説明

キッチンの家庭電化製品収納庫

【課題】コンセントを、家庭電化製品から発せられる蒸気の影響を受けることなく良好に内部に設置できるキッチンの家庭電化製品収納庫を提供する。
【解決手段】炊飯器等の家庭電化製品を収納し得る収納空間が形成されてなる家庭電化製品収納庫11において、家庭電化製品収納庫11内に、収納空間S側から開閉し得る遮蔽扉18を備えて収納空間Sと隔離された隔離空間SKを形成し、この隔離空間SK内にコンセント27を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯器等の家庭電化製品を収納し得る収納空間が形成されてなるキッチンの家庭電化製品収納庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、箱状の収納体内にコンセントを設け、収納体の前面に開閉可能に扉を設けた構造のコンセント収納体が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−37716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されているコンセント収納体は、扉を設けることにより、埃が溜まることを防ぎ、また、子供がコンセントに触らないようにしたものであって、キッチンにおけるコンセントに対する蒸気の遮断を目的としたものではなかった。
即ち、キッチンにおいて炊飯器等の家庭電化製品を収納庫内に収納した場合には、炊飯器等から出る蒸気の影響で収納庫内の湿度が高くなり、収納庫内に設けられているコンセントの使用環境条件が悪化するという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、コンセントの使用環境条件が悪化することのないキッチンの家庭電化製品収納庫の提供を目的とし、この目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
本発明は、炊飯器等の家庭電化製品を収納し得る収納空間が形成されてなるキッチンの家庭電化製品収納庫において、該家庭電化製品収納庫内に、前記収納空間側から開閉し得る遮蔽扉を備えて該収納空間と隔離された隔離空間を形成し、該隔離空間内にコンセントを設けたことを要旨とする。ここで隔離空間とは、収納空間との空気の通りを完全に遮蔽するものではない。
【発明の効果】
【0006】
収納庫内に炊飯器等を入れて使用する際に、炊飯器等から熱や蒸気が発生しても、コンセントは収納空間とは隔離された隔離空間内に設けられているため、熱や蒸気が隔離空間内のコンセントに悪影響を与えることが少なく、コンセントへの水滴等の付着などが良好に防がれ、コンセントの使用環境を良好に維持できるものとなる。
【0007】
また、本発明のキッチンの家庭電化製品収納庫には、前記収納空間を開閉し得る扉が設けられているものとすることもできる。
こうすれば、扉を閉めることで収納空間内に収納されている炊飯器等の家庭電化製品を隠すことができ、すっきりとした収納状態が得られるものとなる。
【0008】
また、本発明のキッチンの家庭電化製品収納庫において、前記隔離空間を開閉し得る遮蔽扉は、上下にスライドする上下スライド式扉で構成されているものとすることもできる。
こうすれば、遮蔽扉は収納空間側から上方へ引き上げて良好に開けることができ、また、遮蔽扉は自然に下方へ落下して閉止状態となるため、隔離空間に湿度を伝えにくいものとなる。また、遮蔽扉は上下方向に開閉されるため、前方側へは開かないために収納空間が広く使え、邪魔にならないものとなる。
【0009】
また、本発明のキッチンの家庭電化製品収納庫において、前記遮蔽扉の閉止状態における下方位置に、前記収納空間と前記隔離空間を連通し電気コードを通すことのできる凹部が形成されているものとすることもできる。
こうすれば、凹部内に電気コードを通して、電気コードをコンセントに差し込んで使用することができ、この状態で遮蔽扉を閉止させても、遮蔽扉の下端で電気コードが挟み込まれることがなく、良好に遮蔽扉を閉止させることができるものとなる。また、遮蔽扉による電気コードの剪断が良好に防がれるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】キッチン設備の一例を示す斜視構成図である。
【図2】キッチン設備の一部を構成するトールキャビネットの拡大斜視構成図である。
【図3】トールキャビネットにおける家庭電化製品収納庫内部の拡大水平断面図である。
