説明

キャンドモータ及びキャンドモータポンプ

【課題】低コストかつ簡便に製造及び分解・組立てを行うことができるようにする。
【解決手段】ステータコア18に導体20を巻回した電機子22を、モータフレーム10の内部のステータキャン24で区画されたステータ室52内に収納したステータ12と、ステータキャン24の内周側に回転可能に配置されて外部へ動力を出力する回転軸14を備えたロータ16とを有し、ステータキャン24の反負荷側端部には反負荷側ステータキャン端板32が固定され、該反負荷側ステータキャン端板32と該端板に対向する固定側部材10bとの間には、密閉部材50cが配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータの外周をステンレス鋼製等の薄いステータキャンで被ってロータを隔離するようにしたキャンドモータ、特にステータの構造をより簡便にすることで大幅なコストダウンを図ったキャンドモータ及び該キャンドモータとポンプとを一体化したキャンドモータポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
キャンドモータは、ロータに備えられた回転軸をメカニカルシール等の軸シールでシールすることなく、ロータを収納したロータ室をステータキャンにより隔離して運転することができ、軸シールからの取扱流体の漏洩の心配が無く安全でかつ長寿命であるという特徴を有する。
【0003】
キャンドモータは、ポンプと一体化したキャンドモータポンプとして一般に使用される。キャンドモータポンプの吐出圧力が非常に高い場合に、ステータキャンは高い内圧を受ける。このため、ステータキャンが薄肉であると、ステータキャンは、円周方向及び軸方向に容易に変形してしまう。そして、ステータキャンが変形すると、例えばステータキャンを固定している軸受ブラケットや、該軸受ブラケットに固定された軸受が傾き、異常磨耗をきたす等の不具合が生じ易くなる。
【0004】
一方、ステータキャンが内圧を受けても変形しにくくなるよう、ステータキャンを厚肉にすると、ステータキャンを通過する回転磁界により発生する渦電流損が大きくなってモータ効率を低下させてしまう。更に、ステータキャンを厚肉にすると、渦電流損でステータキャンが発熱し、この結果、ステータキャンが熱膨張(変形)してしまう。
【0005】
これらの問題を解決する手段として、電機子のステータコアによる支持が受けられないステータキャンの外周面の電機子非固着部分に、厚肉円筒状の補強管を配置して、ステータキャンの変形を防止することが知られている(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−231620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ステータキャンが受ける内圧を補強管で支持してステータキャンを補強するようにした従来例にあっては、補強管を所定の位置に配置しながらキャンドモータを組立てるのに非常に手間を要し、しかもキャンドモータを一旦組立てると、特にステータの分解が困難となるという問題があった。つまり、例えば、補強管を予め取付けたモータフレーム(側板)とステータ内に挿入したステータキャンとを後工程で溶接するようにすると、(1)溶接に非常に手間を要し、しかも溶接後にステータを分解し組立てることが困難となる、(2)溶接時に部材が熱変形するため溶接後に接合部分を加工する必要がある、また、特に特許文献1に記載のような構成を採用すると、(3)モータフレームも接液する、つまり、取扱流体が接する構造となりモータフレームの耐食性が必要となる、等の課題がある。
【0008】
本発明は、上記従来の課題に鑑みて為されたもので、低コストかつ簡便に製造及び分解・組立てを行うことができるようにしたキャンドモータ及び該キャンドモータとポンプとを一体化したキャンドモータポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、ステータコアに導体を巻回した電機子を、モータフレームの内部のステータキャンで区画されたステータ室内に収納したステータと、前記ステータキャンの内周側に回転可能に配置されて外部へ動力を出力する回転軸を備えたロータとを有するキャンドモータにおいて、前記ステータキャンの反負荷側端部には反負荷側ステータキャン端板が固定され、該反負荷側ステータキャン端板と該端板に対向する固定側部材との間には、密閉部材が配置されていることを特徴とするキャンドモータである。
【0010】
