説明

キチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物、並びにその製造方法

キチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物であって、3〜10量体のオリゴマーの含有率が60%以上であるものを開発すること、及び上記オリゴマー組成物を製造する方法を開発することを目的とし、この目的は、フッ化水素酸、これ以外のハロゲン化水素酸、又はこれ等の酸をキチン系又は/及びキトサン系材料に混合することにより達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、キチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物、並びにキチン系及び/又はキトサン系材料から、キチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物を工業的に有利に製造、精製する方法に関するものである。具体的には、キトサンオリゴマー及び/又はキチンオリゴマーを含有する組成物及び、その製造、精製する方法に関するものであり、更に具体的には、キトサンオリゴマー及び/又はキチンオリゴマーの3〜10量体を含有する組成物を効率よく製造、精製する方法に関するものであり、より好適な具体例としては、キトサンオリゴマー及び/又はキチンオリゴマーの4〜10量体を含有する組成物を効率よく製造、精製する方法に関するものである。また、キトサンオリゴマー及び/又はキチンオリゴマーを含有する組成物を精製工程に負荷をかけることなく製造、精製する方法に関するものである。尚本明書に於いてキトサン及び/又はキトサンオリゴマーにはその塩類も含まれる。
【背景技術】
キチンは甲殻類(カニ、エビ、オキアミ)、昆虫類等の軟体動物の体表面を覆う外骨格の成分であり、イカのフネやカニ、エビなどの腱にも含まれている。植物界ではカビ、酵母、キノコ、緑藻等の細胞壁中に存在している。
キチンはN−アセチル−D−グルコサミンがβ−(1、4)結合した多糖類であって、植物の構造因子であるセルロースに匹敵するバイオマスである。キチンの脱アセチル化されたものはキトサンと呼ばれ、その大半はキチンから合成されている。また、脱アセチル化度がキチンともキトサンとも判定しにくい領域である場合は部分脱アセチル化キチンと呼ばれることもある。
キチン系及び/又はキトサン系材料は一般に生物、特に動物に対する生理活性が大であり、例えば機能性食物繊維、飼料添加剤、餌料粘結剤、食品添加剤、抗菌剤、防腐剤、創傷治癒剤、関節疾治療剤、健康食品原料、化粧品原料、廃水処理剤、土壌改良剤、自然的農薬成分などの用途に広く用いられ、またカチオン性凝集剤、塗料、染料、繊維工業、製紙工業のごとき工業的用途にも広く用いられる。
しかし、その結晶性の高さに起因する水に対する溶解度不足が、用途の拡大、深化の妨げとなっている。
一般に、キチン系及びキトサン系材料を分解した低重合体であるキチンオリゴマー及びキトサンオリゴマーは水に対する溶解性が改善され、その用途展開について活発に研究がなされている。特に、単量体や二量体を高い比率で含有するキチンオリゴマー及びキトサンオリゴマーは、水に対する溶解性に優れるため、食品用途を中心に開発が進んでいる。
キチン系及びキトサン系材料の低重合体であるキチンオリゴマー及びキトサンオリゴマーは、重合度の異なるオリゴマーの混合物である場合が殆どであるが、近年は、特定の重合度からなるキチンオリゴマー及びキトサンオリゴマーの用途展開も進みつつある。例えば、S.Suzukiらは、Chem.Pharm.Bull.、33巻(2)、886〜888頁、1985年;Carbobydrate Research、151巻、403〜408頁、1986年;Microbiol.Immunol.30巻(8)、777〜787頁、1986年;Chem.Pharm.Bull.、36巻(2)、784〜790頁、1988年;Microbiol.Immunol.33巻(4)、357〜367頁、1989年などにおいて、特定重合度のキチンオリゴマー及びキトサンオリゴマーについてその用途展開の可能性を報告している。
本発明者らはこれまで高濃度のハロゲン化水素酸に対する高分子物質の溶解性、分解性について多くの研究を行ってきた。例えばフッ化水素酸が、線状ポリエステルを分別溶解する溶剤としての優れていることを特開平11−5866号公報で提案している。
キチンはセルロースと同じく溶剤に溶け難い物質であり、これまでに知られている溶剤は濃硫酸、濃リン酸、無水フッ化水素、無水ギ酸、フッ化ホウ素1〜2水和物、ロダンリチウム熱飽和水溶液など、比較的限定されている。またキチンはセルロースと異なり、これらの溶剤には溶解はするものの反応液が黒色化するという欠点がある。これは生成したグルコサミンが空気酸化を受けるためであろうと考えられる。セルロースを上記の酸に溶解する場合にはセルロースオリゴマーが上記の酸とエステルを形成するが、キチンオリゴマー及びキトサンオリゴマーの場合にも同様の現象が観察される。例えばキチンと無水フッ化水素とを反応させると、キチンオリゴマー組成物及びキトサンオリゴマー組成物の純度が低下し、目的物質の精製に労力を要する。酵素によりキチン系及びキトサン系材料を分解した場合も同様で、副生成物により純度が低下するとともにエンドトキシン濃度が高くなり、目的物質の精製に労力を要することが多い。また、キチン系及びキトサン系材料の溶解性の乏しさから酵素反応の効率は高くはない。
ハロゲン化水素によるキチン系及び/又はキトサン系材料の溶解および分解は円滑に起こり比較的短時間内に液状化ができる。しかし多量のハロゲン化水素とキチン系及び/又はキトサン系材料とを一時期に接触させて反応させると、副生成物が大量に発生し、目的物質の精製に労力を要する傾向にある。
また、ハロゲン化水素を含有する溶液から、キチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーを回収するには一般的に中和法を用いるが、ハロゲン化水素と塩基性成分との中和反応熱が大きいため、発熱を抑えるための設備が大型化する傾向にある。中和熱を抑制する方策をとらない場合には、溶液の温度上昇に起因する副反応により目的のキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマー収率が低下する。また、キチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーの貧溶媒と混合して沈殿回収する方法も考えられるが、キチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーを含有する溶液に対して大量の溶媒が必要になる点で、やはり設備が大型化し、工業化に際しては製造コスト上昇要因となる。
さらに、中和法を採用する場合には中和塩が生成するが、キチンオリゴマー組成物中及び/又はキトサンオリゴマー組成物中への中和塩の混入を抑制したい場合には、高価かつ維持コストの高い脱塩装置等の精製工程が必要となる。
また、本発明者らの知見によると、キチン系及び/又はキトサン系材料に95〜100%ハロゲン化水素を混合する方法では、低温状態を保つ必要があるが、それ以降のキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物を製造する工程中での温度上昇によって容易にオリゴマーがさらに分解される懸念があり、特定重合度のキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーを再現性良く製造することは困難である。
従って、例えば3〜10量体の重合度のキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーを効率良く製造するには従来公知の技術では不十分であった。
また組成物については、市場に流通しているオリゴ糖は、単量体および二量体を高い比率で含有するキチンオリゴマー及びキトサンオリゴマーであるか、10量体を超える重合度のオリゴマーを高い比率で含有するキチンオリゴマー及びキトサンオリゴマーであるかであり、4〜10量体の範囲内のオリゴ糖を高い比率で含有するキチンオリゴマー及びキトサンオリゴマーの提供は未だ困難である。
これは、高分子量のキチン及びキトサンを分解の制御が困難なことに起因している。キチンオリゴマー及びキトサンオリゴマーは、高分子量のキチン及びキトサンを分解して製造されるが、酵素反応を利用する方法及び酸加水分解反応を利用する方法並びにそれらを併用する方法とに大別され、それぞれについて多くの提案がなされているが、分解反応の制御が難しく、4〜10量体の範囲内のキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーを高い収率で得ることは困難である。
勿論、単量体および二量体を高い比率で含有するキチンオリゴマー及びキトサンオリゴマーであるか、10量体より高分子量側のオリゴマーを高い比率で含有するキチンオリゴマー及びキトサンオリゴマーも産業上の利用価値があることは言うまでもない。しかし、4〜10量体の範囲内のオリゴ糖を高い比率で含有するキチンオリゴマー及びキトサンオリゴマーが高い機能性を示す用途に適用するには不十分であるとしか言えない。
さらに、キチン及びキトサンはその分子量に係わらず、不純物として重金属を含有しているなど、その安全性に改善の余地が残されている。
【発明の開示】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、フッ素を含有するキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーによって、キチン系及び/又はキトサン系材料と所定濃度のフッ化水素酸とを混合することによって、上記の課題が解決されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、フッ素原子を0.001〜1000ppm含有することを特徴とするキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマー組成物、並びにキチン系及び/又はキトサン系材料に、その濃度が20重量%以上95重量%未満の範囲内のフッ化水素酸を添加することを特徴とするキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物の製造方法に係るものである。
さらに本発明は、キチン系及び/又はキトサン系材料に、(イ)フッ化水素酸と(ロ)フッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸の少なくとも1種とを添加し、この際の(ハ)フッ化水素酸の濃度が、フッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸とフッ化水素酸との総量に対して1重量%以上75重量%未満の範囲内であり、(ニ)フッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸の濃度がフッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸とフッ化水素酸との総量に対して1〜35重量%の範囲内であることを特徴とするキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物の製造方法に係わるものであり、キチン系及び/又はキトサン系材料の1つであるキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーに、ハロゲン化水素酸(但しフッ化水素酸を除く)を添加することを特徴とするキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物の製造方法に係わるものである。
先ず本発明の組成物について説明する。
本発明において、キチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーはフッ素原子を0.001〜1000ppmの範囲内において含有することが必要である。好適には0.001〜100ppmの範囲内、より好適には0.001〜10ppmの範囲内、さらに好適には0.01〜10ppmの範囲内である。フッ素原子の含有量が0.001ppm未満である場合、重金属の含有率の低減効果が不十分となる傾向にあるか、重金属の除去を目的とした処理を施すことにより製造コストが上昇する傾向かにある。一方、1000ppmを超えてフッ素原子を含有する場合には、フッ素を含有する化合物が不純物として作用する恐れがあり安全性の観点から好ましくない。
本発明において、キチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーはカルシウム原子を0.001〜1000ppmの範囲内において含有することが望ましい。より好適には0.001〜100ppmの範囲内、さらに好適には0.001〜10ppmの範囲内、特に好適には0.01〜10ppmの範囲内である。カルシウム原子の含有量が0.001ppm未満である場合、重金属の含有率の低減効果が不十分となる傾向にあるか、重金属の除去を目的とした処理を施すことにより製造コストが上昇する傾向かにある。一方、1000ppmを超えてカルシウム原子を含有する場合には、カルシウム原子(主にフッ化カルシウム)が不純物として作用する恐れがあり安全性の観点から好ましくない。
本発明において、キチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーは3〜10量体のオリゴマー含有率が60%以上であることが好適である。より好適には3〜10量体のオリゴマー含有率が70%以上であり、さらに好適には80%以上である。キチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーは3〜10量体のオリゴマー含有率が60%未満である場合には、水に対する溶解量が高くなり単量体や二量体を高濃度で含有する従来のキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーとの差異が不明確になる傾向にあるか、また、水に対する溶解量が低くなり10量体より高分子量側のオリゴマーを高濃度で含有する従来のキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーとの差異が不明確になる傾向にある。
本発明において、キチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーは4〜10量体のオリゴマー含有率が40%以上であることが好適である。より好適には4〜10量体のオリゴマー含有率が50%以上であり、さらに好適には60%以上である。キチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーは4〜10量体のオリゴマー含有率が40%未満である場合には、水に対する溶解量が高くなり単量体や二量体を高濃度で含有する従来のキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーとの差異が不明確になる傾向にあるか、また、水に対する溶解量が低くなり10量体より高分子量側のオリゴマーを高濃度で含有する従来のキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーとの差異が不明確になる傾向にある。
本発明において、キチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーは、20℃における100gの水に対する溶解量が2〜20gの範囲内であることが好適である。20℃における100gの水に対する溶解量が2g未満である場合には、10量体より高分子量側のオリゴマーを高濃度で含有する従来のキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーとの差異が不明確になる傾向にあり、20℃における100gの水に対する溶解量が20gを超える場合には、単量体や二量体を高濃度で含有する従来のキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーとの差異が不明確になる傾向にある。
