説明

グルコマンナンを主成分とする忌避剤用展着液

【課題】野生動物が造林地の植栽木に与える害の防護に対する忌避剤の適用に対し、塗布作業が容易であり、展着持続性、徐放性が高く、忌避効果が持続し、効果の消失後は生分解され消失する、人畜無害で環境に優しい忌避剤用展着液を提供する。
【解決手段】忌避剤の展着成分としてグルコマンナンを使用することで、常温でゾル状態であるため塗布作業が容易であり、塗布時は濡れによる密着性・接着性が良好で、ゲル化を経て乾燥後は強固な固着性を有し、長期間展着持続可能で、グルコマンナンの吸着性により、忌避成分等の徐放性が高く、効果の持続性があり、さらに生分解性成分で組成されているため効果の消失後は生分解され消失する、人畜無害で環境に優しい展着剤を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、野生動物が造林地の植栽木に与える害の防護に対する忌避剤の適用に対し、忌避成分の徐放性が高く、効果が持続し、効果の消失後は生分解により消失する、人畜無害で環境に優しく、塗布方法も簡便な、グルコマンナンを展着成分とする忌避剤用展着液に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、鹿や猪といった野生動物が造林地の植栽木に与える害に対して、現場では進入防止柵の設置、音や光による威嚇、樹木一本一本に金網をかぶせて被害を防ぐ、忌避剤を塗布する等様々な対策がとられている。その中で、忌避剤を使った被害防除は比較的安価でしかも処理方法が簡易であるが、従来の忌避剤は持続効果が十分ではないという欠点を持っていた。これを改善する為、展着剤を添加、混合して使用する方法が知られている。例えば、ポリオキシエチレン誘導体等の非イオン界面活性剤、スルホン酸塩等の陰イオン界面活性剤など界面活性剤を添加する方法、カゼイン石灰展着剤、パラフィン展着剤などがある。しかしこれらは、農作物に一時的に薬効を持続させる目的で用いられており、野生動物による食害のように長期間忌避効果を必要とされる場合、その展着性は不十分である。また、アクリル樹脂や酢酸ビニル等の合成樹脂エマルジョンを用いる方法が知られているが、生分解性速度が遅く、環境汚染の問題を引き起こす恐れがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記問題点を解決すべく、「特開平7−252101」では未加硫天然ゴムに有害生物忌避成分を添加した忌避材が提案されており、天然ゴムが紫外線及び微生物分解で徐々に表面が分解されることによる忌避成分の徐放効果という点で優れているが、本発明の適用分野、即ち造林地の植栽木に関しては、塗布作業性に困難性があり、樹木への適用は難しい。その点を改善した特許として、「特開平7−112908」では有効成分として天然ゴムを水または有機溶剤に分散した動物忌避剤が発表されているが、水分散系散布剤として安定的に用いるには界面活性剤を併用しなければ難しいなどの問題点がある。即ち、本発明が解決しようとする課題は、塗布作業が容易、即ち塗布液は液状特に水溶液であり、塗布時は濡れによる密着性、接着性が良好で、塗布後は形状を保持したまま固化して雨水により流出せず、徐放性が高く、効果が持続し、効果の消失後は生分解され消失する、人畜無害で環境に優しい忌避剤用展着液を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、展着成分としてグルコマンナンを使用することで、常温でゾル状態であるため塗布作業が容易であり、塗布時は濡れによる密着性・接着性が良好で、ゲル化を経て乾燥後は強固な固着性を有し、長期間展着持続可能で、グルコマンナンの吸着性により、忌避成分等の徐放性が高く、効果の持続性があり、さらに生分解性成分で組成されているため効果の消失後は生分解され消失する、人畜無害で環境に優しい展着剤を提供することを目的とする。
【0005】
本発明に使用されるグルコマンナンの最も代表的な例としては、コンニャクの根茎由来のコンニャクマンナンが挙げられる。他にも、針葉樹のヘミセルロース画分由来のものや、イリス根茎由来のもの、アロエ葉由来のものなども知られている。
【0006】
我々が主に使用するコンニャクマンナンは、中性のヘテロ多糖類であり、D−グルコースとDマンノースを1:2〜2:5程度の割合で含んでおり、β―1,4結合からなる主鎖を有している。分子量は、一般的には100万〜200万の範囲内であるが、原料の由来によってばらつきがある。
【0007】
コンニャクマンナンは、水に膨潤してゾル化し、アルカリ条件下で脱アセチル化して不可逆的にゲル化する。さらに、ゲル化したコンニャクマンナンを乾燥、固化すると、水を加えても元に戻らない性質を有する。すなわち、グルコマンナンは、ゾル化、ゲル化、固化のプロセスが不可逆的に進行する。
【0008】
従って、木に塗布されゲル化したグルコマンナンは、雨により再びゾル状に戻り、流されるという問題はない。また、ゾルの状態で塗布され付着したグルコマンナンがゲル化を経て乾燥、固化した場合、対象物に対し強固に固着する特性を有する。
【0009】
