説明

ケーブル収容管補修システム及び方法並びに補修システムにおける分離回転式牽引治具

【課題】所定の管路の保護管内の既設ケーブルを布設した状態で、ライニング材により管路を補修するケーブル収容管補修方法を提供する。
【解決手段】ケーブル収容管補修方法は、ライニング材6で既設ケーブル4を包み込むステップと、チューブを既設ケーブルとライニング材との間に布設するステップと、チューブの流路を加圧して膨らませ、ライニング材を保護管2の内面に当接し、この当接した状態を所定時間維持してライニング材を硬化させるステップと、所定時間を経過後、チューブを取り除くステップとを含み、ライニング材で既設ケーブルを包み込むステップは、ライニング材を固定する回転部材と牽引側を固定する軸部材とを回動可能に連結する構造を有する分離回転式牽引治具によって、ライニング材を牽引して既設ケーブルを包み込むステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部にケーブルが布設されている管路を補修するケーブル布設済みケーブル収容管補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地下に埋設されている管路の鋼管等の保護管の内面を補修するのに、筒状ライニング材が用いられる。筒状ライニング材は、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂或いは常温硬化性樹脂を含浸又は塗布した可撓性のある材料で形成される。このような筒状ライニング材を未硬化の状態で管路の内部に配置し、次に、水圧或いは空気圧等で膨らませて管路の内面に押し付け、この筒状ライニング材内に、高温の温水、蒸気を通し、或いは紫外線を照射することにより、筒状ライニング材の硬化性樹脂を硬化させてライニングする。
【0003】
一方、既に現用のケーブルが管路に布設されているような場合、このケーブルが管路の補修の邪魔になり、保護管からケーブルを取り除くことは、運用中のケーブルの代わりとなる補助的経路の確保を要し、極めて作業効率が悪い。
【0004】
そこで、この問題に対処するために、管路内部にケーブルが布設されている場合であっても、ケーブルが布設されたままの状態で管路を補修することができる技術が開示されている(特許文献1,2参照)。
【0005】
これらの従来技術では、シート状ライニング材からなる未硬化の状態のライニングシートと、気密或いは液密材料で形成された可撓性ある1本のチューブとを用いる。これらの従来技術を、図5〜図8を参照して概説する。図5は、保護管の一方の開口部から他方の開口部に亘って保護管内に、ライニングシートから形成されるライニングシート管とチューブを引き込む工程を示す縦断面図である。図6は、保護管内でケーブルを包みながらライニングシートの両側辺を連結してライニングシート管を形成する工程を示す横断面図である。図7は、保護管内でケーブルを包みながらライニングシートの両側辺を連結してライニングシート管を形成する工程を示す斜視図である。図8は、チューブを高温の温水で膨らませてライニングシート管を保護管の内面に当接させた状態の保護管の断面図である。
【0006】
図5〜図8に示すように、地下1に埋設されている管路の鋼管等の保護管2の内面を補修するのに、保護管2の内径に応じた寸法の幅を有する帯状に形成された未硬化の状態の可撓性あるライニングシート6を巻回して、シートロール7として回転自在に支持するロールスタンド5を用意する。このロールスタンド5は、保護管2の内径に応じた寸法の幅を有する帯状に形成された可撓性あるチューブ19を巻回して回転自在に支持するものとしても利用できる。
【0007】
これらの従来技術において、まず、ライニングシート6によりケーブル4を包み込むために、ファスナー(スライド連結操作体)8等の連結手段9によりライニングシート6の両側辺に設けられた連結子10a,10bを噛み合い連結させながら牽引用ロープ11で牽引する。これにより、保護管2の一方の開口部側(マンホール3a側の挿入口12)にてライニングシートの幅方向の両端を相互に連結して管状形態のライニングシート管15を形成するとともに、他方の開口部(マンホール3b側の引き出し口13)から牽引用ロープ14でライニングシート6を引き込み、保護管2の一方の開口部から他方の開口部に亘ってライニングシート6を配置する。次に、保護管2の一方の開口部から他方の開口部に亘って保護管2内に配置したライニングシート管15内に、チューブ19を挿入して引き込み、該チューブ19を高温の温水で膨らませてライニングシート6を保護管2の内面に当接し、所定時間この状態を維持してライニングシート6を硬化させてライニングシート管15を形成し保護管2の内面に固定する。その後、チューブ19を取り除くようにしている。