本発明において、キチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーは、エンドトキシン濃度が100EU/ml以下であることが望ましい。
人体が想定外の危険に哂されることを回避する目的において、エンドトキシン濃度は10EU/ml以下であることが好適であり、1EU/ml以下であることがさらに好適であり、検出されないことが特に好適である。
更に若干つけ加えると以下の通りである。
本発明により得られるキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物に更にその他の第三成分たとえば乳糖、白糖、デンプン、ブドウ糖、結晶性セルロース、アルギン酸、ポリ乳酸等が添加されていても良い。また、飼料や食料品等の人間や動物の体内に口から直接入る用途以外においては、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体(エチレン含量15%以下)等も第三成分として添加されても良い。キチンオリゴマーとキトサンオリゴマーは混合されていても構わないが、脱アセチル化度の分布が少ない方が工業上の利用の点で好適である。不純物は0.1%以下が好ましく、0.01%以下がより好ましく、0.001%以下が特に好ましい。
この本発明のキチン及び/又はキトサンオリゴマーの組成物はその形体は固体(粉末、塊状物)、液体(溶液、分散液スラリー)の何れでも良いが、その化学的組成はキチン及び/又はキトサンのオリゴマーの単体塩または混合塩であってもよい。無機酸塩としてフッ化水素酸塩が例示されるが、この組成物はフッ化水素イオンによる腐蝕性とか毒性を考慮すると通常は他の安全な陰イオン(例えば塩酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩)に複分解法等によって変換し、使用し易くすることが出来る。
また、この本発明のキチン及び/又はキトサンオリゴマーの組成物はその形体は重金属類を高度に除外できる点においてキチンオリゴマー組成物であることが好適である。
次いで組成物の製造法について説明する。
本発明に於いて使用するキチン系及び/又はキトサン系材料とは、N−アセチル−D−グルコサミンがβ(1→4)結合した多糖であるキチン、及びキチンが脱アセチル化された部分脱アセチル化キチン並びにキトサンの少なくとも1種から成るものであり、またキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーも含まれる。 本発明においては、キチン系及び/又はキトサン系材料として、甲殻類、昆虫類、軟体動物類または微生物類からの採取、必要に応じ精製、回収したキチンを使用することができる。
また本発明の効果を阻害しない範囲であれば、甲殻類、昆虫類、軟体動物類または微生物類を直接使用することもできる。また、それらを水酸化ナトリウム等で処理した脱アセチル化した部分脱アセチル化キチン及びキトサンも使用することができる。その中でも、原料が安価であり、且つ安定確保可能である点で甲殻類の中でも特に海老類から採取、又は精製、又は回収されたものであることが好ましい。
本発明にかかわるキチン系及び/又はキトサン系材料の脱アセチル化度は、特に限定されるものではないが、キチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物の残存フッ素成分濃度の低減が容易なことから、キチン系及び/又はキトサン系材料に由来する脱アセチル化度は0.25以下であることが好ましく、0.10以下であることがより好ましい。つまりキチン系及び/又はキトサン系材料としてキトサン系材料を使用するよりもキチン系材料を使用する場合の方が、キチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物中から残存する不要なフッ素成分を除去する手間が少なくなる傾向がある点で好ましい。
また、本発明にかかわるキチン系及び/又はキトサン系材料は、その形状は特に限定されるものではないが、粉砕されていることが好ましく、4メッシュを通過するものであることがより好ましく、16メッシュを通過するものであることがさらに好ましく、50メッシュを通過するものであることが特に好ましい。
本発明の目的物であるキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物の製造法の1つに於いては、キチン系及び/又はキトサン系材料をフッ化水素酸により反応せしめるものであるが、使用するフッ化水素酸の濃度は20重量%以上95重量%未満の範囲内であることが重要であり、20〜60重量%の範囲内であることが好ましい。使用するフッ化水素酸の濃度が75〜95重量%の範囲内である場合には、3〜10量体のうち低分子側のオリゴ等の組成比率が高くすることが容易であり、20重量%以上75重量%未満の範囲内である場合には、3〜10量体のうち高分子側のオリゴ糖の組成比率が高くすることが容易となる。使用するフッ化水素酸の濃度が低い場合には、3〜10量体からなるキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物を製造する選択率に優れる傾向があるが、キチン糸及び/又はキトサン系材料との混合及び反応を高い温度領域で行うか、反応時間を長期化させる必要があり、収率も低い傾向にある。また、使用するフッ化水素酸の濃度が高い場合には、短時間でキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物を製造できるメリットがあるが、温度管理等の反応制御を高度に行う必要があり、例え高度な制御のもとで製造した場合にも3〜10量体のキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物の選択的製造効率が悪く、且つ製造ロット毎に得られるオリゴマーの重合度や化学組成斑が発生する危険性が高まる傾向にある。
さらに、使用するフッ化水素酸の濃度が20重量%未満では高温、高圧条件下で処理を行う必要がある場合があり、逆に使用するフッ化水素酸の濃度が95重量%を越える場合では、オリゴマーの収率、特に4〜10量体の選択製造性が低下する傾向があるし、製造ごとに得られるキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物の組成斑の抑制が困難となる傾向があり、また廃酸処理の観点からも製造コストが大きくなる。
本発明において、キチン系及び/又はキトサン系材料とフッ化水素酸とを反応せしめる際の両者の使用比は、特に限定されるものではないが、キチン系及び/又はキトサン系材料100重量部に対してフッ化水素酸を10〜100000重量部の範囲内で使用することが好ましく、10〜10000重量部の範囲内で使用することがより好ましく、100〜1000重量部の範囲内であることが特に好ましい。キチン系及び/又はキトサン系材料100重量部に対して、フッ化水素酸が10重量部未満の場合にはキチン系及び/又はキトサン系材料が均一に反応しにくい恐れがあり、フッ化水素酸が100000重量部を超える場合には、使用済みフッ化水素酸の処理費用により製造コスト増大するし、フッ化水素酸を中和処理する場合には、中和熱による温度上昇が著しく、冷却設備導入のもと処理を行っても、二次的な加水分解反応による品質の劣化や、想定外の低分子化や脱アセチル化度の変化、オリゴマーの分解による着色物質の生成などの問題が発生する。
本発明において、キチン系及び/又はキトサン系材料とフッ化水素酸とを反応せしめるための方法は、特に限定されるものではなく、キチン系及び/又はキトサン系材料とフッ化水素酸とが充分に接触する手段であれば良く、たとえば滴下しても、フッ化水素酸にキチン系及び/又はキトサン系材料を投入しても良く、また攪拌混合等各種の手段がいずれも有効に使用出来る。但し、キチン系及び/又はキトサン系材料とフッ化水素酸との接触(以下単に混合という)が均一にタイムラグなく実施されることが、キチン及び/又はキトサンのオリゴマー組成物を効率よく得られる点で好ましく、例えば、攪拌しながらフッ化水素酸にキチン及び/又はキトサンを一括添加する方法などが好適に選択される。
また、キチン系及び/又はキトサン系材料とフッ化水素酸との混合及び反応は、回分方式でも連続方式でも問題なく選択できる。
本発明において、キチン系及び/又はキトサン系材料とフッ化水素酸とを混合し、反応させる際の温度は、特に限定されるものではないが、例えば−20℃〜150℃の範囲内であり、25〜150℃の範囲内であることが好ましく、30〜120℃の範囲内であることがより好ましく、35℃〜80℃の範囲内であることがさらに好ましい。温度が低い場合には、反応が緩やかに進行するため反応の制御が容易であるが、反応が緩やか過ぎて目的の重合度までキチン系及び/又はキトサン系材料の加水分解反応を実施することが困難である。また、温度が高すぎる場合には、反応が激しくなりすぎ、製造ロット毎の化学的な斑が大きくなる恐れがあるとともに、グルコサミンの生成量が大きくなりキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物の収率が低下する恐れがある。
本発明において、キチン系及び/又はキトサン系材料とフッ化水素酸との混合、反応は、酸素又は光から遮断した環境下で行われることが好ましく、酸素及び光から遮断した環境下で行われることがより好ましい。光及び酸素が存在する環境下では、混合液が濃褐色〜薄茶色に変化する傾向にある。
本発明において、フッ化水素酸との接触後の脱アセチル化度は原料であるキチン系及び/又はキトサン系材料の脱アセチル化度と比較して上昇する傾向があるが、殆ど変化しないことが一般的である。しかし、原料であるキチン系及び/又はキトサン系材料の脱アセチル化度とは異なる脱アセチル化度のキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物を得る目的において、フッ化水素酸と接触させた以降の任意の工程において、脱アセチル化度を調整しても良い。具体的には、キチン系材料を用いた場合には、水酸化ナトリウム溶液や水酸化カリウム溶液、水酸化カルシウム溶液などによる従来公知の脱アセチル化反応により、フッ化水素酸により加水分解されて得られたキチンオリゴマーを脱アセチル化して、キトサンオリゴマーに変換することが可能である。また、キトサン系材料を用いた場合には、従来公知のアシル化反応により、フッ化水素酸により加水分解されて得られたキトサンオリゴマーをキチンオリゴマーに変換することも勿論可能である。
キチン系及び/又はキトサン系材料とフッ化水素酸とを混合した溶液から、混合から所定時間経過した後に、フッ化水素酸由来のフッ素成分を除去することが好ましい。
フッ化水素酸由来のフッ素成分を取除く方法は、特に限定されるものではなく、中和法、再沈殿法などの従来公知の技術を選択することができるが、特に中和法を選択することが望ましい。
中和法によりフッ化水素酸由来のフッ素成分を取除く場合には、中和熱による温度上昇を抑制する目的で、中和系及び/又は中和系に添加する薬液を冷却することが一般的である。
中和前の水又は親水性有機溶媒による希釈をHF濃度が25%以下になるように調整することが好ましく、20%以下にすることがより好ましい。これにより収率が向上し、有機不純物の含量が抑制される。
中和法に用いられる化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどの水酸化物、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウムなどの炭酸塩、アンモニアなどの塩基性物質が例示されるが、中和反応での生成物の除去が容易で且つ、残存フッ素成分濃度が簡便に低減できる点で水酸化カルシウム、炭酸カルシウムなど塩基性カルシウム塩が好適に使用される。
また、その使用量は特に制限されるものではないが、溶液中のフッ素成分濃度の低減がより高度に実現されることから、溶液の液性が、pHが7以上の中性又は塩基性になるように、より好ましくはpHが8以上の塩基性になるようにすることが好ましい。
一旦、中性又は塩基性、より好ましくは塩基性にされた溶液は、フッ素成分濃度をさらに低減させる目的で、不溶解成分を除去した後に、液性を中性又はpH6以下の酸性にすることが望ましく、pH6以下の酸性にすることがより望ましい。その際、酸性物質とともに、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム等のカルシウム塩を共存させるべく添加ことにより、溶液中のフッ素成分濃度の低減効果がより大きくなる。
中和によって生成する塩は、使用する塩基性物質により異なり、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム等が例示される。一般的に中和によって生成した塩は電気透析などの脱塩装置により除去され本発明においても使用することが可能であるが、特別な脱塩装置を用いなくても残存中和塩濃度を低減可能であることが本発明の特徴の一つである。
つまり、フッ化物は溶解度が低く、フッ化カルシウムは特に溶解度が低いため、本発明においては、電気透析装置のような特別な装置を用いることなく、ろ過程度の簡単な操作で、溶液に残存する中和塩の濃度を低減することができる。
キチン系及び/又はキトサン系材料とフッ化水素酸との混合により得られるキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマー溶液は、目的に応じてそのまま利用することも可能であるし、濃縮等により乾燥させ粉体として利用することも可能である。さらに、RO膜、限外ろ過膜などの膜分画やHPLC等のクロマトグラフィー的分画を利用して、組成の調整やより高度な精製を実施することができる。
フッ化水素酸とを混合させた溶液からフッ化水素酸由来のフッ素成分を除去する以降の工程において、キチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーを含有する溶液を、活性炭、アルミナ、シリカゲル、アルキル基含有シリカゲル、アミノ基含有シリカゲル、水酸基含有シリカゲル、シアノ基含有シリカゲルのうち、少なくとも1種類以上と接触させることにより、得られるキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物に含まれるキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーの重合度分布を小さくする目的や、得られるキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物中の不純物を除去する目的等が達成される。
活性炭、アルミナ、シリカゲル、アルキル基含有シリカゲル、アミノ基含有シリカゲル、水酸基含有シリカゲル、シアノ基含有シリカゲルのうち、少なくとも1種類以上を充填した容器に、キチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーを含有する溶液を通液させると、キチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーや不純物が該充填剤に吸着される。そこに溶離液を通液することにより、キチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマー中の不純物を除去するとともに、重合度別に分別回収することが可能となる。
この際の液としては、その温度が室温ではなく温水であっても良い。温水の場合には二量体を効果的に除外でき、目的の組成のオリゴ糖を得ることが容易になる傾向がある。
