説明

ガス絶縁計器用変圧器

【課題】二次コイルの口出し線と一次コイルの間の電磁的又は静電的な誘導を抑制することにより、監視用機器を破損するおそれがないガス絶縁計器用変圧器の提供を図る。
【解決手段】鉄心1の外周に二次コイル2、及び一次コイル4を巻回して構成され、二次コイル2は、層数が奇数である巻線部と、巻線部を構成する導線の一端に形成され、巻線部の一方の端面から引き出される第1の口出し線21aと、導線の他端に形成され、鉄心と前記二次コイルとの間に形成される空隙を介して第1の口出し線と同一の端面23aから引き出される第2の口出し線21bと、を有するガス絶縁計器用変圧器を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス絶縁計器用変圧器に関する。より詳細には、一次コイルに印加された高電圧を変成して、二次コイルに接続される監視用機器に監視用電圧を提供するガス絶縁計器用変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
受変電設備などの電力設備に設けられるガス絶縁開閉器(GIS:Gas Insulated Switch-gear)の構成機器の1つとして、ガス絶縁計器用変圧器(ガスVT:Voltage Transformer)がある。ガス絶縁計器用変圧器は、SF6ガス等の絶縁ガスが充填された金属性容器の内部に形成される空間に配置され、一次側回路の高電圧を、計器、及び継電器などの監視用機器が測定可能な100V程度の二次側回路の電圧に高精度で変成する。また、ガス絶縁計器用変圧器は、一次側回路と、二次側回路との間が、電気的に絶縁される。このため、ガス絶縁計器用変圧器は、二次側回路に接続される監視用機器を、高電圧が印加される一次側回路から絶縁し、これらの機器を保護する。
【0003】
図6を参照して、従来のガス絶縁計器用変圧器の構成について説明する。図6において、従来のガス絶縁計器用変圧器60の縦断面を示す。図6に示されるように、ガス絶縁計器用変圧器60は、鉄心1に、二次コイル2と、一次コイル4とを同心状に配置した配置を有する。一次コイル4は、主要変圧器を介して送電線、又は配電線と接続されるガス絶縁開閉器の母線などの一次側回路に接続され、高電圧が印加される。二次コイル2は、一次コイル4との間で変成した電圧を、二次側回路に接続される監視用機器に監視用電圧として供給する。二次コイル2と、一次コイル4との間には、一般的には絶縁層又はシールド層が形成されて、二次コイル2と、一次コイル4との間の絶縁を強化する。図6に示すガス絶縁計器用変圧器60では、二次コイル2、及び一次コイル4はそれぞれ、二次巻形3、及び一次巻形5に巻回される。また、一次コイル4の外周を取り囲むように高圧シールド6が環状に配置される。高圧シールド6は、その外面の電界を緩和するために、C字型に湾曲した断面を有する。
【0004】
ガス絶縁計器用変圧器60の二次コイル2の口出し線21bは、二次コイル2の巻線部の外周面を介して、口出し線21aと同一方向に引き出される。このため、二次コイル2の外周面において、口出し線21bが配置される部分の仕上がり寸法が、他の部分の仕上がり寸法よりも口出し線21bの外径長だけ大きくなる。このように二次コイル2の仕上がり寸法が増加することによって、二次コイル2の外周面上に配置される絶縁層、及び一次コイル4の円周長が増加する。この結果として、使用する絶縁材、及び導線などの材料の量が増加して、ガス絶縁計器用変圧器60の製造コストが増加する可能性がある。また、二次コイル2の口出し線21bを、一次コイル4の外周面上に配置する配置(図示せず)を採用することも考えられる。しかしながら、そのような配置では、口出し線21bが、一次コイル4に近接して配置されるため、高電圧が印加される一次コイル4から電磁的又は静電的な作用を受けるおそれが大きい。
【0005】
二次コイル2の構造として、二次コイル2の外周部に平坦部を設ける構造が提案される(特許文献1)。図7に、外周部に平坦部が設けられた二次コイル2の斜視図を示す。図7に示す構造を採用することにより、口出し線21bを二次コイル2の外周面上を介して引き出しても、二次コイル2の外形寸法が大きくなる問題は、生じない。このため、ガス絶縁計器用変圧器60の小型化、及び製造コストの低減を図ることができる。
