説明

ガス発生器

【課題】優れた安全性を有するとともに、安価に製作することができるガス発生器を提供する。
【解決手段】ディスク型ガス発生器100Aは、ガス発生剤141が収容された収容室を内部に含むハウジングと、作動することによってガス発生剤141を燃焼させる点火器130とを備える。ハウジングは、上記収容室と当該収容室の外部の空間とを隔てる部分に貫通孔123が設けられてなる金属製の隔壁部と、貫通孔123を閉塞するとともに少なくともその一部が貫通孔123の内部に達することとなるように凹状の穴部165が設けられてなる樹脂製の閉塞部材160Aとを含む。閉塞部材160Aは、貫通孔123の内部における穴部165の開口面積が貫通孔123の開口面積に比して小さくなるように、貫通孔123を規定する部分の隔壁部の表面を覆うように設けられた絞り部と、穴部165の底面を規定する脆弱な遮蔽部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等衝突時において乗員を保護する乗員保護装置に組み込まれるガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の乗員の保護の観点から、乗員保護装置であるエアバッグ装置が普及している。エアバッグ装置は、車両等衝突時に生じる衝撃から乗員を保護する目的で装備されるものであり、車両等衝突時に瞬時にエアバッグを膨張および展開させることにより、エアバッグがクッションとなって乗員を受け止めるものである。
【0003】
ガス発生器は、このエアバッグ装置に組み込まれ、車両等衝突時にコントロールユニット(作動器)からの通電によって点火器(スクイブ)を発火し、点火器において生じる火炎によりガス発生剤を燃焼させて多量のガスを瞬時に発生させ、発生させたガスをハウジングに設けたガス噴出口から外部に噴出することによってエアバッグを膨張および展開させる機器である。
【0004】
ガス発生器には、種々の構造のものが存在するが、運転席側エアバッグ装置に好適に利用されるガス発生器として、外形が短尺略円柱状のディスク型ガス発生器があり、サイドエアバッグ装置やカーテンエアバッグ装置、助手席側エアバッグ装置、ニーエアバッグ装置等に好適に利用されるガス発生器として、外形が長尺略円柱状のシリンダ型ガス発生器がある。
【0005】
ガス発生器においては、点火器の作動時においてガス発生剤を安定的に燃焼させることが重要である。ここで、ガス発生剤を安定的に燃焼させるためには、ガス発生剤を所定の高圧環境にて燃焼させることが必要であるため、ガス発生器においては、ハウジングに設けられるガス噴出口の大きさを所望の大きさに絞ることにより、点火器の作動時においてハウジングの内部の圧力が相当程度の圧力にまで高まるようにその設計がなされている。
【0006】
また、ガス発生器においては、ハウジングの内部の空間が外部の空間から気密に封止されていることが重要である。これは、ハウジングの内部に収容されるガス発生剤や当該ガス発生剤を燃焼させるために必要に応じてハウジングの内部に装填される伝火薬が吸湿することを防止するためである。仮にこれらガス発生剤や伝火薬に吸湿が生じてしまった場合には、ガス発生器の作動時において所望のガス出力が得られない不具合が生じてしまうことになる。
【0007】
そのため、従来のガス発生器においては、たとえば特開2001−239915号公報(特許文献1)に開示されるように、作動時においてハウジングの内部の圧力が十分に高まることとなるようにガス噴出口を必要な開口径にまで絞るとともに、当該ガス噴出口を閉塞するようにハウジングに金属製のシールテープを貼着する構成が一般的に採用されている。
【0008】
一方、ガス発生器が組み込まれたエアバッグ装置が装備された車両等において火災が発生した場合などには、ガス発生器が外部から加熱されることにより、ガス発生器の内部の温度が数百度程度にまで昇温されてしまうケースがある。その場合において、ガス発生剤や伝火薬の温度がその自然発火温度に達してしまうと、点火器が作動することなくガス発生剤が燃焼を開始してしまう、いわゆるオートイグニッション動作が誘発されることとなってしまう。
【0009】
当該オートイグニッション動作が誘発された場合には、ガス発生器自体が既に外部からの加熱によって高温の状態にあるため、ガス発生剤の燃焼によりハウジングの内部の圧力が上述した点火器の作動時において必要になる圧力よりもはるかに高い圧力にまで上昇してしまうことになり、これによりハウジングに破損が生じてしまうことが懸念される。ハウジングにこのような破損が生じた場合には、ハウジングの破片や内部構成部品が周囲に飛散してしまうことになり、安全性の面において大きな問題が生じてしまうことになる。
【0010】
そのため、従来のガス発生器においては、たとえば特開平9−86330号公報(特許文献2)に開示されるように、ガス発生剤や伝火薬よりも低い温度で自然発火するオートイグニッション剤と呼ばれる薬剤をハウジングの内部に装填しておき、ガス発生器が外部から加熱された場合にも、比較的低温のうちにオートイグニッション剤が発火することでガス発生剤を燃焼させ、これによりハウジングの内部の圧力が破壊圧にまで達しないように調整することが行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−239915号公報
【特許文献2】特開平9−86330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記特許文献2に開示の如くの構成を採用した場合には、オートイグニッション剤を予め準備してこれをハウジングの内部に収容することが必要であるため、部品点数が増加してしまったり組付け作業が煩雑化してしまったりすることに伴って製造コストの増大を招いてしまうばかりでなく、当該オートイグニッション剤を収容するための空間が別途ハウジングの内部に必要になり、ガス発生器の大型化やこれに伴うガス発生器の重量増をも招いてしまう問題があった。
【0013】
また、上記特許文献1に開示の如く、ガス噴出口を金属製のシールテープにて閉塞する構成を採用した場合には、金属製のシールテープを予め準備し、これをハウジングの内部において位置決めして貼り付ける作業が必要になるが、当該金属製のシールテープは比較的薄い部材であるため、その取扱いが非常に困難であり、組付け作業が大幅に煩雑化して製造コストを圧迫してしまう問題を有していた。
【0014】
したがって、本発明は、上述した問題点を解決すべくなされたものであり、優れた安全性を有するとともに、安価に製作することができるガス発生器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に基づくガス発生器は、ガス発生剤が収容された収容室を内部に含むハウジングと、作動することによって上記ガス発生剤を燃焼させる点火器とを備える。上記ハウジングは、上記収容室と上記収容室の外部の空間とを隔てる部分に貫通孔が設けられてなる金属製の隔壁部と、上記貫通孔を閉塞することで上記収容室および上記収容室の外部の空間のいずれにも面するとともに、少なくともその一部が上記貫通孔の内部に達することとなるように上記収容室に面する部分および上記収容室の外部の空間に面する部分のうちの少なくとも一方に凹状の穴部が設けられてなる樹脂製の閉塞部材とを含む。上記閉塞部材は、上記貫通孔の内部における上記穴部の開口面積が上記貫通孔の開口面積に比して小さくなるように、上記貫通孔を規定する部分の上記隔壁部の表面を覆うように設けられた絞り部と、上記穴部の底面を規定する脆弱な遮蔽部とを有する。
【0016】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記点火器が作動することによって上記ガス発生剤が燃焼する場合に、上記収容室の内圧上昇に伴って上記遮蔽部が破裂して消失するとともに上記絞り部が残存することにより、上記収容室と上記収容室の外部の空間とが上記穴部を介して連通し、これにより上記収容室にて生成されるガスが上記収容室の外部の空間に噴出され、外部からの加熱によって上記点火器が作動することなく上記ガス発生剤が燃焼する場合に、予め上記遮蔽部および上記絞り部が共に溶融または燃焼して消失することにより、上記収容室と上記収容室の外部の空間とが上記貫通孔を介して連通し、これにより上記収容室にて生成されるガスが上記収容室の外部の空間に噴出される。
【0017】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記閉塞部材が、熱硬化性樹脂材料および熱可塑性樹脂材料のいずれかを原料とした射出成形品にて構成されていることが好ましく、その場合には、上記絞り部が、当該絞り部によって覆われる部分の上記隔壁部の表面に固着していることが好ましい。
【0018】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記閉塞部材が、上記貫通孔を取り囲む部分の上記隔壁部の上記収容室側に位置する内面上および上記収容室の外部の空間側に位置する外面上の少なくともいずれかに向けて上記絞り部から延びるように設けられた第1延設部をさらに有していることが好ましく、その場合に、上記第1延設部が、当該第1延設部によって覆われる部分の上記隔壁部の表面に固着していることが好ましい。
【0019】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記閉塞部材が、上記ガス発生剤の自然発火温度以下の温度において溶融または燃焼して消失する樹脂材料にて構成されていることが好ましい。
【0020】
また、上記本発明に基づくガス発生器が、上記点火器の作動によって着火されることで上記ガス発生剤を燃焼させる伝火薬をさらに備えている場合には、上記閉塞部材が、上記ガス発生剤の自然発火温度および上記伝火薬の自然発火温度のうちの低い方の温度以下の温度において溶融または燃焼して消失する樹脂材料にて構成されていることが好ましい。
【0021】
上記本発明に基づくガス発生器は、ディスク型ガス発生器であってもよい。その場合には、上記ハウジングが、上記隔壁部として天板部、底板部および周壁部を含む軸方向の両端が閉塞された短尺筒状の形状を有することになり、上記ハウジングの内部の空間が、上記ガス発生剤が収容された上記収容室として構成されることになる。また、上記収容室には、上記ガス発生剤を上記ハウジングの軸方向に取り囲むように中空筒状のフィルタが配設され、上記点火器が、上記収容室に面するように上記底板部に組付けられる。そして、上記貫通孔が、上記周壁部に設けられ、当該貫通孔を閉塞するように上記閉塞部材が設けられる。
【0022】
また、上記本発明に基づくガス発生器が、上述した如くのディスク型ガス発生器である場合には、上記閉塞部材が、上記天板部の上記収容室側に位置する内面上に向けて上記絞り部から延びるように設けられた第2延設部をさらに有してもよく、その場合に、上記第2延設部が、上記フィルタの上記天板部側に位置する軸方向端部の内周面および外周面のうちの少なくとも一方に当接することで上記フィルタの径方向における位置決めを行なう位置決め部を含んでいてもよい。