溶離液は、充填剤の種類により、目的に応じて適宜、選択することができる。
本発明により得られるキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物は、再結晶化させることよっても精製が可能である。
精製に使用する溶媒は特に限定されるものではないが、水;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸、酪酸などのカルボン酸類;などが好適に例示される。
また、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、適宜公知の第三成分を添加することができる。第三成分としては、有機溶媒、酸、アルカリ、消泡剤、熱安定化剤、などが列挙される。
本発明において、キチン系及び/又はキトサン系材料とフッ化水素酸との混合系は、水系である場合が殆どであるが、反応活性を制御する目的、溶解性を制御する目的などで適宜有機溶媒を混合することができる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸、酪酸などのカルボン酸類;などが例示される。
有機溶媒の中でも、特に親水性有機溶媒が好適に使用され、例えば、キチン系及び/又はキトサン系材料とフッ化水素酸とを所定時間混合した後で、且つフッ化水素酸由来のフッ素成分を除去する工程以前の段階で、フッ化水素酸100重量部に対して1〜400重量部の範囲内で親水性有機溶媒を添加することにより、重合度10〜20程度のキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマーが溶液から析出するので、濾過等により回収除去することが可能である。
本発明において、キチン系及び/又はキトサン系材料とフッ化水素酸との混合系は、界面活性剤を含有していても良い。
界面活性剤は、キチン系及び/又はキトサン系材料とフッ化水素酸との混合初期の親和性を高めるのに有効であり、得られるキチン及び/又はキトサンのオリゴマーの化学組成斑を排除する効果が顕著である。また、キチン系及び/又はキトサン系材料の濡れ性が向上するので、キチン系及び/又はキトサン系材料に対するフッ化水素酸の使用量を低減させることが可能であり、フッ化水素酸由来のフッ素成分の残存量を低減させることが可能である。
界面活性剤の添加量は特に制限されるものではないが、キチン系及び/又はキトサン系材料とフッ化水素酸とを混合した溶液中に0.0001〜1重量%の範囲内で含有されているときに製品の化学組成斑の低減効果が特に顕著である。0.0001重量%より濃度が低い場合には濡れ性の向上効果が小さい。逆に1重量%より濃度が高い場合には、界面活性剤除去用の専用設備の導入が必要となる恐れがある。
界面活性剤の種類は特に制限されるものではなく、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルリン酸塩等の陰イオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等の陽イオン性界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤など公知のものを使用することができるが、金属元素を含有していない界面活性剤が好ましい。
キチン系及び/又はキトサン系材料とフッ化水素酸との混合により得られるキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーのうちキトサン部分はまずは使用したハロゲン化水素酸塩の形になっている。このようにして得られるキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物は、ついで目的とする無機酸塩(例えば塩酸塩)、または有機酸塩(例えば酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩)等に複分解法などの従来公知の方法によって変化させ実用化されることも可能である。
本発明に於いては、キチン系及び/又はキトサン系材料とフッ化水素酸とを混合するに際し、フッ化水素酸とフッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸とを併用することが出来る。この態様について以下に説明する。
すなわち、本発明はキチン系及び/又はキトサン系材料、フッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸、フッ化水素酸とを混合すること、且つこの際該フッ化水素酸の濃度が、フッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸とフッ化水素酸との総量に対して1重量%以上75重量%未満好ましくは20重量%以上75重量%未満の範囲内であること、及びフッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸の濃度がフッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸とフッ化水素酸との総量に対して1〜35重量%の範囲内である。
使用するフッ化水素酸の濃度はフッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸及びフッ化水素酸の総量に対して1重量%好ましくは20重量%以上75重量%未満の範囲内になるように調整することが好ましく20〜60重量%の範囲内となるよう調整することが好ましい。フッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸及びフッ化水素酸の総量に対するフッ化水素酸の濃度が低い場合には、3〜10量体からなるキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物を製造する選択率に優れる傾向があるが、キチン系及び/又はキトサン系材料との混合及び反応を高い温度領域で行うか、反応時間を長期化させる必要がある。また、フッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸及びフッ化水素酸の総量に対するフッ化水素酸の濃度が高い場合には、短時間でキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物を製造できるメリットがあるが、温度管理等の反応制御を高度に行う必要があり、例え高度な制御のもとで製造した場合にも製造ロット毎に得られるオリゴマーの重合度や化学組成斑が発生する危険性が高まる傾向にある。
さらに、フッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸及びフッ化水素酸の総量に対するフッ化水素酸の濃度が1重量%未満であると高温、高圧条件下で処理を行う必要がある。逆にフッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸及びフッ化水素酸の総量に対するフッ化水素酸の濃度が70重量%を越える場合には、オリゴマーの収率、特に4〜10量体の選択製造性が低下する傾向があるし、製造ごとに得られるキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物の組成斑の抑制が困難となる傾向があり、また廃酸処理の観点からも製造コストが大きくなる。
本発明において、フッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸とは、塩化水素酸、臭化水素酸、沃化水素酸のうち少なくとも1つであり、その使用濃度は、フッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸及びフッ化水素酸の総量に対して1〜35重量%の範囲内になるように調整することが好ましく、5〜30重量%の範囲内となるよう調整することがより好ましく、10〜30重量%の範囲内となるよう調整することがさらに好ましい。フッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸及びフッ化水素酸の総量に対するフッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸の濃度が低い場合には、フッ化水素酸濃度にもよるが、3〜10量体からなるキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物を製造する選択率に優れる傾向があるが、キチン系及び/又はキトサン系材料との混合及び反応を高い温度領域で行うか、反応時間を長期化させる必要がある。また、フッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸及びフッ化水素酸の総量に対するフッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸の濃度が高い場合には、短時間でキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物を製造できるメリットがあるが、温度管理等の反応制御を高度に行う必要があり、例え高度な制御のもとで製造した場合にも製造ロット毎に得られるオリゴマーの重合度や化学組成斑が発生する危険性が高まる傾向にある。
さらに、フッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸及びフッ化水素酸の総量に対するフッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸の濃度が1重量%未満であると、フッ化水素酸の濃度にもよるが、高温、高圧条件下で処理を行う必要がある。またフッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸及びフッ化水素酸の総量に対するフッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸の濃度が35重量%を越える場合には、オリゴマーの収率、特に4〜10量体の選択製造性が低下する傾向があり、加えて製造ごとに得られるキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物の組成斑の抑制が困難であり、また廃酸処理の観点から製造コストが大きくなる。
本発明に於いてはキチン系及び/又はキトサン系材料、フッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸、フッ化水素酸との混合物中の全ハロゲン原子のうちフッ素原子が占める比率が、50%以上になるようにフッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸及びフッ化水素酸の使用量を制御することが好ましく、75%以上になるようにフッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸及びフッ化水素酸の使用量を制御することがより好ましい。
キチン系及び/又はキトサン系材料、フッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸、フッ化水素酸との混合物中の全ハロゲン原子のうちフッ素原子が占める比率が、50%未満の場合フッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸由来のハロゲン成分の除去に対する負荷が大きくなる。
また、フッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸及びフッ化水素酸とが共存することにより、同ハロゲン濃度のフッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸やフッ化水素酸による反応と比べて、反応速度が速くなる傾向がある。つまり、フッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸やフッ化水素酸の単独使用時と比較して使用ハロゲン量を低減させることが可能である。
本発明において、キチン系及び/又はキトサン系材料、フッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸、フッ化水素酸とを反応せしめる際の三者の使用割合は、特に限定されるものではないが、キチン系及び/又はキトサン系材料100重量部に対してフッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸とフッ化水素酸との総量が10〜100000重量部の範囲内となるように使用することが好ましく、10〜10000重量部の範囲内になるように使用することがより好ましく、100〜1000重量部の範囲内になるように使用することが特に好ましい。キチン系及び/又はキトサン系材料100重量部に対して、フッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸とフッ化水素酸との総量が10重量部未満の場合にはキチン系及び/又はキトサン系材料が均一に反応しにくい恐れがあり、フッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸とフッ化水素酸との総量が100000重量部を超える場合には、使用済みフッ化水素酸の処理費用により製造コスト増大するし、フッ化水素酸を中和処理する場合には、中和熱による温度上昇が著しく、冷却設備導入のもと処理を行っても、二次的な加水分解反応による品質の劣化や、想定外の低分子化や脱アセチル化度の変化、オリゴマーの分解による着色物質の生成などの問題が発生する。
本発明において、キチン系及び/又はキトサン系材料、フッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸、フッ化水素酸とを反応せしめるための方法は、特に限定されるものではなく、キチン系及び/又はキトサン系材料にフッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸及びフッ化水素酸を滴下しても、フッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸とフッ化水素酸との混合液にキチン系及び/又はキトサン系材料を投入しても良く、また攪拌、混合等各種の手段がいずれも有効に使用出来る。但し、キチン系及び/又はキトサン系材料がフッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸及びフッ化水素酸と均一にタイムラグなく接触(以下単に混合という)されることが、キチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物を効率よく得られる点で好ましく、例えば、攪拌しながらキチン系及び/又はキトサン系材料にフッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸とフッ化水素酸との混合液を一括添加する方法、キチン系及び/又はキトサン系材料にフッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸とフッ化水素酸とを同時に添加する方法などが好適に選択される。
また、キチン系及び/又はキトサン系材料とフッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸とフッ化水素酸との混合及び反応は、回分方式でも連続方式でも問題なく選択できる。
その他の反応の処理手段や条件は原則としてフッ化水素酸使用の場合と同じである。
本発明に於いては更に次の発明が包含される。
