説明

キャストオンストラップ鋳造装置

【課題】キャビティで鋳造されるストラップの質量ばらつきを少なくし、その品質を向上できるキャストオンストラップ鋳造装置を提供する。
【解決手段】キャビティ62(62A、62B)に溶融金属を送り込む共通の湯供給路として機能する湯溜まり溝73と、キャビティ62に溶融金属が溜まると、キャビティ62内に送り込まれる余剰の溶融金属を排出する湯排出路84とを備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャストオンストラップ鋳造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池は、所定枚数の正極板をセパレータを介して所定枚数の負極板と積層してなる極板群の同極性の耳部同士を接続するストラップを備えており、このストラップの鋳造方式としてキャストオンストラップ方式が知られている(例えば、特許文献1参照)。
キャストオンストラップ方式を適用した鋳造装置(キャストオンストラップ鋳造装置)は、少なくとも一つのストラップ鋳造用のキャビティを備え、各々のキャビティに溶融金属を注入し、各キャビティ内の溶融金属に極板群の耳部を倒立させて挿入し、各キャビティ内で溶融金属を凝固させて、極板群の同極性の耳部同士を溶接したストラップを同時に複数製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−164469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のキャストオンストラップ鋳造装置は、溶融金属を導くライザーホールと、ライザーホールからの溶融金属が溜められる湯溜まり溝と、湯溜まり溝と各キャビティとを連通して各キャビティへの湯供給/湯排出を行う湯道部とを備える構成であるため、湯の供給箇所と湯の排出箇所が同一となっている。
溶融金属はキャビティ内へ供給され、供給口から遠い箇所より順次凝固が始まるため、供給箇所と排出箇所とが同一であると、鋳型の温度変動の影響を受けやすくなって鋳造ショット毎の余剰の溶融金属の排出量の変動が大きくなり、ショット毎にキャビティで製造されるストラップ質量にばらつきが生じるおそれがある。
さらに、ストラップに一体に設けられる極柱には、セル間接続用の極柱(セル間接続体とも言う)の場合と、外部端子そのものとして機能する極柱の場合とがある。複数のストラップ鋳造用のキャビティを備えた鋳型では、外部端子用の極柱の場合には、セル間接続用の極柱と比較してその容積が大きく異なるため、キャビティ内に溶融金属が溜まるまでの時間がかかる。このため、キャビティに挿入されている極板群の耳部の溶接状態が外部端子用とセル間接続用とで異なるおそれが生じ、例えば、外部端子用のストラップでは十分な溶接状態になっても、セル間接続用のストラップでは溶接が不十分になるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、キャビティで鋳造されるストラップの質量ばらつきを少なくし、その品質を向上できるキャストオンストラップ鋳造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、ストラップ鋳造用のキャビティに溶融金属を注入し、キャビティ内の溶融金属に極板群の耳部を挿入し、キャビティ内で溶融金属を凝固させて、極板群の同極性の耳部同士を溶接したストラップを鋳造するキャストオンストラップ鋳造装置において、前記キャビティに溶融金属を送り込む湯供給路と、前記キャビティに溶融金属が溜まると、キャビティ内に送り込まれる余剰の溶融金属を排出する湯排出路とを備えたことを特徴とする。この構成によれば、キャビティに溶融金属を送り込む湯供給路と、キャビティに溶融金属が溜まると、キャビティ内に送り込まれる余剰の溶融金属を排出する湯排出路とを備えたので、キャビティ内の溶融金属が鋳型の温度変動の影響を受けにくくなり、鋳造ショット毎の余剰金属の排出量の変動が少なくなり、ショット毎にキャビティで鋳造されるストラップの質量ばらつきを少なくし、その品質を向上することができる。