【0008】
【特許文献1】特開2005−288786号公報
【特許文献2】特開2006−15704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の従来技術では、管路内部にケーブルが既設されている場合であっても、ケーブルが布設されたままの状態で管路を補修することができるため、極めて有用な技術である。しかしながら、上述の従来技術では、ライニングシートを牽引用ロープで牽引するため、ライニングシートが管路内で巻きついてしまい、仮に既設ケーブルを傷つけない程度にライニングシートを引き入れるための牽引力(例えば、1000N未満の牽引力)が制限されている場合では、十分な牽引力を確保できず、確実な施工を確保することができない場合が生じる。
【0010】
本発明の目的は、ケーブル収容管補修システム及び方法並びに補修システムにおける分離回転式牽引治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のケーブル収容管補修システムは、所定の管路の保護管内の既設ケーブルを布設した状態で、ライニング材により管路を補修するケーブル収容管補修システムであって、前記ライニング材で前記既設ケーブルを包み込むための、補修する管路に亘ってライニング材を環状に連結する連結手段と、前記補修する管路に亘って加圧チューブを前記既設ケーブルと前記ライニング材との間に布設する布設手段と、前記ライニング材を前記保護管の内面に当接し、この当接した状態を所定時間維持して前記ライニング材を硬化させるために、前記加圧チューブの流路を所定時間で定まる硬化条件以上の気密又は液密状態で加圧する加圧手段と、前記所定時間を経過後、前記加圧チューブを取り除く撤去手段と、前記既設ケーブルを包み込む際に、前記ライニング材を固定する回転部材と牽引側を固定する軸部材とを回動可能に連結する構造を有する分離回転式牽引治具を用いて、前記ライニング材を牽引する牽引手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明のケーブル収容管補修方法は、所定の管路の保護管内の既設ケーブルを布設した状態で、ライニング材により管路を補修するケーブル収容管補修方法であって、補修する管路に亘ってライニング材を環状に連結する連結手段により、前記ライニング材で前記既設ケーブルを包み込むステップと、前記補修する管路に亘って加圧チューブを前記既設ケーブルと前記ライニング材との間に布設するステップと、前記加圧チューブの流路を所定時間で定まる硬化条件以上の気密又は液密状態で加圧して膨らませ、前記ライニング材を前記保護管の内面に当接し、この当接した状態を所定時間維持して前記ライニング材を硬化させるステップと、前記所定時間を経過後、前記加圧チューブを取り除くステップとを含み、前記ライニング材で前記既設ケーブルを包み込むステップは、前記ライニング材を固定する回転部材と牽引側を固定する軸部材とを回動可能に連結する構造を有する分離回転式牽引治具によって、前記ライニング材を牽引して前記既設ケーブルを包み込むステップを含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の分離回転式牽引治具は、本発明のケーブル収容管補修方法で用いられる分離回転式牽引治具であって、前記ライニング材を固定する回転部材と牽引側を固定する軸部材とを回動可能に連結する構造を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の分離回転式牽引治具は、前記ライニング材を固定する回転部材と牽引側を固定する軸部材との間の回動を補助するベアリングを有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の分離回転式牽引治具は、前記ライニング材を固定する回転部材と牽引側を固定する軸部材との間の回動を補助する習動部材を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被牽引側の回転が牽引側に伝わらない構造である為、牽引用ロープが既設ケーブルに絡まなくなり、施工が容易となり、管内に収容される既設ケーブルに損傷なく、且つ機能低下させることなく、引き込み張力に制限がある場合でも、今まで不可能であった長距離の施工が可能となる。既設ケーブルを分離回転式牽引冶具内に抱き込むため、2つに分割可能な構造としたうえで、なおかつ牽引側と被牽引側が独立に回転するためケーブル収容管補修の施工時の効率も改善する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
