説明

ゲート開閉センサ及びゲート開閉監視システム

【課題】光接点を利用したゲート開閉センサ及びゲート開閉監視システムにおいて、ゲートの開閉状態を正確に監視できる技術を提供する。
【解決手段】ゲート開閉センサは、磁界の強さに応じて光ファイバに出射する光(のオン/オフ)を制御する光接点と、光接点に一定の磁界を付与する磁界発生部(例えば、磁石)と、磁界発生部により光接点に付与される磁界を、水門や樋門等のゲートの開閉状態に応じて遮蔽する磁界遮蔽部と、を備えて構成される。
そして、光接点と磁界発生部は、ゲートの開閉状態に関わらず一定の離間距離(磁力の影響範囲内の距離)を保持するように設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水門や樋門等のゲートの開閉を検知するゲート開閉センサ及びこのゲート開閉センサからの光出力に基づいてゲートの開閉状態を監視するゲート開閉監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
国が管理する河川に設置されている樋門、水門等のゲートの開閉監視に関する分野においては、ITVカメラや目視による監視では、コスト面や地域住民の協力が不可欠であること等、さまざまな問題がある。そこで、水路ゲートの開閉状態を監視する技術として、光接点を利用した方法が提案されている(例えば、特許文献1)。ここで、光接点とは、ゲートの開閉状態に応じて光ファイバに出射する光を制御する(例えば、光出力のオン/オフを制御する)構成を有するものの総称である。
【0003】
特許文献1では、一例としてファラデー素子型の光接点を利用したゲート開閉監視システムが開示されている。具体的には、図4に示すように、光ファイバ2の一端に光接点1を設け、この光接点1をゲート5近くの支柱等の支持部材(図示略)に設置し、永久磁石3をゲート5に設置してゲート開閉監視システムを構築している。
このようなゲート開閉監視システムにおいて、磁石3により光接点1に付与される磁界は、光接点1に磁石3が接近したとき(ゲート閉状態)に大きくなり、遠ざかったとき(ゲート開状態)に小さくなる。光接点1は、磁界の強さに応じて光の偏光面を回転させるというファラデー素子の性質を利用して、ゲートの開閉状態に応じて光ファイバ1に出射する光のオン/オフを制御する。すなわち、ゲート開閉監視システムでは、光接点1から光ファイバ2に出射される光の有無に基づいてゲートの開閉状態が判断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3643738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載のゲート開閉監視システムにおいて、上下に移動するゲート5に設置されている永久磁石3は、光接点1に付与される磁界の強さがゲートの開閉状態に対応するように、磁力の影響範囲内(磁石3により光接点1に磁界が付与される範囲)で正常に稼動する必要がある。
しかしながら、稼動年月の経過に伴う支柱部材やゲート等の設備の老朽化又は風雨等の影響により、磁力の影響範囲内で正常に稼動しなくなるという問題が生じることがある。例えば、ファラデー素子に付与される磁界の強さは、磁石3との相対距離が数cmずれただけでも著しく変動するため、ゲート5のがたつきをゲート5の開閉状態が変化したものとして誤って判断してしまうことがある。そこで、かかる問題を解決するためのゲート開閉監視システムが要求されている。
【0006】
本発明は、光接点を利用したゲート開閉センサ及びゲート開閉監視システムにおいて、ゲートの開閉状態を正確に監視できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するためになされたもので、磁界の強さに応じて光ファイバに出射する光を制御する光接点と、
前記光接点に一定の磁界を付与する磁界発生部と、
前記磁界発生部により前記光接点に付与される磁界を、水門や樋門等のゲートの開閉状態に応じて遮蔽する磁界遮蔽部と、を備え、
前記光接点と前記磁界発生部は、前記ゲートの開閉状態に関わらず一定の離間距離を保持するように設置されることを特徴とするゲート開閉センサである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のゲート開閉センサにおいて、前記光接点は、光源から出射された光の偏波面を磁界の強さに応じて回転させるファラデー素子と、
ファラデー素子を通過した光を遮断可能な偏光子と、を有することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のゲート開閉センサにおいて、前記磁界遮蔽部は、前記光接点と前記磁界発生部とを物理的に隔離可能な板状部材であり、前記ゲートの開閉に連動して移動することにより前記光接点に付与される磁界を遮蔽することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載のゲート開閉センサにおいて、前記磁界遮蔽部は、磁性体材料で構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載のゲート開閉センサと、
