説明

ガス保安装置

【課題】特定の器具において正常な使用時間の範囲で遮断等の保安機能が作動することを防止し、適切な保安処理を機能させる。
【解決手段】ガス保安装置10は、流量計測部11で計測されたガス流量及びその流量変化特性から器具判別を行う器具判別部14と、流量区分別に設定した使用時間の経過によって保安処理を行う第1の保安機能部13と、器具判別結果を用いて、器具別に設定した使用時間の経過によって保安処理を行う第2の保安機能部15と、所定値以上の流量変化の有無を判定する流量変化判定部19と、保安処理を行う遮断弁17、報知部18とを備える。特定の器具が判別された場合、流量変化判定部19は流量変化判定用の閾値を小さく変更し、第1の保安機能部13、第2の保安機能部15は、流量変化判定部19により流量変化有りが判定された場合に使用時間のカウントをリセットする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋等において使用されるガスの流量等を計測し、異常使用を検出した場合に警報、遮断等の保安処理を行うガス保安装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス器具の使用の際には、ガスの消し忘れなどによる事故を未然に防止するために、ガスのユーザ宅やガス供給路を管理しているセンターなどにおいて、異常時に警報やガス供給路の遮断を行うシステムが普及してきている。従来のガス保安装置としては、ガス流量などに基づき、大流量が流れたときにガスの供給を遮断したり、微小流量で長時間ガスが流れたときに遮断したり、流量区分別に所定流量で所定時間ガスが流れたときに遮断するものなどが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図9は従来のガス遮断装置の構成例を示す図である。この従来例のガス遮断装置は、ガスの供給管101、メータコック102、ガスメータ103、緊急遮断弁104、制御装置106を有する。ガスメータ103には、ガスの供給管101を流れる流量を計測する流量測定装置105が設けられる。また、制御装置106用の電源となる電池107、緊急遮断弁104用の電源となる電池108が設けられる。
【0004】
制御装置106は、流量測定装置105により測定された一定の時間間隔毎のガスの流量を監視し、ガスの使用時間を計測する。そして、所定の流量範囲毎に設定された継続使用安全時間を超えたとき、異常と判定して保安処理のためにガスの停止を指示する。この保安処理の際には、緊急遮断弁104を閉止する閉止信号を送出し、緊急遮断弁104を作動させてガスの供給を停止する。
【0005】
一般的に、ガス器具はガス消費量が決まっており、通常家庭内で使われる器具は次のような範囲である。例えば6Bガスの場合、大型器具の口火0.02〜0.06m3/h、炊飯器0.2〜0.4m3/h、ストーブ0.3〜0.7m3/h、湯沸器1.5〜6.0m3/h、風呂釜1.2〜2.2m3/hである。また、それぞれの器具が連続的に使用される時間は、ストーブのように10時間程度使用されるものから湯沸器のように長くても15〜30分程度しか使われないものもある。やはり器具の種類によっておおよその範囲が決まっている。従って、例えば全体で3m3/hの流量が計測されていると、通常そのときの使用機器は湯沸器であると判断されるため、なんらかの流量変化がなく、15〜30分流れている場合は正常であるが、60分を超えて流れている場合は、器具が正常に使用されておらずガス栓からガスが流出しているような異常が発生しているのでガスを遮断すべきと判断する。3m3/h程度の流量が計測されていても、その流量に変動が観察される場合、他の器具が使用開始、或いは使用停止されたことを意味するため、正常な家庭生活が営まれていると判断し遮断する必要がない。
【0006】
2台以上の器具が同時に使用される場合、例えば2m3/hの風呂釜と0.5m3/hのストーブを2台、計3台の器具を同時に1時間以上使用する場合、合計流量が3m3/hのガス流量が計測されるため、湯沸器の異常使用と判断して遮断する可能性がある。
【0007】
