説明

クラスレートの付着予防方法及び付着予防装置

【課題】 クラスレートの壁面への付着の抑制する手法であって、第1の液体と第2の液体との直接接触による熱交換を通じてクラスレートを生成させる場合に適した比較的簡便な方法および装置を提供すること。
【解決手段】 クラスレートを生成する薬剤を含む第1の液体と第1の液体に実質的に溶解しない第2の液体との混合物Mを収容する容器Cの内壁面1に、第1の液体と第2の液体との直接接触による熱交換を通じて生成するクラスレート4が付着することを予防するために、移動部材2を容器Cの内壁面に沿って且つ接触することなく移動することにより第1の液体の乱流3を発生させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラスレートの付着抑制技術に関し、詳しくは、液体中に存在するクラスレートの壁面への付着を抑制する方法及び装置に関する。なお、本明細書において、予防という語には、予め、少なくとも一時的に防止することの意味に加えて、予め、少なくとも一時的に抑制することの意味が含まれるものとする。また、クラスレートは、ホスト分子が水分子であるハイドレート(水和物)がその典型例であるが、これに限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
所定の目的を達成するための装置を駆動するか又は方法を実行する際に生成するクラスレートが周囲の壁面に付着すると、当該装置の駆動又は当該方法の実行が阻害され、当該目的を達成できない場合があるため、クラスレートの壁面への付着を防止する手法が種々検討されている。
【0003】
例えば、壁面に被膜を形成してクラスレートの付着を防止する手法(第1の手法;特許文献1)、分散媒体を壁面に流下させることによりクラスレートの付着を防止する手法(第2の手法;特許文献2)、水和物が分散した液体を流送ポンプにより圧送し、付勢された液体の流れの力により付着した水和物の一部を除去する手法(第3の手法;特許文献3)、壁面に沿って且つ接触させつつ掻取部材を移動させて付着した水和物を除去する手法(第4の手法;特許文献4)、及び壁面に沿って且つ接触させることなく掻取部材を移動させて付着した水和物の一部を除去する手法(第5の手法;特許文献5)、などの手法が検討されている。これらはいずれも、多かれ少なかれ、クラスレートの壁面への付着を予防する手法として捉えることができる。
【0004】
一方、クラスレートを生成する薬剤を含む第1の液体(例えば、水和物のゲスト物質を溶質とする水溶液)と、第1の液体に実質的に溶解しない第2の液体(例えば、疎水性の液体)との直接接触による熱交換を通じて、第1の液体からクラスレートを生成させる技術が知られている(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−111289号公報
【特許文献2】特開2004−196887号公報
【特許文献3】特開2009−068826号公報
【特許文献4】特開2000−146379号公報
【特許文献5】特開2000−234769号公報
【特許文献6】特開2010−230228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、クラスレートの壁面への付着を予防する手法として捉える場合、第1の手法には、被膜の性能や効果が長持ちしないという課題がある。また、第2の手法には、分散液体を流下させるための機構が大掛かりになるという課題がある。
【0007】
更に、クラスレートを生成する薬剤を含む液体を熱交換器の伝熱面との接触を通じて冷却し、その液体中に水和物を生成させる場合、そのようにして生成する水和物は、往々にして周囲の壁面に強く付着し、条件によっては氷並みに強固に壁面に付着する。そのため、第3の手法には、付着した水和物の成長を抑制するために比較的大型の流送ポンプが必要になるという課題がある。
【0008】
更にまた、第4の手法及び第5の手法は、壁面に既に付着している水和物の少なくとも一部を機械的に掻き取ることを前提にしているので、掻取部材を打撃手段や切削手段のような特殊構造にする工夫が必要になったり、掻取部材を大きなトルクで移動させるための駆動装置が必要になるという課題がある。加えて、壁面に既に付着している水和物を掻取部材により除去する場合、その除去の際に与える圧力により、掻き取られずに残留する水和物が壁面にかえって強固に付着し、除去し難くなるという問題もある。
