説明

ガスセンサ

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は気体中に微量に含まれるガスの検出に利用する。特に一酸化炭素を検出するガスセンサに関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、雰囲気中に漏洩するガスが爆発を起こすあるいは人体に有害であるなどの危険状態になる前に警報を発するガスセンサが広く知られている。特に、一酸化炭素は爆発を起こす状態よりはるかに微量に空気中に混入しても、人体あるいは生物体に危険があるため、混入量が数百ppm程度で警報を発生するものが必要とされている。
【0003】従来このためのガスセンサとして、セラミック半導体物質を用いる技術が開発された。この技術は、例えば〔文献1〕 宮山、柳田「酸化亜鉛ガスセンサー」、窯業協会発行:雑誌「セラミックス」第18巻第11号(1983年11月)941−945頁に詳しい記載がある。この技術はセラミック半導体の表面に還元性のガスが接触すると、半導体の表面にある吸着酸素がそのガスと反応することにより減少し、ポテンシャル障壁の高さと幅が減少するため、電子の移動が容易になり比抵抗が減少する性質を利用するものである。
【0004】また、本願発明の発明者の一人は、整流特性のある金属と半導体、あるいは一つのセラミック半導体と異種のセラミック半導体の接合が、水素ガスまたは水蒸気に反応することに気付き、整流特性の変化を空気中の水素または水蒸気の検知に利用することが将来有望であることを提言した。これは、〔文献2〕 宮山、柳田「ガスセンサー材料開発の新しい展開」、雑誌「電気化学」第50巻第1号(1982年1月)92−98頁あるいは〔文献3〕 柳田他「半導体接合の相対湿度に対する電流電圧特性」、日本応用物理学会発行の英文論文誌(Japanese Journal of Applied Physics) 第22巻第12号(1983年12月)1933頁に記載されている。
【0005】本願発明の発明者の一人は、上記公知の文献で、整流特性のある半導体接合が空気中の水素ガスおよび水蒸気の検出に有効であることを示唆したが、この段階ではその作用が十分に解明されていなかったので、検出できるガスの種類、工業的に利用できる方法または装置の構成などは明らかにされていない。
【0006】本願出願人の一部は、低温で被検ガスの種類を選択的に検出することができるガス検出方法およびガスセンサについて既に特許出願し、その出願が、〔文献4〕 特開昭62−90529号公報として公開されている。この公報には、互いに接触させることにより整流特性をもつ二種類の固体物質を接触面を介して機械的に接触させ、その接触面に空隙を形成しておき、その空隙に試料ガスを導くことが示されている。
【0007】また、上記一部の出願人は、文献4に示されたと同等の構造を用いて二酸化酸素を検出できることについても特許出願し、その出願は、〔文献5〕 特開昭62−90528号公報として公開されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述の文献4および5に開示されたガスセンサをさらに改良し、実用的な特性をもつガスセンサを提供することを目的とする。さらに本発明は、一酸化炭素に対する選択性のあるガスセンサを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明のガスセンサは、CuOを主成分とするp型半導体と、このp型半導体に接触して設けられたZnOを主成分とするn型半導体と、p型半導体とn型半導体とにそれぞれ接続された二つの電極とを備え、p型半導体とn型半導体との接触部は被検ガスを含む気体が導入される構造に形成されたガスセンサにおいて、n型半導体にはAl2 3 を添加物として含むことを特徴とする。
【0010】p型半導体およびn型半導体は、それぞれバルクとして形成されてもよく、薄膜、厚膜その他の形態に形成されていてもよい。
【0011】
【作用】CuOを主成分とするp型半導体とZnOを主成分とするn型半導体とを接触させ、その接触部に空隙を形成して試料ガスを導くと、印加電圧に対してその接触部を通過する電流が変化する。本発明者らは、このようなガスセンサにおいてn型半導体にAl2 3 を添加するとセンサの抵抗値が低下し、しかもガス選択性が変化することを発見して本発明を完成した。
【0012】ZnOにAl2 3 を添加して抵抗値が低下することは、〔文献6〕 高田雅介、坪根大輔、柳田博明「Al2 3 を添加したZnO焼結体の電気伝導度」、窯業協会誌 82〔5〕1974年第271−277頁に示されている。
【0013】しかし、ZnO焼結体の抵抗値が低下するからといって、一般に他の材料に接触させた場合にもそれだけ抵抗値が低下するというものではない。上記文献にも「電極の選択を誤ると得られたデータは試料の電気的性質ではなく、試料と電極の間の接触抵抗に関する情報になる可能性がある。」と記載されているように、接触する相手の材料との関係が問題となる。
