説明

ゲルマニウムを含む高級アサリ

【課題】ゲルマニウムを含む高級アサリを提供する。
【解決手段】通常のアサリ養殖場でアサリを生産する方法において、(a)アサリ養殖場に、養殖場の環境を改善するための砂である粗砂を2〜4cmの厚さに均一に散布し、散布した養殖場に、桁網を利用して深さ10cm以上に耕耘作業を行うステップと、(b)0.7ないし1.2cmの粒径に粉砕した天然ゲルマニウム鉱石を、1ha当たり6ないし10トンの割合で均一に散布するステップと、(c)アサリ養殖場に人為的に水路を作って、養殖場の周りから自然的に流れ込む淡水に含まれた栄養塩類をアサリ養殖場に持続的に供給するステップと、を含むことを特徴とする有機ゲルマニウムを含むアサリの生産方法である。これにより、生産されたアサリには、ゲルマニウム成分が有機化されて転移されており、さらに新鮮かつ豊かな風味や特有の組織感(歯応え)のあるアサリ肉を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常のアサリ養殖場でアサリを生産する方法において、(a)アサリ養殖場に、養殖場の環境を改善するための砂である粗砂を2〜4cmの厚さに均一に散布し、散布した養殖場に、桁網を利用して深さ10cm以上に耕耘作業を行うステップと、(b)0.7ないし1.2cmの粒径に粉砕した天然ゲルマニウム鉱石を、1ヘクタール(ha)当たり6ないし10トンの割合で均一に散布するステップと、(c)アサリ養殖場に人為的に水路を作って、養殖場の周りから自然的に流れ込む淡水に含まれた栄養塩類をアサリ養殖場に持続的に供給させるステップと、を含むことを特徴とする有機ゲルマニウムを含むアサリの生産方法に係り、生産されたアサリにはゲルマニウム成分が有機化されて転移されており、さらに新鮮かつ豊かな風味や特有の組織感(歯応え)を有するアサリを提供することができる。
【背景技術】
【0002】
一般的に、韓国で、カキ、イガイの次に多く生産されるアサリ(Tapes philippinarun)には、必須アミノ酸、鉄分及び亜鉛が多量に含まれており、老若男女、子供及び妊婦の栄養食として勧められている。アサリは、100g当たり3.3mgの鉄分を含んでおり、コバルト及びリボフラビンを多量に含み、妊婦及び既婚女性がかかりやすい貧血の予防に重要な食品である。さらに、低血圧の患者にも有効であり、よく食用すれば血色がよくなる。アサリには肝臓の機能を強化させるタンパク質が多量に含まれているが、このような多様な成分のうち、特に注目する成分がベタインとタウリンである。ベタインは、肝臓での脂肪の蓄積を防止して、脂肪肝に良い成分であり、タウリンは、アルコールによる脂肪肝の患者に良い成分であって、二日酔い及び肝臓の害毒機能を促進して、飲み過ぎによる脂肪の蓄積を予防する。
【0003】
ゲルマニウムの機能的な特性として、免疫力強化作用、インターフェロンの生成誘導作用、エンドルフィンの生成促進作用、脱水素作用、除毒作用、及び体内の重金属の排出作用など、多様な効能を有すると紹介されており、医薬的な用途及び機能性の食品として関心を集めている。
最近、ゲルマニウムが遠赤外線を放射することで、体内細胞の電流の流れを調節して血流を促進させ、細胞に酸素を供給して細胞を活性化させ、また、肌に吸収されて肌の奥深い所の老廃物を除去することによって、柔らかく弾力のある肌にするため、美容分野にも適用されている。
【0004】
このように、ゲルマニウム(特に有機ゲルマニウム)の優秀かつ多様な治療効果が知られているにもかかわらず、韓国では、酵母を用いた有機ゲルマニウムの製造、ゲルマニウム及びゲルマニウム粉末溶解水で栽培したモヤシの胃癌細胞の成長抑制作用、ゲルマニウムの補充が鴨の肉質に及ぼす影響、子豚において、ゲルマニウム溶質液の補充が成長及び血液学的な変化に及ぼす影響、離乳子豚、育成豚及び肥育豚においてゲルマニウム黒雲母の補充効果など、多くの研究が行われたが、アサリに適用して機能性アサリを誘導したことはない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、前記問題点を解決して、全世界人が好み、嗜好性が高く、また自然状態でコスト負担なしに量産することができるアサリを利用して、ゲルマニウムを含む高級アサリの生産方法を提供するところにある。
そのために、本発明は、アサリの成長過程中に、天然ゲルマニウム鉱物をアサリ中の有機ゲルマニウムにそのまま転移させるための最適の養殖条件を提供するところにある。ゲルマニウムが有する危険要素を克服してアサリを成長させ、良質の風味や組織感(歯応え)を有するアサリを生産するために、最適のゲルマニウムの散布量及び栄養塩類を供給する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記目的を達成するために、以下のステップを含む有機ゲルマニウムを含むアサリの生産方法及びそれから生産されるアサリに関する。
本発明は、通常のアサリ養殖場でアサリを生産する方法において、天然ゲルマニウム鉱石を1ha当たり6ないし10トンの割合で均一に散布するステップを含むことを特徴とする有機ゲルマニウムを含むアサリの生産方法を提供する。
さらに詳細には、本発明は、通常のアサリ養殖場でアサリを生産する方法において、(a)アサリ養殖場に、養殖場環境を改善するための砂である粗砂を2〜4cmの厚さに均一に散布し、散布した養殖場に、桁網を利用して深さ10cm以上に耕耘作業を行うステップと、(b)0.7ないし1.2cmの粒径に粉砕した天然ゲルマニウム鉱石を、1ha当たり6ないし10トンの割合で均一に散布するステップと、(c)アサリ養殖場に人為的に水路を作って、養殖場の周りから自然的に流れ込む淡水に含まれた栄養塩類をアサリ養殖場に持続的に供給させるステップと、を含むことを特徴とする有機ゲルマニウムを含むアサリの生産方法を提供する。
【0007】
本発明で使用されるゲルマニウム鉱石は、ゲルマニウムを含む天然鉱石を原料としたものであって、種類または使用範囲にあまり影響を受けず、下記表1に示すごとき、1kg中にゲルマニウムの含量が20ppm以上である天然鉱石が使用することができる。天然ゲルマニウム鉱石としては、アージロド鉱石、センマエン鉱石、ソエウヒド鉱石、シメンドウ鉱石等が挙げられる。
【表1】

