説明

ガスパージ用治具及び自動溶接装置

【課題】管部材を溶接するにあたり、管部材の内側をガスパージするガスパージ手段の設置作業の効率化及び自動化を図る。
【解決手段】溶接対象とされた管部材の開口端に被さるカップ形状を有すると共に、不活性ガスを外部からカップ内部21に導入する導入口22を備えるガスパージ用治具20を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスパージ用治具及び自動溶接装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
火力発電所等で用いられるボイラの内部には、複数の伝熱管内を流れる蒸気あるいは水が集められるヘッダが設置されている。このヘッダは、内部に蒸気あるいは水を集める管寄せと、当該管寄せと伝熱管とを接続するためのスタブ管とから構成されている。また、これらの管寄せとスタブ管とは溶接により固定されている。
ところで、管寄せとスタブ管とを完全溶け込み溶接する際には、溶接部の酸化を防止するため、溶接対象となるこれら管部材の内側を不活性ガスでガスパージする必要がある。
【0003】
特許文献1には、ガスパージする手段として、被溶接部材の裏側の溶接線に沿ってパージダムを形成し、パージダムに接続するチューブから溶接線に沿って不活性ガスをパージさせる手段、また、ガスノズルを搭載した装置を溶接線に沿って牽引駆動させ、溶接機に追従して、被溶接部材の裏側の溶接線に沿って不活性ガスをパージさせる手段等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−175522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術を管寄せとスタブ管との完全溶け込み溶接に適用することは困難である。すなわち、上記従来技術では、被溶接部材が板状であり、被溶接部材の裏側に十分な作業スペースがあるため、上記パージダムやガスノズル搭載装置等のガスパージ手段の設置は容易に可能であるが、管寄せやスタブ管のような管部材では、その裏側(内側)に十分な作業スペースがない。また、自動運転中の人の介在は、その人の安全を確保した上で行う必要がある。したがって、管部材の内側におけるガスパージ手段の設置が困難となっており、手間と時間がかかるという問題がある。また、近年、溶接作業のさらなる効率化が要求されており、時間短縮、人が介在する作業を減らす必要性に迫られている。
【0006】
なお、このような問題は、管寄せとスタブ管とを完全溶込み溶接する場合のみに生じるものではなく、他の管部材を完全溶込み溶接する場合にも生じる。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、管部材を溶接するにあたり、管部材の内側をガスパージするガスパージ手段の設置作業の効率化を目的とする。
さらに、本発明は、管部材を溶接するにあたり、管部材の内側をガスパージするガスパージ手段の設置作業の自動化を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0009】
第1の発明は、溶接対象とされた管部材の開口端に被さるカップ形状を有すると共に、不活性ガスを外部からカップ内部に導入する導入口を備えるガスパージ用治具を採用する。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記導入口は、上記カップ形状の底に形成されており、上記導入口に向かって上記カップ内部の形状が段階的に縮小しているという構成を採用する。
【0011】
第3の発明は、溶接トーチを有する多関節ロボットと、上記多関節ロボットに設けられると共に、上記第1または第2の発明であるガスパージ用治具を把持するクランプ装置と、を有する自動溶接装置を採用する。
【0012】
第4の発明は、上記第3の発明において、上記溶接トーチによるタッチセンシングによって検出した上記管部材の位置及び傾きに基づいて、上記多関節ロボット及び上記クランプ装置の駆動を制御する制御装置を有するという構成を採用する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ガスパージ用治具が溶接対象とされた管部材の開口端に被さるカップ形状を有している。したがって、カップ形状のガスパージ用治具を、溶接対象とされた管部材の開口端に被せるといった単純な作業で、ガスパージ手段の設置作業が完了する。また、管部材の開口端は、ガスパージ用治具のカップ形状及びその重量によりシールされるので、ガスパージの際に開口端から不活性ガスが容易にリークしてしまうことはなく、管部材の内側を適切にガスパージすることができる。したがって、本発明では、管部材を溶接するにあたり、管部材の内側をガスパージするガスパージ手段の設置作業の効率化が可能となる。
