説明

ギヤードモータ

【課題】支持軸部に対し出力部材を抜け止め部材にて抜け止めを行う構成を有するものであり、支持軸部の作製を容易としながらもその抜け止め部材の係止を確実とし、出力部材の抜け止めを確実に行うことができるギヤードモータを提供する。
【解決手段】ギヤハウジング20の支持軸部30は、基端側が小径部33、先端側が大径部34をなす支持軸32を有し、その小径部33の基端部がホイール支持部31に固定されるとともに、該ホイール支持部31の一部が大径部34まで延出されて小径部33の外周面33aが被覆部36にて被覆されている。出力プレート25の抜け止めを行う抜け止め部材38は、大径部34と被覆部36との境界部分に形成した境界面部30a(係止部)に係止されて支持軸部30に対して装着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ部と、このモータ部の回転を減速する減速部とが一体に組み付けられてなるギヤードモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、モータ部の駆動による回転軸の回転を減速部のウォームホイールにより減速し、該ウォームホイールと一体回転可能に連結された出力部材に伝達するギヤードモータが知られている(例えば特許文献1参照)。このようなギヤードモータでは、ウォームホイール及び出力部材を嵌挿させ回転可能に支持する支持軸部が樹脂製のハウジング内に構成されている。支持軸部の先端部には、抜け止め部材、例えば歯付きワッシャ(文献ではスナップリング)が圧入され、内周部の係止片(爪部)が支持軸部の外周面に食い込むことで、ウォームホイールとともに出力部材の支持軸部に対する抜け止めが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−155858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記したモータでは、ウォームホイール及び出力部材を支持する支持軸部が一枚の金属板から絞り加工により中空円筒状に形成されてなり、抜け止め部材(歯付きワッシャ)の内周部の係止片が食い込み易いように、塑性変形が比較的容易に行える構造としている。
【0005】
しかしながら、抜け止め部材の係止片による支持軸部の外周面の塑性変形の状態が個々に異なる等の理由から、支持軸部に対する抜け止め部材(歯付きワッシャ)の係止強度や係止位置にばらつきが生じ、個体によっては使用前や使用中に抜け止めが不確実となることが懸念される。また、抜け止め部材の軸方向に対する位置決めが難しく、取り付け作業に慎重性が要求され、作業効率の低下も懸念される。
【0006】
一方で、例えば支持軸部の周りに溝加工(切削加工)を施し、この溝に抜け止め部材(例えばCリング)を嵌合により係止させることが考えられるが、このような溝を設けるには支持軸に対する切削加工等が必要となり、製造工程が煩雑となってしまう。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、支持軸部に対し出力部材を抜け止め部材にて抜け止めを行う構成を有するものであり、支持軸部の作製を容易としながらもその抜け止め部材の係止を確実とし、出力部材の抜け止めを確実に行うことができるギヤードモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、モータ部と減速部とが一体に組み付けられてなるギヤードモータにおいて、前記減速部は、樹脂製のハウジング内に構成される支持軸部と、前記支持軸部に嵌挿されて回転可能に支持されるとともに前記モータ部からの回転を減速するウォームホイールと、前記支持軸部に嵌挿されて回転可能に支持されるとともに前記ウォームホイールと一体回転可能に連結される出力部材と、前記ウォームホイールと反対側にて前記出力部材の前記支持軸部に対する抜け止めを行う抜け止め部材とを備え、前記モータ部の回転を前記出力部材に駆動伝達されるものであって、前記支持軸部は、基端側が小径部、先端側が大径部をなす金属製の支持軸を有し、その小径部の基端部が前記樹脂製のハウジングに固定されるとともに、該ハウジングの一部が前記大径部まで延出されて前記小径部の外周面を被覆する被覆部が構成され、該被覆部にて少なくとも前記出力部材を回転可能に支持し、前記抜け止め部材は、前記支持軸の大径部と前記被覆部との境界部分に形成した係止部に係止し、前記出力部材の抜け止めを行うべく前記支持軸部に対して装着されていることをその要旨とする。
【0009】
