説明

キャスター

【課題】機械的安定性が高く、耐久性、耐衝撃性、耐熱性に優れ、メンテナンスフリーであり、衝撃の加わり易い環境下であったり、高温下であっても、その使用に耐えることができ、しかも小型化および軽量化が簡単なキャスターを提供する。
【解決手段】リング状とした本体1の両側端部に、それぞれリング状とした車輪2を、それぞれリング状としたホルダー3で回転自在に取り付けたキャスターであって、前記本体1の両側端部に設けたリング状のフランジ6の外周面6aと、前記車輪2の内周部の内方側の第一の摺動面2aとの間にそれぞれ第一のドライベアリング5を挟み込んだものとし、前記ホルダー3の外側端部に設けたリング状のフランジ8の外周面8aと、前記車輪2の内周部の外方側の第二の摺動面2bとの間にそれぞれ第二のドライベアリング5を挟み込んだものとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スーパーマーケット等で使用するショッピングカート、椅子、テーブル等の家具、または車椅子、ベビーカー、その他の運搬車などに取り付けられるキャスターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のキャスターは、例えば図8、9に示したように、双輪キャスターにおいて、本体11の下部に設けた軸孔12に、車輪13の車軸14を貫通させ、車輪13に設けたボールベアリング15にその車軸14を軸支することにより、本体11の両側に車輪13を回転自在に取り付けたものが存在する。
【0003】
前記双輪キャスターにおいて、車軸14は一般にボルトを用いているが、このボルトの両端部である頭部や軸端部が車輪13の中心部に露出したり、さらに車軸14を軸支するボールベアリング15の一部が車輪13の中心部に露出しており、キャスターの外見を悪くしている。
【0004】
そのため、前記双輪キャスターでは、図に示したように、車輪13の外側面13aから内側面13bに貫通形成した係止孔16に、カバー17の係止体18を係止させることにより、このカバー17を車輪13の外側面13aに取り付け、車輪13の中心部に露出していた車軸14の両端部やボールベアリング15を、前記カバー17で覆い隠すようにしている(特許文献1)。
【0005】
しかし、前記双輪キャスターでは、ショッピングカートや家具、その他の運搬車などに取り付けた場合、これらの荷重が車軸14にかかるため、荷重が大きい場合にはその車軸14を太く丈夫なものとしなければならないが、そうするとボールベアリング15も大きいものとしなければならず、これらの露出度が大きくなって、ますますキャスターの外見を悪くすることになり、前記したように車軸14の両端部やボールベアリング15を、カバー17で覆い隠すようにしたとしても、キャスターの外見を維持するだけで、その外見を向上させるには到っていない。
【0006】
そこで、近年、双輪キャスターにおいて、外見を向上させるために、車軸を無くすと共に、車輪の中央部を大きく開口したものが発案されており、その開口に光りが通過すると、車輪が目立たなくなり、これによりショッピングカートや家具、その他の運搬車などの被取付器具が「浮いている」ように見えるとしている。この双輪キャスターは、例えば図10、11に示したように、リング本体21と、このリング本体21に回転自在に取り付けられるリング状車輪22とからなる。
【0007】
前記リング本体21は、外周部には、外向きに一体的に形成されたボス23に、ショッピングカートや家具、その他の運搬車などに取り付けるための支持ピン24を設けたものとし、大径の開口中心部25を有したものとしている。
【0008】
前記リング状車輪22は、内周フランジ26を設けたものとし、この内周フランジ26と環状のホルダー27のネック部27aとの間に複数のローラベアリング28を配置したものとし、このホルダー27のネック部27aの周端を、前記開口中心部25内に固着して、前記リング本体21に回転自在として取り付けたものとしている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開平5−86602号公報
【特許文献2】特表2008−526603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の双輪キャスターでは、ボールベアリング15にしても、ローラベアリング28にしても、何れも転がりベアリングを使用しているため、機械的安定性が低く、長期間の使用に耐えるためには一般的に注油などのメンテナンスが必要であり、その取り扱いが面倒であるという問題点を有していた。
【0011】
さらに、上記従来の双輪キャスターでは、使用している転がりベアリングが耐衝撃性、耐熱性に欠けるため、キャスターを使用する場所が、衝撃の加わり易い環境下であったり、高温下であるときには、その使用に耐えることができない場合があるという問題点を有していた。
【0012】
また、上記従来の双輪キャスターでは、使用している転がりベアリングはそれ自体の嵩が高く、この転がりベアリングをキャスターに用いると、キャスター自体の嵩も高くなり、キャスターの小型化および軽量化が困難であるという問題点を有していた。
【0013】