【0009】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、クラスレートの壁面への付着を抑制する手法であって、第1の液体と第2の液体との直接接触による熱交換を通じてクラスレートを生成させる場合に適した比較的簡便なクラスレートの付着予防方法を提供すること及びクラスレートの付着予防装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の第1の形態は、クラスレートを生成する薬剤を含む第1の液体と該第1の液体に実質的に溶解しない第2の液体との混合物を収容する容器の内壁面に、前記第1の液体と前記第2の液体との直接接触による熱交換を通じて生成する前記クラスレートが付着することを予防する、クラスレートの付着予防方法であって、移動部材を前記容器の内壁面に沿って且つ接触することなく移動することにより、前記第1の液体の乱流を発生させる工程を具備することを特徴とするクラスレートの付着予防方法を提供する。
【0011】
本発明の第2の形態は、クラスレートを生成する薬剤を含む第1の液体と該第1の液体に実質的に溶解しない第2の液体との混合物を収容する容器を具備し、前記第1の液体と前記第2の液体との直接接触による熱交換を通じて生成する前記クラスレートが前記容器の内壁面に付着することを予防するクラスレートの付着予防装置であって、該容器の内壁面に沿って且つ接触することなく移動する移動部材を備え、前記移動部材の移動により発生した前記第1の液体の乱流により、前記クラスレートの前記容器の内壁面への付着を予防することを特徴とするクラスレートの付着予防装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
前述したように、クラスレートを生成する薬剤を含む液体を熱交換器の伝熱面との接触を通じて冷却し、その液体中に水和物を生成させる場合、生成する水和物は、往々にして周囲の壁面に強く付着し、条件によっては氷並みに強固に壁面に付着する。
【0013】
一方、クラスレートを生成する薬剤を含む第1の液体と第1の液体に実質的に溶解しない第2の液体との直接接触による熱交換を通じてクラスレートを生成させる場合、生成したクラスレートは壁面に付着し難いか又は付着しても除去し易いという特徴がある。これはおそらく、第2の液体が、壁面とクラスレートとの間に介在又は浸入するので、クラスレートの壁面への付着力が低下すること、第1の液体の乱流が壁面に付着したクラスレートの当該壁面からの剥離を促進すること、第1の液体の乱流がクラスレートの壁面への接近又は再接近を妨げることなどが原因であると考えられる。それ故、移動部材の移動により壁面との間又はその下流若しくは周囲において第1の液体の乱流を発生させ、その乱流により、クラスレートが当該壁面に近接すること又は付着することを防止又は抑制することができる。
【0014】
本発明は、この点に着眼したものであり、前述の第1乃至第5の手法がそれぞれ抱える課題を伴うことなく当該クラスレートの壁面への付着予防を実現するものである。
【0015】
即ち、本発明によれば、容器の内壁面に沿って且つ接触することなく移動する部材(移動部材)により内壁面との間又はその下流若しくは周囲において第1の液体の乱流を発生させ、その乱流により、第1の液体と第2の液体との直接接触による熱交換を通じて生成するクラスレートが容器の内壁面に近接すること又は付着することを防止又は抑制することができ、従って当該クラスレートの内壁面への付着を予防することができる。
【0016】
クラスレートの容器の内壁面への付着予防は、容器内で第1の液体と第2の液体とを直接接触させてクラスレートを製造する場合や、互いに直接接触した第1の液体と第2の液体とを容器内で分離する場合において、その製造や分離を効率的に行うために重要であり、クラスレートの容器の内壁面における成長の予防にも直結することから、その製造や分離を長時間にわたり又は連続的に行うときに、特に重要である。
【0017】
本発明は、第1の液体と第2の液体との直接接触によるクラスレートの効率的な製造や互いに直接接触した第1の液体と第2の液体との効率的な分離に寄与するものであり、そのような製造や分離を長時間にわたり又は連続的に行うことを可能にするものである。
【0018】
なお、本発明及び後述の実施の形態において、
(1)第1の液体と第1の液体に実質的に溶解しない第2の液体との混合物は、クラスレートを含む混合物であってもよい。
【0019】