この発明では、ハウジングの支持軸部は、基端側が小径部、先端側が大径部をなす支持軸を有し、その小径部の基端部がハウジングに固定されるとともに、該ハウジングの一部が大径部まで延出されて小径部の外周面が被覆部にて被覆される。ウォームホイールと反対側にて出力部材の抜け止めを行う抜け止め部材は、大径部と被覆部との境界部分に形成した係止部に係止されて支持軸部に対して装着される。つまり、抜け止め部材による抜け止めは、抜け方向に金属製の支持軸の大径部が係止するためにその係止強度は高く、また係止位置もその境界部分となるため、いずれの個体であっても出力部材の抜け止めをより確実に行うことが可能となる。また、支持軸の大径部と、小径部を被覆する被覆部との境界部分に互いが共同して抜け止め部材を係止させる係止部を構成するため、切削加工を要する溝等を支持軸に形成する必要がなく、またその被覆部をハウジングの成形に伴って一体形成可能であり、支持軸部の作製は容易である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のギヤードモータにおいて、前記支持軸は、前記小径部の基端部が前記ハウジングに一体成形にて埋め込まれて固定されることをその要旨とする。
【0011】
この発明では、支持軸がハウジングに対して一体成形にて固定されるため、支持軸の組み付けが不要であり、またより強固に固定できるため、出力部材の抜け止めをより確実に行うことができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のギヤードモータにおいて、前記係止部は、前記被覆部の端面が前記大径部の端面に当接するまで延出形成して構成される境界面部であり、前記抜け止め部材は、環状をなして内周部に係止片を有するものであり、前記係止片が前記境界面部に食い込むように装着されていることをその要旨とする。
【0013】
この発明では、係止部は、被覆部の端面が大径部の端面に当接するまで延出形成して構成される境界面部で構成され、この境界面部に抜け止め部材の内周部に設けられた係止片が食い込むように装着される。つまり、支持軸の大径部と被覆部との当接させたその境界面部を係止部としたため支持軸部の作製は容易であり、また抜け方向において抜け止め部材の係止片が金属製の支持軸の大径部に係止するため、支持軸部に対して抜け止め部材がより確実に係止する。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載のギヤードモータにおいて、前記係止部は、前記大径部の端面、前記小径部の外周面及び前記被覆部の端面とで構成される溝部であり、前記抜け止め部材は、一部が開放する環状をなし、前記溝部に装着されていることをその要旨とする。
【0015】
この発明では、係止部は、大径部の端面、小径部の外周面及び被覆部の端面とで構成される溝部で構成され、この溝部に一部が開放する環状の抜け止め部材が大径部の端面と係止して装着される。つまり、被覆部を支持軸の大径部に隙間を空けて若干短く形成するだけで係止部である溝部が形成可能なため支持軸部の作製は容易であり、また抜け方向において抜け止め部材の係止片が金属製の支持軸の大径部に係止するため、支持軸部に対して抜け止め部材がより確実に係止する。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のギヤードモータにおいて、前記大径部及び小径部を有する前記支持軸は、金属部材の鍛造加工にて構成されたものであることをその要旨とする。
【0017】
この発明では、大径部及び小径部を有する支持軸を容易に構成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、支持軸部に対し出力部材を抜け止め部材にて抜け止めを行う構成を有するものであり、支持軸部の作製を容易としながらもその抜け止め部材の係止を確実とでき、出力部材の抜け止めを確実に行うことができるギヤードモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態におけるギヤードモータの概略構成図。
【図2】減速部の分解斜視図。
【図3】(a)は図1のA−A線断面図、(b)は(a)に示す領域Rの拡大図。
【図4】別例における減速部の部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示す本実施形態のモータ1は、車両に搭載されるパワーウインド装置の駆動源として用いられるモータであり、モータ部2と減速部3とからなるギヤードモータにて構成されている。
【0021】