【0023】
上記本発明に基づくガス発生器は、シリンダ型ガス発生器であってもよい。その場合には、上記ハウジングが、上記隔壁部として天板部、底板部、周壁部および仕切り部を含む軸方向の両端が閉塞された長尺略筒状の形状を有することになり、上記ハウジングの内部の空間が、上記ガス発生剤が収容された上記収容室として構成されることになる。上記収容室は、上記仕切り部によって軸方向に区画され、上記仕切り部によって軸方向に区画された上記収容室のうち、上記底板部側に位置する空間に上記ガス発生剤が収容され、上記天板部側に位置する空間にフィルタが配設される。また、上記点火器は、上記収容室に面するように上記底板部に組付けられる。そして、上記貫通孔が、上記フィルタが収容された空間を取り囲む部分の上記周壁部に設けられ、当該貫通孔を閉塞するように上記閉塞部材が設けられる。
【0024】
また、上記本発明に基づくガス発生器は、上述した構成とは異なる構成のシリンダ型ガス発生器であってもよい。その場合には、上記ハウジングが、上記隔壁部として天板部、底板部、周壁部および仕切り部を含む軸方向の両端が閉塞された長尺略筒状の形状を有することになり、上記ハウジングの内部の空間が、上記仕切り部によって軸方向に区画されることになる。上記仕切り部によって区画された上記ハウジングの内部の空間のうち、上記底板部側に位置する空間が、上記ガス発生剤が収容された上記収容室として構成され、上記天板部側に位置する空間が、上記収容室の外部の空間としてフィルタが配設されたフィルタ室として構成される。また、上記点火器が、上記収容室に面するように上記底板部に組付けられる。そして、上記貫通孔が、上記仕切り部に設けられ、当該貫通孔を閉塞するように上記閉塞部材が設けられる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、優れた安全性を有するとともに、安価に製作することができるガス発生器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態1におけるディスク型ガス発生器の模式断面図である。
【図2】図1に示すディスク型ガス発生器のクロージャシェルの一部破断側面図である。
【図3】図1に示すディスク型ガス発生器の要部拡大断面図である。
【図4】図1に示すディスク型ガス発生器の通常作動時における要部拡大断面図である。
【図5】図1に示すディスク型ガス発生器のオートイグニッション動作時における要部拡大断面図である。
【図6】第1変形例に係るディスク型ガス発生器の要部拡大断面図である。
【図7】第2変形例に係るディスク型ガス発生器の要部拡大断面図である。
【図8】第3変形例に係るディスク型ガス発生器の要部拡大断面図である。
【図9】第4変形例に係るディスク型ガス発生器のクロージャシェルの一部破断側面図である。
【図10】本発明の実施の形態2におけるディスク型ガス発生器の模式断面図である。
【図11】本発明の実施の形態3におけるディスク型ガス発生器の模式断面図である。
【図12】本発明の実施の形態4におけるシリンダ型ガス発生器の模式断面図である。
【図13】図12に示すシリンダ型ガス発生器の要部拡大断面図である。
【図14】本発明の実施の形態5におけるシリンダ型ガス発生器の模式断面図である。
【図15】図14に示すシリンダ型ガス発生器の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態においては、ディスク型ガス発生器に本発明を適用した場合を実施の形態1ないし3として例示し、シリンダ型ガス発生器に本発明を適用した場合を実施の形態4および5として例示する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分に図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0028】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるディスク型ガス発生器の模式断面図である。まず、この図1を参照して、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器100Aの構成について説明する。
【0029】
図1に示すように、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器100Aは、軸方向の両端が閉塞された短尺円筒状のハウジングを有しており、このハウジングの内部にガス発生剤141を含む各種の構成部品が収容される収容室が形成されてなるものである。ハウジングは、それぞれが有底筒状に形成されたイニシエータシェル110およびクロージャシェル120を含んでおり、これらが組み合わせることによって構成されている。
【0030】
より具体的には、イニシエータシェル110は、隔壁部としての底板部111および周壁部112を有しており、クロージャシェル120は、隔壁部としての天板部121および周壁部122を有している。これらイニシエータシェル110およびクロージャシェル120の開口端同士が面するように組み合わされることにより、その内部に各種の構成部品が収容される上記収容室が形成されている。
【0031】
イニシエータシェル110およびクロージャシェル120は、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成されている。より具体的には、イニシエータシェル110およびクロージャシェル120は、それぞれ一枚の板状または一片のブロック状の金属部材から、各部分に相当する金型等を使用して鍛造加工、絞り加工、プレス加工等を組み合わせることによって加圧流動の繰り返しによって成形される。また、イニシエータシェル110およびクロージャシェル120の接合には、電子ビーム溶接やレーザー溶接、摩擦圧接等が好適に利用される。
【0032】
クロージャシェル120の上記収容室と当該収容室の外部の空間であるハウジングの外部の空間とを隔てる部分である周壁部122には、周方向に沿って複数の貫通孔123が設けられている。また、クロージャシェル120の周壁部122には、当該複数の貫通孔123のそれぞれを閉塞するように複数の閉塞部材160Aが設けられている。当該閉塞部材160Aは、樹脂製の部材にて構成されており、より具体的には、たとえば金型等を用いた樹脂材料を原料とする射出成形(インサート成形)等によって形成される。なお、クロージャシェル120に設けられた貫通孔123および閉塞部材160Aの具体的な構成については、後述することとする。
【0033】
イニシエータシェル110の底板部111の略中央部には、保持部113が形成されている。この保持部113は、点火器130が挿入されることで当該点火器130を保持するための部位である。具体的には、保持部113に設けられた開口に点火器130の端子ピン132が挿通するように点火器130が保持部113にイニシエータシェル110の内側から取付けられ、この状態において保持部113の先端に設けられたかしめ部114aが点火器130側に向かってかしめられることにより、点火器130がイニシエータシェル110の保持部113にかしめ固定されている。なお、ハウジングの外部に露出するように配置された端子ピン132には、点火器130とコントロールユニットとを結線するためのハーネスのコネクタ(図示せず)が接続される。
【0034】
点火器130は、火炎を発生させるための装置であり、点火部131と上述の端子ピン132とを含んでいる。点火部131は、その内部に、作動時において着火する点火薬と、この点火薬を燃焼させるための抵抗体とを含んでいる。端子ピン132は、点火薬を着火させるために点火部131に接続されている。
【0035】
より詳細には、点火器130は、一対の端子ピン132が挿通されてこれを保持する基部と、基部上に取付けられたスクイブカップとを備えており、スクイブカップ内に挿入された端子ピン132の先端を連結するように抵抗体(ブリッジワイヤ)が取付けられ、この抵抗体を取り囲むようにまたはこの抵抗体に接するようにスクイブカップ内に点火薬が充填されている。抵抗体としては一般にニクロム線等が利用され、点火薬としては一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が利用される。スクイブカップは、一般に金属製またはプラスチック製である。
【0036】
衝突を検知した際には、端子ピン132を介して抵抗体に所定量の電流が流れる。抵抗体に所定量の電流が流れることにより、抵抗体においてジュール熱が発生し、これにより点火薬が燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の火炎は、点火薬を収納しているスクイブカップを破裂させる。抵抗体に電流が流れてから点火器130が作動するまでの時間は、抵抗体にニクロム線を利用した場合には一般に2ミリ秒以下である。
【0037】
点火器130と保持部113との間には、シール部材133が介装されている。シール部材133は、点火器130と保持部113との間に生じる隙間を気密に封止することによって収容室を密閉するためのものであり、点火器130を保持部113にかしめ固定する際に上記隙間に挿入される。シール部材133としては、十分な耐熱性および耐久性を有する材料からなるものを利用することが好ましく、たとえばEPDM製のOリング等を利用することが好適である。なお、別途、シール部材133が介装される部分に液状のシール剤を塗布しておけば、さらに収容室の密閉性を高めることができる。
【0038】
イニシエータシェル110の保持部113には、点火器130を覆うように有底筒状のエンハンサカップ135が固定されている。エンハンサカップ135は、頂壁部136、側壁部137およびフランジ部138を有しており、その内部に伝火薬134が収容された伝火室139を含んでいる。エンハンサカップ135は、伝火室139と後述する燃焼室140とを区画するための部材であり、一枚の板状または一片のブロック状の金属部材をプレス加工することによって形成されたプレス成形品からなる。
【0039】
エンハンサカップ135は、その内部に設けられた伝火室139が点火部131に面するように保持部113に固定されている。より具体的には、保持部113に設けられたかしめ部114bによってエンハンサカップ135のフランジ部138がかしめられることにより、エンハンサカップ135が保持部113に固定されている。
【0040】