まず、本発明に係る一実施例のケーブル布設済み保護管の補修するケーブル収容管補修方法を説明する。
【0018】
本発明による一実施例のケーブル収容管補修方法は、前述した従来技術が対象とするケーブル布設済み保護管の補修の場合と同様に、管路内部にケーブルが布設されている場合であっても、ケーブルが布設されたままの状態で管路を補修する技術である。同様な構成要素には同一の参照記号を付して説明する。
【0019】
即ち、図1に概略的に示すように、地下1に埋設されている管路の鋼管等の保護管2の内面を補修するのに、保護管2の内径に応じた寸法の幅を有する帯状に形成された未硬化の状態の可撓性あるライニングシート6を用意し、ケーブル4を包むようにライニングシート6に設けられたファスナー(スライド連結操作体)8等で連結し、保護管2の一方の開口部側(マンホール3a側)から挿入し、所定時間加圧状態を維持してライニングシート6を硬化させ、保護管2の内面に固定することで管路を補修する。尚、本実施例では、代表的にシート状のライニング材をライニングシートと称して説明するが、ライニング材とは可撓性ある任意の形態を含む。
【0020】
補修前の状態は、地下1に、保護管2が所定間隔(例えば、約150m)で垂直に立設するマンホール3a、3bで区切られた状態(以下、スパンとも称する)で埋設されている。この保護管2内には光ファイバケーブル等のケーブル4が布設されている。特に、このような保護管2には、1条の既設ケーブルのほか、多数のケーブルを増設したいときに、例えば保護管2に錆又は腐食があると多条布設の妨げとなる場合があるため、通常、事前に保護管2が腐食しているか否かを検査する。検査技法については、本願発明の主題ではないため詳説しないが、管路内にカメラを走査させて検査することができる。尚、本願発明は、必ずしも管路内検査を要するものではない。
【0021】
また、スパン全長に亘って、ポリエチレン等の管状防護材(図示せず)でケーブル4を覆うように包み込むこともできる。尚、管状防護材は、シート状で可撓性の防護材の両側辺に、互いにシートを噛み合わせ連結するための噛み合わせシートを有する構造をしており、シート状の防護材の幅方向の両端を相互に連結して、管状防護材を形成することができる。例えば、保護管2の一方の開口部側(マンホール3a側)にてシート状の防護材の幅方向の両端を相互に連結して管状防護材を形成するとともに、他方の開口部(マンホール3b側)から所定の牽引用ロープ(図示せず)でライニングシート6を引き込み、保護管2の一方の開口部から他方の開口部に亘ってケーブル4を覆うように包み込むようにする。
【0022】
ライニングシート6は、例えば不浸透性内側フィルム層と硬化性樹脂を含浸した樹脂吸着性内層と不浸透性外側フィルム層の可撓性のある3層構造になっている。硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、或いは常温硬化性樹脂が挙げられ、フェルトに含浸されて樹脂吸収性内層となっている。また、不浸透性内側フィルム層としてはポリウレタンフィルムが使用され、不浸透性外側フィルム層としてはポリエチレンフィルムが使用されているが、これに限定されるものではない。また、チューブ19は、気密或いは液密材料で形成された可撓性がある材料であればよく、上述の材質に特に限定されるものではない。また、1本の流路を有するチューブとするか、又は2つ以上のチューブの幅方向(長尺方向に対して垂直な方向)の両端を相互に接続した複数の流路を有するチューブ構造のものを用いてもよい。このチューブ19は、膨らませたとき、保護管2の内周面全体を2つの流路で圧接する径を有する。
【0023】
図2(a)及び図2(b)に示すように、地表にライニングシート6を冷蔵して収納するライニング材格納箱5aを用意する。熱硬化性樹脂からなるライニングシート6は、典型的には、60℃の熱で3〜4時間程度で硬化し、80℃の熱で1時間程度で硬化する性質を有する。そこで、ライニングシート6を冷蔵して収納するライニング材格納箱5aは、比較的低温(好適には、例えば−5℃以下)に保つのが好適である。ライニング材格納箱5aは、保護管2の内径に応じた寸法の幅を有する帯状に形成されたライニングシート6を巻回したシートロールを回転自在に支持させるロールスタンド5を内蔵又は隣接設置するようにしてもよい。また、このロールスタンド5は、ライニングシート6を巻回するのに用いるほか、チューブ19をライニングシート6を多重して巻回するのに用いてもよい。或いは又、チューブ19用のロールスタンドを設けてもよいことは云うまでもない。
