説明

クレンジングとして好適な皮膚外用剤

【課題】 皮膚バリア機能に影響を与えにくい、脂質相溶性に優れる皮膚外用剤の基材を提供する。
【解決手段】 1)炭酸ジエステルと、2)ヒドロキシアルキルウレアとを、皮膚外用剤に含有させる。前記炭酸ジエステルは、炭酸ジカプリルが好ましく、前記ヒドロキシアルキルウレアにおけるヒドロキシアルキル基は、炭素数1〜4のものが好ましく、前記炭酸ジエステルとヒドロキシアルキルウレアの質量比は、20:1〜5:1であることが好ましい。更に、ビス(N−ラウロイルグルタミン酸)リジンを含有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤に関し、更に詳細には、クレンジング化粧料として好適な皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
日本人の食生活において、欧米化が進行し、タンパク質や脂質の摂取が増えてきて、肥満などの生活習慣病の増加が社会問題となっている。このような食生活の変化は、健康問題のみでなく、以前はあまり問題となっていなかった皮膚状態においても、脂性の人が急増していることに一端をかいま見るように大きな影響を与えており、かかる脂質の過剰分泌が、ニキビ等の肌トラブルの原因になっているとも言われている。この様な肌トラブルを防止するために優れた脂質除去作用を有するクレンジング化粧料の開発は、化粧品業界の重要な課題となっている。
【0003】
更に、クレンジング化粧料に於いては、メークアップ化粧料技術の進歩により、化粧崩れしにくい化粧料が多種開発され、上市されたことを背景に、従前よりも、よりクレンジング効果の高いものの開発が望まれるようになっており、この意味においても前記脂質除去性に優れるクレンジング化粧料の開発は意義深い位置づけになっている。取り分け、コア・シェル型アクリル樹脂エマルションを含有するものは、専用の溶剤タイプの除去用の化粧料を必要としているために、この様な剤形のメークアップ化粧料を除去できるクレンジング料の開発は強く望まれていた。
【0004】
目を皮膚外用剤に広げるならば、例えば、皮膚外用医薬などの分野においては、開発された種々の有効成分が、その担体に対する溶解度の低さから皮膚外用剤形への応用を断念している状況が存する。この為、固溶体技術を利用してその溶解性の改善を試みている(例えば、特許文献1を参照)が、自ずとその限度が存している。この為、溶解状態で有効成分を包含する作用に優れる皮膚外用剤用の担体の開発も望まれている。
【0005】
脂質溶解性に優れる皮膚外用剤用の素材としては、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジカプリルなどの炭酸ジエステルが知られている(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5を参照)が、これらの成分は長期間連用すると、皮膚の脂質が除去され、皮膚バリア機能が低下する場合が存した。このことから、皮膚バリア機能に影響を与えにくい、脂質相溶性に優れる皮膚外用剤の基材の開発が望まれている。
【0006】
他方、ヒドロキシアルキル尿素の内、ヒドロキシエチル尿素については、毛髪洗浄料において保湿効果を奏することが知られている(例えば、特許文献6を参照)が、このものと炭酸ジエステルを組み合わせて皮膚外用剤に含有せしめる技術は全く知られていない。
【0007】
【特許文献1】WO2004/111067
【特許文献2】特開2007−119402号公報
【特許文献3】特開2006−298866号公報
【特許文献4】特開2006−298865号公報
【特許文献5】特開2000−344657号公報
【特許文献6】特開2006−265246号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、皮膚バリア機能に影響を与えにくい、脂質相溶性に優れる皮膚外用剤の基材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、皮膚バリア機能に影響を与えにくい、脂質相溶性に優れる皮膚外用剤の基材を求めて鋭意研究努力を重ねた結果、1)炭酸ジエステルと、2)ヒドロキシアルキルウレアとを含有する皮膚外用剤がその様な特性を備えていることを見出し、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示すとおりである。
<1>1)炭酸ジエステルと、2)ヒドロキシアルキルウレアとを含有することを特徴とする、皮膚外用剤。
<2>前記炭酸ジエステルは、炭酸ジカプリルであることを特徴とする、<1>に記載の皮膚外用剤。
<3>前記ヒドロキシアルキルウレアにおけるヒドロキシアルキル基は、炭素数1〜4のものであることを特徴とする、<1>又は<2>に記載の皮膚外用剤。
<4>前記炭酸ジエステルとヒドロキシアルキルウレアの質量比は、20:1〜5:1であることを特徴とする、<1>〜<3>何れか1項に記載の皮膚外用剤。
<5>更に、ビス(N−ラウロイルグルタミン酸)リジンを含有することを特徴とする、<1>〜<4>何れか1項に記載の皮膚外用剤。
<6>前記ビス(N−ラウロイルグルタミン酸)リジンは、ベシクルの形態で含有されていることを特徴とする、<5>に記載の皮膚外用剤。