よって、制御装置106には、ガス器具毎に想定されるガス消費量(器具使用時の流量)と継続使用安全時間とを予め記憶しておく。例えば図10に示す流量区分と継続使用安全時間とを記憶させておく。制御装置106は、流量測定装置105により測定された一定の時間間隔毎の流量から平均流量を算出し、平均流量が変化せず何分継続するかを追跡して監視する。そして、制御装置106は、ガスの平均流量及びその継続時間と、予め記憶させておいた流量区分ごとの定められた継続使用安全時間とを比較し、継続使用安全時間をオーバーした場合、異常使用と判定して緊急遮断弁104に閉止信号を出力し、ガスの供給を遮断する。
【特許文献1】特開2001−264141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したような従来の装置では、流量区分ごとの継続使用安全時間によって一律に遮断等の保安処理を行うため、使用している器具の種類によっては、正常な使用時間の範囲においてもガスが遮断されてしまう早切れが生じたり、消し忘れなどの際に遮断までに長い時間がかかるようなことが起こり得る。例えば、ファンヒータの場合、使用時の流量変化が小さいため、通常の暖房使用においても継続使用安全時間に達してガスが遮断されてしまうことがある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、特定の器具において正常な使用時間の範囲で遮断等の保安機能が作動することを防止し、適切な保安処理を機能させることが可能なガス保安装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ガス供給管に接続され、ガス流量を計測する流量計測部と、前記流量計測部により計測されたガス流量及びその流量変化特性から、前記ガス供給管に接続され前記ガス供給管を流れるガスを使用するガス器具の判別、及び前記ガス供給管における漏れの判別を含む器具判別を行う器具判別部と、前記計測されたガスの流量に基づき、流量区分別に設定した使用時間の経過によって保安処理を行う第1の保安機能部と、前記器具判別結果を用いて、前記計測されたガスの流量に基づき、器具別に設定した使用時間の経過によって保安処理を行う第2の保安機能部と、前記ガスの流量における所定値以上の流量変化の有無を判定するもので、前記器具判別結果により特定の器具が判別された場合、流量変化判定用の閾値を小さく変更する流量変化判定部とを備え、前記第1の保安機能部と前記第2の保安機能部の少なくとも一方において、前記流量変化判定部により流量変化有りが判定された場合に使用時間のカウントをリセットするガス保安装置を提供する。
これにより、特定の器具が判別された場合、流量変化判定用の閾値が小さくなるので流量変化が検出され易くなり、温調制御等の小さな流量変化でも第1の保安機能部や第2の保安機能部において使用時間のカウントがリセットされる。このため、正常な使用時間の範囲で遮断等の保安機能が作動することが防止され、適切な保安処理を機能させることが可能となる。
【0011】
また、本発明は、上記のガス保安装置であって、前記器具判別結果により特定の器具が判別された場合、前記第1の保安機能部と前記第2の保安機能部の少なくとも一方において、現在使用中の器具の使用停止または他の器具の使用開始が検出されるまで、当該器具の連続使用時間を監視し、所定の連続使用時間の経過によって保安処理を行うものを含む。
これにより、特定の器具が判別された場合、流量変化判定用の閾値の変更により温調制御等の小さな流量変化でも流量変化有りが検出され、第1の保安機能部や第2の保安機能部において使用時間のカウントがリセットされるが、当該器具の連続使用時間を監視し、所定の連続使用時間の経過によって保安処理を行うことによって、確実に保安処理を作動させることができ、安全性を向上させることが可能となる。
【0012】
また、本発明は、上記のガス保安装置であって、前記第1の保安機能部及び前記第2の保安機能部は、前記保安処理として、警報、ガス供給の遮断、ユーザへの通報、センターへの通報のうちの少なくとも一つを含む処理を行うものを含む。
これにより、流量や使用器具、漏れなどの状況に応じて各種の保安処理を行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、特定の器具において正常な使用時間の範囲で遮断等の保安機能が作動することを防止し、適切な保安処理を機能させることが可能なガス保安装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明の実施形態に係るガス保安装置とガス器具の設置形態を示す図である。本実施形態では、ガスのユーザの家屋等に設置されるガスメータとともに設けられるガス保安装置の構成例を示す。