【0024】
また、ライニングシート6の幅方向の両側辺は、連結手段9により連結して管状に形成されるようになっている。かかる連結手段9として、ライニングシート6の両側辺に、ファスナーや両面接着テープ等の連結具を設けるか、又は、接着剤による接着或いは熱融着、縫着、或いはフックやホック等による係止とするか、又は、これらの複合構造とすることができる。
【0025】
保護管2の一方の開口部側(マンホール3a側)にて、ライニングシート6の両側辺に設けられた連結子10a,10bで噛み合い連結させるファスナー(限定するものではないが、好適には面ファスナー)8等の連結手段9を、ファスナー嵌合用の引き込みガイド29により、ライニングシートの幅方向の両端を相互に連結しながら、他方の開口部(マンホール3b側)から牽引機28により牽引用ロープ32でリール34a,34bを介して牽引することで、ライニングシート6を引き込み、保護管2の一方の開口部から他方の開口部に亘ってライニングシート6を配置する。その一方で、保護管2の一方の開口部から他方の開口部に亘って保護管2内に配置するライニングシート6内に、チューブ19をケーブル4の下側に敷くように挿入する。
【0026】
前述までのケーブル収容管補修の手順は、本実施例と従来技術とで同様である。しかしながら、従来では、図2(a)に示すように、チューブ19及びライニングシート6をそれぞれ別に、或いは又、チューブ19及びライニングシート6を同時に、保護管2の一方の開口部から牽引するために、チューブ19及び/又はライニングシート6の先端には、牽引用ロープ11で直接チューブ19及び/又はライニングシート6の先端を直接固定する非回転式牽引治具33aを用いて牽引する。
【0027】
一方、本実施例では、図2(b)に示すように、チューブ19及びライニングシート6をそれぞれ別に、或いは又、チューブ19及びライニングシート6を同時に、保護管2の一方の開口部から牽引するために、チューブ19及び/又はライニングシート6の先端には、牽引時の回転をチューブ19及び/又はライニングシート6に伝わらないように構成した2つの独立回転構造の分離回転式牽引治具33bを連結する。
【0028】
即ち、本実施例と従来技術とでは、チューブ19及び/又はライニングシート6を牽引するための牽引治具の構造が異なる。従来技術の非回転式牽引治具33aを用いて牽引すると、牽引中にライニングシート6が回転し、この回転が非回転式牽引治具33aを通じて牽引用ロープ32に伝わり、牽引用ロープ32側の必要とされる牽引力が増大し、この牽引力の増大に伴って、既設ケーブルを傷つけるおそれが生じ、ケーブル収容管補修を継続して行うことができなくなる事態が生じうる。
【0029】
そこで、本実施例では、分離回転式牽引治具33bを用いる。分離回転式牽引治具33bは、ライニングシート6側を固定する回転部材と牽引側を固定する軸部材とを回動可能に連結する構造を有する。この場合、牽引中にライニングシート6が回転し、この回転が分離回転式牽引治具33bで吸収され、牽引用ロープ32に伝わらず、牽引用ロープ32側の必要とされる牽引力が増大することがなく、むしろ従来よりも小さい牽引力で既設ケーブルを傷つけるおそれが生じることなしで、より速い施工時間のケーブル収容管補修を継続して行うことができる。
【0030】
尚、分離回転式牽引治具33bの構造は、詳細に後述するが、その内部にケーブル4を通した状態で結束バンドやネジ等により環状に牽引用ロープ32及びライニングシート6を独立回転式に連結する。ライニングシート6の先端は、分離回転式牽引治具33bの後端外周に嵌め、固定する。分離回転式牽引治具33bの先端には、牽引用ロープ32の一端を連結する。牽引用ロープ32は保護管2内を通し、その先端を次のマンホール3bで牽引する。この分離回転式牽引治具33bは、チューブ19及びライニングシート6のそれぞれを別に牽引するのに用いることもできるが、チューブ19及びライニングシート6の双方を固定して同時に牽引するのに用いることもできる。
【0031】