これにより、ステータキャンの反負荷側端部に反負荷側ステータキャン端板を固定し、この反負荷側ステータキャン端板を固定したステータキャンをモータフレーム内に組込んだ電機子の内部に配置することで、電機子及びステータキャンを有するステータの組立てや分解を容易かつ迅速に行うことができる。しかも反負荷側ステータキャン端板と該端板に対向する固定側部材との間に密閉部材を配置することで、反負荷側ステータキャン端板と固定側部材との間の溶接作業やステータキャンの拡径作業等を不要となすことができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記反負荷側ステータキャン端板の前記回転軸の軸方向に沿った外方には、該反負荷側ステータキャン端板の前記回転軸の軸方向に沿った移動を許容する隙間が形成されていることを特徴とする請求項1記載のキャンドモータである。
これにより、たとえステータキャンがステータキャンに加わる応力や発熱により伸縮し、このステータキャンの伸縮に伴って、反負荷側ステータキャン端板が回転軸の軸方向に移動しても、この反負荷側ステータキャン端板の移動を隙間内で吸収し許容することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記固定側部材は、前記モータフレームと別体で構成され、前記回転軸の反出力側に配置されて該回転軸を回転可能に支持する反負荷側軸受を固定する反負荷側軸受ブラケットからなることを特徴とする請求項1または2記載のキャンドモータである。
これにより、ステータキャンの変形の影響を受けないように反負荷側軸受ブラケットをステータキャンと分離させ、モータフレームに独立して固定することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記ステータキャンの外周面の電機子非固着部分には、補強管が配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のキャンドモータである。
これにより、ステータキャンの肉厚を極力薄して、渦電流損を低減した高効率なキャンドモータとするとともに、ステータキャンの外周面の電機子非固着部分を該部分に溶接することなく装着して配置した補強管で補強することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、前記補強管の内、前記電機子を挟んで反負荷側に配置される補強管は、固定側部材に端部を嵌入させて固定されていることを特徴とする請求項4記載のキャンドモータである。
これにより、固定側部材に端部を嵌入させて電機子を挟んで反負荷側に配置される補強管を固定することで、キャンドモータの組立てをより容易かつ迅速に行うことができる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、前記ステータキャンの負荷側端部には負荷側ステータキャン端板が固定され、前記モータフレームと別体で構成され前記回転軸の出力側に配置されて該回転軸を回転可能に支持する負荷側軸受を固定する負荷側軸受ブラケットと前記負荷側ステータキャン端板との間には、密封部材が配置されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のキャンドモータである。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載のキャンドモータと、前記キャンドモータの前記回転軸の出力側端部に装着される羽根車と、内部に前記羽根車を収納して前記モータフレームに固定されるポンプケーシングを有することを特徴とするキャンドモータポンプである。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項6記載のキャンドモータと、前記キャンドモータの前記回転軸の出力側端部に装着される羽根車と、内部に前記羽根車を収納して前記モータフレームに固定されるポンプケーシングを有し、前記負荷側ステータキャン端板及び前記負荷側軸受ブラケットは、前記モータフレームと前記ポンプケーシングとの間に挟持して固定されることを特徴とするキャンドモータポンプである。
【0018】
これにより、モータフレームは、キャンドモータポンプの取扱流体と接液することなく、安価な非耐食性材料(鋳鉄等)で構成できるようになり、安価で信頼性が高く、また高効率でリサイクル性も高いモータフレームとなる。しかも、キャンドモータポンプを容易且つ簡便に組立て可能と成して、キャンドモータポンプのコストダウンを図ることができる。
【0019】