即ちキチン系及び/又はキトサン系材料の1種であるキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーにハロゲン化水素酸(但しフッ化水素酸を除く)を混合する方法である。ハロゲン化水素酸によるキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーの溶解および分解は円滑に起こり比較的短時間内に液状化ができる。しかし多量のハロゲン化水素とキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーとを一時期に接触させて反応させると、副生成物が大量に発生し、目的物質の精製に労力を要する。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、キチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーにハロゲン化水素酸(但しフッ化水素酸を除く)を添加することによって、上記の難点が解決されることを見いだした。
すなわち本発明は、キチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーにハロゲン化水素酸(但しフッ化水素酸を除く)を添加することを特徴とするキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物の製造方法である。
上記のキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーとは、N−アセチル−D−グルコサミンがβ(1→4)結合したオリゴ糖であるキチンオリゴマー、及びキチンが脱アセチル化された部分脱アセチル化キチンオリゴマー並びにキトサンオリゴマーである。
上記ハロゲン化水素酸(但しフッ化水素酸を除く)を使用する本発明においては、キチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーとして、キチン系及び/又はキトサン系材料から得られたものが例示され、より具体的には、キチン系及び/又はキトサン系材料を酸加水分解したものや酵素分解したものが例示される。
本発明に於いて使用するキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーは、重合度2〜40の範囲内のオリゴマーを70重量%以上含有するものである。より好ましくは重合度2〜5及び/又は重合度10〜40のキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマー、更に好ましくは重合度2〜4及び/又は重合度10〜20のキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーである。
本発明に於いて使用するキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーの脱アセチル化度は、特に限定されるものではないが、キチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物の不要なハロゲン化物濃度の低減が容易なことから、キチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーに由来する脱アセチル化度は0.25以下であることが好ましく、0.10以下であることがより好ましい。つまり、キチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーとしてキトサンオリゴマーを使用するよりもキチンオリゴマーを使用する場合の方が、キチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物中から残存する不要なハロゲン成分を除去する手間が少なくなる傾向がある。
また、本発明に係るキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーは、その形状は特に限定されるものではないが、粉砕されていることが好ましく、4メッシュを通過するものであることがより好ましく、16メッシュを通過するものであることがさらに好ましく、50メッシュを通過するものであることが特に好ましい。また、液体中に溶解された溶媒状であっても差し支えない。
本発明のキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物の製造法では、原料たるキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーをハロゲン化水素酸(但しフッ化水素酸を除く)により反応せしめるが、使用するハロゲン化水素酸(但しフッ化水素酸を除く)の濃度は1〜70重量%の範囲内であることが好ましく、20〜60重量%の範囲内であることがより好ましい。使用するハロゲン化水素酸(但しフッ化水素酸を除く)の濃度が低い場合には、3〜10量体からなるキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物を製造する選択率に優れる傾向があるが、キチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーとの混合及び反応を高い温度領域で行うか、反応時間を長期化させる必要がある。また、使用するハロゲン化水素酸(但しフッ化水素酸を除く)の濃度が高い場合には、短時間でキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物を製造できるメリットがあるが、温度管理等の反応制御を高度に行う必要があり、例え高度な制御のもとで製造した場合にも製造ロット毎に得られるオリゴマーの重合度や化学組成斑が発生する危険性が高まる傾向にある。また、廃酸処理の観点から製造コストが大きくなる傾向がある。
本発明において、キチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーにハロゲン化水素酸(但しフッ化水素酸を除く)を添加する場合の割合は、特に限定されるものではないが、キチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマー100重量部に対してハロゲン化水素酸(但しフッ化水素酸を除く)を10〜100000重量部の範囲内で使用することが好ましく、10〜10000重量部の範囲内で使用することがより好ましく、100〜1000重量部の範囲内であることが特に好ましい。キチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマー100重量部に対して、ハロゲン化水素酸(但しフッ化水素酸を除く)が10重量部未満の場合にはキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーが均一に反応しにくい恐れがあり、ハロゲン化水素酸(但しフッ化水素酸を除く)が100000重量部を超える場合には、使用済みハロゲン化水素酸(但しフッ化水素酸を除く)の処理費用により製造コスト増大するし、ハロゲン化水素酸(但しフッ化水素酸を除く)を中和処理する場合には、中和熱による温度上昇が著しく、冷却設備導入のもと処理を行っても、二次的な加水分解反応による品質の劣化や、想定外の低分子化や脱アセチル化度の変化、オリゴマーの分解による着色物質の生成などの問題が発生する。
本発明において、キチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーにハロゲン化水素酸(但しフッ化水素酸を除く)を添加(以後単に混合という場合がある)する方法は、特に限定されるものではなく、キチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーにハロゲン化水素酸(但しフッ化水素酸を除く)を滴下しても、ハロゲン化水素酸(但しフッ化水素酸を除く)にキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーを投入しても良い。但し、キチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーとハロゲン化水素酸(但しフッ化水素酸を除く)との混合が均一にタイムラグなく実施されることがキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物を効率よく得られる点で好ましく、例えば、攪拌しながらハロゲン化水素酸(但しフッ化水素酸を除く)にキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーを一括添加する方法などが好適に選択される。
また、キチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーとハロゲン化水素酸(但しフッ化水素酸を除く)との混合及び反応は、回分方式でも連続方式でも問題なく選択できる。
その他の反応の処理手段や条件は原則としてキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマー以外のキチン系及び/又はキトサン系材料使用の場合と同じである。
本発明において、ハロゲン化水素酸(但しフッ化水素酸を除く)との接触後の脱アセチル化度は原料であるキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーの脱アセチル化度と比較して上昇する傾向があるが、殆ど変化しないことが一般的である。しかし、原料であるキチンオリゴマー及び/又はキトサンゴマーの脱アセチル化度とは異なる脱アセチル化度のキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物を得る目的において、ハロゲン化水素酸(但しフッ化水素酸を除く)と接触させた以降の任意の工程において、脱アセチル化度を調整しても良い。具体的には、キチンオリゴマーを用いた場合には、水酸化ナトリウム溶液や水酸化カリウム溶液、水酸化カルシウム溶液などによる従来公知の脱アセチル化反応により、ハロゲン化水素酸(但しフッ化水素酸を除く)により加水分解されて得られたキチンオリゴマーを脱アセチル化して、キトサンオリゴマーに変換することが可能である。また、キトサンオリゴマーを用いた場合には、従来公知のアシル化反応により、ハロゲン化水素酸(但しフッ化水素酸を除く)により加水分解されて得られたキトサンオリゴマーをキチンオリゴマーに変換することも勿論可能である。
キチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーとハロゲン化水素酸(但しフッ化水素酸を除く)との混合により得られるキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーのうちキトサン部分はまずは使用したハロゲン化水素酸(但しフッ化水素酸を除く)の形になっている。このようにして得られるキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物は、ついで目的とする無機酸塩(例えば塩酸塩)、または有機酸塩(例えば酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩)等に複分解法などの従来公知の方法によって変化させ実用化されることも可能である。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明組成物の製造方法について、その工程の流れを示すフローシートである。
以下に本発明のキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物の製造方法について、その具体的な工程の流れをフローシートとして図1に示す。但し図1中の符号は夫々以下のことを表わす。
1:キチン系及び/又はキトサン系材料 2:フッ化水素酸及び/又はフッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸
3:反応液
4:反応液(3)と親水性有機溶媒との混合液
5:親水性有機溶媒
6:濾過
7:キチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーの一部除去(回収)
8:濾過液
9:塩基性カルシウム塩
10:濾過
11:フッ化物等ハロゲン化物の除去
12:pH調製剤
13:濾過
14:親水性有機溶媒
15:カラム
16:濃縮乾燥
17:目的物
更に詳しく図1のフローシートを説明すると、先ずキチン系及び/又はキトサン系材料(1)とフッ化水素酸及び/又はフッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸(2)とを接触せしめて反応せしめて、反応液(3)を生成する。この際の温度は−20〜150℃である。
この反応液(3)に親水性有機溶媒(5)を加え、これ等の混合液(4)となし、これを濾過(6)し、キチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーの一部(7)を除去する。次いで濾液(8)に塩基性カルシウム塩(9)を濾液(8)が塩基性になるまで加える。そしてこれを濾過(10)してハロゲン化物(11)を除去し、濾液に必要に応じてpH調整剤(12)を加える。このpH調整剤(12)は、後のカラム工程(15)に於いて、シリカ等の塩基性になると変質し易いものを使用する場合等を考慮して使用するものである。
次いで必要に応じ濾過(13)をした濾液に、親水性有機溶媒(14)を加えた後、カラム(15)に通液し、このカラム(15)内で目的物たるキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマー組成物を吸着すると共に溶媒を流して脱離する。
最後に、濃縮乾燥(16)し、目的物(17)を得るものである。
産業上の利用分野
本発明はキチンオリゴリマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物、並びにその製造方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に本発明の実施例を示して本発明を具体的に説明する。
【実施例1】
攪拌機付きPFA容器内に55%フッ化水素酸を40g投入し、雰囲気を窒素置換した後に、キチン(甲陽ケミカル株式会社製、キチンTC−L)10gを投入した。キチンとフッ化水素酸は10秒程で均一となり、そのまま40℃で5時間反応させた。その後、エタノール30g及び純水170gを追加し、不溶解成分を濾過により除去した。ろ液は、水浴中、炭酸カルシウム55.0gで中和した。この時の溶液のpHは7であった。この溶液を再度濾過により固液分離し、pH=5になるように0.1Nの塩酸を添加した。この溶液をクロマトグラフ用活性炭(和光純薬工業株式会社製)500gを充填した直径40mmのカラムに通液した。温水1000gをカラムに通液した後、エタノール濃度5%から30%までの直線濃度勾配を設けたエタノール水溶液をカラムに3000g通液した。カラムからでてきた溶液を分別回収し、減圧濃縮したところ、キチン単量体0.3g、キチン2量体0.7g、キチン3量体1.5g、キチン4量体2.0g、キチン5量体1.9g、キチン6量体1.3g、キチン7〜8量体0.2g、キチン9〜10量体0.1gがそれぞれ回収された。
【実施例2】
攪拌機付きPFA容器内にエマゾールL−10(花王株式会社製界面活性剤)10ppm入り50%フッ化水素酸を40g投入し、雰囲気を窒素置換した後に、キチン(株式会社キミカ製、キミカキチンF)10gを投入した。キチンとフッ化水素酸は10秒程で均一となり、そのまま40℃で6時間反応させた。その後、純水180gを追加し、不溶解成分を濾過により除去した。ろ液は、水浴中、炭酸カルシウム50.0gで中和した。この時の溶液のpHは7であった。この溶液を再度濾過により固液分離し、pH=5になるように0.1Nの塩酸を添加した。この溶液をクロマトグラフ用活性炭(和光純薬工業株式会社製)500gを充填した直径40mmのカラムに通液した。温水2000gをカラムに通液した後、エタノール濃度5%から60%までの直線濃度勾配を設けたエタノール水溶液をカラムに5000g通液した。カラムからでてきた溶液を分別回収し、減圧濃縮したところ、キチン2量体0.5g、キチン3量体1.2g、キチン4量体2.2g、キチン5量体2.2g、キチン6量体1.5g、キチン7〜8量体0.4g、キチン9〜10量体0.3gがそれぞれ回収された。