【図4】家庭電化製品収納庫内部に隔離空間を形成させるための仕切り部材の斜視構成図である。
【図5】仕切り部材の主要構成部材を裏面側から視た分解斜視図である。
【図6】仕切り部材の主要構成部材の前面側から視た分解斜視図である。
【図7】図3の要部拡大水平断面構成図である。
【図8】家庭電化製品収納庫内部に仕切り部材を取り付けた状態の縦断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
図1は、キッチン空間内に設置されるキッチン設備の斜視構成図であり、キッチン設備1は、流し台2の左右側にトールキャビネット3,4が立設されている。
流し台2は、カウンター5にコンロ6とシンク7が設けられており、カウンター5の下方には引出し8,8と食器洗い機8aが設けられている。また、カウンター5の上方には収納空間を形成するアッパーキャビネット部9とレンジフード9aが設けられている。
【0012】
前記左右のトールキャビネット3,4は、それぞれ内部に収納空間が形成されているものであるが、図示左側のトールキャビネット3は、図2に拡大して斜視図で示すように、上下方向中央部に、ビルトインされた電子レンジ10(この部分にオーブンレンジが収納される場合もある。)が設けられており、この電子レンジ10の下方側に家庭電化製品収納庫11が設けられており、電子レンジ10の上方には扉14aを備えた収納庫14が設けられている。
【0013】
家庭電化製品収納庫11内には、炊飯器等を収納できる収納空間Sが形成され、内部に炊飯器等を置くことのできる載置棚12が設けられており、家庭電化製品収納庫11の前面側には開閉可能に扉11aが設けられている。
この家庭電化製品収納庫11の天井面11bの上方、即ち電子レンジ10の下面との間には、前面に蒸気排出口13が形成され、この蒸気排出口13の奥側には図示しない小型の換気扇が内蔵されている。即ち、収納空間S内で炊飯器等を使用する際に、炊飯器等から発する蒸気を、天井面11bから小型換気扇で吸い出して蒸気排出口13から前方側へ排出できるように構成されている。
【0014】
なお、載置棚12は前方側へスライドさせて引き出し可能であり、この載置棚12上に炊飯器等を置いて、収納空間S内に載置棚12を差し込んで収納空間S内に炊飯器等を収納させることができ、この状態で前面側の扉11aを閉じて、収納空間S内の炊飯器等を良好に隠すことができるものである。
【0015】
家庭電化製品収納庫11の拡大水平断面を図3に示す。
図3に示すように、家庭電化製品収納庫11の収納空間Sの裏側には隔離空間SKが形成されており、この隔離空間SK内の後面にコンセントを設置でき、遮蔽扉18により隔離空間SKを収納空間Sと遮蔽して隔離できる(後述するように、収納空間Sと隔離空間SKを連通させる凹部16dが開口されているため空気の通りを完全に遮蔽するものではない。)ように構成されている。
この隔離空間SKを家庭電化製品収納庫11内に形成するために、図4に拡大斜視図で示すステンレス製の仕切り部材15が収納空間S内に取り付けられている。
【0016】
この図4に示す仕切り部材15の主要な構成部材の分解図は図6に示し、仕切り板片16と、コの字箱体17と、遮蔽扉18を備えている。
また、図5には、仕切り板片16とコの字箱体17の裏側から視た分解図を示す。
なお、図7は、図3の要部を更に拡大して示す水平断面図であり、図8は、家庭電化製品収納庫11内部に仕切り部材15を取り付けた状態の縦断面拡大図である。
【0017】
仕切り部材15を構成する仕切り板片16は、その左右端側に前方側へ90°折り曲げて連結折り曲げ片16a,16bが形成されており、仕切り板片16には横長の長方形状に貫通形成した開口16cが形成され、この開口16cの下端側中央部に、更に下方側へ凹み状に貫通させて凹部16dが形成されている。
この仕切り板片16の左右の連結折り曲げ片16a,16bには、それぞれ複数のビス孔16eが形成されており、ビス孔16e内にビスを入れて、左右の連結折り曲げ片16a,16bに、それぞれ前方側へ延びる固定板片19a,19bを図4のように連結できるように構成されている。
【0018】
また、前記コの字箱体17は、背板部17aの左右端側に前方側へ折り曲げて側板部17b,17cが形成されており、この左右の側板部17b,17cのそれぞれの前端側には、更に90°折り曲げて背板部17aと平行状に固定片17d,17dが一体形成されている。このコの字箱体17の背板部17aの下部部位には、横長状にコンセント嵌め込み開口17eが貫通形成されている。