従来の一流路のチューブ19を用いて施工する場合の牽引方法として、ライニングシート6を挿入した後、一流路のチューブ19を圧力挿入することもできる。この場合、環状のライニングシート6内に一流路のチューブ19を引き込む際に、一流路のチューブ19の先端を閉じ、後端の開口部を保護管2の一方の開口部に固定した状態から、一流路のチューブ19内に空気を送り込み、一流路のチューブ19を反転させながらその先端を保護管2の他方の開口部側に前進させることにより、環状のライニングシート6内に一流路のチューブ19を引き込むようにする。
【0032】
このように、チューブ19をケーブル4に配置し、環状にしたライニングシート6を形成しながら、牽引用ロープ32をマンホール3b側から牽引することにより、マンホール3aに開口する保護管2の一方の開口部からマンホール3bに開口する他方の開口部に亘ってチューブ19及び環状にしたライニングシート6を設置させる。
【0033】
このとき、保護管2内におけるチューブ19及び環状にしたライニングシート6の移動を容易にするために、滑材或いは水等を使用してもよい。
【0034】
次に、ライニングシート6及びチューブ19を設置後、分離回転式牽引治具33bを取り外す。
【0035】
以下の手順は、本実施例と従来技術とで同様である。即ち、保護管2の内面に当接しておらず、撓んだ状態にある未硬化のライニングシート6を、加圧チューブ19の2つの流路に熱風、高温の温水或いは蒸気を送り込み、ライニングシート6を加圧させて、保護管2の内面に当接させ、この状態を所定時間(例えば、60℃の温水で3〜4時間)維持し、ライニングシート6を硬化させて、ライニングシート管15を形成する。
【0036】
尚、ライニングシート6に含浸或いは塗布されている硬化性樹脂が熱硬化性樹脂である場合は、加圧チューブ19内に熱風、高温の温水或いは蒸気を送り込むようにし、硬化性樹脂が光硬化性樹脂である場合は、流体流通装置(図示せず)から紫外線を照射するようにし、硬化性樹脂が常温硬化性樹脂である場合は、一定時間放置し、ライニングシート6の未硬化の熱硬化性樹脂を硬化させようにして、保護管2の内面に固定することができる。
【0037】
ライニングシート6が硬化して、ライニングシート管15の形成が完了した後、加圧チューブ19を撤去する。加圧チューブ19の撤去は、前述したロールスタンドを用いることができる。加圧チューブ19とケーブル4との間に防護材を用いている場合は、同様の手法で防護材も撤去する。これにより、ケーブル収容管補修後、保護管2内の余裕空間にインナーパイプなどを布設して、2条目のケーブルを布設することができるようになる。
【0038】
次に、分離回転式牽引治具33bの構造例を説明する。
【0039】
図3に、分離回転式牽引治具33bの第1構造例を示す。図3(a)は、分離回転式牽引治具33bの第1構造例の全体斜視図である。図3(b)は、分離回転式牽引治具33bの第1構造例の分解正面図である。図3(c)は、分離回転式牽引治具33bの第1構造例の正面図である。図3(d)は、分離回転式牽引治具33bの第1構造例の側面図(図3(a)におけるA視)である。
【0040】
第1構造例の分離回転式牽引治具33bは、ケーブル4を挿通可能な内空構造を有し、一対の分離可能な回転部材36a,36bと、一対の分離可能なベアリング37a,37bと、一対の分離可能な軸部材38a,38bと、固定部材39,40と、固定ネジ41と、2つの牽引用ピン42とを備える。概略的な寸法は、図3(c)及び図3(d)に示す通りである。一対の分離可能な回転部材36a,36b、及び一対の分離可能な軸部材38a,38bは、アルミか又は樹脂で整形する。一対の分離可能なベアリング37a,37bは、結合後一体化するベアリングが知られている。固定部材39,40、固定ネジ41、及び2つの牽引用ピン42は、任意の金属を用いることができる。一対の分離可能な回転部材36a,36b、及び一対の分離可能な軸部材38a,38bは、互いに回転可能に組み合わされ、一対の分離可能なベアリング37a,37bで回転補助する仕組みである。分離可能にしている理由は、既設ケーブル4を傷つけることなく、第1構造例の分離回転式牽引治具33b内に挿通可能にするためである。一対の分離可能な回転部材36a,36bの外壁は、固定用バンドを用いてライニングシート6を固定するための溝が2箇所以上設けるのが好適である。牽引用ロープ32は、2つの牽引用ピン42に取り付けられる。
【0041】
このように分離回転式牽引治具33bを構成して、ライニングシート6の牽引に利用すれば、牽引中にライニングシート6が回転しても、この回転が分離回転式牽引治具33bで吸収され、牽引用ロープ32に伝わらず、牽引用ロープ32側の必要とされる牽引力が増大することがなく、むしろ従来よりも小さい牽引力で既設ケーブルを傷つけるおそれが生じることなしで、より速い施工時間の牽引力でケーブル収容管補修を継続して行うことができる。