【実施例3】
攪拌機付きPFA容器内にレオドールTW−L106(花王株式会社製界面活性剤)50ppm入り50%フッ化水素酸を40g投入し、雰囲気を窒素置換した後に、キチン(甲陽ケミカル株式会社製、キチンTC−L)10gを投入した。キチンとフッ化水素酸は10秒程で均一となり、そのまま40℃で3時間反応させた。その後、メタノール30g及び純水70gを追加し、不溶解成分を濾過により除去した。ろ液は、氷浴中、水酸化カルシウム37.2gで中和した。この時の溶液のpHは9であった。この溶液を再度濾過により固液分離し、pH=5になるように0.1Nの塩酸を添加した。この溶液をクロマトグラフ用活性炭(和光純薬工業株式会社製)500gを充填した直径40mmのカラムに通液した。純水1000gをカラムに通液した後、メタノール濃度5%から80%までの直線濃度勾配を設けたメタノール水溶液をカラムに3000g通液した。カラムからでてきた溶液を分別回収し、減圧濃縮したところ、キチン2量体2.0g、キチン3量体1.5g、キチン4量体1.0g、キチン5量体0.6g、キチン6量体0.4g、キチン7〜8量体0.4g、キチン9〜10量体0.2gがそれぞれ回収された。
【実施例4】
攪拌機付きPFA容器内にエマゾールL−10(花王株式会社製界面活性剤)10ppm入り45%フッ化水素酸を40g投入し、雰囲気を窒素置換した後に、キチン(株式会社キミカ製、キミカキチンF)10gを投入した。キチンとフッ化水素酸は10秒程で均一となり、そのまま50℃で4時間反応させた。その後、純水80gを追加し、不溶解成分を濾過により除去した。ろ液は、氷浴中、水酸化カルシウム33.4gで中和した。この時の溶液のpHは9であった。この溶液を再度濾過により固液分離し、pH=5になるように0.1Nの塩酸を添加した。この溶液をクロマトグラフ用活性炭(和光純薬工業株式会社製)500gを充填した直径40mmのカラムに通液した。純水1000gをカラムに通液した後、メタノール濃度5%から80%までの直線濃度勾配を設けたメタノール水溶液をカラムに3000g通液した。カラムからでてきた溶液を分別回収し、減圧濃縮したところ、キチン2量体2.5g、キチン3量体1.8g、キチン4量体1.2g、キチン5量体0.8g、キチン6量体0.5g、キチン7〜8量体0.4g、キチン9〜10量体0.3gがそれぞれ回収された。
【実施例5】
攪拌機付きPFA容器内に界面活性剤無添加の20%フッ化水素酸を40g投入し、雰囲気を窒素置換した後に、キチン(株式会社キミカ製、キミカキチンF)10gを投入した。2分間経過してもフッ化水素酸とキチンとの混合が斑であったため、さらに50gの20%フッ化水素酸を添加した。さらに2分間経過した時点で系内は均一となり、そのまま80℃で6時間反応させた。その後、純水100gを追加し、不溶解成分を濾過により除去した。ろ液は、氷浴中、水酸化カルシウム33.4gで中和した。この時の溶液のpHは9であった。この溶液を再度濾過により固液分離し、pH=5になるように0.1Nの塩酸を添加した。この溶液をクロマトグラフ用活性炭(和光純薬工業株式会社製)500gを充填した直径40mmのカラムに通液した。純水1000gをカラムに通液した後、メタノール濃度5%から80%までの直線濃度勾配を設けたメタノール水溶液をカラムに3000g通液した。カラムからでてきた溶液を分別回収し、減圧濃縮したところ、キチン2量体2.1g、キチン3量体1.5g、キチン4量体1.0g、キチン5量体0.7g、キチン6量体0.4g、キチン7〜8量体0.4g、キチン9〜10量体0.4gがそれぞれ回収された。
【実施例6】
攪拌機付きPFA容器内に界面活性剤無添加の55%フッ化水素酸を40g投入し、雰囲気を窒素置換した後に、キチン(株式会社キミカ製、キミカキチンF)10gを投入した。3分間経過したころキチンとフッ化水素酸は均一になじんだので、そのまま35℃で4時間反応させた。その後、純水100gを追加し、不溶解成分を濾過により除去した。ろ液は、氷浴中、炭酸カルシウム55.1gで中和した。この時の溶液のpHは9であった。この溶液を再度濾過により固液分離し、pH=5になるように0.1Nの塩酸を添加した。この溶液をクロマトグラフ用活性炭(和光純薬工業株式会社製)500gを充填した直径40mmのカラムに通液した。純水1000gをカラムに通液した後、メタノール濃度5%から50%までの直線濃度勾配を設けたエタノール水溶液をカラムに3000g通液した。カラムからでてきた溶液を分別回収し、減圧濃縮したところ、キチン2量体2.5g、キチン3量体1.8g、キチン4量体1.2g、キチン5量体0.6g、キチン6量体0.4g、キチン7〜8量体0.4g、キチン9〜10量体0.2gがそれぞれ回収された。
【実施例7】
攪拌機付きPFA容器内にレオドールTW−L106(花王株式会社製界面活性剤)50ppm入り55%フッ化水素酸を40g投入し、雰囲気を窒素置換した後に、キチン(タイ産エビ由来;水分8%、灰分0.5%)10gを投入した。キチンとフッ化水素酸は10秒程で均一となり、そのまま40℃で3.5時間反応させた。その後、アセトン40g及び水120gを追加し、不溶解成分を濾過により除去した。ろ液は、氷浴中、炭酸カルシウム55.1gで中和した。この時の溶液のpHは9であった。この溶液を再度濾過により固液分離し、pH=5になるように0.1Nの塩酸を添加した。この溶液を直径50mm、長さ300mmのウルトラパックODS−A(山善株式会社製)を装着した中圧分取液クロシステムYFLC−8005−WD−FD(山善株式会社製)に純水とともに通液した。カラムからでてきた溶液を分別回収し、減圧濃縮したところ、キチン2量体2.4g、キチン3量体1.8g、キチン4量体1.2g、キチン5量体0.7g、キチン6量体0.5g、キチン7〜8量体0.4g、キチン9〜10量体0.2gがそれぞれ回収された。
【実施例8】
攪拌機付きPFA容器内にエキセルO−95R(花王株式会社製界面活性剤)100ppm入り50%フッ化水素酸を40g投入し、雰囲気を窒素置換した後に、キチン(北海道曹達株式会社製、ノースキチンCG−2)10gを投入した。キチンとフッ化水素酸は10秒程で均一となり、そのまま35℃で6時間反応させた。その後、水100gを追加し、不溶解成分を濾過により除去した。ろ液は、氷浴中、水酸化カルシウム60gで中和した。この溶液を再度濾過により固液分離した際、ろ液のpHは14であった。このろ液を脱アセチル化反応を継続させるため40℃で2週間静置した。その後pH=5になるように0.1Nの塩酸を添加し、不溶解成分を濾過により除去した後、そのろ液を直径50mm、長さ300mmのウルトラパックODS−A(山善株式会社製)を装着した中圧分取液クロシステムYFLC−8005−WD−FD(山善株式会社製)に純水とともに通液した。カラムからでてきた溶液を分別回収し、減圧濃縮したところ、キトサン塩酸塩2量体2.0g、キトサン塩酸塩3量体1.5g、キトサン塩酸塩4量体1.0g、キトサン塩酸塩5量体0.6g、キトサン塩酸塩6量体0.5g、キトサン塩酸塩7〜8量体0.5g、キトサン塩酸塩9〜10量体0.4gがそれぞれ回収された。
【実施例9】
攪拌機付きPFA容器内にレオドールTW−L106(花王株式会社製界面活性剤)50ppm入り50%フッ化水素酸を40g投入し、雰囲気を窒素置換した後に、キトサン(甲陽ケミカル株式会社製、SK−400)10gを投入した。キチンとフッ化水素酸は10秒程で均一となり、そのまま40℃で5時間反応させた。その後、純水100gを追加し、不溶解成分を濾過により除去した。ろ液は、氷浴中、炭酸カルシウム50.2gで中和した。この時の溶液のpHは9であった。この溶液を再度濾過により固液分離し、pH=5になるように0.1Nの塩酸を添加した。この溶液をクロマトグラフ用活性炭(和光純薬工業株式会社製)500gを充填した直径40mmのカラムに通液した。純水1000gをカラムに通液した後、メタノール濃度5%から80%までの直線濃度勾配を設けたメタノール水溶液をカラムに3000g通液した。カラムからでてきた溶液を分別回収し、減圧濃縮したところ、キトサン塩酸塩2量体1.8g、キトサン塩酸塩3量体1.5g、キトサン塩酸塩4量体1.0g、キトサン塩酸塩5量体0.6g、キトサン塩酸塩6量体0.5g、キトサン塩酸塩7〜8量体0.5g、キトサン塩酸塩9〜10量体0.4gがそれぞれ回収された。
【比較例1】
攪拌機付きPFA容器内に0.2%フッ化水素酸を250g投入し、雰囲気を窒素置換した後に、キチン(北海道曹達株式会社製、ノースキチンCG−2)10gを投入した。3分間程でキチンとフッ化水素酸とが均一となったので、そのまま40℃で48時間反応させた。その後、不溶解成分を濾過により除去した。ろ液は、氷浴中、炭酸カルシウム1.3gで中和した。この時の溶液のpHは9であった。この溶液を再度濾過により固液分離し、pH=5になるように0.1Nの塩酸を添加した。さらに濾過により不溶解成分を除去した後、ろ液を減圧濃縮したところ、0.1gのキチンオリゴマーが回収された。
【比較例2】
窒素置換した攪拌機付きPFA容器内に無水フッ化水素酸を40g投入した後に、キチン(甲陽ケミカル株式会社製、キチンTC−L)10gを投入した。3分間程でキチンと無水フッ化水素酸とが均一となったので、そのまま0℃で3時間反応させた。その後、中和のため炭酸カルシウムを添加しようとしたが、氷冷下1g添加した時点で急激に温度が上昇し、また容器内がフッ化水素ガスで充満した。危険なためここで製造を中止した。
【比較例3】
窒素置換した攪拌機付きPFA容器内に無水フッ化水素酸を40g投入した後に、キチン(甲陽ケミカル株式会社製、キチンTC−L)10gを投入した。3分間程でキチンと無水フッ化水素酸とが均一となったので、そのまま0℃で3時間反応させた。その後、中和を実施する前準備として、氷冷した純水で希釈しようとしたが、純水を滴下しはじめた瞬間に急激に温度が上昇し、容器内がフッ化水素ガスで充満した。危険なためここで製造を中止した。
【比較例4】
窒素置換した攪拌機付きPFA容器内に無水フッ化水素酸を40g投入した後に、キチン(甲陽ケミカル株式会社製、キチンTC−L)10gを投入した。3分間程でキチンと無水フッ化水素酸とが均一となったので、そのまま0℃で3時間反応させた。その後、中和を実施する前準備として、希釈する目的で、氷冷した純水40gにキチンと無水フッ化水素酸との混合液を滴下した。1滴毎に水面でフッ化水素ガスが発生したが、十分気をつけながらゆっくりと滴下した。全量を滴下するのに1時間30分を要した。
本発明に従う実施例1〜7においては、効率良くキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーを製造することができる。
また、界面活性剤を含む実施例3、実施例4、実施例7〜9は、界面活性剤を含有しない実施例5、実施例6と比較して、フッ化水素酸とキチン及びキトサンとの初期濡れ性に優れることが分かった。このことから、反応容器の側面や攪拌機のプロペラ部分などにフッ化水素酸と未接触のキチン及び/又はキトサンが付着する現象を高度に抑制でき、所定時間接触(混合)した後のキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーの重合度分布を常に一定に保つのに効果的であることが分かった。
別途、実施例3〜9についてそれぞれ10回、同様に実施したところ、得られる各重合度のオリゴマーの収量は一定であり、再現性に優れることが分かった。また、界面活性剤を含む実施例3、実施例4、実施例7〜9では特に再現性が良好であったことを付記しておく。
さらに、DIONEX社製イオンクロマトDX500(カラム;IONPAC AS17)により、実施例3〜9で得られたキチンオリゴマー又はキトサンオリゴマーを評価したところ、実施例3〜8で得られたキチンオリゴマー又はキチンオリゴマーを過剰のアルカリ成分中で脱アセチル化させて得られたキトサンオリゴマー中の残存フッ素濃度は、何れも0.001〜10ppmの範囲内であるのに対し、実施例9のキトサンオリゴマー中の残存フッ素濃度は20ppmであり、キチン系材料を用いる場合の方が効率良く残存フッ素濃度を低減できることが分かった。実施例9で得られたキトサンオリゴマーに水酸化カルシウム1g添加し、濾過した後、再度ろ液を減圧濃縮してキチンオリゴマーを回収したところ、残存フッ素濃度は0.01ppmに低減されたことを付記しておく。
さらに、実施例3〜9においてカラムに通液する前のキチンオリゴマー又はキトサンオリゴマーを含有する溶液を濃縮乾燥し、該キチンオリゴマー又はキトサンオリゴマー中の残存フッ素濃度を測定したところ、何れも20ppm以下であり、脱アセチル化のために塩基性カルシウム塩を大過剰に使用した実施例8を除く実施例3〜7及び実施例9については、セイコー社製ICP質量分析計SPQ8000で評価したカルシウムイオンの残存量が、カラム通液前において1〜50ppmの範囲内であり、カラム通液後においては0.001〜10ppmの範囲内であった。
最後に、リムルスES−IIシングルテストワコー(和光純薬工業製)を試薬として用いて、トキシノメーターET−2000(和光純薬工業製)でエンドトキシン濃度を評価した。その結果、実施例3〜9については検出限界以下であった。また、20℃の水100gに対する溶解性を評価したところ、実施例3〜9では4〜10gの範囲内の溶解を示した。
一方、フッ化水素酸濃度が低い点において本発明と異なる比較例1では、得られるキチンオリゴマーの収率が極めて低いことわかった。また、フッ化水素酸濃度が高い点で本発明と異なる比較例2及び比較例3では、温度を制御しながら安全にフッ化水素を除去することが難しく、比較例4では、中和するまでに時間がかかりすぎることがわかった。高濃度のフッ化水素酸中に接触する時間が大きく異なる比較例4の方法では、目的オリゴマーの重合度を制御することは難しいと考えられる。
【実施例10】
攪拌機付きPFA容器内にレオドールTW−L106(花王株式会社製界面活性剤)25ppm入り50%フッ化水素酸40g及び36%塩化水素酸10gを投入し、雰囲気を窒素置換した後に、キトサン(甲陽ケミカル株式会社製、SK−200、脱アセチル化度=0.8以上)10gを投入した。キトサンとハロゲン化水素酸は10秒程で均一となり、そのまま40℃で3時間反応させた。その後、純水100gを追加し、不溶解成分を濾過により除去した。ろ液は、氷浴中、水酸化カルシウム40.8gで中和した。この時の溶液のpHは9であった。この溶液を再度濾過により固液分離し、pH=5になるように0.1Nの塩酸を添加した。この溶液を直径50mm、長さ300mmのウルトラパックODS−A(山善株式会社製)を装着した中圧分取液クロシステムYFLC−8005−WD−FD(山善株式会社製)に純水とともに通液した。カラムからでてきた溶液を分別回収し、減圧濃縮したところ、キトサン塩酸塩2量体2.5g、キトサン塩酸塩3量体1.8g、キトサン塩酸塩4量体1.2g、キトサン塩酸塩5量体0.8g、キトサン塩酸塩6量体0.5g、キトサン塩酸塩7〜8量体0.4g、キトサン塩酸塩9〜10量体0.3gがそれぞれ回収された。
【実施例11】