また、本発明のガスパージ用治具は単純な作業で設置が可能なため、溶接トーチを有する多関節ロボットにクランプ装置を設け、ガスパージ用治具を溶接対象とされた管部材の開口端に載置できるようにする。これにより、本発明では、管部材を溶接するにあたり、管部材の内側をガスパージするガスパージ手段の設置作業の自動化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動溶接装置を用いて製造されるヘッダの斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る自動溶接装置を示す構成図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るガスパージ用治具を示す構成図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るクランプ装置を示す構成図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る自動溶接装置による自動溶接のフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態に係る自動溶接装置によるガスパージ用治具のスタブ管への設置動作を説明するための図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るガスパージ用治具を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明に係るガスパージ用治具及び自動溶接装置の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。また、以下の実施形態においては、管寄せとスタブ管とを完全溶け込み溶接してヘッダを製造する場合を例示して説明を行う。
【0016】
図1は、本実施形態の自動溶接装置1(図2参照)を用いて製造されるヘッダ10の斜視図である。なお、図1においては、複数あるうちの一部のスタブ管12の図示を省略している。
ヘッダ10は、火力発電所等が備えるボイラの内部に設置され、図1に示すように、管寄せ11と、スタブ管12(管部材)とから構成されている。
【0017】
管寄せ11は、内部が中空とされた略円筒形状の部材であり、中心軸が水平となるように姿勢設定されている。この管寄せ11の周壁部11aに対しては、当該周壁部11aを貫通するスタブ管取付け穴11bが設けられている。このスタブ管取付け穴11bは、管寄せ11に接続されるスタブ管12の数だけ設けられており、図1に示すように、管寄せ11の上部に集められている。
【0018】
スタブ管12は、伝熱管(不図示)と管寄せ11とを接続する管部材である。なお、伝熱管は、内部に水を通し、石炭等を燃焼させることによって発生した熱量を水に伝熱する管部材である。このスタブ管12は、伝熱管の数だけ設けられており、内部の穴12aが管寄せ11のスタブ管取付け穴11bと接続されるように管寄せ11に溶接されている。なお、本実施形態においては、管寄せ11とスタブ管12とは完全溶込み溶接にて接合されている。また、スタブ管12の穴12aの直径は、管寄せ11のスタブ管取付け穴11bと略同一に設定されている。
【0019】
図2は、本実施形態の自動溶接装置1を示す構成図である。
図2に示すように、自動溶接装置1は、MAG溶接によって、管寄せ11とスタブ管12との溶接を行う溶接トーチ2を有する。ただし、MAG溶接に限られるものではなく、ガス溶接や他のアーク溶接を行う構成を採用することも可能である。溶接トーチ2は、多関節ロボット3の先端部3aに取り付けられている。
【0020】
多関節ロボット3は、先端部3aに取り付けられた溶接トーチ2を用い、管寄せ11とスタブ管12との溶接を自動で行うアームロボットである。本実施形態の多関節ロボットは、6軸アームロボットであり、先端部3aを任意の方向に任意の姿勢で移動させることが可能な構成となっている。多関節ロボット3の先端部3aには、溶接トーチ2の他に、クランプ装置30が設けられており、本実施形態のガスパージ用治具20を把持する構成となっている。
【0021】
図3は、本実施形態のガスパージ用治具20を示す構成図である。なお、図3(a)は、ガスパージ用治具20を部分的に断面で示した正面図であり、図3(b)は、図3(a)の矢視A図である。
ガスパージ用治具20は、管寄せ11とスタブ管12との完全溶け込み溶接を行う際に、溶接トーチ2が配置される側と逆側、すなわち、管内側を不活性ガスによってガスパージする際に用いられるものである。
【0022】