請求項9に記載の発明は、ステータコアに導体を巻回した電機子を、モータフレームの内部のステータキャンで区画されたステータ室内に収納したステータと、前記ステータキャンの内周側に回転可能に配置されて外部へ動力を出力する回転軸を備えたロータとを有するキャンドモータにおいて、前記ステータキャンの軸方向に沿った一方の端部には円筒状の第1端板が、他方の端部には円板状の第2端板がそれぞれ固定され、前記円筒状の第1端板の内周面と該第1端板の内周面に対向する前記モータフレームまたは該モータフレームに固定された部材との間には、密閉部材が配置されていることを特徴とするキャンドモータである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電機子及びステータキャンを有するステータの組立てや分解を容易かつ迅速に行い、しかも、反負荷側ステータキャン端板と該端板に対向する固定側部材との間の溶接作業やステータキャンの拡径作業等を不要となすことができ、これによって、低コストかつ簡便にキャンドモータの製造及び分解・組立てを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態のキャンドモータの概略を上半分のみ示す断面図である。
【図2】図1に示すキャンドモータにおけるステータ構造の組立て前の概要を上半分のみ示す断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態のキャンドモータの概要を上半分のみ示す断面図である。
【図4】本発明の更に他の実施形態のキャンドモータの概要を上半分のみ示す断面図である。
【図5】図4に示すキャンドモータにおけるステータ構造の組立て前の概要を上半分のみ示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態のキャンドモータとポンプとを一体化したキャンドモータポンプの概略をほぼ上半分のみ示す断面図である。
【図7】本発明の更に他の実施形態のキャンドモータの概要を上半分のみ示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同一または相当する部材には同一符号を付して重複した説明を省略する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態のキャンドモータの概要を示す断面図である。このキャンドモータは、モータフレーム10の内周面に焼嵌め等で固定したステータ12と、外部に動力を出力する回転軸14を内部に嵌着したロータ16とを備えている。ステータ12は、内周が略円筒状の空間を有する磁性板材を積層したステータコア18に導体(巻線)20を巻回した電機子22と、この電機子22の内周面に固着した、例えばステンレス鋼等からなる略円筒状のステータキャン24を有している。ロータ16は、内部に永久磁石26を埋設したロータコア28と、このロータコア28の外周面に固着した、例えばステンレス鋼からなる略円筒状のロータキャン30を有している。
【0024】
なお、この例では、ロータに永久磁石を有するIPM(Internal Permanent Magnet)モータに適用した例を示しているが、誘導電動機やSPM(Surface Permanent Magnet)モータにも適用できることは勿論である。
【0025】
ステータキャン24の反負荷側(図1の左側)の端部には、略円筒状の反負荷側ステータキャン端板32が、該反負荷側ステータキャン端板32の端面にステータキャン24の端面を当接させ、両者の当接部を外周面側から溶接することによって固着されている。ステータキャン24の負荷側(図1の右側)には、円板状の板材の中心に貫通穴を設けた負荷側ステータキャン端板34が、該負荷側ステータキャン端板34の貫通穴の内部にステータキャン24の端部を嵌入し、両者の当接部を端面側から溶接することによって固着されている。ここで、反負荷側ステータキャン端板32の外径は、ステータキャン24の外径と等しいかより小さい。
【0026】
なお、例えば反負荷側ステータキャン端板32の一部をステータキャン24の内部に嵌入させ、ステータキャン24の端面と反負荷側ステータキャン端板32のステータキャン24からの露出端部との間を外周側から溶接して、ステータキャン24の反負荷側の端部に略円筒状の反負荷側ステータキャン端板32を固着するようにしてもよい。
【0027】
モータフレーム10は、反負荷側端部を塞板部10aで閉塞し負荷側端部を開放する有底円筒状に形成されており、塞板部10aには、回転軸14の軸方向に沿って内方に円筒状に突出する軸受支持部10bが設けられている。そして、この軸受支持部10bに、回転軸14の反出力側(図1の左側)に配置されて該回転軸14を回転自在に支持する反負荷側軸受36が固定され、更に反負荷側軸受36とロータ16との間に反負荷側スラストディスク38が回転軸14に固定されて配置されている。