攪拌機付きPFA容器内にキトサン(甲陽ケミカル株式会社製、FM−200、脱アセチル化度0.8以上)10gを入れ、雰囲気を窒素置換した後に、エマゾールL−10(花王株式会社製界面活性剤)10ppm入り40%フッ化水素酸25g及び10%塩酸25gとを同時に添加した。キトサンとハロゲン化水素酸は10秒程で均一となり、そのまま70℃で4時間反応させた。その後、純水80gを追加し、不溶解成分を濾過により除去した。ろ液は、氷浴中、水酸化カルシウム21.1gで中和した。この時の溶液のpHは8であった。この溶液を再度濾過により固液分離し、pH=5になるように0.1Nの塩酸を添加した。この溶液を直径50mm、長さ300mmのウルトラパックODS−A(山善株式会社製)を装着した中圧分取液クロシステムYFLC−8005−WD−FD(山善株式会社製)に純水とともに通液した。カラムからでてきた溶液を分別回収し、減圧濃縮したところ、キトサン塩酸塩2量体2.0g、キトサン塩酸塩3量体1.5g、キトサン塩酸塩4量体1.0g、キトサン塩酸塩5量体0.7g、キトサン塩酸塩6量体0.5g、キトサン塩酸塩7〜8量体0.5g、キトサン塩酸塩9〜10量体0.5gがそれぞれ回収された。
【実施例12】
攪拌機付きPFA容器内に界面活性剤無添加の50%フッ化水素酸40g及び36%塩化水素酸20g投入し、雰囲気を窒素置換した後に、キトサン(株式会社共和テクノス製 フローナックH、脱アセチル化度0.8以上)10gを投入した。2分間経過しても接液していないキトサンの塊が存在したため、さらに36%塩化水素酸20gを添加した。さらに2分間経過した時点で系内は均一となり、そのまま40℃で2時間反応させた。その後、純水100gを追加し、不溶解成分を濾過により除去した。ろ液は、氷浴中、水酸化カルシウム51.7gで中和した。この時の溶液のpHは9であった。この溶液を再度濾過により固液分離し、pH=5になるように0.1Nの塩酸を添加した。この溶液を直径50mm、長さ300mmのウルトラパックODS−A(山善株式会社製)を装着した中圧分取液クロシステムYFLC−8005−WD−FD(山善株式会社製)に純水とともに通液した。カラムからでてきた溶液を分別回収し、減圧濃縮したところ、キトサン塩酸塩2量体1.8g、キトサン塩酸塩3量体1.4g、キトサン塩酸塩4量体1.0g、キトサン塩酸塩5量体0.9g、キトサン塩酸塩6量体0.7g、キトサン塩酸塩7〜8量体0.5g、キトサン塩酸塩9〜10量体0.5gがそれぞれ回収された。
【実施例13】
攪拌機付きPFA容器内に界面活性剤無添加の20%フッ化水素酸−15%塩酸混合液100gを投入し、雰囲気を窒素置換した後に、キトサン(甲陽ケミカル株式会社製、FM−200、脱アセチル化度0.8以上)10gを投入した。3分間経過したころキトサンとハロゲン化水素酸は均一になじんだので、そのまま65℃で4時間反応させた。その後、純水100gを追加し、不溶解成分を濾過により除去した。ろ液は、氷浴中、炭酸カルシウム70.6gで中和した。この時の溶液のpHは9であった。この溶液を再度濾過により固液分離し、pH=5になるように0.1Nの塩酸を添加した。この溶液を直径50mm、長さ300mmのウルトラパックODS−A(山善株式会社製)を装着した中圧分取液クロシステムYFLC−8005−WD−FD(山善株式会社製)に純水とともに通液した。カラムからでてきた溶液を分別回収し、減圧濃縮したところ、キトサン塩酸塩2量体1.8g、キトサン塩酸塩3量体1.2g、キトサン塩酸塩4量体0.8g、キトサン塩酸塩5量体0.6g、キトサン塩酸塩6量体0.4g、キトサン塩酸塩7〜8量体0.5g、キトサン塩酸塩9〜10量体0.4gがそれぞれ回収された。
【実施例14】
攪拌機付きPFA容器内にレオドールTW−L106(花王株式会社製界面活性剤)25ppm入りの20%フッ化水素酸−15%塩酸混合液100gを投入し、雰囲気を窒素置換した後に、キトサン(甲陽ケミカル株式会社製、FM−200、脱アセチル化度0.8以上)10gを投入した。10秒間程でキトサンとハロゲン化水素酸は均一になじんだので、そのまま65℃で4時間反応させた。その後、純水50g及びメタノール50gを追加し、不溶解成分を濾過により除去した。ろ液は、氷浴中、炭酸カルシウム70.6gで中和した。この時の溶液のpHは9であった。この溶液を再度濾過により固液分離し、pH=5になるように0.1Nの塩酸を添加した。この溶液を直径50mm、長さ300mmのウルトラパックODS−A(山善株式会社製)を装着した中圧分取液クロシステムYFLC−8005−WD−FD(山善株式会社製)に純水とともに通液した。カラムからでてきた溶液を分別回収し、減圧濃縮したところ、キトサン塩酸塩2量体1.8g、キトサン塩酸塩3量体1.2g、キトサン塩酸塩4量体0.8g、キトサン塩酸塩5量体0.6g、キトサン塩酸塩6量体0.5g、キトサン塩酸塩7〜8量体0.5g、キトサン塩酸塩9〜10量体0.4gがそれぞれ回収された。
【実施例15】
攪拌機付きPFA容器内にレオドールTW−L106(花王株式会社製界面活性剤)25ppm入り4%フッ化水素酸−25%塩化水素酸混合溶液40gを投入し、雰囲気を窒素置換した後に、キトサン(甲陽ケミカル株式会社製、FM−200、脱アセチル化度0.8以上)10gを投入した。10秒間程でキトサンとハロゲン化水素酸は均一になじんだので、そのまま60℃で4時間反応させた。その後、純水50g及びメタノール50gを追加し、不溶解成分を濾過により除去した。ろ液は、氷浴中、炭酸カルシウム17.8gで中和した。この時の溶液のpHは9であった。この溶液を再度濾過により固液分離し、pH=5になるように0.1Nの塩酸を添加した。この溶液を直径50mm、長さ300mmのウルトラパックODS−A(山善株式会社製)を装着した中圧分取液クロシステムYFLC−8005−WD−FD(山善株式会社製)に純水とともに通液した。カラムからでてきた溶液を分別回収し、減圧濃縮したところ、キトサン塩酸塩2量体2.0g、キトサン塩酸塩3量体1.4g、キトサン塩酸塩4量体1.0g、キトサン塩酸塩5量体0.6g、キトサン塩酸塩6量体0.3g、キトサン塩酸塩7〜8量体0.3g、キトサン塩酸塩9〜10量体0.2gがそれぞれ回収された。
【実施例16】
攪拌機付きPFA容器内にレオドールTW−L106(花王株式会社製界面活性剤)25ppm入り50%フッ化水素酸40g及び36%塩化水素酸10gを投入し、雰囲気を窒素置換した後に、キチン(株式会社キミカ製、キミカキチンF、脱アセチル化度0.1以下)10gを投入した。キチンとハロゲン化水素酸は10秒程で均一となり、そのまま40℃で3時間反応させた。その後、純水100gを追加し、不溶解成分を濾過により除去した。ろ液は、氷浴中、水酸化カルシウム40.8gで中和した。この時の溶液のpHは9であった。この溶液を再度濾過により固液分離し、pH=5になるように0.1Nの塩酸を添加した。この溶液をクロマトグラフ用活性炭(和光純薬工業株式会社製)500gを充填した直径40mmのカラムに通液した。純水1000gをカラムに通液した後、メタノール濃度5%から80%までの直線濃度勾配を設けたメタノール水溶液をカラムに3000g通液した。カラムからでてきた溶液を分別回収し、減圧濃縮したところ、キチン2量体2.2g、キチン3量体1.6g、キチン4量体1.1g、キチン5量体0.7g、キチン6量体0.4g、キチン7〜8量体0.3g、キチン9〜10量体0.3gがそれぞれ回収された。
【比較例5】
攪拌機付きPFA容器内に0.2%フッ化水素酸−0.2%塩化水素酸混合溶液を250g投入し、雰囲気を窒素置換した後に、キトサン(甲陽ケミカル株式会社製、FM−200)10gを投入した。3分間程でキトサンとハロゲン化水素酸とが均一となったので、そのまま40℃で48時間反応させた。その後、不溶解成分を濾過により除去した。ろ液は、氷浴中、炭酸カルシウム2.0gで中和した。この時の溶液のpHは9であった。この溶液を再度濾過により固液分離し、pH=5になるように0.1Nの塩酸を添加した。さらに濾過により不溶解成分を除去した後、ろ液を減圧濃縮したところ、0.1gのキトサンオリゴマーが回収された。
本発明に従う実施例10〜16においては、効率良くキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーを製造することができる。
また、界面活性剤を含む実施例10、実施例11、実施例14〜16は、界面活性剤を含有しない実施例12、実施例13と比較して、フッ化水素酸とキチン及びキトサンとの初期濡れ性に優れることが分かった。このことから、反応容器の側面や攪拌機のプロペラ部分などにハロゲン化水素酸と未接触のキチン及び/又はキトサンが付着する現象を高度に抑制でき、所定時間接触(混合)した後のキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーの重合度分布を常に一定に保つのに効果的であることが分かった。
別途、実施例10〜16についてそれぞれ10回、同様に実施したところ、得られる各重合度のオリゴマーの収量は一定であり、再現性に優れることが分かった。また、界面活性剤を含む実施例10、実施例11、実施例14〜16では特に再現性が良好であったことを付記しておく。
さらに、DIONEX社製イオンクロマトDX500(カラム;IONPAC AS17)により、実施例10〜16で得られたキチンオリゴマー及びキトサンオリゴマーを評価したところ、実施例10〜16で得られたキチンオリゴマー及びキトサンオリゴマー中の残存フッ素濃度は、何れも0.001〜10ppmの範囲内であった。本発明者らの知見では、キトサンオリゴマーはフッ化塩を形成しやすく、キチンと比較して残存フッ素濃度が高くなることが一般的であるが、本発明で得られたキトサンオリゴマーは、何れも残存フッ素成分濃度が低く、本発明が特にキトサン系材料からキトサンオリゴマー組成物を製造するのに著しい効果があることが分かった。またセイコー社製ICP質量分析計SPQ8000で残存金属濃度を評価した結果、実施例15ではフッ化水素酸に較べて塩化水素酸の濃度が高いため、実施例10〜14及び実施例16と比較して残存カルシウム濃度が高く、200ppm程度であることが分かった(他の実施例では10〜50ppm程度)。しかし、実施例6で得られたキトサンオリゴマーは、再度、直径50mm、長さ300mmのウルトラパックODS−A(山善株式会社製)を付けた中圧分取液クロシステムYFLC−8005−WD−FD(山善株式会社製)に純水とともに通液し、カラムからでてきた溶液を分別回収し、減圧濃縮することにより、カルシウム残存濃度は1ppmとなった。
最後に、リムルスES−IIシングルテストワコー(和光純薬工業製)を試薬として用いて、トキシノメーターET−2000(和光純薬工業製)でエンドトキシン濃度を評価した。その結果、実施例10〜16については検出限界以下であった。また、20℃の水100gに対する溶解性を評価したところ、実施例3〜9では4〜12gの範囲内の溶解を示した。 一方、フッ化水素酸濃度が低い点において本発明と異なる比較例5では、得られるキチンオリゴマーの収率が極めて低いことわかった。
【実施例17】
攪拌機付きPFA容器内にエマゾールL−10(花王株式会社製界面活性剤)40ppm入り80%フッ化水素酸を30g投入し、雰囲気を窒素置換した後に、キチン(株式会社キミカ製、キミカキチンF)10gを投入した。キチンとフッ化水素酸は15秒程で均一となり、そのまま0℃で1.5時間反応させた。その後、エタノール30g及び純水70gを追加し、不溶解成分を濾過により除去した。ろ液は、氷浴中、水酸化カルシウム44.5gで中和した。この時の溶液のpHは8であった。この溶液を再度濾過により固液分離し、pH=5になるように0.1Nの塩酸を添加した。この溶液をクロマトグラフ用活性炭(和光純薬工業株式会社製)500gを充填した直径40mmのカラムに通液した。純水1000gをカラムに通液した後、エタノール濃度5%から50%までの直線濃度勾配を設けたエタノール水溶液をカラムに3000g通液した。カラムからでてきた溶液を分別回収し、減圧濃縮したところ、キチン単量体1.2g、キチン2量体1.2g、キチン3量体1.3g、キチン4量体1.0g、キチン5量体0.8g、キチン6量体0.6g、キチン7〜8量体0.8g、キチン9〜10量体0.4gがそれぞれ回収された。
【実施例18】
攪拌機付きPFA容器内に界面活性剤無添加の80%フッ化水素酸を40g投入し、雰囲気を窒素置換した後に、キチン(株式会社キミカ製、キミカキチンF)10gを投入した。キチンとフッ化水素酸が均一となるまで30分を要した。そのまま0℃で4時間反応させた。その後、純水80gを追加し、極少量の不溶解成分を濾過により除去した。ろ液は、氷浴中、水酸化カルシウム59.3gで中和した。この時の溶液のpHは9であった。この溶液を再度濾過により固液分離し、pH=5になるように0.1Nの塩酸を添加した。この溶液をクロマトグラフ用活性炭(和光純薬工業株式会社製)500gを充填した直径40mmのカラムに通液した。純水1000gをカラムに通液した後、メタノール濃度5%から80%までの直線濃度勾配を設けたメタノール水溶液をカラムに3000g通液した。カラムからでてきた溶液を分別回収し、減圧濃縮したところ、キチン単量体2.4g、キチン2量体1.8g、キチン3量体1.4g、キチン4量体0.9g、キチン5量体0.6g、キチン6量体0.4g、キチン7〜8量体0.4g、キチン9〜10量体0.1gがそれぞれ回収された。
【実施例19】
攪拌機付きPFA容器内にレオドールTW−L106(花王株式会社製界面活性剤)10ppm入り90%フッ化水素酸を30g投入し、雰囲気を窒素置換した後に、キチン(株式会社キミカ製、キミカキチンF)10gを投入した。20秒程度でキチンとフッ化水素酸は均一になじんだので、そのまま27℃で4時間反応させた。その後、氷冷した純水500gに滴下し、極少量の不溶解成分を濾過により除去した。ろ液は、氷浴中、炭酸カルシウム67.6gで中和した。この時の溶液のpHは9であった。この溶液を再度濾過により固液分離し、pH=5になるように0.1Nの塩酸を添加した。この溶液をクロマトグラフ用活性炭(和光純薬工業株式会社製)500gを充填した直径40mmのカラムに通液した。純水1000gをカラムに通液した後、エタノール濃度5%から50%までの直線濃度勾配を設けたエタノール水溶液をカラムに3000g通液した。カラムからでてきた溶液を分別回収し、減圧濃縮したところ、キチン単量体9.5g、2量体以上のキチンオリゴマー0.4gがそれぞれ回収された。
【実施例20】
攪拌機付きPFA容器内にレオドールTW−L106(花王株式会社製界面活性剤)50ppm入り85%フッ化水素酸を40g投入し、雰囲気を窒素置換した後に、キチン(タイ産エビ由来;水分8%、灰分0.5%)10gを投入した。キチンとフッ化水素酸は10秒程で均一となり、そのままで−20℃で1時間反応させた。その後、純水120gを追加し、不溶解成分を濾過により除去した。ろ液は、氷浴中、炭酸カルシウム85.1gで中和した。この時の溶液のpHは9であった。この溶液を再度濾過により固液分離し、pH=5になるように0.1Nの塩酸を添加した。この溶液を直径50mm、長さ300mmのウルトラパックODS−A(山善株式会社製)を装着した中圧分取液クロシステムYFLC−8005−WD−FD(山善株式会社製)に純水とともに通液した。カラムからでてきた溶液を分別回収し、減圧濃縮したところ、キチン単量体0.5g、キチン2量体1.0g、キチン3量体0.9g、キチン4量体0.9g、キチン5量体0.9g、キチン6量体0.7g、キチン7〜8量体0.8g、キチン9〜10量体0.4gがそれぞれ回収された。
【実施例21】
攪拌機付きPFA容器内にエキセルO−95R(花王株式会社製界面活性剤)100ppm入り75%フッ化水素酸を40g投入し、雰囲気を窒素置換した後に、キチン(北海道曹達株式会社製、ノースキチンCG−2)10gを投入した。キチンとフッ化水素酸は10秒程で均一となり、そのまま0℃で2時間反応させた。その後、純水100gを追加し、不溶解成分を濾過により除去した。ろ液に、氷浴中、水酸化カルシウム65g投入し中和した。この溶液を再度濾過により固液分離した際、ろ液のpHは14であった。このろ液を脱アセチル化反応を継続させるため40℃で2週間静置した。その後pH=5になるように0.1Nの塩酸を添加し、不溶解成分を濾過により除去した後、そのろ液を直径50mm、長さ300mmのウルトラパックODS−A(山善株式会社製)を装着した中圧分取液クロシステムYFLC−8005−WD−FD(山善株式会社製)に純水とともに通液した。カラムからでてきた溶液を分別回収し、減圧濃縮したところ、キトサン塩酸塩単量体1.2g、キトサン塩酸塩2量体1.3g、キトサン塩酸塩3量体1.3g、キトサン塩酸塩4量体1.1g、キトサン塩酸塩5量体0.8g、キトサン塩酸塩6量体0.6g、キトサン塩酸塩7〜8量体0.8g、キトサン塩酸塩9〜10量体0.5gがそれぞれ回収された。