エンハンサカップ135は、頂壁部136および側壁部137のいずれにも開口を有しておらず、エンハンサカップ135がイニシエータシェル110の保持部113に固定された状態において、その内部に設けられた伝火室139を完全に密閉している。このエンハンサカップ135は、点火器130が作動することによって伝火薬134が着火された場合に伝火室139内の圧力上昇や発生した熱の伝導に伴って破裂または溶融するものである。エンハンサカップ135の材質としては、好適には金属が利用され、プレス加工の際の成形性の観点や軽量化の観点から、特にアルミニウムやアルミニウム合金等が好適に利用される。
【0041】
伝火室139に充填された伝火薬134は、点火器130が作動することによって生じる火炎によって点火され、燃焼することによって熱粒子を発生する。伝火薬134としては、後述するガス発生剤141を確実に燃焼開始させることができるものであることが必要であり、一般的には、B/KNO3等に代表される金属粉/酸化剤からなる組成物などが用いられる。伝火薬134は、粉状のものや、バインダによって所定の形状に成形されたもの等が利用される。バインダによって成形された伝火薬134の形状としては、たとえば顆粒状、円柱状、シート状、球状、単孔円筒状、多孔円筒状、タブレット状など種々の形状がある。
【0042】
ハウジングの内部の空間である収容室のうち、上述のエンハンサカップ135が配置された部分を取り巻く空間には、ガス発生剤141が収容される燃焼室140が位置している。より具体的には、上述のエンハンサカップ135は、ハウジングの内部に形成された燃焼室140内に突出して配置されており、このエンハンサカップ135の頂壁部136の外表面に面する部分および側壁部137の外表面に面する部分に設けられた空間が燃焼室140として構成されている。ここで、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器100Aにおいては、燃焼室140のうち、エンハンサカップ135の側壁部137の外表面に面する部分の空間にのみ、ガス発生剤141が収容されている。
【0043】
また、ハウジングの内部の空間である収容室のうち、上述の燃焼室140を取り巻く空間には、ハウジングの内周に沿ってフィルタ150が配設されている。フィルタ150は、中空筒状の形状を有しており、その中心軸はハウジングの中心軸と実質的に合致するように配置されている。
【0044】
ガス発生剤141は、点火器130によって点火された伝火薬134が燃焼することによって生じた熱粒子によって着火され、燃焼することによってガスを発生させるものである。ガス発生剤141は、非アジド系ガス発生剤を用いることが好ましく、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む粒状の成形体として形成される。燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等またはこれらの組み合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジンや硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5−アミノテトラゾール等が好適に利用される。また、酸化剤としては、たとえば塩基性硝酸銅等の塩基性硝酸塩、過塩素酸アンモニウムや過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。また、添加剤としては、バインダやスラグ形成剤、燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばカルボキシメチルセルロースの金属塩、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸塩等の有機バインダや、合成ヒドロキシタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。スラグ形成剤としては窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。また、燃焼調整剤としては、金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。
【0045】
ガス発生剤141の成形体の形状には、顆粒状、ペレット状、円柱状等の粒状のもの、ディスク状のものなど様々な形状のものがある。また、円柱状のものでは、成形体内部に孔を有する有孔状(たとえば単孔筒形状や多孔筒形状等)の成形体も利用される。これらの形状は、ディスク型ガス発生器100Aが組み込まれるエアバッグ装置の仕様に応じて適宜選択されることが好ましく、たとえばガス発生剤141の燃焼時においてガスの生成速度が時間的に変化する形状を選択するなど、仕様に応じた最適な形状を選択することが好ましい。また、ガス発生剤141の形状の他にもガス発生剤141の線燃焼速度、圧力指数などを考慮に入れて成形体のサイズや充填量を適宜選択することが好ましい。
【0046】
フィルタ150は、たとえばステンレス鋼や鉄鋼等の金属線材を巻き回して焼結したものや、金属線材を編み込んだ網材をプレス加工することによって押し固めたもの、あるいは孔あき金属板を巻き回したもの等が利用される。ここで、網材としては、具体的にはメリヤス編みの金網や平織りの金網、クリンプ織りの金属線材の集合体等が利用される。また、孔あき金属板としては、たとえば、金属板に千鳥状に切れ目を入れるとともにこれを押し広げて孔を形成して網目状に加工したエキスパンドメタルや、金属板に孔を穿つとともにその際に孔の周縁に生じるバリを潰すことでこれを平坦化したフックメタル等が利用できる。この場合において、形成される孔の大きさや形状は、必要に応じて適宜変更が可能であり、同一金属板上において異なる大きさや形状の孔が含まれていてもよい。なお、金属板としては、たとえば鋼板(マイルドスチール)やステンレス鋼板が好適に利用でき、またアルミニウム、銅、チタン、ニッケルまたはこれらの合金等の非鉄金属板を利用することもできる。
【0047】
フィルタ150は、燃焼室140にて生成されたガスがこのフィルタ150中を通過する際に、ガスが有する高温の熱を奪い取ることによって当該ガスを冷却する冷却手段として機能するとともに、当該ガス中に含まれる残渣(スラグ)等を除去する除去手段としても機能する。したがって、ガスを十分に冷却し、かつ残渣が外部に放出されないようにするためには、燃焼室140内にて生成されたガスが確実にフィルタ150中を通過するように構成することが必要である。
【0048】
また、ハウジングの内部の空間である収容室のうち、クロージャシェル120の天板部121側の端部には、フィルタ150の上端をハウジングに対して位置決めして固定するためのクロージャシェル側保持部材142が配置されている。クロージャシェル側保持部材142は、クロージャシェル120の天板部121に当接する部位と、フィルタ150の上端部分の内周面に当接する部位とを有している。
【0049】
一方、ハウジングの内部の空間である収容室のうち、イニシエータシェル110の底板部111側の端部には、フィルタ150の下端をハウジングに対して位置決めして固定するためのイニシエータシェル側保持部材143が配置されている。イニシエータシェル側保持部材143は、イニシエータシェル110の底板部111の内底面に当接する部位と、フィルタ150の下端部分の内周面に当接する部位とを有している。
【0050】
これらクロージャシェル側保持部材142およびイニシエータシェル側保持部材143は、たとえば単一の金属製板状部材をプレス加工等することによって形成されたものであり、好適には普通鋼や特殊鋼等の鋼板が用いられる。クロージャシェル側保持部材142およびイニシエータシェル側保持部材143は、上述のように金属製板状部材の一部を折り曲げることによって形成されたものであるため、クロージャシェル側保持部材142およびイニシエータシェル側保持部材143はそれぞれ適度な弾性を有している。
【0051】
そのため、クロージャシェル側保持部材142およびイニシエータシェル側保持部材143は、それぞれフィルタ150の内周面に適度な圧力をもって接触することになり、これによりフィルタ150がハウジングに保持されて固定されることになる。また、クロージャシェル側保持部材142およびイニシエータシェル側保持部材143のそれぞれは、フィルタ150の上端とクロージャシェル120の天板部121との間の隙間およびフィルタ150の下端とイニシエータシェル110の底板部111との間の隙間からのガスの流出を防止する機能も果たしている。
【0052】
また、クロージャシェル側保持部材142の内部には、燃焼室140内に収容されたガス発生剤141に接触するようにクッション材144が配置されている。このクッション材144は、成形体からなるガス発生剤141が振動等によって粉砕されることを防止する目的で設けられるものであり、好適にはセラミックスファイバの成形体や発泡シリコン等が利用される。
【0053】
図2は、図1に示すディスク型ガス発生器のクロージャシェルの一部破断側面図である。また、図3は、図1中に示す領域IIIを拡大した要部拡大断面図である。次に、これら図2および図3を参照して、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器100Aのクロージャシェル120に設けられた貫通孔123および閉塞部材160Aの詳細な構成について説明する。
【0054】
図2に示すように、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器100Aにあっては、上述したように、ハウジングとしてのクロージャシェル120が、複数の貫通孔123が設けられてなる金属製の隔壁部としての周壁部122と、当該複数の貫通孔123をそれぞれ閉塞するように設けられてなる複数の樹脂製の閉塞部材160Aとを有している。
【0055】
ここで、閉塞部材160Aの各々は、ハウジングの内部の空間である収容室と、ハウジングの外部の空間とにそれぞれ面するように設けられており、このうちのハウジングの外部の空間に面する部分に凹状の穴部165を有している。当該穴部165は、その一部が貫通孔123の内部にまで達するように設けられている。
【0056】
より具体的には、図3に示すように、閉塞部材160Aは、貫通孔123を規定する部分の隔壁部の表面(すなわち、周壁部122に設けられた貫通孔123の内周面)を覆うように設けられた絞り部161を有しており、当該絞り部161の内周面によって上述した穴部165の貫通孔123の内部に位置する部分が規定されている。絞り部161は、閉塞部材160Aが射出成形等によって形成されることにより、当該絞り部161によって覆われる部分の隔壁部の表面に固着している。
【0057】
また、閉塞部材160Aは、薄板状に形成された遮蔽部162を有しており、上述した穴部165の底面が、当該遮蔽部162によって規定されている。ここで、遮蔽部162は、閉塞部材160Aのハウジングの内部の空間である収容室側の部分に設けられており、当該遮蔽部162によって穴部165が閉塞されることにより、上記収容室とハウジングの外部の空間とが非連通とされている。