【0028】
一方、モータフレーム10の負荷側端部には、負荷側軸受ブラケット40がボルト46を介して固定され、この負荷側軸受ブラケット40に、回転軸14の出力側(図1の右側)に配置されて該回転軸14を回転自在に支持する負荷側軸受42が固定されている。更に負荷側軸受42とロータ16との間に負荷側スラストディスク44が回転軸14に固定されて配置されている。
【0029】
モータフレーム10と負荷側軸受ブラケット40との間には空間が形成され、この空間内に負荷側ステータキャン端板34の外周部を挟み込みボルト46を締め付けることで、負荷側ステータキャン端板34がその外周部をモータフレーム10と負荷側軸受ブラケット40とで挟持されて固定されるように構成されている。そして、モータフレーム10と負荷側ステータキャン端板34との間に、モータフレーム10と負荷側ステータキャン端板34との間を密閉する、例えばゴム製のOリングからなる密閉部材50aが介装され、負荷側軸受ブラケット40と負荷側ステータキャン端板34との間に、負荷側軸受ブラケット40と負荷側ステータキャン端板34との間を密閉する、例えばゴム製のOリングからなる密閉部材50bが介装されている。
【0030】
ステータキャン24は、前述のようにして、負荷側ステータキャン端板34を固定した時に、反負荷側ステータキャン端板32がモータフレーム10の軸受支持部10bに達する長さに設定されている。そして、軸受支持部10bの該反負荷側ステータキャン端板32の内周面に対向する位置には凹状部10cが設けられ、この凹状部10cの内部に、反負荷側ステータキャン端板32に圧接して軸受支持部10bと反負荷側ステータキャン端板32との間を密封する、例えばゴム製のOリングからなる密閉部材50cが配置されている。
【0031】
なお、この例では、モータフレーム10の軸受支持部10b側に密閉部材50cを設けているが、反負荷側ステータキャン端板32側に密閉部材50cを設けるようにしてもよい。このことは、以下の例においても同様である。
【0032】
上記の構成により、反負荷側ステータキャン端板32及び負荷側ステータキャン端板34を有するステータキャン24とモータフレーム10との間に気密なステータ室52が形成され、ステータ12の電機子22は、このステータ室52内に配置されて外部から隔離される。
【0033】
モータフレーム10の塞板部10aと反負荷側ステータキャン端板32の端面との間には、反負荷側ステータキャン端板32の回転軸14の軸方向に沿った移動を許容する隙間Sが形成されている。これにより、たとえステータキャン24が発熱等により伸縮し、このステータキャン24の伸縮に伴って、反負荷側ステータキャン端板32が回転軸14の軸方向に移動しても、この反負荷側ステータキャン端板32の移動を隙間S内で吸収し許容することができる。
【0034】
この例のキャンドモータにあっては、図2に示すように、先ずモータフレーム10の所定位置に電機子22を焼嵌め等により固定する。一方、ステータキャン24にあっては、この反負荷側端部に反負荷側ステータキャン端板32を、負荷側端部に負荷側ステータキャン端板34をそれぞれ固着しておく。そして、反負荷側ステータキャン端板32及び負荷側ステータキャン端板34をそれぞれ固着したステータキャン24を、電機子22の内周面に向け反負荷側ステータキャン端板32を挿入端として挿入し、反負荷側ステータキャン端板32を軸受支持部10bの凹状部10cの内部に配置した密閉部材50cを圧接させる。これによって、反負荷側ステータキャン端板32と軸受支持部10bとの間を密閉部材50cで密閉する。次に、ロータ16を挿入した後、負荷側軸受ブラケット40をモータフレーム10にボルト46を締め付けて固定し、このボルト46の締め付けに伴って、負荷側ステータキャン端板34をその外周部をモータフレーム10と負荷側軸受ブラケット40との間に挟持して固定する。これによって、ステータの組み込み作業が完了する。
【0035】
この例によれば、電機子22及びステータキャン24を有するステータ12の組立てや分解を容易かつ迅速に行い、しかも、反負荷側ステータキャン端板32と軸受支持部10bとの間の溶接作業やステータキャン24の拡径作業等を不要となすことができる。これによって、低コストかつ簡便にキャンドモータの製造及び分解・組立てを行うことができる。
【0036】