【0008】
約0.7ないし1.2cmのサイズに粉砕した天然ゲルマニウム鉱石を、1ha当たり6ないし10トンを均一に散布する。
本発明の主な課題は、アサリの生育を妨害せず、成長を促進し、アサリに安全に転移されるように、砂泥質の干潟に散布される無機ゲルマニウムの含量にある。
本発明者らは、本発明のための予備実験ステップである植物体の実験において、ゲルマニウムの含量が10ppm以上である所で植物体を栽培すれば、稲の葉に赤茶色の大型の斑点ができ、25ppm以上である所では、植物体が枯死してしまうという事実に基づき、本発明は、天然ゲルマニウム鉱石が、アサリの成長を促進しながらも、転移される散布量が1ha当たり6ないし10トンであるという臨界的意義を技術的特徴とする。天然ゲルマニウム鉱石の散布量が1ha当たり6トン以下である場合、アサリに転移される天然有機ゲルマニウムが不十分であり、10トン以上である場合、アサリの成長には問題がないが、経済的な側面では意味がないと調査された。
【0009】
また、本発明は、アサリ養殖場に人為的に水路を作って、養殖場の周りから自然的に流れ込む淡水に含まれた栄養塩類をアサリ養殖場に持続的に供給させることによって、アサリ肉質の肥満度の向上を図ることを技術的特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
泰安半島でのアサリの生産量は、2006年に3,400トンと、忠清南道の生産量である6,704トンの半分以上を占めた。泰安半島は、全国のアサリ生産量の15%以上を占めるほど、アサリ生産のメッカであり、清浄環境と広い干潟によって全国的な認知度が高い。
しかし、最近、中国産及び北漢山のアサリが大量に輸入されるようになり、泰安半島のアサリのコスト競争力が弱化しており、環境汚染の少ない清浄環境で生産されたことのほか、他の地域で生産されるアサリに対して比較優位がないという現実に直面している。
【0011】
前述のように、本発明は、天然ゲルマニウム鉱石の粉末を利用して、韓国人が好むアサリに、抗酸化、抗癌、糖尿病など、成人病治療の効果が認められる有機ゲルマニウムを多量に含ませることによって、アサリ肉を摂取しつつ抗酸化及び癌予防の効果を得ることができる。また、さっぱりして甘みを出すタウリンや、ベタイン、グルタミン酸、メチオニン、核酸を含んでおり、国民健康補助食品として位置付けられている。
本発明は、有機ゲルマニウムを含むアサリを生産することによって、差別化された生産方法による機能性アサリのブランド化及び特性化を図り、ますます高級化している食品文化に付加価値及び漁家所得の増大を図るために、有機ゲルマニウムを含む高級アサリ生産を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の技術的事項を下記の実施例によってさらに詳細に説明する。ただし、これらの実施例は、単に本発明の内容を理解するために提示されるものであり、本発明の権利範囲がこれらの実施例に限定されると解釈されてはならない。
【実施例1】
【0013】
<実験例:ゲルマニウムの散布量>
有機ゲルマニウムを含むアサリを生産するために、既存のアサリ養殖場に養殖場の環境を改善するための砂(粗砂)を2〜4cmの厚さに均一に散布し、散布した養殖場に、桁網を利用して深さ10cm以上に耕耘作業を行った。セクターを分け、約1cmの粒径に粉砕した天然ゲルマニウム鉱石を、表2に示すように、1ha当たり0(無処理)、2トン、6トン、8トン、10トン及び20トンの多様な割合で均一に散布した。
【表2】