モータ部2は、略有底扁平円筒状に形成されたヨークハウジング10と、このヨークハウジング10の内周に固定された一対のマグネット11と、ヨークハウジング10内で回転可能に支持される電機子12とを備えている。電機子12は、その中心に回転軸12aを備え、回転軸12aの基端部(図1において下側部位)はヨークハウジング10の底部中央に組み付けられた軸受(図示略)により回転可能に支持されている。また、電機子12の整流子にはブラシ(共に図示略)が摺接するように構成されており、このブラシにはコネクタ(図示略)を介して外部から電源が供給され、前記ブラシから整流子に対して電源が供給されるようになっている。ヨークハウジング10には、その開口側に径方向に延びるフランジ部10aが形成されており、このフランジ部10aはヨークハウジング10を後述するギヤハウジング20に対してネジ(図示略)にて固定するために設けられている。
【0022】
図1及び図2に示すように、減速部3は、ギヤハウジング20、ウォーム軸21、ウォームホイール22、蓋部材23、ゴムダンパ24及び出力プレート25を備えている。ギヤハウジング20は樹脂製であって、ウォーム軸21を収容する軸収容部20aと、この軸収容部20aからウォーム軸21の軸方向(回転軸12aの軸線L1方向)と直交する方向に延出するホイール収容部20bとを備えている。ウォーム軸21は、前記モータ部2から延びる回転軸12aと同一軸線L1上で駆動連結されている。
【0023】
図2及び図3(a)に示すように、ホイール収容部20bは、略有底筒状に形成され、その開口部20cを閉塞するように蓋部材23が装着されて構成され、略円盤状の蓋部材23の中央部分には貫通孔23aが形成されている。ホイール収容部20bには、底部20dの略中心から軸線L1方向及びホイール収容部20bの延出方向と直交する方向(図3(a)における軸線L2方向)に支持軸部30が形成されている。
【0024】
支持軸部30は、ホイール支持部31と、ホイール支持部31に固定される支持軸32とを有する。ホイール支持部31は、ホイール収容部20bの底部20dに一体形成された略円柱状をなす。ホイール支持部31の中央部分には、ホイール支持部31よりも小径とされる略円柱状の支持軸32が基端部を埋め込まれた状態で固定されている。
【0025】
支持軸32は、基端側が小径部33、先端側が大径部34をなす略円柱状の金属部材(例えばアルミニウム)から形成されている。小径部33の基端部には、固定部35が設けられ、ホイール支持部31に対する抜け止め加工が施されている。固定部35は、小径部33の基端部を例えばセレーション形状とした回転方向固定部35aと、回転方向固定部35aの先端側に形成された略円盤状の軸方向固定部35bとで構成されている。固定部35(固定部35a,35b)は、ホイール支持部31に埋設されセレーション形状の溝部分に充填されたホイール支持部31の一部と各固定部35a,35bが係合することで、支持軸32が回転方向及び軸方向に対して強固に固定されている。小径部33の先端側には、外径を大きく形成した大径部34が設けられ、大径部34の基端側には環状の端面34aが形成されている。このような大径部34、小径部33及び固定部35を有する支持軸32は、例えば金属部材の冷間鍛造加工により形成されている。因みに、大径部34の先端面中央部には、略円錐形状に凹設した部分が設けられている。
【0026】
ホイール支持部31には、その上面中央部から大径部34まで延出され小径部33の外周面33aを被覆する筒状の被覆部36が形成されている。被覆部36の先端側の端面36aと大径部34の端面34aとは当接しており、支持軸部30には、大径部34と被覆部36との境界部分に形成した環状の境界面部30aが構成されている。また、大径部34の外周面34bと被覆部36の外周面36bとは面一となるように形成されている。このような構成の支持軸部30は、例えば成型用の金型に支持軸32を固定した状態でギヤハウジング20のインサート成形を行って、ホイール支持部31の形成とともに被覆部36が一体に形成される。
【0027】
ホイール支持部31には、ウォームホイール22の内周孔部22aが摺接して支持軸部30の軸線L2を中心として回転可能に設けられ、被覆部36には、出力プレート25の内周孔部25aが摺接して回転可能に設けられている。ウォームホイール22は、ホイール支持部31に挿通される前記内周孔部22aと、この内周孔部22aの周囲を構成する略円筒状のボス部22bと、外周部に設けられ前記ウォーム軸21と噛合する歯部22cと、この歯部22cとボス部22bとの間にホイール内凹部22dとを有している。ウォームホイール22は、そのホイール内凹部22dの開口方向がホイール収容部20bの開口方向と同じとなるように配置される。
