説明

クライムサポート及びこれを用いたツル、ツタ用登攀補助機材

【課題】つる性植物が良好に登攀できる安価なクライムサポート及びこれを用いたツル、ツタ用登攀補助機材を提供する。
【解決手段】つる性植物をガイドすべくつる性植物の植え込み位置近傍から上方に延びて張設されるクライムサポート1において、金属からなる索2を有すると共に索2の外周に設けられ径方向外方に突起する突起部3を有する心線4の外周に、多孔質材からなる被膜5を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、つきぬきにんどう、時計草、ジャスミン、あけび等のツル、ツタ等(つる性植物)を登攀させるためのクライムサポート(登攀支持材)及びこれを用いたツル、ツタ用登攀補助機材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のツル、ツタ用登攀補助機材はワイヤーとワイヤーを固定する専用器具からなっている。
【0003】
ツル、ツタ用登攀補助機材は、つる性植物の植生が必要とされる建物や面にアングルなどの取付け用金物をセットし、これに専用器具でワイヤーを取り付け、ワイヤーのテンションを高め、つる性植物を登攀させるものである。
【0004】
また、これとは別に立体トラス構造を利用した専用パネルからなるツル、ツタ用登攀補助機材も売り出されている。これはパネルなので線ではなく面の緑化に有効である。
【0005】
ただし、パネルタイプのツル、ツタ用登攀補助機材はパネルが非常に高価である上、取り付けも簡単ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−272274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ワイヤータイプはパネルタイプよりは安価であるが、つる性植物の登攀力向上に工夫がなく、ワイヤーの蓄熱や染みこんだ油の影響でつる性植物の巻根の食いつきが悪いという課題があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、つる性植物が良好に登攀できる安価なクライムサポート及びこれを用いたツル、ツタ用登攀補助機材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、つる性植物をガイドすべくつる性植物の植え込み位置近傍から上方に延びて張設されるクライムサポートにおいて、金属からなる索を有すると共に該索の外周に設けられ径方向外方に突起する突起部を有する心線の外周に、多孔質材からなる被膜を設けたものである。
【0010】
前記多孔質材が、炭からなるとよい。
【0011】
前記索が、複数本の金属線を撚り合わせた撚り線からなるとよい。
【0012】
前記心線が、前記索の外周に針金を巻回すると共に該針金の両端部を前記索から棘状に突出させてなる有棘金属線から前記針金の両端部を切り落として形成されるとよい。
【0013】
また、ツル、ツタ用登攀補助機材が、地面又は固定構造物に固定され上下に離間する一対のフレームと、これらフレーム間に張設された請求項1〜4のいずれかに記載のクライムサポートとを備えたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、つる性植物が良好に登攀でき、安価にできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1(a)はクライムサポートに利用する有棘金属線の正面図であり、図1(b)は棘を落とした有棘金属線の正面図であり、図1(c)はクライムサポートの正面図である。
【図2】図2(a)はツル、ツタ用緑化機材の概略正面図であり、図2(b)は図2(a)の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態を発明に至った経緯から説明する。
【0017】
まず、本願の発明者は、つる性植物の育成伸張に関する比較実験をワイヤー等を用いて行い、ワイヤーの材質がつる性植物の登攀に適さないことを見出した。
【0018】
ワイヤーの材質がつる性植物の登攀に適さない原因として考えられた事は、まずワイヤーの構造にあった。ワイヤーは細い鋼材を撚り合わせたものでありその構造上、すべりを良くする為、一定量の油分を帯びていることが主因ではないかと考えられた。
【0019】
また、ツル、ツタを巻き付かせて登攀するには物理的な取っ掛かりが必要であるが、ワイヤーにはほとんどそのような凸部が存在しないことも要因であると考えられた。
【0020】
次に、つる性植物の成長期はかなり気候的にも暑いときである。日中の金属の蓄熱した表面温度が巻根の成長を大きく妨げることも要因と考えられ、全ての金属製の植物登攀補助機材の弱点はここにあると考えられた。
