説明

クラシックダンスを練習するためのトウシューズ

この発明は、クラシックダンスの練習に適したシューズに関し、特に、ポワントを実行するためにダンス教室におけるダンサーやプロダンサーを意図しており、このシューズは、特にサテンから成るフィット性上部(2)が取り付けられる一般的に皮革製靴底と、つま先を覆い足の下部で補強シャンク(5)の形で延在している硬いシェル又はボックス(4)から成り、前記シャンク(5)は、その下表面に、一方の方向でその硬さを保証し、反対の方向でシューズにある程度の可撓性を与えるための、ほぼ中間深さの少なくとも2つの横断切り目(7)が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラシックダンスの練習に適したシューズに関し、特に、ポワント(つま先立ち)を実行するためのダンス教室におけるダンサーやプロダンサー用シューズに関する。
【背景技術】
【0002】
ポワント上のクラシックダンスのステップは、観客にとって非常に優雅ではあるが、「ダンサー腱膜瘤」のような足の前方の奇形を引き起こす極端に限られた訓練やとりわけ痛みを伴う練習を経てのみ演じることができ、時には、骨靭帯や筋腱などの病変の原因となる。
【0003】
実際に、ポワントを実行するとき、地上で生じるすべての荷重(これは非常に高い)は、前方、後方又は横に上体を曲げてはいけない、ダンサーの足(特に、つま先)の前部によって吸収され、それは趾骨の領域に非常に堅固な支持を必要とする。
【0004】
従って、バレエダンサーは、仕事道具であるシューズの品質に対して非常に要求が多く、足支持の品質やそれらの安全を妥協することなく、芸術作品を実行するときに引き起こされる苦痛や少なくとも経験する不快を減少するために、シューズを自分たちの形態に成形することが数世代にわたって習慣となっている。
【0005】
伝統的に、バレエダンサーによって使用されるシューズは、基本的に、一般的に皮革製靴底(これに特にサテンから成る可撓性の上部が取り付けられる)とつま先を覆い足の下部で補強用シャンクを介して足の土踏まずの下まで延在する硬いシェル(外郭構造)又はボックスから成る先端部とから構成される。
【0006】
この明細書中において、下方、上方、前方、後方等の用語は、真っすぐに立って、足が平らな状態のダンサーによって着用されたシューズを参照していることに注意されたい。
【0007】
従来のクラシックダンスシューズには、ダンサーが習慣的に足指の腹で立つことを防止する特にシャンクの硬い特性のために、歩くとき又はポワントからドゥミ・ポワントへ変化するときに体験する困難を含む多くの不利益がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、この不利益を克服することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、クラシックダンスを練習するのに適した上記種のシューズに関し、シャンクは、その下面で、換言すれば、グラウンドに最も近い側で、その厚さの約半分の深さの、少なくとも2つの横断の切れ目を備え、この種の切れ目は、通常、足の裏のクッション部分の領域に位置しており、通常、足が平ら、もしくはポワントのとき閉じ、足指の腹で歩いたり走ったりするとき開く。
【0010】
これら切れ目は、一方の方向においてシャンクの硬さを保証するが、他方の方向においてシューズにある程度の可撓性を与え、それら切れ目は、ダンサーが足指の腹で歩くとき開き、ダンサーがその足を平らな位置かポワント位置に移動するとき閉じる特徴を持つ。
【0011】
したがって、本発明によるシューズは、歩くとき、又はダンサーがポワントからドゥミ・ポワントに移ったとき、ある程度の可撓性を与えるという利点があり、この可撓性は伝統的なポワント用シューズにはない。
【0012】
しかしながら、この可撓性は、ダンサーがポワントで立つとき何らの困難も引き起こさず、それら切れ目は、そのような状況において自動的に閉じて、シャンクがその最大の硬さを回復するのを可能とし、足が曲がらないようにする。
【0013】
本発明に係るダンスシューズの、シャンクの形状、その穴と長さ、および溝の位置と数は、もちろん、シューズが対象としているダンサーの形態に合わせられる。
【0014】
本発明に係るダンスシューズの他の特徴によれば、シャンクは、ポリアセタール、ポリアミド、ポリプロプレン、ポリイミドなどの樹脂から成り、もし必要なら、合成又は天然繊維(亜麻布、麻繊維、ケブラー(登録商標)など)で強化される。
【0015】
実際に、これら材料は、一般的に、合成材料(カーボンやガラス繊維)において使用される繊維が好ましいことが分かっており、合成材料は、破損の場合には、ダンサーに危険な傷害の欠点がある。
【0016】
本発明に係るダンスシューズの格別に有利な特徴によれば、ボックスとシャンクの下部は、分離され得、好ましくは、互いにクリップで留められる2つの部品からなり、その両方は、出来る限り、合成材料から成る。
【0017】
したがって、ダンサーは、そのシューズのボックスとシャンクを容易に分離でき、従って、ダンサーの形態、特に、ダンサーのシューズの寸法、圧力点、ダンサーの足のアーチやダンサーの強度に依存して、選択、調整又は取り替えできる。
【0018】
本発明に係るダンスシューズのシャンクは、また、それをボックスに確実に接続するために接着剤でつけられてよく、伝統的な材料(接着剤によって接合された天然繊維の合成物)から成ってよい。