【0014】これに対して本願発明者らは、ZnOを主成分とするn型半導体にAl2 3を添加すると、CuOを主成分とするp型半導体に接触させたときの全体としての抵抗値が低下し、ガスセンサとして優れた特性が得られることを発見した。
【0015】すなわち、p−n接触の抵抗値が低下すると、接触部を通過する電流が大きくなり、接触部で発生している現象を詳しく観測するうえで都合がよい。また、p型半導体のCuO純度およびn型半導体のZnO純度を共に高めるとCOガスに対して感度が極端に低下するのに対し、n型半導体にAl2 3 を添加するとCOガスに対する感度が得られる。これを利用すると、Al2 3 の添加量による感度の差によりCOガスだけを選択的に検知できるようなガスセンサを実現できる可能性がある。
【0016】
【実施例】図1は本発明の望ましい実施形態を示す図であり、図2はその使用状態を示す図である。これらの図では、p型半導体厚膜とn型半導体厚膜との接触部を横から見た構造を示す。
【0017】この実施例は、基板11の表面に電極13を備え、この電極13に接続されるようにCuOを主成分とするp型半導体厚膜15を備える。また、基板11とは別個の基板12を備え、その表面に電極14を備え、この電極14の表面にZnOを主成分とするn型半導体厚膜16を備える。p型半導体厚膜15とn型半導体厚膜16とは機械的に接触され、その接触部に被検ガスを含む気体が導入される構造となっている。
【0018】この実施例では、p型半導体厚膜15およびn型半導体厚膜16がそれぞれ厚膜形成されたものとする。すなわち、p型半導体厚膜15は、p型半導体材料の粒子を主固形成分とするペースト状物質を電極13に接するように基板11に印刷し、そのペースト状物質を焼成することにより形成された膜である。n型半導体厚膜16も同様に、n型半導体材料の粒子を主固形成分とするペースト状物質を電極14に接するように基板12に印刷し、そのペースト状物質を焼成することにより形成された膜である。
【0019】ここで本実施例の特徴とするところは、n型半導体厚膜16にはAl2 3 を添加物として含むことにある。
【0020】この実施例において、基板11および基板12にそれぞれ印刷されたペースト状物質を乾燥させ、互いに接触させるように重ね合わせてから焼成を行うことがよい。このようにすると、二つの半導体厚膜15および16を相互に接触させるとともに、機械的に固定することができる。
【0021】この実施例を動作させるには、図2に示すようにp側の電極13に正、n型の電極14に負の直流電圧、すなわち順方向バイアス電圧を印加する。この状態で二つの半導体厚膜15、16の接触部に被検ガスを含む気体が導入されると、その接触部に流れる電流値が変化する。
【0022】次に、図3ないし図7を参照してAl2 3 添加の効果について説明する。図3は実際の測定に用いたガスセンサの構造、図4は測定装置の構成を示し、図5ないし図7は測定結果を示す。
【0023】測定に用いたガスセンサは、CuOを主成分とするバルクのp型半導体31と、ZnOを主成分とするバルクのn型半導体32とを互いに機械的に接触させ、p型半導体31とn型半導体32とにそれぞれ銀電極33、34を接続したものである。p型半導体31およびn型半導体32の形状は、それぞれ、直径約10mm、厚さ約2.6mmの円板形とした。p型半導体31としては古河機械金属製CuO、純度99.999%を用い、n型半導体32としては、関東化学製ZnO、純度約99%と、これにZnO量の1.24重量%のAl2 3 を添加したものとを用いた。
【0024】測定は、被測定ガスセンサ40を管状炉43内に配置し、この管状炉43に電磁弁41および質量流量計42を経由して空気、CO、H2 またはC3 8 を流し、その温度を温度コントローラ44により制御して行った。被測定ガスセンサ40への印加電圧および電流は電圧電流計45により測定し、その測定値はパーソナルコンピュータ46により処理して外部局装置47に蓄えた。
【0025】電磁弁41は空気、3レベルのCO、H2 、C3 8 、またはNOx のいずれかを選択して管状炉43に供給できる構成となっており、コントローラ48からリレー49を介して供給される制御信号により動作する。パーソナルコンピュータ46は、電圧電流計45の検出した電流値を取り込むと、適当な時間が経過した時点でガス切替のための制御信号をコントローラ48に出力する。
【0026】図5はガスセンサを空気中で測定したときの電流値を示す。この測定は、n型半導体にAl2 3 を添加したものと添加していないものとについて、印加電圧0.25V、加熱温度260℃で測定したものである。この図から、n型半導体にAl2 3 を添加することで、p−n接触部を通過する電流が1桁程度増加することがわかる。