このゲート開閉センサから出射された光を受光することにより前記ゲートの開閉状態を検出する開閉検出装置と、を備えることを特徴とするゲート開閉監視システムである。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のゲート開閉監視システムにおいて、前記光接点と前記磁界発生部は、同一の構造物に固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るゲート開閉センサ及びゲート開閉監視システムによれば、ゲートの開閉状態を正確に監視することができるとともに、稼動年月の経過とは無関係に信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るゲート開閉センサの概要を示す説明図である。
【図2】ファラデー素子型の光接点の内部構成の一例を示す説明図である。
【図3】ゲート開閉センサの具体的な実装態様の一例を示す説明図である。
【図4】従来のゲート開閉センサの概要を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係るゲート開閉センサの概要を示す説明図である。図1では、一例として引上式ゲートの水門100について示している。つまり、図1に示す水門100では、引き上げ機構7によりゲート5を開閉(昇降)することにより河川等の流路の水位が調整される。
【0016】
図1に示すように、ゲート開閉センサ10は、光ファイバ2に光を出射する光接点1と、所定の磁界を発生する磁石3と、光接点1に付与される磁界をゲート5の開閉状態に応じて遮蔽する遮蔽板4と、を備えて構成される。
【0017】
光接点1は、図2に示すように、例えば、光ファイバ2から出射された光Liを平行光にするコリメートレンズ11、特定の直線偏光だけを透過する偏光子12、磁界の強さに応じて光の偏波面を回転させるファラデー素子13、ファラデー素子13を透過した光を反射する反射ミラー14、を備えて構成されている。
【0018】
ファラデー素子13は、例えば、磁石3により磁界Bが付与されたときに光の偏波面を45°回転させるように構成されている。
このように構成すると、ファラデー素子13に磁界Bが付与されたとき、偏光子12を透過した偏光の偏波面はファラデー素子13を透過する際に45°回転する。そして、この透過光は反射ミラー14で反射され、ファラデー素子13を再度透過する際にさらに45°回転する。つまり、ファラデー素子13に磁界Bが付与されると、光ファイバ2から出射され偏光子12を透過した偏光の偏波面は結果として90°回転するため、復路で偏光子12に吸収され、光ファイバ2には出射されない。
一方、ファラデー素子13に磁界が付与されなければ、偏光子12を透過した偏光の偏波面はファラデー素子13を透過する際に回転しないので、反射ミラー14で反射され、そのまま偏光子12を透過して光ファイバ2に出射されることとなる。
【0019】
光ファイバ2の一端には光接点1が接続され、他端には光接点1から出射される光(反射光)を受光することによりゲート5の開閉状態を検出する開閉検出装置(図示略)が接続されている。すなわち、この開閉検出装置とゲート開閉センサ10により本発明に係るゲート開閉監視システムが構成される。開閉検出装置には光源が内蔵されており、この光源からの光が光ファイバ2を介して光接点1に出射されるようになっている。
光ファイバ2には既設の光ファイバ網を利用することができる。したがって、水門の近傍まで光ファイバ網が敷設されていれば、ゲート開閉センサ10を容易に適用することができる。
【0020】
光接点1と磁石3は、ゲートの開閉状態に関わらず一定の離間距離を保持するように支持部6に設置される。例えば、水門本体を構成する壁体などの構造物が支持部6となる。光接点1と磁石3の離間距離は常に一定に保持されているので、磁界Bを遮蔽するものがなければ、磁石3により光接点1に一定の磁界Bが付与されることとなる。
遮蔽板4は、例えば、鉄、ニッケルなどの磁性体材料で構成され、光接点1と磁石3との間に配置される。すなわち、遮蔽板4は、両者を物理的かつ磁気的に隔離可能となっている。
【0021】
図3は、ゲート開閉センサ10の具体的な実装態様の一例を示す説明図である。図3には、水門100を上方から見た平面図を示している。
図3に示すように、光接点1と磁石3は、水門本体を構成する壁体などの同一構造物(支持部)6に固定される。遮蔽板4は、例えば、鉄製又はニッケル製の板状部材を折り曲げて平面視カギ状に加工されている。そして、この遮蔽板4は、一方の面が光接点1と磁石3との間に介在するように、他方の面の側辺がゲート5に固着されている。
【0022】
ここで、遮蔽板4の形状及び大きさ、並びに取付位置は、少なくともゲート5が閉状態となっている場合にゲート5のがたつきにより光接点1に付与される磁界が変動しないように、すなわち閉状態ではゲート5のがたつきに関係なく磁界が完全に遮蔽されるように設計されるのが望ましい。
【0023】
図1(a)に示すように、ゲート5が閉状態となっている場合には、対向配置された光接点1と磁石3との間に遮蔽板4が介在することとなるので、光接点1に磁界は全く付与されない。そして、光接点1(ファラデー素子13)に磁界が全く付与されなければ光接点1から光ファイバ2に最大強度の光が出射されるので、開閉検出装置では、最大強度の光を受光したときをゲート閉状態として検出する。
【0024】
一方、図1(b)に示すように、ゲート5が完全な開状態の場合には、遮蔽板4が上方に位置し、光接点1と磁石3との間に遮蔽板4が介在しない状態となるので、光接点1に磁界Bが付与される。ここで、完全な開状態とは、光接点1に付与される磁界が磁界Bとなった状態であり、ゲート5が上昇又は下降するにつれて光接点1に付与される磁界が徐々に変動する状態と区別している。