【0019】
本発明に係るダンスシューズの他の特徴によれば、ボックスの内側の部分は、ポワントのときのダンサーのつま先の領域において、エラストマー材料、オープン孔を有する発泡体又はミズゴケ(sphagnum)で覆われ、衝撃を吸収し、発汗を集め、それが通過するのを可能とする。
【0020】
クラシックダンスシューズのボックスは、その全体の表面上で一様な剛性を持たないことに注意されたい。実際に、プラットホームの領域、換言すればダンサーがポワントのときに地面と接触する表面、の前方の端で特に硬く、一方、横の縁すなわち翼の領域と、つま先ゾーンの可撓性が重んじられなければならないつま革の上部では薄くなり、より可撓性をもつ。
【0021】
その結果として、ボックスの内側の部分の材料の密度や性質は、これらの制約に配慮して、好ましくは変化すべきである。
【0022】
この材料は、特に、ダンサーのバランスを妨げないように、かつ、ダンサーが圧力点を感じるのを可能とするように、プラットホームの領域において、圧力に対する抵抗を変化させるべきである。
【0023】
また、圧力点が大きくなり、うおのめやまめを引き起こす皮膚の炎症を生じる傾向のある領域における圧力を分散するために、本発明に係るダンスシューズのボックスの内側部分に粘弾性の材料から成る詰め物を備えることが、考慮されてよい。
【0024】
しかしながら、痛い場所におかれたそれら詰め物は、発汗の除去を妨げないことが、必須である。それらは、例えば、もしオープン孔を有する発泡体から成る材料が選択されないなら、微細な穴があけられるべきである。
【0025】
ボックスに微細な穴があけられていることも有益である。
【0026】
本発明に係るダンスシューズのボックスの「骨格」が合成材料から成るときには、好ましくは弾性繊維の裏地付きサテンで覆って強化し、その後上記構造に接着剤でくっつけることで、心地よい審美的な外見を得るとともに、サテンがしわになるのを防ぐことができることにも注目すべきである。
【0027】
この場合、ボックスは100℃より低い、もし可能なら40℃の軟化点を持つ樹脂から成る。
【0028】
低い軟化点を持つ合成材料から成る「骨格」の存在により、ダンサーは、シューズのボックスをオーブンや、ヘアドライヤ、マイクロ波で温めることによって、自身の足の形状に正確に成形することができ、ボックスを自身の形態に完全に適合させることが可能である。
【0029】
伝統的なダンスシューズの他の欠点は、ステージのような表面と衝突するときに生じる雑音(これらは上演中に非常に厄介である)に関係している。
【0030】
これらの雑音は、特に、ダンサーが(その足を平らにした状態で)走るとき、更にポワントではねるとき、床上にぶつかるボックスによって引き起こされる。
【0031】
本発明の他の目的は、この欠点を克服することにある。
【0032】
したがって、本発明に係るダンスシューズの他の特徴によれば、ボックスの外側部分は、とりわけ、革底とプラットホーム(しわが位置する部分)の底面との間の空間において防音用パッドで覆われている。このパッドは、エラストマー又は発泡体から成り、この型のパッドは、ボックスとシューズを覆う材料(サテン、革、合成樹脂など)との間に挿入され、ダンサーが上演する木製の床にぶつかるボックスによって生成される雑音を大いに減じる。
【0033】
伝統的なダンスシューズの他の欠点は、ケース内に含まれる、上部の後部にあるレース(ひも)の存在によって引き起こされる、かかとの領域における腱に対する障害のリスクに関係している。
【0034】
本発明の他の目的は、この欠点を克服することにある。
【0035】
したがって、本発明に係るダンスシューズの他の特徴によれば、ダンサーのかかとの領域における上部の後部は、かかとの広い部分上のストレスを分散する予め形成されたバンドを備える。
【0036】
この種のバンドは、非常に強くかつ非弾力でなければならないが、通常、特別に編まれたものであって、ケブラー(登録商標)のような、非常に強くかつ非弾力の繊維から構成される。
【0037】
かかとの領域における上部の縁の内部に伝統的に存在するレースは、かかとの後部を非常に硬く押し付け、腱炎を引き起こすかもしれないので、したがって、これを取り除き、どのような皮膚損傷に対しても十分な幅のバンドに取り替え、圧迫ゾーンが最も小さくなるようにする。
【0038】
本発明によれば、滑りのリスクを避けるために、特に、ダンサーがポワントで立っているときに存在する発汗のところで、プラットホームの外側の部分に水と接触しても、変化しないままの摩擦係数を持つ材料から成るカバーを縫い合わせることが、また、想定され、したがって、ダンサーは、サテン上でなく、この材料上の場所で回転し、従って、スリップを避ける。
【0039】
本発明に係るダンスシューズの特徴は、添付した図面(これらに限定されない)を参照してより詳細に説明を行う。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係るダンスシューズの下からの図である。
【図2】図1の軸II-IIに沿っての断面図である。
【図3】本発明によるダンスシューズの先端部(組み合わされた箱とシャンク)の下からの図である。