図3は、本発明の他の実施形態のキャンドモータポンプを示す。この例の図1に示すキャンドモータと異なる点は、以下の通りである。すなわち、モータフレーム10として、略円筒状のものを使用し、モータフレーム10の反負荷側端部に反負荷側軸受ブラケット60をボルト62を締め付けて固定するよう構成し、この反負荷側軸受ブラケット60の軸受支持部60aで反負荷側軸受36を固定するようにしている。軸受支持部60aの外周面には凹状部60bが設けられ、この凹状部60b内に、反負荷側ステータキャン端板32に圧接して軸受支持部60aと反負荷側ステータキャン端板32との間を密封する、例えばゴム製のOリングからなる密閉部材50cが配置されている。
【0037】
また、クランプリング64が備えられ、このクランプリング64をモータフレーム10にボルト66を締め付けて固定することで、負荷側ステータキャン端板34の外周部及び負荷側軸受ブラケット40の外周部をモータフレーム10とクランブリング64で挟持して、負荷側ステータキャン端板34及び負荷側軸受ブラケット40を固定するようにしている。
【0038】
更に、ステータキャン24の外周面の電機子22が固着されていない非固着部分、すなわち、電機子22のステータコア18と負荷側ステータキャン端板34との間、及び電機子22のステータコア18と反負荷側ステータキャン端板32の先端との間には、厚肉円筒状の負荷側補強管68a及び反負荷側補強管68bがそれぞれ配置されている。これによって、ステータキャン24の電機子非固着部分は、補強管68a,68bによって補強されている。
【0039】
この例によれば、反負荷側軸受ブラケット60を取付けることなく、モータフレーム10の反負荷側端部を開放させた状態で、反負荷側ステータキャン端板32、負荷側ステータキャン端板34及び負荷側補強管68aを予め取付けたステータキャン24を所定の位置に配置した後、ステータキャン24に反負荷側補強管68bを嵌着等で取付ける。しかる後、反負荷側軸受ブラケット60を取付けることで、補強管68a,68bを所定の位置に配置する。これにより、ステータキャン24の外周面の電機子非固着部分を該部分に溶接することなく装着して配置した補強管68a,68bで補強することができる。
【0040】
このように、反負荷側軸受ブラケット60をモータフレーム10と別体で構成することで、ステータキャン24の変形の影響を受けないように反負荷側軸受ブラケット60をステータキャン24と分離させ、モータフレーム10に独立して固定することができる。しかも、ステータキャン24の外周面の電機子非固着部分に補強管68a,68bを配置することで、ステータキャン24の肉厚を極力薄して、渦電流損を低減した高効率なキャンドモータとすることができる。
【0041】
図4は、本発明の更に他の実施形態のキャンドモータを示す。この例の図3に示す例と異なる点は、反負荷側補強管68bの端部をモータフレーム10に嵌入させて反負荷側補強管68bをモータフレーム10に固定するようにしている点にある。そして、反負荷側軸受ブラケット60の外周面とモータフレーム10と該反負荷側軸受ブラケット60を挿入させる開口部の内周面との間に、反負荷側ステータキャン端板32の回転軸14の軸方向に沿った移動を許容する隙間Sが形成されている。
【0042】
この例によれば、図5に示すように、先ずモータフレーム10に端部を嵌入させて該モータフレーム10に反負荷側補強管68bを固定し、更にモータフレーム10の所定位置に電機子22を焼嵌め等により固定にする。一方、ステータキャン24にあっては、この反負荷側端部に反負荷側ステータキャン端板32を、負荷側端部に負荷側ステータキャン端板34をそれぞれ固着し、更にステータキャン24の外周面に負荷側補強管68aを取付けておく。そして、この反負荷側ステータキャン端板32、負荷側ステータキャン端板34及び負荷側補強管68aを有するステータキャン24を、電機子22の内周面に向け反負荷側ステータキャン端板32を挿入端としてモータフレーム10の負荷側端部から挿入し、反負荷側軸受36を取付けた反負荷側軸受ブラケット60をモータフレーム10の内部に反負荷側端部から挿入する。これによって、反負荷側ステータキャン端板32を軸受支持部60aの凹状部60bの内部に配置した密閉部材50cを圧接させ、反負荷側ステータキャン端板32と軸受支持部60aとの間を密閉部材50cで密閉する。次に、ロータ16を挿入した後、負荷側軸受ブラケット40を所定の位置に配置し、クランプリング64をモータフレーム10にボルト66を締め付けて固定し、このボルト66の締め付けに伴って、負荷側ステータキャン端板34及び負荷側軸受ブラケット40をそれらの外周部をモータフレーム10とクランプリング64との間に挟持して固定する。これによって、ステータの組み込み作業が完了する。
【0043】
このように、モータフレーム10に端部を嵌入させて反負荷側補強管68bを該モータフレーム10に予め固定することで、キャンドモータの組立てをより容易かつ迅速に行うことができる。
【0044】