【0015】
各ユーザ宅のガス供給管1の入口部分にガスメータ2が設置され、このガスメータ2を経由した後のガス配管3が分岐してユーザ宅で使用する種々のガス器具が設置された場所まで配管されガスが供給される。例えば、屋外にはガス給湯器4が設置され、このガス給湯器4で生成される湯が水配管を介して台所の給湯栓5、浴槽やシャワー装置が設置された風呂6、リビング等に設置された床暖房7に供給され、種々の使用形態を形成している。また、屋内にあっては、台所に設置されたガステーブル8、リビングや寝室等に設置されたガスファンヒータ9にガスが供給され、必要に応じて適宜使用される。
【0016】
図2は本発明の実施形態に係るガス保安装置の構成を示すブロック図である。このガス保安装置は、ガスメータ2等において構成されるものである。本実施形態のガス保安装置10は、ユーザの家屋等に敷設されたガス供給管1の途中に設けられ、このガス供給管1の下流側のガス配管3には複数のガス器具として器具A21、器具B22、器具C23が接続されている。これらの器具21〜23は、上記のガス給湯器4、ガステーブル8、ガスファンヒータ9などが対応する。ガス保安装置10は、屋外または屋内の所定位置に設置される。なお、接続されるガス器具の数は図示例に限るものではなく、任意である。また、ユーザ宅としては、一般住宅の家屋だけでなく、共同住宅、店舗、工場、その他の各種施設を含むものとする。
【0017】
ガス保安装置10は、流量計測部11、流量演算部12、第1の保安機能部13、器具判別部14、第2の保安機能部15、流量変化判定部19、記憶部16、遮断弁17、報知部18を有して構成される。流量計測部11は、ガス供給管1の経路中に接続された超音波流量計等により構成され、超音波信号を用いてガス供給管1内のガス流により生じる伝搬時間差を求め、ガスの瞬時流量を検出するものである。流量演算部12は、検出された瞬時流量を基に、瞬時流量を積算してガス流量を算出したり、後述する器具判別のための流量差分値を算出するなど、流量に関する各種演算を行うものである。
【0018】
第1の保安機能部13は、流量演算部12によって算出されたガスの流量値と、ガス使用時の流量区分ごとに設定記憶された継続使用安全時間とに基づき、流量区分ごとの使用時間による保安処理を実行するものである。器具判別部14は、流量演算部12で算出された流量差分値に基づき、予め設定記憶された器具別の判定値によって流量変化量や変化時間等のガス流量の流量変化特性を判定し、ガス供給管1をガスが流れているときに使用されているガス器具の判別を行うものである。
【0019】
第2の保安機能部15は、器具判別部14による器具判別結果を用いて、流量演算部12によって算出されたガスの流量値と、器具ごとに設定記憶された継続使用安全時間とに基づき、器具ごとの使用時間による保安処理を実行するものである。なお、器具判別部14における器具の判別において、器具とともにガス漏れを判別するものとする。第2の保安機能部15は、ガス漏れの場合は、所定流量が継続した等によってガス漏れであると判定された際に、保安処理を実行する。
【0020】
流量変化判定部19は、流量演算部12によって算出されたガスの流量値において、所定値以上の流量変化の有無を判定するものである。このとき、器具判別部14による器具判別結果を用いて、特定の器具が使用されている場合、流量変化判定用の閾値を変更する。なお、特定の器具において閾値を変更するだけでなく、器具毎に設定した閾値を用いて流量変化を判定するようにしても良い。流量変化判定部19による流量変化判定結果は、第1の保安機能部13における流量区分別の使用時間のカウント、及び第2の保安機能部15における器具別の使用時間のカウントに用いられる。第1の保安機能部13、第2の保安機能部15は、流量変化判定結果を受けて、所定値以上の流量変化があった場合、使用時間のカウントをリセットし、その後該当する流量区分や器具に応じて使用時間のカウントを再開する。なお、この流量変化判定結果は、第1の保安機能部13のみで用いても良いし、第1の保安機能部13及び第2の保安機能部15の両方で用いても良いし、第2の保安機能部15のみで用いても良い。
【0021】