【0014】
アサリ養殖場に人為的に水路を作って、養殖場の周りから自然的に流れ込む淡水に含まれた栄養塩類をアサリ養殖場に持続的に供給して30日間飼育した後、全南大学校の機資材管理団に依頼して、アサリに含まれる有機ゲルマニウムの含量を分析した結果を表3に示した。
【表3】

【0015】
前記表3に示すように、天然ゲルマニウム鉱石の散布量が増加するほど、アサリ肉に転移された有機ゲルマニウムの含量も増加した。ゲルマニウムの散布量を1ha当たり8トンにした場合、20日間飼育した後、アサリの有機ゲルマニウムが約28ppb検出された。
しかし、ゲルマニウムの散布量を1ha当たり2トンにした場合、統計的に有意差を表すほどの結果が出なかったが、6トン以上の散布量では有意的な増加関係を示し、有意量がアサリから検出された。
ゲルマニウム鉱石の散布量を1ha当たり6トン(6,000kg)以上にしたとき、アサリの成長が促進され、斃死率が減少することが観察された。
しかし、20トンを散布した場合、アサリの成長には異常がないが、経済的な側面から好ましくない。
【0016】
一方、熱処理によるアサリ中のゲルマニウム含量の損失率を調べるために、アサリを100℃の水で2分間ゆでた後にゲルマニウムの含量を分析した結果、無処理区では少量のゲルマニウムが含まれているにもかかわらず、損失率が約75%と大部分熱処理によって消失する一方、8トンの散布量の処理区では、損失率が約5%以下と、蓄積された有機ゲルマニウムが熱処理によってほとんど消失しなかった。それは、ゲルマニウムの環境によるアサリの生育が良好であり、有機ミネラルの保有能力が高いということを示す。
【実施例2】
【0017】
<実施例:蒸しアサリ肉>
前記実験例のうち、天然ゲルマニウムの散布量を10トンにし、アサリ養殖場に人為的に水路を作って、養殖場の周りから自然的に流れ込む淡水に含まれた栄養塩類をアサリ養殖場に持続的に供給して生産したアサリを採取して、海水を利用してきれいに洗浄した。それを丸ごと100℃の煮え湯に入れて10分間煮た後、中身を完璧に分離してアサリ肉のみを選別した。その後、それをザルに上げて水気を取った後、蒸し器に入れて約25分熱処理して、しこしこしたアサリ肉を完成させた。
通常の方法で生産されて、前記実施例と同じ方法で製造された完熟アサリ肉(比較例)に対し、訓練された官能検査要員20名を対象として官能検査を行い、その結果を下記表4に示した。官能検査は、外観、香り、味、組織感(歯応え)、全体的な嗜好度の5項目について行い、5点尺度法によって5点を満点として、次の評価基準によって被実験者が点数を記録した後、それらの平均値を求めて記録した。
5:非常に良い(拒否感が全くない)
4:良い(拒否感がない)
3:普通、または悪くない
2:悪い、または良くない(拒否感が少しある)
1:非常に悪い(拒否感がある)
【表4】

【0018】
本発明に係る有機ゲルマニウムを含むアサリを利用した完熟アサリ肉の場合、比較例より高い官能的特性を示し、特に、味と組織感(歯応え)において比較例より高い点数を示した。
実施例のアサリ肉においては、組織が堅くしこしこしており、新鮮な味及び香りが感じられるという分析評価が多かった。それは、ゲルマニウムの環境及びゲルマニウムを有機物として利用することにより、さらに効果的な生長及び代謝過程が行われたと考慮されることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常のアサリ養殖場でアサリを生産する方法において、
天然ゲルマニウム鉱石を1ヘクタール(ha)当たり6ないし10トンの割合で均一に散布するステップを含むことを特徴とする有機ゲルマニウムを含むアサリの生産方法。
【請求項2】
通常のアサリ養殖場でアサリを生産する方法において、
(a)アサリ養殖場に、養殖場の環境を改善するための砂である粗砂を2〜4cmの厚さに均一に散布し、散布した養殖場に、桁網を利用して深さ10cm以上に耕耘作業を行うステップと、
(b)0.7ないし1.2cmの粒径に粉砕した天然ゲルマニウム鉱石を、1ha当たり6ないし10トンの割合で均一に散布するステップと、
(c)アサリ養殖場に人為的に水路を作って、養殖場の周りから自然的に流れ込む淡水に含まれた栄養塩類をアサリ養殖場に持続的に供給するステップ
と、を含むことを特徴とする有機ゲルマニウムを含むアサリの生産方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の方法で生産されることを特徴をする有機ゲルマニウムを含むアサリ。


【公開番号】特開2010−63405(P2010−63405A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232494(P2008−232494)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(508274482)
【出願人】(508274493)
【Fターム(参考)】