そして、光接点1(ファラデー素子13)に磁界Bが付与されると光接点1から光ファイバに光は出射されないので、開閉検出装置では、光を受光しないときをゲート開状態(完全な開状態)として検出する。
【0025】
上述したように、本実施形態に係るゲート開閉センサ10は、磁界の強さに応じて光ファイバ2に出射する光を制御する光接点1と、光接点1に一定の磁界Bを付与する磁石(磁界発生部)3と、磁石3により光接点1に付与される磁界Bをゲート5の開閉状態に応じて遮蔽する遮蔽板(磁界遮蔽部)4と、を備えて構成されている。
そして、光接点1と磁石3は、ゲート5の開閉状態に関わらず一定の離間距離を保持するように設置されている。
【0026】
このように、ゲート開閉センサ10では、光接点1と磁石3はゲート5の開閉状態に関わらず一定の離間距離を保持するように設置され、光接点1に付与される磁界Bを遮蔽板4により遮蔽するようにしているので、ゲート5の開閉状態を正確に監視することができるとともに、稼動年月の経過とは無関係に信頼性を向上することができる。
具体的には、遮蔽板4の大きさや形状などを適宜設計することで、ゲート閉状態において光接点1に付与される磁界を完全に遮断することは容易に実現できる。この光接点1に磁界が全く付与されない状態、すなわち光接点1から最大強度の光が出射される状態をゲート閉状態に対応させておけば、出射光の強度が低下したときはゲート開状態(完全な位階状態とは限らない)となるので、ゲートの開閉を確実に監視することができる。
また、ゲート開閉センサ10は簡単な構造により実現されるので、容易に製造できるとともに、水門への実装作業も容易化される。
【0027】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
上記実施形態では、開閉検出装置に内蔵されている光源を利用し、開閉検出装置で入射光と反射光を比較することによりゲート5の開閉状態を監視するが、光接点1が光源を内蔵する構成とし、この光源から出射される出射光を開閉検出装置で検知することによりゲート5の開閉状態を監視することもできる。
また、光接点1の内部構成は、光接点1から光ファイバ2への光の出射状態とゲート5の開閉状態を対応付けることができれば、特に制限されない。
【0028】
また、ゲート5が閉状態から完全な開状態に移行する場合、又はその逆の場合、光接点1(ファラデー素子13)には磁界Bよりも弱い磁界が付与されることとなる。このとき、偏光子12を透過した偏光の偏波面は0〜45°の範囲で回転することとなるので、光接点1から出射される光の強度はゲート閉状態時の最大強度よりも小さくなる。
したがって、光接点1から光ファイバ2に出射される光の強度により、ゲート5の開度(どれくらい開いているか)を検出することも考えられる。
【0029】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0030】
1 光接点
2 光ファイバ
3 磁石(磁界発生部)
4 遮蔽板(磁界遮蔽部)
5 ゲート
6 支持部
7 ゲート引き上げ機構
10 ゲート開閉センサ
100 水門

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界の強さに応じて光ファイバに出射する光を制御する光接点と、
前記光接点に一定の磁界を付与する磁界発生部と、
前記磁界発生部により前記光接点に付与される磁界を、水門や樋門等のゲートの開閉状態に応じて遮蔽する磁界遮蔽部と、を備え、
前記光接点と前記磁界発生部は、前記ゲートの開閉状態に関わらず一定の離間距離を保持するように設置されることを特徴とするゲート開閉センサ。
【請求項2】
前記光接点は、光源から出射された光の偏波面を磁界の強さに応じて回転させるファラデー素子と、
ファラデー素子を通過した光を遮断可能な偏光子と、を有することを特徴とする請求項1に記載のゲート開閉センサ。
【請求項3】
前記磁界遮蔽部は、前記光接点と前記磁界発生部とを物理的かつ磁気的に隔離可能な板状部材であり、前記ゲートの開閉に連動して移動することにより前記光接点に付与される磁界を遮蔽することを特徴とする請求項1又は2に記載のゲート開閉センサ。
【請求項4】
前記磁界遮蔽部は、磁性体材料で構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のゲート開閉センサ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のゲート開閉センサと、
このゲート開閉センサから出射された光を受光することにより前記ゲートの開閉状態を検出する開閉検出装置と、を備えることを特徴とするゲート開閉監視システム。
【請求項6】
前記光接点と前記磁界発生部は、同一の構造物に固定されていることを特徴とする請求項5に記載のゲート開閉監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−174309(P2011−174309A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39779(P2010−39779)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】