【図4】図3に図示された先端部の軸IV-IVに沿っての断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1および図2によれば、本発明に係るダンスシューズは、基本的に、靴底1と、先端部3(ボックスとシャンクの組み合わせ)を伴う上部2とから成り、先端部3は、より正確に図3および図4に図示されている。
【0042】
靴底1は、様々な厚みの皮革から成る。
【0043】
上部2は、サテン、革、又はAlcantara(登録商標)のような可撓性材料から成り、それは、ダンサーの足の前方を覆い、かかとの周りを通過するまで、足の甲の両側に延在している。
【0044】
上部2の前方は、合成材料から成る先端部3によって硬化されている。
【0045】
図3および図4によれば、先端部3は、互いにクリップで留められる2つの分離した部品から成り、特に、ダンサーのつま先を包むボックス4と、前記ボックスから延在する補強シャンク5とから成り、シャンク5は、靴底1(図2)上のダンサーの足の下部分に位置している。
【0046】
図2、図3、および図4によれば、シャンク5は、その前方端で、ボックス4の対応するくぼみと係合する弾力的に変形可能なフック6を備え、前記シャンクをボックス4にロックするのを可能にしている。
【0047】
図4によれば、シャンク5は、その下面上に、ほぼ中間の深さの2つの横断切り目7を備え、それら切り目7は、一方の方向においてその硬さを保証するが、他方の方向においてそれがダンサーが歩くのを容易にするために、それにある程度の可撓性を与える。
【0048】
図2および図4によれば、ボックス4の下部は、ポワントの位置におけるダンサーのつま先の領域において、オープン孔を有する発泡体8又は繊維で覆われた小さい穴が開けられたエラストマーで覆われ、発汗が通過するのを可能にしている。
【0049】
ボックスの外側部分は、防音パッド9で覆われている。
【0050】
図1によれば、上部2の後部は、予め形成されたバンド10を備え、その機能は、ダンサーのかかとの領域における皮膚損傷のリスクを避けることにある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラシックダンスの練習に適し、特に、ポワントを実行するためのダンス教室におけるダンサーやプロダンサー用ダンスシューズであって、このダンスシューズは、特にサテンから成る可撓性の上部(2)が取り付けられる一般的に皮革製靴底(1)と、つま先及び足の下部で足の土踏まずの下まで延在するシャンク(5)を覆う硬いシェル(外郭構造)又はボックス(4)から成り、前記シャンク(5)は、
前記ボックス(4)の伸張部分に延在するとともに、それと一体化されて、硬化された組立部すなわち合成樹脂から成る先端部(3)を規定し、
靴底上のパッド領域に位置する下部表面に、好ましくは中間の深さで、少なくとも2つの横断切り目(7)を備え、それら切り目は、ダンサーが足指の腹で歩くとき開き、ダンサーがその足を平らもしくはポワント位置に動かすときに閉じるようにデザインされている、ダンスシューズ。
【請求項2】
前記硬化された組立部(3)は、発汗が通過するのを可能するために、小さな等間隔の孔があけられている、請求項1に記載のシューズ。
【請求項3】
前記合成樹脂は、ポリアセタール、ポリアミド、ポリプロピレン、又はポリイミドからなり、必要なら合成又は天然の繊維によって強化されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシューズ。
【請求項4】
前記ボックス(4)と前記シャンク(5)は、分離され、好ましくは、互いにクリップで留められる、2つの部品から成ることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシューズ。
【請求項5】
前記ボックス(4)の内側部分は、ダンサーのつま先の領域において、発汗を集め又はそれが通過するのを可能にする、エラストマー材料のオープン孔を有する発泡体又はミズゴケ(8)に覆われていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1つに記載のシューズ。
【請求項6】
前記ボックス(4)の外側部分は、特に、ボックスの下でかつプラットホーム(9)の領域において、防音パッドで覆われていることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1つに記載のシューズ。
【請求項7】
前記上部(2)の後部は、ダンサーのかかとの領域において、予め形成された、非伸張バンド(10)を備えていることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1つに記載のシューズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−540052(P2010−540052A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526343(P2010−526343)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際出願番号】PCT/FR2008/051707
【国際公開番号】WO2009/050371
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(510083810)レペット ソシエテ アノニム (1)
【Fターム(参考)】