記憶部16は、第1の保安機能部13で用いる流量区分ごとの継続使用安全時間情報、器具判別部14で用いる器具別の器具判定値情報、第2の保安機能部15で用いる器具ごとの継続使用安全時間情報、流量計測部11により計測された瞬時流量値情報、流量演算部12により算出されたガス流量値情報や流量差分値情報、流量変化を判定するための閾値情報、使用器具や使用状況の履歴情報など、ガス保安装置10にて用いる各種情報を記憶するものである。
【0022】
遮断弁17は、ガス供給管1の経路中に接続され、第1の保安機能部13または第2の保安機能部15からの指示に基づいてガス供給管1を閉塞してガスの供給を遮断するものである。報知部18は、LEDや液晶ディスプレイ等の表示部などから構成され、第1の保安機能部13または第2の保安機能部15からの指示に基づいて異常状態の検知をユーザに報知して警報を行うものである。報知部18は、表示部の他に、スピーカやブザー等の発音部などを備えて音による警報を行うものであってもよい。
【0023】
ここで、流量演算部12、第1の保安機能部13、器具判別部14、第2の保安機能部15、流量変化判定部19は、マイクロコンピュータ(マイコン)等を構成するプロセッサ及び動作プログラムにより構成され、プロセッサにおいて所定の動作プログラムを実行して対応する処理を行うことにより、各機能が実現される。また、記憶部16は、フラッシュROM、RAM等のメモリにより構成される。
【0024】
上記の流量計測部11及び流量演算部12の動作について詳しく説明する。流量計測部11は、流路の流れ方向に対抗して一対の超音波送受信器が配置され、これらの送受信器で交互に超音波を送受信させることによって、ガス流に対して順方向と逆方向に超音波の伝搬を行う。そして、上流から下流への超音波伝播時間と、下流から上流への超音波伝播時間とから流速を求め、この流速と流路の断面積とからガス流の瞬時流量を算出する。流量演算部12は、流量計測部11で計測した瞬時流量を積算してガス流量を算出したり、瞬時流量を基に器具判別のための流量差分値などを算出する。
【0025】
なお、流量計測部としては、上記超音波を用いたものに限らず、種々の方式のものを適用可能である。例えば、流路内に熱線式センサを設け流れにより変化するインピーダンスより流量を求めるもの、計量膜によりガス量を検出し計量膜の機械的動作を磁石とリードスイッチあるいは磁気抵抗素子等により電気的パルス信号として流量を検出するもの、などがある。
【0026】
次に、器具判別部14の動作について詳しく説明する。器具判別部14は、流量演算部12にて算出された時系列のガスの流量値を基に、その流量パターンや流量区分(流量帯)などから使用されている器具、或いは漏れの判別を行う。図3及び図4を参照して器具判別の具体例を示す。図3はガス器具の流量パターンの例を示す図、図4は各器具別の流量パターンの特徴を対照して記載した図である。
【0027】
図3において、(a)はコンロの流量パターン、(b)はファンヒータの流量パターンである。(a)のコンロと(b)のファンヒータの使用時のガス流量は、ほぼ同じような流量帯に存在している。コンロを点火する場合、最大流量付近で着火する構成となっており、着火後になべ底からあふれる炎を少なくするため、火力を絞る操作が行われるケースが多く、ひげ状の流量変化が発生する。また、火力調整後の流量は、最大(例えば、400L/h程度)からとろ火(例えば、30L/h程度)までの任意の流量値で安定して使用される。これに対し、ファンヒータを点火する場合、最大流量で着火する構成となっており、着火後は所定時間経過後に温度調整用の制御動作が行われる。この温度調整用の制御動作は、最大から最小までを複数段階の流量値によって制御する構成であり、緩やかな流量変化や階段状の流量変化が発生する。
【0028】
また、図3において、(c)はコンロの流量パターン、(d)は給湯器の流量パターンである。(c)のコンロと(d)の給湯器の使用時のガス流量を比較すると、コンロが例えば30L/h程度〜400L/h程度までの範囲に対して、給湯器の方が比較的多く、使用される水量や水温、設定温度に応じて、例えば400L/h〜4000L/h程度の範囲で使用される。
【0029】