【0027】図6および図7はガスに対する応答特性の測定結果を示し、図6は高純度CuOと高純度ZnO(Al2 3 添加せず)とを接触させたガスセンサ、図7R>7は高純度CuOとAl2 3 添加ZnOとを接触させたガスセンサの特性を示す。この測定では、被検ガスとして、CO 4000ppm空気バランスH2 4000ppm空気バランスC3 8 4000ppm空気バランスの三種類を用いた。図6と図7とは縦軸の値が大きく異なるが、他のガスと比較することによりガス選択性がわかる。すなわち、CuOとZnOとの双方の純度が高い場合にはH2 、C3 8 に比較してCOに対する感度がほとんどないのに対し、n型半導体(ZnO)にAl2 3 を添加すると、H2 、C3 8 に対する感度と同程度の感度が得られている。
【0028】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のガスセンサは、CuOを主成分とするp型半導体とZnOを主成分とするn型半導体とを接触させたガスセンサの抵抗値を小さくすることができ、しかもCOに対する選択性を高めることができる。本発明は、一般家庭あるいは事業所、鉱業その他の地下作業を伴う作業所、ガスの製造あるいは精製を行う事業所、石油類の輸送または精製を行う設備、その他で効果的に利用できる。さらに、ガス検出に基づき制御を行うプロセス制御に利用して極めて効果的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の望ましい実施形態を示す図。
【図2】使用状態を示す図。
【図3】実際の測定に用いたガスセンサの構造を示す側面図。
【図4】測定装置の構成を示す図。
【図5】n型半導体として高純度ZnOを使用した場合とAl2 3 を添加した場合とにおけるガスセンサを流れる電流値の変化を示す図。
【図6】高純度CuOと高純度ZnOとを接触させたガスセンサの応答特性を示す図。
【図7】高純度CuOとAl2 3 添加ZnOとを接触させたガスセンサの応答特性を示す図。
【符号の説明】
11、12 基板
13、14 電極
15 p型半導体厚膜
16 n型半導体厚膜
31 p型半導体
32 n型半導体
33、34 銀電極
40 被測定ガスセンサ
41 電磁弁
42 質量流量計
43 管状炉
44 温度コントローラ
45 電圧電流計
46 パーソナルコンピュータ
47 外部局装置
48 コントローラ
49 リレー

【特許請求の範囲】
【請求項1】 CuOを主成分とするp型半導体と、このp型半導体に接触して設けられたZnOを主成分とするn型半導体と、上記p型半導体と上記n型半導体とにそれぞれ接続された二つの電極とを備え、上記p型半導体と上記n型半導体との接触部は被検ガスを含む気体が導入される構造に形成されたガスセンサにおいて、上記n型半導体にはAl2 3 を添加物として含むことを特徴とするガスセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【特許番号】特許第3081399号(P3081399)
【登録日】平成12年6月23日(2000.6.23)
【発行日】平成12年8月28日(2000.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−1915
【出願日】平成5年1月8日(1993.1.8)
【公開番号】特開平5−249064
【公開日】平成5年9月28日(1993.9.28)
【審査請求日】平成10年12月17日(1998.12.17)
【出願人】(000177612)株式会社ミクニ (332)
【出願人】(000246206)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【参考文献】
【文献】特開 昭56−89050(JP,A)
【文献】特開 昭50−137597(JP,A)
【文献】特開 昭57−44847(JP,A)
【文献】特開 昭58−30648(JP,A)
【文献】特開 昭52−146698(JP,A)
【文献】特開 昭51−132894(JP,A)
【文献】特開 昭58−122453(JP,A)
【文献】特開 昭55−107946(JP,A)
【文献】特開 昭54−136398(JP,A)
【文献】特開 昭51−19592(JP,A)
【文献】特開 昭49−21190(JP,A)
【文献】特開 昭51−40193(JP,A)
【文献】特開 昭62−90528(JP,A)
【文献】特開 昭62−90529(JP,A)
【文献】特開 昭49−119181(JP,A)
【文献】特開 昭59−34141(JP,A)
【文献】特開 昭59−192950(JP,A)
【文献】特公 昭50−10757(JP,B1)
【文献】特公 昭38−12300(JP,B1)