説明

ガス抜き装置ユニット

【課題】ガス抜き装置をキャビティに近接させて固定型内部に設置することが可能であり、キャビティとガス抜き装置との間のガス抜き路を短くすることができるガス抜き装置ユニットの提供。
【解決手段】鋳造用金型1は、弁体52を有するガス抜き装置ユニット50と、該ガス抜き装置ユニット50が嵌合収容されるユニット収容空間10aが形成された固定型10と、該固定型10に相対向する可動型20とを有する。鋳造用金型1の内部にはキャビティ1aが画成され該キャビティ1aと外気とを連通するガス抜き路1dが形成される。ガス抜き装置ユニット50には冷却通路51bが形成され、該固定型10には該冷却通路51bと連通する冷却水用管部材62、63が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス抜き装置ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
ダイカスト法等の鋳造を行うための鋳造用金型としては、固定型と、固定型に対して進退可能である可動型とを備え、内部にキャビティが形成される構成のものが従来より知られている。このような構成の鋳造用金型には、キャビティに連通しキャビティ内のガスを抜くためのガス抜き路が形成されており、キャビティに連通しているガス抜き路の一端に対する他端には、ガス抜き路を通してキャビティ内のガスを抜くためのガス抜き装置が設けられている。例えば特公平8−284号公報には、上述のようなガス抜き装置を備える鋳造用金型が記載されている。同公報においてはガス抜き装置は、固定型の端部に形成された収容空間に嵌合することにより固定型に設置される。
【特許文献1】特公平8−284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記公報記載のガス抜き装置は固定型の端部に設置されていたため、ガス抜き装置はキャビティから離れた位置において設置されていることになり、キャビティとガス抜き装置との間に長いガス抜き路が設けられることになる。このように長いガス抜き路が設けられた場合には、ダイカスト1ショットあたりの溶湯の消費量が多くなるので歩留まりが悪くなる。また、ガス抜き路において凝固した金属溶湯を返り材として処理する場合の処理効率も悪くなる。更に、鋳造用金型が変形して固定型と可動型との合わせ面からのバリ吹きが生じる可能性がある。
【0004】
こうした問題を回避するには、ガス抜き装置を固定型内部のキャビティ近傍位置に設置することが考えられる。しかし、ガス抜き装置の弁体を駆動する電磁弁が溶湯の熱に弱く、ガス抜き装置の弁体が動作不良を起こしてしまうという問題があり、ガス抜き装置をキャビティ近傍位置に設置することはできなかった。
【0005】
そこで、本発明は、キャビティに近傍させて固定型内部に設置することが可能であり、キャビティとガス抜き装置との間のガス抜き路を短くすることができるガス抜き装置ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、キャビティ1aと外気とを連通するガス抜き路1dが形成される鋳造用金型1のユニット収容空間10aに嵌合収容されるガス抜き装置ユニット50であって、該ガス抜き装置ユニット50は、メインボディ51と、弁体52を収容する弁体収容ケース58とを備え、該メインボディ51には該鋳造用金型1に設けられる冷却水用管部材62、63と連通する冷却通路51bが形成されていることを特徴とするガス抜き装置ユニット50を提供している。
【0007】
ここで、該冷却通路51bは、該メインボディ51内で延び端面において開口する2つの冷却孔51bを備え、該2つの冷却孔51bの間に該弁体52が配置されていることが好ましい。
【0008】