【0006】
しかしながら、図7に示す構造は、二次コイル2に平坦部を有するため、二次巻形3に導線を巻回して、二次コイル2の巻線を形成するときに、導線に加えられる張力を変化させる必要がある。このため、二次コイル2の製造工程が複雑になる。この問題を解決するために、一方の口出し線21bを鉄心1に近接して配線して、他方の口出し線21aと同一の端面23へ引き出す構造が採用されている。図8に口出し線21bを鉄心1に近接して配線するガス絶縁計器用変圧器70の縦断面を示す。この構造では、口出し線21bは、鉄心1に近接して配線されるため、二次コイル2の仕上がり寸法は変化しない。このため、二次コイル2の外形寸法が大きくなる問題は、生じない。さらに、二次コイル2の巻線は、円筒巻線となるため、二次コイル2の巻線を形成する工程が、複雑になる問題もまた生じない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭58−153426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、一方の口出し線を鉄心に近接して配線する場合、開閉器の投入時又は開放時などに一次コイルに発生するサージ電圧が、電磁的又は静電的に二次コイルに誘導されて、二次コイルに接続される監視用機器を破損するおそれがある。すなわち、開閉器の動作時などに1次側回路に急峻なサージが発生した場合に、一次コイルと、二次コイルの口出し線との間の相互インダクタンスに基づいて、二次コイルに生じる電磁誘導電圧、又は一次コイルと、二次コイルとの間の静電結合に基づいて、二次コイルに生じる静電誘導電圧のいずれかによって、二次コイルに接続される監視用機器が破損するおそれがある。
【0009】
そこで、本発明は、一次コイルからの電磁的又は静電的な誘導を抑制して、監視用機器を破損するおそれがないガス絶縁計器用変圧器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
鉄心の外周に二次コイル、及び一次コイルを巻回して構成され、二次コイルは、層数が奇数である巻線部と、巻線部を構成する導線の一端に形成され、巻線部の一方の端面から引き出される第1の口出し線と、導線の他端に形成され、鉄心と前記二次コイルとの間に形成される空隙を介して第1の口出し線と同一の端面から引き出される第2の口出し線と、を有するガス絶縁計器用変圧器が提供される。
【発明の効果】
【0011】
開示のガス絶縁計器用変圧器は、一次コイルからの電磁的又は静電的な誘導を抑制して、監視用機器を破損するおそれがないという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るガス絶縁計器用変圧器の縦断面を概略的に示す図である。
【図2】本発明に係るガス絶縁計器用変圧器の二次コイルの一例の斜視図である。
【図3】図1のA‐A´横断面の一例を概略的に示す図である。
【図4】図1のA‐A´横断面の他の例を概略的に示す図である。
【図5】本発明に係るガス絶縁計器用変圧器の二次コイルの他の例の斜視図である。
【図6】従来のガス絶縁計器用変圧器の縦断面を概略的に示す図である。
【図7】従来のガス絶縁計器用変圧器の二次コイルの一例の斜視図である。
【図8】従来のガス絶縁計器用変圧器の縦断面を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に、本発明に係るガス絶縁計器用変圧器の縦断面を概略的に示す。図1において、ガス絶縁計器用変圧器10は、鉄心1と、鉄心1の脚部の周囲に円筒状に導線を巻回して形成される二次コイル2と、二次コイル2の外側に二次コイル2と同心状に導線を巻回して形成される一次コイル4とを有する。すなわち、図1に示すガス絶縁計器用変圧器10は、円筒巻線を同心配置で配置する内鉄型の変圧器である。
【0014】