【0042】
図4に、分離回転式牽引治具33bの第2構造例を示す。図4(a)は、分離回転式牽引治具33bの第2構造例の全体斜視図である。図4(b)は、分離回転式牽引治具33bの第2構造例の分解正面図である。図4(c)は、分離回転式牽引治具33bの第2構造例の正面図である。図4(d)は、分離回転式牽引治具33bの第2構造例の側面図(図4(a)におけるA視)である。
【0043】
第1構造例の分離回転式牽引治具33bは、ケーブル4を挿通可能な内空構造を有し、一対の分離可能な回転部材46a,46bと、一対の分離可能な第1習動部材47a,47bと、一対の分離可能な第2習動部材48a,48bと、一対の分離可能な軸部材49a,49bと、2つの牽引用穴部50とを備える。概略的な寸法は、図4(c)及び図4(d)に示す通りである。一対の分離可能な回転部材46a,46bと、一対の分離可能な軸部材49a,49bと、2つの牽引用穴部50は、任意の樹脂で整形することができるが高強度材料にするのが望ましい。一対の分離可能な第1習動部材47a,47bと、一対の分離可能な第2習動部材48a,48bは、ポリテトラフルオロエチレン、超高分子量ポリエチレン、ナイロン等の自己潤滑性を保持したプラスチック、金属、複合・複層材料を用いるのが好適であり、いずれも低摩擦且つ高耐磨耗性を有するので、回転補助するのに有利である。一対の分離可能な回転部材46a,46b、及び一対の分離可能な軸部材49a,49bは、互いに回転可能に組み合わされ、一対の分離可能な第1習動部材47a,47bと、一対の分離可能な第2習動部材48a,48bで回転補助する仕組みである。分離可能にしている理由は、既設ケーブル4を傷つけることなく、第2構造例の分離回転式牽引治具33b内に挿通可能にするためである。一対の分離可能な回転部材46a,46bの外壁は、固定用バンドを用いてライニングシート6を固定するための溝が2箇所以上設けるのが好適である。牽引用ロープ32は、2つの牽引用穴部50に取り付けられる。図示していないが、各分離構造体は、ネジ等で固定する。
【0044】
このように分離回転式牽引治具33bを構成して、ライニングシート6の牽引に利用すれば、牽引中にライニングシート6が回転しても、この回転が分離回転式牽引治具33bで吸収され、牽引用ロープ32に伝わらず、牽引用ロープ32側の必要とされる牽引力が増大することがなく、むしろ従来よりも小さい牽引力で既設ケーブルを傷つけるおそれが生じることなしで、より速い施工時間のケーブル収容管補修を可能にする。
【0045】
このように、分離回転式牽引治具33bを内空構造の冶具として、牽引側と被牽引側をそれぞれ独立に回転可能な構造とした。被牽引側の回転が牽引側に伝わらない構造である為、牽引用ロープがケーブルに絡まない。ケーブル4を冶具内に抱き込むため、2つに分割可能な構造としたうえで、なおかつ牽引側と被牽引側が独立に回転する。
【0046】
本発明は、前述した実施例に限定されるものではなく、その主旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。従って、本発明は、上述の実施例にて制限されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ制限される。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、既設ケーブルを布設したまま、効率よく地下に埋設されている管路の鋼管等の保護管の内面を補修することができるので、ケーブル収容管補修の用途に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る一実施例のケーブル布設済み保護管の補修するケーブル収容管補修方法を説明する図である。
【図2】本発明に係る一実施例のケーブル布設済み保護管の補修するケーブル収容管補修方法を説明する図である。
【図3】本発明による一実施例の分離回転式牽引治具の第1構造例を示す図である。
【図4】本発明による一実施例の分離回転式牽引治具の第1構造例を示す図である。
【図5】従来のケーブル収容管補修方法の工程を示す縦断面図である。
【図6】従来のケーブル収容管補修方法の工程を示す横断面図である。
【図7】従来のケーブル収容管補修方法の工程を示す斜視図である。