ここで、該メインボディ51はワンタッチコネクター61を有し、該冷却通路51bと該冷却水用管部材62、63とは該ワンタッチコネクター61を介して連通することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ガス抜き装置ユニットを冷却水により冷却することができるので、ガス抜き装置ユニットをキャビティに近接させて型の内部に設置した場合であっても、溶湯の熱によりガス抜き装置ユニットの弁体が動作不良を起こすことを防止することができる。従って、ガス抜き装置ユニットをキャビティに近接させて型の内部に設置することが可能となり、キャビティとガス抜き装置ユニットとの間のガス抜き路を短くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施の形態による鋳造用金型及び鋳造法(ダイカスト法)について図1乃至図7を参照しながら説明する。図1に示されるように鋳造用金型1は内燃機関のシリンダブロックを鋳造するための真空ダイカスト用金型であり、固定型10と可動型20と上スライド中子30と下スライド中子40と、図示せぬ左スライド中子と、図示せぬ右スライド中子と、ガス抜き装置ユニット50とを備えている。後述する固定型10の固定ダイス12と可動型20の可動ダイス22と上スライド中子30の上スライド中子ダイス32と下スライド中子40の下スライド中子ダイス42と図示せぬ左スライド中子の左スライド中子ダイスと図示せぬ右スライド中子の右スライド中子ダイスとにより鋳造用金型1内にキャビティ1aが画成されるように構成されている。
【0011】
可動型20は、図1に示されるように可動ホルダー21と可動ダイス22とを備えており、固定型10に対向し後述の図示せぬ固定型分割面に当接可能な図示せぬ可動型分割面を有している。
【0012】
可動ホルダー21を備える可動型20は、図示せぬ可動型分割面及び固定型分割面に垂直の方向、即ち、図1の左右方向へ可動ホルダー21と可動ダイス22とが一体で進退可能に構成されており、可動型20が図1の右方へ前進し図示せぬ可動型分割面と後述の固定型分割面とが互いに当接し合うことにより型締めが行われてキャビティ1aが画成される。また、可動ホルダー21を備える可動型20が図1の左方へ後退し図示せぬ可動型分割面と後述の固定型分割面とが互いに離間し合うことにより型開きが行われるように構成されている。
【0013】
可動ホルダー21には、可動ダイス22を収容可能な可動ダイス収容部21aが形成されており、図1に示されるように、可動ダイス収容部21aに可動ダイス22が収容される。また、可動型20には、複数の図示せぬ押出しピンが設けられている。複数の図示せぬ押出しピンの先端面は、キャビティ1aを画成する可動ダイス22の表面から突出可能である。複数の図示せぬ押出しピンの基端は図示せぬ押出し板に接続されており、図示せぬ押出し板を駆動させることにより、図示せぬ複数の押出しピンを同時に進退することができるように構成させている。型締めされキャビティ1aが画成されているときには、図示せぬ押出しピンの先端面はキャビティ1aを画成する可動ダイス22の部分の表面と面一となり、型開きして可動型20から鋳造品を取出すときには、キャビティ1aを画成する可動型ダイスの表面から突出する。
【0014】
上スライド中子30は、図1に示されるように上スライド中子ホルダー31と上スライド中子ダイス32とを備えており、後述の図示せぬ固定型分割面に当接可能な上スライド中子当接面を有している。上スライド中子当接面は、後述の図示せぬ固定型分割面に対向当接可能な上中子ホルダー固定型対向面31Aと、上中子ダイス固定型対向面32Aとにより構成されている。
【0015】
上スライド中子ホルダー31を備える上スライド中子30は、図1の上下方向へ上スライド中子ホルダー31と上スライド中子ダイス32とが一体で進退可能に構成されており、上スライド中子30が図1の下方へ下降し、可動型20に対して図1に示される状態となったときに型締め可能な上スライド中子30の位置となる。また、可動型20に対して上スライド中子30が図1の上方へ移動することにより、キャビティ1a内で凝固した金属溶湯2たる製品部2Aを可動型20から取り外し可能な状態となるように構成されている。上スライド中子ホルダー31には、上スライド中子ダイス32を収容可能な上スライド中子ダイス収容部31aが形成されており、上スライド中子ダイス収容部31aには上スライド中子ダイス32が収容される。