(2)第1の液体の乱流は、レイノルズ数により規定される乱流(レイノルズ数の増加に伴い層流から転じる乱流)を含むが、これに限定されず、クラスレートが容器の内壁面に近接すること又は付着することを防止又は抑制する作用を伴う流れである限り、第1の液体の層流以外の流れを広く含むものとする。
【0020】
(3)移動部材は、その移動により第1の液体の乱流を発生させ、当該乱流によりクラスレートの容器の内壁面への付着を予防する作用をもたらすものであるので、容器の胴回りの内壁面に沿って且つ接触することなく移動する部分を備えていれば足り、その他の部分の一部又は全部が内壁面に接触して移動する部材であってもよい。
【0021】
(4)第1の液体の乱流は、第2の液体の乱流、第1の液体と第2の液体との混合物の乱流、第1の液体又は第2の液体とクラスレートとの混合物の乱流並びに第1の液体と第2の液体とクラスレートとの混合物の乱流のうち少なくとも一つを含むものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るクラスレートの付着予防方法の概念説明図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係るクラスレートの付着予防装置の全体構成を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。その際、各図面において同じ部分又は相当する若しくは共通する部分には同じ符号を付し、その説明を省略する場合がある。なお、本発明は、図面に記載された実施の形態に限定されない。
【0024】
[実施形態1]
本発明の第1の実施形態に係るクラスレートの付着予防方法につき、図1を参照して説明する。この方法は、クラスレートを生成する薬剤を含む第1の液体と第1の液体に実質的に溶解しない第2の液体との混合物Mを収容する容器の内壁面1に、第1の液体と第2の液体との直接接触による熱交換を通じて生成するクラスレート4が付着することを予防する方法である。
【0025】
このクラスレートの付着予防方法では、移動部材2を、容器の内壁面1に沿って且つ接触させることなく、移動方向Dに移動することにより、内壁面1との間又はその下流若しくは周囲において、第1の液体の乱流3を生成させる。
【0026】
第1の液体と第2の液体との直接接触による熱交換を通じてクラスレート4を生成させる場合、生成したクラスレート4は内壁面1に付着し難いか又は付着しても除去し易い。これはおそらく、第2の液体が、内壁面1とクラスレート4との間に介在又は浸入するために、クラスレート4の内壁面1への付着力が低下すること、第1の液体の乱流3が内壁面1に付着したクラスレート4の当該壁面1からの剥離を促進すること、第1の液体の乱流3がクラスレート4の内壁面1への接近又は再接近を妨げることなどが原因であると考えられる。
【0027】
それ故、上記方法によれば、移動部材2を、容器の内壁面1に沿って且つ接触することなく移動させることにより、内壁面1との間又はその下流若しくは周囲において第1の液体の乱流を発生させ、この乱流3により、第1の液体と第2の液体との直接接触による熱交換を通じて生成するクラスレート4が容器の内壁面1に近接すること又は付着することを防止又は抑制することができる。その結果、上述した第1乃至第5の手法がそれぞれ抱える課題を伴うことなく、当該クラスレート4の内壁面1への付着を予防することができる。
【0028】
このため、上記の方法によれば、第1の液体と第2の液体との直接接触によるクラスレートの効率的な製造や、互いに直接接触した第1の液体と第2の液体との分離を効率的に行うことができ、またそのような製造や分離を長時間にわたり又は連続的に行うことができる。
【0029】
[実施形態2]
本発明の第2の実施形態に係るクラスレートの付着予防装置Aについて、図2を参照して説明する。この付着予防装置Aは、クラスレートを生成する薬剤を含む第1の液体と第1の液体に実質的に溶解しない第2の液体との混合物Mを収容する円筒形の容器Cを備え、第1の液体と第2の液体との直接接触による熱交換を通じて生成するクラスレート4が容器Cの内壁面1に付着することを予防するクラスレート4の付着予防装置である。
【0030】
この付着予防装置Aは、付着予防手段Sを備えており、容器Cは、必要に応じて、第1の液体、第2の液体又は混合物Mの容器Cへの導入部や容器Cからの排出部(いずれも図示せず)を備えている。
【0031】