二次コイル2を形成する導線は、口出し線21a、及び21bをそれぞれの端面に有する。一方の口出し線21aは、一方の端面23aに配置される。また、他方の口出し線21bは、他方の端面23bから二次コイル2の内径の内部に形成される、鉄心1と二次コイル2との空隙部を介して、口出し線21aと同一の端面23aに引き出される。二次コイル2は、内径の内部に鉄心1を配置する中空部を有するため、口出し線21bは、巻線部と、中空部に配置される鉄心1との間に形成される空隙を介して、端面23bから端面23aに引き出すことが可能である。
【0015】
図2を参照して、本発明に係る二次コイル2の口出し線21a、及び21bの配置について、より詳細に説明する。図2において、本発明に係る二次コイル2、及び二次コイルに巻回される二次巻形3の斜視図を示す。図2では、説明を簡明にするために、鉄心1、一次コイル4、及び一次巻形5などのガス絶縁計器用変圧器10の他の構成要素は、記載していない。
【0016】
二次コイル2は、二次巻形3の上に巻回される導線により構成されるコイルである。二次コイル2の層数nは、奇数である。すなわち、二次コイル2は、導線を円筒巻線の長さ方向に奇数回数に亘り巻回したものである。二次コイル2の層数nが偶数の場合、二次コイル2の口出し線21a、及び21bは、同一の端面23に引き出されるため、他方の口出し線21bの経路を考慮する必要がないためである。二次コイル2の層数nは、二次コイル2の巻数N2、二次コイル2の長さLによって、規定される。二次コイル2の巻数N2は、ガス絶縁計器用変圧器10が使用される1次側電圧V1、一次コイル4の巻数N1、二次側電圧V2によって、規定される。一方、二次コイル2の長さLは、ガス絶縁計器用変圧器10の機械的な大きさ、使用する導線の外径などによって規定される。このように、二次コイル2の層数nは、所定の定数を適当に選択することにより、所望の層数nを獲得することができる。しかしながら、一般的にガス絶縁計器用変圧器10では、層数nの設計における優先度は、機械的な大きさ、及び使用する導線の外径など他の要素に比べて、高くない。このため、ガス絶縁計器用変圧器10の設計の自由度を高めるために、二次コイル2の層数nは、適当に選択されることが多い。
【0017】
二次コイル2の層数が奇数である場合、一方の端面23aに一方の口出し線21aが配置され、他方の端面23bに他方の口出し線21bが配置される。このため、同一の端面23a又は23bに、双方の口出し線21a及び21bを引き出す場合には、口出し線21a又は21bのいずれか一方を引き回す必要がある。本発明に係るガス絶縁計器用変圧器10では、口出し線21a、又は21bのいずれか一方を、二次コイル2の内径の内部に形成される中空部を介して、他方の口出し線21b、又は21aが配置される端面23b、又は23aに引き出す。このため、口出し線21は、一次コイル4に印加されるサージ電圧により生じる電磁誘導電圧又は静電誘導電圧を小さくすることができる。口出し線21が、二次コイル2の内径の内部に形成される中空部に配置されるので、一次コイル4と並接しないためである。また、電磁誘導、及び静電誘導に対して、二次コイル2がシールドとして機能することも期待されるであろう。さらに、口出し線21は、二次コイル2の外周面でなく、内径内部に配置されるので、二次コイル2の外形寸法が大きくなる問題は、生じない。さらにまた、二次コイル2の巻線部の形状は、平坦部を有しない円筒形状であるため、巻線部を形成する工程が複雑になる問題も生じない。
【0018】
図1を再び参照して、本発明に係るガス絶縁計器用変圧器10の他の構成要素について、順に説明する。鉄心1は、二次コイル2と、一次コイル4とを磁気的に結合する磁気回路を形成する。好適には、鉄心1は、高透磁率、かつ低損失な磁気材料で形成される。鉄心1は、うず電流損を低減するために、板厚が数百ミクロン程度の冷間圧延ケイ素鋼板を成層構造にしてもよい。さらに、鉄心1は、表面に無機質の絶縁皮膜などを形成することが可能である。鉄心材料として、方向性ケイ素鋼帯を使用して、良好な励磁特性を有する鉄心1を形成できる。また、鉄心材料として、無方向性ケイ素鋼帯を使用してもよい。また、図3に示すように、適当な幅を有するケイ素鋼帯を組み合わせることによって、二次コイル2の内径に適応した鉄心1を形成できる。この場合も、二次コイル2の口出し線21は、二次コイル2と、鉄心1とにより形成される空隙を介して、他方の口出し線21が配置される端面23に引き出される。なお、二次コイル2の内径と、鉄心の構造との関係で、口出し線21が通過することができる断面を有する空隙が形成できない場合がある。この場合は、図4に示すように、鉄心1を構成する1つ、又は2つ以上のケイ素鋼帯を適当な幅を有するケイ素鋼帯と置き換えて、口出し線21が通過可能な空隙を形成してもよい。さらにまた、鉄心1は、ガス絶縁用容器などと接地用配線で接続して、鉄心1の電位を、アース電位にしてもよい。