なお、遮蔽扉18は、前面の下部部位に手で持つことのできる取っ手18aが前方側へ突出形成されており、遮蔽扉18の上端裏面には後方側へ突出して上端水平片18bが形成されている。
【0019】
また、図5の裏面側の分解斜視図で示すように、コの字箱体17の底面側には底板22が取り付けられ、また、コの字箱体17内に上方から天板21が嵌め込まれて固定されるものである。
底板22の外周には、コの字箱体17の背板部17aおよび左右の側板部17b,17cの内周面にスポット溶接で接合させるための折り曲げ固定片22aが形成されている。同様に、天板21の外周にも、コの字箱体17の背板部17aおよび左右の側板部17b,17cの内周面にスポット溶接で接合させるための折り曲げ固定片21a,21aが形成されている。
【0020】
なお、コの字箱体17の左右の側板部17b,17cの前端側内周面には、L字状断面の縦長のL板23,23がそれぞれスポット溶接で図7のように固定されるものである。
左右のL板23,23がコの字箱体の側板部17b,17cの内側に固定された状態で、コの字箱体17の固定片17d,17dをそれぞれスポット溶接で仕切り板片16の開口16cの裏側外周に固定すると、図7の水平拡大図で示すように、コの字箱体17の固定片17dとL板23間に縦方向のレール部26が形成されるものである。このレール部26内には遮蔽扉18の側端部が挿入される。
なお、遮蔽扉18の側端外周には、予め扉側縁カバー材24を取り付けておき、この扉側縁カバー材24を介在させて遮蔽扉18の側端部がレール部26内に上下動可能に嵌め込まれる。なお、仕切り板片16の開口16cおよび凹部16dの内周面には、樹脂製のエッジ保護材25,25を予め取り付けておく。
【0021】
なお、図中20は傾斜板であり、この傾斜板20は、図8の縦断面図で示すように、仕切り板片16の上端側前面にビス止めされて、前端側が家庭電化製品収納庫11の天井面11bにビスで連結されるものである。
この傾斜板20と左右の固定板片19a,19bに囲まれた空間内が収納空間Sとなり、仕切り板部16から後方側の、仕切り板片16とコの字箱体17と天板21と底板22で囲まれた空間が隔離空間SKとなる。
【0022】
なお、図3の水平断面で示すように、トールキャビネット3の木製の背板3cに、仕切り部材15のコの字箱体17の背板部17aが当接し、この背板部17aは背板3cにビス止めされて固定され、トールキャビネット3を構成する木製の側板3a,3bの内側には、左右の固定板片19a,19bがビス止めされ、更に、トールキャビネット3内に縦方向に延びる左右の縦桟木3e,3eに、仕切り板片16がビス止めされることにより、家庭電化製品収納庫11内に仕切り部材15が取り付けられる。
【0023】
なお、トールキャビネットの背板3cには、予めコンセントを嵌め込むための横長長方形状の嵌め込み開口部30が形成されており、この嵌め込み開口部30に、コの字箱体17の背板部17aに貫通形成されているコンセント嵌め込み開口17eが整合されて、嵌め込み開口部30およびコンセント嵌め込み開口17e内にコンセントが嵌め込まれ、コンセント嵌め込み開口17eの前面側にコンセントカバー27が設けられて、コンセントが隔離空間SK内に取り付けられる。
【0024】
なお、隔離空間SKの前面側の仕切り板片16に形成された開口16cには、前述した如く、上下スライド式で開閉できる遮蔽扉18が設けられ、この遮蔽扉18を閉じることで、隔離空間SKは収納空間Sと遮蔽された状態となる。
なお、図8の縦断面図で示すように、仕切り板片16の開口16cの上端付近に、コの字箱体17に固定された前記天板21が配置され、隔離空間SKの上面は、この天板21により遮断される。また、隔離空間SKの底面は、コの字箱体17に固定された底板22により遮断される。
【0025】
この底板22の左右端側の前記レール部26,26の部分には、上方へ立ち上げて扉当たり止め部28,28が設けられ、遮蔽扉18を閉じた時に、遮蔽扉18の下端が左右の扉当たり止め部28,28に当接することで、良好に開口16cが遮蔽扉18により閉止されるものである。