【0007】
また、本発明は、複数のストラップ鋳造用のキャビティに溶融金属を注入し、各キャビティ内の溶融金属に極板群の耳部を挿入し、各キャビティ内で溶融金属を凝固させて、極板群の同極性の耳部を溶接した複数のストラップを鋳造するキャストオンストラップ鋳造装置において、前記複数のキャビティに溶融金属を送り込む共通の湯供給路と、前記キャビティに溶融金属が溜まると、各キャビティ内に送り込まれる余剰の溶融金属を排出する個別の湯排出路とを備えたことを特徴とする。この構成によれば、複数のキャビティに溶融金属を送り込む共通の湯供給路と、キャビティに溶融金属が溜まると、キャビティ内に送り込まれる余剰の溶融金属を排出する個別の湯排出路とを備えたので、各キャビティ内の溶融金属が鋳型の温度変動の影響を受けにくくなり、鋳造ショット毎の余剰金属の排出量の変動が少なくなり、ショット毎に各キャビティで鋳造されるストラップの質量ばらつきを少なくし、その品質を向上することができる。
【0008】
上記構成において、前記キャビティのストラップ長側面側に、前記湯供給路に連通する湯供給口を設け、前記キャビティにおける前記湯供給口と対向する側に、前記湯排出路を設けるようにしてもよい。この構成によれば、キャビティに流入する余剰の溶融金属を直ちに排出でき、キャビティ内部に溜まる溶融金属の高さ(ストラップ厚み)を容易に一定に揃えることができ、ストラップを薄く軽量な形状にすることができる。
この場合、前記湯供給口が前記キャビティと前記湯供給路との間に堰部を有すると共に、前記湯排出路が前記キャビティと湯排出側との間に堰部を有し、前記湯供給口の堰部と前記湯排出路の堰部とが同じ高さに形成されるようにしてもよい。この構成によれば、キャビティ内部に溜まる溶融金属の高さ(ストラップ厚み)が一定となり、ストラップの薄型化に寄与する。
また、上記構成において、前記キャビティを有するキャビティブロックと、前記湯排出路を有する排出ブロックとの間に断熱材を挟持してもよい。この構成によれば、キャビティブロックと排出ブロックとの温度を各々最適温度へ調整することが容易となり、キャビティブロックの冷却と排出ブロックの加熱とを適切に行うことができる。このため、キャビティの温度を最適な条件に調整することが容易になる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、キャビティで鋳造されるストラップの質量ばらつきを少なくし、その品質を向上できるキャストオンストラップ鋳造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(A)は鉛蓄電池の極板群および一対のストラップ(第1ストラップ)を示す斜視図であり、(B)は極板群および一対のストラップ(第1および第2ストラップ)を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係るキャストオンストラップ鋳造装置を示す斜視図である。
【図3】(A)(B)(C)はキャストオンストラップ鋳造装置の三面図(平面図、側面図、前面図)である。
【図4】図3(A)のIV−IV断面図である。
【図5】図3(A)のV−V断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
図1(A)(B)は鉛蓄電池の極板群およびこれに接続されたストラップを示す斜視図である。図示の極板群10は、袋状セパレータ内に収納された正極板を負極板と交互に多数枚積層したものである。
鉛蓄電池は、隔壁により内部を多数のセル室に区分けされたモノブロック電槽を用い、各セル室に極板群10を収納し、各極板群10の同極性の耳部11A、12A同士をストラップ20で接続した構成を採用している。ここで、耳部11Aは、一方の極板の耳部、例えば、正極板の耳部であり、耳部12Aは、他方の極板の耳部、例えば、負極板の耳部であり、正極板と負極板とは異なる厚さに形成されている。
図1(A)(B)に示すように、このストラップ20には、セル間接続体(中間極柱とも言う)21を有する第1ストラップ20Aと、鉛蓄電池のケース外に露出する外部端子(極柱とも言う)22を有する第2ストラップ20Bとがあり、セル間接続体21よりも外部端子22の方が大型部材となっている。