【0016】
下スライド中子40は、図1に示されるように下スライド中子ホルダー41と下スライド中子ダイス42とを備えており、後述の図示せぬ固定型分割面に当接可能な下スライド中子当接面を有している。下スライド中子当接面は、後述の固定型分割面に対向当接可能な下中子ホルダー固定型対向面41Aと、図示せぬ下中子ダイス固定型対向面とにより構成されている。
【0017】
下スライド中子ホルダー41を備える下スライド中子40は、図1の上下方向へ下スライド中子ホルダー41と下スライド中子ダイス42とが一体で進退可能に構成されており、下スライド中子40が図1の上方へ上昇し、可動型20に対して図1に示される状態となったときに型締め可能な下スライド中子40の位置となる。また、可動型20に対して下スライド中子40が図1の下方へ下降することにより、キャビティ1a内で凝固した金属溶湯2たる製品部2Aを可動型20から取り外し可能な状態となるように構成されている。下スライド中子ホルダー41には、下スライド中子ダイス42を収容可能な下スライド中子ダイス収容部41aが形成されており、下スライド中子ダイス収容部41aには下スライド中子ダイス42が収容される。
【0018】
図示せぬ左スライド中子は、図示せぬ左スライド中子ホルダーと図示せぬ左スライド中子ダイスとを備えており、後述の図示せぬ固定型分割面に当接可能な左スライド中子当接面を有している。左スライド中子当接面は、後述の固定型分割面に対向当接可能な図示せぬ左中子ホルダー固定型対向面と、図示せぬ左中子ダイス固定型対向面とにより構成されている。
【0019】
図示せぬ左スライド中子ホルダーを備える左スライド中子は、図1の紙面の表と裏とを結ぶ方向へ左スライド中子ホルダーと左スライド中子ダイスとが一体で進退可能に構成されており、左スライド中子が図1の紙面の表から裏へと向かう方向へ移動し可動型20にセットされて型締め可能な状態となる。また、左スライド中子が図1の紙面の裏から表へと向かう方向へ移動することにより、キャビティ1a内で凝固した金属溶湯2たる製品部2Aを可動型20から取り外し可能な状態となるように構成されている。図示せぬ左スライド中子ホルダーには、左スライド中子ダイスを収容可能な図示せぬ左スライド中子ダイス収容部が形成されており、左スライド中子ダイス収容部には左スライド中子ダイスが収容される。
【0020】
図示せぬ右スライド中子は、図示せぬ右スライド中子ホルダーと図示せぬ右スライド中子ダイスとを備えており、後述の図示せぬ固定型分割面に当接可能な右スライド中子当接面を有している。右スライド中子当接面は、後述の固定型分割面に対向当接可能な図示せぬ右中子ホルダー固定型対向面と、図示せぬ右中子ダイス固定型対向面とにより構成されている。
【0021】
右スライド中子ホルダーを備える右スライド中子は、図1の紙面の表と裏とを結ぶ方向へ右スライド中子ホルダー10と右スライド中子ダイスとが一体で進退可能に構成されており、右スライド中子が図1の紙面の裏から表へと向かう方向へ移動し可動型20にセットされて型締め可能な状態となる。また、右スライド中子が図1の紙面の表から裏へと向かう方向へ移動することにより、キャビティ1a内で凝固した金属溶湯2たる製品部2Aを可動型20から取り外し可能な状態となるように構成されている。右スライド中子ホルダーには、右スライド中子ダイスを収容可能な図示せぬ右スライド中子ダイス収容部が形成されており、右スライド中子ダイス収容部には右スライド中子ダイスが収容される。
【0022】
固定型10は、固定ホルダー11と固定ダイス12とを備えており、可動型20、上スライド中子30、下スライド中子40、図示せぬ左スライド中子、及び図示せぬ右スライド中子に対向しこれらに当接可能な図示せぬ固定型分割面を有している。固定型分割面は図1の略上下方向に指向している。また、固定ホルダー11には、固定ダイス収容部11aが形成されている。固定ダイス収容部11aには固定ダイス12を収容可能である。
【0023】