上記のような流量パターンの特徴を器具別にまとめて示したのが図4である。ここでは漏れも含めて示してある。例えば、コンロは、流量帯:中〜小、変化の速さ:速い、変化量:任意、変化の形:任意、ひげ状変化:あり、安定度合い:安定、という特徴を持っている。ファンヒータ(FH)は、流量帯:中〜小、変化の速さ:遅い、変化量:ほぼ所定量、変化の形:階段状、ひげ状変化:なし、安定度合い:安定、という特徴を持っている。ストーブは、流量帯:中〜小、変化の速さ:速い、変化量:ほぼ所定量、変化の形:2段階、ひげ状変化:あり、安定度合い:安定、という特徴を持っている。給湯器は、流量帯:大〜中、変化の速さ:遅い、変化量:任意、変化の形:任意、ひげ状変化:なし、安定度合い:非安定、という特徴を持っている。ガス漏れは、流量帯:大〜小、変化の速さ:速いまたは遅い、変化量:任意、変化の形:任意、ひげ状変化:なし、安定度合い:非安定、という特徴を持っている。これらの器具別の流量パターンの特徴情報を器具判定値情報として記憶部16に保持しておく。
【0030】
器具判別部14は、流量演算部12から得られた流量パターンと記憶部16に保持してある器具判定値情報とを参照し、上記のような流量パターンの特徴を検出して、その特徴から使用されている器具または漏れを判別する。例えば、図3(a)と図3(b)のように同じような流量帯であっても、ひげ状変化の有無や立上り後の流量変化の特徴から、コンロまたはファンヒータを判別することが可能である。また、図3(c)と図3(d)のように、流量帯に特徴がある場合は、例えば流量値が大きい場合、その器具は給湯器であると判別することが可能である。
【0031】
次に、本実施形態における保安機能について詳しく説明する。まず、第1の保安機能部13による保安機能について説明する。図5は第1の保安機能部による保安機能の例を示す図である。図5は器具使用時の流量パターンの時系列的な変化と使用継続時間のカウント、及び継続使用安全時間経過後の遮断について示してある。
【0032】
第1の保安機能部13は、流量演算部12から得られたガスの流量値を監視し、ガスが使用開始されて流量が立上ると、流量区分に応じた使用継続時間t1のカウントを行う。図5において縦方向の矢印で示すように、所定値以上の流量変化を検出する毎に、使用継続時間のカウントをリセットする。その後、変化後の流量区分に応じた使用継続時間t2のカウントを再開する。以降、流量変化を検出する毎に使用継続時間のカウントをリセットし、流量区分に応じた使用継続時間t3、t4のカウントを繰り返し行う。そして、流量変化が検出されず、使用継続時間t4がその流量区分に設定された継続使用安全時間を経過した時点で、第1の保安機能部13が遮断や警報などの保安処理を行う。継続使用安全時間としては、図10に示す流量区分別に設定した継続使用安全時間を用いる。
【0033】
保安処理としては、警報を行う、警報を行った後に遮断する、遮断する、遮断後に再度復旧させる自動復帰確認機能など、種々の処理やその組み合わせが考えられる。警報を行う場合は、通信回線を用いて、ユーザが登録している固定電話や携帯電話に遮断や遮断予告の通報をしたり、ガス供給路を管理しているセンターに通報するようなことも可能である。
【0034】
遮断を行う場合は、第1の保安機能部13から遮断弁17に遮断指示信号を送出し、この遮断指示信号に応じて、遮断弁17を駆動してガス供給管1を閉じ、ガスの供給を遮断する。警報を行う場合は、第1の保安機能部13から報知部18に警報指示信号を送出し、この警報指示信号に応じて、報知部18においてLED点灯や液晶ディスプレイへの文字や絵の表示などを行い、異常を報知することで警報を行う。なお、報知部18において音声やブザーなどで音を発生して異常報知し、警報を行ってもよい。
【0035】
このように、第1の保安機能部13により、流量区分ごとに設定した継続使用安全時間によって、通常の範囲を超えた長時間使用や消し忘れなどがあった場合にガスの遮断等の保安処理を実行することができる。
【0036】
続いて、第2の保安機能部15による保安機能について説明する。図6は第2の保安機能部による保安機能の例を示す図である。図6では、器具使用時の流量パターンの時系列的な変化に対する第1の保安機能部による使用継続時間のカウント、及び第2の保安機能部による器具別の使用監視時間のカウント、並びに継続使用安全時間経過後の遮断について示してある。ここでは器具としてはコンロの例を挙げる。
【0037】
第2の保安機能部15は、器具判別部14による器具判別結果に基づき、器具ごとに設定された使用監視時間によって、流量演算部12から得られたガスの流量値を監視し、器具別の使用監視時間をカウントする。この際、第1の保安機能部13は並列に作動した状態であり、第2の保安機能部15は第1の保安機能部13とは全く別に作動する。器具判別部14によって流量パターンを判別し、所定のコンロ判別期間において使用器具がコンロと判定された場合、第2の保安機能部15は、コンロの使用監視時間tc2のカウントを開始する。そして、使用監視時間tc2がコンロに対して設定された継続使用安全時間を経過した時点で、第2の保安機能部15が遮断や警報などの保安処理を行う。