また、ストラップ20A、20Bを形成する金属には、鉛合金(本実施形態で採用)若しくは純鉛、または半田等を用いることができる。以下の説明において、第1ストラップ20Aおよび第2ストラップ20Bを特に区別して説明する必要がない場合は、ストラップ20と表記する。
【0012】
図2は、本実施形態に係るキャストオンストラップ方式(COS方式)の鋳造装置(以下、COS鋳造装置という)50を示す斜視図であり、図3(A)(B)(C)はCOS鋳造装置50の三面図である。また、図4は図3(A)のIV−IV断面を示しており、図5は図3(A)のV−V断面を示している。
COS鋳造装置50は、複数のストラップ20を形成する略直方体形状の鋳型51を備えている。この鋳型51は、大別すると、左右一対の鋳型キャビティ部(キャビティブロック)61、61と、鋳型キャビティ部61、61の両側に連結される左右一対の湯道部(供給ブロック)71、71と、鋳型キャビティ部61、61間に設けられる排出経路部(排出ブロック)81とを備えている。
【0013】
左右一対の湯道部71、71は、左右一対の鋳型キャビティ部61、61の各々に不図示の溶融炉からの溶融金属(溶融鉛)を送り込む供給ブロックとして機能する。各湯道部71は、左右対称形状を有し、溶融炉からの溶融金属が供給される一本のライザーホール72と、このライザーホール72を介して溶融金属が溜まる一本の湯溜まり溝73とを各々備えている。
ライザーホール72は、湯道部71内部で湯道部71の長手方向に延在し、その長手方向に間隔を空けて形成された複数の湯路74を介して湯溜まり溝73に連通する。このライザーホール72の長手方向一端は閉じられ、他端は溶融金属供給側(溶融炉側)に接続され、溶融炉からの溶融金属を湯溜まり溝73に供給する。なお、湯道部71、71に設けられる貫通孔75、76は、湯道部71加熱用のヒーター(不図示)を各々収容するための孔である。
湯溜まり溝73は、湯道部71の上面に開放して設けられ、湯道部71の長手方向に延在し、隣接する鋳型キャビティ部61に設けられた複数(本実施形態では6個)のストラップ鋳造用のキャビティ62に供給する溶融金属を貯留し、各キャビティ62に溶融金属を送り込む共通の湯供給路として機能する。
【0014】
キャビティ62は、左右の鋳型キャビティ部61に複数設けられている。つまり、キャビティ62は、隣接する湯溜まり溝73の一側に接近して、この溝73の長手方向に沿って間隔を空けて左右で片側6個ずつ設けられている。この左右いずれか一方の鋳型キャビティ部61に設けられるキャビティ62は、正極板連結用のストラップを形成するキャビティとされ、他方の鋳型キャビティ部61に設けられるキャビティ62は、負極板連結用のストラップを形成するキャビティとされている。
また、各キャビティ62は、鋳型キャビティ部61の上面に開放する凹形状を有し、セル間接続体21を有する第1ストラップ20Aを形成する第1キャビティ62A、または、外部端子(極柱とも言う)22を有する第2ストラップ20Bを形成する第2キャビティ62Bのいずれかに該当している。この鋳型51では、極性毎に第1キャビティ62Aを5個ずつ有すると共に、第2キャビティ62Bを1個ずつ備えている。
【0015】
これらキャビティ62と湯溜まり溝73との間には、両者を連通する湯供給口64(図4、図5参照)が各々設けられ、つまり、キャビティ62のストラップ長側面側には、共通の湯供給路である湯溜まり溝73に連通する個別の湯供給口64が設けられている。
湯供給口64は、各キャビティ62と湯溜まり溝73とを連通するように鋳型上面から下方に凹む凹部64Aを有する堰部(以下、湯供給側堰という)64Bを各々有している。ここで、図4および図5中、符号Gは、凹部64Aの深さ(=湯供給側堰64Bの上端位置)を示しており、各湯供給口64の凹部64Aの深さGは同一に形成されている。
【0016】
図4および図5に示すように、各々の湯供給側堰64Bは、湯道部71に一体に設けられ、湯溜まり溝73からキャビティ62に向かって斜め上方に傾斜する傾斜堰に形成されている。