【0028】
出力プレート25は、略円盤状をなしており、外周部25bがウォームホイール22のホイール内凹部22dの開口側の内壁面22eに当接するように配置される。出力プレート25は、ウォームホイール22側の一端面にゴムダンパ24と回転方向において係合するための複数(本実施形態では3つ)の係合凸部25cが突設されており、この係合凸部25cがホイール内凹部22dの係合凸部22fと回転方向において交互となるように配置される。つまり、出力プレート25とウォームホイール22とは、衝撃吸収のためゴムダンパ24を介して駆動連結される。
【0029】
また、出力プレート25のウォームホイール22とは反対側には、その中央部にセレーション形状の出力部26が一体に形成されている。出力部26は、組み付け状態において蓋部材23の貫通孔23aから露出するように構成されている。出力部26は、中央部分に先端側に開口した凹部26aが形成され、この凹部26aの中央部分には前記内周孔部25aを囲むように形成された内周孔周縁部26bが凹設されている。
【0030】
図3(b)に示すように、凹部26aには、底部26cに当接するようにワッシャ37が装着され、ワッシャ37上には、ウォームホイール22に載置される出力プレート25の抜け止めを行う抜け止め部材38が設けられている。抜け止め部材38は、例えば歯付ワッシャであり、環状をなして内周部に係止片38aが形成されている。抜け止め部材38は、支持軸部30に圧入され係止片38aが前記境界面部30aに食い込むように固定され、外周部38bがワッシャ37の上面37aに当接されている。また、内周孔周縁部26bには、内周面26dと被覆部36の外周面36bとの間にOリング39が装着され、外部からの水等の液体の浸入が防止されている。
【0031】
上記のように構成されたモータ1では、モータ部2の回転軸12aの回転駆動がウォーム軸21及びウォームホイール22にて減速されて出力部26に駆動伝達されるようになっている。そして、この出力部26が例えばワイヤ式のパワーウインド装置に用いられるプーリ(図示略)と駆動連結されることで、ウインドガラス(図示略)の開閉動作が可能とされている。
【0032】
次に、上記のように構成されたギヤハウジング20の作製、減速部3の組付手順を説明する。
先ず、ギヤハウジング20は、樹脂のインサート成形にて形成される。ギヤハウジング20に設けられた支持軸部30は、支持軸32の基端部が埋め込まれた状態でホイール支持部31が形成されるとともに、そのホイール支持部31から小径部33の外周面33aを被覆する被覆部36が大径部34の端面34aに当接するまで延長させて一体に形成される。つまり、支持軸32は鍛造加工にて容易に形成され、被覆部36はギヤハウジング20の成形と同時に形成されて、抜け止め部材38を係止させる係止部をなす大径部34及び被覆部36間の境界面部30aが構成される。
【0033】
減速部3の組み付けにおいて、上記した支持軸部30のホイール支持部31に対してウォームホイール22が取り付けられる。予めウォームホイール22に対して、若しくはその後にゴムダンパ24、出力プレート25が取り付けられ、支持軸32の被覆部36に出力プレート25が外挿される。次いで、支持軸部30へのOリング39、ワッシャ37の装着後、抜け止め部材38が圧入される。その際、抜け止め部材38の係止片38aが境界面部30aの位置となるまで圧入され、該係止片38aが境界面部30aに食い込んで抜け方向に支持軸32の大径部34に係止する。そして、ホイール収容部20bの開口部20cを閉塞するように蓋部材23が該ホイール収容部20bに対して取り付けられ、減速部3が組み付けられる。
【0034】
このように本実施形態では、出力プレート25を支持する支持軸部30が金属製の支持軸32と樹脂製のギヤハウジング20の一部の被覆部36とで構成され、その支持軸32の大径部34と被覆部36との間の境界面部30aを係止部として、抜け止め部材38の係止片38aをその境界面部30aに食い込むようにして係止させている。そのため、抜け止め部材38の係止位置は、モータ1のいずれの個体においても安定する。また、境界面部30aにおいては、抜け止め部材38の係止片38aが樹脂側の被覆部36にて食い込み易く、抜け方向には金属側の支持軸32の大径部34と係止状態を十分に確保できる。その上、抜け止め部材38の抜け方向に係止片38aが金属側の大径部34に係止することから、その係止強度は高いものとなっている。また、支持軸部30の係止部である境界面部30aは、切削加工より容易な鍛造加工よりなる支持軸32の大径部34とギヤハウジング20の樹脂成形時に同時に形成される被覆部36とで構成されることから、支持軸部30の作製は容易となっている。
