方法2)
次いで、本発明の別のガスセンサの校正方法を実施した。
すなわち、測定ガス成分の濃度が所望の測定レンジの10分の1以上(測定ガス成分の濃度が50ppm以上かつ500ppm以下の範囲内)である校正点として(ミドルガス、スパンガス又はハイガスのうちいずれか一つを使用する)一つのみ設けて、該校正点における実測値とあらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値との割合を比率補正値として算出する。ここでは、校正点として、スパンガス(250ppm)を用いた。即ち、スパンガスでの、実測値1.287(μA)に対しての初期Ip値0.940(μA)の比率補正値は、
1.287(μA)÷0.940(μA)=1.369
である。この値を基準検量線に乗じて校正することにより、表3に示すように残りの3点(ゼロガス、ミドルガス、ハイガス)を校正することができる。得られた結果を図6に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
(校正方法3)
本発明のさらに別のガスセンサの校正方法を実施した。
すなわち、ゼロガスである第一校正点と、測定ガス成分の濃度が所望の測定レンジの10分の1以上(ミドルガス、スパンガス又はハイガスの濃度が50ppm以上かつ500ppm以下の範囲内)である第二校正点を設ける。ここでは、スパンガスを用いる。第二校正点における実測値1.287(μA)とあらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値0.940(μA)との割合を比率補正値として算出する。比率補正値は、
1.287(μA)÷0.940(μA)=1.369
である。この値を第一校正点(0点)を除く部分の基準検量線に乗じて比率補正検量線とする。
【0045】
更にここで、第一校正点(ゼロガス)におけるあらかじめ基準検量線として記録された0点のポンピング電流値(初期Ip値)0.085(μA)を実測値0.164(μA)に変更する(校正する)。したがって、第一校正点の実測値への変更及び比率補正値を第一校正点を除く部分の基準検量線に乗じて校正することにより、表4に示すように0点及び残りの2点(ミドルガス、ハイガス)を校正することができる。得られた結果を図7に示す。
【0046】
【表4】
【0047】
(実施例2:O2ガス)
表5は、ガス分析装置(NOx−O2計)を用いて、校正前の初期Ip値(μA)と、従来技術である4点の校正点を用いた校正方法による4種類のO2の濃度(0ppm、50ppm、250ppm、500ppm)におけるポンピング電流、即ち4点校正Ip(μA)の実測値を示す。図8は、表5をグラフ化したものである。
【0048】
【表5】
【0049】
誤差を図8に示されるように、ゼロガス(0ppm)、ミドルガス(50ppm)、スパンガス(250ppm)、ハイガス(500ppm)の各4点の校正点の測定結果に基づいて校正を行った。但し、ここで言う各4点の濃度の値は、適用する条件に応じて適宜変更可能な数値であることを付け加えておく。また、実施例2の各校正方法においてゼロガスはN2を使用し、ミドルガス、スパンガス、ハイガスはO2を使用した。
【0050】
(校正方法1)
次に、本発明のガスセンサの校正方法の一例を実施した。まず、ゼロガスを用いて実測値を計測し、初期Ip値からなる基準検量線として記録されたポンピング電流値との差を差分補正値として算出する。表6において示すように、ここでの差分補正値は、
0.174(μA)−0.102(μA)=0.072(μA)
となる。この値を基準検量線に加算して校正することにより、表6に示すように残り3点(ミドルガス、スパンガス、ハイガス)に示す値が得られるので、校正することができる。このとき、校正用ガスとしてN2を1種類用意すればよく、客先の現場での入手も容易である。また、校正点の濃度が0ppmであることにより、測定ガス成分が低濃度の場合に充分な精度が得られる。この表6をグラフ化したものが図9である。
【0051】
【表6】
【0052】
(校正方法2)
次いで、本発明の別のガスセンサの校正方法を実施した。
すなわち、測定ガス成分の濃度が所望の測定レンジの10分の1以上(測定ガス成分の濃度が50ppm以上かつ500ppm以下の範囲内)である校正点として(ミドルガス、スパンガス又はハイガスのうちいずれか一つを使用する)一つのみ設けて、該校正点における実測値とあらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値との割合を比率補正値として算出する。ここでは、校正点として、スパンガス(250ppm)を用いた。即ち、スパンガスでの、実測値8.464(μA)に対しての初期Ip値7.360(μA)の比率補正値は、
8.464(μA)÷7.360(μA)=1.150