<7>クレンジング用の化粧料であることを特徴とする、<1>〜<6>何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、皮膚バリア機能に影響を与えにくい、脂質相溶性に優れる皮膚外用剤の基材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(1)本発明の皮膚外用剤の必須成分である炭酸ジエステル
本発明の皮膚外用剤は、炭酸ジエステル を含有していることを特徴としている。本発明の炭酸ジエステル に使用されるアルコールとしては、例えば、イソプロピルアルコール、ヘキシルアルコール、カプリリルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコールなどの1価のアルコールや、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセリンなどの多価アルコールが好ましく例示でき、特に1価のアルコールであって、炭素数3〜10のアルコールが好ましく例示できる。これらの内、炭素数8のアルコールからなる炭酸ジカプリリルはコグニスジャパン(株)より、セチオールCCとして市販されており、このものを購入して使用することができ、好ましい。その他環状構造の多価アルコールとのエステルである炭酸エチレン、炭酸プロピレンも使用可能である。このような、炭素数の少ない炭酸ジエステル は、油剤としての性質に加えて、溶剤としての性質も有しており、皮膚上に分泌された固形脂や疎水性の高い化粧皮膜などを溶解する作用にも優れている。加えて、担体相溶性の低い有効成分、例えば、テルビナフィン、ブテナフィン、ミコナゾールなどの抗真菌剤、ニフェジピンなどの循環器用薬、オレアノール酸、ウルソール酸などのトリテルペン酸などを相溶する作用にも優れる。この様な作用を発現するためには、前記炭酸ジエステルは、総量で、皮膚外用剤全量に対して、1〜30質量%であることが好ましく、2〜20質量%であることがより好ましい。
【0012】
(2)本発明の皮膚外用剤の必須成分であるヒドロキシアルキルウレア
本発明の皮膚外用剤は、ヒドロキシアルキルウレアを必須成分として含有することを特徴とする。前記ヒドロキシアルキルウレアとしては、ヒドロキシエチルウレア、ヒドロキシプロピルウレア、ヒドキシブチルウレアなどが好ましく例示でき、これらは、アルカリ触媒の存在下、尿素と対応するアルキレンオキシドを反応させることにより得ることが出来る。これらの内で、特に好ましいものは、ヒドロキシエチルウレアであり、このものは、市販品が存するのでかかる市販品を購入して利用することが出来る。市販としては、日本エヌエスシー株式会社より販売されている「HYDROVANCE(登録商標)」(ヒドロキシエチルウレア)が特に好ましく例示できる。かかる成分は、前記炭酸ジエステルによる脂質除去が行われた後の、脂質の含有量の低下した皮膚に水分保持性を付与し、皮膚バリア機能を維持する作用を有する。取り分け、皮膚バリア機能の低下した肌に作用して、かかる肌の皮膚バリア機能、取り分け、経表皮水分蒸散を抑制し、皮膚バリア機能を向上せしめる作用を有する。この様な効果を奏するためには、本発明の皮膚外用剤に於いては、ヒドロキシアルキルウレアを皮膚外用剤全量に対して、総量で0.05〜5質量%、より好ましくは0.1〜1質量%含有させることが好ましい。又、かかるヒドロキシアルキルウレアの含有量は、前記炭酸ジエステルの総含有量に対して、少なくとも1質量%以上、好ましくは5質量%以上であることが好ましい。これより少なすぎると、脂質量低下による皮膚バリア機能の低下を抑制することが困難な場合が存し、多すぎても効果が頭打ちになるためである。
【0013】
(3)本発明の皮膚外用剤
本発明の皮膚外用剤は、前記必須成分を含有することを特徴とし、クレンジング用の化粧料、難溶性有効(薬効)成分を含有する皮膚外用医薬に好適に適用される。勿論、クレンジング化粧料以外の化粧料、易溶性の薬剤を含有する皮膚外用医薬にも好適に適用することが出来る。これらの剤形は、前記必須成分が含有できるものであれば特段の限定はされないが、炭酸ジエステルが油溶性の性格が強く、ヒドロキシアルキルウレアが水溶性の性格が強いことから、乳化剤形で使用することが好適に例示できる。
【0014】
本発明の皮膚外用剤においては、かかる成分以外に、通常皮膚外用剤で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ビス(N−ラウロイルグルタミン酸)リジン等のアシル(ポリ)アミノ酸及び/又はその塩;ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等の多価アルコール類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、;表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類;レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤、;桂皮酸系紫外線吸収剤、;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類;ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類;α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等;フェノキシエタノール等の抗菌剤などが好ましく例示できる。