【0038】
遮断を行う場合は、第2の保安機能部15から遮断弁17に遮断指示信号を送出し、この遮断指示信号に応じて、遮断弁17を駆動してガス供給管1を閉じ、ガスの供給を遮断する。警報を行う場合は、第2の保安機能部15から報知部18に警報指示信号を送出し、この警報指示信号に応じて、報知部18においてLED点灯や液晶ディスプレイへの文字や絵の表示などを行い、異常を報知することで警報を行う。なお、報知部18において音声やブザーなどで音を発生して異常報知し、警報を行ってもよい。
【0039】
このとき、第1の保安機能部13により流量区分による使用継続時間tc1のカウントが並行してなされており、流量変化を検出する毎に流量帯に応じた使用継続時間を監視する。そして、コンロの流量帯に該当する継続使用安全時間を使用継続時間tc1が越えた時点で、第2の保安機能部15による保安機能が作動していない場合は、第1の保安機能部13が遮断や警報などの保安処理を行う。
【0040】
また、第2の保安機能部15は、器具判別部14によりガス漏れが判別された場合、その流量帯に応じた漏れ監視時間をカウントし、所定の漏れ監視期間を経過したときに遮断や警報などの保安処理を行う。
【0041】
このように、第2の保安機能部15により、器具ごとに設定した継続使用安全時間によって、器具別に流量の特徴に応じた監視が可能であり、各器具で適正な範囲を超えた長時間使用や消し忘れなどがあった場合にガスの遮断等の保安処理を実行することができる。また、漏れを検出した場合は、漏れのパターンに応じて適切な遮断等の保安処理を実行することができる。
【0042】
次に、本実施形態の流量変化判定部19の動作について詳しく説明する。流量変化判定部19は、流量演算部12で得られたガスの流量値から、所定値以上の流量変化があるかどうかを判定する。この流量変化判定において、器具判別部14による器具判別結果を用いて、特定の器具が使用されている場合、判定用の閾値を変更する。例えば、器具判別部14によってファンヒータの使用が判別された場合、流量変化判定用の閾値を小さく変更し、少量の流量変化についても流量変化有りと判定するようにする。この流量変化判定結果を用いて、流量変化有りと判定された時点で、第1の保安機能部13、第2の保安機能部15は、使用時間のカウントをリセットする。
【0043】
図7は本実施形態におけるファンヒータの流量パターンに対する流量変化判定の例を示す図である。図7はファンヒータ使用時の流量パターンの時系列的な変化と使用継続時間のカウントについて示してある。ここでは特定器具としてファンヒータを例にとり、流量変化判定部19による流量変化判定結果を、第1の保安機能部13による流量区分別の使用継続時間のカウントにおいて用いる場合を説明する。なお、流量変化判定結果は第2の保安機能部15による器具別の使用監視時間のカウントに適用することも可能である。
【0044】
ファンヒータ(FH)の温調制御は、最大から最小までを所定の段階に分けてステップ的なガス流量変化により制御を行う。このため、ファンヒータの起動後、室温が設定温度付近になると燃焼量が最小にとなり、その後流量変化は1ステップ程度の少ない流量変化が多くなる。図7では、1ステップの流量変化の増減が2回発生した後、2ステップの流量変化の増減が1回発生した場合を示している。ここで、使用時の最小流量から1ステップ目の流量変化をΔQ1、2ステップ目の流量変化をΔQ2としている。
【0045】
第1の保安機能部13における使用継続時間のカウントは、流量変化が所定値以上になり、流量変化判定部19で流量変化有りと判定された時点でリセットされ、再度カウント開始される。しかし、ファンヒータの場合、前記温調制御によっては流量変化が小さいため、流量変化有りと判定されずに使用継続時間のカウントが継続され、所定の継続使用安全時間の経過によって保安処理が実行され、ガスを遮断してしまうことがある。そこで、本実施形態では、流量変化判定部19は、器具判別部14での器具判別結果によりファンヒータと判別した場合、流量変化有りを判定する閾値を、初期状態や他の器具使用時などの通常の閾値よりも小さく切り替えて、流量変化を検出し易くする。図7の例では、閾値Qt1の値を温調制御の1ステップの流量変化分ΔQ1、ΔQ2よりも小さく設定する。これにより、保安機能によるファンヒータの早切れを防止することができる。