【0058】
さらに、閉塞部材160Aは、貫通孔123を取り囲む部分の隔壁部の収容室側に位置する内面(すなわち、貫通孔123の周囲に位置する部分の周壁部122の内周面)上およびハウジングの外部の空間側に位置する外面(すなわち、貫通孔123の周囲に位置する部分の周壁部122の外周面)上に向けて絞り部161から延びる第1延設部163,164を有している。第1延設部163,164は、閉塞部材160Aが射出成形等によって形成されることにより、当該第1延設部163,164によって覆われる部分の隔壁部の表面に固着している。
【0059】
上述したように、閉塞部材160Aは、樹脂材料を原料とした射出成形等によって形成されている。ここで、使用される樹脂材料としては、熱硬化性樹脂材料および熱可塑性樹脂材料が好適に利用できる。熱硬化性樹脂材料としては、たとえばエポキシ樹脂等が利用でき、熱可塑性樹脂材料としては、たとえばポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂(たとえばナイロン6やナイロン66等)、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、液晶ポリマー等が利用できる。なお、必要に応じてこれら樹脂材料にフィラーを含有させることにより、その機械的強度を増すこととしてもよい。
【0060】
なお、閉塞部材160Aを熱可塑性樹脂材料にて形成した場合には、その硬化の際に熱可塑性樹脂材料が収縮することになるが、上述したように閉塞部材160Aに第1延設部163,164を設けることとすれば、これら第1延設部163,164によって隔壁部が挟持されることになるため、当該部分において気密性が十分に確保できることになる。
【0061】
以上において説明したように、周壁部122に設けられた貫通孔123の内部に絞り部161を設けることにより、貫通孔123の内部には、当該貫通孔123の開口面積に比して小さい開口面積を有する穴部165が形成されることになる。すなわち、図示するように貫通孔123および穴部165の開口形状をいずれも平面視真円形状を有するように形成した場合には、貫通孔123の開口径Dに比してより小さい開口径dを有する穴部165が貫通孔123の内部に達するように形成されることになる。
【0062】
ここで、上述した薄板状の遮蔽部162の厚みtを十分に薄く形成すれば、当該遮蔽部162を他の部分に比して脆弱な部位として構成することが可能となる。したがって、当該構成を採用すれば、後述する通常作動時において、収容室の内圧上昇に伴って当該遮蔽部162を破裂させて消失させることが可能になる。なお、遮蔽部162の好適な厚みtとしては、閉塞部材160Aを構成する樹脂材料の種類によっても異なるが、概ね0.5mm程度とすれば通常作動時において当該遮蔽部162が破裂して消失することになる。また、遮蔽部162の厚みを適宜変更することにより、後述する通常作動時において燃焼室140の内圧が所望の内圧となるように容易に調整することもできる。
【0063】
図4は、図1に示すディスク型ガス発生器の通常作動時における要部拡大断面図である。次に、図1とこの図4とを参照して、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器100Aの通常作動時における動作について説明する。なお、通常作動時における動作とは、点火器130が作動することによってガス発生剤141が燃焼する場合のディスク型ガス発生器100Aの動作を意味する。
【0064】
図1を参照して、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器100Aが搭載された車両等が衝突した場合には、車両等に別途設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、これに基づいて点火器130が作動する。伝火室139に収容された伝火薬134は、点火器130が作動することによって生じた火炎によって点火されて燃焼し、多量の熱粒子を発生させる。
【0065】
この伝火薬134の燃焼により、エンハンサカップ135内の圧力が高まるとエンハンサカップ135がその圧力または熱によって破裂または溶融し、上述の熱粒子が燃焼室140に流れ込む。流れ込んだ熱粒子により、燃焼室140に収容されたガス発生剤141が着火されて燃焼し、多量のガスを発生させる。
【0066】
これにより、図4に示すように、燃焼室140を含む収容室の内圧が上昇し、当該収容室の内圧上昇に伴って脆弱な遮蔽部162が破裂して消失する。このとき、遮蔽部162に比して厚く構成された絞り部161は、当該収容室の内圧上昇によっても消失することはなく、貫通孔123の内部において残存することになる。これにより、絞り部161の内周面によって規定された穴部165を介してハウジングの外部の空間と収容室とが連通した状態となる。
【0067】
ここで、通常作動時における動作においては、点火器130の作動から遮蔽部162の消失までに要する時間が数十ミリ秒程度と非常に短いため、遮蔽部162が消失するまでの間に閉塞部材160Aが加熱されて消失することはない。
【0068】
図1を参照して、燃焼室140にて発生したガスは、フィルタ150中を通過し、その際フィルタ150によって熱が奪われて冷却されるとともに、当該ガス中に含まれる残渣がフィルタ150によって除去される。フィルタ150を通過した後のガスは、ハウジングの外周縁部に流れ込み、その後、図4に示すように、穴部165を経由してハウジングの外部へと噴出される。噴出されたガスは、ディスク型ガス発生器100Aに隣接して設けられたエアバッグの内部に導入され、当該エアバッグを膨張および展開する。
【0069】
ここで、通常作動時における動作においては、上述したように燃焼室140にて発生したガスがフィルタ150によって冷却されて穴部165に到達することになるため、当該ガスが有する熱によって絞り部161が溶融する温度にまで加熱されることはなく、絞り部161が消失することはない。
【0070】
図5は、図1に示すディスク型ガス発生器のオートイグニッション動作時における要部拡大断面図である。次に、図1とこの図5とを参照して、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器100Aのオートイグニッション動作について説明する。なお、オートイグニッション動作とは、上述したように、車両火災等によって点火器130が作動することなくガス発生剤141が燃焼する場合のディスク型ガス発生器100Aの動作を意味する。
【0071】
図1を参照して、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器100Aが搭載された車両等に火災が発生した場合などには、ディスク型ガス発生器100Aが外部から加熱されることになり、ディスク型ガス発生器100Aの温度が上昇する。その際、外殻部材であるハウジングの温度上昇は、ハウジングの内部の空間である収容室の温度上昇に比べて非常に顕著となる。これにより、図5に示すように、ハウジングの一部である閉塞部材160Aの温度が所定の温度に達することにより、絞り部161および遮蔽部162を含む閉塞部材160Aが溶融または燃焼することによって消失することになる。
【0072】
すなわち、オートイグニッション動作時においては、上述した通常作動時の動作においては起こりえない閉塞部材160Aに対する長時間にわたっての加熱が行なわれることになるため、閉塞部材160の全体が溶融または燃焼することによって事前に消失することになる。
【0073】
閉塞部材160Aが溶融または燃焼して消失することにより、ハウジングの外部の空間と収容室とは、隔壁部としてのクロージャシェル120の周壁部122に設けられた貫通孔123を介して連通した状態となる。ここで、通常、閉塞部材160Aが溶融または燃焼する温度に達した時点においては、収容室に収容されたガス発生剤141および伝火薬134がその自然発火温度にまで達することはないため、この時点においてガス発生剤141の燃焼は開始されない。
【0074】
図1を参照して、その後、ディスク型ガス発生器100Aの外部からの加熱が継続されることにより、収容室に収容されたガス発生剤141および伝火薬134のいずれかがその自然発火温度に達し、これによりガス発生剤141が着火されて燃焼し、多量のガスを発生させる。燃焼室140にて発生したガスは、フィルタ150中を通過してハウジングの外周縁部に流れ込み、その後、図5に示すように、貫通孔123を経由してハウジングの外部へと噴出される。
【0075】
以上において説明したように、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器100Aにおいては、点火器130が作動することによってガス発生剤141が燃焼する場合である通常作動時の動作において、閉塞部材160Aの遮蔽部162のみが破裂して消失することになるため、閉塞部材160Aに設けられた比較的小径である開口径dを有する穴部165を介してハウジングの外部の空間と収容室とが連通することになる。そのため、ガス発生剤141の燃焼時において、収容室の内圧を当該ガス発生剤141が安定して燃焼することが必要な所定の高圧環境下に置くことが可能になり、所望のガス出力が得られることになる。
【0076】
一方、車両火災等により、点火器130が作動することなくガス発生剤141が燃焼する場合であるオートイグニッション動作においては、外部からの加熱により予め絞り部161および遮蔽部162を含む閉塞部材160Aの全体が溶融または燃焼することによって消失することになるため、隔壁部としてのクロージャシェル120に設けられた比較的大径である開口径Dを有する貫通孔123を介してハウジングの外部の空間と収容室とが連通することになる。そのため、その後のガス発生剤141の燃焼時において、収容室の内圧が大幅に上昇してしまうことが抑制されることとなり、結果としてハウジングに破損が生じることを防止することができる。したがって、金属製のシールテープ等を用いて閉塞する従来の場合に比べ、ハウジングの厚みをその分だけ薄くすることも可能になり、材料費の削減と軽量化とが同時に実現できることにもなる。
【0077】
また、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器100Aとすることにより、閉塞部材160Aをたとえば射出成形等によって簡便に形成することができるため、従来必要であった金属製のシールテープ等を用いる必要がなくなり、組付け作業が大幅に簡素化して製造コストの削減が図られることになる。
【0078】