また、固定型10には給湯口13aが形成されたスリーブ13とスリーブ13内を摺動可能なプランジャチップ14とが設けられている。プランジャチップ14はシャフト15によりスリーブ13内を摺動可能であり、シャフト15には、図示せぬストライカが設けられている。また、シャフト15の近傍には図示せぬ真空スタートリミットスイッチが設けられており、図示せぬストライカによって図示せぬ真空スタートリミットスイッチを作動可能である。スリーブ13内には溶融したアルミニウム合金等の溶湯2を給湯可能である。また、下スライド中子ホルダー41の一部は分流子41Bをなしている。分流子41Bはスリーブ13の一端に対向して配置されており、また、この位置はランナー1bの一端をなす。ランナー1bの他端はゲート1cをなし、ランナー1bはゲート1cを介してキャビティ1aに連通している。
【0024】
ゲート1cを介してランナー1bに接続されているキャビティ1aの図1に示される下端に対する上端は、排気ランナー1dに接続されている。排気ランナー1dは、上スライド中子ホルダー31及び上スライド中子ダイス32に対向当接する固定ダイス12の部分に溝12aが形成されることにより形成されている。
【0025】
即ち、当該溝12aを画成する固定ダイス12の部分と、溝12aの開口に蓋をするようにして溝12aが形成された固定ダイス12の部分に面当接する上スライド中子ホルダー31の上中子ホルダー固定型対向面31A及び上スライド中子ダイス32の上中子ダイス固定型対向面32Aとによって、排気ランナー1dは画成されている。上中子ホルダー固定型対向面31A、上中子ダイス固定型対向面32Aはそれぞれ平坦をなしており排気ランナー1dを画成するための溝12aのような溝は形成されていない。上中子ホルダー固定型対向面31Aは対向面に相当する。排気ランナー1dには図示せぬ溶湯感知センサーが設けられており、排気ランナー1d内の図示せぬ溶湯感知センサーが設けられている位置に金属溶湯2が流入したことを検知可能である。排気ランナー1dはガス抜き路に相当する。
【0026】
ガス抜き装置ユニット50は、固定型10の一部であってキャビティ1aに接続されている排気ランナー1dの一端に対する他端の位置に設けられている。より具体的には、図1に示される固定ダイス12の上面に対向する固定ホルダー11の部分には、図1の左右方向へ貫通する貫通孔10aが形成されている。貫通孔10aは、固定ダイス12に対向する固定ホルダー11の部分が切欠かれるような形状で形成されており、貫通孔10aの内面の最下端は固定ダイス12の上面と面一をなす。貫通孔10aの内面の最上端は上スライド中子ホルダー31の上中子ホルダー固定型対向面31Aにいたるまで図1の左方へ延出している。貫通孔10aの図1に示される右側の部分10bは固定ホルダー11によって画成されているが、貫通孔10aの図1に示される左側の部分10cは固定ホルダー11と固定ダイス12の上面とによって規定されている。貫通孔10aはユニット収容空間に相当する。
【0027】
ガス抜き装置ユニット50は図の左側から貫通孔10aに挿入されることにより貫通孔10aの当該左側の部分10cに嵌合収容されており、当該右側の部分10bには、図の右側から貫通孔10aに挿入されることにより油圧シリンダー16が収容され、図示せぬ固定手段によって固定型10に固定されている。型開きの状態のときに後述の排気管17や冷却水用管部材62、63をガス抜き装置ユニット50から取り外した上で油圧シリンダー16を駆動させることにより、ガス抜き装置ユニット50を後方から押出して貫通孔10a(固定型10)から取出すことが可能である。
【0028】
ガス抜き装置ユニット50に対向する固定ホルダー11の部分には、固定ホルダー11を図1の上下方向へ貫通する排気用貫通孔が形成されており、排気用貫通孔内には、排気管17が設けられている。排気管17の一端は図示せぬ真空装置に接続されている。図示せぬ真空装置は図示せぬ電磁切換弁と図示せぬ真空吸引装置とを備えており、電磁切換弁を切換えることにより排気管17と真空吸引装置とを連通させたり遮断させたりすることができるように構成されている。
【0029】