付着予防手段Sは、容器Cの上部に取り付けられた駆動装置Rにより回転方向D*の方向に回転する回転軸部材21と、回転軸部材21に支持部材23,24,25を介して設置され、回転軸部材21とともに回転する移動部材20を備えている。また、付着予防手段Sは、更に必要に応じて、回転軸部材21を容器Cの底面において回転可能に支承して、回転軸部材21の回転位置を維持する回転支承部22を備えている。図2に示す付着予防手段Sでは、支持部材23,24,25が容器Cの上部、中間部、下部に位置するように設置される。
【0032】
移動部材20は、容器Cの胴回りの内壁面1に沿って且つ接触することなく移動する部分を備える部材であり、その移動により第1の液体の乱流3を発生させ、当該乱流3によりクラスレート4の容器Cの内壁面1への付着を予防する。この意味から、移動部材20は、容器Cの胴回りの内壁面1に沿って且つ接触することなく移動する部分においてその移動により第1の液体の乱流3を発生させ、当該乱流3によりクラスレート4の容器Cの内壁面1への付着を予防する作用をもたらすものであれば、いかなる材質、形状、個数、配置などであってもよい。
【0033】
移動部材20の典型例は、金属、合成樹脂などからなる棒状、紐状又は線状の部材であり、少なくとも二個以上あること、そして当該二個以上の移動部材2が回転軸部材21に対して回転対称の位置関係になるように配置していることが望ましい。その一方で、移動部材20は、混合物Mの中を移動するものであり、故に混合物Mからの抵抗による駆動装置Rへの負荷が増えないようにする必要上、その個数は少ない方が望ましい。それ故、最も好ましい移動部材20は、より軽量な素材により構成され、回転軸部材21に対して回転対称の位置関係になるように配置している一対(従って二個)の部材である。
【0034】
本実施形態における移動部材は、その移動により第1の液体の乱流3を発生させ、当該乱流によりクラスレート4の容器の内壁面への付着を予防する作用をもたらすものであるので、容器の胴回りの内壁面に沿って且つ接触することなく移動する部分を備えていれば足り、その他の部分の一部又は全部が内壁面に接触して移動する部材であってもよい。この意味から、移動部材20は、回転軸部材21に設置されていれば足り、支持部材23、24,25のうち、一つ又は二つは必須とはいえない。例えば、以下の4つの例が挙げられる。
【0035】
(a)一つの支持部材23又は二つの支持部材23,24のみにより移動部材20が回転軸部材21に設置されている場合、移動部材20の下端は自由端になる。すると、回転軸部材21周りに回転する移動部材20の下端側の部分が遠心力の作用や混合物Mから受ける反力により撓んだり変形したり、容器Cの内壁面1に常時又は時々接触することがある。
【0036】
(b)一つの支持部材25又は二つの支持部材24,25のみにより移動部材20が回転軸部材21に設置されている場合も同様であり、移動部材20の上端が自由端になるので、回転軸部材21周りに回転する移動部材20の上端側の部分が容器Cの内壁面1に常時又は時々接触することがある。
【0037】
(c)支持部材24のみにより移動部材2が回転軸部材21に設置されている場合も同様であり、移動部材20の上端及び下端が自由端になるので、回転軸部材21周りに回転する移動部材20の上端側の部分及び下端側の部分が容器Cの内壁面1に常時又は時々接触することがある。
【0038】
(d)上段及び下段の支持部材23,25のみにより移動部材20が回転軸部材21に設置されている場合、つまり移動部材20が上下両端支持状態にある場合には、中央部分が遠心力の作用や混合物Mから受ける反力により撓んだり変形したり、容器Cの内壁面1に常時又は時々接触することがある。
【0039】
しかし、これら(a)乃至(d)の例においても、移動部材20のうち三つの支持部材23,24,25のうちいずれか少なくとも一つ又は二つのみにより回転軸部材21により支持されている部分及びその近傍は、容器Cの胴回りの内壁面1に沿って且つ接触することなく移動する。それ故、上記(a)乃至(d)の例における移動部材20は、本実施形態における移動部材に該当し得る。
【0040】
円筒形の容器Cの典型例は、第1の液体と第2の液体とが導入されて混合される容器、及び第1の液体と第2の液体とが混合された後収容される容器であり、前者の容器の典型例は、第1の液体と第2の液体との直接接触によりクラスレート4を製造するための容器であり、後者の容器の典型例は、互いに直接接触して混合した第1の液体と第2の液体とを分離するための容器(分離槽)である。