【0015】
これらの任意成分の内、特に好ましいものは、ビス(N−ラウロイルグルタミン酸)リジン等のアシル(ポリ)アミノ酸及び/又はその塩である。かかる成分のアシル基としては、炭素数10〜20の直鎖、分岐乃至は環状構造を有するアシル基が好ましく、具体的には、カプリル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、イソステアロイル基、オレオイル基、ベヘノイル基などが好適に例示できる。(ポリ)アミノ酸残基としては、ジグルタミルリジン残基が特に好ましい。かかるアシル(ポリ)アミノ酸はアミノ酸にアシルクロリドなどのアシル化剤を反応させ、しかる後に、所望によりDCC等のペプチド合成試薬を用いて縮合することにより製造することが出来る。かかるアシル(ポリ)アミノ酸には既に市販品が存し、かかる市販品を購入し利用することも出来る。好ましい市販品としては、例えば、旭化成ケミカルズから販売されている「ペリセア(登録商標)L−30」(ビス(N−ラウロイルグルタミル)リジン)等が存する。かかる成分は皮膚バリア機能を補完するとともに、有効成分を内包し、生体内へと配向させる作用を有する。この様な作用を発揮するためには、かかる成分は0.001〜1質量%含有させることが好ましく、0.005〜0.5質量%含有することが特に好ましい。
【0016】
かかる成分、特にビス(N−ラウロイルグルタミル)リジンにおいては、双子型で、両親媒性であるため、フィトステロール、セラミドなどの他の成分とともにベシクルに加工して用いることが好ましい。この様な形態を取ることによりフィトステロールなどの有効成分の経皮吸収を促進することが出来る。かかるベシクルは、油相成分と水相成分とを80℃混合し、マイクロフルイダイザー処理などを行うことにより得ることが出来る。この場合、ビス(N−ラウロイルグルタミル)リジンとフィトステロール、セラミドの好ましい量比は、それぞれセラミド、或いは、フィトステロール1質量部に対して、ビス(N−ラウロイルグルタミル)リジン1〜5質量部、より好ましくは2〜4質量部であることである。セラミドとフィトステロールとをともに含有する形態が特に好ましい。ベシクルの壁を補強するために補助的に非イオン界面活性剤を含有させることも出来、この様な補強効果のある非イオン界面活性剤としては、例えば、ジグリセリンモノ脂肪酸エステル、トリグリセリンジ脂肪酸エステル、ペンタグリセリンテトラ脂肪酸エステルなどが好適に例示でき、これらの脂肪酸残基としては、オレイン酸、イソステアリン酸などの不飽和脂肪酸残基乃至は分岐脂肪酸残基が好ましい。かかる補助的な非イオン界面活性剤の含有量は、総量でビス(N−ラウロイルグルタミル)リジンと等量乃至は3倍質量であることが好ましい。この様なベシクルの内水相には種々の有効成分を含有させることが出来、ベシクルに内包させることにより、経皮吸収性の向上と内包させた有効成分の安定性の向上が確保できる。この様な有効成分としては、セイヨウノコギリソウエキス、オトギリソウエキス、オウレンエキス、ジュエキスなどの生薬エキス、ポリメタクリロイルリジン、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・アクリル酸ブチル共重合体、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・アクリル酸ステアリル共重合体などが好適に例示できる。この様な形態を取ることにより、経皮吸収性を高めることが出来る。又、ベシクルの外殻に前記ビス(N−ラウロイルグルタミル)リジンを含有せしめることにより、前記必須成分である炭酸ジエステルの溶媒効果でベシクルの外殻が崩壊するのを防ぐことも出来る。
【0017】
本発明の皮膚外用剤は、これらの成分を常法に従って処理することにより製造することが出来る。斯くして得られた本発明の皮膚外用剤は、皮膚バリア機能に影響あまり与えずに脂質除去性に優れる。この為、皮膚バリア機能が低下し、刺激感を感じやすい人のためのクレンジング化粧料として好適に使用できる。
【0018】
以下に、実施例を挙げて更に詳細に本発明について説明を加える。
【実施例1】
【0019】
以下に示す処方に従って、本発明の洗浄用の皮膚外用剤である、クレンジング化粧料を作成した。即ち、イ、ロの成分を80℃に加温し、イに徐々にロを加え粗ベシクルを作成し、これをエクストルーダーで処理し、ニオソーム分散液1を得た。ベシクルであることは偏光顕微鏡により、脂質二重膜構造の存在から確認した。別途、ハ、ニをそれぞれ80℃に加温し、ハ、ニ、ホを80℃に温度調整した後、ハに攪拌下ニの成分を加えて乳化し、更にホを加え中和し、攪拌冷却を行った。温度が50℃になったところでへのベシクル分散液1を加え、30℃まで攪拌冷却し、クレンジング化粧料1を得た。同様に処置して、クレンジング化粧料1の「炭酸ジカプリル」を2−エチルヘキサン酸セチルエステルに置換した比較例1、「HYDROVANCE」を水に置換した比較例2、「炭酸ジカプリル」を2−エチルヘキサン酸セチルエステルに、且つ、「HYDROVANCE」を水に置換した比較例3も同様に作成した。
【0020】
【表1】