【0046】
また、第1の保安機能部13では、ファンヒータと判別した場合、複数の流量変化条件を判定し、ファンヒータ使用時のFH連続使用時間を監視する。図8は本実施形態におけるファンヒータの流量パターンに対する保安機能の例を示す図である。図8はファンヒータ使用時の流量パターンの時系列的な変化と使用継続時間及びFH連続使用時間のカウント、並びに継続使用安全時間経過後の遮断について示してある。
【0047】
上記のように流量変化判定用の閾値を小さくすると、ファンヒータ使用時は使用継続時間のリセットが多発して使用時間の監視ができない場合が起こり得る。そこで、本実施形態では、第1の保安機能部13は、器具判別部14での器具判別結果によりファンヒータ(FH)と判別した場合、FH連続使用時間を別途カウントし、所定の継続使用安全時間が経過した時点で保安処理を実行し、警報またはガスを遮断する。このFH連続使用時間は、複数の流量変化条件によって現在の器具の使用停止や新たな器具の使用開始が判定されない限り、ファンヒータの判別後から継続してカウントする。これにより、ファンヒータの消し忘れに対するガス供給の遮断や警報が可能になる。
【0048】
図8に示すように、使用継続時間のカウントは、温調制御によって小さな流量変化があっても閾値Qt1以上のため、その都度流量変化有りと判定されてリセットされ、通常の使用範囲で保安機能が機能することは防止される。また、FH連続使用時間のカウントは、ファンヒータの判別後から継続してカウントされ、継続使用安全時間に達した時点で、遮断や警報などの保安処理が行われる。このFH連続使用時間のカウント時には、複数の流量変化条件によって使用停止や使用開始を判定し、いずれかの流量変化条件に該当した場合にFH連続使用時間のカウントをリセットする。流量変化条件としては、(1)着火流量によって別器具の立ち上がりを検出した場合、(2)ファンヒータの温調制御時の制御量相当を超える所定値以上の流量変化を検出した場合、(3)ガス使用が停止したことを検出した場合、などを用いる。ここで、着火流量は、所定時間で所定値以上の流量変化の検出によって判定可能である。所定値以上の流量変化については、温調制御の1ステップの流量変化分ΔQ1、ΔQ2よりも大きい閾値Qt2を設定し、この閾値Qt2以上の流量変化があるかどうかによって判定可能である。この場合、所定時間の平均流量や流量サンプル毎の瞬時流量の変化を判定すればよい。ガス使用の停止は、流量ゼロの検出によって判定可能である。
【0049】
上述したように、本実施形態では、第1の保安機能部13によって、流量区分に応じた所定の使用継続時間の経過によって所定以上の長時間使用や消し忘れに対する保安機能を作動させる。また、第2の保安機能部15によって、器具判別結果に基づきその器具で想定される使用継続時間以上の経過によって器具別の長時間使用や消し忘れに対する保安機能を作動させたり、ガス漏れ判別結果に基づきガス漏れの特徴や流量帯に応じた漏れ監視時間の経過によって状態別の漏れに対する保安機能を作動させる。この際、流量変化判定部19において、所定値以上の流量変化の有無を判定し、流量変化有りと判定された場合、使用時間のカウントをリセットする。この流量変化判定において、器具判別結果によりファンヒータなどの特定の器具の使用が判別された場合には、流量変化判定用の閾値を小さく変更し、小さな流量変化でも使用時間がリセットされ易くする。またこれに伴い、第1の保安機能部13や第2の保安機能部15では、ファンヒータなどの特定の器具を判別した場合、複数の流量変化条件によって現在の器具の使用停止や新たな器具の使用開始の有無を判定し、特定器具の連続使用時間を監視する。
【0050】
本実施形態によれば、ファンヒータ等の特定の器具使用時における温調制御の流量変化量に関して、小さな流量変化であっても流量変化有りと判定できるので、流量変化による使用時間のリセットを細かく行うことが可能になる。このため、通常の使用範囲での保安機能の早期作動を抑制でき、器具使用時の早切れを防止することができる。また、器具使用時には、使用停止や他の器具の使用開始があるまで連続使用時間を監視することで、流量変化による使用時間のリセット動作に対するバックアップ的な動作が可能になる。これにより、動作時に温調制御などの流量変化がある器具の連続使用を監視でき、消し忘れなどに対して確実に保安機能を機能させることができる。特に、上記の早切れ防止の動作に対して、使用時間がリセットされても所定の連続使用時間で保安機能を作動させることができるので、安全性を向上でき、保安能力を高めることができる。