ガス抜き装置ユニット50は上述の位置に形成された貫通孔10a内に配置されているため、キャビティ1aからガス抜き装置ユニット50までの距離を短くすることができ、排気ランナー1dの長さを短くすることができる。このため、ダイカスト1ショットあたりの溶湯2の消費量を減少させることができ、歩留まりをよくすることができる。また、排気ランナー1dが短くなると、排気ランナー1dを返り材として処理する場合の処理効率を向上させることができる。更に、鋳造用金型1が変形して固定型10と可動型20との合わせ面からのバリ吹きが生じることを防止できる。
【0030】
ガス抜き装置ユニット50は、図2乃至図6に示されるように、メインボディ51と、開閉弁により構成される弁体52と、2本の押出しピン53、53とを備えている。図1に示されるように鋳造用金型1が型締めされた状態となっているときに、上中子ホルダー固定型対向面31A(図1)に対向するメインボディ51の前面51Aには、図3に示されるように、略T字状をなす排気ランナー1dの他端部分が形成されている。
【0031】
2本の押出しピン53、53は、略T字状をなす排気ランナー1dの他端部分を水平方向延出ランナー部50aと上下方向延出ランナー部50bとが接続されたものと考えた場合に、水平方向延出ランナー部50aの両端であって図3に示されるように弁体52からの距離が互いに等しい位置に設けられている。押出しピン53、53は、その基端から先端へ向かう方向が、それぞれメインボディ51の前面51Aに垂直の方向、即ち、図1の左方向たる可動型20の方向へ指向しており、図1の左右方向へ進退可能である。押出しピン53、53の先端部はメインボディ51の前面51Aから突出可能である。押出しピン53、53の先端部には切欠き53a、53aが形成されており、切欠き53a、53aは、水平方向延出ランナー部50aの両端を画成する。従って、切欠き53a、53aを画成する押出しピン53、53の先端部の部分は、排気ランナー1d内で凝固した金属溶湯2に当接可能である。
【0032】
2本の押出しピン53、53の基端部は、図4に示されるようにそれぞれ押出しピン収容ケース54内に収容されている。基端部は、図4に示されるように、先端部分に接続されたフランジ部53Aとフランジ部53Aよりも反先端部側に延出する延出部53Bと延出部53Bよりも更に反先端部側に延出する縮径延出部53Cとを有している。縮径延出部53Cは、ピン収容ケース54の一端を閉塞する閉塞蓋55に形成された貫通孔55aに挿入されており、フランジ部53Aは、メインボディ51に接続されたピン収容ケース54の他端においてメインボディ51に当接可能である。フランジ部53Aと閉塞蓋55との間にはバネ56が設けられており、バネ56の一端はフランジ部53Aに当接し他端は閉塞蓋55に当接している。
【0033】
押出しピン53、53に外部から力が作用していないときには、フランジ部53Aはバネ56の付勢力によりメインボディ51に当接する前進位置となるように構成されている。このとき、2本の押出しピン53、53の先端部はメインボディ51の前面51Aから突出している。このように突出することにより、後述のように、排気ランナー1d内で凝固した金属溶湯2を押出しピン53、53の先端部の部分でガス抜き装置ユニット50の前面51Aから押出すことができる。図1に示されるように型締めされた状態のときには、上中子ホルダー固定型対向面31Aに2本の押出しピン53、53の先端が当接して図1の右方向へ押圧されることにより、2本の押出しピン53、53の先端はメインボディ51の前面51Aと同一の位置となり、このときの押出しピン53、53の位置は後退位置をなす。
【0034】
押出しピン収容ケース54には、コネクター57Aを備えたコネクター用ケース57が図示せぬネジにより固定されており、コネクター57Aに後述の電磁バルブ59の作動のための信号を送信する線が接続されるように構成されている。
【0035】