また、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器100Aとすることにより、オートイグニッション剤を準備してこれをハウジングの内部に装填することが必ずしも必要でなくなる。したがって、当該オートイグニッション剤の使用を廃止することができた場合には、部品点数が増加してしまったり組付け作業が煩雑化してしまったりすることが防止できることになり、小型化および軽量化が図られた安価に製作することができるガス発生器とすることができる。
【0079】
さらには、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器100Aにあっては、閉塞部材160Aに設けられた絞り部161が、隔壁部としてのクロージャシェル120の周壁部122に設けられた貫通孔123の内周面に固着しているのみならず、閉塞部材160Aに設けられた第1延設部163,164が、当該貫通孔123を取り囲む部分の周壁部122の表面に固着しているため、周壁部122と閉塞部材160Aとの境界部分において高いシール性が確保されることになり、ハウジングの内部の空間である収容室がハウジングの外部の空間から高い気密性をもって封止されることになる。したがって、当該構成を採用することにより、ガス発生剤141および伝火薬134が吸湿することを効果的に防止することが可能になる。
【0080】
なお、上述したように、オートイグニッション動作時においては、一般的に外殻部材であるハウジングの温度上昇がハウジングの内部の空間である収容室の温度上昇に比べて顕著となる。したがって、閉塞部材160Aの具体的な材質の選定に際しては、ガス発生剤141および伝火薬134の自然発火温度よりもある程度高い温度にて溶融または燃焼して消失する樹脂材料を選定することとしてもよいが、より安全性を高めるためには、ガス発生剤141および伝火薬134の自然発火温度以下の温度にて溶融または燃焼して消失する樹脂材料を選定することが好ましい。ここで、樹脂材料として、UL94規格に準じた難燃性評価がV−0である樹脂材料を選定することとすれば、安全性の面において尚よいことになる。
【0081】
図6ないし図8は、本実施の形態に従った第1ないし第3変形例に係るディスク型ガス発生器の要部拡大断面図であり、図9は、本実施の形態に従った第4変形例に係るディスク型ガス発生器のクロージャシェルの一部破断側面図である。次に、これら図6ないし図9を参照して、本実施の形態に従った第1ないし第4変形例について説明する。
【0082】
図6に示すように、第1変形例においては、凹状の穴部165が閉塞部材160Bのハウジングの内部の空間である収容室側に面する部分に設けられている。これに伴い、薄板状に形成された遮蔽部162は、閉塞部材160Bのハウジングの外部の空間側の部分に設けられている。
【0083】
図7に示すように、第2変形例においては、凹状の穴部165が閉塞部材160Cに一対設けられており、一対の穴部165の一方が、閉塞部材160Cのハウジングの外部の空間側に面する部分に設けられるとともに、一対の穴部165の他方が、閉塞部材160Cのハウジングの内部の空間である収容室側に面する部分に設けられている。これに伴い、薄板状に形成された遮蔽部162は、閉塞部材160Cの、隔壁部としてのクロージャシェル120の周壁部122に設けられた貫通孔123の内部に位置する部分に設けられている。
【0084】
図8に示すように、第3変形例においては、閉塞部材160Dが隔壁部としてのクロージャシェル120の周壁部122に設けられた貫通孔123の内部にのみ設けられており、これに伴って閉塞部材160Dは、上述した第1延設部を有していない。なお、凹状の穴部165は、閉塞部材160Dのハウジングの外部の空間側に面する部分に設けられており、これに伴って薄板状に形成された遮蔽部162は、閉塞部材160Dのハウジングの内部の空間である収容室側の部分に設けられている。
【0085】
図9に示すように、第4変形例においては、絞り部161から延設された第1延設部163,164のうち、クロージャシェル120の周壁部122の内周面上に位置する第1延設部163をさらにクロージャシェル120の周方向に沿って延設し、隣り合う貫通孔123に設けられた絞り部161同士が当該第1延設部163によって相互に連結されるように一体化させた構成の閉塞部材160Eとしている。
【0086】
これら第1ないし第4変形例に係るディスク型ガス発生器とした場合にも、周壁部122に設けられた貫通孔123の内部に絞り部161が設けられるととともに、薄板状の遮蔽部162によって穴部165が閉塞されることで上記収容室とハウジングの外部の空間とが非連通とされることになる。したがって、これらの構成を採用した場合にも、上述した本実施の形態におけるディスク型ガス発生器100Aとした場合と同様の作用および効果を得ることができる。
【0087】
なお、上記第4変形例においては、絞り部161から延設された第1延設部163,164のうち、クロージャシェル120の周壁部122の内周面上に位置する第1延設部163をさらにクロージャシェル120の周方向に沿って延設することで一体化させた構成の閉塞部材160Eとした場合を例示したが、絞り部161から延設された第1延設部163,164のうち、クロージャシェル120の周壁部122の外周面上に位置する第1延設部164をさらにクロージャシェル120の周方向に沿って延設し、隣り合う貫通孔123に設けられた絞り部161同士が当該第1延設部164によって相互に連結されるように一体化させた構成の閉塞部材としてもよい。
【0088】
(実施の形態2)
図10は、本発明の実施の形態2におけるディスク型ガス発生器の模式断面図である。以下、この図10を参照して、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器100Bについて説明する。
【0089】
図10に示すように、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器100Bにあっては、閉塞部材160Fが、絞り部161からクロージャシェル120の内面上に向けて延びる第2延設部166を有しており、上述した実施の形態に従った第4変形例の場合と同様に、当該第2延設部166によって隣り合う貫通孔123に設けられた絞り部161同士が相互に連結されるように一体化されている。
【0090】
また、第2延設部166は、クロージャシェル120の天板部121の内面上の部分にまで達するように形成されており、当該部分に収容室側に向けて立設する位置決め部167aが設けられている。当該位置決め部167aは、フィルタ150の天板部121側に位置する軸方向端部の内周面に当接することでフィルタ150を位置決めして保持する部位であり、フィルタ150の周方向に沿ってフィルタ150に当接するように環状の形状を有している。
【0091】
また、位置決め部167aは、フィルタ150の上端とクロージャシェル120の天板部121との間の隙間からのガスの流出を防止する機能も果たしている。なお、第2延設部166の位置決め部167aが設けられた部分の内部には、燃焼室140内に収容されたガス発生剤141に接触するようにクッション材144が配置されている。
【0092】
以上において説明した本実施の形態におけるディスク型ガス発生器100Bとした場合には、上述した実施の形態1におけるディスク型ガス発生器100Aとした場合と同様の作用および効果が得られるばかりでなく、さらにフィルタ150を位置決めして保持させるための部位を比較的軽量である閉塞部材160Fに一体化させて設けることとされている。したがって、当該構成を採用することにより、より安価に製作することが可能でかつ軽量化が図られたディスク型ガス発生器100Bすることができる。
【0093】
また、上記のように、第2延設部166がクロージャシェル120の天板部121の内面上の部分にまで達するように閉塞部材160Fを形成することとすれば、燃焼室140の大部分が当該第2延設部166によって覆われることになる。したがって、当該構成を採用することにより、ハウジングの外部の空間と内部の空間との間を第2延設部166を用いて断熱することが可能になり、外気温の変化によって生じ得る通常作動時におけるガス出力のばらつきをも抑制することができることになる。
【0094】
(実施の形態3)
図11は、本発明の実施の形態3におけるディスク型ガス発生器の模式断面図である。以下、この図11を参照して、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器100Cについて説明する。
【0095】
図11に示すように、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器100Cにあっては、閉塞部材160Gが、絞り部161からクロージャシェル120の内面上に向けて延びる第2延設部166を有しており、上述した実施の形態に従った第4変形例の場合と同様に、当該第2延設部166によって隣り合う貫通孔123に設けられた絞り部161同士が相互に連結されるように一体化されている。
【0096】
また、第2延設部166は、クロージャシェル120の天板部121の内面上の部分にまで達するように形成されており、当該部分に収容室側に向けて立設する位置決め部167bが設けられている。当該位置決め部167bは、フィルタ150の天板部121側に位置する軸方向端部の外周面に当接することでフィルタ150を位置決めして保持する部位であり、フィルタ150の周方向に沿ってフィルタ150に当接するように環状の形状を有している。
【0097】
このように構成した場合にも、上述した実施の形態2におけるディスク型ガス発生器100Aとした場合と同様の作用および効果を得ることができる。
【0098】
(実施の形態4)
図12は、本発明の実施の形態4におけるシリンダ型ガス発生器の模式断面図である。まず、この図12を参照して、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器200Aの構成について説明する。
【0099】
図12に示すように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器200Aは、軸方向の両端が閉塞された長尺円筒状のハウジングを有しており、このハウジングの内部にガス発生剤241を含む各種の構成部品が収容される収容室が形成されてなるものである。ハウジングは、ブロック状に形成されたホルダ210およびプラグ225と、円筒状に形成された筒状シェル220と、円板状に形成された仕切り部材245とを含んでおり、これらが組み合わせることによって構成されている。
【0100】