図6は図5に示すキャンドモータとほぼ同様な構成のキャンドモータとポンプを一体にした、本発明の実施形態のキャンドモータポンプを示す。すなわち、このキャンドモータポンプは、回転軸14として、軸方向に沿って延びる中心穴14aを有する円筒管が使用されている。そして、回転軸14の出力端には羽根車70が固定され、この羽根車70の周囲は、吸入口72aと吐出し口(図示せず)を有するポンプケーシング72で包囲されている。ポンプケーシング72の背面に負荷側軸受ブラケット40が位置している。
【0045】
ポンプケーシング72は、ボルト74を介してモータフレーム10に固定され、このポンプケーシング72のモータフレーム10への固定に伴って、負荷側ステータキャン端板34及び負荷側軸受ブラケット40がそれらの外周部をポンプケーシング72とモータフレーム10との間に挟持されて固定されるように構成されている。そして、負荷側軸受ブラケット40とポンプケーシング72との間に、負荷側軸受ブラケット40とポンプケーシング72との間を密閉する、例えばゴム製のOリングからなる密閉部材50dが介装されている。
【0046】
負荷側軸受ブラケット40には、ポンプケーシング72内の取扱流体をステータキャン24の内部に導く液通路40aが設けられ、反負荷側軸受ブラケット60の軸受支持部60aには、ステータキャン24の内部に流入した取扱流体を該反負荷側軸受ブラケット60と回転軸14の端部との間に区画された空間に導く切欠きからなる液通路60cが設けられている。
【0047】
このキャンドモータポンプによれば、キャンドモータの駆動に伴って、羽根車70が回転軸14と一体に回転し、この回転軸14の回転に伴って、取扱流体が吸込口72aからポンプケーシング72の内部に吸込まれ、昇圧されてポンプケーシング72の吐出し口から外部に吐出される。ポンプケーシング72の内部に流入した取扱流体の一部は、負荷側軸受ブラケット40の液通路40a、及び負荷側軸受42と回転軸14との間を通って、ステータキャン24の内部に流入し、ステータキャン24とロータ16との間の隙間を通った後、負荷側軸受ブラケット60の液通路60c、及び反負荷側軸受36と回転軸14との間を通って、反負荷側軸受ブラケット60と回転軸14の端部との間に区画された空間に流入する。そして、回転軸14の中心穴14aを通って、羽根車70の内部に戻される。
【0048】
このキャンドモータポンプによれば、モータフレーム10は、キャンドモータポンプの取扱流体と接液することなく、安価な非耐食性材料(鋳鉄等)で構成できるようになり、安価で信頼性が高く、また高効率でリサイクル性も高いモータフレームとなる。しかも、特に負荷側ステータキャン端板34と負荷側軸受ブラケット40をそれらの外周部をポンプケーシング72とモータフレーム10との間に挟持して固定することにより、キャンドモータポンプを容易且つ簡便に組立て可能と成して、キャンドモータポンプのコストダウンを図ることができる。
【0049】
図7は、本発明の他の実施形態のキャンドモータを示す。この例の図4に示すキャンドモータと異なる点は、以下の通りである。すなわち、図7に示すキャンドモータは、図4に示すような構造のキャンドモータの負荷側と反負荷側とを入れ替えた構造となっており、回転軸14の出力側(図7の左側)に、回転軸14を回転自在に支承する負荷側軸受42を固定する負荷側軸受ブラケット40が、回転軸14の反出力側(図7の右側)に、回転軸14を回転自在に支承する反負荷側軸受36を固定する反負荷側軸受ブラケット60がそれぞれ配置されている。そして、負荷側軸受ブラケット40の内部を回転軸14が貫通して外部に延び、反負荷側軸受ブラケット60の側方は、図4に示すクランプリング64とほぼ同様にして取付けられる、略円板状の塞板80で閉塞されている。
【0050】
更に、ステータキャン24の負荷側(図7の左側)端部に、略円筒状の負荷側ステータキャン端板34が、反負荷側(図7の右側)には、円板状の板材の中心に貫通穴を設けた反負荷側ステータキャン端板32がそれぞれ固着されている。そして、円筒状の負荷側ステータキャン端板34の内周面と負荷側軸受ブラケット40の軸受支持部との間に、負荷側ステータキャン端板34に圧接して負荷側軸受ブラケット40の軸受支持部と負荷側ステータキャン端板34との間を密封する、例えばゴム製のOリングからなる密閉部材50cが配置されている。
【0051】
このように、キャンドモータの負荷側と反負荷側とを入れ替えた構造を採用しても、キャンドモータを容易且つ簡便に組立て可能として、キャンドモータのコストダウンを図ることができる。なお、図1または図3に示すキャンドモータにあっても、前述とほぼ同様にして、キャンドモータの負荷側と反負荷側とを入れ替えた構造を採用してもよいことは勿論である。