そこで、この発明は、上記従来の問題点を解決することをその課題としており、機械的安定性が高く、耐久性、耐衝撃性、耐熱性に優れ、メンテナンスフリーであり、衝撃の加わり易い環境下であったり、高温下であっても、その使用に耐えることができ、しかも小型化および軽量化が簡単なキャスターを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、この発明は、リング状とした本体1の両側端部に、それぞれリング状とした車輪2を、それぞれリング状としたホルダー3で回転自在に取り付けたキャスターであって、前記本体1の両側端部に設けたリング状のフランジ6の外周面6aと、前記車輪2の内周部の内方側の第一の摺動面2aとの間にそれぞれ第一のドライベアリング5を挟み込んだものとし、前記ホルダー3の外側端部に設けたリング状のフランジ8の外周面8aと、前記車輪2の内周部の外方側の第二の摺動面2bとの間にそれぞれ第二のドライベアリング5を挟み込んだものとしている。
【0015】
さらに、この発明のキャスターは、前記ホルダー3の内周端部にそれぞれ連結部9を設け、これら連結部9どうしを前記本体1の内周部において連結したものとしている。
【0016】
また、この発明のキャスターは、前記ホルダー3の内周端部にそれぞれ連結部9を設け、これら連結部9をそれぞれ前記本体1の内周部に止着したものとしている。
【0017】
そして、この発明のキャスターは、前記ドライベアリング5をリング状にしたものとしている。
【0018】
さらに、この発明のキャスターは、前記ドライベアリング5を、切断部5aを設けたリング状にしたものとしている。
【0019】
また、この発明のキャスターは、前記ドライベアリング5を、リング状となる複数の分割体にしたものとしている。
【0020】
さらに、この発明のキャスターでは、前記ドライベアリング5を、半円のリング状にしたものとしている。
【発明の効果】
【0021】
この発明のキャスターは、以上に述べたように構成されているので、機械的安定性が高く、耐久性、耐衝撃性、耐熱性に優れ、メンテナンスフリーであり、衝撃の加わり易い環境下であったり、高温下であっても、その使用に耐えることができ、しかも小型化および軽量化が簡単なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明のキャスターの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示すこの発明のキャスターの一部分解斜視図である。
【図3】図1に示すこの発明のキャスターの中央縦面図である。
【図4】この発明のキャスターの他の実施形態を示す一部分解斜視図である。
【図5】この発明のキャスターのさらに他の実施形態を示す一部分解斜視図である。
【図6】この発明のキャスターのさらに他の実施形態を示す一部分解斜視図である。
【図7】この発明のキャスターのさらに他の実施形態を示す一部分解斜視図である。
【図8】従来のキャスターの一例を示す側面図である。
【図9】図8に示す従来のキャスターの中央断面図である。
【図10】従来のキャスターの他の例を示す斜視図である。
【図11】図10に示す従来のキャスターの一部分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明のキャスターの実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
この発明のキャスターは、双輪のキャスターとしても、単輪のキャスターとしても実施することができるが、双輪のキャスターとして実施するには、図1〜3に示したように、リング状とした本体1の両側端部に、それぞれリング状とした車輪2を、それぞれリング状としたホルダー3で回転自在に取り付けたものとしている。
【0025】
前記本体1は、大径の開口中心部Haを有したものとし、外周部にはボスなどの取付部4を外向きに一体的に突設したものとしており、この取付部4には、ショッピングカートや家具、その他の運搬車などの被取付器具に設けた支持ピン(図示せず)を挿入することにより、これら被取付器具に取り付けるための挿入穴4aを形成したものとしており、さらに両側端部にリング状のフランジ6を設けたものとしている。
【0026】
前記車輪2は、前記本体1の開口中心部Haより大径の開口中心部Hbを有したものとし、内周部の略中央に突設したリング状の仕切り7の内方側をリング状の摺動面2aとし、この仕切り7の外方側をリング状の摺動面2bとしている。そして、この摺動面2aと前記本体1のフランジ6の外周面6aとの間に第一のリング状のドライベアリング5を挟み込んでいる。
【0027】
前記ホルダー3は、前記本体1の開口中心部Haより小径の開口中心部Hcを有したものとし、外側端部にはリング状のフランジ8を設けたものとし、内側端部にはリング状の連結部9を設けたものとしている。そして、前記ホルダー3のフランジ8の外周面8aと前記車輪2の摺動面2bとの間に第二のリング状のドライベアリング5を挟み込み、前記本体1の内周部において、ホルダー3の連結部9どうしを連結したものとするか、またはこれら連結部9を前記本体1の内周部に止着したものとしている。前記連結部9どうしを連結したものとするには、ねじ込み式や嵌合式などとすることができ、前記連結部9を本体1の内周部に止着したものとするには、圧着式や接着式などとすることができる。
【0028】