弁体52は、前述の上下方向延出ランナー部50bが接続されている水平方向延出ランナー部50aの部分に設けられており、押出しピン53、53と同一の方向へ進退可能である。図1の最も右方向へ移動することにより開閉弁が閉じた状態となり、後述の排気路51cと排気ランナー1dとが遮断されるように構成されている。また、弁体52が左方向へ移動することにより開閉弁が開いた状態となり、後述の排気路51cと排気ランナー1dとが連通するように構成されている。また、メインボディ51内には排気路51cが形成されている。排気路51cは、上下方向延出ランナー部50bが接続された水平方向延出ランナー部50aの部分に連通して形成されており、図5に示されるようにメインボディ51の上方へ延出している。排気路51cの延出端51dは、排気管17の他端が接続される排気管接続孔をなす。
【0036】
弁体52の基端部はピストン52Aを備えている。ピストン52Aは図示せぬネジによりメインボディ51に固定された弁体収容ケース58内に収容されており、弁体収容ケース58には、弁体52を駆動するための電磁バルブ59がネジ60、60により固定されている。電磁バルブ59には、電磁バルブ59に図示せぬコンプレッサからエアを供給するためのL字状コネクター59Aが取り付けられている。ピストン52Aによって弁体収容ケース58内が仕切られることにより画成された後室58a又は前室58bに、電磁バルブ59の位置を変えることで図示せぬコンプレッサからエアを供給することにより、弁体52を図5の左方向へ前進させ又は図5の右方向へ後退させることができるように構成されている。
【0037】
メインボディ51の上端には、凹部51aが形成されている。固定ホルダー11に形成された図示せぬネジ孔に図示せぬネジ棒を挿入し、ネジ棒の先端部を凹部51aに係合させることにより、ガス抜き装置ユニット50を貫通孔10a内で位置決めすることができるように構成されている。
【0038】
メインボディ51には冷却水を流すための冷却孔51bが形成されている。冷却孔51bは、メインボディ51内において図2の左右方向に延出すると共に図1の上下方向に延出し、メインボディ51の上端において開口している。図6に示されるように、冷却孔51bの開口部には後述の冷却水用管部材を接続するためのワンタッチコネクター61が取り付けられている。尚、ワンタッチコネクター61は、管部材が挿入された場合には管部材の接続状態を維持し、リリーススリーブが押圧操作された場合には管部材の接続状態を解放する公知の構成のものである。冷却孔51bは冷却通路に相当する。
【0039】
図7に示すように、固定ホルダー11には上下方向へ貫通する2つの貫通孔18、18が形成されており、これら貫通孔18、18内には、メインボディ51の冷却孔51bに冷却水を供給する為の冷却水用管部材62と、冷却孔51bから冷却水を排出する為の冷却水用管部材63が夫々配設され、ワンタッチコネクター61、61と接続されている。又、冷却水用管部材62、63は図示せぬ冷却水供給装置にも接続されている。供給用と排出用の冷却水用管部材62、63は、ワンタッチコネクター61、61と接続された場合に、ワンタッチコネクター61、61を介して冷却孔51bと連通する。冷却孔51bに冷却水を供給することにより、ガス抜き装置ユニット50のメインボディ51を冷却することができるので、ガス抜き装置ユニット50をキャビティ1aに近接させて固定型10の内部に設置した場合であっても、溶湯2の熱によって電磁バルブ59で駆動される弁体52が動作障害を起すことを防止することができる。
【0040】
固定ホルダー11の2つの貫通孔18、18には、操作用管部材64、64がさらに配設されており、供給用と排出用の冷却水用管部材62、63は操作用管部材64、64を貫通することにより、ワンタッチコネクター61、61に接続されている。操作用管部材64の一端はワンタッチコネクター61のリリースブッシュ61aに当接しており、他端は固定ホルダー11の外方に突出している。冷却水用管部材62、63をワンタッチコネクター61、61から取り外す場合には、固定ホルダー11の外方(固定型10の外部)から作業者が操作用管部材64を操作し、操作用管部材64の一端でワンタッチコネクター61のリリースブッシュ61aを押圧することより、供給用と排出用の冷却水用管部材62、63を容易にワンタッチコネクター61、61から取り外すことができる。このように、操作用管部材64が設けられているので、作業者は固定型10の内部に設置されたガス抜き装置ユニット50のワンタッチコネクター61から冷却水用管部材62を容易に取り外すことが可能である。尚、冷却水用管部材62、63のワンタッチコネクター61、61への接続については、冷却水用管部材62、63が挿入された状態の操作用管部材64、64を貫通孔18、18に挿入することにより行われる。