このため、湯溜まり溝73に貯留された溶融金属の液相面が各湯供給側堰64Bの上端より高い位置に上昇すると、上昇した溶融金属が各堰64Bを乗り越えて各キャビティ62に流入する。この場合、湯供給側堰64Bの高さや傾斜角度の調整により、キャビティ62に流入する溶融金属の水位や流量を調整できると共に、上記傾斜により湯溜まり溝73の容積も広く確保できる。ここで、本実施形態では、全ての湯供給側堰64Bの高さが同一の高さに形成され、かつ、ストラップ長側面の幅一杯に形成されている。
なお、左右の鋳型キャビティ部61に設けられる貫通孔65、66は、鋳型キャビティ部61冷却用の冷却液が通る冷却通路である。また、図4および図5中、符号91は、鋳型キャビティ部61と湯道部71との間に介挿される断熱材であり、この断熱材91は、湯供給側堰64Bの下方位置で鋳型キャビティ部61と湯道部71との間を断熱する。
【0017】
排出経路部81は、鋳型キャビティ部61、61間に延在して鋳型キャビティ部61、61からの溶融金属を排出する排出ブロックであり、言い換えれば、本実施形態では、従来では一体に形成されていたキャビティブロックを、鋳型キャビティ部61、61からなるキャビティブロックと排出経路部81からなる排出ブロックとに分割して形成している。なお、図4および図5中、符号92は、これらブロック間(鋳型キャビティ部61と排出経路部81の間)に介挿される断熱材である。
この排出経路部81は、長手方向に延在する単一の湯排出溝82と、この湯排出溝82と各キャビティ62との間に設けられる複数の湯排出路84と、排出経路部81加熱用のヒーターを収容するための貫通孔85とを備えている。ここで、この貫通孔85は縦長(幅狭)の孔に形成され、縦長(幅狭)のヒーターが収容されることで排出経路部81の幅の増大を回避するようにしている。
【0018】
湯排出溝82は、排出経路部81の上面に開放し、図2および図3(A)に示すように、左右の鋳型キャビティ部61、61の各キャビティ62、62の間を長手方向に延在し、その長手方向一端である溶融金属戻し側が溶融炉につながる湯戻し経路95(図3(A)参照)につながり、他端が閉じられている。
また、図2および図3(A)に示すように、湯排出路84は、左右の鋳型キャビティ部61、61の各キャビティ62を個別に湯排出溝82につなげるように湯排出溝82の長手方向に間隔を空けて左右一対ずつで6組設けられている。
【0019】
図4および図5に示すように、湯排出路84は、各キャビティ62を挟んで湯供給口64と対向する位置に設けられ、キャビティ62と湯排出溝82とを連通するように鋳型上面から下方に凹む凹部84Aを有する堰部(以下、湯排出側堰という)84Bを有している。この湯排出側堰84Bは、排出経路部81に一体に設けられ、湯排出溝82からキャビティ62に向かって斜め上方に傾斜する傾斜堰に形成されている。つまり、湯排出側堰84Bは、キャビティ62を挟んで対向する湯供給側堰64Bと左右対称形状に形成されている。
このため、湯供給側堰64Bを超えて各キャビティ62に流入した溶融金属は、各キャビティ62で個別に設けられた湯排出側堰84Bの上端まで溜まると、それ以降キャビティ62に流入する溶融金属、つまり、キャビティ62の適切な湯溜まり面を超えて該キャビティ62に送り込まれる余剰の溶融金属が、湯排出側堰84Bを乗り越えて湯排出溝82に排出される。
【0020】
湯排出側堰84Bの上端は、湯供給側堰64Bの上端と同じ高さに形成されており、つまり、湯排出側堰84Bと湯供給側堰64Bとは面一の高さを有している。このため、キャビティ62に溶融金属が溜まると、湯供給側堰64Bの上端の高さと一致する湯溜まり面を超えてキャビティ内62に送り込まれる溶融金属が湯排出側堰84Bを超えて円滑かつ速やかに湯排出溝82に排出される。
【0021】