である。この値を基準検量線に乗じて校正することにより、表7に示すように残りの3点(ゼロガス、ミドルガス、ハイガス)に示す値が得られるので、校正することができる。得られた結果を図10に示す。
【0053】
【表7】
【0054】
本願の実施形態では、校正方法2において校正点として、スパンガス(250ppm)を用い、残りの3点(ゼロガス、ミドルガス、ハイガス)を校正するようにしたが、校正点として、ミドルガスもしくはハイガスを用い、残りの3点(ゼロガス、スパンガス、ハイガス)もしくは(ゼロガス、ミドルガス、スパンガス)を校正するようにしてもよい。また、校正方法3においても校正点として、スパンガス(250ppm)を用い、残りの2点(ミドルガス、ハイガス)を校正するようにしたが、校正点として、ミドルガスもしくはハイガスを用い、残りの2点(スパンガス、ハイガス)もしくは(ミドルガス、スパンガス)を校正するようにしてもよい。
【0055】
(校正方法3)
本発明のさらに別のガスセンサの校正方法を実施した。
すなわち、ゼロガスである第一校正点と、測定ガス成分の濃度が所望の測定レンジの10分の1以上(ミドルガス、スパンガス又はハイガスの濃度が50ppm以上かつ500ppm以下の範囲内)である第二校正点を設ける。ここでは、スパンガスを用いる。第二校正点における実測値8.464(μA)とあらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値7.360(μA)との割合を比率補正値として算出する。比率補正値は、
8.464(μA)÷7.360(μA)=1.150
である。この値を第一校正点(0点)を除く部分の基準検量線に乗じて比率補正検量線とする。
【0056】
更にここで、第一校正点(ゼロガス)におけるあらかじめ基準検量線として記録された0点のポンピング電流値(初期Ip値)0.102(μA)を実測値0.174(μA)に変更する(校正する)。したがって、第一校正点の実測値への変更及び比率補正値を第一校正点を除く部分の基準検量線に乗じて校正することにより、表8に示すように0点及び残りの2点(ミドルガス、ハイガス)を校正することができる。得られた結果を図11に示す。
【0057】
【表8】
【0058】
(考察)
校正方法1のゼロガス1点で校正する方法では、入手容易なN2ガスをゼロガス(0ppm)として使用することは、短時間に効率的かつ簡便に校正を行うことができるとともに、測定ガス成分が低濃度の場合に校正誤差が小さくなるが、高濃度での点での校正誤差を適正に補正することが出来ない場合がある。また、校正方法2の測定ガス成分の濃度が所望の測定レンジ範囲のガス(例:スパンガス)1点で校正する方法では、測定レンジ範囲の濃度にあるガスの1点で校正するため、短時間に効率的かつ簡便に校正を行うことができるとともに、測定ガス成分が高濃度の場合に校正誤差が小さくなるが、低濃度での点での校正誤差を校正方法1ほど適正に補正することが出来ない場合がある。
このような場合、校正方法3のゼロガス及び測定ガス成分の濃度が所望の測定レンジ範囲のガス(例:スパンガス)の2点で校正する方法では、ゼロガスにより測定した実測値及びスパンガスでの比率補正値による補正を導入することで、校正方法1及び校正方法2の問題は解決される。
【0059】
本願の実施形態では、校正方法3において、実施例1のNOxガスでは第一校正点(ゼロガス)についてあらかじめ基準検量線として記録された0点のポンピング電流値(初期Ip値)0.085(μA)を実測値0.164(μA)に変更し、実施例2のO2ガスでは第一校正点について0点のポンピング電流値(初期Ip値)0.102(μA)を実測値0.174(μA)に変更するようにしたが、下記のようにしてもよい。
NOxガスでは、第一校正点の実測値0.164(μA)とあらかじめ標準検量線として記録されたポンピング電流値(初期Ip値)0.085(μA)との差を差分補正値として算出する。差分補正値は、
0.164(μA)−0.085(μA)=0.079(μA)
である。
この差分補正値を0点のポンピング電流値(初期Ip値)0.085(μA)に加算して第一校正点を校正するようにする。このようにしても、表4及び図6に示すように校正することができる。
また、O2ガスでは第一校正点の実測値0.174(μA)とあらかじめ標準検量線として記録されたポンピング電流値(初期Ip値)0.102(μA)との差を差分補正値として算出する。差分補正値は、
0.174(μA)−0.102(μA)=0.072(μA)
である。
この差分補正値を0点のポンピング電流値(初期Ip値)0.102(μA)に加算して第一校正点を校正するようにする。このようにしても、表8及び図11に示すように校正することができる。
すなわち、差分補正値を第一校正点のあらかじめ基準検量線として記録された0点のポンピング電流値実測値へ加算するとともに、比率補正値を第一校正点を除く部分の基準検量線に乗じて校正するようにする。このようにしても実施例1及び実施例2の校正方法3と同様の低濃度の領域及び所望の測定領域において、より精度の高い校正が可能となり、また、2点の校正点のみ使用する簡便な校正作業においても精度の高い校正が可能である。