【0041】
次に鋳造法について説明する。鋳造法では、先ず、上スライド中子30を図1の上方から下方へと下降させてゆくと共に、下スライド中子40を図1の下方から上方へ上昇させてゆく。又、図示せぬ左スライド中子を図1の紙面の表から裏へと向かう方向へと移動させてゆくと共に、図示せぬ右スライド中子を図1の紙面の裏から表へと向かう方向へと移動させてゆき、上スライド中子30と下スライド中子40と、図示せぬ左スライド中子と、図示せぬ右スライド中子とを可動ホルダー21にセットする。
【0042】
次に、可動型20を固定型10の方向、即ち、図1の右方向へ移動させてゆき、図示せぬ固定型分割面に図示せぬ可動型分割面を接近させ当接させて型締めをする。
【0043】
このとき、固定ダイス12と可動ダイス22と上スライスド中子ダイス32と下スライド中子ダイス42と図示せぬ左中子ダイスと図示せぬ右中子ダイスとによって鋳造用金型1内にキャビティ1aが画成される。また、ガス抜き装置ユニット50の前面51Aが上中子ホルダー固定型対向面31Aの一部に面で当接すると共に、溝12aが形成された固定ダイス12の部分と、上スライド中子ホルダー31の上中子ホルダー固定型対向面31A及び上スライド中子ダイス32の上中子ダイス固定型対向面32Aとが、溝12aの開口に蓋をするようにして面当接することによって、排気ランナー1dが画成される。ガス抜き装置ユニット50の前面51Aと上中子ホルダー固定型対向面31Aとの面当接の際に、2本の押出しピン53、53の先端は上中子ホルダー固定型対向面31Aに当接し、2本の押出しピン53、53は図4の右方向へ押圧移動させられ、2本の押出しピン53、53の先端位置はガス抜き装置ユニット50の前面51Aと一致した位置となる。
【0044】
次に、弁体52(図5)を開弁させた状態で、給湯口13a(図1)より溶湯2をスリーブ13内に注入する。次に、スリーブ13内でプランジャチップ14を図1の左方向に低速で摺動させる。このプランジャチップ14の摺動によって給湯口13aは閉鎖され、更に、図示せぬストライカが図示せぬ真空スタートリミットスイッチを作動させる。図示せぬ真空スタートリミットスイッチの作動に応答して、図示せぬ電気回路によって図示せぬ真空装置の電磁切換弁が図示せぬ真空吸引装置と排気管17とを連通させる位置に切換わる。この図示せぬ電磁切換弁の作動によって、排気ランナー1dと図示せぬ真空吸引装置とが連通し、スリーブ13、ランナー1b、キャビティ1a内のガスは、排気ランナー1d、排気管17を通して吸引され鋳造用金型1外部に排気される。
【0045】
次に、プランジャチップ14を高速でスリーブ13内を摺動させることにより、溶湯2がキャビティ1a内に充満され、更に排気ランナー1d内に流入し、図示せぬ溶湯検知棒に接触する。この接触によって図示せぬ溶湯検知棒は溶湯検知信号を発生させ、この信号によって電磁バルブ59は弁体収容ケース58の前室58bに図示せぬコンプレッサからエアを供給可能な位置となり前室58bにエアが供給される。このことにより、弁体52が図5の右方向へ移動し、閉弁状態となることで弁体52によって排気ランナー1dと排気管17とが遮断され、図示せぬ真空吸引装置によるキャビティ1a、排気ランナー1d等からの真空引きが停止される。
【0046】