このCOS鋳造装置50において、各キャビティ62へ供給された溶融金属は、キャビティ62内へ流入した直後から鋳型キャビティ部61および大気中への熱拡散により凝固が始まる。このキャビティ62への溶融金属の送り込みとほぼ同じタイミングで、図2に示すように、各極板群10の同極性の耳部11A、12Aが各キャビティ62内に上方から倒立状態で挿入されて溶融金属に浸漬される。これにより、耳部11A、12Aへの熱移動により耳部温度が上昇する一方で、溶融金属の温度が急激に低下し、凝固温度に達すると凝固が完了し、各極板群10の耳部11A、12A同士を接続したストラップ20が得られる。
また、湯排出溝82に排出された溶融金属は、排出経路部(排出ブロック)81に設けられたヒーターの熱で凝固温度より高い温度に保たれ、湯戻し経路95へと確実に排出されるようになっている。
【0022】
以上説明したように、本実施形態のCOS鋳造装置50は、複数のキャビティ62に溶融金属を送り込む共通の湯供給路として機能する湯溜まり溝73と、各キャビティ62に溶融金属が溜まると、キャビティ62の湯溜まり面を超えてキャビティ62内に送り込まれる余剰の溶融金属を個別に排出する湯排出路84とを備えた構成を具備するので、従来の溶融金属の供給箇所と排出箇所とが同一のCOS鋳造装置と比較して、キャビティ62内の溶融金属が鋳型51の温度変動の影響を受けにくくなり、鋳造ショット毎の余剰の溶融金属の排出量の変動が少なくなり、ショット毎にキャビティ62で鋳造されるストラップ20の質量ばらつきを少なくし、その品質を向上することができる。
【0023】
また、キャビティ62内の温度のばらつきも低減できるので、極板群10の耳部11A、12A同士の溶接状態を揃えることができる。このため、第1ストラップ20Aに加え、外部端子22(極柱)を有する第2ストラップ20Bのような部分的に容積が大きく異なるストラップを形成する極板群の同極性の耳部同士を接続する場合でも、キャビティ62に挿入されている極板群10の耳部11A、12Aの溶接状態を第1ストラップ20Aと第2ストラップ20Bとで揃えることができ、溶接状態(=接合強度)を均一にすることができる。
しかも、本実施形態では、キャビティ62に対する湯供給口64および湯排出路84の幅(=堰部64B、84Bの幅)をストラップ全長と同等まで拡げている(図2、図3(A)参照)。このため、キャビティ62内の溶融金属の温度のばらつきをより低減でき、各耳部11A、12Aの溶融金属への溶け込み具合が端部と中央部でばらつく事態を減らして、溶接状態(=接合強度)を揃えることができる。
【0024】
また、本実施形態では、キャビティ62のストラップ長側面側に、共通の湯供給路(湯溜まり溝73)に連通する湯供給口64を各々設け、キャビティ62における湯供給口64と対向する側に、湯排出路84を各々設けたので、キャビティ62に流入する余剰の溶融金属を直ちに排出できる。このため、キャビティ62内部に溜まる溶融金属の高さ(ストラップ厚み)を容易に一定に揃えることができ、ストラップ20を薄く軽量な形状にすることができる。
この場合、湯供給口64がキャビティ62と湯供給路(湯溜まり溝73)との間に有する湯供給側堰(堰部)64Bと、湯排出路84がキャビティ62と湯排出側(湯排出溝82)との間に有する湯排出側堰(堰部)84Bとが同じ高さに形成されているので、キャビティ62内部に溜まる溶融金属の高さ(ストラップ厚み)が一定となり、ストラップ20の薄型化に寄与する。これらによって、各キャビティ62で製造されるストラップ20の品質を向上することができる。
【0025】
また、本実施形態では、キャビティ62を有する鋳型キャビティ部(キャビティブロック)61、61と、湯排出路84を形成する排出経路部(排出ブロック)81との間に断熱材92、92を挟持するので、鋳型キャビティ部61と排出経路部(排出ブロック)81との温度を各々最適温度へ調整することが容易となり、鋳型キャビティ部61の冷却と排出経路部(排出ブロック)81の加熱とを適切に行うことができる。このため、キャビティ62の温度を最適な条件に調整することが容易になる。
また、鋳型キャビティ部(キャビティブロック)61、61と、湯道部(供給ブロック)71、71との間にも断熱材91、91を挟持することによっても、各ブロックの温度を適切に調整できる。この場合、キャビティ62の温度を最適な条件に調整しやすくなると共に、キャビティ62へ供給する溶融金属の温度についても最適な条件へ調整しやすくなる。