より具体的には、筒状シェル220は、隔壁部としての周壁部222を有しており、周壁部222の両端に位置する開口端を閉塞するように底板部である隔壁部としてのホルダ210と天板部である隔壁部としてのプラグ225とが筒状シェル220に組み合わされることにより、その内部に各種の構成部品が収容される上記収容室が形成されている。また、筒状シェル220、ホルダ210およびプラグ225によって構成されるハウジングの内部の空間である収容室には、収容室を軸方向に区画する仕切り部である隔壁部としての仕切り部材245が配置されている。
【0101】
筒状シェル220は、ステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成されていてもよいし、SPCEに代表される圧延鋼板をプレス加工することで円筒状に成形された金属製のプレス成形品、またはSTKMに代表される電縫管にて構成されていてもよい。特に、筒状シェル220を圧延鋼板のプレス成形品や電縫管にて構成した場合には、ステンレス鋼や鉄鋼等の金属製の部材を用いた場合に比べて安価にかつ容易に筒状シェル220を形成することができるとともに、大幅な軽量化が可能になる。
【0102】
一方、ホルダ210、プラグ225および仕切り部材245は、ステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成されており、一片のブロック状の金属部材から、各部分に相当する金型等を使用して鍛造加工、絞り加工、プレス加工等を組み合わせることによって加圧流動の繰り返しによって成形される。
【0103】
ホルダ210は、その外周面の所定位置にかしめ固定のための溝部212を有しており、当該溝部212は、ホルダ210の外周面に周方向に沿って延びるように環状に形成されている。ホルダ210は、その一部が筒状シェル220の開口端に内挿された状態で、当該ホルダ210の外周面に設けられた溝部212に対応する部分の筒状シェル220の周壁部222を径方向内側に向けて縮径させて当該溝部212に係合させることにより、筒状シェル220に対してかしめ固定されている。当該かしめ固定は、筒状シェル220の周壁部222を径方向内側に向けて均等に縮径される八方かしめと呼ばれるかしめ固定であり、この八方かしめを行なうことにより、筒状シェル220の周壁部222には、かしめ部224cが設けられることになる。
【0104】
プラグ225は、その外周面の所定位置にかしめ固定のための溝部226を有しており、当該溝部226は、プラグ225の外周面に周方向に沿って延びるように環状に形成されている。プラグ225は、その一部が筒状シェル220の開口端に内挿された状態で、当該プラグ225の外周面に設けられた溝部226に対応する部分の筒状シェル220の周壁部222を径方向内側に向けて縮径させて当該溝部226に係合させることにより、筒状シェル220に対してかしめ固定されている。当該かしめ固定は、筒状シェル220の周壁部222を径方向内側に向けて均等に縮径される八方かしめと呼ばれるかしめ固定であり、この八方かしめを行なうことにより、筒状シェル220の周壁部222には、かしめ部224aが設けられることになる。
【0105】
仕切り部材245は、筒状シェル220の所定位置に内挿された状態で、当該仕切り部材245が位置する部分に対応する部分の筒状シェル220の両側部分の周壁部222を径方向内側に向けて縮径させることにより、筒状シェル220に対してかしめ固定されている。当該かしめ固定は、筒状シェル220の周壁部222を径方向内側に向けて均等に縮径される八方かしめと呼ばれるかしめ固定であり、この八方かしめを行なうことにより、筒状シェル220の周壁部222には、一対のかしめ部224bが設けられることになる。
【0106】
筒状シェル220の上記収容室と当該収容室の外部の空間であるハウジングの外部の空間とを隔てる部分である周壁部222には、周方向および軸方向に沿って複数の貫通孔223aが設けられている。また、筒状シェル220の周壁部222には、当該複数の貫通孔223aのそれぞれを閉塞するように複数の閉塞部材260Aが設けられている。当該閉塞部材260Aは、樹脂製の部材にて構成されており、より具体的には、たとえば金型等を用いた樹脂材料を原料とする射出成形(インサート成形)等によって形成される。なお、筒状シェル220に設けられた貫通孔223aおよび閉塞部材260Aの具体的な構成については、後述することとする。
【0107】
ホルダ210には、ハウジングの軸方向に沿って貫通部211が形成されており、当該貫通部211の内部に点火器230が配置されている。点火器230は、火炎を発生させるための装置であり、点火部231と端子ピン232とを含んでいる。また、ホルダ210と点火器230との間には、樹脂成形部215が位置している。樹脂成形部215は、点火器230をホルダ210に組付けるための部位であり、たとえば射出成形等によって形成される。なお、点火器230の詳細については、上述した実施の形態1における点火器130と同様であるため、ここではその説明を繰り返さない。
【0108】
ホルダ210の外周面には、凹部213が周方向に沿って延びるように設けられており、この凹部213には、シール部材216が介装されている。シール部材216は、筒状シェル220とホルダ210との間に生じる隙間を気密に封止することによって収容室を密閉するためのものである。また、ホルダ210の内周面と点火器230との間は、上述したように樹脂成形部215によって封止されており、これによっても収容室の気密性が確保されている。
【0109】
上述のシール部材216としては、十分な耐熱性および耐久性を有する部材が用いられることが好ましく、たとえばEPDM製のOリング等を利用することが好適である。なお、別途、シール部材216が介装される部分に液状のシール剤を塗布しておけば、さらに収容室の密閉性を高めることができる。
【0110】
また、上述の樹脂成形部215の原料としては、エポキシ樹脂等に代表される熱硬化性樹脂や、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレンスルフィド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂等に代表される熱可塑性樹脂等が利用可能である。
【0111】
ホルダ210には、点火器230を覆うように有底筒状のエンハンサカップ235が固定されている。エンハンサカップ235は、頂壁部236、側壁部237およびフランジ部238を有しており、その内部に伝火薬234が収容された伝火室239を含んでいる。エンハンサカップ235は、その内部に設けられた伝火室239が点火部231に面するようにホルダ210に固定されている。より具体的には、ホルダ210に設けられたかしめ部214によってエンハンサカップ235のフランジ部238がかしめられることにより、エンハンサカップ235がホルダ210に固定されている。なお、エンハンサカップ235および伝火薬234の詳細については、上述した実施の形態1におけるエンハンサカップ135および伝火薬134と同様であるため、ここではその説明を繰り返さない。
【0112】
ハウジングの内部の空間である収容室のうち、上述のエンハンサカップ235に隣接する空間には、ガス発生剤241と、クッション材244と、多孔部材247とが収容される燃焼室240が位置している。より具体的には、燃焼室240のエンハンサカップ235側の端部にクッション材244が配置され、燃焼室240の仕切り部材245側の端部に多孔部材247が配置され、これらの間に位置する部分の燃焼室240にガス発生剤241が収容されている。なお、ガス発生剤241およびクッション材244の詳細については、上述した実施の形態1におけるガス発生剤141およびクッション材144と同様であるため、ここではその説明を繰り返さない。
【0113】
多孔部材247には、複数の連通孔248が設けられている。多孔部材247は、作動時において燃焼室240から放出されるガスの流れを整流するとともに、燃焼室240に収容されたガス発生剤241が未燃焼の状態において後述するフィルタ250が配置された空間に移動することを防止するためのものである。そのため、多孔部材247に設けられた連通孔248は、いずれもガス発生剤241の外形よりも小さく形成されるとともに、仕切り部材245に設けられた後述する連通孔246aよりも小さく形成される。
【0114】
仕切り部材245の中央部には、連通孔246aが設けられている。当該連通孔246aは、ガス発生剤241が収容された燃焼室240と後述するフィルタ250が収容された空間とを連通させるためのものである。
【0115】
ハウジングの内部の空間である収容室のうち、上述した仕切り部材245とプラグ225との間に位置する空間には、フィルタ250が配設されている。フィルタ250は、軸方向に沿って延びる中空部251を有する中空筒状の形状を有しており、その中心軸はハウジングの中心軸と実質的に合致するように配置されている。なお、フィルタ250の詳細については、上述した実施の形態1におけるフィルタ150と同様であるため、ここではその説明を繰り返さない。
【0116】
図13は、図12中に示す領域XIIIを拡大した要部拡大断面図である。次に、この図13を参照して、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器200Aの筒状シェル220に設けられた貫通孔223aおよび閉塞部材260Aの詳細な構成について説明する。
【0117】
図13に示すように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器200Aにあっては、上述したように、ハウジングとしての筒状シェル220が、複数の貫通孔223aが設けられてなる金属製の隔壁部としての周壁部222と、当該複数の貫通孔223aをそれぞれ閉塞するように設けられてなる複数の樹脂製の閉塞部材260Aとを有している。
【0118】
ここで、閉塞部材260Aの各々は、ハウジングの内部の空間である収容室と、ハウジングの外部の空間とにそれぞれ面するように設けられており、このうちのハウジングの外部の空間に面する部分に凹状の穴部265を有している。当該穴部265は、その一部が貫通孔223aの内部にまで達するように設けられている。
【0119】
より具体的には、閉塞部材260Aは、貫通孔223aを規定する部分の隔壁部の表面(すなわち、周壁部222に設けられた貫通孔223aの内周面)を覆うように設けられた絞り部261を有しており、当該絞り部261の内周面によって上述した穴部265の貫通孔223aの内部に位置する部分が規定されている。絞り部261は、閉塞部材260Aが射出成形等によって形成されることにより、当該絞り部261によって覆われる部分の隔壁部の表面に固着している。
【0120】
また、閉塞部材260Aは、薄板状に形成された遮蔽部262を有しており、上述した穴部265の底面が、当該遮蔽部262によって規定されている。ここで、遮蔽部262は、閉塞部材260Aのハウジングの内部の空間である収容室側の部分に設けられており、当該遮蔽部262によって穴部265が閉塞されることにより、上記収容室とハウジングの外部の空間とが非連通とされている。