【図8】従来のケーブル収容管補修方法の工程における保護管の断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 地下
2 保護管
3a,3b マンホール
4 ケーブル
5 ロールスタンド
5a ライニング材格納箱
6 ライニングシート
8 ファスナー(スライド連結操作体)
9 連結手段
10a,10b 連結子
12 挿入口
13 引き出し口
14 牽引用ロープ
15 ライニングシート管
19 チューブ
28 牽引機
29 引き込みガイド
32 牽引用ロープ
33a 非回転式牽引治具
33b 分離回転式牽引治具
34a,34b リール
36a,36b 一対の分離可能な回転部材
37a,37b 一対の分離可能なベアリング
38a,38b 一対の分離可能な軸部材
39,40 固定部材
41 固定ネジ
42 牽引用ピン
46a,46b 一対の分離可能な回転部材
47a,47b 一対の分離可能な第1習動部材
48a,48b 一対の分離可能な第2習動部材
49a,49b 一対の分離可能な軸部材
50 牽引用穴部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の管路の保護管内の既設ケーブルを布設した状態で、ライニング材により管路を補修するケーブル収容管補修システムであって、
前記ライニング材で前記既設ケーブルを包み込むための、補修する管路に亘ってライニング材を環状に連結する連結手段と、
前記補修する管路に亘って加圧チューブを前記既設ケーブルと前記ライニング材との間に布設する布設手段と、
前記ライニング材を前記保護管の内面に当接し、この当接した状態を所定時間維持して前記ライニング材を硬化させるために、前記加圧チューブの流路を所定時間で定まる硬化条件以上の気密又は液密状態で加圧する加圧手段と、
前記所定時間を経過後、前記加圧チューブを取り除く撤去手段と、
前記既設ケーブルを包み込む際に、前記ライニング材を固定する回転部材と牽引側を固定する軸部材とを回動可能に連結する構造を有する分離回転式牽引治具を用いて、前記ライニング材を牽引する牽引手段と、
を備えることを特徴とする、ケーブル収容管補修システム。
【請求項2】
所定の管路の保護管内の既設ケーブルを布設した状態で、ライニング材により管路を補修するケーブル収容管補修方法であって、
補修する管路に亘ってライニング材を環状に連結する連結手段により、前記ライニング材で前記既設ケーブルを包み込むステップと、
前記補修する管路に亘って加圧チューブを前記既設ケーブルと前記ライニング材との間に布設するステップと、
前記加圧チューブの流路を所定時間で定まる硬化条件以上の気密又は液密状態で加圧して膨らませ、前記ライニング材を前記保護管の内面に当接し、この当接した状態を所定時間維持して前記ライニング材を硬化させるステップと、
前記所定時間を経過後、前記加圧チューブを取り除くステップとを含み、
前記ライニング材で前記既設ケーブルを包み込むステップは、
前記ライニング材を固定する回転部材と牽引側を固定する軸部材とを回動可能に連結する構造を有する分離回転式牽引治具によって、前記ライニング材を牽引して前記既設ケーブルを包み込むステップを含むことを特徴とする、ケーブル収容管補修方法。
【請求項3】
請求項2に記載のケーブル収容管補修方法で用いられる分離回転式牽引治具であって、
前記ライニング材を固定する回転部材と牽引側を固定する軸部材とを回動可能に連結する構造を有することを特徴とする、分離回転式牽引治具。
【請求項4】
前記ライニング材を固定する回転部材と牽引側を固定する軸部材との間の回動を補助するベアリングを有することを特徴とする、請求項3に記載の分離回転式牽引治具。
【請求項5】
前記ライニング材を固定する回転部材と牽引側を固定する軸部材との間の回動を補助する習動部材を有することを特徴とする、請求項3に記載の分離回転式牽引治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−74904(P2010−74904A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237716(P2008−237716)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(000100942)アイレック技建株式会社 (45)
【出願人】(508165490)旭テック環境ソリューション株式会社 (51)
【出願人】(302059953)株式会社メーシック (24)