【0041】
容器Cの内壁面側の直径が100mm以上の場合、上記のクラスレート4の付着予防装置Aにおける好ましい態様は、移動部材20が回転していないときの移動部材20と内壁面1との離隔距離が5〜10mm程度であり、移動部材20は、回転軸部材21に対して回転対称の位置関係になるように配置している一対(従って二個)の、ステンレス製ワイヤー、塩化ビニル製撚り紐、直径3〜5mm程度のゴム製コードなどであり、回転軸部材21の回転速度は20〜50rpm程度のものである。
【0042】
上記のクラスレート4の付着予防装置Aにおいて、駆動装置Rにより回転軸部材21が回転すると、それに支持されている移動部材20が容器Cの内壁面1に沿って且つ接触することなく移動し、内壁面1との間又はその下流若しくは周囲において第1の液体の乱流3が発生する。
【0043】
既述のとおり、第1の液体と第2の液体との直接接触による熱交換を通じてクラスレート4を生成させる場合、生成したクラスレート4は内壁面1に付着し難いか又は付着しても除去し易い。それ故、当該第1の液体の乱流3により、第1の液体と第2の液体との直接接触による熱交換を通じて生成するクラスレート4が容器の内壁面1に近接すること又は付着することを防止又は抑制することができ、従って前出の第1乃至第5の手法がそれぞれ抱える課題を伴うことなく当該クラスレート4の内壁面1への付着を予防することができる。
【0044】
このため、上記の付着予防装置Aによれば、第1の液体と第2の液体との直接接触によるクラスレート4の効率的な製造や互いに直接接触した第1の液体と第2の液体との分離を効率的に行うことができ、またそのような製造や分離を長時間にわたり又は連続的に行うことができる。
【0045】
また、第1の液体と第2の液体との直接接触による熱交換を通じてクラスレート4を生成させる場合、生成したクラスレート4は内壁面1に付着し難いか又は付着しても除去し易く、第1の液体の乱流3によりその付着を予防することができる。そして、上記のクラスレートの付着予防装置Aにおいては、移動部材20の移動により容易に第1の液体の乱流3を発生させることができ、しかも、移動部材20の材質、形状、個数、配置などを容器C内において混合物Mからの抵抗による駆動装置Rへの負荷が増えないように選択することができる。それ故、本実施形態に係る付着予防装置Aによれば、従来のように壁面に既に付着している水和物の少なくとも一部を機械的に掻き取るための掻取部材を打撃手段や切削手段のような特殊構造にする必要がなく、掻取部材を大きなトルクで移動させるための駆動装置も不要になるという利点が得られる。
【符号の説明】
【0046】
1…内壁面、2,20…移動部材、3…第1の液体の乱流、4…クラスレート、A…付着予防装置、C…容器、D…移動方向、D*…回転方向、M…混合物、R…駆動装置、S…付着予防手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラスレートを生成する薬剤を含む第1の液体と該第1の液体に実質的に溶解しない第2の液体との混合物を収容する容器の内壁面に、前記第1の液体と前記第2の液体との直接接触による熱交換を通じて生成する前記クラスレートが付着することを予防する、クラスレートの付着予防方法であって、
移動部材を前記容器の内壁面に沿って且つ接触することなく移動することにより、前記第1の液体の乱流を発生させる工程を具備することを特徴とするクラスレートの付着予防方法。
【請求項2】
クラスレートを生成する薬剤を含む第1の液体と該第1の液体に実質的に溶解しない第2の液体との混合物を収容する容器を具備し、前記第1の液体と前記第2の液体との直接接触による熱交換を通じて生成する前記クラスレートが前記容器の内壁面に付着することを予防するクラスレートの付着予防装置であって、
該容器の内壁面に沿って且つ接触することなく移動する移動部材を備え、前記移動部材の移動により発生した前記第1の液体の乱流により、前記クラスレートの前記容器の内壁面への付着を予防することを特徴とするクラスレートの付着予防装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−22485(P2013−22485A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157080(P2011−157080)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】