【0021】
そこで、本願の発明者は、上述の問題点を解決し、植物の巻根が快適に成長し食指を伸ばせるようにするために、3つの条件を満たすクライムサポートの開発を開始した。
【0022】
この3つの条件とは、
第1に表面温度の変化を気温並みに抑えること、
第2に細くか弱い巻根が抱きつきやすくすること、
第3に少なくても一定時間水分を一時的にでも保持できることであった。
【0023】
開発においては、まず、つる性植物が巻根を絡ませて登攀するには物理的な取っ掛かりが必要であることを発案した。つる性植物が風などで煽られた時にも回転を抑える抵抗力を大きく強くすることができ、数段強く巻き付くことができる。このことはとりもなおさずつる性植物の安定した成長に効果的である。不安定な縮こまった状態では成長より、安定化に植物の持つエネルギーは使われ、成長を自己抑制するからである。
【0024】
そこで、つる性植物をより安定した状態で成長させるために、後述するクライムサポートのように、索に一定間隔で突起部を取り付けた。突起部の間隔は狭いに越したことはないが巻根の間隔に合わせ10〜30cm前後とした。また、油分の無い素材で劣化が遅く強い張力に耐える素材としてSUS306程度のステンレス番線(18番)を3本寄り合わせ、途中30cm間隔で突起部を取り付けた(これは鉄条網の所謂バラセン(有棘金属線)に酷似しているので、その棘を落として使うことがコスト低減の上からも適切になる)。
【0025】
つぎに、表面温度の変化を気温並みに抑えるためには、索と突起部の全体に多孔質の細かな炭を塗布することを発案した。これにより多孔質素材の特徴として気温並みに素材表面温度を抑えることと、一定時間保水、更に巻根の繊細な感触に応える表面被膜の効果が発揮できる。つる性植物の成長にともなうストレスのうち、安定性と巻根の生理的な成長抑制原因を取り除くことによりつる性植物の成長速度は大幅に向上するものと思われる。
【0026】
また、油分がなく表面を炭で被覆されたステンレス番線は3本を撚り合わせ、一本当たり200kg以上の張力に耐えるものとした。従って、3本で0.5トン以上の吊り下げ荷重に耐える。
【0027】
このことは20m以上のロングスパンの引っ張りにも耐える事であり、更に、複数のクライムサポートを並行に、かつ、間隔を縮めて設置すれば、クライムサポート間に空中花壇的な中継基地を設置することが可能となる。
【0028】
次につる性植物をガイドすべくつる性植物の植え込み位置近傍から上方に延びて張設されるクライムサポートを図面に基づいて説明する。
【0029】
図1(c)に示すように、クライムサポート1は、金属からなる索2を有すると共に索2の外周に設けられ径方向外方に突起する突起部3を有する心線4の外周に、多孔質材からなる被膜5を設けて構成される。
【0030】
図1(b)に示すように、索2は、ステンレスからなる金属線6を3本撚り合わせた撚り線(ワイヤー)からなる。突起部3は、索2の外周に針金7を2〜6周程度巻回して形成されている。突起部3は、索2に軸方向に30cm間隔で複数設けられている。
【0031】
具体的には、心線4は、図1(a)に示すようなステンレス製の有棘金属線14、すなわち、索2の外周に針金7を巻回すると共に針金7の両端部を索2から棘状に突出させてなる有棘金属線14から棘15(針金7の両端部)を切り落として形成する。心線4の作製を容易に、かつ、安価にできる。
【0032】
なお、索2は、金属線6を複数本撚り合わせた撚り線からなるものであってもよい。
【0033】
図1(c)に示すように、被膜5は、心線4に多孔質材を接着してなる。具体的には、多孔質材は、くん炭等の細かな炭からなり、心線4の外周に接着剤を塗布して接着剤層(図示せず)を形成したのち、接着剤層の外周に炭をまんべんなく付着させて炭層(図示せず)を形成してなる。
【0034】
クライムサポート1を用いたツル、ツタ用登攀補助機材について述べる。
【0035】
図2(a)、(b)に示すように、ツル、ツタ用登攀補助機材8は、地面又は固定構造物に固定され上下に離間する一対のフレーム9、10と、これらフレーム9、10間に張設されたクライムサポート1とからなる。フレーム9、10は、それぞれ水平方向に平行に延びており、地面にアンカー(図示せず)を介して又は固定構造物たる建築物11の側面に取付金具12を介して固定されている。クライムサポート1は、フレーム9、10の延長方向に沿って複数本等間隔に張設されており、複草混合植栽が容易にできるようになっていると共に、クライムサポート1間に空中花壇的な中継基地13としてのプランター等を設置できるようになっている。
【0036】
次に本実施の形態の作用を述べる。
【0037】