【0019】
一次コイル4は、円筒状の一次巻形5の上に、絶縁層、及び電界緩和シールド(図示せず)を介して巻回することができる。一次コイル4は、複数の層を有する場合、それぞれの層の間は、絶縁フィルム(図示せず)などを介して巻回することにより、絶縁される。
【0020】
図5において、ガス絶縁計器用変圧器10に使用される二次コイル2の他の例を示す。図2に示す二次コイル2と同様に、図5に示す二次コイル2では、口出し線21bは、二次コイル2の内径の内部に形成される中空部を介して、他方の口出し線21aが配置される端面23aに引き出される。しかしながら、口出し線21bは、口出し線21aから二次コイル2の最も離れた内径面に配置される。このように、ガス絶縁計器用変圧器10に使用される二次コイル2では、口出し線21bは、二次コイル2の内径面上の任意の位置に配置できる。このため、鉄心1の構造、又はガス絶縁計器用変圧器10から二次電圧を引き出す配置などに基づき、適当な位置に口出し線21bを配置することができる。
【0021】
以上説明した実施形態は、本発明の実施形態を例示したものであり、その各実施形態の構成要素の組み合せ、変形、及びバリエーションは、当業者にとって明らかであろう。当業者は、本発明の原理及び請求の範囲に記載した発明の範囲を逸脱することなく上述の実施形態の種々の変形を実施できることは明らかであろう。
【0022】
例えば、本明細書において説明されたガス絶縁計器用変圧器10の二次コイル2、及び一次コイル4はそれぞれ二次巻形3、及び一次巻形5に型巻きされるが、じか巻きにしてもよい。すなわち、二次コイル2は、二次巻形3を配置せずに鉄心1の鉄心脚に絶縁物を介して、二次コイル2に絶縁物を巻回し、さらにその上に一次巻形5を配置せずに一次コイル4を巻回してもよい。また、ガス絶縁計器用変圧器10の二次コイル2、及び一次コイル4は同心配置で配置されるが、交互配置で配置してもよい。さらにガス絶縁計器用変圧器10は、内鉄形変圧器であるが、外鉄形変圧器としてもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 鉄心
2 二次コイル
3 二次巻形
4 一次コイル
5 一次巻形
6 高圧シールド
10 ガス絶縁計器用変圧器
21 口出し線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄心の外周に二次コイル、及び一次コイルを巻回して構成されるガス絶縁計器用変圧器であって、
前記二次コイルは、
層数が奇数である巻線部と、
前記巻線部を構成する導線の一端に形成され、前記巻線部の一方の端面から引き出される第1の口出し線と、
前記導線の他端に形成され、前記鉄心と前記二次コイルとの間に形成される空隙を介して前記第1の口出し線と同一の端面から引き出される第2の口出し線と、
を有することを特徴とするガス絶縁計器用変圧器。
【請求項2】
前記一次コイルは、前記二次コイルの外周面の外側に同心配置される請求項1に記載のガス絶縁計器用変圧器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−23292(P2012−23292A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161783(P2010−161783)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000003942)日新電機株式会社 (328)
【Fターム(参考)】