図3に示すように、ガスパージ用治具20は、溶接対象とされたスタブ管12の開口端(図1において符号12bで示す)に被さることが可能なカップ形状を有する。カップ内部21の形状は、スタブ管12の外部形状に応じて設計されている。具体的に、カップ内部21の形状は、有底円筒形状を有しており、その径は、スタブ管12の外径よりも所定量だけ大きく設計されている。
【0023】
また、ガスパージ用治具20は、不活性ガスを外部からカップ内部21に導入する導入口22を有する。導入口22は、カップ形状の底において、その中心部を貫通して形成されている。導入口22は、図2に示すように、ガスパージ装置5のガス供給チューブ6と接続され、カップ形状の底からカップ内部21に不活性ガスを導入する構成となっている。導入口22には、ガス供給チューブ6と接続するためのネジ溝23が形成されている。
【0024】
なお、ガスパージ装置5は、不活性ガスとしてアルゴン(Ar)を供給する構成となっている。ただし、アルゴン(Ar)に限られるものではなく、ガス溶接や他のアーク溶接を行う場合、例えば二酸化炭素や、アルゴンと二酸化炭素との混合ガス等を供給する構成を採用することも可能である。ガス供給チューブ6は、ある程度の柔軟性を有し、ガスパージ用治具20の移動に追従できる構成となっている。
【0025】
図2において、ガス供給チューブ6は、配線絡みを防止するため、多関節ロボット3の内部に配線され、先端部3a近傍から外部に導出し、ガスパージ用治具20と接続される構成となっている。このように、不活性ガスは、ガス供給チューブ6を通り、スタブ管12の開口端12bに被さったガスパージ用治具20を介してスタブ管12の内側に供給される。
【0026】
上記構成のガスパージ用治具20は、不活性ガスの供給圧等を考慮して、所定の重量を有する金属材(本実施形態ではステンレス鋼)から形成されている。すなわち、不活性ガスの供給圧等によって、ガスパージ用治具20が、スタブ管12の開口端12bに載置された所定の状態から、浮いたり動いたりすることがないように、その重量が調整されている。このため、カップ形状のガスパージ用治具20を、溶接対象とされたスタブ管12の開口端12bに被せるだけで、開口端12bのシール性が確保され、また、このような単純な作業で、ガスパージ手段の設置作業が完了する。
【0027】
図4は、本実施形態のクランプ装置30を示す構成図である。なお、図4(a)は、クランプ装置30を示す斜視図であり、図4(b)は、クランプ装置30のクランプハンド31を示す平面図である。
クランプ装置30は、上述のように単純な作業で設置が可能なガスパージ用治具20を多関節ロボット3に搭載させることにより、ガスパージ手段の設置作業の効率化から一歩進んで、当該作業そのものの自動化を図ろうとするものである。
【0028】
図4に示すように、クランプ装置30は、ガスパージ用治具20を把持するクランプハンド31と、クランプハンド31を昇降させるクランプアーム32と、を有する。
クランプハンド31は、ガスパージ用治具20を把持する一対の把持爪33を有する。一対の把持爪33は、ガスパージ用治具20の抓み部24(図3参照)を把持可能な形状を有している。なお、抓み部24は、ガスパージ用治具20のガス供給チューブ6が接続される部位近傍の外形を所定量絞ることにより形成されている。
【0029】
クランプハンド31は、エアシリンダ構造を有しており、エアの供給により一対の把持爪33が同期して開閉駆動する構成となっている。このクランプハンド31は、クランプアーム32に接続されている。
クランプアーム32は、クランプハンド31を所定方向に直動させる直動アクチュエータ34と、一対のガイドロッド35とを有する。クランプアーム32も同様に、エアシリンダ構造を有しており、エアの供給により直動アクチュエータ34が伸縮駆動する構成となっている。一対のガイドロッド35は、直動アクチュエータ34の伸縮に応じて伸縮し、クランプハンド31の移動をガイドする構成となっている。
【0030】
なお、クランプ装置30のうち、クランプアーム32については必ずしも必要はないが、本実施形態のように多関節ロボット3の先端部3aに設けられ、近傍に溶接トーチ2が配置されるような場合には有用である。すなわち、クランプハンド31の昇降により、溶接トーチ2との干渉を回避できるため、溶接トーチ2の溶接作業と、ガスパージ用治具20の載置作業と、を互いに阻害することなく円滑に行える点で有用である。
【0031】
図2に戻り、自動溶接装置1は、上述した各構成機器の動作を統括して制御する制御装置40を有している。制御装置40は、溶接トーチ2による管寄せ11とスタブ管12との溶接の自動化プログラム及びガスパージ用治具20のスタブ管12への設置の自動化プログラム等を記憶しているコンピュータシステムであり、各自動化プログラムに基づいて各構成機器の動作を制御する構成となっている。
【0032】