【0060】
また、本願の実施形態は、次のように変更して実施してもよい。
本願の実施形態では、図3に示すようにNOx及びO2ガスを測定するガスセンサを備えたガス分析装置(NOx−O2計)について実施したが、CO、CO2、SO2、H2、NH3、O2、及びHCL等のガスを測定する各々のガスセンサ及びそのセンサを備えたガス分析装置に上述した本願発明の1種類又は2種類の測定ガス成分を含んだ校正用ガスを用いて校正するセンサの校正方法を利用することも可能である。また、複数の校正方法(校正モード)からいずれか一つのモードを適宜選択可能としたガス分析装置を提供することも可能である。
【0061】
本願の実施形態では、本発明のNOx−O2計は、1種類又は2種類の濃度の測定ガス成分を含んだ校正用ガスで校正を行う3つの校正方法、及び4種類の濃度の測定ガス成分を含んだ校正用ガスを用いて校正する校正方法とを備え、これら複数の校正方法の中からいずれか一つの校正方法を選択できるようにしたが、1種類又は2種類の濃度の測定ガス成分を含んだ校正用ガスで校正を行う3つの校正方法のみ備え、これら3つの校正方法の中からいずれか一つの校正方法を選択できるようにしてもよい。このようにしても同様の効果を得ることができる。
また、1種類又は2種類の濃度の校正ガスで校正を行う3つの校正方法の中から少なくとも一つの校正方法を備えるようにしてもよい。このように少なくとも一つの校正方法を備えれば、簡便かつ効率的に校正作業を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、大気汚染の原因物質である窒素酸化物(NOx)及び酸素(O2)の濃度計測において、高い水準の精度を維持しつつ、簡便かつ、経済的に運用できるガスセンサの校正方法及びその校正方法を備えたガス分析装置が提供される。特に、エンジン、ボイラ、工業用炉等の排気管に取り付けられて排気管内の煙道を流れる窒素酸化物(NOx)及び酸素(O2)の濃度計測するガス分析装置を校正する場合においては非常に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】従来のNOxセンサの原理を示す素子断面説明図である。
【図2】従来のNOx計の校正方法を示す模式図である。
【図3】本発明に係るNOx−O2計の具体例を示す説明図である。
【図4】本発明のNOx−O2計の4点のNOx濃度の校正方法の実施形態によって得られたグラフである。
【図5】本発明のNOx−O2計のNOx濃度の校正方法の実施形態(校正方法1)によって得られたグラフである。
【図6】本発明のNOx−O2計のNOx濃度の校正方法の別の実施形態(校正方法2)によって得られたグラフである。
【図7】本発明のNOx−O2計のNOx濃度の校正方法の更に別の実施形態(校正方法3)によって得られたグラフである。
【図8】本発明のNOx−O2計の4点の酸素(O2)濃度の校正方法の実施形態によって得られたグラフである。
【図9】本発明のNOx−O2計の酸素(O2)濃度の校正方法の実施形態(校正方法1)によって得られたグラフである。
【図10】本発明のNOx−O2計の酸素(O2)濃度の校正方法の別の実施形態(校正方法2)によって得られたグラフである。
【図11】本発明のNOx−O2計の酸素(O2)濃度の校正方法の更に別の実施形態(校正方法3)によって得られたグラフである。
【符号の説明】
【0064】
1…検出手段、2…分析手段、10…ガス分析装置(NOx−O2計)、11…ガスセンサ、12…煙道壁、13…検出手段挿入口、14…フランジ部、21…支持筒、22…フランジ部、46…リード線、51…端子箱、52…支持部材、61…接続管、71…校正用ガス供給用配管、102…センサ素子、106…第一の内部空所、108…第二の内部空所、112…第一の拡散律速通路、114…第二の拡散律速通路、156…第一の電気化学的ポンプセル、158…第二の電気化学的ポンプセル、G…被測定ガス、K…煙道、P…校正用ガス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素イオン伝導性の固体電解質を用いたガスセンサの校正方法において、
1種類又は2種類の濃度の測定ガス成分を含んだ校正用ガスを用いて校正点を設け、各校正点における該センサのポンピング電流を測定して実測値とし、あらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値と実測値から補正値を算出し、該補正値を用いて該基準検量線を校正することを特徴とするガスセンサの校正方法。
【請求項2】