【0121】
さらに、閉塞部材260Aは、貫通孔223aを取り囲む部分の隔壁部の収容室側に位置する内面(すなわち、貫通孔223aの周囲に位置する部分の周壁部222の内周面)上およびハウジングの外部の空間側に位置する外面(すなわち、貫通孔223aの周囲に位置する部分の周壁部222の外周面)上に向けて絞り部261から延びる第1延設部263,264を有している。第1延設部263,264は、閉塞部材260Aが射出成形等によって形成されることにより、当該第1延設部263,264によって覆われる部分の隔壁部の表面に固着している。
【0122】
上述したように、閉塞部材260Aは、樹脂材料を原料とした射出成形等によって形成されている。ここで、使用される樹脂材料としては、熱硬化性樹脂材料および熱可塑性樹脂材料が好適に利用できる。熱硬化性樹脂材料としては、たとえばエポキシ樹脂等が利用でき、熱可塑性樹脂材料としては、たとえばポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂(たとえばナイロン6やナイロン66等)、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、液晶ポリマー等が利用できる。なお、必要に応じてこれら樹脂材料にフィラーを含有させることにより、その機械的強度を増すこととしてもよい。
【0123】
以上において説明したように、周壁部222に設けられた貫通孔223aの内部に絞り部261を設けることにより、貫通孔223aの内部には、当該貫通孔223aの開口面積に比して小さい開口面積を有する穴部265が形成されることになる。すなわち、図示するように貫通孔223aおよび穴部265の開口形状をいずれも平面視真円形状を有するように形成した場合には、貫通孔223aの開口径Dに比してより小さい開口径dを有する穴部265が貫通孔223aの内部に達するように形成されることになる。
【0124】
ここで、上述した薄板状の遮蔽部262の厚みtを十分に薄く形成すれば、当該遮蔽部262を他の部分に比して脆弱な部位として構成することが可能となる。したがって、当該構成を採用すれば、通常作動時において、収容室の内圧上昇に伴って当該遮蔽部262を破裂させて消失させることが可能になる。なお、遮蔽部262の好適な厚みtとしては、閉塞部材260Aを構成する樹脂材料の種類によっても異なるが、概ね0.5mm程度とすれば通常作動時において当該遮蔽部262が破裂して消失することになる。
【0125】
以上において説明した本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器200Aにおいては、その詳細な説明は上述した実施の形態1における説明と重複するためここでは省略するが、点火器230が作動することによってガス発生剤241が燃焼する場合である通常作動時の動作において、閉塞部材260Aの遮蔽部262のみが破裂して消失することになるため、閉塞部材260Aに設けられた比較的小径である開口径dを有する穴部265を介してハウジングの外部の空間と収容室とが連通することになる。そのため、ガス発生剤241の燃焼時において、収容室の内圧を当該ガス発生剤241が安定して燃焼することが必要な所定の高圧環境下に置くことが可能になり、所望のガス出力が得られることになる。
【0126】
一方、その詳細な説明は上述した実施の形態1における説明と重複するためここでは省略するが、車両火災等により、点火器230が作動することなくガス発生剤241が燃焼する場合であるオートイグニッション動作においては、外部からの加熱により予め絞り部261および遮蔽部262を含む閉塞部材260Aの全体が溶融または燃焼することによって消失することになるため、隔壁部としての筒状シェル220に設けられた比較的大径である開口径Dを有する貫通孔223aを介してハウジングの外部の空間と収容室とが連通することになる。そのため、その後のガス発生剤241の燃焼時において、収容室の内圧が大幅に上昇してしまうことが抑制されるととなり、結果としてハウジングに破損が生じることを防止することができる。
【0127】
したがって、当該構成を採用することにより、上述した実施の形態1におけるディスク型ガス発生器100Aとした場合と同様の作用および効果を得ることができる。
【0128】
(実施の形態5)
図14は、本発明の実施の形態5におけるシリンダ型ガス発生器の模式断面図である。まず、この図14を参照して、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器200Bの構成について説明する。
【0129】
図14に示すように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器200Bは、軸方向の両端が閉塞された長尺円筒状のハウジングを有しており、このハウジングの内部にガス発生剤241を含む各種の構成部品が収容されてなるものである。ハウジングは、ブロック状に形成されたホルダ210およびプラグ225と、円筒状に形成された筒状シェル220と、円板状に形成された仕切り部材245とを含んでおり、これらが組み合わせることによって構成されている。
【0130】
より具体的には、筒状シェル220は、隔壁部としての周壁部222を有しており、周壁部222の両端に位置する開口端を閉塞するように底板部である隔壁部としてのホルダ210と天板部である隔壁部としてのプラグ225とが筒状シェル220に組み合わされることにより、その内部に各種の構成部品が収容される空間が形成されている。また、筒状シェル220、ホルダ210およびプラグ225によって構成されるハウジングの内部の空間には、当該空間を軸方向に区画する仕切り部である隔壁部としての仕切り部材245が配置されている。
【0131】
ここで、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器200Bにおいては、上述した実施の形態4におけるシリンダ型ガス発生器200Aと異なり、仕切り部材245によって区画されたハウジングの内部の空間のうち、ホルダ210側に位置する空間がガス発生剤241が収容された収容室として構成され、プラグ225側に位置するフィルタ250が収容された空間が当該収容室の外部の空間として構成される。
【0132】
上記ガス発生剤241が収容された収容室と当該収容室の外部の空間であるフィルタ250が収容された空間とを隔てる部分である仕切り部材245の中央部には、単一の貫通孔246bが設けられており、当該仕切り部材245には、単一の貫通孔246bを閉塞するように単一の閉塞部材260Bが設けられている。当該閉塞部材260Bは、樹脂製の部材にて構成されており、より具体的には、たとえば金型等を用いた樹脂材料を原料とする射出成形(インサート成形)等によって形成される。なお、仕切り部材245に設けられた貫通孔246bおよび閉塞部材260Bの具体的な構成については、後述することとする。
【0133】
また、筒状シェル220のフィルタ250が収容された部分に対応する部分の周壁部222には、周方向および軸方向に沿って複数のガス噴出口223bが設けられている。当該複数のガス噴出口223bは、フィルタ250を通過後のガスをハウジングの外部の空間に向けて噴出するための部位である。なお、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器200Bにおいては、非作動時においてハウジングの内部の空間と外部の空間とがこれら複数のガス噴出口223bを介して連通した状態にある。
【0134】
以上において説明した構成以外の構成については、上述した実施の形態4におけるシリンダ型ガス発生器200Aと同様であるため、その説明はここでは繰り返さない。
【0135】
図15は、図14中に示す領域XVを拡大した要部拡大断面図である。次に、この図15を参照して、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器200Bの仕切り部材245に設けられた貫通孔246bおよび閉塞部材260Bの詳細な構成について説明する。
【0136】
図15に示すように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器200Bにあっては、上述したように、ハウジングとしての仕切り部材245が、単一の貫通孔246bが設けられてなる金属製の隔壁部と、当該単一の貫通孔246bを閉塞するように設けられてなる樹脂製の閉塞部材260Bとを有している。
【0137】
ここで、閉塞部材260Bは、ガス発生剤241が収容された上記収容室と、当該収容室の外部の空間であるフィルタ250が収容された空間とにそれぞれ面するように設けられており、このうちのフィルタ250が収容された空間に面する部分に凹状の穴部265を有している。当該穴部265は、その一部が貫通孔246bの内部にまで達するように設けられている。
【0138】
より具体的には、図15に示すように、閉塞部材260Bは、貫通孔246bを規定する部分の隔壁部の表面(すなわち貫通孔246bの内周面)を覆うように設けられた絞り部261を有しており、当該絞り部261の内周面によって上述した穴部265の貫通孔246bの内部に位置する部分が規定されている。絞り部261は、閉塞部材260Bが射出成形等によって形成されることにより、当該絞り部261によって覆われる部分の隔壁部の表面に固着している。
【0139】
また、閉塞部材260Bは、薄板状に形成された遮蔽部262を有しており、上述した穴部265の底面が、当該遮蔽部262によって規定されている。ここで、遮蔽部262は、閉塞部材260Bの上記収容室側の部分に設けられており、当該遮蔽部262によって穴部265が閉塞されることにより、上記収容室と当該収容室の外部の空間であるフィルタ250が収容された空間とが非連通とされている。
【0140】
さらに、閉塞部材260Bは、貫通孔246bを取り囲む部分の隔壁部の上記収容室側に位置する表面上に向けて絞り部261から延びる第1延設部263を有している。第1延設部263は、閉塞部材260Bが射出成形等によって形成されることにより、当該第1延設部263によって覆われる部分の隔壁部の表面に固着している。
【0141】
上述したように、閉塞部材260Bは、樹脂材料を原料とした射出成形等によって形成されている。ここで、使用される樹脂材料としては、熱硬化性樹脂材料および熱可塑性樹脂材料が好適に利用できる。熱硬化性樹脂材料としては、たとえばエポキシ樹脂等が利用でき、熱可塑性樹脂材料としては、たとえばポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂(たとえばナイロン6やナイロン66等)、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、液晶ポリマー等が利用できる。なお、必要に応じてこれら樹脂材料にフィラーを含有させることにより、その機械的強度を増すこととしてもよい。