【実施例22】
攪拌機付きPFA容器内にレオドールTW−L106(花王株式会社製界面活性剤)50ppm入り80%フッ化水素酸を40g投入し、雰囲気を窒素置換した後に、キトサン(甲陽ケミカル株式会社製、SK−400)10gを投入した。キトサンとフッ化水素酸は10秒程で均一となり、そのまま20℃で4時間反応させた。その後、純水100gを追加し、不溶解成分を濾過により除去した。ろ液は、氷浴中、炭酸カルシウム80.1gで中和した。この時の溶液のpHは9であった。この溶液を再度濾過により固液分離し、pH=5になるように0.1Nの塩酸を添加した。この溶液を直径50mm、長さ300mmのウルトラパックODS−A(山善株式会社製)を装着した中圧分取液クロシステムYFLC−8005−WD−FD(山善株式会社製)に純水とともに通液した。カラムからでてきた溶液を分別回収し、減圧濃縮したところ、キトサン塩酸塩単量体1.7g、キトサン塩酸塩2量体1.6g、キトサン塩酸塩3量体1.6g、キトサン塩酸塩4量体1.2g、キトサン塩酸塩5量体0.9g、キトサン塩酸塩6量体0.8g、キトサン塩酸塩7〜8量体1.1g、キトサン塩酸塩9〜10量体0.6gがそれぞれ回収された。
【比較例6】
窒素置換した攪拌機付きPFA容器内に無水フッ化水素酸を40g投入した後に、キチン(甲陽ケミカル株式会社製、キチンTC−L)10gを投入した。3分間程でキチンと無水フッ化水素酸とが均一となったので、そのまま0℃で3時間反応させた。その後、中和のため炭酸カルシウムを添加しようとしたが、氷冷下1g添加した時点で急激に温度が上昇し、また容器内がフッ化水素ガスで充満した。危険なためここで製造を中止した。
【比較例7】
窒素置換した攪拌機付きPFA容器内に無水フッ化水素酸を40g投入した後に、キチン(甲陽ケミカル株式会社製、キチンTC−L)10gを投入した。3分間程でキチンと無水フッ化水素酸とが均一となったので、そのまま0℃で3時間反応させた。その後、中和を実施する前準備として、氷冷した純水で希釈しようとしたが、純水を滴下しはじめた瞬間に急激に温度が上昇し、容器内がフッ化水素ガスで充満した。危険なためここで製造を中止した。
【比較例8】
窒素置換した攪拌機付きPFA容器内に無水フッ化水素酸を40g投入した後に、キチン(甲陽ケミカル株式会社製、キチンTC−L)10gを投入した。3分間程でキチンと無水フッ化水素酸とが均一となったので、そのまま0℃で3時間反応させた。その後、中和を実施する前準備として、希釈する目的で、氷冷した純水40gにキチンと無水フッ化水素酸との混合液を滴下した。1滴毎に水面でフッ化水素ガスが発生したが、十分気をつけながらゆっくりと滴下した。全量を滴下するのに1時間30分を要した。
本発明に従う実施例17〜22においては、効率良くキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーを製造することができる。
また、界面活性剤を含む実施例17及び実施例19〜22は、界面活性剤を含有しない実施例18と比較して、フッ化水素酸とキチン及びキトサンとの初期濡れ性に優れることが分かった。このことから、反応容器の側面や攪拌機のプロペラ部分などにフッ化水素酸と未接触のキチン及び/又はキトサンが付着する現象を高度に抑制でき、所定時間接触(混合)した後のキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーの重合度分布を常に一定に保つのに効果的であることが分かった。
別途、実施例17〜22についてそれぞれ10回、同様に実施したところ、得られる各重合度のオリゴマーの収量は一定であり、再現性に優れることが分かった。また、界面活性剤を含む実施例17及び実施例19〜22では特に再現性が良好であったことを付記しておく。発明者らが実験確認したところ、酵素を用いたキチン系及び/又はキトサン系材料の加水分解反応ではこのような再現性を得ることは困難であり、塩酸単独でキチン系及び/又はキトサン系材料の加水分解反応でもこのような再現性を得ることは容易ではなかった。
さらに、DIONEX社製イオンクロマトDX500(カラム;IONPACAS17)により、実施例17〜22で得られたキチンオリゴマー又はキトサンオリゴマーを評価したところ、実施例17〜21で得られたキチンオリゴマー又はキチンオリゴマーを過剰のアルカリ成分中で脱アセチル化させて得られたキトサンオリゴマー中の残存フッ素濃度は、何れも0.001〜10ppmの範囲内であるのに対し、実施例22のキトサンオリゴマー中の残存フッ素濃度は20ppmであり、原料としてキチン系材料を用いる場合の方が効率良く残存フッ素濃度を低減できることが分かった。実施例22で得られたキトサンオリゴマーに水酸化カルシウム1g添加し、濾過した後、再度ろ液を減圧濃縮してキチンオリゴマーを回収したところ、残存フッ素濃度は0.1ppmに低減されたことを付記しておく。
さらに、実施例17〜21においてカラムに通液する前のキチンオリゴマー又はキトサンオリゴマーを含有する溶液を濃縮乾燥し、該キチンオリゴマー又はキトサンオリゴマー中の残存フッ素濃度を測定したところ、何れも20ppm以下であった。脱アセチル化のために塩基性カルシウム塩を大過剰に使用した実施例21を除く実施例17〜20及び実施例22については、セイコー社製ICP質量分析計SPQ8000で評価したカルシウムイオンの残存量が、カラム通液前において45ppmであり、カラム通液後においては0.01ppmであった。
最後に、リムルスES−IIシングルテストワコー(和光純薬工業製)を試薬として用いて、トキシノメーターET−2000(和光純薬工業製)でエンドトキシン濃度を評価した。その結果、実施例17〜23については検出限界以下であった。また、20℃の水100gに対する溶解性を評価したところ、実施例17〜22では4〜12gの範囲内の溶解を示した。
一方、フッ化水素酸濃度が高い点で本発明と異なる比較例6及び比較例7では、温度を制御しながら安全にフッ化水素酸濃度を低減させることが難しく、比較例8では、中和するまでに時間がかかりすぎることがわかった。高濃度のフッ化水素酸中に接触する時間に斑が生じた比較例8の方法では、目的オリゴマーの重合度を制御することは難しいと考えられる。
【実施例23】
実施例22で得られたキトサン単量体(グルコサミン)塩酸塩及びキトサンオリゴマー塩酸塩を、水500gに溶解し、これにアスコルビン酸ナトリウムの濃厚溶液を沈殿がもはや生成しなくなるまで加え、ろ過した後、ろ液を減圧加温した。得られたキトサン単量体(グルコサミン)アスコルビン酸塩及びキトサンオリゴマーアスコルビン酸塩を0.05〜1%添加した魚類の餌料、養鶏の飼料、家畜の飼料等は、それぞれの個体の健全な成育に寄与した。特に養殖魚(マダイ、ブリ)の死亡率を顕著に低下(10%以下)させることができた。
【実施例24】
実施例22で得られたキトサン単量体(グルコサミン)塩酸塩及びキトサンオリゴマー塩酸塩を、水500gに溶解し、これに乳酸ナトリウムの濃厚溶液を沈殿がもはや生成しなくなるまで加え、ろ過した後、ろ液を減圧加温した。得られたキトサン単量体(グルコサミン)乳酸塩及びキトサンオリゴマー乳酸塩を0.05〜1%添加した魚類の餌料、養鶏の飼料、家畜の飼料等は、それぞれの個体の健全な成育に寄与した。特に大規模養殖における魚(マダイ、ブリ)の死亡率を減少させ、常に90%以上の歩留りが得られた。
【実施例25】
グリシン150g、L−グルタミン酸147g及び水500gを100℃に100時間保って調製された混合アミノ酸に実施例22で得られたキトサン単量体(グルコサミン)塩酸塩及びキトサンオリゴマー塩酸塩を1重量%溶解させた。この溶液は酢昆布様の甘味の強い無色〜淡黄色の調味料兼栄養液であり、水産動物、昆虫類が大きな嗜好性を示し、飼料効率が向上し、死亡率が従来の1/3以下に低減された。
【実施例26】
グリシン75g、α−アラニン89g、L−グルタミン酸147g及び水500gを100℃に100時間保って調製された混合アミノ酸に実施例22で得られたキトサン単量体(グルコサミン)塩酸塩及びキトサンオリゴマー塩酸塩を2重量%溶解させた。この溶液は、大豆油粕主体の配合飼料の添加剤として好適であった。
上記の通り、本発明で得られたキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物は、各種の動物の飼育用の飼料添加剤等として有用である。
【実施例27】
攪拌機付きPFA容器内にレオドールTW−L106(花王株式会社製界面活性剤)50ppm入り50%フッ化水素酸を40g投入し、雰囲気を窒素置換した後に、重合度10〜20のキチンオリゴマー混合物10gを投入した。キチンオリゴマーとフッ化水素酸は5秒程で均一となり、そのまま35℃で1時間反応させた。その後、メタノール100gを追加し、不溶解成分を濾過により除去した。ろ液は、氷浴中、水酸化カルシウム37.1gで中和した。この時の溶液のpHは9であった。この溶液を再度濾過により固液分離し、pH=5になるように0.1Nの塩酸を添加した。この溶液をクロマトグラフ用活性炭(和光純薬工業株式会社製)500gを充填した直径40mmのカラムに通液した。純水1000gをカラムに通液した後、メタノール濃度5%から80%までの直線濃度勾配を設けたメタノール水溶液をカラムに3000g通液した。カラムからでてきた溶液を分別回収し、減圧濃縮したところ、キチン2量体2.0g、キチン3量体1.5g、キチン4量体1.0g、キチン5量体0.6g、キチン6量体0.4g、キチン7〜8量体0.4g、キチン9〜10量体0.3gがそれぞれ回収された。
【実施例28】
攪拌機付きPFA容器内に重合度10〜20のキチンオリゴマー10gを入れ、雰囲気を窒素置換した後に、エマゾールL−10(花王株式会社製界面活性剤)10ppm入り40%フッ化水素酸25g及び10%塩酸25gとを同時に添加した。キチンオリゴマーとハロゲン化水素酸は10秒程で均一となり、そのまま50℃で2時間反応させた。その後、純水80gを追加し、不溶解成分を濾過により除去した。ろ液は、氷浴中、水酸化カルシウム21.1gで中和した。この時の溶液のpHは8であった。この溶液を再度濾過により固液分離し、pH=5になるように0.1Nの塩酸を添加した。この溶液を直径50mm、長さ300mmのウルトラパックODS−A(山善株式会社製)を装着した中圧分取液クロシステムYFLC−8005−WD−FD(山善株式会社製)に純水とともに通液した。カラムからでてきた溶液を分別回収し、減圧濃縮したところ、キチン2量体2.0g、キチン3量体1.5g、キチン4量体1.0g、キチン5量体0.7g、キチン6量体0.5g、キチン7〜8量体0.3g、キチン9〜10量体0.2gがそれぞれ回収された。
【実施例29】
攪拌機付きPFA容器内に界面活性剤無添加の20%フッ化水素酸を90g投入し、雰囲気を窒素置換した後に、重合度10〜20のキチンオリゴマー10gを投入した。キチンオリゴマーとフッ化水素酸は1分程で均一となり、そのまま70℃で2時間反応させた。その後、純水100gを追加し、不溶解成分を濾過により除去した。ろ液は、氷浴中、水酸化カルシウム33.4gで中和した。この時の溶液のpHは9であった。この溶液を再度濾過により固液分離し、pH=5になるように0.1Nの塩酸を添加した。この溶液をクロマトグラフ用活性炭(和光純薬工業株式会社製)500gを充填した直径40mmのカラムに通液した。純水1000gをカラムに通液した後、メタノール濃度5%から80%までの直線濃度勾配を設けたメタノール水溶液をカラムに3000g通液した。カラムからでてきた溶液を分別回収し、減圧濃縮したところ、キチン2量体2.1g、キチン3量体1.5g、キチン4量体1.0g、キチン5量体0.7g、キチン6量体0.4g、キチン7〜8量体0.2g、キチン9〜10量体0.1gがそれぞれ回収された。
【実施例30】
攪拌機付きPFA容器内に界面活性剤無添加の20%フッ化水素酸−15%塩酸混合液100gを投入し、雰囲気を窒素置換した後に、重合度10〜20のキトサンオリゴマー(塩酸塩タイプ)10gを投入した。3分間経過したころキトサンオリゴマーとハロゲン化水素酸は均一になじんだので、そのまま35℃で2時間反応させた。その後、純水100gを追加し、不溶解成分を濾過により除去した。ろ液は、氷浴中、炭酸カルシウム70.6gで中和した。この時の溶液のpHは9であった。この溶液を再度濾過により固液分離し、pH=5になるように0.1Nの塩酸を添加した。この溶液を直径50mm、長さ300mmのウルトラパックODS−A(山善株式会社製)を装着した中圧分取液クロシステムYFLC−8005−WD−FD(山善株式会社製)に純水とともに通液した。カラムからでてきた溶液を分別回収し、減圧濃縮したところキトサン塩酸塩2量体1.8g、キトサン塩酸塩3量体1.2g、キトサン塩酸塩4量体0.8g、キトサン塩酸塩5量体0.6g、キトサン塩酸塩6量体0.4g、キトサン塩酸塩7〜8量体0.2g、キトサン塩酸塩9〜10量体0.1gがそれぞれ回収された。
【実施例31】
攪拌機付きPFA容器内にキトビオースフッ化水素酸塩4g、キトトリオースフッ化水素酸塩3g、キトテトラオースフッ化水素酸塩2g、キトペンタオースフッ化水素酸塩1gとを投入し、雰囲気を窒素置換した後に、レオドールTW−L106(花王株式会社製界面活性剤)50ppm入り55%フッ化水素酸を40g投入した。各キトサンオリゴマーとフッ化水素酸はすぐに均一となり、そのまま35℃で2時間反応させた。その後、水200gを追加し、不溶解成分を濾過により除去した。ろ液は、氷浴中、炭酸カルシウム55.1gで中和した。この時の溶液のpHは9であった。この溶液を再度濾過により固液分離し、pH=5になるように0.1Nの塩酸を添加した。この溶液を直径50mm、長さ300mmのウルトラパックODS−A(山善株式会社製)を装着した中圧分取液クロシステムYFLC−8005−WD−FD(山善株式会社製)に純水とともに通液した。カラムからでてきた溶液を分別回収し、減圧濃縮したところ、9.8gのグルコサミン塩酸塩が回収された。
【実施例32】
攪拌機付きPFA容器内にエキセルO−95R(花王株式会社製界面活性剤)100ppm入り50%フッ化水素酸を40g投入し、雰囲気を窒素置換した後にN−アセチルキトビオース4g、N−アセチルキトトリオース3g、N−アセチルキトテトラオース2g、N−アセチルキトペンタオース1gからなるキチンオリゴマー混合物を投入した。キチンオリゴマーとフッ化水素酸は10秒程で均一となり、そのまま40℃で4時間反応させた。その後、水100gを追加し、不溶解成分を濾過により除去した。ろ液は、氷浴中、炭酸カルシウム50.2gで中和した。この時の溶液のpHは9であった。この溶液を再度濾過により固液分離し、pH=5になるように0.1Nの塩酸を添加した。この溶液を直径50mm、長さ300mmのウルトラパックODS−A(山善株式会社製)を装着した中圧分取液クロシステムYFLC−8005−WD−FD(山善株式会社製)に純水とともに通液した。カラムからでてきた溶液を分別回収し、減圧濃縮したところ、9.6gのN−アセチルグルコサミンが回収された。
【実施例33】
実施例32で得られた9.6gのN−アセチルグルコサミンを10%水酸化ナトリウム水溶液90gに溶解させ、室温で2週間放置した。1N−塩酸でpHを6に調整し、脱塩処理を実施し、減圧濃縮したところ、9.3gのグルコサミン塩酸塩が得られた。
【実施例34】