つる性植物の巻根が上方に延びるクライムサポート1に接触すると、巻根はクライムサポート1に巻き付く。このとき、クライムサポート1の表面は炭からなり、水分を適度に含み、気温を上回ることはなく、油分を含まないため、柔らかく弱い巻根であっても良好に巻き付いてなじむことができる。また、つる性植物が成長し、巻根で自重を支える必要が生じたとき、巻根がクライムサポート1の突起部3に掛かって滑り落ちないため、つる性植物は良好に登攀できる。つる性植物のエネルギーが自身の安定のために消費されることがないため、つる性植物は自身のエネルギーで効率よく健全に成長することができる。
【0038】
また、年月と共にクライムサポート1から炭が剥がれ落ちることは考えられるが、突起部3がつる性植物の巻根を支持するため、つる性植物がクライムサポート1から滑り落ちることはない。
【0039】
このように、金属からなる索2を有すると共に索2の外周に設けられ径方向外方に突起する突起部3を有する心線4の外周に、多孔質材からなる被膜5を設けてクライムサポート1を形成したため、気温並みにクライムサポート1の素材表面温度を抑えることができると共に、一定時間保水でき、更に巻根の繊細な感触に応える表面被膜の効果が発揮でき、つる性植物を良好に登攀させることができる。また、クライムサポート1を安価なものにできる。そして、つる性植物の成長にともなうストレスのうち、安定性と巻根の生理的な成長抑制原因を取り除くことができ、つる性植物の成長速度を大幅に向上することができる。
【0040】
被膜5を構成する多孔質材が、炭からなるものとしたため、クライムサポート1を簡易な構造でつる性植物がなじみ易いものにできる。
【0041】
索2が、複数本の金属線6を撚り合わせた撚り線からなるものとしたため、大きな吊り下げ荷重に耐えることができる。例えば、一本当たり200kg以上の張力に耐えるステンレス番線(18番)を3本撚り合わせると、3本で0.5トン以上の吊り下げ荷重に耐えることができ、20m以上のロングスパンの引っ張りにも耐える事ができる。また更に、クライムサポート1間の間隔を縮めれば、空中花壇的な中継基地13も設置可能となる。
【0042】
心線4が、索2の外周に針金7を巻回すると共に針金7の両端部を索2から棘状に突出させてなる有棘金属線14から針金7の両端部を切り落として形成されるものとしたため、クライムサポート1を更に安価かつ容易に形成することができる。
【0043】
また、地面又は固定構造物に固定され上下に離間する一対のフレーム9、10と、これらフレーム9、10間に張設されたクライムサポート1とを備えてツル、ツタ用登攀補助機材8を構成するものとしたため、つる性植物を良好に登攀させることができると共にツル、ツタ用登攀補助機材8を安価にできる。
【0044】
なお、金属線6はステンレスからなるものとしたが、十分な強度と耐食性があれば他の金属からなるものであってもよい。
【0045】
突起部3は索2に30cm間隔で設けるものとしたが、育成する植物の巻根の間隔に合わせて適宜変更するとよい。
【0046】
被膜5を構成する多孔質材は炭からなるものとしたが、これに限るものではない。例えば、貝殻を焼成したものであってもよい。ただし、巻根がなじみ易い天然素材(樹脂を除く)であることが好ましく、特に無機材料であることが好ましい。
【符号の説明】
【0047】
1 クライムサポート
2 索
3 突起部
4 心線
5 被膜
6 金属線
7 針金
8 ツル、ツタ用登攀補助機材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
つる性植物をガイドすべくつる性植物の植え込み位置近傍から上方に延びて張設されるクライムサポートにおいて、金属からなる索を有すると共に該索の外周に設けられ径方向外方に突起する突起部を有する心線の外周に、多孔質材からなる被膜を設けたことを特徴とするクライムサポート。
【請求項2】
前記多孔質材が、炭からなる請求項1記載のクライムサポート。
【請求項3】
前記索が、複数本の金属線を撚り合わせた撚り線からなる請求項1又は2記載のクライムサポート。
【請求項4】
前記心線が、前記索の外周に針金を巻回すると共に該針金の両端部を前記索から棘状に突出させてなる有棘金属線から前記針金の両端部を切り落として形成された請求項1〜3のいずれかに記載のクライムサポート。
【請求項5】
地面又は固定構造物に固定され上下に離間する一対のフレームと、これらフレーム間に張設された請求項1〜4のいずれかに記載のクライムサポートとを備えたことを特徴とするツル、ツタ用登攀補助機材。

【図1】
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【図2】
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