【0142】
以上において説明したように、仕切り部材245に設けられた貫通孔246bの内部に絞り部261を設けることにより、貫通孔246bの内部には、当該貫通孔246bの開口面積に比して小さい開口面積を有する穴部265が形成されることになる。すなわち、図示するように貫通孔246bおよび穴部265の開口形状をいずれも平面視真円形状を有するように形成した場合には、貫通孔246bの開口径Dに比してより小さい開口径dを有する穴部265が貫通孔246bの内部に達するように形成されることになる。
【0143】
ここで、上述した薄板状の遮蔽部262の厚みtを十分に薄く形成すれば、当該遮蔽部262を他の部分に比して脆弱な部位として構成することが可能となる。したがって、当該構成を採用すれば、通常作動時において、収容室の内圧上昇に伴って当該遮蔽部262を破裂させて消失させることが可能になる。なお、遮蔽部262の好適な厚みtとしては、閉塞部材260Bを構成する樹脂材料の種類によっても異なるが、概ね0.5mm程度とすれば通常作動時において当該遮蔽部262が破裂して消失することになる。
【0144】
以上において説明した本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器200Bにおいては、その詳細な説明は上述した実施の形態1における説明と重複するためここでは省略するが、点火器230が作動することによってガス発生剤241が燃焼する場合である通常作動時の動作において、閉塞部材260Bの遮蔽部262のみが破裂して消失することになるため、閉塞部材260Bに設けられた比較的小径である開口径dを有する穴部265を介して収容室の外部の空間であるフィルタ250が収容された空間と収容室とが連通することになる。そのため、ガス発生剤241の燃焼時において、収容室の内圧を当該ガス発生剤241が安定して燃焼することが必要な所定の高圧環境下に置くことが可能になり、所望のガス出力が得られることになる。
【0145】
一方、その詳細な説明は上述した実施の形態1における説明と重複するためここでは省略するが、車両火災等により、点火器230が作動することなくガス発生剤241が燃焼する場合であるオートイグニッション動作においては、外部からの加熱により予め絞り部261および遮蔽部262を含む閉塞部材260Bの全体が溶融または燃焼することによって消失することになるため、隔壁部としての仕切り部材245に設けられた比較的大径である開口径Dを有する貫通孔246bを介して収容室の外部の空間であるフィルタ250が収容された空間と収容室とが連通することになる。そのため、その後のガス発生剤241の燃焼時において、収容室の内圧が大幅に上昇してしまうことが抑制されることとなり、結果としてハウジングに破損が生じることを防止することができる。
【0146】
したがって、当該構成を採用することにより、上述した実施の形態1におけるディスク型ガス発生器100Aとした場合と同様の作用および効果を得ることができる。
【0147】
以上において説明した本発明の実施の形態1ないし5およびその変形例においては、隔壁部に設けられた貫通孔および閉塞部材に設けられた凹状の穴部をいずれも平面視真円形状を有するように構成した場合を例示したが、これらの形状はこれに限定されるものではなく、他の形状を有するように構成することも当然に可能である。
【0148】
また、上述した本発明の実施の形態1ないし5およびその変形例においては、ハウジングの内部にガス発生剤に加えて伝火薬が装填されてなるガス発生器に本発明を適用した場合を例示して説明を行なったが、ハウジングの内部にガス発生剤のみが装填された構成のガス発生器に本発明を適用することも当然に可能である。
【0149】
また、上述した本発明の実施の形態1ないし5およびその変形例において示した特徴的な構成は、本発明の趣旨に照らして許容される範囲で当然に相互に組み合わせることが可能である。
【0150】
このように、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0151】
100A〜100C ディスク型ガス発生器、110 イニシエータシェル、111 底板部、112 周壁部、113 保持部、114a,114b かしめ部、120 クロージャシェル、121 天板部、122 周壁部、123 貫通孔、130 点火器、131 点火部、132 端子ピン、133 シール部材、134 伝火薬、135 エンハンサカップ、136 頂壁部、137 側壁部、138 フランジ部、139 伝火室、140 燃焼室、141 ガス発生剤、142 クロージャシェル側保持部材、143 イニシエータシェル側保持部材、144 クッション材、150 フィルタ、160A〜160G 閉塞部材、161 絞り部、162 遮蔽部、163,164 第1延設部、165 穴部、166 第2延設部、167a,167b 位置決め部、200A,200B シリンダ型ガス発生器、210 ホルダ、211 貫通部、212 溝部、213 凹部、214 かしめ部、215 樹脂成形部、216 シール部材、220 筒状シェル、222 周壁部、223a 貫通孔、223b ガス噴出口、224a〜224c かしめ部、225 プラグ、226 溝部、230 点火器、231 点火部、232 端子ピン、234 伝火薬、235 エンハンサカップ、236 頂壁部、237 側壁部、238 フランジ部、239 伝火室、240 燃焼室、241 ガス発生剤、244 クッション材、245 仕切り部材、246a 連通孔、246b 貫通孔、247 多孔部材、248 連通孔、250 フィルタ、251 中空部、260A,260B 閉塞部材、261 絞り部、262 遮蔽部、263,264 第1延設部、265 穴部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス発生剤が収容された収容室を内部に含むハウジングと、作動することによって前記ガス発生剤を燃焼させる点火器とを備えたガス発生器であって、
前記ハウジングは、前記収容室と前記収容室の外部の空間とを隔てる部分に貫通孔が設けられてなる金属製の隔壁部と、前記貫通孔を閉塞することで前記収容室および前記収容室の外部の空間のいずれにも面するとともに、少なくともその一部が前記貫通孔の内部に達することとなるように前記収容室に面する部分および前記収容室の外部の空間に面する部分のうちの少なくとも一方に凹状の穴部が設けられてなる樹脂製の閉塞部材とを含み、
前記閉塞部材は、前記貫通孔の内部における前記穴部の開口面積が前記貫通孔の開口面積に比して小さくなるように、前記貫通孔を規定する部分の前記隔壁部の表面を覆うように設けられた絞り部と、前記穴部の底面を規定する脆弱な遮蔽部とを有している、ガス発生器。
【請求項2】
前記閉塞部材は、熱硬化性樹脂材料および熱可塑性樹脂材料のいずれかを原料とした射出成形品からなり、
前記絞り部が、当該絞り部によって覆われる部分の前記隔壁部の表面に固着している、請求項1に記載のガス発生器。
【請求項3】
前記閉塞部材は、前記貫通孔を取り囲む部分の前記隔壁部の前記収容室側に位置する内面上および前記収容室の外部の空間側に位置する外面上の少なくともいずれかに向けて前記絞り部から延びるように設けられた第1延設部をさらに有し、
前記第1延設部が、当該第1延設部によって覆われる部分の前記隔壁部の表面に固着している、請求項2に記載のガス発生器。
【請求項4】
前記閉塞部材が、前記ガス発生剤の自然発火温度以下の温度において溶融または燃焼して消失する樹脂材料にて構成されている、請求項1から3のいずれかに記載のガス発生器。
【請求項5】
前記点火器の作動によって着火されることで前記ガス発生剤を燃焼させる伝火薬をさらに備え、
前記閉塞部材が、前記ガス発生剤の自然発火温度および前記伝火薬の自然発火温度のうちの低い方の温度以下の温度において溶融または燃焼して消失する樹脂材料にて構成されている、請求項1から3のいずれかに記載のガス発生器。
【請求項6】
前記ハウジングは、前記隔壁部として天板部、底板部および周壁部を含む軸方向の両端が閉塞された短尺筒状の形状を有し、
前記ハウジングの内部の空間が、前記ガス発生剤が収容された前記収容室として構成され、
前記収容室には、前記ガス発生剤を前記ハウジングの軸方向に取り囲むように中空筒状のフィルタが配設され、
前記点火器が、前記収容室に面するように前記底板部に組付けられ、
前記貫通孔が、前記周壁部に設けられている、請求項1から5のいずれかに記載のガス発生器。
【請求項7】
前記閉塞部材は、前記天板部の前記収容室側に位置する内面上に向けて前記絞り部から延びるように設けられた第2延設部をさらに有し、
前記第2延設部が、前記フィルタの前記天板部側に位置する軸方向端部の内周面および外周面のうちの少なくとも一方に当接することで前記フィルタの径方向における位置決めを行なう位置決め部を含んでいる、請求項6に記載のガス発生器。
【請求項8】
前記ハウジングは、前記隔壁部として天板部、底板部、周壁部および仕切り部を含む軸方向の両端が閉塞された長尺略筒状の形状を有し、
前記ハウジングの内部の空間が、前記ガス発生剤が収容された前記収容室として構成され、
前記収容室は、前記仕切り部によって軸方向に区画され、
前記仕切り部によって軸方向に区画された前記収容室のうち、前記底板部側に位置する空間に前記ガス発生剤が収容され、前記天板部側に位置する空間にフィルタが配設され、
前記点火器が、前記収容室に面するように前記底板部に組付けられ、
前記貫通孔が、前記フィルタが収容された空間を取り囲む部分の前記周壁部に設けられている、請求項1から5のいずれかに記載のガス発生器。
【請求項9】
前記ハウジングは、前記隔壁部として天板部、底板部、周壁部および仕切り部を含む軸方向の両端が閉塞された長尺略筒状の形状を有し、
前記ハウジングの内部の空間は、前記仕切り部によって軸方向に区画され、
前記仕切り部によって区画された前記ハウジングの内部の空間のうち、前記底板部側に位置する空間が、前記ガス発生剤が収容された前記収容室として構成され、前記天板部側に位置する空間が、前記収容室の外部の空間としてフィルタが配設されたフィルタ室として構成され、
前記点火器が、前記収容室に面するように前記底板部に組付けられ、
前記貫通孔が、前記仕切り部に設けられている、請求項1から5のいずれかに記載のガス発生器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−112252(P2013−112252A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261599(P2011−261599)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】