次に、キャビティ1a内の溶湯2が冷却され凝固した後に、可動型20、上スライド中子30、下スライド中子40、図示せぬ左スライド中子、図示せぬ右スライド中子、及びこれらに付着した溶湯2からなる鋳造品を固定型10から離間させて型開きを行う。型開き中に上中子ホルダ固定型対向面はガス抜き装置ユニット50の前面50Aから離間するが、このときガス抜き装置ユニット50の2本の押出しピン53、53は、バネ56の付勢力により図4の左方向へ移動し、ガス抜き装置ユニット50の前面51Aに形成されている溝12a内で凝固した金属溶湯2を溝12a内から押出す。このことで、キャビティ1a内で凝固した金属溶湯2たる製品部2Aと一体で、排気ランナー1d内で凝固した金属溶湯2の部分を固定型10側から離間させることができる。
【0047】
次に、上スライド中子30を図1の上方へ上昇させ、下スライド中子40を図1の下方へ下降させ、図示せぬ左スライド中子を図1の紙面の裏から表へ向かう方向へ移動させ、図示せぬ右スライド中子を図1の紙面の表から裏へ向かう方向へ移動させ、可動型20から取外す。そして、可動型20の図示せぬ押出しピンにより製品部2Aを可動ダイス22から押出し、製品部2Aと一体で排気ランナー1d内で凝固した金属溶湯2の部分を可動型20から取外す。以上が鋳造法である。
【0048】
本発明による鋳造用金型及び鋳造法は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、ユニット収容空間は10aは、固定ホルダー11を貫通するように設けられていたが、貫通していなくてもよい。また、ユニット収容空間10aは固定ダイスに設けられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の鋳造用金型及び鋳造法は鋳造の分野において極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態による鋳造用金型を示す断面図。
【図2】本発明の実施の形態によるガス抜き装置ユニットを示す平面図。
【図3】本発明の実施の形態によるガス抜き装置ユニットを示す正面図。
【図4】図2又は図3のIV−IV線に沿った断面図
【図5】図2又は図3のV−V線に沿った断面図。
【図6】図2又は図3のVI−VI線に沿った断面図。
【図7】本発明の実施の形態によるガス抜き装置ユニットが固定型に嵌合収容された状態を示す正面図。
【符号の説明】
【0051】
1 鋳造用金型
1a キャビティ
1d 排気ランナー(ガス抜き路)
10 固定型
10a 貫通孔(ユニット収容空間)
20 可動型
50 ガス抜き装置ユニット
51b 冷却孔(冷却通路)
52 弁体
61 ワンタッチコネクター
62、63 冷却水用管部材
64 操作用管部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティと外気とを連通するガス抜き路が形成される鋳造用金型のユニット収容空間に嵌合収容されるガス抜き装置ユニットであって、該ガス抜き装置ユニットは、メインボディと、弁体を収容する弁体収容ケースとを備え、該メインボディには該鋳造用金型に設けられる冷却水用管部材と連通する冷却通路が形成されていることを特徴とするガス抜き装置ユニット。
【請求項2】
該冷却通路は、該メインボディ内で延び端面において開口する2つの冷却孔を備え、該2つの冷却孔の間に該弁体が配置されていることを特徴とする請求項1に記載のガス抜き装置ユニット。
【請求項3】
該メインボディはワンタッチコネクターを有し、該冷却通路と該冷却水用管部材とは該ワンタッチコネクターを介して連通することを特徴とする請求項1又は2に記載のガス抜き装置ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−82011(P2013−82011A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−27539(P2013−27539)
【出願日】平成25年2月15日(2013.2.15)
【分割の表示】特願2008−280628(P2008−280628)の分割
【原出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000006943)リョービ株式会社 (471)
【Fターム(参考)】