【0051】
なお、本発明は上記の実施形態において示されたものに限定されるものではなく、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、特定の器具において正常な使用時間の範囲で遮断等の保安機能が作動することを防止し、適切な保安処理を機能させることが可能となる効果を有し、家屋等において使用されるガスの流量等を計測し、異常使用を検出した場合に警報、遮断等の保安処理を行うガス保安装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態に係るガス保安装置とガス器具の設置形態を示す図
【図2】本発明の実施形態に係るガス保安装置の構成を示すブロック図
【図3】ガス器具の流量パターンの例を示す図
【図4】各器具別の流量パターンの特徴を対照して記載した図
【図5】第1の保安機能部による保安機能の例を示す図
【図6】第2の保安機能部による保安機能の例を示す図
【図7】ファンヒータの流量パターンに対する流量変化判定の例を示す図
【図8】ファンヒータの流量パターンに対する保安機能の例を示す図
【図9】従来のガス遮断装置の構成例を示す図
【図10】流量区分と継続使用安全時間とを示す図
【符号の説明】
【0054】
1 ガス供給管
2 ガスメータ
3 ガス配管
4 ガス給湯器
5 給湯栓
6 風呂
7 床暖房
8 ガステーブル
9 ガスファンヒータ
10 ガス保安装置
11 流量計測部
12 流量演算部
13 第1の保安機能部
14 器具判別部
15 第2の保安機能部
16 記憶部
17 遮断弁
18 報知部
19 流量変化判定部
21、22、23 器具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給管に接続され、ガス流量を計測する流量計測部と、
前記流量計測部により計測されたガス流量及びその流量変化特性から、前記ガス供給管に接続され前記ガス供給管を流れるガスを使用するガス器具の判別、及び前記ガス供給管における漏れの判別を含む器具判別を行う器具判別部と、
前記計測されたガスの流量に基づき、流量区分別に設定した使用時間の経過によって保安処理を行う第1の保安機能部と、
前記器具判別結果を用いて、前記計測されたガスの流量に基づき、器具別に設定した使用時間の経過によって保安処理を行う第2の保安機能部と、
前記ガスの流量における所定値以上の流量変化の有無を判定するもので、前記器具判別結果により特定の器具が判別された場合、流量変化判定用の閾値を小さく変更する流量変化判定部とを備え、
前記第1の保安機能部と前記第2の保安機能部の少なくとも一方において、前記流量変化判定部により流量変化有りが判定された場合に使用時間のカウントをリセットするガス保安装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガス保安装置であって、
前記器具判別結果により特定の器具が判別された場合、前記第1の保安機能部と前記第2の保安機能部の少なくとも一方において、現在使用中の器具の使用停止または他の器具の使用開始が検出されるまで、当該器具の連続使用時間を監視し、所定の連続使用時間の経過によって保安処理を行うガス保安装置。
【請求項3】
請求項1に記載のガス保安装置であって、
前記第1の保安機能部及び前記第2の保安機能部は、前記保安処理として、警報、ガス供給の遮断、ユーザへの通報、センターへの通報のうちの少なくとも一つを含む処理を行うガス保安装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−8349(P2010−8349A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170709(P2008−170709)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【出願人】(000168643)高圧ガス保安協会 (92)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】