【0026】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。例えば、上述の実施形態では、中央に、湯排出路84を有する排出経路部81を形成し、その両側に、湯供給路となる湯溜まり溝73を有する湯道部71、71を形成する場合を説明したが、これに代えて、中央に、湯溜まり溝73を有する湯道部71を形成し、その両側に、湯排出路84を有する排出経路部81を形成してもよい。また、上述の実施形態では、複数のストラップ鋳造用キャビティ62を有するCOS鋳造装置50に本発明を適用する場合を説明したが、これに限らず、一つのストラップ鋳造用キャビティを有するCOS鋳造装置に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0027】
20、20A、20B ストラップ
21 セル間接続体(中間極柱)
22 外部端子(極柱)
50 キャストオンストラップ鋳造装置(COS鋳造装置)
61 鋳型キャビティ部(キャビティブロック)
62、62A、62B キャビティ(ストラップ鋳造用キャビティ)
64 湯供給口
64B 湯供給側堰(堰部)
71 湯道部(供給ブロック)
72 ライザーホール
73 湯溜まり溝(湯供給路)
81 排出経路部(排出ブロック)
82 湯排出溝
84 湯排出路
84B 湯排出側堰(堰部)
91、92 断熱材
95 湯戻し経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストラップ鋳造用のキャビティに溶融金属を注入し、キャビティ内の溶融金属に極板群の耳部を挿入し、キャビティ内で溶融金属を凝固させて、極板群の同極性の耳部を溶接したストラップを鋳造するキャストオンストラップ鋳造装置において、
前記キャビティに溶融金属を送り込む湯供給路と、
前記キャビティに溶融金属が溜まると、キャビティ内に送り込まれる余剰の溶融金属を排出する湯排出路と
を備えたことを特徴とするキャストオンストラップ鋳造装置。
【請求項2】
複数のストラップ鋳造用のキャビティに溶融金属を注入し、各キャビティ内の溶融金属に極板群の耳部を挿入し、各キャビティ内で溶融金属を凝固させて、極板群の同極性の耳部を溶接した複数のストラップを鋳造するキャストオンストラップ鋳造装置において、
前記複数のキャビティに溶融金属を送り込む共通の湯供給路と、
前記キャビティに溶融金属が溜まると、キャビティ内に送り込まれる余剰の溶融金属を排出する個別の湯排出路と
を備えたことを特徴とするキャストオンストラップ鋳造装置。
【請求項3】
前記キャビティのストラップ長側面側に、前記湯供給路に連通する湯供給口を設け、前記キャビティにおける前記湯供給口と対向する側に、前記湯排出路を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のキャストオンストラップ鋳造装置。
【請求項4】
前記湯供給口が前記キャビティと前記湯供給路との間に堰部を有すると共に、前記湯排出路が前記キャビティと湯排出側との間に堰部を有し、前記湯供給口の堰部と前記湯排出路の堰部とが同じ高さに形成されていることを特徴とする請求項3に記載のキャストオンストラップ鋳造装置。
【請求項5】
前記キャビティを有するキャビティブロックと、前記湯排出路を有する排出ブロックとの間に断熱材を挟持したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のキャストオンストラップ鋳造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−31262(P2011−31262A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178186(P2009−178186)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000005382)古河電池株式会社 (314)