【0052】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0053】
10 モータフレーム
10b 軸受支持部
12 ステータ
14 回転軸
16 ロータ
22 電機子
24 ステータキャン
26 永久磁石
30 ロータキャン
32 反負荷側ステータキャン端板
34 負荷側ステータキャン端板
36 反負荷側軸受
38 反負荷側スラストディスク
40 負荷側軸受ブラケット
42 負荷側軸受
44 負荷側スラストディスク
50a,50b,50c,50d 密閉部材(Oリング)
52 ステータ室
60 反負荷側軸受ブラケット
60a 軸受支持部
64 クランプリング
68a,68b 補強管
70 羽根車
72 ポンプケーシング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアに導体を巻回した電機子を、モータフレームの内部のステータキャンで区画されたステータ室内に収納したステータと、前記ステータキャンの内周側に回転可能に配置されて外部へ動力を出力する回転軸を備えたロータとを有するキャンドモータにおいて、
前記ステータキャンの反負荷側端部には反負荷側ステータキャン端板が固定され、該反負荷側ステータキャン端板と該端板に対向する固定側部材との間には、密閉部材が配置されていることを特徴とするキャンドモータ。
【請求項2】
前記反負荷側ステータキャン端板の前記回転軸の軸方向に沿った外方には、該反負荷側ステータキャン端板の前記回転軸の軸方向に沿った移動を許容する隙間が形成されていることを特徴とする請求項1記載のキャンドモータ。
【請求項3】
前記固定側部材は、前記モータフレームと別体で構成され、前記回転軸の反出力側に配置されて該回転軸を回転可能に支持する反負荷側軸受を固定する反負荷側軸受ブラケットからなることを特徴とする請求項1または2記載のキャンドモータ。
【請求項4】
前記ステータキャンの外周面の電機子非固着部分には、補強管が配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のキャンドモータ。
【請求項5】
前記補強管の内、前記電機子を挟んで反負荷側に配置される補強管は、固定側部材に端部を嵌入させて固定されていることを特徴とする請求項4記載のキャンドモータ。
【請求項6】
前記ステータキャンの負荷側端部には負荷側ステータキャン端板が固定され、前記モータフレームと別体で構成され前記回転軸の反出力側に配置されて該回転軸を回転可能に支持する負荷側軸受を固定する負荷側軸受ブラケットと前記負荷側ステータキャン端板との間には、密封部材が配置されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のキャンドモータ。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載のキャンドモータと、
前記キャンドモータの前記回転軸の出力側端部に装着される羽根車と、
内部に前記羽根車を収納して前記モータフレームに固定されるポンプケーシングを有することを特徴とするキャンドモータポンプ。
【請求項8】
請求項6記載のキャンドモータと、
前記キャンドモータの前記回転軸の出力側端部に装着される羽根車と、
内部に前記羽根車を収納して前記モータフレームに固定されるポンプケーシングを有し、
前記負荷側ステータキャン端板及び前記負荷側軸受ブラケットは、前記モータフレームと前記ポンプケーシングとの間に挟持して固定されることを特徴とするキャンドモータポンプ。
【請求項9】
ステータコアに導体を巻回した電機子を、モータフレームの内部のステータキャンで区画されたステータ室内に収納したステータと、前記ステータキャンの内周側に回転可能に配置されて外部へ動力を出力する回転軸を備えたロータとを有するキャンドモータにおいて、
前記ステータキャンの軸方向に沿った一方の端部には円筒状の第1端板が、他方の端部には円板状の第2端板がそれぞれ固定され、
前記円筒状の第1端板の内周面と該第1端板の内周面に対向する前記モータフレームまたは該モータフレームに固定された部材との間には、密閉部材が配置されていることを特徴とするキャンドモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−193572(P2011−193572A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55500(P2010−55500)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】