測定ガス成分の濃度が0ppm(ゼロガス)である校正点を設け、該校正点における実測値とあらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値との差を差分補正値として算出し、該差分補正値を該基準検量線に加算して校正することを特徴とする請求項1に記載のガスセンサの校正方法。
【請求項3】
測定ガス成分の濃度が所望の測定レンジの10分の1以上(ミドルガス、スパンガス又はハイガス)である校正点を一点設け、該校正点における実測値とあらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値との割合を比率補正値として算出し、該比率補正値を該基準検量線に乗じて校正することを特徴とする請求項1に記載のガスセンサの校正方法。
【請求項4】
測定ガス成分の濃度が0ppm(ゼロガス)である第一校正点と、測定ガス成分の濃度が所望の測定レンジの10分の1以上(ミドルガス、スパンガス又はハイガス)である第二校正点を設け、該第一校正点におけるあらかじめ記録されたポンピング電流値を実測値に校正するとともに、該第二校正点における実測値とあらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値との割合を比率補正値として算出し、該比率補正値を第一校正点を除く部分の該基準検量線に乗じて校正することを特徴とするガスセンサの校正方法。
【請求項5】
請求項1〜4のうち少なくとも1項に記載のガスセンサの校正方法を備えたことを特徴とするガス分析装置。
【請求項6】
請求項1〜4のうち少なくとも1項に記載のガスセンサの校正方法と、複数の濃度の測定ガス成分を含んだ校正用ガスを用いて校正するガスセンサの校正方法とを備え、これら複数の校正方法の中からいずれか一つの校正方法を選択できるようにしたことを特徴とするガス分析装置。
【請求項1】
酸素イオン伝導性の固体電解質を用いたガスセンサの校正方法において、
1種類又は2種類の濃度の測定ガス成分を含んだ校正用ガスを用いて校正点を設け、各校正点における該センサのポンピング電流を測定して実測値とし、あらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値と実測値から補正値を算出し、該補正値を用いて該基準検量線を校正することを特徴とするガスセンサの校正方法。
【請求項2】
測定ガス成分の濃度が0ppm(ゼロガス)である校正点を設け、該校正点における実測値とあらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値との差を差分補正値として算出し、該差分補正値を該基準検量線に加算して校正することを特徴とする請求項1に記載のガスセンサの校正方法。
【請求項3】
測定ガス成分の濃度が所望の測定レンジの10分の1以上(ミドルガス、スパンガス又はハイガス)である校正点を一点設け、該校正点における実測値とあらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値との割合を比率補正値として算出し、該比率補正値を該基準検量線に乗じて校正することを特徴とする請求項1に記載のガスセンサの校正方法。
【請求項4】
測定ガス成分の濃度が0ppm(ゼロガス)である第一校正点と、測定ガス成分の濃度が所望の測定レンジの10分の1以上(ミドルガス、スパンガス又はハイガス)である第二校正点を設け、該第一校正点におけるあらかじめ記録されたポンピング電流値を実測値に校正するとともに、該第二校正点における実測値とあらかじめ基準検量線として記録されたポンピング電流値との割合を比率補正値として算出し、該比率補正値を第一校正点を除く部分の該基準検量線に乗じて校正することを特徴とするガスセンサの校正方法。
【請求項5】
請求項1〜4のうち少なくとも1項に記載のガスセンサの校正方法を備えたことを特徴とするガス分析装置。
【請求項6】
請求項1〜4のうち少なくとも1項に記載のガスセンサの校正方法と、複数の濃度の測定ガス成分を含んだ校正用ガスを用いて校正するガスセンサの校正方法とを備え、これら複数の校正方法の中からいずれか一つの校正方法を選択できるようにしたことを特徴とするガス分析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−85869(P2007−85869A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−274568(P2005−274568)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(000102636)エナジーサポート株式会社 (51)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(000102636)エナジーサポート株式会社 (51)
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