【0035】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)ギヤハウジング20の支持軸部30は、基端側が小径部33、先端側が大径部34をなす支持軸32を有し、その小径部33の基端部がホイール支持部31に固定されるとともに、該ホイール支持部31の一部が大径部34まで延出されて小径部33の外周面33aが被覆部36にて被覆されている。ウォームホイール22と軸方向の反対側にて出力プレート25の抜け止めを行う抜け止め部材38は、大径部34と被覆部36との境界部分に形成した境界面部30a(係止部)に係止されて支持軸部30に対して装着されている。つまり、抜け止め部材38による抜け止めは、抜け方向に金属製の支持軸32の大径部34が係止するためにその係止強度は高く、また係止位置もその境界部分(境界面部30a)となるため、いずれの個体であっても出力プレート25の抜け止めをより確実に行うことが可能となる。また、支持軸32の大径部34と、小径部33を被覆する被覆部36との境界部分に互いが共同して抜け止め部材38を係止させる境界面部30a(係止部)を構成するため、切削加工を要する溝等を支持軸32に形成する必要がなく、またその被覆部36をギヤハウジング20の成形に伴って一体形成可能であり、支持軸部30の作製は容易である。
【0036】
(2)支持軸32は、小径部33の基端部がギヤハウジング20のホイール支持部31に対して一体成形(インサート成形)にて固定されている。これにより、支持軸32の組み付けが不要であり、またより強固に固定できるため、出力プレート25の抜け止めをより確実に行うことができる。
【0037】
(3)係止部として、被覆部36の端面36aが大径部34の端面34aに当接するまで延出形成して構成される境界面部30aが構成され、この境界面部30aに抜け止め部材38の係止片38aが食い込むように固定されている。つまり、支持軸32の大径部34と被覆部36との当接させたその境界面部30aを係止部としたため支持軸部30の作製は容易であり、また抜け方向において抜け止め部材38の係止片38aが金属製の支持軸32の大径部34に係止するため、支持軸部30に対して抜け止め部材38がより確実に係止する。
【0038】
(4)支持軸32が金属部材の鍛造加工にて形成されており、大径部34及び小径部33を有する支持軸32を容易に構成することができる。
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
【0039】
・上記実施形態では、抜け止め部材38として係止片38aを有する歯付きワッシャを用いたが、これに限定されない。例えば図4に示すように、抜け止め部材38として一部が開放する環状の抜け止め部材41(例えばCリング)を用いてもよい。この場合、被覆部36及び大径部34の両端面34a,36a間が離間するように被覆部36を若干短く形成することで、各端面34a,36aと小径部33の外周面33aとで係止部としての環状の溝部42が形成され、この溝部42に抜け止め部材41が嵌着される。つまり、被覆部36を支持軸32の大径部34に隙間を空けて若干短く形成するだけで係止部である溝部42が形成可能なため支持軸部30の作製は容易であり、また抜け方向において抜け止め部材38の係止片38aが大径部34に係止するため、支持軸部30に対して抜け止め部材38がより確実に係止する。
【0040】
・上記実施形態では、支持軸32を中実の金属部材で構成したが、これに限定されず、中空状をなしていてもよく、また中空とした部分にギヤハウジング20を成形する樹脂材料を充填してもよい。これにより、支持軸部30、つまりギヤハウジング20の軽量化が図られる。
【0041】
・上記実施形態では、支持軸32をギヤハウジング20(ホイール支持部31)に対して一体成形にて埋め込む態様で固定したが、これに限定されず、例えば被覆部36を有するギヤハウジング20を予め形成し、その被覆部36に対して支持軸32を挿入する態様で固定してもよい。
【0042】
・上記実施形態において、ホイール支持部31にてウォームホイール22を支持、支持軸32を被覆した被覆部36にて出力プレート25を支持したが、被覆部36に出力プレート25とともにウォームホイール22を支持するようにしてもよい。
【0043】
・上記実施形態では、出力プレート25に出力部26を一体に形成したが、出力部26と該出力部26に駆動力を伝達する伝達プレートというように別体で構成してもよい。
