説明

ガス圧力調整器

【課題】バルク貯槽に接続して使用する液化石油ガス(LPガス)用の圧力調整器においてLPガスの再液化による圧力調整器の弁部の異常振動を防止すること。
【解決手段】ガス圧力調整器のガス圧力調整用ダイヤフラムに連動してガス通路に設けられたノズル3を開閉する弁体2の主要バックバネ4に、該バックバネ4とは別体の弾性部材を補助バックバネ4a、4b・・・として併用した異常振動防止機能付の圧力調整器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バルク貯槽に接続して使用する液化石油ガス(LPガス)用の圧力調整器で、温度や急激な圧力変化により、再液化したLPガスが調整器内に流入すると調整器の弁部に振動現象が発生することがある。
この発明は、そのような圧力調整器の弁部の異常振動を防止する手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7により従来の圧力調整器の構成作用を簡単に説明する。
1は圧力調整器の断面図で、未使用時には調整バネ7の力でダイヤフラム5は下方向に押され、弁棒8と弁体2も連動してノズル3から離れて開状態となっている。入口側Aをバルク貯槽のガス取出し弁に接続し、出口側Bを燃焼器に接続してガス取出し弁を開くと、バルク貯槽内の高圧のガス入口通路からノズル3を通って減圧室5aに入る。このとき調整器の出口側が閉じられていると、減圧室5aのガス圧力は高くなり、ダイヤフラム5を押し下げている調整バネ7の力に打ち勝って、ダイヤフラム5は上方に押し上げられる。
これにより弁棒8が下方向に押されることはないので、弁体2はバックバネ4の力で上方に押し上げられ、ノズル3を閉止するのでガス出口通路へのガスの流入は止まる。燃焼器を使用し始めると減圧室5aの圧力は下がり、ダイヤフラム5も下がるから、これに伴って弁体2がノズル3から離れて高圧側からガスが流入する。
【0003】
燃焼器側のガスの使用量が多くなると出口側のガス圧が低くなるので通気孔6からダイヤフラム5に連通するガス圧も低くなりダイヤフラム5が調整バネ7に押されて下方向へ動いて弁棒8を押し下げ、弁体2とノズル3との間隔が大きくなり高圧側からのガスの供給量も多くなる。逆に燃焼器側のガスの使用量が少なくなると出口側のガス圧が高くなるのでダイヤフラム5に連動する弁棒8は弁体2を引き上げる方向に作用するので、ノズル3と弁体2との間隔が小さくなり燃焼器側へのガスの供給量が減少する。
こうして、ガス圧力調整器1は燃焼器側のガスの消費量に応じて常に安定したガス圧でLPガスを供給するものであるが、温度や急激な圧力変化により、再液化したLPガスが調整器内に流入すると調整器の弁部に異常な振動現象が発生することがある。
【0004】
そこで、そのような弁部の異常振動を防止するために、特許文献1(図1、図2リングパッキン25参照)や特許文献2(図2振動緩衝器132参照)に示されているように、圧力調整器の弁体と連動する部材に弾性部材を設けてその摺動抵抗により振動を防止しようとするものが知られている。
また、他の振動防止手段としては、圧力調整器の弁体がノズルを閉塞させる方向に荷重を加えるためのバックバネを利用するもので、このバックバネの仕様を変更してバネの固有振動数を変更することにより、前記振動を防止することが考えられる。
【0005】
しかしながら、前述した弾性部材による摺動摩擦手段は、摺動摩擦抵抗が大きくなるため、応答性が悪くなり整圧性能が低下する恐れがある。また、バックバネを使用した場合は、圧力調整器は接続した燃焼器の未使用時には前述したように弁体2でノズル3を締め切ってガス漏れを防止しているので、バネの設定荷重を小さくすればガス漏れの恐れがあり、バックバネの仕様変更は必然的に設定荷重を大きくする方向への変更とならざるを得ない。バックバネの設荷重を大きくすれば弁体の密封用弾性部材である弁ゴム2aにノズル3の先端部が食い込んで弁ゴム2aに損傷を与えかねないと言う問題が生ずる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−257440号公報
【特許文献2】特表2009−512015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明では、前記問題点を解決するために、極めて広範囲の振動数に適用可能な制振効果を有する振動防止機能付の圧力調整器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、ガス圧力調整器のガス圧力調整用ダイヤフラムに連動してガス通路に設けられたノズルを開閉する弁体用主要バックバネに、該バックバネとは別体の弾性部材を補助バックバネとして併用した振動防止機能付の圧力調整器であって、補助バックバネとしてコイルバネを組み合わせたダブルバックバネや、バックバネと円筒状の弾性部材を組み合わせたもの、バックバネと空気バネを組み合わせたもの、及びバックバネと弾性ブロックを組み合わせたもの等、様々な実施態様が考えられる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、主要バックバネに別体の弾性部材を補助バックバネとして併用することにより、それぞれのバックバネの固有振動数が異なるため、一方のバネに振動が発生しても他方の補助バックバネがそれを制振させるので、弁体の異常振動を防止できる。