攪拌機付きPFA容器内にレオドールTW−L106(花王株式会社製界面活性剤)50ppm入り50%フッ化水素酸を40g投入し、雰囲気を窒素置換した後に、重合度10〜20のキチンオリゴマー混合物2gと高分子量キチン(甲陽ケミカル株式会社製、キチンTC−L)8gとを同時に投入した。キチンオリゴマーとフッ化水素酸は5秒程で均一となり、そのまま40℃で2時間反応させた。その後、メタノール100gを追加し、不溶解成分を濾過により除去した。ろ液は、氷浴中、水酸化カルシウム37.1gで中和した。この時の溶液のpHは9であった。この溶液を再度濾過により固液分離し、pH=5になるように0.1Nの塩酸を添加した。この溶液をクロマトグラフ用活性炭(和光純薬工業株式会社製)500gを充填した直径40mmのカラムに通液した。純水1000gをカラムに通液した後、メタノール濃度5%から80%までの直線濃度勾配を設けたメタノール水溶液をカラムに3000g通液した。カラムからでてきた溶液を分別回収し、減圧濃縮したところ、キチン2量体2.1g、キチン3量体1.6g、キチン4量体1.2g、キチン5量体0.8g、キチン6量体0.5g、キチン7〜8量体0.4g、キチン9〜10量体0.2gがそれぞれ回収された。
本発明に従う実施例27〜34においては、効率良くキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーを製造することができる。
また、界面活性剤を含む実施例27、実施例28、実施例31、実施例32、並びに実施例34は、界面活性剤を含有しない実施例29及び実施例30と比較して、ハロゲン化水素酸とキチン及びキトサンとの初期濡れ性に優れることが分かった。このことから、反応容器の側面や攪拌機のプロペラ部分などにハロゲン化水素酸と未接触のキチン及び/又はキトサンが付着する現象を高度に抑制でき、所定時間接触(混合)した後のキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーの重合度分布を常に一定に保つのに効果的であることが分かった。
別途、実施例27〜32及び実施例34についてそれぞれ10回、同様に実施したところ、得られる各重合度のオリゴマーの収量は一定であり、再現性に優れることが分かった。また、界面活性剤を含む実施例27、実施例28、実施例31、実施例32、並びに実施例34では特に再現性が良好であったことを付記しておく。
さらに、DIONEX社製イオンクロマトDX500(カラム;IONPAC AS17)により、実施例27〜29、実施例32、並びに実施例34で得られたキチンオリゴマーを評価したところ、得られたキチンオリゴマー中の残存フッ素濃度は、何れも0.001〜10ppmの範囲内であった。一方、実施例30及び実施例31で得られたキトサンオリゴマー中の残存フッ素濃度は20〜25ppmであり、キチンオリゴマーの方が効率良く残存フッ素濃度を低減できることが分かった。なお、実施例30及び実施例31で得られたキトサンオリゴマーに水酸化カルシウム1g添加し、濾過した後、再度ろ液を減圧濃縮してキチンオリゴマーを回収したところ、残存フッ素濃度は0.02ppmに低減されていた。
さらに実施例27〜29、実施例32、並びに実施例34においてカラムに通液する前のキチンオリゴマーを含有する溶液を濃縮乾燥し、該キチンオリゴマー中の残存カルシウム濃度をセイコー社製ICP質量分析計SPQ8000で評価したところ、得られたキチンオリゴマー中の残存カルシウム濃度は、何れも0.001〜10ppmの範囲内であり、カラム通液後において同様に評価した残存カルシウム濃度は0.01ppmであった。
一方、実施例30及び実施例31で得られたキトサンオリゴマー中の残存カルシウム濃度は20〜30ppmであった。
最後に、リムルスES−IIシングルテストワコー(和光純薬工業製)を試薬として用いて、トキシノメーターET−2000(和光純薬工業製)でエンドトキシン濃度を評価した。その結果、実施例27〜34については検出限界以下であった。また、20℃の水100gに対する溶解性を評価したところ、実施例27〜30及び実施例34では4〜12gの範囲内の溶解を示した。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素原子を0.001〜1000ppmppm含有することを特徴とするキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物。
【請求項2】
カルシウム原子を0.001〜1000ppm含有することを特徴とするキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物。
【請求項3】
3〜10量体のオリゴマー含有率が60%以上である請求項1に記載のキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物。
【請求項4】
4〜10量体のオリゴマー含有率が40%以上である請求項1〜2何れかに記載のキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物。
【請求項5】
20℃における100gの水に対する溶解量が2〜20gの範囲内である請求項1〜4何れか一項に記載のキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物。
【請求項6】
エンドトキシン濃度が100EU/ml以下である請求項1〜5の何れか一項に記載のキチンオリゴマー組成物。
【請求項7】
キチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーがキチンオリゴマー組成物である請求項1〜6の何れか一項に記載のキチンオリゴマー組成物。
【請求項8】
キチン系及び/又はキトサン系材料に、その濃度が20重量%以上95重量%未満の範囲内のフッ化水素酸を添加することを特徴とするキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物の製造方法。
【請求項9】
フッ化水素酸の濃度が20重量%以上75重量%未満である請求項8に記載のキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物の製造方法。
【請求項10】
フッ化水素酸の濃度が75重量%以上95重量%未満である請求項8に記載のキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物の製造方法。
【請求項11】
キチン系及び/又はキトサン系材料に、(イ)フッ化水素酸と(ロ)フッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸の少なくとも1種とを添加し、この際の(ハ)フッ化水素酸の濃度が、フッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸とフッ化水素酸との総量に対して1重量%以上75重量%未満の範囲内であり、(ニ)フッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸の濃度がフッ化水素酸以外のハロゲン化水素酸とフッ化水素酸との総量に対して1〜35重量%の範囲内であることを特徴とするキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物の製造方法。
【請求項12】
キチン系及び/又はキトサン系材料に、フッ化水素酸又はこれとハロゲン化水素酸とを添加する際の液温が、−20〜150℃の範囲内になるように制御して行う請求項8〜11の何れか一項に記載のキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物の製造方法。
【請求項13】
キチン系及び/又はキトサン系材料に、フッ化水素酸又はこれとハロゲン化水素酸とを添加した溶液に、塩基性カルシウム塩を適宜な時期に添加する請求項8〜12の何れか一項に記載のキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物の製造方法。
【請求項14】
キチン系及び/又はキトサン系材料に、フッ化水素酸又はこれとハロゲン化水素酸とを添加した溶液に、フッ化水素酸100重量部に対して1〜400重量部の範囲内で親水性有機溶媒を適宜な時期に添加し不溶解成分を除去する工程を有し、該工程を経た溶液からフッ素成分を除去する工程を有する請求項8〜13の何れか一項に記載のキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物の製造方法。
【請求項15】
キチン系及び/又はキトサン系材料に、フッ化水素酸又はこれとハロゲン化水素酸とを添加した溶液を、適宜な時期に一旦塩基性にして不溶解成分を除去する工程を有し、その後該工程を経た溶液を中性又は酸性にする請求項8〜14の何れか一項に記載のキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物の製造方法。
【請求項16】
キチン系及び/又はキトサン系材料にフッ化水素酸又はこれとハロゲン化水素酸とを添加した溶液からフッ素成分を除去した後の工程において、キチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーを含有する溶液を、活性炭、アルミナ、シリカゲル、アルキル基含有シリカゲル、アミノ基含有シリカゲル、水酸基含有シリカゲル、シアノ基含有シリカゲルのうち、少なくとも1種類以上と接触させる請求項8〜15の何れか一項に記載のキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物の製造方法。
【請求項17】
キチン系及び/又はキトサン系材料にフッ化水素酸又はこれとハロゲン化水素酸とを添加した溶液に、フッ化水素酸100重量部に対して1〜400重量部の範囲内で親水性有機溶媒を添加し不溶解成分を除去する工程を有し、該工程を経た親水性有機溶媒含有溶液からフッ素成分を除去した後に、その親水性有機溶媒含有溶液を活性炭、アルミナ、シリカゲル、アルキル基含有シリカゲル、アミノ基含有シリカゲル、水酸基含有シリカゲル、シアノ基含有シリカゲルのうち、少なくとも1種類以上と接触させる請求項8〜16の何れか一項に記載のキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物の製造方法。
【請求項18】
キチン系及び/又はキトサン系材料に、フッ化水素酸/又はこれとハロゲン化水素酸とを混合した溶液に、キチン系及び/又はキトサン系材料とフッ化水素酸/又はこれとハロゲン化水素酸の接触初期に、0.0001〜1重量%の範囲内で界面活性剤を含有せしめた請求項8〜17の何れか一項に記載のキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物の製造方法。
【請求項19】
キチン系及び/又はキトサン系材料の1つであるキチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーに、ハロゲン化水素酸(但しフッ化水素酸を除く)を添加することを特徴とするキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物の製造方法。
【請求項20】
キチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーが、重合度2〜40の範囲内のオリゴマーを70重量%以上含有する請求項19に記載のキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物の製造方法。
【請求項21】
ハロゲン化水素酸(但しフッ化水素酸を除く)の濃度が1〜70重量%の範囲内である請求項19〜20の何れか一項に記載のキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物の製造方法。
【請求項22】
キチン系及び/又はキトサン系材料にハロゲン化水素酸(但しフッ化水素酸を除く)を添加する際の液温が、25〜150℃の範囲内になるように制御して行う請求項19〜21の何れか一項に記載のキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物の製造方法。
【請求項23】
キチン系及び/又はキトサン系材料にハロゲン化水素酸(但しフッ化水素酸を除く)を添加した溶液に、塩基性カルシウム塩を適宜な時期に添加する請求項19〜22の何れか一項に記載のキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物の製造方法。
【請求項24】
キチン系及び/又はキトサン系材料にハロゲン化水素酸(但しフッ化水素酸を除く)を添加した溶液に、フッ化水素酸100重量部に対して1〜400重量部の範囲内で親水性有機溶媒を適宜な時期に添加し不溶解成分を除去する工程を有し、該工程を経た溶液からフッ素成分を除去する工程を有する請求項19〜23の何れか一項に記載のキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物の製造方法。
【請求項25】
キチン系及び/又はキトサン系材料にハロゲン化水素酸(但しフッ化水素酸を除く)を添加した溶液を、適宜な時期に一旦塩基性にして不溶解成分を除去する工程を有し、その後該工程を経た溶液を中性又は酸性にする請求項19〜24の何れか一項に記載のキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物の製造方法。
【請求項26】
キチン系及び/又はキトサン系材料にハロゲン化水素酸を添加した溶液からフッ素成分を除去した後の工程において、キチンオリゴマー及び/又はキトサンオリゴマーを含有する溶液を、活性炭、アルミナ、シリカゲル、アルキル基含有シリカゲル、アミノ基含有シリカゲル、水酸基含有シリカゲル、シアノ基含有シリカゲルのうち、少なくとも1種類以上と接触させる請求項19〜25の何れか一項に記載のキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物の製造方法。
【請求項27】
キチン系及び/又はキトサン系材料にハロゲン化水素酸を添加した溶液に、フッ化水素酸100重量部に対して1〜400重量部の範囲内で親水性有機溶媒を添加し不溶解成分を除去する工程を有し、該工程を経た親水性有機溶媒含有溶液からフッ素成分を除去した後に、その親水性有機溶媒含有溶液を活性炭、アルミナ、シリカゲル、アルキル基含有シリカゲル、アミノ基含有シリカゲル、水酸基含有シリカゲル、シアノ基含有シリカゲルのうち、少なくとも1種類以上と接触させる請求項19〜26の何れか一項に記載のキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物の製造方法。
【請求項28】
キチン系及び/又はキトサン系材料にハロゲン化水素酸(但しフッ化水素酸を除く)を混合した溶液に、キチン系及び/又はキトサン系材料とフッ化水素酸の接触初期に、0.0001〜1重量%の範囲内で界面活性剤を含有せしめた請求項19〜27の何れか一項に記載のキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物の製造方法。
【請求項29】
請求項1〜6の何れか一項に記載のキチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴマー組成物を主成分として成る水産動物用飼料。

【国際公開番号】WO2005/005485
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【発行日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511464(P2005−511464)
【国際出願番号】PCT/JP2004/006429
【国際出願日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(000002336)財団法人生産開発科学研究所 (10)
【出願人】(000162847)ステラケミファ株式会社 (81)
【Fターム(参考)】