次に、本実施形態の自動溶接装置1による管寄せ11とスタブ管12との自動溶接の一連の動作について、図5及び図6を参照して説明する。なお、図5は、本実施形態の自動溶接装置1による自動溶接のフローチャートである。また、図6は、本実施形態の自動溶接装置1によるガスパージ用治具20のスタブ管12への設置動作を説明するための図である。
【0033】
図5に示すように、自動溶接装置1による自動溶接では、ガスパージ用治具載置工程(ステップS1)と、溶接工程(ステップS2)と、ガスパージ用治具除去工程(ステップS3)とを順に行う。
なお、以下の説明では、特に断りが無い限り、制御装置40が、主体者として以下の動作を制御する。
【0034】
ガスパージ用治具載置工程(ステップS1)は、溶接対象とされたスタブ管12の開口端12bに、カップ形状のガスパージ用治具を載置する工程である。
このガスパージ用治具載置工程(ステップS1)では、図6(a)に示すように、溶接対象とされたスタブ管12の上方にガスパージ用治具20を位置させる。詳しくは、制御装置40は、溶接対象とされたスタブ管12の位置及び角度に基づいて多関節ロボット3の関節を駆動させ、スタブ管12の上方にガスパージ用治具20を位置させる。
【0035】
その後、図6(b)に示すように、溶接対象とされたスタブ管12の開口端12bに、ガスパージ用治具20を載置させる。詳しくは、制御装置40は、溶接対象とされたスタブ管12の位置及び角度に基づいてクランプ装置30のクランプアーム32を伸長させ、ガスパージ用治具20がスタブ管12の開口端12bに被さった時点で、クランプハンド31の把持を解除させる。そして、クランプハンド31を退避させる。
【0036】
ここで、ガスパージ用治具20は、溶接対象とされたスタブ管12の開口端12bに被さるカップ形状を有している。したがって、カップ形状のガスパージ用治具20を、溶接対象とされたスタブ管12の開口端12bに被せるといった単純な作業で、ガスパージ手段の設置作業が完了する。また、スタブ管12の開口端12bは、ガスパージ用治具20のカップ形状及びその重量によりシールされるので、ガスパージの際に開口端12bから不活性ガスが容易にリークしてしまうことはなく、管部材の内側を適切にガスパージすることができる。
【0037】
溶接工程(ステップS2)は、ガスパージ用治具載置工程(ステップS1)後に、管寄せ11とスタブ管12とを完全溶け込み溶接する工程である。
この溶接工程(ステップS2)では、ガスパージ装置5から供給されてくる不活性ガスを、ガスパージ用治具20を介して開口端12bからスタブ管12の内側に導入させつつ、多関節ロボット3で溶接トーチ2を操作して、管寄せ11とスタブ管12とを完全溶け込み溶接する。
【0038】
ここで、ガスパージ用治具20によれば、溶接対象とされたスタブ管12の内側に、溶接中、継続的に不活性ガスを供給することで、溶接対象とされたスタブ管12の内側を部分的にガスパージすることが可能である。したがって、管寄せ11及びスタブ管12の全部を囲うチャンバー等を設置することや、他の穴11b,12a等を全て塞ぐといった作業をすることなく、効率的なガスパージが可能となる。
【0039】
ガスパージ用治具除去工程(ステップS3)は、溶接工程(ステップS2)後に、スタブ管12の開口端12bに被せられたガスパージ用治具20を除去する工程である。
このガスパージ用治具除去工程(ステップS3)では、上述したガスパージ用治具載置工程(ステップS1)と逆の順番、すなわち、図6(b)から図6(a)に示すように多関節ロボット3及びクランプ装置30の駆動を制御して、スタブ管12の開口端12bに被せられたガスパージ用治具20を除去する。
【0040】
以上により、自動溶接装置1による自動溶接の一連の動作が終了する。
なお、その後、溶接対象とされていた次のスタブ管12がある場合には、再び上述したガスパージ用治具載置工程(ステップS1)と、溶接工程(ステップS2)と、ガスパージ用治具除去工程(ステップS3)と、を順に行うこととなる。
【0041】
上述したガスパージ用治具20のスタブ管12への載置及び除去の自動化に関し、制御装置40は、溶接トーチ2によるタッチセンシングによって検出したスタブ管12の位置及び傾きに基づいて、多関節ロボット3及びクランプ装置30の駆動を制御する構成となっている。なお、タッチセンシングとは、周知のように、ワーク(管寄せ11やスタブ管12)と溶接ワイヤ間に電圧を印加しておき、ワークとワイヤとの接触による電圧降下を利用して、ワークの位置等を検出するものである。
【0042】
このタッチセンシングによって、制御装置40は、溶接対象とされたスタブ管12の位置及び傾きを検出する。溶接対象とされたスタブ管12の位置及び傾きが検出できれば、後はそれらに基づいて、ガスパージ用治具20のスタブ管12への設置の自動化プログラムのパラメータ(多関節ロボット3の関節角度等)を補正すればよい。これにより、図6(a)及び図6(b)に示すように、ガスパージ用治具20の載置及び除去の自動化が可能となる。