また、コンニャクマンナン自体は蒟蒻粉の主成分であり、生分解性を有する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の展着液の調整方法としては、所定量の水とコンニャクマンナンをミキサーなどの撹拌手段によって撹拌するという、高分子量の多糖類をゾル化する一般的な手法を用いることができるが、特に限定されるものではない。
具体的には、所定量の水を撹拌しながらコンニャクマンナンを添加し、1〜2時間程度撹拌を継続して膨潤させ、溶液中に均一に分散させる方法が一般的である。
【0011】
なおゾル液のpH管理は重要となり、常に弱アルカリ性の条件下で保存することが好ましい。具体的にはpH7(中性)を超え、pH11以下の範囲内が好ましい。pH7以下の酸性側もしくはpH11以上のアルカリ側にある場合にはゾル液が極めて不安定になるため、pHが常に弱アルカリ性範囲内となるように管理しておく必要がある。
【0012】
ゲル化剤としては、一般的な有機または無機のアルカリ性(塩基性)化合物を用いることができる。例えば有機系のアルカリ性化合物としては、水溶性アミン類が挙げられ、無機系のアルカリ性化合物としては、炭酸水素アンモニウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、リン酸三カリウム、四ホウ酸ナトリウムなどのアルカリ金属塩が挙げられる。
【0013】
また、上記展着液には、コンニャクマンナン及び水以外に、忌避成分を含む。忌避成分については、生分解性を有するものであれば特に限定されるものではない。具体的には、木酢液、竹酢液、カプサイシン、リモネン、辛子又は山葵の辛味成分、桂皮、樟脳、バジル油、シナモン油、クローブ油、ガリック油、ジンジャー油、ミント油、ペパー油、タイム油、セージ油、ワームウッド油、カモミール油、ユーカリ油、ヒソップ油、キャラウェイ油、コリアンダー油、ラベンダー油、レモンバーム油、ショウノウ油、ティトリー油、シトロネラ油、レモングラス油、キャットニップ油、ローズマリー油よりなるハーブ精油群などが例示できる。
【0014】
また、上記展着液には、各種の機能付加剤を含んでいてもよい。この機能付加剤は、具体的には撥水剤、浸透剤、ゾル液の腐敗を防ぐ抗菌剤、防虫などの農業用薬剤等である。
【0015】
ゲル化剤、忌避成分、機能付加剤の添加方法については、コンニャクマンナンを膨潤させる水にあらかじめ添加するか、もしくはコンニャクマンナンを膨潤させた糊と混合すればよい。
【0016】
上記展着液の濃度、粘度は特に限定されるものではなく、塗布方法に合わせ、粘度と濃度を調整する。
【0017】
また、展着液の塗布方法は限定されるものではない。具体的には、スプレーによる噴霧、刷毛塗り等である。
【0018】
【本発明の実施例】
【実施例1】
水1000gを撹拌しながらコンニャクマンナン10g(オハラ製タイプD)を添加し、攪拌、膨潤させてゾル液を作製した。この時のゾル液の粘度は6000cps(B型粘度計、測定速度30rpm、ローターNo4、液温35℃)であった。このゾル液にトウガラシの粉末10gとゲル化剤として水酸化カルシウムを添加・混合し、ゾル液のpHが10になるよう調製した。こうして作製したゾル状の忌避液で、鹿の食害を確認するために楓の幹に該忌避剤を刷毛塗りで塗布したところ、半年を経ても忌避効果の持続性があった。
【実施例2】
水1000gを撹拌しながらコンニャクマンナン13g(オハラ製タイプE)を添加し、攪拌、膨潤させてゾル液を作製した。この時のゾル液の粘度は1500cps(B型粘度計、測定速度30rpm、ローターNo4、液温35℃)であった。このゾル液に抗菌・防虫剤 セントリスSD(株式会社ニッセキ)10gとゲル化剤として水酸化カルシウムを添加・混合し、pHが10になるよう調製した。こうして作製したゾル状の忌避液で、虫の忌避効果を確認するため果樹の幹に該忌避剤をスプレーで噴霧し、塗布テストしたところ、3ヶ月を経ても忌避効果の持続性があった。
【0019】
【発明の効果】
本発明は、展着成分としてグルコマンナンを使用することで、その吸着性により、忌避成分等を徐放し、効果を持続することができる。また、ゲル化を経て乾燥後の強固な固着性により、長期間の展着持続性も高い。塗布方法は粘度調整により限定されず、そのまま使用できるため簡便である。さらに生分解性成分で組成されているため、効果の消失後は生分解され消失する、人畜無害で環境に優しい展着剤を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコマンナンを展着成分としたゾル液のpHが7以上11以下に調整され、生分解性忌避剤を含有することを特徴とする忌避剤用展着液
【請求項2】
グルコマンナンを主成分とする展着液に、機能付加剤を含むことを特徴とする「請求項1」に記載の忌避剤用展着液

【公開番号】特開2004−26746(P2004−26746A)
【公開日】平成16年1月29日(2004.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−187381(P2002−187381)
【出願日】平成14年6月27日(2002.6.27)
【出願人】(301000044)株式会社オハラ (1)
【出願人】(500122385)
【出願人】(502232196)
【Fターム(参考)】