・上記実施形態では、出力部26をセレーション形状としたが、例えばXアーム式のパワーウインド装置のモータにて用いられるギア形状等、負荷側に合わせたその他の形状としてもよい。
【0044】
・上記実施形態では、パワーウインド装置のモータに具体化したが、これに限らず例えばサンルーフ装置、スライドドア開閉装置といった車両開閉体駆動装置のモータに適用してもよく、またワイパ装置等、その他の装置に用いるモータに適用してもよい。
【0045】
・上記実施形態において、モータ1を構成する各部材の材料・形状・構成等は一例であり、適宜変更してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想を以下に追記する。
【0046】
(イ) 請求項1〜4のいずれか1項に記載のギヤードモータにおいて、車両開閉体駆動装置に用いられることを特徴とするギヤードモータ。
このように、パワーウインド、サンルーフ、スライドドア等の車両開閉体駆動装置に用いても請求項1〜4のいずれか1項に記載の効果と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0047】
1…モータ(ギヤードモータ)、2…モータ部、3…減速部、20…ギヤハウジング(ハウジング)、22…ウォームホイール、25…出力プレート(出力部材)、26…出力部(出力部材)、30…支持軸部、30a…境界面部(係止部)、32…支持軸、33…小径部、33a…外周面、34…大径部、34a,36a…端面、36…被覆部、38,41…抜け止め部材、38a…係止片、42…溝部(係止部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ部と減速部とが一体に組み付けられてなるギヤードモータにおいて、
前記減速部は、
樹脂製のハウジング内に構成される支持軸部と、
前記支持軸部に嵌挿されて回転可能に支持されるとともに前記モータ部からの回転を減速するウォームホイールと、
前記支持軸部に嵌挿されて回転可能に支持されるとともに前記ウォームホイールと一体回転可能に連結される出力部材と、
前記ウォームホイールと反対側にて前記出力部材の前記支持軸部に対する抜け止めを行う抜け止め部材と
を備え、前記モータ部の回転を前記出力部材に駆動伝達されるものであって、
前記支持軸部は、基端側が小径部、先端側が大径部をなす金属製の支持軸を有し、その小径部の基端部が前記樹脂製のハウジングに固定されるとともに、該ハウジングの一部が前記大径部まで延出されて前記小径部の外周面を被覆する被覆部が構成され、該被覆部にて少なくとも前記出力部材を回転可能に支持し、
前記抜け止め部材は、前記支持軸の大径部と前記被覆部との境界部分に形成した係止部に係止し、前記出力部材の抜け止めを行うべく前記支持軸部に対して装着されていることを特徴とするギヤードモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のギヤードモータにおいて、
前記支持軸は、前記小径部の基端部が前記ハウジングに一体成形にて埋め込まれて固定されることを特徴とするギヤードモータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のギヤードモータにおいて、
前記係止部は、前記被覆部の端面が前記大径部の端面に当接するまで延出形成して構成される境界面部であり、
前記抜け止め部材は、環状をなして内周部に係止片を有するものであり、前記係止片が前記境界面部に食い込むように装着されていることを特徴とするギヤードモータ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のギヤードモータにおいて、
前記係止部は、前記大径部の端面、前記小径部の外周面及び前記被覆部の端面とで構成される溝部であり、
前記抜け止め部材は、一部が開放する環状をなし、前記溝部に装着されていることを特徴とするギヤードモータ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のギヤードモータにおいて、
前記大径部及び小径部を有する前記支持軸は、金属部材の鍛造加工にて構成されたものであることを特徴とするギヤードモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−108549(P2013−108549A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252816(P2011−252816)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】