【0021】
<試験例1>
クレンジング化粧料1及び比較例1〜3について、メークアップ除去効果を比較検討した。即ち、前腕内側部に2cm×4cmの部位を5個作成し、それぞれの部位に被験メークアップ化粧料(ファンデーション;表2)を40mg投与した。1部位は無投与のコントロールとした。メークアップ化粧料を投与したそれぞれの部位を検体40mgで擦過、混和、拭き取り、洗い流し処置を行った。コントロール部位は無処置とした。処置後10分静置し、各部位の標準白色板に対する色差(ΔE)を計測した。(コニカミノルタ社製「色彩色差計CR400」)この色差より、コントロール部位との色差を計算した。結果を表3に示す。これより、本発明の皮膚外用剤であるクレンジング化粧料が優れたクレンジング作用を有していることがわかる。(N=5)
【0022】
【表2】

【0023】
【表3】

【0024】
<試験例2>
クレンジング化粧料1及び比較例1〜3について、経表皮水分蒸散(TEWL)に対する影響を調べた。即ち、試験例1の計測の後にテヴァメータ(インテグラル社製)を用いてTEWLを計測した。結果を表4に示す。これより、本発明の皮膚外用剤である、クレンジング化粧料1は優れたTEWL抑制効果があることがわかる。
【0025】
【表4】

【実施例2】
【0026】
クレンジング化粧料1と同様にクレンジング化粧料2を下記の処方に従って作成し、試験例1の手技で評価したところ、0.46であった。又、この時のTEWLは10.3でコントロールのTEWLは9.7であった。
【0027】
【表5】

【実施例3】
【0028】
実施例1と同様に下記処方に従って、本発明のクレンジング化粧料3を製造した。試験例1の手技で評価したところ、0.42であった。又、この時のTEWLは17.8でコントロールのTEWLは14.3であった。ベシクル形態でビス(N−ラウロイルグルタミル)リジン等を含有することの方が好ましいことがわかる。
【0029】
【表6】

【実施例4】
【0030】
実施例1と同様に下記処方に従って、本発明のクレンジング化粧料4を製造した。試験例1の手技で評価したところ、0.56であった。又、この時のTEWLは16.2でコントロールのTEWLは12.1であった。ベシクルにはセラミドとフィトステロールとがともに含有される方が好ましいことがわかる。
【0031】
【表7】

【実施例5】
【0032】
実施例1と同様に操作して、本発明の皮膚外用剤である、抗真菌医薬組成物5を得た。このものは−10℃に3ヶ月保存しても結晶の析出は存しなかった。テルビナフィンは溶解性が低いため、通常は2質量%程度に配合量が抑えられている。
【0033】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、皮膚外用医薬や化粧料に応用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)炭酸ジエステルと、2)ヒドロキシアルキルウレアとを含有することを特徴とする、皮膚外用剤。
【請求項2】
前記炭酸ジエステルは、炭酸ジカプリルであることを特徴とする、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
前記ヒドロキシアルキルウレアにおけるヒドロキシアルキル基は、炭素数1〜4のものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
前記炭酸ジエステルとヒドロキシアルキルウレアの質量比は、20:1〜5:1であることを特徴とする、請求項1〜3何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
更に、ビス(N−ラウロイルグルタミン酸)リジンを含有することを特徴とする、請求項1〜4何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
前記ビス(N−ラウロイルグルタミン酸)リジンは、ベシクルの形態で含有されていることを特徴とする、請求項5に記載の皮膚外用剤。
【請求項7】
クレンジング用の化粧料であることを特徴とする、請求項1〜6何れか1項に記載の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2009−256251(P2009−256251A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108236(P2008−108236)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】