前記ドライベアリング5は、リング状にしているが、図2に示したような切断部のまったくないものとしても、図4、5に示したように、切断部5aを一個所に設けたものにしても、図6に示したように、リング状となる複数の分割体にしても、図7に示したように、半円のリング状にしてもよい。このようにしたドライベアリング5は、転がりベアリングに比べて非常に嵩の低いものとなる。前記ドライベアリング5を、切断部5aを設けたリング状にしたり、リング状となる複数の分割体にしたり、半円のリング状にした場合には、これらドライベアリング5を位置決めするための突起10を、前記本体1のフランジ6の外周面6aや前記ホルダー3のフランジ8の外周面8aに形成しておけば、ドライベアリング5がその位置から移動することなく、安定した摺動性を維持することができる。なお、前記ドライベアリング5を半円のリング状にした場合には、前記位置決めするための突起10に加えて、車輪2のズレやガタ防止のための突起10’を設けたものとしている。
【0029】
そして、前記ドライベアリング5は、金属系、プラスチック系、これらの複層系などがあり、金属系では焼結品、鋳造品があり、プラスチック系では熱可塑性樹脂品、熱硬化性樹脂品があるが、何れを用いてもよい。複層系の具体例をあげると、例えば、強度に優れた金属板に金属粉末を焼結して多孔質金属層とし、この多孔質金属層に摺動材を含浸させた複層材を、摺動材が外側になるようにしたものを用いることができる。前記金属板としては鉄板やアルミ板が用いられ、金属粉末としては銅合金やアルミ合金が用いられ、摺動材としてはポリテトラフルオロエチレン樹脂のような高分子樹脂に耐高速特性、耐高荷重特性を有する鉛粉末や二硫化モリブデン等の固体潤滑材を混合したものが用いられる。
【0030】
したがって、前記ドライベアリング5は、それ自体に優れた潤滑特性を有しているため、注油の必要がまったくなく無注油で使用でき、プラスチック系であってもこの発明のキャスターへの使用においては、耐久性、耐衝撃性、耐熱性に十分に優れたものとなる。しかも、この発明のキャスターでは、前記ドライベアリング5を二個、用いたものとしているので、耐久性、耐衝撃性、耐熱性により優れたものとなる。
【0031】
なお、この発明のキャスターを単輪のキャスターとして実施するには、図示していないが、リング状とした本体1の片側端部に、リング状とした車輪2を、リング状としたホルダー3で回転自在に取り付けたものとすればよい。
【0032】
すなわち、この発明のキャスターは、前記本体1の片側端部にリング状のフランジ6を設けたものとし、前記車輪2の内周部の内方側の摺動面2aと前記本体1のフランジ6の外周面6aとの間に第一のリング状のドライベアリング5を挟み込んだものとし、前記ホルダー3の外側端部に設けたリング状のフランジ8の外周面8aと前記車輪2の摺動面2bとの間に第二のリング状のドライベアリング5を挟み込んだものとしている。そして、前記ホルダー3の内周端部に設けた連結部9を前記本体1の内周部に止着したものとして、前記本体1の片側端部に、前記車輪2を、前記ホルダー3で回転自在に取り付けたものとすればよい。
【0033】
したがって、以上のように構成されたこの発明のキャスターは、機械的安定性が高く、耐久性、耐衝撃性、耐熱性に優れ、メンテナンスフリーであり、衝撃の加わり易い環境下であったり、高温下であっても、その使用に耐えることができ、しかも小型化および軽量化が簡単なものとなる。
【符号の説明】
【0034】
1 本体
2 車輪
2a 摺動面
2b 摺動面
3 ホルダー
5 ドライベアリング
6 フランジ
6a 外周面
8 フランジ
8a 外周面
9 連結部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング状とした本体(1)の両側端部に、それぞれリング状とした車輪(2)を、それぞれリング状としたホルダー(3)で回転自在に取り付けたキャスターであって、前記本体(1)の両側端部に設けたリング状のフランジ(6)の外周面(6a)と、前記車輪(2)の内周部の内方側の第一の摺動面(2a)との間にそれぞれ第一のドライベアリング(5)を挟み込んだものとし、前記ホルダー(3)の外側端部に設けたリング状のフランジ(8)の外周面(8a)と、前記車輪(2)の内周部の外方側の第二の摺動面(2b)との間にそれぞれ第二のドライベアリング(5)を挟み込んだものとしことを特徴するキャスター。
【請求項2】
前記ホルダー(3)の内周端部にそれぞれ連結部(9)を設け、これら連結部(9)どうしを前記本体(1)の内周部において連結したことを特徴する請求項1記載のキャスター。
【請求項3】
前記ホルダー(3)の内周端部にそれぞれ連結部(9)を設け、これら連結部(9)をそれぞれ前記本体(1)の内周部に止着したことを特徴する請求項1記載のキャスター。
【請求項4】
前記ドライベアリング(5)をリング状にしたことを特徴する請求項1〜3の何れかに記載のキャスター。
【請求項5】
前記ドライベアリング(5)を、切断部(5a)を設けたリング状にしたことを特徴する請求項1〜3の何れかに記載のキャスター。
【請求項6】
前記ドライベアリング(5)を、リング状となる複数の分割体にしたことを特徴する請求項1〜3の何れかに記載のキャスター。
【請求項7】
前記ドライベアリング(5)を、半円のリング状にしたことを特徴する請求項1〜3の何れかに記載のキャスター。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−251653(P2011−251653A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128080(P2010−128080)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000111731)ハンマーキャスター株式会社 (17)