【0043】
したがって、上述の本実施形態によれば、溶接対象とされたスタブ管12の開口端12bに被さるカップ形状を有すると共に、不活性ガスを外部からカップ内部21に導入する導入口22を備えるガスパージ用治具20を採用することによって、カップ形状のガスパージ用治具20を、溶接対象とされたスタブ管12の開口端12bに被せるといった単純な作業で、ガスパージ手段の設置作業を完了できる。また、スタブ管12の開口端12bは、ガスパージ用治具20のカップ形状及びその重量によりシールされるので、ガスパージの際に開口端12bから不活性ガスがリークすることを抑制でき、スタブ管12の内側を適切にガスパージすることができる。したがって、本実施形態では、スタブ管12を溶接するにあたり、スタブ管12の内側をガスパージするガスパージ手段の設置作業の効率化が可能となる。
【0044】
また、上述の本実施形態によれば、溶接トーチ2を有する多関節ロボット3と、多関節ロボット3に設けられると共に、ガスパージ用治具20を把持するクランプ装置30と、を有する自動溶接装置1を採用することによって、ガスパージ用治具20は単純な作業で設置が可能なため、溶接トーチ2を有する多関節ロボット3にクランプ装置30を設け、ガスパージ用治具20を溶接対象とされたスタブ管12の開口端12bに載置できるようにする。これにより、本実施形態では、スタブ管12を溶接するにあたり、スタブ管12の内側をガスパージするガスパージ手段の設置作業の自動化が可能となる。
【0045】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0046】
例えば、上記実施形態では、図3に示すように、カップ内部21の形状が所定の径の有底円筒状であると説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。
図7は、別実施形態のガスパージ用治具20を示す構成図である。なお、図7(a)は、別実施形態のガスパージ用治具20を部分的に断面で示した正面図であり、図7(b)は、図7(a)の矢視B図である。
図7に示すように、導入口22に向かってカップ内部21の形状が段階的に縮小しているという構成を採用しても良い。詳しくは、カップ底に向かって内径が3段階で小さくなる形状となっている。この構成によれば、溶接対象となる管部材の径の種類が複数ある場合であっても、一つのガスパージ用治具20で対応が可能であるという利点がある。すなわち、管部材の径毎に、専用のガスパージ用治具20を製造せずとも良く、コスト安に寄与できる。
【0047】
また、例えば、上記実施形態では、制御装置40は、溶接トーチ2によるタッチセンシングによって検出したスタブ管12の位置及び傾きに基づいて、多関節ロボット3及びクランプ装置30の駆動を制御すると説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、溶接対象とされたスタブ管12の位置及び傾きを予め記憶しておけば、それらの値を用いればよいので、必ずしもタッチセンシングが必要となる訳ではない。
【符号の説明】
【0048】
1……自動溶接装置、2……溶接トーチ、3……多関節ロボット、12……スタブ管(管部材)、12b……開口端、20……ガスパージ用治具、21……カップ内部、22……導入口、30……クランプ装置、40……制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接対象とされた管部材の開口端に被さるカップ形状を有すると共に、不活性ガスを外部からカップ内部に導入する導入口を備えることを特徴とするガスパージ用治具。
【請求項2】
前記導入口は、前記カップ形状の底に形成されており、
前記導入口に向かって前記カップ内部の形状が段階的に縮小していることを特徴とする請求項1記載のガスパージ用治具。
【請求項3】
溶接トーチを有する多関節ロボットと、
前記多関節ロボットに設けられると共に、請求項1または2記載のガスパージ用治具を把持するクランプ装置と、を有することを特徴とする自動溶接装置。
【請求項4】
前記溶接トーチによるタッチセンシングによって検出した前記管部材の位置及び傾きに基づいて、前記多関節ロボット及び前記クランプ装置の駆動を制御する制御装置を有することを特徴とする請求項3記載の自動溶接装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−94795(P2013−94795A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237714(P2011−237714)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】