このことは、バックバネの設定荷重を変えることなく(バックバネの設定荷重は主要バックバネと併用する補助弾性部材の和となる)、主要バックバネの設定荷重を不必要に増加させることなく、異常振動に対する広範囲の制振効果を得ることが出来ると共に、弁体の密封用弾性部材である弁ゴムにノズルの先端部が食い込んで弁ゴムに損傷を与える恐れもない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の第1の実施例の断面図である。
【図2】この発明の第2の実施例の主要部断面図である。
【図3】この発明の第3の実施例の主要部断面図である。
【図4】この発明の第4の実施例の主要部断面図である。
【図5】この発明の第5の実施例の主要部断面図である。
【図6】この発明の第6の実施例の主要部断面図である。
【図7】従来の圧力調整器の説明用断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下この発明の実施の形態を実施例によって説明するが、以下の説明において同一の機能を有する部材や部位、構成部分については同一の符号や文字をつけて説明を省略する場合がある。
図1は、この発明の第1の実施例の断面図で、1点鎖線で囲んだ部分は、この発明の実施例の主要部を示しており、弁棒8に連動する弁体2の底面部と主要バックバネ4との間にもう一つの補助バックバネとして、コイルバネ4aを設けてダブルバックスプリング方式としたものである。そして、この補助バックバネであるコイルバネ4aの設定荷重と主要バックバネ4の総合設定荷重をバックバネの設計仕様とすることにより、主要バックバネ4の設定荷重を不必要に増加させることなく、異常振動に対する広範囲の制振効果を得ることが出来るのである。
【0012】
図2は、この発明の第2の実施例で、主要バックバネ4の外側に補助バックバネとして円筒状の弾性体4bを設けたものである。この弾性体はゴムや合成樹脂その他の弾性部材で構成可能である。
【0013】
図3は、この発明の第3の実施例で、弁体2の底面に補助バックバネとして空気ばね4cを設けたものである。この空気ばねは、図のような合成樹脂よりなる蛇腹式の空洞を有する伸縮筒で、主要バックバネ4と共に所定の設定荷重により弁体2をノズル3に押し付けている。
【0014】
図4は、この発明の第4の実施例で、弁体2の底面に補助バックバネとして弾性ブロック4dを設けたものである。弾性ブロックとしてゴムや合成樹脂よりなる弾性材料が好ましい。
【0015】
図5は、弁体2の底面に補助バックバネとして周知のショックアブソーバ4eを設けたものである。ショックアブソーバとしては、バネ圧や油圧や空気圧を使用した様々な形式が知られているが、使用する調整器に応じて任意設計適用することが出来る。
【0016】
図6は、弁体2の底面に補助バックバネとして、横方向に撓むことにより上下に伸縮する板ばね4fを使用したものである。
【0017】
以上のように、この発明はガス圧力調整器のガス圧力調整用ダイヤフラムに連動してガス通路に設けられたノズルを開閉する弁体用主要バックバネに、該バックバネとは別体の弾性部材を補助バックバネとして併用することによって、それぞれのバックバネの固有振動数が異なるため、一方のバネに振動が発生しても他方の補助バックバネがそれを制振させるので弁体の異常振動を防止できるのである。
さらに、補助バックバネを使用することにより、バックバネの設定荷重を変えることなく主要バックバネ4aの設定加重を不必要に増加させることなく、異常振動に対する広範囲の制振効果を得ることが出来るので、弁体の密封用弾性部材である弁ゴムにノズルの先端部が食い込んで弁ゴムに損傷を与える恐れもない。
【符号の説明】
【0018】
1・・・圧力調整器
2・・・弁体
2a・・弁ゴム
3・・・ノズル
4・・・バックバネ
4a・・コイルバネ
4b・・円筒状の弾性体
4c・・空気ばね
4d・・弾性ブロック
4e・・ショックアブソーバ
4f・・板ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス圧力調整器のガス圧力調整用ダイヤフラムに連動してガス通路に設けられたノズルを開閉する弁体用主要バックバネに、該バックバネとは別体の弾性部材を補助バックバネとして併用した振動防止機能付圧力調整器。
【請求項2】
補助バックバネがコイルバネであって、ダブルバックバネを構成することを特徴とする請求項1記載の振動防止機能付圧力調整器。
【請求項3】
補助バックバネが円筒状の弾性体であることを特徴とする請求項1記載の振動防止機能付圧力調整器。
【請求項4】
補助バックバネが弾性ブロックであることを特徴とする請求項1記載の振動防止機能付圧力調整器。
【請求項5】
補助バックバネがショックアブソーバであることを特徴とする請求項1記載の振動防止機能付圧力調整器。
【請求項6】
補助バックバネが板バネであることを特徴とする請求項1記載の振動防止機能付圧力調整器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−216157(P2012−216157A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91548(P2011−91548)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000142698)株式会社桂精機製作所 (14)
【Fターム(参考)】