この遮蔽扉18の閉止状態においても、凹部16dは、収納空間Sと隔離空間SKを連通させる状態に開口されており、この凹部16d内には炊飯器等の電気コードを挿通させて、電気コードを隔離空間SK内のコンセントに差し込んで使用することができるものである。従って、凹部16d内に電気コードが挿通されている状態で遮蔽扉18を閉止させても、遮蔽扉18の下端で電気コードを剪断することはなく、電気コードは遮蔽扉18に挟み込まれることなく良好に凹部16d内に配置されるものである。
【0026】
このように本例では、図4のように組み立てたステンレス製の仕切り部材15を、家庭電化製品収納庫11内に取り付けて、家庭電化製品収納庫11内に収納空間Sとは隔離された隔離空間SKを形成させることができ、この隔離空間SK内にコンセントを設けておくことができる。
収納空間S内で炊飯器等を使用する際に、炊飯器等から発せられる蒸気が隔離空間SK内には侵入しにくく、また、侵入するにしても蒸気の侵入には時間がかかり、そのために、隔離空間SK内に設置されたコンセントへの蒸気の影響は少なくなり、コンセントを良好な湿度環境に維持することができるものである。
即ち、収納空間S内に蒸気による水滴等が生じるような使用状況下でも、隔離空間SK内には水滴等が付着することはなく、コンセントの使用環境が良好なものとなる。
【0027】
なお、遮蔽扉18を閉ざしておけば奥側のコンセントは隠蔽されるため、埃等もコンセントに付着することが少なく、また、子供が悪戯でコンセントに触れることも良好に防げるものとなる。
なお、遮蔽扉18は上下スライド式であるため、前方の収納空間S側に開くものではないため、邪魔になることなく収納空間Sを広く使用することができるものとなり、遮蔽扉18は上方へスライドさせて開け、手を離すことにより自然に自重で落下して閉止されるため、扱い易いものとなる。
【0028】
なお、収納空間S内には炊飯器の他に、電気ポット等の、蒸気あるいは熱を発する家庭電化製品を良好に収納させて使用することができ、扉11aを閉めることで、これらの家庭電化製品を隠蔽させて、すっきりとした家庭電化製品収納庫11となる。
なお、図4に示す仕切り部材15は一例であって、家庭電化製品収納庫11の収納空間S内に取り付けることができて、収納空間Sとは隔離された隔離空間SKを内部に形成させることができる形状のものであれば良い。
【符号の説明】
【0029】
1 キッチン設備
2 流し台
3 トールキャビネット
10 電子レンジ
11 家庭電化製品収納庫
11a 扉
11b 天井面
12 載置棚
13 蒸気排出口
15 仕切り部材
16 仕切り板片
16a,16b 連結折り曲げ片
16c 開口
16d 凹部
17 コの字箱体
17a 背板部
17b,17c 側板部
17e コンセント嵌め込み開口
18 遮蔽扉
18a 取っ手
19a,19b 固定板片
20 傾斜板
23 L板
26 レール部
27 コンセントカバー
28 扉当たり止め部
30 コンセント嵌め込み開口部
S 収納空間
SK 隔離空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯器等の家庭電化製品を収納し得る収納空間が形成されてなるキッチンの家庭電化製品収納庫において、
該家庭電化製品収納庫内に、前記収納空間側から開閉し得る遮蔽扉を備えて該収納空間と隔離された隔離空間を形成し、該隔離空間内にコンセントを設けた
ことを特徴とするキッチンの家庭電化製品収納庫。
【請求項2】
前記家庭電化製品収納庫には前記収納空間を開閉し得る扉が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のキッチンの家庭電化製品収納庫。
【請求項3】
前記隔離空間を開閉し得る遮蔽扉は、上下にスライドする上下スライド式扉で構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のキッチンの家庭電化製品収納庫。
【請求項4】
前記遮蔽扉の閉止状態における下方位置に、前記収納空間と前記隔離空間を連通し電気コードを通すことのできる凹部が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3に記載のキッチンの家庭電化製品収納庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−230(P2011−230A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144456(P2009−144456)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】